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オンボロ人生

加藤芳郎さんの漫画の実写化らしいが、残念ながら原作は読んだ記憶がない。

おそらく、雑誌掲載の見開き読み切り形式のようなものだったと思うので、この実写版は、それを元に「シンデレラ」のアイデアを加え、映画用にアレンジした内容だと思われる。

劇中では、ホームレスたちが共同で住んでいる場所の事を「部落」と呼んでいる。

この頃は、小さな集まりの事をそう呼んでいたのだと思う。

さらに、主人公のマリ子は少し知的ハンデがあると言う設定だったり、精神を病んだ御前様なども登場するので、今ではテレビ放映やソフト化は難しいかも知れない。

それでも、この映画がなかなか楽しく、それなりに良く出来た映画であることは間違いないと思う。

貧しいながらも毎日ひたむきに生きる人たちのバイタリティを、あるときは哀しく、あるときは愉快に描いている。

金持ちも決して幸せではないと言う教訓も古めかしいながら生きている。

益田喜頓さんと宮城まり子さんが一緒に歌ったり踊ったりする夢のシーンや、宮城まり子さんがシンデレラに扮する夢のシーンなども楽しい。

意外だったのは、原作者の加藤芳郎さんが、単なるゲスト出演と言う以上の芝居をやっていること。

加藤さんの顔を知らない人が観たら、無名の役者と勘違いするのではないかと思えるほど。

後年、テレビの司会やチャップリンの物まねなど芸達者な所も披露していた加藤さんだが、この頃からこんな役を演じていると言うことは、かなり若い頃からその才能を知られていたと言うことなのかもしれない。

作曲家の浜口庫之助さんまで出ていたり、コント風の扮装と芝居を演じている佐田啓二さんが観られたり、50年代後半の東京…、新宿歌舞伎町に出来た「ミラノ座」や、その横の映画館に掛かっている「宇宙水爆戦」の看板など、町並みの姿なども貴重で、色々な意味で楽しめる内容になっている。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1958年、松竹、加藤芳郎サンデー毎日連載漫画原作、沢村勉 、 富田義朗脚本、番匠義彰監督作品。

ボロ切れのパッチワークをバックにタイトル

セットで歌を歌うマリ子(宮城まり子)をバックにスタッフ・キャストロール

新しいビルが建設中の町の一角にあった空地にやって来た土建業者のような連中が、そこにホームレスたちが勝手に作っていたあばら屋を壊し始めたので、小屋の中にいたバタ屋の妻花子(清川虹子)が止めておくれよ!とすがりつくが、代表者のような人夫が、立ち退きの執行状のような物を取り出して、手続きは済ませてあると説明したので、それ以上文句は言えなかった。

そんな連中に、無礼者め!と怒鳴りながら小屋の中から出て来たのは、上着に勲章をぶら下げたヒゲの紳士御前様(日守新一)だった。

そんな御前様に近寄った花子は、又立ち退きなんだと事情を説明し、娘の愛ちゃん(二木てるみ)に、お父ちゃん呼んでおいで!と命じる。

幼い愛ちゃんは、周囲を取り囲んで観ていた警官や野次馬をかい潜ると、他の仲間たちと一緒に働いていたバタ屋の父親松沢モン吉(桂小金治)や物乞いをしていた絵描き(殿山泰司)に急を知らせ、さらに、靴磨きをしていた仲間の女性ニュースヤ(志賀真津子)とコッペ(杉田弘子)にも自分たちの住居が壊されていると知らせる。

全員、慌てて空地に集まるが、すでに空地内には「立ち入り禁止」の立て札が打ち付けられている所で、中に入る事すら出来なかった。

役人が政府の収容所に入れって言ってるんだが、あそこは住み良い所じゃないからね。みんな一緒に暮らせる所が良いねなどとみんなして相談している中、コッペに声をかけたシャンソン(片山明彦)は、こんな所にいてもしようがないからと、勝手に家財道具を積んだ荷車を引いてその場を立ち去って行く。

シャンソンがコッペを連れて来たのは、坂道を上った所にある高台にある廃墟だった。

ずっと前から見つけておいた場所で、あの小屋を塒にして2人で住もう!とシャンソンは得意げにコッペに言うが、その時、その廃墟から若い娘の歌う声が聞こえて来たので2人は驚く。

すぐに、その声の主のマリ子が廃墟から出て来たので、君はここに住んでいるのかい?とシャンソンが聞くと、お父ちゃんと一緒だとマリ子は答える。

先住者がいると知ってがっかりしたシャンソンだったが、僕たちもここで暮らせるようにお父ちゃんに頼んでくれないか?と交渉すると、マリ子はあっさり承知する。

その時、シャンソンは、背後から付いて来たハチ公(大泉滉)らバタ屋仲間たちに気がつく。

どうやら、追い出された空地からずっと後を付けて来たようで、シャンソン!お前のお陰で助かった!などと、悪びれた様子もなく、全員、明るく声をかけて来るので、シャンソンとコッペはがっかりしたように顔を見あわせるしかなかった。

シャンソンは、この子は?とマリ子の事を聞かれたので、管理人の娘さんなんやと事情を説明し、マリ子も、新しい仲間たちがここに住んでも良いか?と聞かれると、あっさりかまへんわと答える。

それを聞いたバタ屋や絵描き、御前様とその運転手(井出忠彦)、ニュースヤにモーロク(谷崎純)たちは喜び、廃墟の周辺にめいめい勝手に自分たちの住む場所を決め始める。

その夜、高台の近くの飲屋街では、ギター片手に流しの六さん(小坂一也)が歌いながら流していた。

ジーパン姿の若い六さんは、町のパンパンやホステスたちにも大人気だった。

その六さんと一緒に暮らしている易者に、おじさん、六さんどこにいるの?と聞いて来たのはパンパンのグラマー(泉京子)だった。

そんな事は知らず飲み屋街を歩いていた六さんに声をかけたのは昔なじみのシャンソンだった。

伊豆の方へ流していたと言う六さんに、最近近所に越して来たから付き合えよと、仲間のバタ屋が集まって飲んでいた「ホルモン軒」に誘い込む。

そこには、御前様、モン吉、マリ子などが集まって嬉しそうに飲んでおり、何か歌ってくれと言うので、六さんは自分が作った新曲「東京の娘さん」を披露し出す。

すると、その歌声で六さんに気づいたグラマーが、店に入り込み抱きついて来たので、六さんは迷惑そうに歌い続ける。

そのグラマーを口説き出したのが妻帯者のモン吉で、そんな中、御前様が突然、歌が卑猥だ!と文句を言い出し、ニュースヤも、女を侮辱している!と文句を言って来る。

しかし、そんなお堅い事おっしゃらないで…とグラマーが御前様に甘えかかると、急に態度を変えた御前様は、やれ!やれ!前言をあっさり翻してしまう。

憧れの六さんと会え、嬉しくなったグラマーは、テーブルの上に乗って踊り始める。

歌い終わった六さんは、その隙に、店を飛び出して逃げてしまう。

その直後、店に入って来て、マリ子、どうしてこんな所にいるんだ!と呼びかけたのはマリ子の父親で、バタ屋をやっている父つぁん(益田喜頓)だった。

マリ子は、みんなが連れて来てくれたのと事情を話すが、父つぁんは、庭に荷物を置いているのはあんたたちか?とそこにいた仲間連中を見回すので、一緒に住まわせてくれないか?とみんな頼む。

しかし父つぁんは、せっかくだが出て行ってもらいたいと言うので、同じオンボロ仲間じゃないかとモン吉は声をかけるが、うちには年頃の娘がいるから…と父つぁんは承知しない。

困ったバタ屋たちは、翌朝、あの高台に行くと、ハチ公が代表して、我々男一同は、お父つぁんの娘に手を出さない事を誓う。もし手を出したものは追放すると書いた誓約書を父つぁんの前で読み上げるが、父つぁんはそんなものは当てにならん!とバカにし、マリ子!来るんだ!こんな所に残しておけないと言い、その日は一緒にバタ屋の仕事に連れて行こうとする。

するとマリ子は、うちも、愛ちゃんみたいに学校に行きたいと言い出したので、お前は行けないんだと父つぁんが言うので、何故?と聞き返す。

その会話を聞いていた愛ちゃんは、お姉ちゃん、私がお勉強を教えてあげるとマリ子に言う。

その後、「15th St」と言う通りに、父つぁんはリヤカーを引いてやって来るが、マリ子はそのリヤカーの荷台に乗って歌っていた。

目的地に着いた父つぁんは、マリ子を降ろし、屑篭を背負わせると、今日からお父ちゃんの仕事手伝うんだよと言い聞かす。

しかし、マリ子は、何となく父つぁんの仕事を知っていたのか、何でも拾うたらええんやろ?と言うと、すぐに道に落ちているゴミを拾い始める。

面白いのか、どんどん階段を登って行くマリ子を慌てて追いかける父つぁん。

やがて、ゴミ箱を開けたマリ子は、その中に黒い犬が入っているのに気づき、抱き上げて、うち、欲しい!とねだり出す。

ダメ!ダメ!と叱りながら、マリ子を追って登って来た父つぁんだったが、向い側から走って来た主婦の自転車に接触、転んで足に怪我をしてしまう。

驚いたマリ子は、お医者さんに行こうと言うと、馴染みのシケタ先生(佐田啓二)の所へ連れて行く。

シケタ先生も、医者とは言っても、空地の掘建て小屋に一人住んでいる貧乏人で、ボロボロの白衣にぼさぼさの髪とひげ面だった。

シケタ先生は、風邪を引いたのか、自分用だと言い、卵酒を作っている所だった。

怪我を診てくれと父つぁんが頼むと、これは流行性関節炎だよ等と言うので、相手は自転車なんですが…と父つぁんは呆れたように説明する。

そんな中、先ほど拾ってクロと名付けて抱いてきた犬が逃げ出したので、慌ててマリ子は追いかけるうちに、土管の所でオカリナを吹いていたシャンソンとばったり出会う。

シャンソンはマリ子を隣に座らせると、おじちゃんが吹くから、マリ子ちゃん、前に歌っていタアの歌歌ってと言い、マリ子は、山野おさるが~♪と歌い出す。

その頃、バタ屋の仕事をしていたモン吉は、道に落ちていた財布を見つけ、慌てて拾い上げ中を確認するが、請求書ばかりしか入ってないと知ると、ふて腐れるが、中味を捨て、財布だけを持って、近くで眼が見えないと噓を書いた紙を胸に下げ、物乞いをしていた絵描きの側に近づく。

そして、財布を買わないかと持ちかけると、5円なら買うと言うので、皮だぞ!10円でどうだと売りつける。

そこにやって来たのが、昔顔馴染みの泥棒(加藤芳郎)で、働かないか?とモン吉に声をかけて来るが、二度と臭い飯は喰いたくないから!とモン吉は断り、その場を立ち去る。

仕方がないので、泥棒は、その場に残っていた絵描きに、5万にはなると教え、支度金として1万円をその場で渡すと、今晩10時に久保田って家があるから来るんだぞ!と命じ去って行く。

絵描きは、呆然として1万円を手にしていたが、そこにやって来たハチ公がその金を取り上げると、又良からぬ事を企んでいるな?パンパンと泥棒にはなるなと言ったじゃないか!と叱りつける。

泣き虫の絵描きはメソメソと泣き出す。

その夜、泥棒は予定通り、久保田家に忍び込み、夫婦を縛り上げると、室内を物色していた。

そこにやって来たのが絵描きとハチ公で、絵描きは部屋の中でタンスを荒していた泥棒に支度金返すよと言って1万円札を出す。

泥棒は、何やってるんだ!早く手伝え!と叱るが、絵描きは1万円札を放り出し部屋を出て行く。

その直後、廊下にいたハチ公が、泥棒だ~!と騒ぎ出したので、慌てた泥棒は何も取らずに逃げ出してしまう。

その夜、「ホルモン軒」では、モン吉が食事をしていたグラマーにおかずを渡しながら、一緒にどっかへ行かないか?などと誘っていた。

そこにやって来たハチ公が、お前は母ちゃんがいるだろう!人間、泥棒とパンパンにだけはなるなといてるだろう!とモン吉を叱るので、グラマーは、パンパンで悪かったね!と逆ギレする。

高台では、御前様が望遠鏡で夜空をのぞき、人工衛星が見えた!と言っていたので、側にいたニュースヤが、人工衛星は明け方と暮れ方しか見えないはずだわ、御前様の天文学も怪しいものねなどとバカにする。

御前様は憮然とするが、その望遠鏡を借りた絵描きは、高台の下にある風呂屋を覘き始める。

一方、塒に帰って来たシャンソンは、壁の反対側で寝ようとしていたコッペに結婚してくれと申し込んでいたが、コッペは、結婚するときは瓦のある家が欲しいし、せめて布団くらいは欲しい。金がないと喧嘩の元だと言うからねと素っ気なく答えると、子守り唄吹いてよとねだり、むしろの床につく。

仕方なく、シャンソンはオカリナを吹いてやるのだった。

廃墟の二階でそのオカリナの音に気づいたマリ子は、兄ちゃんが笛吹いてると嬉しそうに言い出したので、父つぁんは、お父ちゃんがいない間、ここから下に降りたらいかんよ。仕事に連れて行っても、今日みたいになるしな…と言い聞かせる。

すると、何故?とマリ子は聞きながら眠りにつくのだった。

夢の中で、マリ子は父つぁんと一緒に書き割りの町で歌って踊っていた。

何故、あたいのこと、みんなバカバカ言うの?♪何故、どうして頭が悪いの?♪とマリ子が歌うと、それはだな…、何かが足りないんだな?と父つぁんが答える。

分かった!お父ちゃんと同じ!と納得したマリ子と父つぁんは一緒に踊る。

あたい、この間見ちゃった、暗い所で、おじちゃんが他所のお姉ちゃんとキスしてたの。どうして?♪

それはつまり…、身体が寒いからだよと父つぁんは答える。

どうして寒いの?とマリ子が聞くと、大人になると寒くなるんだよと父つぁんは答え、分かった!だから、お父ちゃんの頭は薄いんだね!とマリ子は納得し、又、父つぁんと一緒に踊り出す。

アホ!と父つぁんが叱ると、ありがとう!と礼を言うマリ子。

翌日、いつものように靴磨きとして座っていたコッペに近づいて来た1人の紳士(浜口庫之助)が、人を探しているんだと言い、10年前の写真と言うのを取り出して見せ、心当たりないかね?と聞く。

そこに映っていたのは、どう見てもマリ子だった。

コッペは急いでシャンソンの元に行くと、あたいたち、結婚できるかも知れないよ。横浜のお金持ちがマリ子ちゃんを捜しているんだ。見つけやら賞金100万円なんだって!

何でも、お金持ちが他所の女に産ませた子らしく、今は奥さんもなくなり独りぽっちになったので会いたがっているそうなんだよ。

8つの時まで大阪で育ったので、言葉に訛があるそうだし、首筋にほくろがあるんだってとコッペは教える。

その頃、マリ子は高台の庭先で、愛ちゃんから「シンデレラ」の絵本を読んでもらっていた。

そこにシャンソンがコッペと一緒に帰って来たので、お兄ちゃん、オカリナ吹いて!とマリ子はねだる。

シャンソンは、コッペに促され、マリ子の横に座ると、首筋のほくろを確認しながらオカリナを吹いてやる。

そこに帰って来たのがお父ちゃんで、シャンソンがマリ子の側にいる事に気づくと、何してるんだ!この子にちょっかい出したら、出て行ってもらう約束だ!と怒る。

コッペが、マリちゃんは自分の娘じゃないんだろ?と父ちゃんにかまをかけてみると、実の子と同じだ、8つの時から育てているんだからと父ちゃんは答え、マリ子を連れ廃墟の中に連れて帰る。

マリ子の首筋のほくろも確認したコッペは、マリちゃんを本当のお父さんの所へ連れて行く方が幸せになるよ。連れて行ってやろうよ!とシャンソンに勧める。

しかし、シャンソンは、あんなに仲良くしている親子を引き裂くのにためらいがあった。

そこに、モン吉が帰ってくる。

モン吉は、自分の家庭用の屋外風呂にお湯を張り、連れて来たグラマーを入れてやる。

俺はMr.トルコだからなどと言い、グラマーの背中まで洗ってやろうとする。

グラマーは風呂から上がろうとし、あっち行って、目をつぶっていてと頼むと、家の母ちゃん、夕方まで帰って来ないから…などとにやつきながら、モン吉は言うことを聞く。

ところか、そこに花子が早めに帰って来たので、モン吉は焦る。

花子は何も知らずに、モン吉が風呂の仕度をしておいたと思い喜ぶが、そこに出て来たグラマーが、モンちゃん、又入れてねなどとモン吉に媚を売ったので、花子は唖然としてグラマーを睨みつける。

その後、花子は、モン吉のへそに、浮気封じのお灸を据える事にする。

熱くて暴れるモン吉を、愛ちゃんが押さえつけ、お父ちゃん、我慢して!と励ますのだった。

その夜、御前様は、自分の住む場所の中で、何やら実験をしていた。

そこに、運転手が夕食を持って参りましたとやって来るが、それは、わずかばかりの飯に梅干しとメザシと言う粗末なものだった。

今日はこんなものしかなくて申し訳ありませんと運転手が恐縮するので、お前はどうするのか?と御前様は聞く。

自分は満腹でありますと運転手が明らかに噓を言うので、これはお前がお上がり、わしは外で食べると言い残し、その場所から出て行く。

夕食の皿を受け取った運転手は、自分のふがいなさを恥じ、申し訳ありませんと出て行く御前様に頭を下げる。

その頃、飲屋街をうろついていた絵描きは、昔仲間だった変な外国人ジャム(E・H・エリック)と出会う。

何でも、一旦アメリカに帰ったが、又来たのだと言う。

ジャムは、芸者姿のトンコ(永井達郎)を見て、芸者ガール!と喜びながら抱きつくが、それはオカマだと絵描きが注意する。

その時、背後から近づいていた御前様をうっかり絵描きははね飛ばす結果になってしまったので、謝りながら起こすと、ジャムも、御前様、しばらくでしたと挨拶をする。

御前様は「ホルモン軒」に入ると酒をくれと頼むが、店の主人(坂本武)は、随分金を払ってもらってないから…と渋る。

すると御前様は土地で払うと言い出し、一万坪でどうだねなどと言うので主人は、そんなに土地を持っているんですか?と驚く。

御前様は15万坪くらい持っている、火星に…と言うので、あの空の上の火星ですか?と主人はあっけにとられる。

今、ロケットを建造中だ等と言うので、御前様が普通ではないと気づいて気の毒がった主人は、一緒に行きましょうと話を合わせる。

その頃、1人高台の仮住まいに残っていた運転手があんまりしょげているのに気づいたハチ公は、どうしたと呼び寄せて訳を聞き、自分がふがいないばかりに御前様に満足なお食事も差し上げられないと運転手が嘆くので、お前はシケタ先生によると栄養失調の第6期だそうだ。人の事ばかり気を使い過ぎると自分がダメになるぞ。運転が出来るのならタクシーの運転手でもやったらどうなのか?と提案する。

でも、タクシーの運転手をやると24時間勤務になるので、御前様の面倒を見ることができなくなると運転手は言う。

ハチ公は、俺たち仲間で、御前様の面倒は見るから、このハチ公を見損なうなよと励ますと、自分用に作っていたうどんを運転手に振る舞ってやる。

一方、寝床で寝ようとしていたコッペは、一枚壁の後で寝ていたシャンソンに、マリちゃん、あんたになついているみたいじゃない。あんただったら連れ出せるわよ。嫌なら、結婚も諦めるんだねと、気が進まない様子のシャンソンを口説くと、いつものように、子守唄!とオカリナの演奏を命じる。

飲屋街の木賃宿では、易者と同居している六さんが、東京の女はみんな噓つき~♪と新曲を作っていたが、最後の部分の歌詞に納得してないようだった。

それを聞いていた易者も、木賃宿の女中の方がずっと親切じゃよなどと六さんの歌詞に同調しながら、僕は惚れちゃったじゃどうだい?と提案する。

六さんはその歌詞を気に入り、最後まで歌うが、側で聞いていたオカマのトンコが素敵だわ、六さん!とうっとりする。

そこにやって来たシャンソンは六さんを部屋の外に呼びだすと、すぐ返すから1000円貸してくれないかと頼む。

六さんは快くその場で貸してくれる。

翌日、靴磨きの店を開いていたコッペの所にやって来たシャンソンは、やっぱりやる事にしたと言うと、お金は?電車賃もいるし…とコッペが案じるので、ちゃんと用意したよと、昨夜六さんから借りた1000円札を出してみせる。

さっそく、コッペを連れ、高台に戻って来たシャンソンだったが、そこにはひげ面の見かけぬ大男がおり、父つぁんから、悪い虫がつかないようにと仕事を言いつけられていた。

用心棒として雇われたのはジャイアント(舟橋元)と言う浮浪者で、自分は人一倍食べるから食べ物だけは宜しく頼むと父つぁんかに念を押していた。

あんなのがいたらとても近づけないよとシャンソンは又弱気になる。

新宿歌舞伎町の「ミラノ座」の前の広間の噴水の水を飲んでいたジャムは、絵描きから呼ばれ近寄ると、仕事をするんだと言って、「舶来コ○キ」と書かれた紙を首から下げられるが、自分は座れないと言うと、そのまま立ってても良いやと言うことになる。

その後、物乞いの仕事を終え帰って来たジャムは、我々も清潔が第一と言いながら、絵描きの来ていた服を脱がして燃やそうとしたので、慌ててポケットの中に入れていた財布を取り出す絵描きだったが、その時、空だと思っていた財布の中に1枚の宝くじが入っている事に気づく。

急いで、靴磨きをしていたニュースヤの所に出向いた絵描きは、拾った新聞を拡げ、宝くじの当選番号を調べ出す。

一方、モン吉は、「ホルモン軒」でグラマーに指輪を手渡そうとしていたが、グラマーは、私にはちゃんと心に決めた人がいるのよ!と迷惑がる。

そこにやって来た絵描きが、当たったよ!あんたから買った財布の中にあった宝くじ、4等の30万!と報告したので、10円で売ったのは財布であって、中の宝くじは売ってないよとモン吉は言い、絵描きが持っていた宝くじを奪い取って店を出て行こうとする。

俺も持っていたんだから分け前くれよと絵描きが頼むと、後で1000円やるから、あんたたちもみんなにしゃべっちゃ困るよと、モン吉は店の主人にも口止めをする。

その後、グラマーを連れ、町に出たモン吉は、服屋や靴屋でグラマーと自分の服と靴を買いそろえる。

そんな2人に気づいたのがニュースヤだった。

やがてモン吉とグラマーは、レストランにやって来る。

良くこんな店知ってたわねとグラマーが感心すると、ここのゴミ箱は俺の専属になっているんだなどとモン吉は自慢する。

ウエイターからメニューを渡されたモン吉は、その意味が分からず自分のものにしようと抱え込み、焼酎!と頼むが、ウエイターが驚くと、この店にそんなものはないわよと呆れたグラマーは、ハイボールをジョッキでなどと注文し、またもやウエイターを驚かせる。

さらに、注文をしようとしてもやり方が分からずモン吉が戸惑っていると、ウエイターが御料理はそのメニューに書いてありますと教える。

はじめて、メニューの意味を知ったモン吉は、適当に料理名をさして注文するが、全部スープですか?と言われたので、面倒になり、近くのテーブルで他の客が食べていたものを指差し、あれを全部!と頼む。

その時、レストランにやって来たのが、ハチ公、ジャム、ニュースヤ、絵描きと言ったバタ屋仲間だった。

彼らはボロボロの服を店員に預け、驚くモン吉のテーブルにやって来る。

宝くじ当たったんだって?とハチ公が言うので、しゃべったな!とモン吉は絵描きに詰め寄るが、俺が3000円持っているのでみんなから訳を聞かれたんだよと絵描きはすまなそうに言い訳する。

拾った宝くじをねこばばしたんだろ?俺たちも祝いにやって来たんだよとハチ公が言うので、モン吉はみんな、パンとミルクで帰ってくれないかな?と頼むが、そんな頼みが通じるはずもなく、全員、ハンバーグなど食べ慣れないものを全部注文する。

酒もたらふく飲み、すっかり上機嫌で高台の住処に戻って来た絵描きは、自分の住まいに帰ろうとするニュースヤに、俺の所に寝て行かないか?と誘う。

ニュースヤが嫌がると、お前は死んだ母ちゃんにあんまり似ているから…と絵描きが言うので、ニュースヤはちょっと同情する。

そうした会話を隣のブロックで聞いていたハチ公は、いかん、いかんと言い、ニュースヤを帰らせると、お前は寂しいんだろ?と絵描きに言い、自分が一緒に寝てやると言い出す。

絵描きと添い寝してやったハチ公は、あんなことして、死んだ母ちゃんに何と詫びるんだと言い聞かす。

翌日、シャンソンと一緒にこっそり高台に戻って来たコッペは、廃墟の前で、1人車輪をバーベルのように持ち上げるトレーニングをしていたジャイアントに近づくと、親し気に話しかける。

ジャイアントは、父つぁんが約束通りちゃんと喰わしてくれないのでとぼやくので、そこの下にあるパンヤを紹介してやろうか?いつも焼け残りのパンがあるんだ。紹介してやるから行かないか?とコッペは誘うが、ジャイアントは持ち場を離れたがらない。

そこでコッペは、5分や10分離れたって、誰にも分かりゃしないよと言うと、ジャイアンとをその場から連れ出す事に成功する。

その間、近くに身を潜めていたシャンソンは、廃墟の下でオカリナを吹き出す。

すると、二階からマリ子が顔を出して、あ、お兄ちゃん!と喜ぶ。

何してるの?と聞くと、貼り絵をしているのだと言い、マリ子は二階に招く。

マリ子が描いていたのは、夕焼けの情景だった。

マリ子は、その絵をシャンソンにあげると言う。

シャンソンは思い切って、マリ子に外に行ってみないか?と誘い出す。

その直後、廃墟の場所に戻って来たジャイアントは、マリ子がいなくなっていることに気づき、慌てて周囲を探し出す。

その頃、マリ子はシャンソンと一緒に、以前よく来ていた夕焼けが良く見える高台の教会の側に来ていた。

シャンソンがオカリナを吹き、マリ子が歌っていたが、シャンソンは、どっか行こうか?海見たくないか?空なんかよりきれいだし、船もいるよと言い出す。

マリ子はその言葉に乗りかけるが、そこにジャイアントや父つぁんが駆けつけて来る。

マリ子!どうしてこんな所へ来たんだ?と父つぁんは叱り、一緒にマリ子を探して、絵描きらと共について来たハチ公は、お前のような奴がいるから俺たちが迷惑するんだ!お別れだ!とシャンソンに告げる。

高台の仲間たちから追い出されたシャンソンに、コッペが握り飯を持って来てやり、本気で追い出すなんて…と、バタ屋仲間たちの処置に文句を言う。

その頃、廃墟の二階に戻ったマリ子に、又、愛ちゃんが「シンデレラ」の絵本を読んでやっていた。

それを聞いているうちに、マリ子は夢を見出す。

(夢)マリ子のシンデレラは馬車に乗って舞踏会に来ると、そこにはシャンソンの王子様が待ち受けていた。

舞踏会で踊っていた貴族たちは、全員、知っているバタ屋仲間たちだった。

王子様と楽し気に踊っていたシンデレラは、真夜中の時報を知らせる鐘の音を聞くと、慌てて城から逃げ出す。

階段を下りる途中でガラスの靴を片方落としてしまうが、それを拾う間もなくその場を立ち去るしかなかった。

後を追って来た王子様は、階段に残されたガラスの靴を拾い上げる。

(現実)グラマーと共に姿を消したモン吉は、もう20日も帰って来ないと花子は父つぁんは相談に来ていた。

父つぁんは、今にあいつも目が覚めるよと慰めるしかなかった。

その頃、モン吉は「松沢モン吉」と表札のついた家で、グラマーと暮らしていた。

そして、その家のお手伝いになっていたのが絵描きだった。

そんなある日、コッペが土管暮らしをしていたシャンソンの所へやって来て、チャンス、チャンス!今、部○に誰もいないの、ジャイアンとは私が誘い出すわと声をかける。

そして、シャンソンと共に高台にやって来たコッペは、何喰わぬ顔で、ジャイアントの近くに行くと、持って来た七輪で鰻の蒲焼きを焼き始める。

空腹のジャイアンとはすぐにその匂いに吊られ近づいて来る。

旨そうだな…とジャイアントが言うので、あげても良いんだよとコッペは誘う。

その間、廃墟に近づいたシャンソンは、小声で二階のマリ子を呼び出し、海に行かないか?と呼びかける。

ジャイアントは、廃墟から少し離れた所で蒲焼きにむしゃぶりついていたので、マリ子がシャンソンに連れ出された事に気づかなかった。

その後、マリ子がいなくなった事を知ったハチ公たちは、手分けして探すが見つからない。

コッペとジャイアントもさんざん探し廻って、見つからなかったらしく、がっくりして高台に戻って来る。

何のための用心棒なんだ!とハチ公はジャイアントを怒ると、シャンソンがいなくなっているとニュースヤが言うので、犯人はシャンソン!とジャムが指摘する。

マリ子がいなくなったので、寝込んでしまった父つぁんを案じた花子がシケタ先生を呼んで来るが、これは孤独性不安症と言うもので薬では直らんと診断する。

そこにやって来た絵描きが、モンちゃんの心臓が破裂しそうなんだ!と言い、シケタ先生を連れて行く。

モン吉の家にやって来て寝込んでいたモン吉を診察したシケタ先生は、腎臓も肝臓も悪い!寝てばかりいるのではなく、働くことだ。いい加減に元の奥さんの所へ帰りなさいと言い聞かせるが、モン吉はグラマーとの同棲を諦めきれないようだった。

それが一番毒なんだ…と、絵描きから焼酎を差し出されたシケタ先生は、飲みながら嘆く。

その頃、マリ子を連れ出したシャンソンは、横浜にある目指す金持ちの家にやって来ていた。

ごめん下さい!と声をかけても、広い家の中は無人のように静まり返っていたので、2人は勝手に中に入り込む。

マリ子は、お兄ちゃん、ここ、シンデレラのお城みたいやな〜と嬉しそうだった。

テレビやふかふかしたソファー、テーブルの上に置かれていたオルゴールなど、マリ子にとっては何もかも珍しいものばかりだった。

オルゴールの中で踊る男女の人形は、マリ子を夢見心地にさせる。

その時、誰だ!と二階から降りて来たのは、この家の主金田(北竜二)だった。

金田さんですね?と挨拶したシャンソンは、お嬢さんを連れて来たんです、あの子ですとマリ子を紹介すると、僕はバタ屋です。大阪であの子を仲間にしたんです。今18才です。言葉に訛もありますと説明し、きょとんとしているマリ子の方には、本物のお父ちゃんだよと言い聞かす。

マリ子の姿を観た金田は、確かにあの子に違いないと喜ぶと、お前は今からここの家の娘になるんだ、二階にお前の部屋もあるんだよと優しく声をかける。

二階の部屋には、マリ子のために用意されていた服や靴がたくさんあり、マリ子はそれを観て大喜びする。

金田の方も、わしは独りぽっちだった。あの子のお陰で家中いっぺんに明るくなったじゃないかと喜び、シャンソンにも、しばらく逗留してくれないか、お礼もせんとならんから…と申し出る。

そこにやって来た秘書らしき紳士はコッペに写真を見せていた人物だったが、金田に、どうやらお嬢さんは亡くなったようですと報告する。

金田は驚いたように、娘ならあそこにいるよとマリ子を指したので、秘書は驚きながらも、私の調査に間違いはないはずなんですがね〜と首を傾げる。

その頃、高台の廃墟の中では、花子が、寝込んでしまった父つぁんの背中に灸をすえながら、私がきっとマリちゃんを見つけてあげるから…、苦しいかい?父つぁん…と慰めていた。

シケタ先生を呼びに行った花子だったが、あの病気は薬は直らんと言うばかり、そこに又、絵描きがやって来て、モン吉がグラマーに押しつぶされそうなんだと訴えに来る。

さらにその直後、そのグラマーがやって来て、死んじゃった!と言うので、それを聞いた花子は、ざまあみろ…と哀し気に吐き捨てる。

あの高台の教会の墓地に松沢モン吉の墓を作り、ジャムがハーモニカを吹く中、仲間たちが参列して別れを告げる。

モン吉の似顔絵を描いた板を墓に備える。

そこに、花子と愛ちゃんがやって来て、愛ちゃんに墓に花を供えさせる。

お父ちゃん、どうして死んだの?と愛ちゃんが聞くので、ワリィ病気にかかったんだよと説明する花子。

参列していたシケタ先生が、花束を花子に渡し、それを墓に供えた花子は、バカだよ、お前さんは…と墓に語りかけると泣き出す。

側にいた絵描きも泣き出す。

分かったな?柄にもないことをすると、最後はこうなるんだ…とみんなに言い聞かすハチ公。

そこに、ニュース!ニュース!と駆け寄って来たニュースヤは、マリちゃんの居場所が分かったんだ!コッペが怪しいと思って調べたら、マリちゃんには賞金100万円がかかってたんだって!とみんなに知らせる。

その頃、横浜の金田邸の娘になったマリ子は、きれいな服を着せられ、投げ輪ごっこなどをして遊んでいた。

しかし同じくこぎれいな服を着るようになっていたシャンソンは、マリ子が金田の実の子ではないと知ったので連れて帰らねば…と申し出るが、秘書は、主人もあんなに喜んでいますし、あなたは何もせず、この賞金だけを持ってお帰り下さいと勧める。

迷うシャンソンに、女中がお客様ですと告げに来る。

そんな金田邸にやって来たのはコッペだった。

巧くいってる?賞金は?とコッペは聞くので、もらったことはもらったけど、オレ、何が何だか分からなくなったよ。マリちゃんは本当の娘じゃなかったんだ。本当の娘はとっくに死んでいたんだ。だから、このお金は受け取れないんだよと、札束を包んだふろしき包みを前にコッペに打ち明けるシャンソン。

これが100万円?と驚いたコッペは、これで私たち結婚できるんだよ!と本物のベッドで寝られるんだよと説得するが、俺たちがマリちゃんを連れて来たのは、金田さんを本当のお父さんだと思ったからだったはずだよとシャンソンも言い返す。

驚いたことに、さらにその後、どうやらコッペを尾行して来たらしき、ハチ公らバタ屋連中が金田家にやって来る。

女中が必死に止めようとするが、彼らは怖じけるどころか、遠慮なしに屋敷内に入り込み、マリちゃんはどこだ!どこに隠した!と探し始める。

それに気づいたシャンソンとコッペは、札束の入った風呂敷包みをテーブルの上に置いたままこっそり逃げ出す。

二階で下の騒ぎに気づいた金田は、秘書にどうする?と相談するが、秘書は自分だけ部屋の外に出て、応接間のテーブルの上に置いてあった風呂敷包みに気づくと、それを手に取り、どうか、これを持って帰ってくれないか?とハチ公たちに頼む。

しかしハチ公は、こんな所で買収されるか!おい!俺たちを見損なうなよ!と秘書を睨むとその風呂敷包みを押し返す。

部屋の中にいたマリ子は、なあ、お兄ちゃん、帰ったん?と金田に聞くので、金田が部屋の外に出て、秘書は部屋の鍵を外からかけてしまう。

マリ子は、外の声が気になり、自分もへやを出ようとするが鍵がかかっていてドアが開かない。

お兄ちゃん!と呼びかけながら、マリ子は裏の階段から家を抜け出してしまう。

高台の廃墟の前では、父つぁんの診察を終えたシケタ先生が、なるべく安静にしておきなさい。娘さんが帰ってくればぴたりと直るはずだと花子に伝えて、帰ろうとしていた。

その時、近くの廃墟の下で爆発が起きる。

そこから出て来たのは御前様で、ついにロケットが完成した!と驚いている花子に言う。

そんな御前様の様子を観ていたシケタ先生は、聴診器を御前様の額に当てて、大分いかれとるわい…と嘆く。

しかし、当の御前様は、人工衛星の仕度をしろ!出発だ!などと言うばかり。

そこにタクシーで帰って来たのが運転手で、手みやげ持参で御前様に挨拶に来るが、その運転手を側に呼び寄せたシケタ先生は、頭がすっかりいかれちょるよ。少し病院に入れて、頭を休めた方が良いと言い聞かす。

運転手はその言葉に愕然とし、持って来た酒を御前様に手渡すと、御前様は大いに喜び、マダム!祝い酒じゃ!出発じゃ!と花子に話しかける。

そこに、横浜に行っていたハチ公たちが戻って来る。

マリちゃんは?と花子から聞かれたハチ公は、逃げられちゃったよ、シャンソンも…と力なく報告し、もう一つの所だったな…と悔しそうに絵描きも言う。

その声に導かれたのか、廃墟の中から、マリ子を連れて来てくれたのか?と父つぁんが出て来て、いないと知ると、マリ子は一体どうしたんだ…と立ちすくむ。

でも、居所は分かったから、寝床に…と花子は父つぁんに言うと、御前様、入院させないと大分悪いんだって…とハチ公に教える。

ハチ公は、それが宜しい…と納得する。

御前様は自分のことを言われているとも気づかないのか、みんな、火星に行って平和に暮らそう!と呼びかける。

そこに戻って来た運転手が、御前様、準備が出来ましたです。シケタ先生もご一緒にお願いしますと声をかける。

どうした?みんなは行かんのか?と御前様は、その場で並んで見送っていたハチ公たちに声をかけるので、後でみんなでうかがいますとハチ公が代表して挨拶する。

火星は良いぞ、原爆はないし、天国だ…と嬉しそうに言う御前様に、さようなら…、御前様…ニュースヤも挨拶する。

御前様とシケタ先生をタクシーに乗せ、運転手が出発するのを高台から見送った花子は、御前様がいなくなると寂しくなるね〜…と言い、時々、みんなで見舞いに行ってやろうと絵描きが提案する。

みんなが、そうしようと話し合っていたその時、ジャムが下にやって来た別の車を見つける。

そこから降り立ったのはマリ子と、バタ屋のような汚いなりをした金田だった。

高台のみんなの所にやって来たのが金田と知ったハチ公たちは驚くが、金田は、わしもお仲間に入れてもらおうと思って…と照れくさそうに申し出る。

その頃、土管に戻っていたシャンソンは、マリちゃん、どうしているかな?とコッペに話か開けていた。

コッペは、ちょっと観てみなよ!と遠くに見えるアパートを指差し、夏は冷房、冬は暖房、蛇口を捻るとお湯も出るんだってさ…、私たちは土管暮らししているって言うのにね…と悔しそうに言う。

シャンソン、私たちももっと上に行こう!二人でやればきっと何とかなるさ!と励ます。

父つぁんと再会したマリ子は、シャンソンのお兄ちゃんは?と聞くので、用があって遠くに行ったんだと諭す父つぁん。

帰って来はる?と哀し気にマリ子が聞くので、帰って来るよ今に…と父つぁんと花子は言い聞かす。

久々に帰って来たマリ子に、お姉ちゃん、遊ぼう!と誘う愛ちゃん。

ハチ公は、バタ屋になりたいと申し出た金田に、物好きでは続かんよと忠告するが、わしはただ、あの子が幸せになるのを観たいだけだ…とマリ子を眺め、そしてわし自身も楽しく暮らしたいんだよと答える。

そこに、みんなに良いもの聞かせたげるよと言いながらニュースヤが、むき出しのアンプと機械を持って来る。

それはラジオのガラクタだったが、ちゃんと電気を通すと音が聞こえて来た。

新宿松竹座でコロンビア提供の音楽番組が始まった所だった。

出演するのは小坂六也さんとワゴンマスターズの皆さんですと司会者が紹介しているではないか。

あの流しの六さんのことだった。

しかも、六さんが歌い出したのは、オンボロ部落に朝が来る〜♪と言った歌詞だったので、俺たちのことじゃないか!六さんも売り出したもんだなと一同はすっかり嬉しくなる。

会場では、グラマーとオカマのトンコが客席に座り、しっかり六さんのステージに聞き惚れていた。

六さんは出世したのに、俺たちは相変わらずオンボロ人生だな…と絵描きがぼやくので、六は出世した。モン吉は死んだし、御前様は入院した。だが今度は金田さんが来たし、これからもみんなで仲良くやって行こう!とハチ公がみんなに言い聞かす。

そして、ジャイアントにメザシを買って来い!絵描きは焼酎買って来い!などと、てきぱきと金田歓迎会の準備を始める。

その時、父つぁんは、今まで会いちゃんと一緒に遊んでいたマリ子の姿が見えないことに気づく。

マリ子は、いつも来るあの丘で夕焼けの歌を歌っていた。

そこに、いつか逃げ出したあの野良犬のクロが駆け上がって来る。

マリ子は喜び、クロ!どこ行ってたねん?と言いながら抱き上げると、お父つぁんと所へ行こうなと話しかけながら、階段を降りて行くのだった。


 

 

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