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ごろつき犬

子供の頃から女にモテてしようがない。そして、拳銃が大好きと言う、お調子者で頭の弱い一匹狼のチンピラ鴨井大介主演の「犬」シリーズ第三弾。

今回は、旅先の紀州で出会った謎の未亡人から亭主の敵討ちを頼まれると言う発端から物語が始まる。

自分と同じように銃の名手であるライバルの登場、勝手に惚れられる坂本スミ子扮するバイタリティー溢れる女、そして、大介の好みの美女の登場…と、1作目と似たような構成になっている。

1作目との相違点は、今回はカラーになっていると言うことくらいか?

天知茂演じる、無精髭にしょぼくれたコーツ姿の「しょぼくれ」こと木村刑事も再登場だし、敵のヤクザには成田三樹夫も再登場している。

ライバル役には根上淳、謎の未亡人役には水谷良重、さらに、宮口精二や中田ダイマル、ラケットコンビなど、ゲスト陣も豪華。

後半には、大映お馴染みの「大魔神」役者橋本力も顔を見せている。

プログラムピクチャーとしては、取り立てて傑作とか秀作と言うほどではないが、普通に楽しめる平均的な出来だと思う。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1965年、大映、藤本義一脚本、村野鐵太郎監督作品。

(山道をバイクで突っ走る映像に)タイトル、キャスト、スタッフロール

又、旅に出てしまった…

ええ嫁はんもろうて落ち着こう思うたけど、この男っぷりがハジキと女を捨てられへん。しかたないな~…(男の声が重なる)

そんな鴨井大介(田宮二郎)が、山道の端で、何故か燃え上がったバイクの後部座席部分を消そうと焦っていたとき、横に停まった車があった。

ええ女や…、大介は、車を運転していた女、三沢葉子(水谷良重=二代目水谷八重子)を見て考えるが、その時、停めていたバイクがバランスを崩し崖下に落ちると炎上してしまう。

結局、その女の車に乗せてもらうことになった大介だったが、何でこんなにモテるのやろ?しようがないな…と、赤い革手袋をはめてハンドルを握る女の顔を見ながらにやけていた。

女が部屋を用意してくれた紀州の白浜温泉の宿に泊まることになった大介は、ここは串本~♪などと歌いながら風呂に入っていたが、後から入って来た男の右肩の部分に自分と同じショルダー痕があることに気づいた大介は、その男を怪しみ、一足早く脱衣所に来ると、相手の衣服を確認し、想像通りホルダーに入った拳銃を発見する。

念のため、その銃の弾を一発抜き取り、口にくわえて部屋に戻ろうとした大介だったが、途中の廊下で、浴室にやって来た柄のあまり良くない4人組と遭遇する。

すれ違い様、相手のグループの兄貴分のような男福田(早川雄三)がサイコロを廊下に落としたので、それを拾い上げた大介は、歯で割ってみせると、今晩うかがいますが、こんなん使わんような奴でお願いしますと笑いながら返す。

浴室にやって来た福田たちは、服を来ていた稲取修次(根上淳)に気づくと挨拶し、組長以下幹部連中が全員捕まったので、紀州くんだりまで下って来たと説明する。

稲取は、デカ一人バラして、ほとぼりを冷ましている所なんだと自分の立場を説明する。

部屋に戻って来た大介は、浴室から奪って来た弾丸を改めて見ながら、こら変わった弾やな~…と感心していた。

そして、自分の銃でガンプレイしていたが、そこに仲居の玉子(坂本スミ子)が入って来たので、慌てて銃を隠すと、あんた、死んだ女房にそっくりやな!などと、いつものホラを吹いて玉子の機嫌を取ろうとする。

奥さん、死にはったんですか?と玉子が同情すると、交通事故や、ひき逃げや。今その犯人探し取る所やなどと大介は調子に乗って噓を続ける。

そんなに奥さんに私似てるんですか?と玉子がさらに乗って来たので、女房と一つだけ違うのは、うちのんは片手で握れんくらい胸があったと大介が言うと、胸やったらうちも結構ありまっせ…などと玉子が胸を突き出して来たので、手で揉んでみた大介は、これはなかなかのもんやなどと感心してみせるろ、えらい、ごっつぉうさん!と礼を言う。

しかし、騙されたと気づいた玉子は膨れ、人、嬲りもんにして!と言うので、好きや!と言いながら抱き寄せた大介は、この部屋取ってくれたあの女、誰や?と聞く。

1月前から泊まっているお金持ちの未亡人で、もう19日も泊まってはる三沢葉子はんと玉子はあっさり教えてくれる。

さらに、今晩の博打場どこや?と聞くと、最初は知らないととぼけていた玉子だったが、大介が後で抱いてやるからろ口説くと、あっさり別館の離れの蔵の中やと教えてくれる。

その賭場に参加した大介は、三沢葉子もその場にいることに気づくが、葉子ら他の客が丁で賭けた勝負で、大介だけ半と言い当て勝つ。

上機嫌で部屋に戻って来た大介は、廊下で待ち受けていた玉子から、浮気もん!と睨まれながらも、部屋に入ると、そこに葉子がいることに気づく。

待っててくれはったとは…と大介がすっかり舞い上がると、今夜、私、ここに隠れていたいの…と葉子は言う。

どうせ、この部屋借りてくれたのあんたやし…、未亡人やそうやな?三沢葉子さん、介がベッドに押し倒しながら言うと、どうして私のことを知ってるの?鴨井大介さんと葉子も聞いて来たので、女中に聞いたんや、それより何でわいの本名知ってるんや?宿帳にも偽の名を書いたのに?と大介は警戒する。

紀州の方に逃げたって気いたの…、暴力団の一味に…、主人の三沢は暴力団って知らずにお金を貸したの。主人は北浜で金貸しやっていたの。その関係で取り立ては別の暴力団に頼んでいたの…、そしたら騒ぎが大きくなって…、お願い!主人の仇を取って!と打ち明ける。

むしろ仇になりたいわ…、ボクの心臓も、あなたの心臓も高まってますがな…、冷めてから話しましょうと言いながら、大介は葉子とキスを交わす。

その頃、玉子は女中部屋で、口紅を塗りながら、あの男、遅いな…と大介が来るのを待ちわびていた。

主人を殺したのは、新世界の「スミレ」と言うバーを根城にしている一六会の稲取、辺見、川勝のうちの誰かで、その3人を主人と同じ手段で殺して欲しいのと葉子はベッドで抱き合いながら続けていた。

奥さん…と大介が囁きかけると、いや!奥さんだなんて…と葉子は言い、激しく抱きしめて来る。

大介は、天王寺駅に降り立っていた。

駅前の靴磨きに立ち寄ると、靴磨きの柴田仙造(中田ラケット)は、兄ちゃん、ええ靴履いてるな。先が減っているのは女好きで癇癪持ちの証拠、大人物はかかとが減るなどと話しかけて来るが、その時、近づいて来た地回りが、並んでいた靴磨きたちから所場代を受け取り始めたので、何さらしとる?と大介が睨みつけると、鴨井や!と驚いた地回りは逃げて行ってしまう。

それを観た柴田が、兄ちゃん、大したもんやな~と感心すると、イチコロや…と大介は笑って立ち去って行く。

その後を着けて来たのは、無精髭にトート姿の木村刑事(天知茂)だった。

通天閣が見える街にやって来た大介は、何人もの男たちが血相を変えて何かを追って来たので、何ごとや?と聞くと、焼き鳥の種が逃げたんやと言う。

どうやら鶏に逃げられたらしい。

それがきっかけになり、焼き鳥屋に入ろうとした大介は、数人の男たちに取り囲まれる。

天地会と蒲生会のチンピラたちだった。

親分たちはみんな捕まったんか?と大介がからかうと、グループの中の1人西田(藤山浩二)が顔を貸しい!と大介を誘い、路地の奥に連れ込むと、そこで殴り掛かって来たので、大介は相手になる。

その内、西田たちは、大介の背後に立ってにやついていた木村刑事に気づき、みんな逃げ出すが、大介は、自分を見て逃げ出したと勘違いする。

しかし、背後に人の気配を感じ、振り向いた大介は、何や、しょぼくれ刑事やないか…と木村に気づいたので、ちょっとは月給上がったか?と聞くと、ちょっとな…と笑った木村が大介を誘ったのは、いつもの人気のないうどん屋だった。

又、うどんかいなと大介が呆れると、うどんは自分の人生観に繋がっているんだ。叩いて延ばして…などと木村が、奇妙な講釈を始めたので、掴み所がない…と大介が茶々を入れる。

実は仲間の宮本刑事が殺された。お前より一枚上のハジキの名人だ、一六会の稲取修次!「バー スミレ」の二階にいる。

今、そいつが姿を消したんだ、情報を掴んでくれないか?と木村は頼み、お前が今、武器を所持していたら、不法所持で逮捕できるんだぞ、持ってないだろうが…と、わざとらしく脅して来る。

それでも大介が承知しないので、天地会と蒲生会は厄介やで~、約束聞いてくれたらおれが釘刺しとく。恐いのか?お前より一枚上の相手じゃ、来ないんやな?とからかうように挑発すると、おれより一枚い上の男がいるのなら会ってもええな…と大介は答える。

すると木村は喜び、店の主人に、一杯作ってくれ。うどんの汁やと注文したので、大介は、一杯食ったか…と大介は呆れ、稲取と言うガキ探すため、ハジキはこれから探しますと答え、立上がる。

木村刑事は、分かっとる…と苦笑する。

「バー スミレ」の前にやって来た大介は、好みの女性が店の中に入ったのを見たので、ここのママかいな?こら、楽しみが増えた!と鼻の下を伸ばす。

店にやって来た柴田まゆみ(江波杏子)に、今、組長から電話があって、お前に用があるそうだと伝えたのはまゆみの恋人辺見竜三(山下洵一郎)だった。

稲取の兄貴の所に俺が連れて行く…とまゆみに告げるが、辺見、心底惚れるのか?あの女は一六会の道具やと店の隅に辺見を引っ張り込んで囁きかけたのは、同じ一六会の幹部川勝貞男(成田三樹夫)だった。

まゆみには俺が話すと辺見も言い張るので、俺たちには一銭も入らんのだぞ!と川勝は、まゆみの所へ戻る辺見の背中に語りかける。

まゆみは、稲取さんは私を道具にしているのよ?それでも良いの?辺見さん!私を見て!と迫り、辺見と店の隅で抱き合う。

気を利かせて、川勝が口笛で合図して来たので、辺見はまゆみを促し、川勝がまゆみを連れて店を後にする。

店の側で見張っていた大介はにやりと笑うと、飲屋街に戻ると、先ほど会った天地会のチンピラ2人に自分から近づき、一杯どうや?と声をかける。

しかし、天地会の2人は、知らんことにしてるんや…と、誰かに言い含められたらしく無視して来る。

大介は、そんな2人を半ば強引に「バー スミレ」に連れて来ると、付き合うてくれんのか?と誘うが、そこはあかん!と2人はビビる。

一六会は、天地会や蒲生会の敵や!というので、ほな、潰したろうやないですか!と2人を焚き付け、強引に店の中に連れ込むと、そこにいた一六会の連中に、この2人、そちらの親分殺す言うてましたで!などと告げ口して、気色ばんだ一六会の連中に引き渡し、自分は流れもんや、一六会に楯突くもんやないと自己紹介する。

そこに出て来た川勝が、まだ仕事や!とざわついていた店の連中を叱りつける。

カウンターに座った大介は、ホステス相手にダイス積みの技を披露する。

辺見を呼んだ川勝は、大介のことを聞いたのか、兄さん、そらご苦労やったな…とねぎらい、奥の事務所に連れて行く。

大介は、何ぞ働かせてもらえたら…、何やありまへんか?と聞くと、外国為替法違反の会社があるんだが…、お前、何か出来るか?と川勝は言い出す。

ちょうど、机の上にリンゴが置いてあったので、リンゴの芯抜くことなら出来ますと大介は言い、そのリンゴを手に取って空中に放り投げると、持っていた銃で撃ち抜いて、落ちて来たリンゴをキャッチする。

種も取っておきましたで…と言いながら、大介が川勝や辺見に差し出して見せたリンゴは、きれいに芯の部分だけが貫通していた。

さらに、紙袋の中に入っていたリンゴを三つ取って、机の上に一列に並べると、その芯の部分にそれぞれマッチ棒を突き刺し、拳銃を1発撃って、その3本のマッチの頭を同時に着火させると、2発目で、リンゴ三つを全部粉砕してみせる。

その腕にあっけにとられた2人に、どっちが稲取はんで?と大介は聞く。

そこに、子分がやって来て、今捕まえた天地会の奴等が言うには、こいつサツの犬や!と言う。

大介はとぼけるが、辺見が秘密のスイッチを押すと、大介が立っていた床の部分が落ち、大介は地下室に落下して気絶する。

それを見下ろした川勝は、ハジキ拾って来いと子分に命じる。

気がついた大介は、麻袋の中に入れられていたので、それを破って外に出ると、そこは倉庫のような場所で、側には見知らぬ中年サラリーマンがおり、あなた、会社はどこですか?等と聞いて来る。

訳を聞くと、その男は、関西紡績の営業課長有馬(春本富士夫)と名乗ると、女に眠り薬を飲まされたと言う。

一体どこやねん?と、大介が鉄格子のはまった窓によじ上って外を見ると、船が見えたので、どこかの港のようだった。

試しに壁を蹴って崩すと、あっさり穴が開くが、隣の部屋には見張りのチンピラが銃を向けており、静かにしろ!こっちにハジキはあるんやと言うので、大介は脱出を諦める。

その頃、「バー スミレ」では、川勝が辺見に、関西貿易の4000万をパクる話をしていた。

そこにやって来たまゆみが、今組長から電話があって、あの男を放せって…と伝える。

倉庫にやって来た川勝は、出してやれ!組長命令は絶対だ!と見張りたちに命じる。

大介と一緒に倉庫の部屋から出て来た有馬は、そこにいたまゆみを見ると、この女だ!書類返してくれ!と喚き出す。

大介は川勝に、組長って稲取やな?と聞き、ハジキを返せと迫る。

川勝は、今夜返す。まゆみの家に行けと答え、あの男は飲み逃げしたんや…とサラリーマンのことを説明すると、いずれゆっくり話する時があるやろ、楽しみにしとけと言う。

その後、外に出て立ち去りかけた大介にすり寄って来たまゆみは、待って!警察関係?どっちにしても、一六会を潰したいのは事実ね?ここのアパートに行って。拳銃を渡すわと名刺と手渡す。

1人になった大介は、思わずくしゃみをし、ハジキなくして寂しゅうなったのか、風邪ひきそうやわ…、今晩までの辛抱やな…と自分に言い聞かせる。

まゆみに渡された名刺に書かれたアパートに出向いた大介は、その部屋にいたのは、将棋盤の前に座った奇妙な男天丸(中田ダイマル)だけで、大介の顔を見ると、柴田はんのお客はんでっか?仙やんは今ちょっと出かけてると聞いて来る。

そこに、その部屋の主柴田仙造が、天丸、えらい待たしたのと謝りながら帰ってくるが、大介の顔を見ると、女好きで癇癪持ちの!と靴磨きの客だと思い出す。

きれいな姉ちゃんが、ここに来いと言うたんやと大介が事情を説明すると、あんな娘、娘やない!と急に逆上し出した仙造は、出て行け!と大介を部屋の外に叩き出す。

その直後、部屋の中から天丸が大介を呼び戻したので、部屋の中を覗いてみると、仙造が将棋盤を枕のようにして倒れている。

近寄って様子を見た大介は、これは脳卒中やで…と驚くが、仙造はそんな大介に、まゆみを宜しゅう…と囁きかけ息絶える。

おっさん!しっかりせなあかんで!と呼びかけた大介だったが、もう絶命している事を知ると、何や、わいが来て、死なせてしもうたようになったな…と嘆く。

その夜、仙造の通夜がアパートの部屋で執り行われることになる。

外では、喪服を来たまゆみに、良いな?これを返したら戻って来いと、大介の拳銃を手渡しながら辺見が命じていた。

10時の上りに乗るんだ。俺はチッキと切符を持ってここで待っていると辺見は言う。

部屋にやって来たまゆみを観た大介は、まゆみちゃん、俺が死に際に会うことになったんや。逝き際、まゆみを宜しゅう頼む言うてた…と伝える。

お父ちゃんの死をきっかけに、立派に生まれ変わるわ。後のこと宜しく頼みますと言うと、まゆみはさっさと帰ろうとするので、ちょっと顔見て、しょんべんかけるような真似せんと…と大介は廊下に出てまゆみを引き止める。

まゆみは、持って来た大介の拳銃を返したので、ざっと様子を見て、調子は悪うなってないみたいやな…と大介は安心する。

あの人、本当のお父ちゃんやないの…、育ててもらったの…とまゆみが打ち明けたので、僕が育ての亭主になってやるなどと大介は言い出す。

しかし、それを振り払い外に出たまゆみは、草むらで待っていた辺見と出会うが、お前、1人で大阪に行け。俺は広島の組に入れと言われたと辺見は言い出す。

課長をやらなけりゃ、俺が消されていた。お前と一六組をずらかりたかったんだ。嫌か?と辺見はまゆみに迫るが、近くの高架線を電車が通過したとき、その騒音に紛れて辺見は誰かに狙撃される。

草むらに倒れた辺見の手には札束が握りしめられていた。

まゆみは驚き、誰か来て〜!と絶叫する。

大介と一緒にアパートの部屋で通夜をしていた天丸は、サイレン音が近づいて来たので、火事、どこやろ?などと言う。

現場に集まっていた野次馬たちは、現場にいたまゆみを見て、もう喪服着てるやないか!などと噂しあう。

その野次馬の中に混じって現場を覗き込んだ大介は、木村刑事に見つかり、殺人容疑者や。お前、ハジキ、持ってないよな?などと脅して来る。

そして、さしでさしで勝負してみたいわ…と木村刑事は言うが、その勝負とは将棋のことだった。

将棋をやりながら、銃弾を取り出してみせた木村は、お前のか?と聞いて来たので、アホ言え!と大介は否定する。

被害者の心臓から出て来たんやと言いながら、木村刑事は一枚の写真を大介に見せると、関西紡績の!と大介が驚いたので、どうして知っとるんだ!と木村は突っ込む。

殺されよったのか…と大介は唖然とするが、ハジキは俺の手にはない…と言うと、撃った奴は死んだんだ。さっき2人で救急車に入る仏さんを拝んだやろと木村は言う。

その頃、関西紡績の社長室に通され、社長の能見(宮口精二)に会っていたのは稲取だった。

有馬が射殺されたことを切り出し、有馬はある商品の輸出責任者だった。

その取引上、通産省絡みの金を香港で闇ドルに換え受け取る外国為替法違反ですよね?

それなのに、女とうつつを抜かししていた…と稲取が世間話のように語ると、私の代わりに消したのかね?と能美は聞く。

分け前が欲しい。10万ドル!と稲取は要求する。

その頃、「バー スミレ」にやって来た大介はまゆみから、辺見を殺したのはあなたね!と追求されていた。

アホ言え!アリバイがあったさかい、こうして釈放されたんや。俺の女になった方がええで…と大介はごまかす。

そして、川勝を見つけた大介は、おのれか!俺のハジキを汚しやがったのは!と言うなり殴りつけ、良くも可愛いハジキを汚しやがったな!お前も一枚噛んどる!俺のハジキがハジキが怒っとる思え!と怒りをぶつける。

そしてまゆみには、アパートの家財道具一切売って、アパートの権利金で葬式代に充てた。ようも汚れたハジキ返してくれたな!とまゆみにも迫ったので、辺見は会長に頼まれたのとまゆみは言い訳し、組長は稲取やな?と確認した大介に、辺見の仇を取ってと頼む。

俺の女房になるのは嫌か?俺はしょぼくれ刑事に疑われてるんや!と言い捨てると、大介は店の外に出るが、そこに車に乗った三沢葉子が待ち受けていた。

ホテルに行った2人は踊り出すが、辺見をやったのは俺じゃない。俺はハジキは撃っても殺しはやらんのやと打ち明け、川勝や稲取の上に組長いるの知っとるやろ?と聞くと、どうしよう?助けて下さる?と葉子は怯えてみせたので、守ってみせまっせ!こうやって、身も心も頂いたんやから…囁きかけ、葉子をベッドを共にした大介だったが、窓から何者かが狙撃して来る。

窓ガラスは割れたが、大介と葉子は無事で、すぐに窓から外を見渡した大介だったが、狙撃犯はもう姿を消していた。

外に出ると木村刑事がおり、良く命があったものやなと感心される。

大介は警察の取調室に連れて来られる。

どこの死神がお前にまとわりついたんやろ?などと木村刑事は同情するが、大介は、白浜温泉の風呂場で会った男のことを打ち明けかけ、自分がその時、ハジキを持っていたことを危うく言いかけそうになったので止める。

その時、部屋の電話がかかってきて、お前、ブローカーの高橋安夫言う奴を知ってるか?稲取やと思うのやが、指紋はあるが写真がない。

たった1人、稲取の顔を知っていた宮本刑事が死んだ今、誰も知らないんだ。

鴨井、その顔、覚えとるな?と狙撃者のことを聞いた木村刑事は、協力してくれるな?と言うと、内線に電話をかける。

そして、実は俺はな…、胸をやられておるんや。先がないから、この恨み晴らさんといけんのや…などと言い出すと、急に空咳を始める。

そない事言われたら、押さえても人情が首を出すわいな…と大介が同情すると、それを合図にしたかのように、隣の鑑識ルームの扉が開く。

暗い鑑識部屋の中で、大介が命じられたのはモンタージュ写真作りだった。

狙撃した人物に似てる奴、選んでくれと、膨大な写真資料を前に木村は頼む。

大介は早速、記憶を頼りに、頭部や目、口元などの写真を選んで行くが、画面に合成された顔は自分の顔であることに気づき、奴に狙われたとき、わては踊っとったからな〜…などとごまかすので、木村は、もっと真剣にやってくれよと、又空咳をしながら頼む。

今度こそ真剣に写真の部品を集め、出来上がった写真を見た大介はこれや!と確信を持つが、その時、暗い室内の背後から、稲取さんに似ていますと言う声が聞こえる。

部屋の電気が点くと、そこにいたのはまゆみだったので大介は驚く。

辺見の仇討ちたいんと違うか?ぐれて家出していた所、一六の連絡係しとったんやと木村刑事がまゆみのことを大介に教える。

お前、先のない身やろ…?胸の病は?と急に元気になった木村を疑って大介が聞くと、噓やとあっさり言われる。

大介が怒りかけると、お前を逮捕する理由はあるぞ。何とか何とか不法所持でな…と木村は睨んで来たので、騙された悔しさを胸に、大介はまゆみと一緒に警察署を出る。

浪花署の前に3人の警官が立っていたが、急にその警官たちが大介とまゆみにつかみ掛かかって来たので、一六組やな?なんで俺が警察におるの、分かったんや?と大介は抵抗しようとするが、停めてあった車に押し込み連れ去る。

倉庫には、川勝が待ち受けていた。

クソ!計りやがったな!と連れて来られた大介は怒るが、サツに何をたれ込んだ?たれ込んでも一文の徳にもならない。騙されたのか?まゆみに口説かれて…と川勝が聞いて来たので、俺をばらす気やな?と大介は緊張する。

まゆみがサツにたれ込んだと聞いて、警察に行ってたら、お前が出て来たんや…と川勝は説明し、ハジキを捨てろ!と大介に迫る。

大介は、女棄てるの慣れてるけど、ハジキ捨てるの慣れてないんや…などとぼやきながら、相手の隙を観て発砲する。

一六会も撃ち返して来たので、大介は木箱の陰に隠れ、銃弾を詰め替え応戦する。

その時、側にまゆみがいることに気づき、危ない、来るな!と注意する。

それでもまゆみが大介の側に来たので、しっかりせい!何でこんな所に来たんや!と大介は戸惑う。

そんな中、倉庫の窓から川勝の背中を狙っていた男があった。

稲取だった。

稲取は川勝を射殺すると、自分は車で逃走する。

ちょうどそこにパトカーが近づいて来たので、一旦脇道に隠れた川勝だったが、パトカーが通り過ぎると、すぐに車を走らし逃げる。

パトカーは、倉庫の壁をぶち破って中に入ってたので、一六会の連中は一斉に逃走する。

川勝の死体の前に来た木村刑事は、鴨井、お前がやったのか?と聞くが、大介は負傷したまゆみの手当を頼むと逃げ去る。

木村は銃を取り出し、空に向かって威嚇射撃をしただけだった。

その後、まゆみは入院するが、そこに面会人としてやって来たのは天丸だった。

病室内に隠れていた大介が、おっさん、何でここが分かったんや?と聞くと、あれからすぐに、まゆみはんの保護願いを出しとったんやと言う。

嫌な奴が追いかけているんやと事情を天丸に教えた大介は、川勝やったのは俺やないとまゆみに伝える。

でも、誰なんでしょう?とまゆみも不思議がり、お話ししたいことがあると言い出す。

俺、この警察病院言うの気に入らんのや…とぼやいた大介だったが、カーテン越しにずっと…天丸が病室内を覗き込んでいるので、俺にだけ話がある、言うてはるんや!と注意するが、天丸は動こうとはせず、わい、この話好きやねんと言うだけ。

まゆみは、組長からかかって来た電話のメモ書きを大介に手渡す。

それを観た大介は、生きとるのは稲取と組長だけや…、退院したら、連絡つけるか?いつもどっから電話して来るんや?と考え込む。

まゆみは、まだ、天丸が病室内にカーテンの隙間から顔を突っ込んで見ているので、大介に耳打ちする。

それを聞いた大介は、当てにして待っててくれと言い残し、病室を出て行ったので、後に残った天丸は、兄ちゃん!嫁棄ててどこに行くんや?と声をかけて来る。

警察病院の外に出ると、またもや木村刑事が待っており、どこに行くんや?と聞いて来たので、ちょっとアメリカまで…近所やがなと大介がとぼけると、服装検査させてもらうと言い、木村は大介の身体検査を始める。

これで、この間とおあいこやと言いながら、大介は、かがみ込んだ木村の背中を殴りつけ、相手が倒れると、ここにある!とズボンを引き上げ、左足首の部分に隠していた銃を見せ、ちょうど走って来たタクシーを呼び止めると、まゆみのこと、しっかり見張っておかんと…と言い残し、立ち去る。

大介がやって来たのは白浜温泉だった。

駅前に出ると、呼び込みの玉子と再会する。

白浜観光ホテルにやって来た大介は、236号室の客は?とフロントで聞くと、今、レッドウィングと言うヨットにいると教えてくれたので、早速浜辺に向かうが、そんな大介を尾行して来る怪し気な男2人(橋本力、豪健司)がいたので、途中で待ち伏せし、通り過ぎた瞬間飛び出して殴ると、気絶した二人の上着の中から銃を奪い取る。

アホンダラ!と捨て台詞を残して港へ行くと、そこにレッドウィングと書かれたヨットが停泊していた。

手漕ぎボートでそのヨットに近づいた大介は、こっそり明かりの灯った船室の中を入口のドアの前で覗き込むが、中から聞こえて来た会話に注目する。

止してよ!そんな脅し、乗ると思うの?放して!とベッドの上で拒んでいたのは三沢葉子だった。

組長!…と言うより、葉子と呼びたい…と葉子と寝ていた相手は稲取修次だった。

一六会の組長とは、葉子のことだったのだ!

お前と組んだのは、金貸し情報を捕ることと、カツアゲの金を隠すためだ。

鴨井なんて雇いやがるから消そうとしたら、辺見と川勝は俺が消したんだ。お前は生かしとく。俺は狙ったものは奪う!と稲取が迫ったので、お金なら全部あげるわ!と葉子は懇願する。

やがてまゆみがここに来る。まゆみを消せば証拠は消える。俺は香港に行く…と稲取が何もかもバラしたので、銃を一発撃ち込んでドアから姿を見せた大介は、こういう仕掛けになってたんか…、込み入った仕事に誘ってくれたな?と葉子を睨みつけると、いよいよさしで勝負する時が来ましたな?と稲取に笑いかける。

甲板に稲取を連れ出した大介は、ハジキを海に捨てろ!と命じる。

俺の方がちょっと早かったかな…と自慢した大介は、稲取が銃を海に投げ込んだので、こら、なかなかの大物やな…と感心するが、その時、後から上がって来た葉子が、動くと撃つわよと銃を突きつけて来たので固まる。

ピストルを捨てて!早く!2人とも死んでもらうわ。警察には相打ちと言うことで連絡するわ。撃つわよ!と葉子が脅して来たので、大介は銃を甲板上に置く振りをして、足首に付けていた予備の銃を素早く取り出し、同じように別の銃を取り出した稲取と葉子の銃を一瞬で撃ち降ろす。

来い!と銃で2人を脅し、手漕ぎボートに乗せた大介は、銃で脅しながら稲取にボートを漕がせ、陸地にたどり着く。

大介は腕に負傷した葉子の傷を縛って手当てしてやるが、その時、一六会の連中らしき男たちが銃を持って接近して来たので、大介も2丁拳銃で応戦する。

葉子が、危ないと言うので、後ろを振り返ると、一旦逃げ出した稲取が、新たな銃を構えて近づいて来るのに気づく。

何で撃たんのや?と大介が呼びかけると、今度は俺が勝つ!と稲取が言うので、さあ、どうかな?と大介はとぼけながらも、2丁拳銃を自分のベルトに差し込み、決闘の準備をする。

稲取と大介は接近しあい、すれ違い様に互いに発砲する。

稲取はポーカーフェイスのまま、銃を上着の中に仕舞おうとして、そのまま倒れる。

大介が銃を仕舞うと、北浜署のものですと駆けつけて来たのは、さっき、一六会の人間と思って気絶させた2人だった。

木村刑事から連絡があり、応援に来たのだと言う2人の刑事は、大介のことを警部殿!などと呼ぶ。

どうやら木村が、大介のことをそう伝えたらしい。

すっかり気分が良くなった大介は、あいつ等はかすり傷や…と、自分が撃った一六会の連中を指し、後のことは頼むと言うと、ああ。ええ気持ちや!と笑顔で葉子の側に来ると、葉子が持っていたコートを手に取り、満面の笑みでそれを着るのだった。

後日、亡き父柴田仙造の遺骨を持って大阪駅から出発するまゆみを見送る大介と木村刑事。

大介は、2人で大阪でこの骨、守って行こうやないか!約束違うやないか!と説得するが、まゆみは泣きながら車内に乗り込む。

そのまゆみの涙を拭ってやったハンカチを手に、動き出した電車を見送る大介。

その横で、木村刑事がタバコを吸うと、いつまでも電車を見ている大介の肩を優しく叩く。

生まれて始めて振られたわ…と大介が落ち込むと、お前が好きやから別れたんだろうと木村は慰める。

その時、やゅ、兄ちゃん!と大介に声をかけて来たのは、白浜温泉で会った玉子だった。

うち、わざわざあんた探して大阪に来たんや、ストリッパーになろうと思うて…、あんたの面倒見てやるわなどと馴れ馴れしくすがりついて来るので、しょぼくれ…、頼む!と木村刑事に言葉をかけた大介は、脱兎の如く改札口から外へ逃げ出す。

それを追いかける玉子は、改札口で駅員から切符を要求されまごつく。

そんな2人の様子を構内から見ていた木村刑事は笑う。

その後、港にやって来た大介は、首に巻いていた白いハンカチを外すと、先ほど涙を吹いてやったまゆみの香りを嗅ぐように鼻の所に持って来た後、海に向かって投げ捨てる。

さっぱりしたように笑顔になった大介は、又歩き始めるのだった。


 

 

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