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白ゆき姫殺人事件

テレビ報道によるマスコミ被害、ネットリンチなどを絡め、今風にアレンジしてあるサスペンス映画なのだが、ネットやテレビを新聞や雑誌に置き換えると、ここで描かれている無責任な大衆の噂や言動と言うのは昔からあったはずで、古くて新しいテーマのようにも見える。

出だしは一見、功を焦った若手の記者などがスタンドプレーで事件を独断捜査し、見事に失敗すると言う、昔からあるパターンの冤罪ものを思わせるが、物語が進むにつれ、女性作家原作らしい、もっと根深い「苛め」や女性同士の付き合いのドロドロ(妬み、そねみ、足の引っ張りあい)と言った普遍的な(?)テーマが根底にあることを匂わせて行く。

「薮の中」のような、人間の証言の危うさも同時に描いて行く。

登場人物が全員頭が悪く、嫌な性格と言うのも珍しい。

通常、この手の作品には、最低、探偵役なり、窮地に陥るヒロインくらいは感情移入できるように描いてあるはずなのだが、ここには、そう言う同情すべき人物が誰1人いない。

そもそもこの作品、構成上、ヒロインどころか、主役が存在しないのだ。

一見、主役らしき人物、ヒロインらしき人物はいるのだが、見終わると、その人物たちも全体の構成要素の一つに過ぎなかったことが分かり、全体を統一する特定の誰かの視点と言うものがない。

視点…、つまり証言者が代わるたびに、登場人物たちの印象がコロコロ変わって見えるのも、特定の人物に感情移入し難い理由の一つだろう。

事件が解決し、一応、冤罪は晴れるのだが、観ている側としては爽快感はない。

冤罪を受けた人物にも同情したくなるような雰囲気が希薄だし、被害者の人柄の真実も描かれていないからだ。

被害者は、殺されてしかるべき嫌な女だったのか?

それとも、実は性格の良い女だったのかさえ判然としない。

何故なら、被害者である彼女だけ、自分に有利な証言をする機会が与えられていないからである。

彼女のキャラクターは、全て他人の口から語られた伝聞ばかり。

被害者のキャラすらはっきりしないのだから、観客は、犯人を憎めば良いのか、同情すべきなのかの判断すらし難い。

犯人の動機が曖昧なのも、被害者の真実の人物像が把握できない理由。

犯人の人物像、被害者の人物像、動機が不鮮明では、ミステリとしては、見終わってもすっきりするはずがない。

冤罪を受けた人物にしても然りで、子供時分から現実逃避の癖がある「困ったちゃん」のようにも見え、本当に可哀想な悲劇のヒロインに見えない辺りが、「苛め問題」の方も単なるミスリードのための一要素に過ぎないのかな?と思ってしまう。

全体としては、現在のネット社会、情報社会が生み出しがちな冤罪を巡る混乱劇…とでも解釈した方が良いのかも知れない。

フーダニット(誰が殺したか?)に関しては、巧妙なミスリードもあり、個人的にも最後まで見抜けなかった。

通常、この手のミステリの映像化では良く知られるパターンがあり、「犯人役は有名役者」と言う法則がある。

犯人は、最後、真相を長々と語る見せ場がある上に、観客の意外性も突かなければいけないので、無名の人ではその効果が得られにくい。

そうした法則に気づいている観客は、途中で意外な役で地味に登場している有名な役者を疑うようになる。

この作品は、その法則を、おそらく意識して捻ってあるのだと思う。

私は見事に引っかかってしまった。

この作品、サスペンスとしても謎解きとしても、従来のイメージとはかなり違った印象になっているので、大成功しているのかどうかの判断がし難い。

そもそも、被害者の会社がどこにあるのかも、最初の内は良く分からなかったりする。

送別会を行っている居酒屋の名前が「築地」を連想するようなネーミングだったりする辺りも錯覚する部分だし、通常、この手の作品では必ず登場するはずの捜査側の事件説明のシーンがないことも分かり難さを倍増している。

終始、誰かの証言(主観)だけを追っている印象なので、事件を客観的に俯瞰するシーンがないからだ。

おそらくはそうした主観中心の描き方も、この作品は意図的なのだと思う。

ミステリ風の書き方で、何となく曖昧模糊とした現在社会の縮図を描いている作品なのかも知れない。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

2014年、松竹+松竹ブロードキャスティング+集英社+ジェイアール東日本企画+ぴあ+博報堂+Gyao!、湊かなえ原作、林民夫脚本、中村義洋監督作品。

夜、ライトに照らされ、地面に横たわった女性の身体には、数多くの刺し傷があり、その女性の身体には何者かの足の影が映っていた。

速報!しぐれ谷で何か事件があったっぽい

しぐれ谷、どこ?

長野にある木々や小川のきれいな国定公園です!

しぐら谷に警察車両、消防やテレビ中継車も!

しぐれ谷の近所に住んでますが、ようやく空が白けたころからかなり騒がしいです…

森の小川の近くで何かが燃えている。

土曜出勤、ゆっくりめに家でたら検問だらけ

どうせ誰か殺されたんじゃねえか?

あそこ昼でも人いないからなぁ…(…と言った、ネット通信の文字が重なる)

そのネット文字が徐々に消えて行き、タイトル

暗転画面から、「長野・国定公園に焼死体」と題された長野、諏訪市のテレビ生中継画面に変わる。

「ようこそ しぐれ谷へ」と書かれた大きな立て看板が経っている。

身元不明の焼死体が、近隣の住民に発見されました!警察の調べに寄りますと、被害者は、全身を10カ所以上を刃物で刺された上に焼かれており…と、女性レポーターが現場から伝えている。

そのニュースを伝えるテレビ局のブースは騒然としていた。

そんなブース内で、スマホのニュースで、池袋の満腹軒に醤油ラーメンを喰いに行ったが、わざわざ喰いに行くようなもんじゃなかった…とツイートしている男がいた。

その男赤星雄治(綾野剛)は番組ディレクター山下(小松利昌)にさぼっている所を発見され、来る必要ないだろ!と追い出される。

仕方がないので、映像制作会社「TAG」のビデオ編集室にやって来た赤星は、さらに、東中野の麺屋アニキのラーメンが最悪だったと言うツイートをパソコンに書込んでいた。

同室で編集作業をしていた長谷川(染谷将太)が、そんな赤星に、何故こんなにカメラ揺れてるんですか?とモニターに再生した映像の事を聞いて来る。

手持ちで撮ったの。この男の感情の揺れを表現したくて…と、モニターに再生されていた映像を赤星は解説する。

すると、相手の男は、いらないんじゃないですか?再現フィルムに…と意見を言う。

だよね…と赤星も納得する。

その時、スマホに、狩野里沙子から電話が入る。

何だ、こいつか、寝た振りかますか…と言いながら、イヤホンを耳に付け、パソコンのキーボードは打ちながら、はい…と寝ぼけたように装い返事をする。

もしもし!起きてた?と聞いて来た里沙子(蓮佛美沙子)は、だったら今すぐ起きて、寝てすむような話じゃないの、重大ニュースと言って来る。

何?と気のない返事を赤星がすると、今日、生まれて始めて警察から事情聴取受けちゃったと里沙子は言う。

スピード違反かなにか?と赤星が聞くと、そんなセコい事じゃないし、私自身は何も悪い事はしてませんと里沙子は言う。

知ってるでしょう?しぐれ谷の事件?と里沙子が聞くので、は?と聞き返すと、噓でしょう?何で知らないの?テレビ局で働いているんでしょう?と里沙子は突っ込んで来る。

RED-SRARと言うアカウント名で、しぐれ谷の事件ってなんだって?とパソコンに書込む赤星。

担当が違うから…と言い訳すると、どうせこき使われてるんでしょう?と里沙子が言うので、ディレクターはこき使われないよと赤星は答える。

ディレクターになったの?凄~い!と里沙子は言うが、ツイート画面では、国定公園のしぐれ谷で、遺体発見。前身滅多刺し。それがなにか?と返信がある。

前身滅多刺しの?と赤星が呟くと、ああ、それそれ!と里沙子は答える。

しぐれ谷に住んでるんだっけ?と赤星が聞くと、しぐれ谷は国定公園だから住めないってと里沙子はバカにしたように言って来る。

私が言いたいのはそういう話じゃなくって、知り合いなのよ、被害者は…と言うので、パソコンを持って場所を又移動すると、まじかよ?と赤星は、被害者と知りあい?とパソコンを打ちながら耳をすます。

で、今日、会社に警察の人が来て…、明らかに目つきが違うのよね、あの人たち…、あの視線受けたら、もう金縛り状態…と里沙子は続ける。

それでね、被害者の名前を聞かされたの。三木典子さん、そら、二つ上の先輩でメチャクチャきれいな人がいるってこの前話したでしょう?あの人よ。

ああその人ね?美人だから恨みかったとか?と言いながら、赤星は、特徴その1:年齢は24歳か?被害者の名前は…、これ、公表しちゃヤバいななどとパソコンに打込んでいた。

よしてよ、典子さんはそう言う安っぽい美人じゃないんだから!なんで、典子さんが美人ってだけで、恨み持っていそうな人探すんだろ?ほら、白雪姫とかシンデレラとか…と里沙子が言う間、赤星は、特徴その2:めちゃくちゃきれい。って女の言うきれいはあてにならんからなぁなどとツイートを打っていた。

現実の世界は美人は性格が悪いってすぐ性格を決めつける。それっておかしいと思わない?などと里沙子が続けるので、お前の美人論なんてどうでもいいんだよと赤星は打込む。

典子さんはね、私のパートナーだったのと里沙子が言うので、え?え?と赤星は二度聞き返す。

そう言う意味じゃなくって、教育係。うちの会社ってね、新人は一年間、同じ部署の二つ先輩が仕事のやり方など色々教えてくれるの。それをパートナー制度って言うんだけど、正直最初は凹んだけどね。だって、典子さんと組まされたらさ~…と里沙子は口ごもる。

ああ、そう言うパートナーかと、赤星はツイートに打込む。

(回想)始めて、日の出化粧品の新入社員だった里沙子たちが、パートナーと対面した日、三木典子(菜々緒)が宜しくねと挨拶したので、よろしくお願いしますと里沙子も返事をする。

姫と奴隷の気持ちを毎日味あわせられる訳でしょう?まるで、マリー・アントワネットとその召使いって感じ…、それって、お先真っ暗じゃん。

化粧品の生産ラインを、典子と一緒に見て回る里沙子。

これがうちの看板商品!と典子は完成した「白ゆき」石鹸のパッケージを一つ取り上げ里沙子に見せる。

これであなたも白雪肌!とおどけてみせる典子

でも一週間も経たないうちに、典子さんで良かったって思うようになった。

全く、何考えてるんだぁ!今度の新人は!と里沙子が課長(芦川誠)から怒鳴られていたとき、課長!怒るなら私を怒って下さい!この子が何したって言うんですか!と助け舟を出してくれたのが典子だった。

美人だけじゃないのよ、典子さんって…、本当にステキな人だった。

典子と一緒にレストランで食事をする里沙子。

(回想明け)本当にステキな人だった。おしゃれな店にも良く連れていてくれてごちそうしてくれたし、プレゼントなんてしょっちゅうくれたの。今鳴っているCDも典子さんがくれた奴なんだ。芹沢ブラザーズって言うんだけど…と言いながら、いきなり里沙子はCDにスマホを近づけて音楽を聴かして来たので、赤星はイヤホンを外して、被害者は化粧品会社社員。「これであなたも白雪肌」のCMの白ゆき石鹸のところとツイートに打込む。

で、警察は何て言ったの?と音楽の話を続けようとする里沙子の言葉にかぶせるように赤星は聞く。

典子さんの死亡推定時刻は、先週の金曜日の夜だって。そん所日、私たちの部署は送別会をやってたの…、真山さんって言う先輩の…と里沙子は言う。

(回想)「海鮮問屋 つきちや」と言う店を出る女子社員たち。

で、典子さんは、ちょっと熱っぽいからって、一次会で帰ったの。

死亡推定時刻は金曜の夜

被害者は部署の飲み会で、一次会で帰宅…と赤星はツイートに打つ。

(回想明け)なに、これ?あの事件の?とケロッパと言うアカウントの返信が入る。

すげぇ。今日はラーメンネタじゃないんだね…と言うKATURA名の返信。

でも、その後家には帰ってないみたいなの…と里沙子の声が聞こえて来る。

赤星は、ネット上で話題になり始めたので、ちょっとにんまりする。

脱グルメレポート宣言、してーよと得意げに打つ赤星。

で、次の朝…、発見されたの、黒こげで…と里沙子の声

ね、この話、ツイッターに呟いたり、ブログに書いたりしたらだめだからねと里沙子が突然言って来る。

え、何それ?と赤星はごまかす。

そんな無責任に扱うような事件じゃないんだから!と里沙子は言うが、今さらつぶやくなって、おせーよ!と赤星は打ちながらも、分かってるよと返事をする。

それで、里沙子、犯人の目星付いてんの?と赤星が聞くと、それでね…と里沙子は言うので、え?と聞きながら、俺にもチャンスがまわってきたか…と赤星はツイートする。

赤星はその後、バスで里沙子のマンションに行く事にする。

車中で、事件の報道をスマホで確認する赤星。

被害者の名前と顔、公表されていたな(ケロッパ)

超美人!(Hikiji Kumiko)

しら雪石鹸の社員ってことは、黒焦げしたいの正体は白ゆき姫ってことか?(ケロッパ)

白ゆき石鹸使ってる!なんかショック、(peko)

白ゆき姫はお城の舞踏会に行くところだったんですかねぇ。(ケロッパ)

そりゃ、シンデレラだろ。(平岩えーすけ)

これは、言ってみれば、「白ゆき姫殺人事件」だな(RED_STAR)

ツイートで返信があった後、赤星は里沙子のマンションの部屋でカメラを向けたので、え?撮るの?と里沙子は警戒するが、大丈夫、首からしたしか撮らないから…などと言いながらも、しっかり顔もカメラに入っていた。

使うときは、ちゃんと許可取るから…と赤星は弁解する。

で、犯人と言うのは?と赤星が聞くと、みっちゃんがね、城野さんが犯人じゃないかって言うのよ…、この人、城野美姫さん(井上真央)…と写真を見せる。

何て言うか…、素朴な顔をした人…と里沙子が言うので、うん、地味だね…と赤星も答える。

で、城野さんは典子さんと同期で、みっちゃんのパートナーなんだけど…と里沙子が続けるので、ちょっと待って!みっちゃんって誰?て言うか、みんなみっちゃんだよね?と赤星は確認する。

あ、そうか…と気づいた里沙子は、みっちゃんは私の動機で満島栄美(小野恵令奈)と、集合写真に写っているみっちゃんを教える。

で、典子さんの名字の三木は…と里沙子は書いてみせ、城野さんは美しいお姫様…と書くの…と書いてみせる。

それは、三木典子の方が、美しい城の中のお姫様ってことか…と赤星は指摘する。(パートナーとの面会の日、城野は三木の隣で立上がって挨拶する)

同期入社の相手は典子さんだと、何かにつけ比べられて嫌だったろうな~と里沙子も同情する。

あ、お客様が来た時、課長なんかさ…と里沙子は思い出す。

(城野さん、お茶入れて!典子さん、お客さんにお出しして!などと課長は言う回想)最初から典子さんに頼めって!と里沙子は突っ込む。

あ、それから、みっちゃんが言うには、城野さん、篠山聡史(金子ノブアキ)係長と付き合ってたらしいのよと里沙子は言う。(食堂の近くのテーブルで弁当を食べ、互いに目で合図しあう美姫と篠山の回想)

その後、すぐに2人は別れたの。(そんな二人の間を通り過ぎ、茶を入れて篠山に手渡す典子の回想)

原因は典子さんで、つまり城野さんは付き合っていた人を典子さんに取られたって訳…、ものすごい顔で睨んでいるのを見たんだって…、みっちゃんが…と里沙子

動機は嫉妬?と赤星が聞くと、表面上はそう言う事見せない人なんだけどね、城野さんって…と里沙子

私も間が悪くてさ~、城野さんが大事にしていたマグカップ、割っちゃって…、カップに付いていた「S」って篠山係長の「S」だと思う。下の名前も聡史だし…と里沙子は、その時のことを思い出しながら言う。

その時の城野さんの顔と言ったら…、そう言う押さえていたものが爆発しちゃったんだと思う…と里沙子は言う。

あの事件の夜…、部署の送別会。もちろん城野さんの参加してたの…

(回想)里沙子の隣の席で、典子が咳き込んでいたので、大丈夫ですか?と声をかけると、なんか熱っぽくて…と典子は言う。

良いのよ、無理しなくて…と、後のテーブル席にいた真山(宮地真緒)から声をかけられるが、いや、真山さんにはお世話になりましたから…と典子は恐縮して返事をする。

典子さんらしいですね、そう言う所って…と里沙子が感心すると、そう言うことを言ってくれるのは里沙ちゃんだけよと典子は笑う。

1人、別のテーブルで食べていた美姫は、何か香辛料の瓶を取ろうとして蓋を落とす。

一次会が終わり、居酒屋を出た所で、典子は真山に、じゃあ、私はこれで…、本当にお世話になりましたと挨拶する。

真山は、あなたに会えて良かったわと答える。

私もです、じゃあ!と会釈をして、典子は1人先に帰って行く。

その直後、美姫も、私もこれで…と真山に挨拶し、先に帰る。

もうちょっとお礼とか言ったらどうなんですかね?城野さん、真山さんのパートナーだったんだから…、一番お世話になっているのに…と、里沙子と一緒に側にいたみっちゃんこと満島栄美が真山に言う。

そう言う子なのよ、あの子は…と真山は、帰って行く美姫の後ろ姿を観ながら言う。

歩いていた典子にクラクションを鳴らして追いついた車を運転していたのは美姫で、送って行くよと声をかけて来たので、典子はにっこり微笑む。

典子さんが城野さんの車に乗り込むのを見たって言うの…と里沙子が言うので、マジで!と赤星は驚く。

森の中に車で来た美姫は、助手席でいつの間にか寝入っていた典子の横で、ナイフを取り出す。

(回想明け)ちょっと待って!それ想像だよね、途中から…と言うか、何で三木典子は寝ちゃっている訳?と赤星が聞き返す。

睡眠薬か何か?と里沙子は自分で想像した内容をさらに想像で捕捉するので、何かって、いつ飲ませるの?と赤星は呟く。

で、その後、城野さん、駅に駆け込む所を会社の人に見られているの。東京行きの特急に乗ったみたい…と里沙子が言うので、赤星は感心とする。

城野さんの車が駅前のコインパーキングに停められていたのが見つかっているの。

その日から、城野さん会社を今日まで休んでいるの。

お母さんが危篤だって電話があったらしいんだけど、それ、噓だったみたいなんだよね。連絡も全然取れないし…、行方が分からなくなってるの…と里沙子は言う。

それを聞いていた赤星も、やってるね…とつい言ってしまう。

う~ん…、どうかな~…と、今度は里沙子が首をひねる。

でも、本当に城野さんが犯人だったら良いのに…と里沙子が言うので、え?と赤星が驚くと、いや、ストーカーみたいに得体の知れない男が犯人だったら恐くて…、外も歩けないし、夜も眠れないもの…と里沙子は言う。

それだけじゃないの、みっちゃんが言うにはね…と又、里沙子が続けるので、みっちゃん、凄いね…と赤星は苦笑する。

会社で色々盗難事件があって、それ盗んだのも城野さんじゃないかって言うんだけど…と里沙子

里沙子の元カレなんですよね…と、その後、カメラを持って赤星がレストランで会ったみっちゃんこと満島栄美は聞いて来る。

はあ?と赤星が笑い出したので、あれ?違うんですか?とみっちゃんは驚く。

里沙子って、いつも男の話となると赤星さんの事なんですよね…、今も好きなんじゃないのかな?赤星さん、どうなんですか?とみっちゃんは聞いて来るので、質問攻めだねと赤星はたじたじになる。

何ですか、それ?又里沙子が言ってました?ゴシップ好きの情報屋とか…?とみっちゃんは気にした様子。

困るんですよね、会社でも噂が広がると、出所は私って…、迷惑ですよ、こう見えても、口堅いんですからね、私…とみっちゃんは迷惑そうに言う。

城野美姫さんに付いて聞きたいんだけど?と赤星が切り出すと、犯人です!間違いありません!とみっちゃんは断定する。

(よろしくお願いしますとパートナー対面の時挨拶する美姫の回想)城野さんって特徴がないんですよね…とみっちゃんは言い出す。

特徴がないのが特徴って言うか…

係長さんと付き合ってたんでしょう?と赤星が聞くと、ええ、私、見ちゃったんですよ。係長のお弁当と城野さんのお弁当!同じだったんですとみっちゃん。(食堂での回想シーン)

(回想)どっちから告白したんですか?何がきっかけだったんですか?教えて下さいよ!私も好きな人いるんですよね~と、給湯室にいた美姫に甘えたようにしつこく聞くみっちゃん。

すると美姫は、胃袋を掴んでみたらどうかな?まずは三日間…と言い出す。

私が見るに、係長と典子さんは付き合ってないと思いますけどね…。係長の一方的な想いと言うか…(廊下の隅で典子に言いよる係長を、迷惑気に振り払って去る典子の回想)

でも、その頃から城野さん、変わり始めたんです…

はあ、典子さんには敵わないわ…と、給湯室で洗い物をしながらため息をつく美姫

(回想明け)恋人を取られたくらいで、滅多刺しにして火まで付けますか?と赤星に聞いて来るみっちゃん

まあ、つけないよね…、普通は…と答える赤星。

普通じゃないんです、城野さんは…

あれは去年の夏、うちの課の恒例行事で、しぐれ谷にバーベキューに行った時の事なんです…

(回想)美姫の運転する車の助手席にはみっちゃん

けど、私と城野さんは実行委員で…、荷物を積んで先乗りしてたんですよ…

前をのろのろ走る3台の車にクラクションを鳴らした美姫は、いきなり反対車線に出て3台をごぼう抜きにして行く。

捕まっちゃいますよ!とみっちゃんが怯えると、大丈夫よ、取締してる所、ちゃんと知ってるから…と美姫は笑う。

(回想明け)してやったりみたいな顔して、にやりって…、あの時の顔っていったら普通じゃなくって…

(回想)誰か、典子さんのボールペン知りませんか?と部署で周囲の人たちに聞くみっちゃん。

ああ、例の盗難事件…と聞く赤星

(回想明け)典子さんのボールペンが盗まれたんですよ、何か5000円くらいする奴で…、典子さんがファンだったマイナーなバイオリニストのグッズなんですけど…とみっちゃんが言うので、芹沢ファミリー!と赤星が答えると、芹沢ブラザーズです!と残念そうにみっちゃんが訂正する。

でも、すっご~い!やっぱりテレビ局の人って知ってるんですね!とみっちゃんが感心していたので、赤星は、里沙子に聞いたことを言わず、ああ…と鷹揚に頷く。

(回想)城野さん、その時もにやりって…、それが事件の前日なんです…とみっちゃんは言う。

送別会の日、咳き込んでいる典子に気づいたみっちゃんが、大丈夫ですか?と聞くと、大丈夫です。真山さんにはお世話になりましたから…と典子は答える。

みっちゃんは、里沙子の後の真山と同じテーブルに座っていた。

典子さんらしいですよね、そう言う所って…とみっちゃんが感心すると、そう言ってくれるのはみっちゃんだけと典子は答える。

1人、別のテーブルで食べていた美姫は、何か香辛料の瓶を取ろうとして蓋を落とす。

1人先に帰っていた典子にクラクションを鳴らし、横に寄って来る美姫の車。

送ってくよ!と美姫が声をかけると、大丈夫、歩いて帰るからと典子は答える。

すると、ボールペン!と美姫が突然言う。

典子が立ち止まると、返さなくっちゃと思って…と美姫は言う。

え?と戸惑う典子。

典子さん、車に乗せるためにボールペン盗んだんですよ…とみっちゃんの推理。

で、そのボールペンを盗むために、それまで色々なものを盗み続けた…(車に乗り込む典子とにやりとわらう美姫の回想)

(回想明け)これは綿密に練られた殺人計画なんです…とみっちゃんは探偵のように言う。

続いて赤星が会ったのは篠山係長だった。

篠山は、カメラをセッティングしようとしていた赤星に、撮るなや!と命じる。

ですよね、すいません!と赤星は素直にカメラを横に置く振りをするが、ちゃんとカメラは篠山の方を狙ってまわっていた。

うちの女子社員に色々聞いたみたいだけど、あいつらの言う事あんまり信用しない方が良いぞ。妄想とか噂話がいつの間にか本当の話になってるからよ…と篠山はため口で忠告して来る。

城野美姫さんとは付き合ってたんですよね?と赤星が聞くと、付き合ってねえよ。付き合ってる訳ねえだろ!と篠山は即答する。

去年の秋に、白ゆき石鹸が大ヒットしてさ。その前は「はごろも」って名前だったんだけど、正直、名前を変えただけなんだ。

それが、寝る間もないくらいの忙しさだよ。

会社に泊まり込む事もしょっちゅうでさ…

(回想)椅子を立上がって、夜、背伸びをしていた篠山は、椅子に座ろうとして転んでしまう。

同じく残業していた美姫が、大丈夫ですか?と言いながら近寄ってきたので、栄養不足かな…とぼやきながら篠山は身体を起こす。

すると、明日、お弁当でも作ってきましょうか?と美姫がおずおずと言い出す。

いいよ、そんな申し訳ないよと篠山が遠慮すると、実家から野菜が一杯送って来て処分するんで困っているんで…、食べてもらえると助かるんですと美姫は言う。

しかし、翌日、美姫が持ってきた弁当を開けてみた篠山は、恋人かよ…と思わず呟く。

それほど可愛く作られていたからだ。

それでも、美姫は、栄養付けなくちゃと思って…と、2人きりになった時言うので、じゃあせめて、材料代だけでも…と篠山が申し出ると、いえ、お金もらったら、ちゃんとしたもの作らなきゃってプレッシャーになりますからと美姫は断る。

え?と戸惑う篠山に、明日も作ってきますと美姫は笑う。

翌日、開いた弁当はさらに豪勢になっていたので、戻んなくちゃ、戻んなくちゃ…と篠山は焦る。

休みの日、アパートに戻って来た篠山は、郵便受けの中に「篠山さんへ 体調はどうですか?休日も栄養のある食事を取って下さいね。 城野」とメモ書きが付いた紙袋に入った弁当が入っていた。

篠山は、恐え…と呟く。

買い物に行くついでに寄らせてもらったんです…、その後、外に美姫を呼びだした篠山に美姫はそう弁解する。

ご迷惑でしたね?と言うので、いえ、俺…、彼女が出来てさ…、だからもう弁当は…と篠山は言い出す。

そうですか…、分かりました。これでもう係長の身体の心配しなくて良くなってほっとしましたと美姫は言い、帰りかけるが、急に立ち止まって振り返ると、彼女って典子さんですか?と美姫が聞いて来る。

篠山が、ああ…とごまかすと、だと思いました…と美姫は笑い、去って行く。

(回想明け)なるほど、そうやって嘘をついて…と赤星が聞くと、噓じゃねえよ!付き合ってたんだよ、典子と!向うから誘ってきたんだぜと篠山はいら立ったように言う。

まあ、三ヶ月もしないで別れたけどな…と篠山は言う。

他に好きな人が出来たなんて、良くある結果でよ…、分かんねえだろな?典子みたいなあんな良い女と付き合う気分がさ…と篠山は自慢たらしく言う。

小沢文晃(草野イニ)の証言

金曜の夜、城野さん見かけたの、あそこですと、カメラの前の小沢は駅の方を指差す。

一次会が終わったの、8時頃ですよね?とカメラを廻しながら赤星が聞くと、JR茅野駅の方に歩きながら、小沢ははいと答える。

で、城野さんをここで見たのは9時でしたと小沢は言う。

一次会で課長にさんざん飲まされて、タクシーで帰ろうとここで待ってたんですよ。でも全然来なくて…

(回想)金曜日の夜、駅前の煙草の吸い殻入れの前でタバコを吸う小沢

その時、大きなカバンを抱え、走って来る美姫の姿を目撃する小沢

猛ダッシュでしたよ、抱えた大きいカバンがラグビーボールに見えたくらいに…と小沢

(回想明け)カメラで小沢の様子を撮影していた赤星は、当夜、階段を猛ダッシュして登る美姫の姿を想像する。

その後、「芹沢ブラザーズ」をパソコンの動画サイトで検索してみる赤星

画面には、バイオリンを弾く若いミュージシャンの姿が映し出される。

海鮮問屋「つきぢや」の前に車でやって来た赤星は、車内で、続報!被害者は芹沢ブラザーズのファンとツイートすると、すぐに、

誰、それ?(show-wa)

え、それって、雅也が突き落とされた事件と関係あるんですか?(MARURIN)

雅也?誰それ?(show-wa)

芹沢ブラザーズの雅也です。誰かに階段から突き落とされて、手を怪我したんです。(MARURIN)

手だけじゃありません。全身大怪我です。(PIANO-HIME)

赤星の車はしぐれ谷に到着する。

しぐれ谷in!(RED_STAR)

お、現地レポートか(KATSURA)

今さら現場行っても何もねえんじゃないか?(ふくっと)

雅也は今、手のケガのせいで、ミュージシャン生命が絶たれてしまうかもしれないという苦境の事態に立たされています。一刻も早い復活を心から祈りましょう。(PIANO-HIME)

町からしぐれ谷までは、車で約30分。土地勘があれば、もっと早く来れるんじゃないかな?(RED_STAR)

木の間に張られた規制線の名残のテープを潜り、道の奥へと進む赤星。

時間帯が違うだろ…犯行は夜だぞ。(KATSURA)

オレだったら20分切る自信あり(kamui)

山道ってそんなに飛ばせる?(peko)

そして、容疑者Sが浮上!容疑者は被害者と正反対の地味な女。動機は恋人を取られた。犯人はこいつで間違いないと見た(RED_STAR)

こんなところでつぶやいてないで、警察に通報したらどうなんだ?(HARUGOBAN)…と言う返信があったんで、思わずスマホ画面を見入る赤星

カワセミか?(RED_STAR)何かの泣き声に、人気のない山道で思わず振り返る赤星

やがて、赤星は、ロープが張られた中央に花束がまとめておかれている現場らしき場所に行き当たる。

地面と側の木の幹まで焼け焦げた跡が残っており、それをカメラに収める赤星

付近の木にも燃えた跡あり。悲惨だなこれは…(RED_STAR)

赤星は、車の助手席から外へ転がるように逃げ出した典子を、運転席からナイフを持って降りてきた美姫が追って来る現場の様子を想像する。

(想像)追いすがった捕まえた典子の背中をナイフで突き刺す美姫は、苦しい息の中で、何で…?と問いかける。

あなたさえいなければ…幸せだったはずなのに…、いなければ!と言いながら、両手でナイフを握りしめた美姫は、何度も典子の腹を突く。

仰向けに息絶えた典子の身体に、灯油を振りかける美姫は、鏡よ鏡!白ゆき姫はもういない…と言いながらマッチを擦る。

近くの小川の川面に炎が写る。

(想像明け)今、この事件の核心に近づいているのは、世界中で、俺、1人!(RED_STAR)

薄暗くなってきた森の中でツイッターを打つ赤星。

とある家の中でキーボードを素早く打つ指先。

そこで立ち止まれ。お前はこれ以上、この件に関わるな。呪い殺すぞ…とツイートする

今月12日、長野県の名勝しぐれ谷で起こったOL殺人事件、遺体は全身の十数カ所を刃物で刺された上、焼かれた!

「カべミミ!!」と言うテレビのワイドショーで、ナレーターが事件を説明している。

被害者は、化粧品会社に勤める三木典子さん24歳。

会社の人気看板商品「白ゆき」を象徴するような誰もが認める美しい女性だった。

事件発生から既に一週間が経っているが、捜査は依然何の進展も見せていない。

しかし、我々が現地で取材を進めて行くと、事件の三ヶ月ほど前から、車内では不可解な盗難事件が相次いでいた事が分かった。

一番最初は、給湯室の冷蔵庫に入れてあったイチゴとメロンとクリが乗ったケーキだったんだけど(典子さんの後輩社員とテロップで、ぼやた里沙子の映像が流れる)

誕生会を欠席したひとのために残しておいたら、次の日、クリだけが残されていて…(と音声を変えた里沙子の証言)

それを皮切りに、冷蔵庫のデザートだけでなく、ロッカーの生理用品や机の中の事務用品、はては会社の看板商品である「白ゆき」石鹸までもが盗まれた。

そうした中、典子さんもやっぱり被害に遭っていた(とナレーション)

典子さんのボールペンが盗まれたんです。5000円くらいするやつで(典子さんの後輩社員のテロップと共に、顔の部分だけがぼやかされたみっちゃんの証言ビデオ)

この盗難事件も又、典子さんに恨みを持つものの犯行であると言う噂が、車内ではまことしやかに囁かれていると言う。(とナレーション)

押さえていたものが爆発しちゃったんだと思う(ぼかした里沙子の姿と声を変えた音声ビデオ)

Sさんが犯人じゃないかって…(音声上はピー御出来たされているが、画面上はSと言う文字に変換されたテロップと共にぼやた里沙子ビデオ)

「Sさん」(テロップ)

ここで、ある女性の存在が浮かび上がってきた。(とナレーション)

典子さんの同僚OL「Sさん」…

素朴な顔をした人(里沙子の証言ビデオ)

特徴がないんですよね(みっちゃんの証言ビデオ)

美貌の典子さんと、特徴と言う特徴がない地味な印象の「Sさん」、職場では上司から差別的な扱いも受けていたと言う。(とナレーション)

(典子さんと)何かにつけて比べられて嫌だったろうな…、お客さんが来た時、「Sさん」にお茶淹れさせて、典子さんに運ばせたり…(テロップと里沙子の証言ビデオ)

かと言って、決して不仲だったと言う訳ではなかった二人だが…、その関係は今年の春頃を境に一変する。(とナレーション)

その数ヶ月前から、社内の男性と交際をしていたと言う「Sさん」だが…

典子さんに、つき合っていた人をとられちゃったっていうわけ(テロップと里沙子の証言ビデオ)

「典子さんに彼氏を奪われた」(テロップ)

料理上手な「Sさん」は、この男性のために毎日弁当を作っていたと言う。(とナレーション)

しかし、実際にこの男性に話を聞くと、奇妙な食い違いが生じた。(顔をぼかした篠山の盗み撮りビデオ)

確かに弁当はもらったよ、でも付き合ってた覚えはない…

勘弁して欲しかったんだよ、全くいい迷惑だったんだよな…

付き合っていると思っていたのは「Sさん」だけのなのかもしれない。男性はその後、典子さんと交際を始める。(とナレーション)

その頃の典子さんの様子を後輩社員はこう語った(みっちゃんの証言ビデオ)

「典子さんにはかなわないわ」(テロップ)

なお、事件当夜、典子さんがこの「Sさん」の車に乗り込む所を会社に出入りする業者が目撃していた。(とナレーション)

又、典子さんの死亡推定時刻の直後、「Sさん」が駅に駆け込むのを、同僚の男性に目撃されている。(とナレーション)

猛ダッシュでしたよ、抱えていた大きな鞄がラグビーボールに見えたくらいでした…(声をかけ、顔をぼかされた小沢の証言ビデオ)

「Sさん」はどこに行ったのか?「Sさん」は母が危篤だと噓をついて会社を休んでおり、その後、消息は掴めていない。(とナレーション)

平塚さん、これ使ってますか?と「カベミミッ!」男性司会者水谷(生瀬勝久)が女性アナウンサー平塚(朝倉あき)に、「白ゆき石鹸」を手に質問する。

この「白ゆき石鹸」のOLさんが殺害された事件なんで、ネットでは「白ゆき姫殺人事件」なんて言われているんですが、何と被害者のファンサイトまで立上がっているみたいなんですね…と、女性レポーター味沢(増岡裕子)が説明に入る。

盗難事件と言うのは、「Sさん」がふられた直後から起こっている訳?と、文字で事件経過を書いたフリップを前に水谷が質問する。

でも、まだ今回の事件と関係があるかどうかは…と味沢が答えると、被害者の女性だけが高価なものを取られてるんですよね?とコメンテーターの河合(木下政治)が指摘する。

そうなんですよね、典子さんがファンだった音楽家のグッズで、なかなか手に入らないものなんですと味沢が説明する。

怨恨と言う先もある訳ですよね?と水谷が振ると、まだそうと決まった訳では…と味沢は否定する。

これ、例えばの話なんですが、8時過ぎに被害者を乗せて車で犯行現場まで行って、滅多刺しにして火つけて、で、例えば、9時10分の特急?ありますよね?そこに間に合うかどうか…、これ、秋山さん可能性は?と水谷が、元警視庁捜査一課長秋山英明(山崎満)に振る。

私は土地勘がないんで…と秋山が迷っているので、ブースから見ていた赤星が可能とADに指摘すると、可能でしょうねと秋山も発言する。

「Sさん」が犯人と決まっている訳ではない…、それが前提としてね…と平塚と水谷がフォローを入れ、現在、この「Sさん」が何らかの情報を持っているのではないかと言う事で、警察も彼女の行方を追っていると言う状況ですと味沢がまとめる。

早く、出る所へ出て欲しいですねと秋山が言い、絶対、何か知ってますからねと水谷が言い、CMに入る。

ブースでは、山下やテレビ局員(飯田基祐)らスタッフたちが赤星に握手を求めて来る。

俺が取材して作ったニュースが大好評!(RED_STAR)

グルメレポート以外もいけるじゃん^^(KATSURA)

おまえ、テレビ局の人間だったのか?(HARUGOBAN)

再現映像がこってたよな。カメラが、心情を表すように、揺れてたし。(ケロッパ)

見ました!他の番組にない情報満載でしたね 今後のうp期待してます!!(Hikiji Kumiko)

クソ!見逃した!!今日のニュースウpキボンヌ!!(MEDACA)

さすがっすね。もしかしたらもう、白ゆき姫を殺した犯人の行方が分かったりします?(ふくっと)

…続々とツイートが入って来る。

スクープ大成功で、キャバレーで山下たちとホステスに囲まれ上機嫌の赤星

どういうこと?使う時は許可取るって言ってたでしょう?それにあれじゃ、うちの会社の人、全員が城野さんを犯人だと決めつけてるみたいじゃない(SACO)と里沙子からのクレームが早速入る。

名前、出しちゃっていいの?(RED_STAR)と赤星は返事をする。

みんな知ってることでしょ。問題をすりかえないで。今日なんて、会社は大変だったんだからね!どうしてくれんのよ!(SACO)

うぜぇ(RED_STAR)と呟き、赤星はスマホを消すと、又飲み始める。

SACOさん、名前はヤバイ…(kaorioc)

なんか、ヤメたほうがいいんじゃない?犯人ってわけじゃないんでしょう…(yurizawa)

やってるでしょ。(ハタピー)

やってないなら、やってないって言うだろう。(kamui)

容疑者の名前は城野か…(MEDACA)

白ゆき石鹸→城野→実名ソッコーゲット!(次郎)

デリカシー無さすぎ(mutton_de_wolf)

実名ゲットtoo!頭文字はM!(大熊)

城野M嬢?(shou-wa)

無神経だな。(平岩えーすけ)

でも。こういうのって大抵やってるよね。(次郎)

エンザイだ。(mutton_de_wolf)

結局理由は痴情のもつれなんでしょ?(yuki_no_ko)

あんな美人に取られたら諦めるけどね。(peko)

男の方にも問題あるんじゃねえか?(Kenji Matsuo)

盛り上がってきましたね~(ふくっと)

酔ってテレビ局の編集室に戻って来た赤星は、ソファに倒れ込む。

パソコンを開くと、城野さんと、名前が出てますが、Sさんの苗字ですか?(NORI-MI)と言う返信が入っていたので、ご想像にお任せしますと返信する。

私は城野さんを良く知るものです。こんなことが許されるのでしょうか?(NORI-MI)

自分のしてることを呪うんだな。もう遠慮はしない。叩き潰してやる。(HARUGOBAN)

それを観た赤星は、むかついたのか、何様?と返信する。

不謹慎だなお前は。(平岩えーすけ)

訴えろ凸(nomizu yoshiyuki)

こいつの名前をさらせ(Kenji Matsuo)

こんなところでつぶやいているバカな奴なんて、テレビ局の人間っていっても、どうせ契約のDQNだろwww(平岩えーすけ)

ゴミだな、適当に仕事しているゴミ…(nomizu yoshiyuki)

徐々にツイートが炎上して来る。

もうなにも教えてやんねえよと腹立ち紛れに返信し、ソファにふて寝する赤星。

あなたがそんな態度なら、名誉毀損で本当に訴えますとツイートした女性は、美姫の友人前谷みのり(谷村美月)だった。

みのりは、中央テレビ「カベミミッ!」係宛に抗議の手紙を書き始める。

私は先日放送されたニュースの中で、容疑者Sさんと断定された城野美姫さんの大学時代の友人です。

城野美姫さんとは大学の女子寮が一緒でした。

女子たちだけの寮での飲み会で、みんなが話している「あれ」と言うのが「セックス」の事だと分からなかった美姫は、結婚前にそんなことしていいんですか?と言い出す。

その日から、城野さんは天然記念物の「天ちゃん」と呼ばれました。

愛読書は「赤毛のアン」

料理が得意で、私たちがアルバイトで遅くなって帰った時は、タッパに入れたお惣菜をポストの中に入れておいてくれた。

(「なでしこ食堂 デリバリーサービス」と貼紙が貼ってある紙袋が個人ポストの中に入れてある回想)

あんなに優しかった天ちゃんがあんな事件を起こすなんて考えられない。

私は今、親友として天ちゃんを守りたい!そう手紙を書いていたみのりは、録画のリモコンスイッチを入れる。

そもそもあのニュースは間違いだらけです。作った人の神経を疑います。

次の日、クリだけが残されてて…と言う狩野里沙子の証言ビデオを確認するみのり。

天チャンはクリが大好きでした。

特に大噓を突いているのはこの人です。(と、篠山の証言ビデオを見ながら)

この人に私は会ったことがあります。篠山さんと言う人ですよね?

去年の冬、私は天ちゃんに会いに行ったんです。

中華料理屋に入った美姫とみのりは、帰りかけていた篠山とばったり出くわす。

好きなんでしょ?告白しちゃえば?と料理を前にみのりが聞くと、私のことなんか好きになってくれるはずないし…と美姫は焼きそばを食べながら答える。

う~ん…、天ちゃんは料理が巧いんだから、胃袋を掴んでみたらどうかな?まずは三日間!とみのりが提案する。

そう私はアドバイスをしました。

付き合ってる!ある晩、美姫から電話をもらったみのりは驚く。

うん、あの時のアドバイスのお陰…と美姫は嬉しそうに電話で言う。

天ちゃんには心から満足している時の天ちゃんスマイルと言うのがあって、その時もきっと、その天ちゃんスマイルをしているに違いないと、微笑ましい気分になりました。

篠山さんは喜んでお弁当を受け取ってくれたと言ってました。(弁当を作る美姫のイメージ)

好きな食べ物は牛肉と茄子。

嫌いな食べ物はししゃもとトマトだとも教えてくれました。

あれも…、したと言ってました。(篠山に抱かれている美姫のイメージ)

彼は足の中指と薬指の間を嘗められるのが好きだと、そんなことまで天ちゃんは電話で教えてくれました。

こんなこと、作り話で思いつきますか?

その後の消息は掴めていない…と言うナレーターの声と共に、録画は終わる。

一番心配なのはこのことです。

肌の荒れ易い私のために、品薄でなかなか手に入り難くなった「白ゆき」石鹸を何度も送ってくれたり、心優しい天ちゃん…

もし何かの間違いで、天ちゃんが人を殺めるようなことをしてしまったとしたら、罪の重さに耐えかねて自殺してしまうかもしれません。

犯罪者でも良い、早く天ちゃんを探し出して下さい、私の元に帰して下さい。私の大切な親友を…とみのりは手紙を書き終える。

それをテレビ局内で読むテレビ局員

何でネットなんかで呟いてるんだ、バカヤロー!調子に乗ってるんじゃねえ!契約切るぞ!と山下が赤星を怒鳴りつけ、赤星と揃って、テレビ局員に平謝りする。

翌日、赤星はバスで長野に向かっていた。

私の親友、城野美姫さんが容疑者として扱われています。テレビ局に抗議の手紙を送りました。(NORI-MI)

T女子大学、環境学部卒の城野美姫さんですか?(USAGISAN)

そうです、そうです。もしかしてあなたもT女子大学の卒業生ですか?(NORI-MI)

N県F高等学校卒の城野美姫さんですか?(USAGISAN)

たぶん、そうだと思いますが、地元の知り合いの方ですか?(NORI-MI)

馬鹿デレィクターの顔(ちこ)ホステスとグラスを持ってカメラに写っている写真付き

K市立A中学校卒の城野美姫さんですか?(USAGISAN)

K市立N小学校卒の城野美姫さんですか?(USAGISAN)

なんか、ちょっと違うんですけど。(NORI-MI)

駅前でタクシーに乗り変え、美姫の高校時代の同級生島田綾(野村佑香)、尾崎真知子(川面千晶)と会う赤星。

真知子は、これってテレビで使われたりするんですか?顔にモザイクがかかって、声が変わっちゃう奴ですか?などとと、ビデオに撮られることを恥ずかしがっているような面白がっているような様子。

城野美姫さんでしたっけ?誰?って感じなんですよねと真知子は言いながら、持参してきた卒業文集を取り出して見せる。

アンケート番外編「犯罪を起こしそうな人ランキング」2位に、城野美姫の名前が書いてあったので、隣から覗き込んだ綾も笑い出す。

「大学生になったらなにかいいことあるかな」と言う美姫直筆の編集後記コメントも載っていた。

大学生になってもな~んもいいことなかったんだろうな…と真知子は言う。

家庭科の調理実習で一緒の班だったんですよ。それこそ、魚の頭の落とし方とか、肉の繊維がこう入ってるから、こう切ればきれいに切れるとか分かってたんだって!と綾が言う。

中学のとき「呪いの城野」って言う風に言われてたんですよ。

サッカーのキャプテンで、メチャクチャ地元で有名になるくらいサッカー巧かった人がいたんですよ。

その人が、中学のクラスなんかで良くある、掃除の時間に雑巾蹴ってサッカーしているとかあるじゃないですか。それでたまたま城野さんの頭に雑巾乗っちゃったんだって。

そしてら、その一週間後に、そのサッカー部だった男の子が交通事故に遭って右足骨折したんですよと綾は言う。

横から車がぼって来たんですよと、次に取材した中学時代の美姫の同級生で、今は不動産会社に勤めている江藤慎吾(大東駿介)は、その時のことを話す。

俺ブレーキ掛けたんですけどブレーキ効かなくて、そのまま車バーンって、俺、足バーンってなって、この辺が曲がってたよ。

大腿骨骨折、全治三か月だよ。

呪いの力って聞いてきたんですか?

そう言うこと言う奴、ちょっと心が汚れてるんじゃないかな?

呪いの力じゃありません。ブレーキが外されてたんですよ。

でも、それ、外したのは城野だと思いますよ。

全身10数カ所刺されてたんでしょう?で、燃やされて…、ねえ?

きっかけは、俺が作っちゃったのかな?って…などと江藤は真顔で言う。

俺が蹴った雑巾が頭の上に乗って…、顔真っ赤っかだったし…、汚されたって思ったんでしょうね。

正直、悔しいっす。

14年前に、あそこにある明神様、木がこんもり森みたいになってる所あるでしょう?あの中に明神様があるんだけどね…、あそこが火事になったのよ…と、次の証言者で、あかねの母親八塚絹子(山下容莉枝)は、その方向を指差して教える。

これは…噂って言うか…、多分本当のことだと思うんだけど、火を点けたのが美姫ちゃん。放火とか、火遊びとか、そう言うことじゃなくてね…、何か…、呪いの儀式だって…

小学校の頃ね、良く夕子ちゃんと美姫ちゃんが2人で、良く呪いの儀式やってたって…、うちの娘から聞いた話なんだけどね~…と絹子は言う。

やった…、呪いの話は本当と、自宅の彼女の部屋で会った谷村夕子(貫地谷しほり)と言う小学校時代の美姫の友達は言う。

人型を切って、針で刺すの…とシューティングゲームをやりながら言う。

最後はそれに火を点けて…、ゲームしねえんなら話しねえぞ、赤星!と言うと、いきなりビデオカメラを横に向ける。

その家は、(HARUGOBAN)の家だった。

その頃、惚れたアンは…と夕子が続けるので、アン?と赤星が聞くと、城野美姫のことさ。アンがそう呼べって言うからさ…と夕子はモニターから目を離さず答える。

アンは、俺のこと、ダイアナって呼んでた…と言いながら、「赤毛のアン」の本を見せる。

子供遊びじゃねえか、俺だって恥ずかしいよ、ツイッターでもあるだろ?大人のくせに変なハンドルネーム付けてる奴が…、ケロッパとかよ…と美姫はぶっきらぼうに言う。

人型作って燃やすの提案したのアンだ。あの呪いの儀式は惚れるためなんだよ。

俺はこの長沢町で一番の美人って言われていたんだ…と夕子は言う。

(回想)小学校に来る小学生時代の夕子(井東紗椰)

何帰ろうとしてるんだ!赤星!話はこれからだ。(と、現在の夕子の声)

でも、あかねって女のせいで、ある日全てが一変した。

その八塚あかね(米山実来)とその取り巻きが、夕子の机の横に来ると、あれ?夕子ちゃんのカタカナの夕って、タと同じ形…とあかねが言い出す。

でもみんなダメだよ、夕子ちゃんのことをタコちゃんて間違えてちゃとわざとらしくあかねが言い出したため、取り巻きたちは喜び、本当だ!タコになる!とはしゃぎ出す。

谷村タコ!

緊張性赤面症ってのもあってな、結局みんなにタコ呼ばわりだ!

男子たちに、体育館の用具室の閉じ込められる夕子。

タコ、タコ、タコ…!信じられるか?クラス全員、担任まではタコって呼びやがる。

でもアンだけは違った。

夕子ちゃん、おはよう!学校行こう!と誘いにきたのは小学生時代の美姫(高橋美来)だった。

(回想明け)この窓から遠くにアンの家が見えるんだ…とカーテンを閉め切った一方の窓の方を見る夕子。

「赤毛のアン」にこういうエピソードがある。

(回想)夜、窓の敷居に蝋燭を置いて、その前に仕切りをぱっと上げたり降ろしたりする。

虐められた夜は、そうやって良くアンが語りかけてきたよ…

私だけは味方だよ。私はここにいるよってな…

人型を聖なる場所で、針を刺したまま燃やしましょう。

「タロットカード神秘の占術 マジカルフェアリー」と言う少女向けの雑誌を読む小学生時代の美姫と夕子。

このとき、決して他の人に観られてはいけません。

これであなたの意地悪をしているクラスメイトは白バラのような純真な心を取り戻し、みんなに優しく接してくれるはずです。

神社で、八塚あかねと名前を書いた人型に針を刺し、マッチで火を点ける美姫と、それを横で見守る夕子。

その後、仲良く手をつないで帰る二人は、大人たちが慌てて森の方へ駈けて行くのに遭遇する。

振り向いた二人は、さっきまでいた森が燃えているのを目撃する。

その夜、いつものように蝋燭に火を点けて美姫と連絡しようとしていた夕子だったが、急に部屋の電気が点き、入ってきた母親(ひがし由貴)が蝋燭の火を吹き消し、もう火遊びはだめでしょう!祠様全部燃えちゃったのよ!もう火はだめ!絶対だめ!と強く言い聞かせる。

夕子は懐中電灯で連絡しようとするが、懐中電灯もだめ!と、その場で母親から取り上げられてしまう。

美姫ちゃんはもうあんたとは遊ばないんだって!と母親が言うので、夕子は驚く。

母親は窓を閉め、カーテンを閉めて出て行くが、以来、アンとは一度も会ってない…と今の夕子が言う。

(回想明け)随分後で聞いたんだけど、アンと俺の両親がどっちが火を点けたかでもめて、結果、互いの子供を金輪際一緒に遊ばせないって決めたんだってよ。

俺はアンが恋しくて、「赤毛のアン」を読み返した。

泣いたよ。ダイアナって言うのは、アンの唯一無二の親友だぜ!

でも俺はダイアナじゃなくてギルバー…と言いかけ、しゃべるのを止めてしまう。

あの~…、呪いの儀式の話なんですけど、燃やした人型って、大体これくらいの大きさ…と赤星が手で大きさを示そうとすると、は~い!と夕子は突然大声を出す。

え?と赤星がたじろぐと、ゲームオーバーだと夕子は言う。

モニターの中の人物が倒れる。

お邪魔しました…とビデオを撮って帰ろうとした赤星に、おい!と呼びかけた夕子は、今の俺の話、全部、本当だと思うか?と聞いて来る。

噓…なんですか?と赤星が戸惑うと、いいか?良く聞け。人の記憶ってのはねつ造される。人は自分の都合の良いようにしか記憶を語らねえ。大切なことを見逃すな…、分かったか!と大きな声で聞いて来る。

そして、赤星を見た夕子は(RED_STAR)!と呼びかけて来る。

次に、赤星は、城野の家に行ってみる。

玄関に出てきた美姫の両親城野光三郎(ダンカン)と皐月(秋野暢子)は明らかに憔悴し切っていた。

美姫は、おとなしい優しい娘です…と皐月が重い口を開く。

反抗期らしいものがなくて、逆に私たちの方がもっと自己主張した方が良いのにって…

明神様の火事のことですか?と皐月は厳しい目で赤星を睨んで来る。

あの火事と人殺しを結びつけられるんだったら、世の中の全員が犯罪予備軍じゃないですか!と皐月は言い出す。

危篤ではありませんよ、私は…、そんな噓は誰だって一度くらい…と皐月が言うと、申し訳ございません!と突如光三郎が土下座して叫ぶ。

どうか…、どうか娘を許してやって下さい!この通りです!と光三郎は床の頭をすりつけて頼む。

お願いです!優しい子なんです!と言う土下座をした光三郎の姿を執拗にビデオに収める赤星。

その時、奥の部屋に、寝込んでいる祖母らしき老女の咳き込む姿が赤星には見えた。

あの子が、そんな事件を起こすはずがないわ…と祖母ハツエ(森康子)は言う。

テレビ局の編集室に戻って来た赤星は、長野で撮ってきたビデオの編集を始める。

その時、ソファに座って作業を見ていた長谷川が、赤星さん、これってみんな、本当のことを言ってるんですかね?と声をかけて来る。

え?と驚いて赤星が振り返ると、何でもないです…と長谷川は言う。

「謎6」Sさんは今、どこにいるのか?(テロップ)

取材班はSさんのその後の足取りを調べるため、Sさんの実家のあるある山村に向かった。(ぼけた車からの風景映像とナレーション)

呪いの力があるって同じ中学の人たちに信じられていて…(「Sさんの高校時代の同級生」と書かれたぼかされた島田彩の証言映像とテロップ)

「呪いの力」(テロップ)

呪いの力とは時代にそぐわない言葉だが、この言葉がSさんを語る上で極めて重要なキーワードになっていく。(ナレーション)

(ある生徒が)掃除の時間にサボって雑巾をサッカーボールに見たてて蹴っていたら(ぼかされた島田彩の証言映像とテロップ)

Sさんの頭の上に雑巾が乗っちゃったんですって…

一週間後、その子は交通事故に遭って大怪我をした(再現映像にナレーション、画面右下には映像を見つめる司会者の顔を映したワイプ)

それを聞いてSさんは…(ナレーション)

笑ってたみたいなんですよね…(ぼかされた島田彩の証言映像とテロップ)

あなどれない(ぼかされた尾崎真知子の証言映像)

将来、Jリーガーも確実視されていた彼は(ぼかされた江藤慎吾の映像にナレーション)

今では不動産関係の仕事につきながら、少年サッカーのコーチをしている。(ナレーション)

正直、責任感じましたね。(ぼかされた江藤慎吾の証言映像)

(Sさんの)心の闇を作ったのは俺なんですよね。

「心の闇」(テロップ)

さらに取材を進めると、Sさんの小学校時代の興味深い話を聞くことが出来た。(ナレーション)

明神様が燃やされたのよ。火事になったのね。(ぼやけた八塚絹子の証言ビデオ)

地元民が神様と崇めている神社で火遊び。

祠を全焼と言うあわや大惨事を引き起こしていたと言う。(ナレーション)

「呪いの儀式」だって…(ぼやけた八塚絹子の証言ビデオ)

「呪いの儀式」(テロップ)

この時一緒に「呪いの儀式」に参加したと言う小学校時代の友人に話を聞くことができた。(ナレーション)

人がたを切って、針で刺して、それに火をつけて…(ぼやけた谷村夕子の証言ビデオ)

人がたに針を刺し、それに火を点ける…(イメージ映像にナレーション)

小れを聞いて奇妙な一致に気づかないだろうか?(ナレーション)

被害者の殺され方が呪いの儀式の話と同じでしょう?…(ぼやけた八塚絹子の証言ビデオ)

取材班は、Sさんのご両親にも話を聞くことができた。(ぼやけた美姫の実家映像にナレーション)

申し訳ございません!どうか…、どうか、娘を許してやって下さい!(ぼやけた両親の映像と、右下には司会者の顔のワイプ)

全ての手掛かりは、行方不明のSさんだけである。(ぼやけた美姫の写真にナレーション)

急にオカルトな方向になっちゃいましたけどね~…と司会の水谷が深刻そうに言う。

殺人の時、そう言う子供時代の記憶が重なってしまった…、そう言う可能性はありますけどね~と秋山が発言。

呪いの記憶がフラッシュバックしちゃったってことですか?と水谷が聞くと、実際そう言う事件がありますしね~と秋山が答える。

それは、本当にッさんが犯行に及んでしまったと言う場合ですよね…と平塚アナがフォローする。

そうした「カベミミッ!」を呆然として観ていたのは美姫だった。

どこかのホテルの中なのか、ぼさぼさ髪でホテルのガウンらしきものを来て、室内には買い置きしているような食べ物の残骸が置かれていた。

その呪いの儀式をやっていたのはいくつの時ですか?11歳の時ですね…などとテレビの中で言っている前で、私は…、私が分からない…と美姫は思っていた。

続いて、住所です。長野県茅野市谷川221-12(imai)

既に、#白ゆき姫殺人事件 #しぐれ谷 #城野美姫…などと言ったハッシュタグで、ツイッターには情報や写真が続々集まっていた。

これが城野美姫と言う人間なのでしょうか?

出来ることならもう1度、あの夜に戻ってやり直したい…、美姫はノートパソコンに書込まれた自分の情報を見て耐えきれず、モニターを閉じる。

私は、私自身について書いて観ようと思います…と、美姫はホテルの便せんを開く。

ここを出るのはそれからでも遅くない。

城野美姫(当事者)

山々に囲まれたありふれた町長沢町…

そこが私の故郷です。(小学生時代の美姫が笑顔で歩いている回想)

小学校の時の友達は谷村夕子ちゃん

長沢町一番の美人でした…

でも、夕子ちゃんは虐められていて、いつも不機嫌そうな顔をしていました。

原因は八塚あかねです。

一緒に体育館にモップを駈けていたあかねとその友達が、あかねちゃんも美人だけど、夕子ちゃんも美人だよねとおしゃべりしていた。

その誰かの一言が全てを変えたのです。(そのグループの側で、1人モップをかけている美姫)

あかねだって変え愛らしい顔をしていました。(体育館の壁の大鏡の前で暗い表情で立ちすくんでいるあかね)

人を貶めて上に立とうとしなければ、あかねはあかねとして褒められていたはずなのに…

そう言う所は三木典子にそっくりだと思います。

6年の時の担任は東山先生(宮本真希)でした。

鈴木太一君(盛永皐月)!と出席を取る東山先生。

はいと手を挙げて、太一が立上がると、あらあら、Hの鉛筆で描いたような太一君ね~と東山先生が言ったので、クラス中は大盛り上がり。

太一君は、高校を卒業し町を出て行くまでH君と呼ばれるようになりました。

次は、城野美姫ちゃん!と呼ばれる。

う~ん…、お城に住む美しいお姫様はどんな子かな?とおどけるように見回す東山先生。

美姫がハイ!と言って立上がると、あらあら、まあまあまあ…と東山先生はちょっと意外だったような顔になったので、クラス中、特に女子たちは嘲笑するようなくすくす笑いを始める。

続いて呼ばれたのは谷村夕子だった。

夕子が立上がると、先生!とあかねが手を上げ、タコって読んであげてとよけいなことを発言する。

それを聞いた東山先生は、それを愛称とでも思ったのか、はい、タコちゃん!宜しくね!と笑顔で夕子に呼びかけたので、クラス中が嘲り笑いの渦になる。

あら、名前だけじゃなく、そっちの意味でもタコちゃんなのね…と、赤くなった夕子を東山先生はからかう。

何でこんな名前なの!と泣きながら帰宅する夕子の後を、私も同じだよ。美しいお姫様なんて…と美姫が言いながら付いて来る。

あかねの奴、わざと先生に教えるなんて…と夕子は悔しがる。

泣かないで、夕子ちゃん!そう言う辛い時はね…と、夕子の前に立ちふさがり言い聞かす美姫。

赤毛のアンのように…

そう言う辛い時は、想像の世界に入るのです。(周囲の風景が絵本のような世界に変化する)

私たちは想像の世界に色んな名前をつけました。

友情の小道。

妖精の眠る山

コンコン通りに、星クズの湖…

ね、想像すれば嫌なことが消えるでしょう?ダイアナ…と美姫は夕子に言う。

夕子は、アン、その呼び名、恥ずかしいよと答える。

周囲の風景が元の現実に戻る。

ううん、これから2人の時はダイアナって呼ぶと笑顔で美姫は言う。

ここよ、ここにいるからね、ダイアナ…と、自宅の窓辺の蝋燭の前に覆いを上下させ、合図を送る美姫。

八塚 あかねと名前を書いた紙の人型に神社で火を点ける。

大人になってもずっとそうなのかな?あかねみたいな女がいつも得をするのかな?と呟く夕子。

あるよ、きっと…、大人になっても…、良いことあるよ…と美姫は答える。

初恋は中学生の時でした。

掃除をしていた美姫(諸江雪乃)は、ちょっと気があった江藤慎吾(内山遥城)を気にしていたが、その江藤がサッカーボールに見立てて蹴って来た雑巾が頭に乗ってしまう。

クラスにいた同級生たちはそれをあざ笑うだけだった。

ごめん、悪い!と江藤は謝りに来るが、美姫は、顔も水に、許さない!絶対許さない!と叫ぶ。

同じでした。アンとギルバートと…

アンはギルバートを簡単には許しませんでした。(絵本のアンが男の子のギルバートに何かをぶつけようとしているイラスト)

でもそれがきっかけで、お互いを意識するようになったのです。

翌日、階段の所で、昨日はごめん!と江藤が声をかけて来るが、美姫は、許さない!と無視する。

その後も、この前はごめん!と何度か江藤は声をかけて来るが、美姫は、意固地に、許さない!と言って無視するが、その実、毎日声をかける江藤のことが嬉しく、微笑んでいた。

一週間後、許してあげると言おうと決めたその日でした。(あぜ道を、許して上げる!と何度も嬉しそうに答える練習をしながら登校する美姫)

事故に遭いました。自転車で車と衝突してな…、右大腿骨骨折だよ…、全治三か月だそうだ…と、その日、教室内で、担任教師(小久保寿人)が言うので、美姫は唖然とする。

昨日、部活が終わった帰り道で…と説明を続ける教師の言葉が遠のいて行く。

(妄想)何しにきたんだ?と入院していた江藤は見舞いにきた美姫に向かって言うが、私にはここに送る権利がある!だって、まだ言ってないんだもの…、あなたを許すって!と、ベッドの横に座った美姫は言う。

江藤は、ありがとう!世界中の人間が敵になっても、僕は君の味方だよ…と、江藤はメルヘンのようなイラストを背景に言ってくれる。

(妄想明け)そんな幸せな空想に浸っている間、私は笑みを浮かべていたのでしょう。

それでも私は、きっと良いことがあると信じ続けました。(卒業文集の編集後記)

前谷みのりは親友でした。(女子寮時代の回想)

そう…、付き合ってるんだ?じゃあ、あれはしたの?と電話で篠山と付き合っていると伝えた日、みのりは聞いて来る。

あれって?と美姫が聞き返すと、だから…、セックス!といら立ったようにみのりは聞いて来る。

そう言うこと、あまり話したくないんだけど…と美姫が渋るので、天ちゃんに先越されるなんて、考えられない…とみのりは不機嫌だった。

教えて、あれどうだった?親友でしょう?とみのりがしつこく聞くので、と美姫の顔は曇る。

親友…だったんです。

そして、三木典子と出会ったのです…と、美姫は文を書き続ける。

(回想)一日も早く仕事を覚えて頑張りたいと思います。よろしくお願いします!

「日の出化粧品」に入社した美姫は、同期入社の典子らと共に、社内で挨拶をする。

続いて、隣に立っていた典子が、三木典子です。お城の住む美しいお姫様の美姫さんには名前で負けちゃっていますが、仕事では負けないように頑張りますので、よろしくお願いしますと挨拶したので、先輩社員たちは笑い出す。

(夕子のあだ名を先生に告げ口したあかねの映像)

典子が雑に茶葉を急須に入れているのを見かねた課長が、美姫に茶をいれて!と頼む。

それに気づいて、ふて腐れたように課長を睨んできた典子に、典子さんはお客様にお出しして下さいとフォローすると、典子は満足げに微笑む。

ある日、美姫のパートナーだった間山が着ていたのと全く同じ服を来て出社してきた典子を見て、美姫はその無神経振りを驚く。

良いでしょう。これ、買っちゃったと美姫に自慢する典子。

私にはそれが偶然とは思えませんでした。

間山さんはその服を着て来なくなりました。

部署でのバーベキュー大会の日、篠山係長は木炭に着火剤をかけて、一気に燃やすと言う安易な方法をとっていた。

三木典子が私を探るようになったのは、きっとあの時からです。

レジャーベッドで典子が昼寝をしている寝顔を見ていた小沢たち男性社員は、きれいだよな。僕が人生であった中で一番美人かも知れないなどと、典子の美貌のことを褒めあっていた。

美姫さんは?と小沢からいきなり聞かれた美姫は、一番きれいなのは、幼なじみの夕子ちゃんかな…と答える。

どんな人?小学校の友達で黒髪がきれいで、色が白くて…、白ゆき姫に出て来るような人…と美姫は答えてしまう。

寝た振りをしていた典子はうっすら目を開ける。

ある日、残業していた美姫は、大きく立上がって野火をしていた篠山係長が椅子に座り損ね大きく後に転ぶのに気づき、助けに行く。

栄養不足かな?と身体を起こした篠山が言うので、明日お弁当でも作ってきましょうか?とおずおずと美姫が申し出ると、本当?頼む、頼む!宜しく頼むよ!とあっさり篠山は、いきなり美姫の肩を触り甘えて来る。

弁当を作った後、二人きりになった時、あのさ〜と篠山が言い出したので、良いです、お口に合わなかったのなら…と美姫は謝る。

それを聞いた篠山は、違う、違う、スゲエ旨かったの!と言い、明日も作ってきてもらえると凄く嬉しいな〜…と思って…などと言って来る。

それを聞いた美姫は笑顔になり、分かりました。明日も作ってきますと答える。

次の休日、篠山のマンションに出向いた美姫は、作ってきた弁当を203の篠山の郵便受けの中に紙袋ごと入れておく。

買い物に行くついでに寄らせて頂いたんです。ご迷惑だったですね?と後で篠山にベランダに呼びだされた美姫が謝ると、来たなら、何で寄ってくれなかったの?等と言いながら、篠山は美姫に近づいて来る。

その後、篠山の部屋に行った美姫は、ベッドで寝ている篠山に乞われるまま、足の中指と薬指の間のツボを押してマッサージしてやる。

スポーツでもしてたんですか?と聞くと、サッカーをねと篠山が答えたので、美姫には、世界中の人間が敵になっても、僕は君の味方だよ…と、中学の時妄想した江藤のイメージがダブる。

そのまま、篠山は美姫にキスをして来る。

セックスし終えた後、今度キャンプに行こうか?しぐれ谷に…と篠山は言う。

はい…と美姫は答える。

ある日、ベランダに呼ばれた美姫は、だから、もう弁当は困るんだといきなり篠山から言われたので驚く。

どうして?と聞くと、彼女がいやがるんだと篠山は言う。

彼女?…と戸惑う美姫は、ガラス戸の向うを通り過ぎる典子の姿を観る。

その日、部屋に戻った美姫はCDを聞く。

それでもまだ、私には大切なものがあったのです。

「芹沢ブラザーズ」音楽の神様が奏でる奇跡のバイオリン。

たまたま見た動画サイトで出会ったのです。

ライブも滅多に行わず、まだごく一部の人間にしか知られていない存在でした。

兄弟のバイオリニストでビオラを弾く雅也(TAIRIKU)の瞳は、長沢町一番の美人だったダイアナを連想させました。

目をつぶって、その演奏を聴いていた美姫は、良いことはある…と呟く。

空想の世界では、雅也が、立った1人の聴衆の美姫の前で演奏してくれた。

しかし、後日、美姫が大事にしていた芹沢兄弟の「S」の字入りマグカップを、給湯室で洗い物をしていた典子と一緒にいた新入りの狩野里沙子が落として割ってしまう。

多分その時に、三木典子は知ったんだと思います。(割れたマグカップの底に書かれていた「芹沢ブラザーズ」と言う文字を見つめる典子)

後日、みっちゃん相手に、「芹沢ブラザーズ」の事を美姫に聞こえよがしにしゃべっている典子は、側の机に座っていた里沙子にも、グッズのボールペンを見せびらかす。

最近人気が出てきちゃって、ファンクラブの会員でもなかなか手に入らないんだから…などと自慢げに言うので、美姫は内心驚く。

私が篠山係長と振られても、何ごともなく過ごしていたのが気にいらなかったに違いありません。

その夜、「芹沢ブラザーズ」のファンサイトの掲示板を覘いてみた美姫は、雅也に女が出来たらしく、その相手は最近入ったミキノリコらしいと書込まれているのを見てショックを受ける。

翌日、そのことを美姫が典子に確認すると、そう、付き合ってるの。父の知り合いにレコード会社の人がいて、レコーディング見学させてもらったの。

そしたら、雅也の方から声かけてきて、それで…と言うので、篠山さんは?と聞くと、篠山?あ、付き合っていたつもりなんかないけど…などと典子は平然と答える。

その夜、自室でCDを見ながら美姫は、どれだけ人のものを奪ったら気がすむの…と呟きながら、憎しみを込めて、DCを折り曲げる。

その時、私が「芹沢ブラザーズ」への想いを断ち切れていれば、こんなことにはならなかったかもしれません…(「芹沢ブラザーズ」のCDをうっとり聞き入る美姫)

誰か、典子さんのボールペンを知りませんか〜?と、ある日、社内で、みっちゃんが聞いていた。

あれは、事件前日でした。

美姫の机にやって来た典子が、ちょっと話があるんだけど…と言って来る。

私じゃない。そんな人のものを盗むなんて…と、ベランダに付いて行った美姫は答える。

ん?ボールペンのことじゃないよ、あれ、犯人分かってるし…、工場の設計にまで手を付けているみたいだから…、タイミング見て告発しなくちゃね…と典子は言う。

え?誰?と美姫が戸惑いながら聞いても、いや、話はそのことじゃないの…と典子は言う。

明日東京で「芹沢ブラザーズ」モデルオールナイトコンサートがあるでしょう?と典子は言い出す。

うん、他のバンドモデルからチケット全然取れなくて…、でも、ライブなんかめったにやらないから絶対欲しかったんだけど…と美姫が打ち明けると、私持ってるの、1枚と典子が言う。

雅也に直接もらってね、でも風邪気味だから、東京迄出ていくの辛いし…、城野さん、代わりに行かないかなっと思って…、最前列だよ!と典子は言う。

いいの?と美姫が聞くと、うん、明日、チケット持って来るねと典子は答える。

ありがとうと答えた美姫だったが、でも、明日は…と口ごもる。

何時なの?その「芹沢ブラザーズ」の出番は?と真山先輩がそのことを聞き、パソコンで東京行きの列車の時刻を調べてくれる。

11時半だと美姫が答えると、茅野駅9時10分の特急に乗れば、11時5分の東京間に合うと教えてくれる。

間山さん…と美姫が何か言いかけると、負けないでね、これからは…、色んな意味でと間山は言ってくれる。

大きなバッグを用意し、翌朝、会社のロッカーに入れていた美姫は、やって来た典子が、体調良くなったから、行ってみようと思うのと言い出したので愕然とする。

雅也だって、私のためにチケット用意してくれたのに、別の人が座ってたらがっかりするでしょう?等と言うので、でも、特急券はもう買っちゃったし…と美姫が言うと、じゃあ、私、それ買い取るからなどと典子は答える。

お土産買って来るよ、マスコットが良い?などと典子は平然と言う。

里沙チャンが割っちゃったやつ、あれ「芹沢ブラザーズ」のだもんねと言い残し、典子はロッカールームを去って行く。

その後、給湯室で落ち込んでいた美姫に、あの…、もしかして、典子さんですか?と声をかけて来た者がいた。

狩野里沙子だった。

私もいつも一緒にいるから、正直色々あって…と、里沙子は話して来る。

私で良かったら、ぶっちゃけて下さいと言う。

その後、休憩所で、城野さん、そのコンサート、行っちゃいましょうよと里沙子は言い出す。

彼女の計画は単純なものでした。

里沙子がロッカー室で典子に風邪薬を持っていることを教える。

毒入りじゃないでしょうね〜などと典子が嫌味を言うので、じゃあ良いですと引っ込めようとすると、あ、噓、噓、ちょうだい!と言いながら典子は薬を受け取る。

でもこれ、眠くならない?と典子が聞くので、眠くなりません!と里沙子は噓をつく。

それ、薬に強い私でも眠くなる風邪薬なんです。

それプラス、お酒どんどん飲まして…

間山の送別会、咳き込んで調子が悪いことをアピールする典子に、そう言うときはビールですと言いながら、里沙子が勧める。

誰も、典子の体調を気にかけるものなどいなかった。

典子さん、お酒弱いから、車に乗る前に寝ちゃうはずです。その間にバッグからチケットを持って逃げちゃって下さい(と、当夜の回想に里沙子の声)

一次会が終わり、外に出た時、調子が悪いのでお先にと典子が間山に挨拶すると、もう会うことはないわね、あなたとは…と、清々したように間山は答える。

元々は、城野さんが行くはずじゃなかったんですか?何で我慢するんですか?いつもそうやって…(外に出た美姫を無言で励ます里沙子の回想映像に、作戦を立てた時点の里沙子の声が重なる)

美姫も間山に先に返ると声をかけ、その後、車で典子に追いつくと、送ってくよ、駅までと声をかける。

良いわよ、歩くから!と典子は不機嫌そうに言い返して来る。

あ、ほら、特急券渡してなかったし…と美姫が言うと、仕方なさそうに典子は車に乗り込む。

走り出した車の中で、何かさ〜、ビール飲んでたら目が冴えちゃった!さっきまで眠かったのに…などと、助手席の典子は言い出す。

仕方なく、駅前で車を停める美姫。

ありがとう、じゃあ、特急券!と典子が要求してきたので、バッグやダッシュボードを探し出した美姫は、忘れてきたみたい…ととぼけることにする。

大丈夫、発車まで間に合うからと言った美姫は、もう良いから、止しなさいよ!と制止する典子を無視し、そのまま自分のアパートまで車を走らせる。

バッグを持って部屋に戻る振りをした美姫は、実は最初からバッグに入っていた特急券を取り出し車に戻る。

一瞬、典子の姿が見えないので驚いて中を覗き込むと、典子は眠り込んでいた。

それで、典子さんはどうすれば良いの?(車を駅近くのコインパーキングに入れる映像に、作戦を聞いた時、里沙子に聞く美姫の声)

車の中に置いてっちゃえば良いじゃないですか。コインパーキング、駅の近くにありますよ。目覚めたら悔しがるでしょうけど、自業自得ですよ、そんなの…。(と、作戦時、答える里沙子の声)

助手席で寝入っている典子のバッグを探るが、チケットらしき封筒を撮るのにためらう美姫。

腕時計を観ると、すでに9時5分だった。

その時、コインパーキングのエリアバーが前に降りて来たので、慌ててチケットの封筒を抜き、中味を確認して、車を降りた美姫は、小沢がタバコを吸っている前を気づかず駆け抜け、何とか、東京での「サマー オールナイトコンサート」の会場前にたどり着く。

先頭を歩き、階段を降りてきた雅也に近づこうと、美姫も横を降り出し、手を差し伸べようとするが、その時、誰かに押された美姫の手が、雅也の方を押す形になり、雅也は階段から転げ落ちてしまう。

その時、ライトバンから降りて来る「芹沢ブラザーズ」のメンバーを見かける。

思わずその場を逃げ出す美姫。

近くのホテルに泊まった美姫は、ネットで、「芹沢ブラザーズ」のファンサイトを確認する。

雅也が右手を怪我したって本当ですか?

誰かが押したんです。

私、その人見ました!

犯罪ですね。

ものすごいスピードで走って行きましたよ等と言った書き込みが殺到していた。

ベッドにうつぶせで寝ていた美姫の横のテレビから、先日、しぐれ谷で、滅多刺しで焼死した死体が発見された事件で、被害者は、長野県茅野市に本社がある化粧品会社勤務三木典子さん、24歳と判明しました…と言うテレビのニュースが流れていた。

三木さんは、前日12日、勤務する会社の集まりに参加し、1人で帰った後行方が分からなくなってました…と言うニュースの声で目覚める美姫。

テレビの時刻は、11時を表示していた。

その後の警察の調べでは、行方が分からなくなった当日、被害者である典子さんを乗せた車が目撃されており、警察はこの車の行方を追うと共に、被害者が勤務する家所不品会社への…と報道しているテレビの声を、起き上がった美姫は呆然とした表情で聞いていた。

(回想明け)ホテルで、自分のことを便せん数枚に書き終わった美姫がネットでツイッターを覘いてみると、城野、絶対、殺している…城野は黒魔女…、逃げ切れるのか?死刑だ!などと言う書き込みが溢れていた。

それを読むうちに思わず涙する美姫。

こんな女、生きていても意味ないだろ

死ね…などと言った誹謗中傷に耐えかねた美姫は、思わず、近くにあった包装用の紐を首に巻き、それを寝室のドアに結びつけて首吊りをしようとしかけるが、その時、テレビから、しぐれ谷事件での新事実が判明したとの声が聞こえて来る。

殺害、死体遺棄の疑いで逮捕されたのは狩野里沙子、23歳々だと言うではないか。

狩野容疑者は当初、勤務先の商品を盗んだとして、窃盗の容疑で逮捕されていましたが、取調べの中で、三木典子さん殺害の供述を始めたそうですとニュースは言う。

警察では、狩野容疑者を殺人に切り換え…

(回想)これであなたも「白ゆき姫」!と、パートナーになった里沙子に製造ラインを見せていた典子は、出来上がった商品を手に言う。

使った方が良いわよ…と言いながら、里沙子の服のポケットに忍ばせてやる典子。

あなたは特に…と耳元で囁く典子。

何、石鹸持っててんだよと、そのライン見学の時もらったと思っていた石鹸を見つかった課長から、全くもう、今度の新人は!と叱られていたとき、課長、怒るなら私を起こって下さい!と近づいてきたのは典子だった。

この子が何したって言うんですか!と言う典子の顔を複雑な顔で見つめる里沙子。

ステキなレストランに招待された里沙子が、いつもごちそうさまですと礼を言うと、たまには返してよねと答える典子。

その後、ボーナス入ったんで、今日は私にごちそうさせて下さいと、後日、会社で申し出ると、良いのよ、私に返してくれなくても、里沙ちゃんの後輩が入ってきて、パートナーが出来たら、その時、同じようにしてと言う。

それから、里沙子は商品の石鹸を盗むようになる。

冷蔵庫のケーキを食べたのも里沙子だった。

稲葉さん、ケーキ取ってありますよ!と呼びかけるみっちゃんの声が聞こえたので、慌てて、口の中に入っていたクリだけを取り出し、皿に置いて戻す里沙子。

その後、誰ですか?稲葉さんのケーキ食べちゃったの!と社内で聞くみっちゃん。

里沙子も、騒ぎ出した社員たちに混じり、誰?等と聞き回りごまかす。

一連の盗難事件に対し狩野容疑者は、大げさに騒ぎ立てる同僚たちを見ていると、日頃のストレスが解消されたなどと供述していると言う(その後も石鹸を盗む里沙子の映像にワイドショーのナレーションの声)

典子のボールペンを盗んだのも里沙子だった。

さっきまでここにあったの、私見たんですけど?茶色いボールペン見てませんか?などと探す側の人間を演じてみせる里沙子。

犯人、分かっちゃったとトイレで、里沙子に告げる典子。

何のことですか?と里沙子がとぼけると、さあ?と典子も惚け返す。

その密告をほのめかされ、不安になった狩野容疑者、そんな彼女の目に泊まったのが、他ならぬSさんだった。(ナレーション)

給湯室でしゃがみ込んでいた美姫の所に行き、あの…、もしかして、典子さんですか?と声をかける里沙子。

ただただ若手バイオリニストのコンサートに行きたかっただけのSさん。(送別会の店の前の里沙子と美姫の映像にナレーションの声)

そんなSさんを巧妙にそそのかし、陥れた狩野容疑者…、はたして、どこまで計画的だったのだろうか?(コインパーキングの美姫の車を取り出す里沙子の映像にナレーション)

車に乗り込み、林の中に付いた所で、ちょうど眠っていた典子が目を覚ます。

運転席にいたのが里沙子と気づいた典子は、急いで助手席から降り、林の中を逃げ出すが、運連席を降り、用意した包丁を手に、無表情でそれを追い始める里沙子。

小川の中を逃げようとする典子。

先回りしていた里沙子は、何で?と典子が聞くと、何度も何度も包丁で胸を刺し続ける。

滅多刺しでは物足りなかった狩野容疑者、彼女は会社のバーベキューで使った着火剤が、Sさんの車に積んであるのを知っていた。(里沙子が車の後部から手袋をはめ取り出した着火剤を血まみれで死んでいる典子にかける映像とナレーション)

バーナーで、死体に着火する里沙子。

燃え上がった死体を、立ち去りかけた里沙子は振り返り、きれい…と呟く。

さらに狩野容疑者は、捜査の目をそらすため、大学時代の友人である映像会社の契約社員に連絡を取り、あたかも犯人はSさんであるかのように誘導して行く。(ナレーション)

犯人が城野さんだったら良いのにな…と赤星が来た時に話す里沙子。

近年、これほどまでに身勝手で、したたかな犯罪者がいただろうか?(ナレーション)

一連の犯行の動機を狩野容疑者は…(取調室、掲示を前にした里沙子の姿にナレーション)

首になると困るんで…

それだけか?と聞く刑事(鈴木晋介)

はい…と答える里沙子

…と語っている。(ナレーション)

その映像を無言で見つめる「カベミミッ!」の司会者やコメンテーターたち。

日頃から、たまってたんだろうねと発言する司会者の水谷。

まあ、自分の居所がなくなるのが恐かったと言う供述もしているようですが…と捕捉する味沢レポーター

居場所?でも、被害者に対してコンプレックスを感じてたってこともあるんじゃないですかね?と水谷。

いえ、狩野容疑者は、国公立の四年制大学を卒業していまして、コンプレックスを感じていたのはむしろ、短大卒の被害者の方ではないかと?と言う会社の課長さんの証言もあるんですが…と味沢レポーター

じゃあ何?何年後にかは、容疑者の方が上司になっていた可能性もあったって言う訳?と聞く水谷。

それにしても短絡的と言うか…、倫理観どうにかなっちゃってますね…と言う水沢の発言を、トイレの便器に座り、スマホ画面で見ている赤星。

やがて、平塚アナが、このたびはスタッフの取材不足から、誤解を招くような表現で、無関係の方を容疑者のように扱ってしまった事を深くお詫び申し上げます。大変申し訳ありませんでしたと、画面に向かって頭を下げる。

一緒に頭を下げていた水谷は、さ、次は…と話題を変えたので、

ってそれだけ?(kaorioc)

終わり?(nomizu yoshiyuki)

城野美姫に謝れ(きのこ隊)

今回の報道に関しては徹底的に抗議します。(kaorioc)

こんなの見なきゃいいんだよ。(show-wa)

おまえも見てんじゃねえかよ(kamui)

…と言ったツイートが流れ、ブースの中では、テレビ局員が、何座ってんだよ!と山下を叱りつけたので、慌てて山下は立上がる。

来る必要ないだろ?今日は…と一緒に立上がったテレビ局員は山下を睨みつける。

赤星は謝りに行かせませんで…と山下が言うと、当たり前だよ!とテレビ局員は答え立ち去って行く。

城野美姫、かわいそう(peko)

俺たちは味方だぞ!(Koteran)

今さらよく言いますね、あななたちは。私は城野美姫さんを守れたことを埃に思います。(MORI-MI)

おまえも同罪だ!!(JAMKIT)

だいたいお前は親友じゃないだろ。(atreolivjam)

城野美姫のフルネームさらしたのおまえだろ。(ゆうすけ)

雅也、無事だって。(MARURIN)

「芹ブラ」の雅也と被害者との「恋沙汰」もどうやらデマだったようです!(PIANO_HIME)

そう!そう!「三木典子さんとは会ったこともありません」って、ファンクラブ通信で雅也が。(MARURIN)

ネットは真実を暴く(JAMKIT)

ネットは冤罪を作る。(KAMUI)

車で喪中の自宅に喪服姿でやって来た美姫

亡くなったのは祖母のハツエだった。

無言で二階の自室に上がろうとする美姫を呼び止めようとする母皐月と、ごめんな!美姫…と詫びる父親光三郎

薄暗い部屋の中に戻った美姫は、ガラス窓越しに夕暮れの景色を見るともなく見ていた。

すると、遠くの夕子の家の窓から、灯がちらちら見えて来る。

夕子が窓辺に立てたろうそくの前で、遮蔽板を上下していたのだった。

ここにいる!ここにいるぞ!アン!そう心の中で呼びかける夕子

それを観て泣き出した美姫は、引き出しから蝋燭を取り出すと、同じように

世界中の人間が敵になっても、俺はお前の味方だ。

お前の記憶と、お前が辛い時、頭の中で想像したことは、誰にも奪うことができない。(夕子は心でそう叫びながら、泣いていた)

ふざけるな!

スーツ姿で詫びにきた赤星を、田圃に突き倒す光三郎。

何だ?その謝り方は!謝るときは土下座だろ!とにらみつける光三郎。

今回は…、本当に…、すいませんでした!と土下座して詫びる赤星。

そのみじめな姿を、一緒に付いて来た長谷川が、あぜ道からじっと見ている。

あの番組作ったのは赤星雄治。☆一つ(ゆうすけ)

映像制作会社TAG契約社員(Kenji Matsuo)

契約期限切れ間であと一ヶ月。(平岩えーすけ)

契約期限切れをもってクビ(nomizu yoshiyuki)

年収198万(税込)プッ(ATUSHI SUZUKI)

現住所、東京都武蔵野市吉祥寺東町8-9-4 リブラ吉祥寺205(imai)

赤星のアホ顔www(ちこ)キャバレーでホステスとグラスをもって写っている写真貼付

大学時代は自主映画、撮ってた。(ふくっと)

ていうか、なんで犯人に気づかない?(kaorioc)

っていうか、赤星本人からの謝罪のコメントないの?(yuki_no_ko)

所詮そのレベルの人間なんだよ、赤星雄治は。(kamui)

ネットでの発言もおかしかったよな、あいつ。(ケロッパ)

僕はそれ、ずっと見張る役でした。(KATSURA)

とぼとぼと上着を脱いで歩いて帰る赤星雄治(無関係)

とぼとぼと歩いていた赤星は、小型車が近づいて来たのに気づき、慌てて避けようとして転んでしまう。

車から慌てて降りてきたのは美姫だった。

大丈夫ですか?と心配そうに聞いてきた美姫に、はい、大丈夫ですと答える赤星。

当たってないですよね?と美姫が確認すると、当たってないですと赤星は答えたので、すみませんと頭を下げた美姫は車に戻ろうとするが、ちょっと…と赤星が言うので、え?と立ち止まる。

嫌な事があって…、もう、自分が自分でなくなると言うか…、あ、何言ってるんだろ、俺、始めて会った人に…と言いながら、慌てて起き上がる赤星。

すみませんでしたと頭を下げ立ち去ろうとした赤星に、ありますよ、きっとと美姫は語りかけたので、赤星は、え?と立ち止まる。

良いこと、ありますよと笑いかける美姫。

車に美姫が乗り込むと、後ろから付いてきていた長谷川がかけよってきて、赤星さん、今の!と言葉をかける。

しかし、赤星は興味がなさそうだったので、いや…、何でもないですと長谷川は答える。

美姫の車が遠ざかり、長谷川と赤星はとぼとぼと歩き続ける。

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