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南太平洋波高し

ニュー東映の一見オールスター戦記物。

鶴田浩二、田崎潤などと言ったベテランも出ているが、メインは、梅宮辰夫や水木襄、千葉真一、三田佳子と言った当時のニューフェースたちで、高倉健さんなどはゲスト的に出て来る印象である。

他に、新東宝から移籍した丹波哲郎や中山昭二、久保奈穂子と言った面々も出ているが、丹波哲郎と中山昭二は出番も少なく、ほんの顔出し程度に出ている印象である。

当時、スターと言えるほどの俳優は鶴田浩二以外には見当たらず、他の新人たちの見せ場も少なく、特に印象に残るキャラクターもいないため、全体的に小粒な印象が残る。

あえて言えば、犬死にはしたくないと言う信念で、特攻機が不調だと必ず帰ってくるインテリタイプの三好を演じている梅宮辰夫のキャラクターだけがちょっと異色だが、「永遠のゼロ」の主役同様、いかにも戦後の感覚で考えついたキャラクターと言う感じで、説得力は感じられない。

それに対立する千葉真一などもまだ演技が伴っていない感じで、健さんなども、観るからにまだ未熟な印象である。

TVの子供番組「忍者部隊月光」の主役だった水木襄が比較的主役に近い役を演じているの珍しいくらいか。

戦闘シーンはミニチュア特撮なのだが、新東宝のミニチュアと同じで、大きなプールがないので、どうしても船などのスケールが小さく、全体的に玩具にしか見えず、チャチな印象なのは否めない。

それでも、グラマンが国民学校を襲撃するシーンなどでは、実景との合成シーンもあり、樹木の後を飛び過ぎるカットなどは白黒画面と言うこともあり不自然さはあまりなく、その移動マット技術には驚かされる。

ラストの戦闘シーンもいかにも大雑把な描写と言った感じで、低予算映画としてはそれなりにまとめられているのだが、如何せん見応えがあるとは言い難い。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1962年、ニュー東映、棚田吾郎脚本 、 渡辺邦男脚本+監督作品。

爆発する戦艦を背景にタイトル

太平洋戦争開戦当初の優勢も、物資を誇る敵の前に形勢は逆転し、特攻を決意する…

若者たちは空から海から散って行くのであった…(と言うようなテロップ)

マリアナ西方

海面を移動する潜水艦の潜望鏡

潜望鏡を覗いていた艦長の近藤(高倉健)は、敵哨戒区域に突入!と言うと、回天搭乗員たちを呼集する。

潜水艦搭乗員と回天搭乗員の最期の別れが行われる。

中尾(丹波哲郎)、小出(南廣)、陶山克巳(水木襄)など、回天搭乗員が挨拶をするが、回天に登場するのは名誉に思っていると小出が発言すると、陶山も、我々の特攻後、本艦が傷つくことがないように願いますなどと、自分たちの死よりも他人を思いやる模範的な挨拶をするので、潜水艦搭乗員たちは感激する。

成島(今井健二)が、出身校である慶応義塾の校歌を歌いたいと言い出すが、いつしか潜水艦搭乗員も加わり、「同期の桜」の大合唱となる。

その後、近藤艦長は、再度潜望鏡をあげると、総員配置に付け!と命じる。

回天搭乗員中尾は、他の搭乗員全員と握手し、頑張れよと励ますと、自ら1号艇に乗り込む。

2号艇には成島、3号邸には陶山が搭乗、5号艇まで準備良し!と電話連絡がある。

目標は輸送船と二隻の駆逐艦

1号機発進用意!と近藤艦長が指示を出し、中尾中尉が発進する。

2号艇の成島も発進、近藤艦長は潜望鏡をあげ、結果を確認する。

今度は俺の番だ!と陶山は緊張するが、中尾と成島が見事命中したのを確認した近藤艦長は、各艇、発進もとい!と命じたので、陶山たちは了解!と答え、潜水艦に戻る。

やがて敵の爆雷攻撃が始まる。

爆雷、防御!と近藤艦長が指示

陶山は、潜水艦と一緒に沈められるなら発進した方がましだ!鳴海たちの死を無駄にしたくない!と焦っていた。

近藤艦長は、引き返して来たな!と敵の動きに緊張する。

その直後、前部発射管浸水!との報が届く。

陶山たちは、駆逐艦の攻撃をさせてください!と近藤艦長に願い出るが、今、飛行機からも爆雷を受けている!と近藤艦長は答え、航海長に、燃料タンクを開けようと命じる。

燃料を海面に流出させ沈没したように偽装する作戦だった。

航海長は、4番燃料タンクを開けろ!と命じる。

海面に放出された燃料が広がる。

九州、三楯海軍航空基地

飛び立った特攻機の戦果を無線の前で待っていた渥美大佐指令(田崎潤)は、全機突っ込んだか?と確認していたが、結城少尉(千葉真一)が一機帰ってきました!と報告に来る。

戻って来たのは5番機だった。

エンジン不調!と報告しながら5番機から降り立ったのは、予備士官あがりの三好少尉(梅宮辰夫)だった。

そこにやって来た結城少尉は、貴様、これで3度目の帰還だ!敵前逃亡だ!となじる。

しかし、それを聞いた渥美は、鋭気を養っておけと慰め、3番機を整備した橋本兵曹(小野透)は、機体の不調を起こしたことを三好に詫びる。

それでもなお結城は三好に、貴様!何故特攻しなかった!と再び責める。

早稲田の同期の二人だったが、三好は経済学部出身、結城は海軍兵学校出身と言うこともあり、根本的に考え方が違う!と言い、三好は受け流す。

出撃した8機の内、山本機は故障だったと三好が報告したので、貴様、予備学生として恥ずかしいと思わんか!と側にいた長谷川(曽根晴美)が三好に言いよる。

俺は、山本に戻れと言ったんだが、よたよた付いて行った…と悔しそうに言うので、廻りにいた仲間たちも、卑怯だ!と三好をなじるが、そんな言葉を歯牙にもかけない三好は、山本が好きな歌だと言うと、五木の子守唄をいきなり歌い出す。

部隊では貴様のことを何と噂しているか知っているか?卑怯者、恥知らずだ!と、側にいた仲間たちが一斉に三好の態度を責める。

それでも三好は、平気な顔でトラックに乗り込みその場を立ち去る。

司令室にやって来た結城は渥美指令に、5番機は250Kgの25番爆弾を抱えて帰還しており、故障箇所を調べた結果、確かに三好の報告通りだった。三好は見所がある兵士ですと報告する。

それを聞いていた沢村(中村昭二)などは異議を申し立てるが、優秀な飛行機さえあれば、若者は死なずにすむんだ…と渥美指令は言い聞かせる。

副司令は、敵の爆撃も激しくなったそうで、いよいよ本土決戦になりますか…と憂えていた。

その頃、三楯国民学校に長谷川等と一緒にやって来た三好は、グラウンドで遊んでいた小学生たちを呼び集め、1人ずつアンパンを配り始める。

そんな中、1人だけ後の方に離れて立っている子を見つけた三好が、あの子、どうした?と子供たちに聞くと、よし坊は、父ちゃんも母ちゃんもいないんだと言うので、その寺坂よしおと言う子を呼び寄せると、大きくなったら強くなるんだぞと優しく言い聞かせるのだった。

長谷川に子供たちが、玉之浦に潜水艦が来たよと嬉しそうに教えている姿を見た三好は、子供は宝だ…としみじみ呟くのだった。

玉之浦の港に上陸して来たのは陶山たち、生き残った回天搭乗員だった。

この海の向うで死闘を繰り広げたとは思えないな…、生きて帰って来たのが不思議なくらいだ…と、陶山は海を眺めて感慨にふける。

ラジオからは、大本営発表の勇ましい戦果報告が流れていた。

それを聞いていた結城少尉は、山本少尉!今のは貴様たちがあげてくれた戦果だぞと、山本少尉の遺影を前に声をかけていた。

仲間内だけのささやかな葬儀を行っていたのだった。

そこに、山本の母からの手紙が届いたと言うので、三好に読んでやれと勧めるが、三好は、読まん!断る!と拒絶したので、代わりに長谷川が読むことになる。

その頃、陶山は、嫁いだ姉の高木トミ子(久保奈穂子)に会っていた。

高木家では、トミ子の義父の健吉(永田靖)と義母のお圭(沢村貞子)が陶山を歓待してくれ、ミッドウェイで戦死した息子の武夫の仇を討ってくれ!と言い、酔った勢いで軍歌など歌い始める。

醜態を見せる夫に、お止しなさい!と止めるが、克巳さん、トミさん、武夫はあっぱれだった。わし等に何も知らせず、散歩にでも行くように…と呟いていた健吉は、そのまま寝入ってしまう。

息子が戦死してから、急にお酒の量が増えまして…、寂しがっているんでしょう…とお圭が健吉をかばう。

戦争を始めたんだから、これを乗り越えなければならないと思っていますと陶山は答える。

その後、姉と二人きりになった時。かっちゃん、何か言いに来たんじゃないの?東京のお母さんももう年だし、2人きりの姉弟でしょう?お別れに来たんじゃないの?とトミ子は聞く。

あなたは特攻隊に志願なさったのね?とトミ子が重ねて聞くと、僕たちが行かなければ誰が日本を救うんです?マリアナで死ぬのを免れて来たのですと陶山は言う。

いつか手紙に書いていた洋子さんは知っているの?とトミ子は確認する。

その頃、三好や長谷川は、早稲田の同期たちと近くの料亭で、亡くなった山本の追悼会を行っていた。

同じ早稲田出身の陶山は姉さんに会いに行ったと言うので、その場に出席した全員で早稲田の校歌を歌うことにする。

その歌声に気づいたのが、たまたま料亭に来ていた結城で、女中から予備士官の三好さんたちですと聞くと、自分もその部屋に入って来る。

飛行長に弁護してくれたそうだな?と三好から聞かれた結城は、俺は弁護などせんよ。いずれゆっくり、貴様の曲がったへそを修正してやると答え、山本は海に墜落したことをしているか?と聞く。

犬死にさせたことを聞いているのか?と三好が睨むと、名誉の戦死だ!と結城が言うので、その考えが根本的に違うんだ!と三好は反論する。

そこに入って来た芸者寿美栄(三田佳子)は、お坊ちゃんたち、目の色を変えてどうしたの?と結城と三好をからかうように聞いて来る。

女が口出しするな!と三好は怒るが、職業精神よ!これでも愛国婦人会に入っているのよ!3回も帰った人の部屋に入れないわ!と寿美栄も負けていない。

その時、突然、日曜なのに空襲警報が鳴り響き出したので、料亭内は総員退避!と言うことになる。

沖の濱停留所の前で、陶山を見送りに来たトミ子は、くれぐれも身体に気を付けてねと声をかけていた。

陶山は、一緒に見送りに来ていたトミ子の息子健一(風間杜夫)に元気でな!と声をかける。

洋子さんのこと、もう1度考えてねとトミ子は伝える。

玉の浦の港で、三好は同期の陶山と出会う。

陶山は三好に、入管した時、貴様の顔を第一に覚えたよと笑う。

やがて、三楯海軍航空基地の飛行課教官として大国(鶴田浩二)が赴任して来る。

その挨拶の場で、ここの感想を聞かれた三好は、大国大尉殿!自分にとっては壮快ではありませんなどと生意気な口を聞き、自分の名刺を渡そうとしたので、海軍では「殿」はいらない…と答えながら、大国はもらった名刺をその場で破り捨てると、その内、非常に壮快だと言わせてやろうと笑う。

高等教育を受けたお前たちには、絶対服従は嘲りの対象になるだろう。だが、敵を前にして論争していたのでは話にならん!などと話し始めるが、そんな大国の目の前で、三好は居眠りを始める。

それに気づいた大国は、総員罰直!全員、練兵場三周!と命じる。

家族との面会日、陶山は恋人の洋子(水上竜子)と会う。

洋子は手作りのおはぎと、頼まれていた自分の写真を手渡す。

ところが陶山は、大事な洋子の写真を紛失してしまう。

教官にでもバレれば叱責されると、三好たちは案じ、一緒に写真を外で探していたが、そこに大国がやって来て、何を探している?と声をかけて来る。

仲間たちは慌て、陶山のお母さんの写真であります!と答えたので、これは違うな…と言いながら大国が手渡したのは洋子の写真だった。

思わず三好が、20年前の写真であります!と答えたので、今日の洒落は面白かった。貴様には無頼漢の血が流れておるな?と苦笑しながら去って行く。

海岸で陶山と会った三好は、大国教官はフィリピンに送られるそうだ。成島も山本も死んだ…と話していた。

俺が回天に乗ることを洋子さんは知らないと陶山が言うと、俺なんか、この二月、台湾から出撃した時、3度も引き返して来た。俺は生きる!山本は海に突っ込んでしまったが…と三好は言う。

言うなかれ君よ、別れを 世の常を…と陶山が、大木惇夫の詩の一説を朗読し始めると、わが征くはバタビアの街…、かがやかし南十字をいつの夜か、また共に見ん…と三好も続ける。

その後、陶山は、三好!お前に会えて良かった。これで心汚さず、母や洋子さんに会える!と感謝する。

後日、三楯国民学校の校庭の真ん中に置かれたオルガンを三好が弾き、小学生たちが「お山の杉の子」を歌っていた。

そんな中、よしおがお守りを持っているのに気づき、姉ちゃんから作ってもらったと言うので、ナイスか?と三好が聞くと、ナイスって何?とよしおは聞き返す。

その時、グラマンが三機飛来して来たので、退避!と子供たちに声をかける。

近くの防空壕に子供たちを退避させた三好だったが、そこにやって来た寿美栄が、3年2組のよ死亡を知りませんか?と聞いて来る。

三好は、芸者の寿美栄と知ると、貴様と会うと必ず敵に会うな…、スパイじゃないのか?と冗談を言う。

そのよしおは、大事なお守りを逃げる途中で落としてしまったことに気づいていた。

お守りは、校庭中央のオルガンの側に落ちていた。

グラマンの機銃掃射が校庭を縫っている中、無謀にもよしおがお守りを取りに戻ろうとしたのに気づいた三好は、自ら駆け寄り、オルガンの側でよしおを捕まえ、身を持ってかばうが、その際、自分の足に機銃掃射を受けてしまう。

基地に戻って来た三好の怪我の手当をしてやりながら、精神が弛緩しているから怪我をしたんだと結城は嫌味を言う。

三好の方は、最初の弾は、45度で南北に走ったなどと話をそらす。

部屋を出た結城は、そこによしおを連れた寿美栄が来たので、ここは女人禁制だと文句を言うが、部屋に入ったよしおは、そこにいた三好に、これあげると言ってお守りを渡す。

息子に姉と呼ばせているのか?と三好が聞くと、姉芸者の子なの…、よ死亡の父親は分からないでしょう?みじめなものよと寿美栄が教えると、俺と同じだ…と三好は答える。

フと気がつくと、よしおが黒板に飛行機の絵を何機も描いており、飛行機が足りないから増やしているのなどと健気なことを言う。

そんなよしおを呼び寄せた三好は、頭の天辺を覗き込み、つむじはまっすぐだなと褒める。

やがて三楯海軍航空基地に、帰国した大国がパイロットとして着任し、渥美指令は、宜しく頼むよと挨拶をする。

横須賀以来だ…と言い、居並んだパイロットたちを見回した大国は、三好に気づくと、貴様、名刺はどうした?戦場を巡った感想はどうだ?と聞くと、三好は、おおむね爽快でありますと答える。

三好、精神棒でこれからも鍛えてやる!と大国が笑うと、三好は犬死には嫌いであります!と三好も笑って答える。

俺も56回出撃して、56回帰って来たかな…と大国が言うと、その場にいた全員も笑い出す。

その後、再び陶山と海岸で会った三好は、俺の方も出撃らしいと伝える。

陶山は、母と洋子が面会に来ると書かれた手紙を三好に見せるので、抱きしめて来いと言葉をかける。

三好、これが最期だと思う…と陶山が返事をしていると、そこにやって来た大国が、秀才の陶山か?美人の細君殿に会えなくて残念だなと冗談を言うので、女は乗せない回天であります!と三好が教える。

貴様、魚雷の回天か?立派だぞ、頑張ってくれ!と急に真顔になった大国は陶山を激励する。

その後、玉の浦のバスの停留所で母親(風見章子)と洋子を、トミ子と共に出迎えていた陶山だったが、突然の空襲を受け、陶山は洋子をかばい浜辺の船の下に身を隠す。

陶山の胸に抱かれていた洋子は、このままで…、このままで…と呟いていた。

その後、トミ子の高木家で陶山と水入らずで2人きりになった洋子は、夢の国ってきっとこんな所だろ思うわと言うので、この写真を覚えていますか?と、以前、洋子からもらった写真を陶山は取り出す。

洋子はそれを観て、良く持っていてくださいましたと感激し、陶山に抱きつく。

翌朝、玉の浦の港で洋子と母との別れを惜しむ陶山が、会えて良かったと伝えると、短い一日でしたわと洋子も寂しがる。

母も、東京も焼け野が原で、ここへ来るのも三日もかかりましたと言う。

船が出る時刻になったので、陶山は、姉さん、お母さんを宜しく!洋子さん、焼け野が原の中から立上がってください!と伝えると、私たちの日本のために頑張ってください!私はここに降りますと洋子も言葉を返す。

艀に乗って潜水艦に戻って行く陶山(白い雲の中から囁く~♪と歌が重なる)

ある日、第326海軍航空隊三楯基地では、慰問団の踊りが兵隊たちに披露されていた。

整備士の橋本兵曹は三好に、整備が整いました!と報告していた。

そこにやって来た結城が、つむじも直ったようだな?と三好をからかう。

橋本、貴様も両親いなかったな…、俺と同じだなとしみじみと言うと、俺が乗ると又故障するかな?と冗談で紛らす。

俺は命を大切にする。機体が不調で、基地に帰れば良いものを、万策尽きて海に落ちるものがいるのは、帰還すれば、お前たちから臆病者呼ばわりされるのが恐いからだ!と三好が責めると、黙れ!と結城は怒り出す。

そのまま殴り合いになりかけた時、やって来た大国が、止めろ!ばか者!と叱りつける。

貴様たちにはあの地方人が見えんのか!あの人の中にも、空襲で親兄弟を殺された人がいるんだ!と踊っている慰問団の方を見やり、気持ちを殺せ!地方人にすまんと思え!と大国は2人に言い聞かす。

その時、空襲!退避〜!の声が基地内に響き渡る。

急げ!と言いながら、飛行機に乗り込む大国

結城と三好も自分の機体に乗り込む。

慰問団も避難した基地を、敵機が攻撃して来る。

近くの防空壕に逃げ込んでいた寿美栄は、いち早く飛び立った三好たちの三機を見守っていた。

航空長も、あの三機は何だ!と不思議がる。

下から見ていた長谷川は、三好だ!と喜びの声をあげる。

大国等三機の活躍により、敵機は退散し、基地に降りて来た三機の内、三好は橋本兵曹に、ご苦労!上出来だったぞ!と整備の確かさを褒めてやる。

大国は、三好も結城も大した腕になったなと感心する。

結城は興奮覚めやらぬと言った表情で、自分は無我夢中でした!と報告する。

敵は16機、邀撃したのは6機だ。結城が一機、三好が一機、俺が四機だと大国は2人の戦果を教える。

そこにやって来た渥美指令は、臨機の措置をとってくれたと3人に感謝する。

しかし、その後、いよいよ基地から出撃させることを渥美指令から聞かされた大国は、部下の大半をみすみす殺すのと同じだ!と司令室で猛反対する。

沢村(中山昭二)は、317部隊が来ているんだ、頼む!と大国に声をかける。

副司令は稼働できる機体は26機ありますと教えると、自分も特攻機で行かせてください!死後の旅で部下たちが迷わぬように、大国が班を率いて、三途の川を渡してやります!と大国は訴える。

渥美指令は、大国、頼んだぞ!と言い、副司令は、大国、三好、結城たちの慰労会をやると伝える。

料亭で隣に座った結城は三好に、俺はお前を誤解しとったと詫びる。

そこによしおと共にやって来た寿美栄は、私、芸者を辞めるの、この子と真剣に生きることにしたのと三好に伝える。

三好はよしおに、大きくなったら、正しいと思ったことを何でも言えるようになれ!俺たちは、これからの日本を背負うお前たちの幸せのために行くんだ。大きくなったら政治家になれ!日本をこんなみじめな姿にするんじゃないぞと言い聞かせる。

その時、部屋に入ってきた大国は、今言ったのは三好か?と詰問し、貴様、遺言のつもりで言ったな!出来過ぎているぞ!俺も言いたかったことだと真顔で言うと、第一次特攻部隊の指揮はこの大国少佐がやる!各自、私物の整理をしておくように…とその場にいた全員に言い聞かせると、もう良いぞと楽にさせる。

そして、よしおの手を握った大国は、坊や、ちっちゃな手だな〜、早くおじちゃんのように大きな手になるんだぞと優しく言葉をかける。

寿美栄は芸者として最期の踊りとして、五木の子守唄に合わせて踊り出すが、その目は涙で濡れていた。

それに気づいた大国が、上座からどうした?と聞くと、皆様、大国少佐!手を繋いで三途の川を渡るのは賑やかでしょう。取り乱したりしてごめんなさい。みなさん、ご苦労さまですと寿美栄は答える。

大国少尉!親父様!と長谷川が呼びかけ、大国が昔成績が悪かったことを披露すると、海兵ドンケツで出たことをバラしやがったな!と大国は愉快そうに笑う。

そして、歌うぞ!と言い出した大国が「同期の桜」を歌い出すと、三好も結城も肩を組んで、全員が歌い出す。

そんな姿を、寿美栄は1人哀しそうに見守っていた。

近藤船長の潜水艦出撃の日、「八幡大菩薩」と書かれた昇りが翻る中、指令長官が特攻兵を前に挨拶をしていた。

陶山に別れを告げようと港にやって来た三好は、その場にいた洋子から、船は出港したと聞かされ、間に合わなかったか!と悔む。

何だか嬉しそうですねと三好が聞くと、ここにおりますものと自らの胸を押さえた洋子は、あの人きっと帰ってきますわ。帰っても帰らなくても、私の夫ですもの…と言う。

「君のお陰で何もかも美しく見えて来た。君の心もきっとそうであろう」と陶山が洋子に残した手紙には書いてあった。

その頃、潜水艦の中にいた陶山は、母と洋子の写真を見つめ微笑んでいた。

その後、三楯海軍航空基地でも、特攻機の出撃を迎えていた。

敵を粉砕することを祈る!と渥美指令が挨拶すると、聞け!大国一家の殴り込みを決行する!敵機動部隊を捕捉するまで隊形を崩すな!と大国が結城や三好たちに伝える。

0545整合します!と橋本が言うと、三好たちは全員腕時計の時刻を合わせる。

部下たちが整列し直すと、大国は沢村とがっちり握手をする。

機体に乗り込む三好は、橋本兵曹に、調子良いか?と聞く。

本日も最高であります!と橋本は答える。

世話になった…と三好がねぎらうと、武運を祈りますと橋本も答える。

沢村が、総員、帽を振れ〜!と命じ、飛び立って行く特攻機部隊を見送る。

基地の外では、寿美栄と旗を持ったよしおも見送っていた。

潜水艦の中では、陶山が将棋を指し、新たな回天搭乗隊長植芝(大村文武)らはトランプをして、出撃を待っていた。

そんな中、敵機動部隊発見!と伝える近藤船長の声が響く。

植芝は頑張れ!と陶山等に声をかけ、小出が回天搭乗員たち全員と握手する。

三楯海軍航空基地の無線機の前では、発進はまだか?と副司令が焦っていた。

(軍艦マーチが流れる中)一号艇発進!続いて、植芝の乗る二号艇も発進する。

航海長が6分30秒!と発進してからの時間を読み上げる。

二隻の回天は敵艦に激突し、大爆発を起こす。

それを観た近藤艦長は、やった!と喜ぶ。

一方、敵機との空中戦をしていた三好は、左肩を射抜かれていた。

近藤艦長は、三、四、五、各艇発進用意!と命じていた。

快心の突撃を祈る!と励ます近藤艦長に、お世話になりました!祖国の安寧を祈りますと答える陶山

空中戦を行っていた三好は、陶山!犬死にするな!と心の中で呼びかけていた。

回天で敵艦に突っ込む直前、陶山は、お母さん!洋子!と絶叫していた。

大国は機体の翼を大きく揺らし、特攻の合図をする。

大国機、ちょうふ!基地で無線係が叫ぶ。

結城機、ちょうふ!

特攻する大国は飛行帽を脱ぐ。

犬死にはせんぞ!と絶叫する三好

結城機が敵艦に激突し、結城機、ちょうふ終わりました!と基地の無線係が言う。

潜水艦も攻撃を受け、浸水していた。

近藤艦長は、本官は浮上し、敵艦と戦う!メインタンク、ブロー!と指示を出す。

海面に浮上した潜水艦は、そのまま敵艦に突っ込んで行く。

大国機も敵艦に激突していた。

それを見届けた三好は、やった〜!と喜ぶ。

大国機のちょうふ、三好機のちょうふも終わりましたと無線係が伝える。

それを聞いた副指令は、大国…と絶句する。

沢村も泣いていた。

見事であったろう…そう呟いた渥美指令は、窓から空を見上げ敬礼をする。

坊や、ちっちゃな手だな〜。早くおじちゃんのような大きな手になるんだ…

国民学校の花壇を整えていたよしおは、海軍のおじちゃんの声が聞こえるんだ!海軍のおじちゃん、帰って来るよ!と言い出すと、急に校門の方へ駆け出す。

他の子供たちも一斉に付いて行く。

ちっちゃな手だな〜…

しかし、誰も帰って来ないことを知ったよしおは、校門の所で1人しゃがみ込むのだった。


 

 

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