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ザ・スパイダースのゴーゴー向う見ず作戦

これ以前にも、スパイダースがゲスト的に登場している映画はあるのだが、一応本作が、ザ・スパイダースの初主演作品らしい。

脚本が倉本聰さんと言うのも、今考えると凄いことだと思う。

既に子役時代から活躍しているマチャアキこと堺正章の芸達者振りが楽しめるし、ムッシュかまやつや井上順、大野克夫らの若い頃の姿が貴重。

話自体は、日活ナンセンスの真骨頂と行った所で、特に意味はないのだが、途中で流れるスパイダースのヒット曲を楽しむために一応展開しているだけと言った感じである。

「HELP! 四人はアイドル」(1965)辺りから始まった、ミュージック・ビデオの走りのようなものと解釈しても良いかもしれない。

劇中に登場する評論家風の中年教授の描き方辺りに、当時のマスコミ批判や風刺が込められているようにも見える。

評論家と称する一部インテリ(?)が、世の中のことを分かったように解説し、大衆がそれを鵜呑みにする滑稽さ。

やっている本人は暇つぶしにやっているだけのことでも、勝手に解釈され、あまつさえ本人たちも戸惑うような賞賛が浴びせられる。

そんな空疎な権威主義は、若者から観れば無意味でしかない。

それは、映画に対しても同じで、この映画だけではなく、あらゆる表現を他人が意味ありげに分析して、分かったような気になっている風潮も皮肉っているのかもしれない。

主演のスパイダースに対する山内賢とヤング&フレッシュは、他の出演作を観ていないと誰だか分からない人もいるはず。

主に、ギター好きな山内賢がメンバーを集め、日活映画中心に活躍していたGS(グループサウンズ)のようなものらしいなのだが、山内賢と和田浩二の2人は俳優なのでまだ多少見覚えはあるものの、他のメンバーはミュージシャンではあっても俳優ではないので、失礼ながら、グループ自体にスパイダースなどと張り合うだけの華やかさや魅力がない。

冒頭に登場する松原智恵子さんが、水着の上から、「ウルトラセブン」のゴース星人が着ていた透明ビニール製の上っ張りのようなものを来ているのも珍しい。

イーデス・ハンソンさんや林家こん平師匠、柳家金語楼さんの姿も懐かしい。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1967年、日活、倉本聰+才賀明脚本、斎藤武市監督作品。

羽田空港に到着するノースウエスト機

世界一周旅行へ出かけていた「ザ・スパイダース」の7人が、予定より早く帰国したので記者会見が行われる。

本来なら、自分たちが、ヨットで世界一周やってたはずなんですとマチャアキ(堺正章)がホラを吹く。

1年の予定だったのに早く帰って来たのは何故?と聞かれたジュン(井上順)たちは、これからの冒険は日本ってことに気づいたんだと答える。

青い鳥は近くにいるってことですよと克夫(大野克夫)が言う。

その時、これから町に出てガールハントしよう!と突然リーダーのショウちゃん(田辺昭知)が宣言する。

早速銀座の町に繰り出したメンバーたちは、通りかかった女の子たちに片っ端から声をかけて行くが全く相手にされない。

和光の時計が2時を指す頃、ガールハントに失敗したメンバーが集まっていた喫茶店に戻って来たマチャアキは、自分もダメだったけど、まだやって来ないジュンがきっと成功するに違いないから賭けをしないかと片手を出す。

そこに、ジュンが戻って来たので、駆け寄ったマチャアキは、女の子は?と言いながら、ジュンの服をめくってみたりするが、ジュンもダメだったのだと知ると、賭けに負けたことを悟り、5円出したので、何だ、5円か…、どうでも良いよ、そんな金…とムッシュ(かまやつひろし)が呆れる。

これからどうしよう…と、ガールハントが失敗したメンバーたちは次の目標を考え始める。

そんな彼らの目の前に置いてあったテレビに写っていたのは、大磯ロングビーチで行われていた「素人歌謡コンクール」

勝ち抜きしていた1人の女性チャンピオンチノ(松原智恵子)がバンド「ヤング&フレッシュ」をバックに歌を歌っていた。

結局、その勝負もチャンピオンの勝ちになり10人勝ち抜いたので、司会者がチノにインタビューをする。

どんな恋人が欲しいですか?と聞かれたチノは、はっきりした人です。昔何かで読んだんですが、ある女がある男から求愛を受けたんですって。

するとその女は、自分の所までどんな障害物があろうと、まっすぐ歩いて来れば求愛を受け入れると答えたそうです。

今でもそんな人がいたら、私は求愛を受け入れるでしょうとチノは答える。

その放送を見ていたショウちゃんは、これだ!ここからまっすぐ行こう!と言い出す。

僕たちが出発するとしたら、最初の冒険の出発予定地だった横浜からだろうと言うことになり、ジャンケンで歩く順番を決めることにする。

タイトル(次々に色が変わる単色カラーバックに、メンバーたちのシルエット)

かくして、スパイダースの7人は横浜の港から歩き始めることにする。(「フリフリ」が流れる)

その頃、大磯ロングビーチで演奏していたヤング&フレッシュの健(山内賢)は、下の客席の方に戻っていたチノが駆け寄って来て、本当にここへ向かってまっすぐ歩き始めた人がいるんだって連絡があったの!到着するまで待っててくれって!と声をかけるが、エレキを弾いていた健には良く聞き取れず、え?何だって?とチノの声を良く聞こうと飛び込み台から身を乗り出し、そのままプールの中に落っこちてしまう。

スパイダースの面々は、喫茶店のガラス窓をぶち破り、客席の間を堂々と突き抜けて進んでいた。

外に出た彼らを避けようとした車同士が路上で衝突事故を起こしたので、神奈川県警のパトカーが出動する。

まっすぐ東京に向かって進む若者の一群がいるとの電話を受けたのは地元警察署の警察署長(河上信夫)だった。

たまたま警視総監も部屋に来ていたことから、総監も電話の内容に興味を持ったようだったが、署長は、単なるキ○ガイですよと軽く報告する。

そこへ又電話がかかって来て、今度は松の湯と言う銭湯の女湯を先ほどの一群が通過したので大騒ぎになっているそうです!と署長が報告すると、今日、わしが本署に来ることを知ってわざとやっているな!機動隊出動!と総監は怒って命じる。

その時、窓から下を見ると、当の7人が本署に向かって歩いて来るではないか。

あいつらいよいよ刑務所に入るつもりだな?と署長は推理するが、7人は、ただまっすぐ向かう方向に本署の留置場があったので、そのまま自分たちで入ってしまう。

その頃、世田谷の自宅に戻っていた健は、一緒に部屋に遊びに来ていたヤング&フレッシュのドラマー浩治(和田浩治)英介(杉山元)光彦(木下雅弘)らから、健!お前やれ!と急かされていた。

実は、健の好きなチノの家は、一つ家を挟んだ向こう側にあるので、お前もチホが好きなら、横浜から来ている奴らが到着する前に、思い切ってまっすぐ家に乗り込み、チノにプロポーズしてしまえと言われていたのだった。

しかし、チノの家と健の家の間には、マスコミに出ている有名な大学教授三上(内田朝雄)の家があったので、臆病な健は、その敷地を突っ切ってチノの家に行くことなど到底出来なかった。

やむなく、三上を門に呼び出し敷地をまっすぐ通らせて欲しいと願い出た健だったが、どう言うことかね?理由の如何によっては通り抜けさせないこともないが、通り抜けようとする理由を聞こうじゃないかと三上から正面切って聞かれると、良いんです…と尻込みして帰ってしまう。

一方、警察署に留まっていたスパイダースの面々は、総監や署長から、まっすぐ歩いている理由を聞かれ、昔々、野原だけで何もなかった時代、横浜から東京までどう行きました?とマチャアキが逆に問いかけていた。

そりゃ、まっすぐ歩いただろうな…と総監が答えると、僕たちは大昔に返り、まっすぐ歩いてみたかっただけですと克夫が言う。

何やら訳の分からない説明をする7人の話を聞いているうちに、総監は彼らの考えに共鳴して行く。

あげくの果てに、わしもこの若者たちのように、罪のある奴を逃がしてやりたかったよなどと言い出したので、一緒にいた署長は慌てる。

しかし、7人は解放されることになったので、北北東へ向かってゴー!とかけ声をかけ、再びまっすぐ進み出す。

「何となく」の曲に乗せ、7人は住宅の屋根を歩いて進み続ける。

やがて、団地の一室の中にやって来た彼らは、ちょうど間男(林家こん平)を発見した亭主(平凡太郎)と妻アキコ(イーデス・ハンソン)の修羅場の寝室の脇を通ることになる。

3人の横を通り抜けたジュンが、間男なんてサイテーだ!と呟いたので、亭主は勢いづいて間男を責めようとするが、ジュンの後に続いて横を通り過ぎたマチャアキが、殺せば死刑になると呟いたので、今度は間男が勢いづき、殺せば、あんたも死刑なんですよ!となだめる。

その後に通り過ぎるムッシュやショウちゃんたちも、ダメよ、殺しちゃ!とか腕の一本へし折るくらいなら良いんじゃないの?などと無責任な言葉を呟いて行くので、逆上した亭主はとうとう台所から包丁を持ち出そうとする。

その時通り過ぎた克夫は、話し合った方が良いんじゃない?と言い、孝之(井上孝之)は、目には目を、歯には歯を…などと呟いて行く。

最後に、紙袋をぶら下げ、フランスパンをかじりながら付いて来た充(加藤充)が、キッチンのテーブルに置いてあったデコレーションケーキを物欲しそうに観たので、これ、欲しいの?と持って充の側に来た亭主は、思い切り充の顔にケーキをぶつける。

その頃、三上教授は、とある雑誌社に来ていたが、記者からの電話を受けた編集長が、一直線に歩いている若いキチガイグループがいると言うことだそうですと教授に教え、興味なさそうにしていたので、編集長!そのネタ使わんのかね?と確認し、さっさと帰ってしまう。

スパイダースの一行は、ちょうど臨終を迎えた主人の家の中を通ることになり、恐縮しながら遺体が横たわった布団を跨ぎながら進んでいたが、ジュンの後に続こうと跨いだマチャアキがつい死体を踏んでしまったので、その痛みで死体が生き返ってしまう。

一方、健の家の二階では、浩治たちが、アーチェリーの矢にロープを付け、チノの家に矢を放とうとしていた。

その時、三上家の前に自動車がやって来たので、一瞬、浩治らは部屋の中に身を隠す。

三上に招かれてやって来たのは、テレビ局の局員菅井(柴田新三)だった。

三上はやって来た菅井に、新しい種族の誕生なんだ!とさっき新聞社で聞き込んで来た、まっすぐ歩く若者グループのネタを売り込み始める。

その間、浩治はロープ付きの矢を放ち、何とかチノの家の外壁に命中させると、細いロープに繋がっていた太いロープをチノに引っ張らせる。

何とか、チノの家と健の家は太いロープで繋がるが、ちょうど、真ん中にあった三上家の屋根の上のテレビアンテナに引っかかってしまう。

そのため、家の中でテレビを観ていた三上の妻(新井麗子)は、画像が急に乱れ始めたことに気づき、三上に声をかける。

さ、行けよ!と浩治たちに言われた健は、嫌々ながら、そのロープをつかんでチノの家の方へ向かおうとするが、テレビの画像の歪みを観た三上が、こりゃアンテナだろうと言い出し、外を覗いたので、あっさり見つかってしまう。

三上は、刑法130条で告訴してやる!と怒鳴りつけたので、健は、はい!とすぐに謝ってしまう。

スパイダースの面々は、東京サマーランドにやって来たので、全員パンツ姿になり、満員の客でごった返すプールを渡り始める。

ステージでは、ビレッジシンガースが「バラ色の雲」を歌っていたので、それに触発されたメンバーたちは、俺たちもやろうか?スパイダースショー!と張り切る。

夜のステージで「風が泣いている」を歌うスパイダース

その頃、バーにチノを呼んだ浩治たちは、最近少し健に冷た過ぎるんじゃないか?と聞いていた。

するとチノは、健ちゃんは坊ちゃんなのよ!だから冒険をする勇気もないの!だから私、冷たくしてるのよ。健ちゃんだって本気になったら…、例の7人が本当にやって来たら…、天井を破って…と答える。

スパイダースの面々は、女子プロレスの練習場の天井から次々に降り立っている所だった。

先にリング内に侵入したジュンは、あっさり女子プロレスラーに倒されたので、続いてマチャアキがリングに上がり、女子プロレスラーとタッグマッチの勝負を始める。

しかし、やせ細ったマチャアキはあっさり女子プロレスラーに押しつぶされ、カウントを取られはじめたので、ジュンは何とか覆いかぶさったプロレスラーを押しのけようとするが、相手はびくともしない。

このままではマチャアキは潰されてしまうと判断したメンバーたちは、クレーン車を持ち込み、女子プロレスラーを持ち上げてマチャアキを救出する。

その後、メンバーたちは港北刑務所内に侵入する。

囚人たちが、お前ら新入りか?と聞いてくる中、留置場の真ん中の通路を緊張しながら歩いていたマチャアキは、牢の中に自分そっくりな囚人を見つけ仰天する。

その後、メンバーたちは、「X13」と書かれた部屋に入って行く。

そこには、十三階段の絞首刑台があった。

先頭を歩いていたジュンはそのまま十三階段を登り、そこに吊り下がっていた縛り首のロープに首を突っ込むと、床が落ちてしまう。

その頃、健は自分の部屋のベッドに腰掛け、1人寂しそうにギターを弾いていた。

一軒隣のチノは、そのギターの曲に合わせハミングをする。

その声に気づいた健は、窓からチノの姿を見つめるが、見つめ返したちのは、意気地なし!と悔しそうに言い、持っていたぬいぐるみを床に叩き付ける。

健の方も、自分のふがいなさを自覚しているのか、意気地なしと呟いて、同じように、持っていた犬のぬいぐるみを床に捨てる。

浩治や英介たちは、横浜からやって来ている連中って今どの辺に来てるんだろう?と運送屋のトラックの運転台で考えていた。

ずっと、スパイダースの面々を待ち受けていたのだった。

そこにスパイダースの7人が近づいて来て、トラックの荷台に全員乗ったので、今だ!と叫んでトラックを走らせる。

しかし、すぐに京王線の踏切で遮断機に阻まれ、トラックを停めざるを得なくなったので、その隙に荷台のスパイダースは降りてしまう。

その後、スパイダースの面々は、大きなレンガ立ての大学のような建物に進路を阻まれる。

一旦は壁をよじ登ろうとするが、マチャアキが、壁のレンガの一つが動くことに気づき、思い切って引き抜いてみると、建物全体が崩壊してしまう。

その後を突き進む7人だったが、立つ鳥後を濁さず!パーッ!と言いながら、マチャアキが指を動かすと、壊れた建物が魔法のように又復元してしまう。

三上は、売り込んだ企画で「アフタヌーンショー」と言うテレビ番組に出演していた。

司会者(島村謙三)が、一昨日から横浜を出発した若者グループが、世田谷に向かって一直線に進んでいると解説し、この行為に何か意味があるんでしょうか?と振ると、解説者として呼ばれていた三上教授は、もっともらしい説明を始める。

その放送をテレビで観た雑誌社の編集長は、ネタを盗まれたことに気づき悔しがる。

テレビ画面でとうとうと自説を展開する三上。

その頃、健は自分の名を呼びかけるチノの声に気づき、窓から身を乗り出すと、今なら良いわよ!教授はテレビ!とチノが言うので、やったるで!と意気込んだ健は、二階の窓から塀越しに三上家の敷地に降り立つと、アルミサッシを開け、部屋の中に侵入しようとする。

その時、突然、防犯ブザーが鳴り出し、近所中から泥棒!と言う叫び声が聞こえて来たので、健は慌てて自分の部屋によじ上る。

一方、スパイダースの面々は、夕焼けの中、土手を進んでいた。(「夕陽が泣いている」がかかっている)

翌日、とある8家族同居の家にいた老婆(武智豊子)は、騒いでいる馬子を叱りつけると、結婚できないでいる孫のヤスオを呼びつけ、やっと分かったよ!この7人が何のためにまっすぐ進んでいるのか!女の子の元へ向かっているんだ!と新聞を見ながら言うと、近くの工事現場に連れて行く。

そして、こんなことでもしないと、うちに嫁の来てはないよ!と言うと、工事現場の平に梯子をかけ、そこを登ってまっすぐ進めと命じる。

突然、とんでもないことを言われたヤスオは躊躇するが、まずは老婆自らが梯子を上り、塀の上でヤスオを待ってやる。

何とかその後に付いて来たヤスオだったが、降りるのはどうやるんだよ?と情けない声を出して聞くので、この梯子を持ち上げて、こっちに立てかければ良いだろうと老婆は教える。

しかし、梯子を持ち上げる途中で、ヤスオは梯子を落としてしまう。

このように、7人の真似をするものが全国で続出し始める。

中には、博多港から出発したものまでいると警察署長は総監に報告する。

そんな中、川崎署内で、カービン銃を持った犯人が女店員を人質と銃砲店に立て篭る事件が発生する。

現場には警官隊が駆けつけ、テレビのレポーターも、ヘルメットをかぶり、近くのビルの屋上から実況を始める。

警察署長と警視総監も現場に到着するが、犯人の銃撃の前では手も足もでない状況だった、

そんな銃弾が飛び交う現場近くのマンホールから、地上に出て来て、銃砲店の方に歩き始めたのがスパイダースの面々だった。

犯人はカービン銃を乱射するが、横並びになって行進して来るスパイダースの面々には当たらなかった。

そんな中、マチャアキ死すともスパイダースは死せず!と叫びながら、マチャアキたちは無謀にも銃砲店に近づく。(「フリフリ」がかかっている)

そのまま店の中に入り込んだメンバーたちは、全員で犯人を取り押さえる。

女店員も無事だったことから、スパイダースの7人は、この功績に免じ、今後逮捕しないと警視総監は確約する。

その夜、健は父親(柳家金語楼)に誘われ、バーに連れて行かれると、父親は、こいつの童貞奪ってやってくれ!とホステスたちを焚き付けたので、ホステスたちは喜び、よってたかって酒や煙草を健に飲ませ始める。

カウンターに1人離れて座った父親は、ホステスたちが全員息子の方に言ってしまったので、俺の童貞はどうなるんだ?とぼやく。

その後も、料亭に連れて行かれ、無理矢理芸者相手に、鼓を叩いてジャンケンし、負けた方がその場で一回りする「おまわりさん」遊びをやらされた健は、すっかり酩酊し、帰りの路上で、付いて来た芸者の顔がチノに見えてしまうようになる。

目に来ちゃったよ!と健が情けない声で訴えると、こっちは頭に来ちゃったよ!と父親は息子のふがいなさに怒る。

そのまま芸者2人を伴い、健と自宅に帰って来た父親は説教を始める。

俺が悲しいのは、君が何一つやり通せないことだ。警察なんか、何度掴まっても良いんだ。俺なんか、これまで十数回掴まったんだ。とことん最後までやり通すんだ!女は自分でかっさらうんだ。ママだって19歳の時さらったんだ。この女も25の時さらったと老芸者の顔を見る父親。

人は俺のことをトンネル屋と言うけれど、俺にはこの腕しかなかったんだ!ママを実家からひっさらい、トンネルを造った。ひたすら掘った。俺は自分の息子がぼーっとした男になるのが耐えられん!チノちゃん好きなら奪え!最後までやり通すんだ!と言い終えた父親は、婆さん!今夜の相手はどっちだ?とママと芸者の2人に聞く。

二階の自室に戻って来た健は、佐渡おけさを口ずさみ始める。

何故に届かぬ我が想いか…と呟いた健は、何を思ったか、下に降りると、父親が昔使っていたシャベルを持ち出す。

その頃、チノの方は、健ちゃん、もう寝たかな…と案じていた。

夜中、就寝していた健の父親は、物音に気づいて起き出すと、台所の床が開いており、中で健がトンネルを掘っていることに気づくと、母さん!掘ってるぞ!と声をかける。

すると、仕度は出来てますよとママは言い、父親が着る穴掘り用の服とヘルメットを差し出す。

トンネル屋の恰好になった父親は、健が掘り始めた穴の中に降りて来ると、自らも率先してシャベルの使い方を伝授し始める。

ママもやって来て、土運びは自分がやると言う。

三上とその妻は、すでに就寝中だったが、時々、床下から物音が響いてくるので、何ごとかと目覚めてしまう。

翌朝、ザ・スパイダースの7人は、あぜ道で寝ている所を、仕事にやって来た地元の農民たちに見つかってしまう。

もうすっかり、7人は有名になっていた。

一方、三上家では、妻が、今日もテレビ局3局の掛け持ちですからしっかりやって下さいと三上教授に檄を飛ばしていた。

三上の方は、夕べはどっかで工事やってたか?などと聞くと、床の下に耳をすます。

その床の下では、一晩中トンネル掘りをして疲れ切っていた健と父親が、穴の中で眠り込んでいたので、その鼾を聞いた三上は、大変だ!ガス漏れしている!と騒ぎ出す。

スパイダースの一行は、線路の上にいた牛を発見、急いでメンバーたちで牛を動かそうとするが、牛は一向に動こうとしない。

マチャアキが線路に耳を当て、機関車が接近していることに気づき、焦り始める。

ジュンとマチャアキは、線路を曲げようとするが曲がるはずもなく、荘こうしている間に機関車が接近、とうとう牛をはね飛ばしてしまう。

ところが、マチャアキたちの上に落ちて来たのは、皿に乗ったビフテキだった。

ムッシュの頭には牛の角が落ちて来て、すっぽりハマってしまう。

彼らは上半身裸になり、その場でビフテキを食べ始めるが、ショウちゃんは、何で俺たちが英雄になったんだ?と不満そうに言い始める。

ただのフーテンやキ○ガイだぜ…

するとマチャアキが、世の中みんなキ○ガイで、俺たちはその上の方のキ○ガイだから英雄なんじゃないか?と言い出す。

あの子のこと、マスコミに言わなければ良かったぜ…とメンバーたちは少し反省する。

その後、記者たちは、双眼鏡で、川を渡って来る7人の様子を目撃していた。

一方、健と父親も、チノの家目指し、トンネルを掘り進めていた。

車道のど真ん中を歩いていたスパイダースのメンバーのため、轢きそうになったタクシーが急停車したりする。

やがて、7人は、とある工場内に侵入して来たので、ガードマンたちが産業スパイだと騒ぎ始める。

工員たちも7人を捕まえようと工場から溢れ出て来る。

そんな中、7人はテレビ製造ラインのベルトコンベアに乗ってしまい、色々電波を当てられたり、プールに落とされたりしながら、カラーテレビとして梱包されてしまう。

その工場から出て来たトラックの荷台から、三つのテレビの箱が路上に落下する。

そこに自転車に乗った警官二人がやって来るが、箱の中からげんこつの手が突き出して来たので、機能の酒がまだ残ってるらしい…とぼやき、2人とも立ち去ってしまう。

やがて、7人がやって来たのはテレビのスタジオだった。

そこでは、赤いミリタリールックを着たスパイダースと、黒いミリタリールックを着たスパイダースが演奏をしており、その前でゴーゴーガールが踊っていた。

そのステージに混じった第三のスパイダースも、「恋のドクター」や「サマー・ガール」を歌い出す。

さらに歩き始めた7人は、自分たちの映画がかかっている映画館の中に入って来る。

客、入ってねえな〜…とマチャアキがぼやき、彼らはまっすぐスクリーンを突き破って前進する。

さらに彼らは、日活スタジオの屋根の上を歩き始めたので、役者やスタッフたちが何ごとかと上を見上げる。

スタジオに来ていた浩治や英介たちも、7人を発見、すぐに健に連絡しろ!と慌て出す。

テキサス牧場と立て札がある夕日の西部劇のセットの中では、カウボーイ役の役者(郷鍈治)が、今日も俺の拳銃が血を呼んでいるぜ…、この夕日と同じ真っ赤な血を…と芝居を始めていた。

そこにのこのこ入り込んで来たのがスパイダースの面々だったので、銃を向けられた7人は慌て、マチャアキが代表して、ガンベルトを腰に巻くと、役者と決闘の相手をすることになる。

両者が撃ち合った結果、ふん!話が違うぜ…、台本には俺の勝ちって書いてあるぜ…と言いながら、役者の方が倒れる。

その時、カットがかかり、マチャアキたちが逃げ出した直後、様子がおかしいことに気づいた監督が、堺はどうした?と聞くと、マチャアキそっくりの役者が、すみません!セットの中で昼寝してしまったんです!と言い訳をしながらセットにやって来る。

チノと浩治たちは、健の家にやって来るが、肝心の健の姿がない。

土を外に運び出して来た母親に会ったので、健は?と聞くと、下でトンネルを掘っているというではないか。

健がチノの家目指していることを知った浩治は、チノに家に戻るように指示する。

その時、近所から、まっすぐの人たちが来ました!と言う住民たちの声が聞こえて来る。

観ると、屋根の上を接近して来るスパイダースの姿が見えた。

英介は、俺たちの力で奴らを絶対通さないようにするんだ!壁だ!と言い、チノの家に向かう。

やがて、スパイダースの面々は、健の家の二階に上って来る。

最初にジュン、続いてマチャアキ、それを部屋で待ち受けていた英介や浩治たちがつかみ掛かり、先に行かせないように阻止する。

そんな中、英介が地下にいる健に知らせに向かう。

健!間もなく奴らチノに合っちゃうぞ!と英介が知らせると、パパ!僕行って来る!と言い残し、健もチノの家に入って行く。

その頃、三上家の居間を通過していたスパイダースの面々は、三上に呼び止められ、三上は、マスコミに売りつけるんだぞと妻に、自分とメンバーたちとの集合写真を写真を撮らせ始める。

自宅の台所に戻って来た健は、母ちゃん!俺やってみせる!と言い残し、居間でまだ写真を撮っていた7人を追い抜き、そのままチホの家に登って行く。

スパイダースの面々もその後を追ってくる中、チノ!と健が呼びかけると、待っていたチノも健ちゃん!と呼び掛け、健の差し出した手を握りしめる。

俺、まっすぐ来たぜ!と健が言うと、俺だって、まっすぐ来たぜ…と不満そうにマチャアキが言う、

片○落ち…とジュンはぼやく。

そこに英介たちが駆けつけて来て、良かったな…と健とチノを祝福する。

そんな中、俺たちここで止めるわけにはいかないぜ…とショウちゃんが言い出し、地球は丸いんだから、このまままっすぐ進めばいつかは横浜に戻れるさなどと言う。

そんなチノの部屋に、床下を突き破り、健の父と母が顔を出す。

浩治は、7人の仲間のために一つやってやろうか?と言うと、チノの部屋にあった楽器を演奏し出す。

チノの家の二階を出て行った7人は、又屋根の上を歩いて遠ざかっていたが、浩治たちヤング&フレッシュが演奏する曲に対し、手を振って答えて来る。

その後、スパイダースの7人は、虹がかかる地平線に向かって歩いて行くのだった。


 

 

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