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ギャング同盟

深作欣二監督のB級アクションもの。

山本麟一、八名信夫、曽根晴美と言った東映お馴染みの俳優も出ているし、何と言っても、三田佳子さんが重要な役所で出ているので、東映っぽいイメージはあるのだが、主役は日活出身の内田良平だし、脇を固めるのも、佐藤慶や戸浦六宏、平幹二朗に楠侑子…と東映専属イメージの薄い人が多いので、少し毛色が変わっている印象はある。

話はシンプルで、巨大な組織に楯突こうとするアウトサイダー犯罪ものなので、結末は大体予想通りの展開になる。

既存の寂れたアミューズメントパークでも利用したのか、オープンセットなのか定かではないが、西部劇の町を再現した廃墟のような場所でロケをやっているので、後半は西部劇の決闘イメージである。

時代の変化に付いて行けなくなった一匹狼たちの哀歌とも見えるし、最後まで諦めないダークヒーローもののようにも見える。

この時期の映画には、水原弘さんなどのように歌手の人が映画に良く出ているが、本作では、抜群の歌唱力で紅白などにも出ていたアイ・ジョージさんが俳優として出ている。

出番は少ないものの、かなり美味しい役だと思う。

設定自体はリアリズムと言うより、象徴的なメッセージ性をふくみながらも、全体としては荒唐無稽なイメージが強い典型的な添え物映画と言った所だろう。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1963年、東映、秋元隆太+佐治乾脚本、 深作欣二脚本+監督作品。

タイトル文字が回転して静止

朝鮮戦争特需の中、闇屋で稼いでいた風間(内田良平)と仲間たちの写真を背景にスタッフ、キャストロール

刑務所を出た風間は、一台の車の横に立って待ち受けていた高本(佐藤慶)が合図を送って来たので、嬉しそうに近づき、良く分かったなと話しかける。

その気になりゃ分かるさ…と高本は苦笑する。

おめえ1人か?と風間が聞くと、世の中変わっちまったよ…、もう闇屋も闇市もねえ…と立ち並ぶ渋谷のビルの前に風間を連れて来た高本は言う。

10年振りに聞く泣き言かよ…と風間がバカにすると、指をくわえてみていかけてばいけなかったのはのし上がって行く組織だった。何しろ奴等、ヤク、女、殺しの請け負い、強請りたかり…何でもやりやがる。そしてその下地は10年前から出来ていたんだ…と高本は言う。

巨大化した組織には、頭下げて、どうぞ、どうぞと言わなきゃならねえ。嫌だと言ったら潰される…。言いなりになって、おこぼれをちょうだいするって言う訳さ…と悔しそうに高本は最近の状況を説明するが、昔からまとめ役だったな…、考えるのはお前だったはずだと風間は告げる。

生き残った尾形が勤めた会社が組織が経営するこの会社だ…と、高本は近くにあった大田不動産と言う看板のかかったビルを指すので、風間は早速乗り込んでみることにする。

事務局長と言うプレートが乗った机に座っていた尾形(戸浦六宏)は、風間と高本と言う客が来ていますが、追い返しますか?と部下の近藤(八名信夫)から言われるが、会うことにする。

部屋に入ってきた2人を見た尾形は、やっぱりお前たちか!と嬉しそうに出迎える。

随分偉くなったな…、この会社は、俺たちをぶっ潰した連中のものだと聞いているが…と高中が嫌味を言うと、裏切り者だと言うのか!と尾形は気色ばむ。

巧く流れに乗るのが得意だった。あの頃は海軍の服を来ていたな…と風間も、尾形の変貌振りを当てこする。

身の振り方が変わったとしても、仲間は仲間じゃないか。俺に世話をさせて欲しいと尾形が願い出たので、先立つものがいると風間が申し出ると、金か?と尾形は顔を曇らせる。

いずれ相談すると告げた風間と高本は、ひとまず帰ることにする。

高速道路の工事が間近で進んでいる中の一軒屋の前で、立退料?あんなもの、競輪ですっちまった!と工事現場の方に悪態をついていたのは、昼間から酔っぱらった楠(山本麟一)だった。

家に入って来た楠の顔に、今夜からどこに寝るつもり?文無しのお前さんにはお似合いだわ!と怒鳴りながら、いきなり飯をぶつけて来たのは妻柾江(楠侑子)だった。

そんな夫婦喧嘩の最中に訪ねて来たのが風間と高本だった。

2人に気づいた楠は、酔いが冷めたようになり、ヤマか?ヤマなんだな?ヤマなんだろ?と嬉しそうに言いながら近づいて来る。

ストリップ小屋の楽屋裏で、女たちに、今夜の勤め先を手配していた志賀(曽根晴美)は、一段落付いた時、つまんねえな~とぼやきながら、椅子に身を投げ出すが、女の手配するなんて、男として最低だな…と暗がりから声をかけて来た2人組に気づいたので、立上がってポーズを決めると、やるか?と言いながら殴り掛かる。

しかし、相手も殴り返して来て、強いぞ、坊や!と話しかけて来たので、始めて風間と気づき、兄貴!高本さん!畜生!と嬉しそうな顔になる。

しばらくだったな…と風間はかつての仲間だった志賀に笑顔で話しかける。

クラブ「ムーンライト」で歌っていたジョージ(アイ・ジョージ)は、客の中に風間と高本の姿を見つけると、歌い終わった後、近づいて来る。

「流し」久しぶりだな~と風間が話しかけると、変わらねえな…とジョージも答える。

相変わらずのル○ペンだからな…と風間は自嘲する。

何のヤマか知らんが、おれはダメだぜとジョージは先に言う。

おれは間もなく、日本をおさらばするんだ。この国は息が詰まる。歩けるうちに出て行きたい。一日中好きな歌を歌える国があるはずだとジョージが言うので、昔なら、息が詰まったら暴れたじゃないかと風間は思い出させようとするが、奴等相手に勝てると思っているのか?気を付けなよ…、人が同じだと思うと躓くぜ…とジョージは言い聞かせる。

ボーイから、出番を告げられたジョージは、昔の歌でも聞いてくれ。黒ちゃんのGIが歌っていた歌だ…と風間たちに言い残しステージに登る。

ジョージがツイストしながら歌い始めたのは「聖者が町にやって来る」だった。

その後、2台の車が、西部劇の町を再現し、その後荒れ果てたアミューズメントパークにやって来る。

酒場の建物の中に集まったのは、風間、高本、尾形、志賀、楠、そして柾江の6人だった。

早速仕事だが、一人頭1000万の儲けになると風間が話し始める。

仕事の中味は誘拐だ、ガキなんかじゃない。組織…、つまり敵のボスだ。身代金は6000万要求すると風間が概要を話すと、2人の話は突飛過ぎる!…と尾形が異議を申し出る。

奴等が日本中を押さえている以上、俺たちはうだつが上がらねえってことだと高本が言うと、俺たちが仕事を降りたことあるかいと楠も笑うので、みんなどうかしてるよ!親玉をかっさらうと言ったって、俺も知らねえんだ!すぐ上のボスとその上くらいまでは見当がつくが、一番天辺が誰かなんて全く分からねえ!と青くなる。

しかし風間は、その気になりゃ分かるはずさ。おめえの他に誰がやるんだよ?お前しかいねえだろ?分かったら坊やに知らせろ。それまでなるべく俺たちと連絡取らねえことだと尾形に言い渡す。

その後、「大田不動産」の事務長室にやって来た社長の宮島(平幹二朗)が、ホテルを代えるんだ。会長は海がお嫌いなんだと言いに来る。

ホテルで何をやるんです?と尾形が聞くと、余計なことを知りたがると早死にするぜ…と宮島は睨みつける。

早く返事の仕方を覚えたまえ、万年事務長でいるのが嫌ならね…と嫌味を言い、宮島は帰って行く。

すぐに尾形は電話をする。

志賀の運転する車に集まった風間、楠、柾江に、こんな警備するなんて始めてだと尾形は知らせる。

楠と柾江は銃を頼むぜ、坊やは車を用意しておけと風間は指示を出す。

「ロイヤルホテル」に車でやって来たのは風間と高本だった。

さりげなくホテル内の様子を探りながら、高本は、外でさらった方が無難じゃないかと言い出すが、誰も出来ねえと思っている所が狙い目さ、つまりここさ!と風間は答える。

エレベーターで4階に登って来た2人は、エレベーターガールが乗っていることに気づく。

会長が停まる部屋は417号室だった。

風間は、その部屋を確認すると、いきなり指で銃の形を作り、高本に向ける。

高本は苦笑しながら、手をあげ、部屋から連れ出される会長の役を演じ始める。

二人はすぐに、従業員用のエレベーターがあることに気づく。

次に、廃墟の酒場に集合したメンバーたちに、尾形は入手した当日の護衛役の顔写真を見せながら、ホテルの正面に5人、横手に2人…と当日の護衛の人数を教える。

楠は横手の受け持ちだと風間が指示を出すと、ロビーは俺が見張っていると尾形が言う。

ホテルの廊下の護衛は4人か5人だが、これは本部から連れて来られる連中なので顔は分からねえと尾形は言う。

連れ出すのはおめえと高本だけで大丈夫か?と楠が風間に聞く。

後は道具次第だよと言い、楠が用意した銃を手にすると、男たちは一様に喜ぶ。

当日「ロイヤルホテル」の正面に、サングラスをかけた志賀がやって来ると、銃を持った楠、柾江は別の車で待機していた。

1時50分、ホテルのロビーの壁時計と自分の腕時計で時間を確認した尾形は、玄関前の駐車場に車を停めて待機していた志賀と楠夫妻を確認する。

そこに車が二台乗り付けて来て、降り立ったのは風間と高本だった。

柾江が車の外に出ると、ボンネットを開け、エンジンの調子を見ている振りをしていた志賀は車に乗り込む。

ホテルに入って来た風間がエレベーターに乗り込むと、3人の護衛が一緒に乗り込んで来る。

その間、高本の方は階段を登っていた。

6回とエレベーターガールに告げた風間が、右手を上着のポケットの中に差し込むと、廻りを固めていた3人の護衛も反射的に上着のポケットに手を入れて警戒するが、風間が取り出したのは煙草だと気づくと、緊張を緩める。

しかし、風間が煙草を口にくわえたのに気づいたエレベーターガールが、煙草はご遠慮下さいと注意した次の瞬間、風間は素早く銃を取り出し、3人の護衛を射殺して行く。

エレベーターガールの悲鳴が響くが、7階に到着したエレベータから風間が下りて来ると、そのエレベーターガールも護衛たちと共にエレベーターの床に倒れ込んでいた。

階段を上がって来た高本と合流した風間は、廊下にいた見張り3人を即座に射殺、さらに417号室のドアを開け、控え室にいた護衛2人も仕留めて部屋の中に乱入する。

部屋の中にいたのは、会長の岸田(薄田研二)と、サングラスをかけた謎の娘の2人だった。

岸田にその娘のことを聞くと、わしの娘だと言う。

風間は岸田と娘の秋子(三田佳子)に、会長さん、急いでお召しかえ願おうか?お前も一緒だ!長くは待てねえ!と銃を突きつけながら命じる。

ホテルの前では、柾江が苛ついていた。

岸田と秋子を連れ、従業員エレベーター前に来た風間と高本だったが、エレベーターは下から上がって来る。

7階で開いたエレベーターの中には、ルームサービスを持ったボーイ(小林紀彦)が乗っていたので殴り倒して4人は乗り込む。

1回のエレベーター前で待っていた柾江は、風間たちが中に乗っていることを確認すると、ロビーにいた尾形の前を通り過ぎ、そのまま玄関から表に出る。

車から出て来た楠は、ショットガンでホテル横の護衛2人を射撃、柾江が下に合図すると、地下から出口に出ていた風間たちが階段を登って地上に出て来る。

車に乗り込んだ風間たちが逃走すると、撃たれた護衛の1人が最後の力を振り絞って発砲、これを合図に組織の護衛たちも車で追跡しようとするが、志賀がその車の前に飛び出し、走路を妨害する。

もう一台の護衛の車は、ホテルから逃げ出した志賀の車を追いかけ始める。

志賀は囮となり、蛇行運転をしながら追跡車を惑わしていたが、横に並んだ護衛の車が体当たりして来ると、助手席に用意していたダイナマイトに点火し、相手の車の中に放り込む。

護衛の車はパニック状態になりハンドツを切り損ねて路肩に突っ込んだ所で爆発する。

大田不動産ビルで、会長が誘拐されたことを知った宮島は、尾形や近藤を前に、バカもん!すみませんですむか!と癇癪を起こしていた。

私たちは気を付けていたんです!と近藤が弁解するので、しらみつぶしに日本中を探すんだ!と宮島は命じる。

その時、事務長の机の電話が鳴り、受話器を取った宮島が、誰だ?君は…と聞くと、二本足の動物だよ…と大家扶桑さんビルの下の公衆電話からかけていた高本は答え、会長は頂いた。養育費もらいたいんだ、6000万!一晩考えな…と用件を伝える。

電話が切れると、横で聞いていた尾形が、6000万出すんですか?社長!と聞くと、どうせ又電話して来るだろう。明日、帰らなかったら聞いといてくれと尾形に頼んだ宮島は部屋を出て行く。

組織の幹部会議では、この件に関し緊急の会議が行われ、三日後に国際的な取引がある。我々に弓を引いた奴の心当たりはないか?と出席した幹部たちに質問が飛ぶ。

廃墟の酒場で自分たちが作ったスパゲッティを食っていた志賀は、あの女、こんなもの食べたら太ると言いやがって、ビールばかり飲みやがる…と、忌々しそうに秋子のことをぼやいていた。

酒場の奥の部屋に閉じ込められていた岸田は、恐いか?と娘の秋子に聞き、酔ったまま死にたいわ、でも奴等、簡単には殺さないわ、パパの頭の中にあるものを取るわ。現金より、仕事を奪った方が得だもの…秋子は答える。

岸田は、悟ったような表情で、組織が奴等をただで済ますはずがない…と呟く。

翌日、6000万が入ったジュラルミンケースを抱えた尾形の部屋に電話がかかって来て、金は出来ているんだな?車で海岸通を走り、「カモメ」と言うレストランで待ってろ。こっちから挨拶にうかがう。ただし、社長さんの顔を存じ上げないので、胸にハンカチを付けてくれ。保険をつけたりするんじゃないぞ!と高本が電話を受けた宮島に指示する。

指示の電話を切った宮島は、社長!私が行きましょうか?と話しかけた尾形に、会長はどうしても俺が救い出す…と答えるが、そこに又電話がかかって来たので受話器を取る。

電話を終えた宮島は、カバンを置くんだ、事務長、他の奴が来るそうだと今の電話の内容を教える。

驚く尾形に、命令が変わったんだよ、俺たちは上から疑われているんだよ。内通していると思われているのかもしれねえな…と言いながら宮島は尾形の顔を見る。

そこに、見知らぬ男2人がやって来て、海岸通をまっすぐだったな?と言うので、どうして知ってる?と尾形は驚くが、奴等は保険を付けるなと言っているんだ。行くのは1人さ…と言うと、片方の男が尾形からケースを受け取り出かけようとする。

その時、忘れる所だったぜ…と言いながら戻って来た男が、尾形の胸ポケットからハンカチを取って行く。

その男から金の入ったケースを受け取り、高本が待っていた場所に戻って来た風間だったが、そこに怪しい車が迫って来たので、車の運転席で待っていた志賀に声をかけその場から車を去らせると、自分たちもケースを持ったまま逃げ出す。

組織の連中らしき追手が風間と高本を追って来る。

路地裏に逃げ込んだ2人は、ジョージが待っていたので、「流し」!大丈夫か?「流し」!と驚きながら、一緒にゴミ箱の陰に隠れる。

ホテルで妙なことやったと聞いたんでな…と銃を構えたジョージに、歌歌いなんて止めて、最初から仲間になってりゃ良かったんだと風間は喜びながら言う。

早く行け!人の親切パーにするのか!と言うので、風間と高本はケースを抱えて逃げ出そうとするが、風間!俺は丸腰だ!始めっからお前とやるのが本当だったのかもしれねえな…とジョージが言うので、消音器月の銃を風間は手渡して行く。

ジョージはその消音器を取ると、ゴミ箱の横に姿を出し、追手に向かって援護射撃をする。

しかし、その直後、ジョージは追手の銃弾に蜂の巣にされてしまう。

廃墟の酒場でジュラルミンケースを開けた柾江は、中味がただの紙切れだったと知り、一人頭1000万ってどこにあるんだよ!6000万が聞いて呆れるよ!と逆上する。

楠も、奴だ!尾形の奴がやったんだ!と銃を手に怒っていた。

しかし風間が、奴ならここを知っている。売るなら、ここを売ってるはずだと指摘すると、そうか…と楠も冷静になる。

それでも腹に据えかねている柾江は、あんた、ナイフ持ってたね?と楠に聞くと、女の耳落として送りつけてやるのよ!と物騒なことを言い始める。

止せよ、気が立っているんだよと風間が制すると、あんな女に惚れたからさらって来たんだろ?と柾江も言い返す。

その後、全員で岸田と秋子がいる部屋にやって来た風間は、俺たちは大した珠を握っているんだな…、天辺握っているんだからな。組織の奴等はお前を見捨てるつもりだ。奴等、妙な真似をして来たぜと岸田に伝える。

そして、聞かせてもらいたいんだ、仕事のからくり…と風間は聞くが、岸田は黙ったままなので、娘を小道具に使や良いんだ、立ちな!と秋子に命じた柾江は、後は男の仕事だと言う。

秋子は父親である岸田の方を見やるが、岸田は知らん振りを決める。

しかし、男たちが動こうとしないので、どうしたって言うんだい!と柾江は苛つく。

坊や、お前の役目だよ、女扱いなら慣れてるだろう?と志賀に命じるが、あれはプロだからな…、それに年の順ってのもあらぁな…と志賀は遠慮する。

何だか埒があかないね…と柾江はますます焦れるので、お前の亭主はどうだい?と高本が口を挟むと、勝手にしな!と柾江は膨れる。

良し!勝手にしてやろうじゃないか!とサングラスをかけたままの秋子に迫ろうとした楠だったが、身体はそれ以上動かなかった。

その時、待てよ…、俺はとんでもない勘違いをしていたかもしれない。この爺さんの落ち着きぶりを見ろよ!1億や2億、屁でもないって顔だ…と風間が言い出す。

こうなったら長期戦だ!組織に大穴を開けるんだ。爺さん組織がすっ飛ぶのを見せてやるよと風間が息巻き、部屋を出て行く。

その後、大田不動産のビルから出て来た尾形は、周囲の目を気にしながら車に乗り込むと、どこかへ出かけるが、それを車の中で監視していた組織の連中は、ネズミが動き出したらしいぜ…と呟くと、後を尾行し始める。

廃墟の酒場にいた風間たちは、突然、尾形がやって来たので、どうしたんだ?銭はどうしたんだ?と聞くと、ずらかるんだ、俺は疑われているんだ!とビビるので、今すぐ帰れ!銭を持って来い!と楠は癇癪を起こすが、その時、廃墟のテーマパークの入口付近を見ていた風間が、待て!あれは何だ?と気づく。

車が数台、テーマパークへの一本見市を塞ぐように停まっており、いつの間にか裏手も包囲されていた。

奴等だ!と風間は気づく。

爺たちしょっぴいて来い!と風間に命じられた志賀は、畜生…、随分、いやがるな~…と外を眺めながら悔しがる。

こいつらどうする?と岸田と秋子を見ながら柾江が聞くと、その辺に置いときな、奴等が来たら拝ましとけ!と風間は答える。

会長を渡さなければ?と柾江が聞くと、みな殺しだと岸田が答える。

高本は、尾行をされた尾形を殴りつける。

風間は、前の車が5台、背後に2台で、敵は総勢42人だ、こっちは6人、1人頭7人やったらこっちのもんだ!算術の勉強には銭勘定だ。二股かけるのは怪我の元だ…、今はやっつける方が先だと仲間たちに伝える。

どうやって?と尾形から聞かれた風間は、使者になって、万一の時は会長を見殺しだと伝えろと命じる。

それを聞いた尾形は、こうなると思ったぜ…、きっとこうなるように決まってたんだ、俺が奴等に就職したときからな…と冷めたように呟くと、風間が渡そうとした銃を断り、丸腰で入口の所で待っていた宮島たちの元ヘ向かう。

宮島の前に来た尾形が、金は持って来たのか?と聞くと、会長は生きているんだろうな?と宮島は逆に聞いて来る。

6000万持って来い。会長を土産に置いといてやるぜ…と尾形が悪びれずに命じると、見くびられたな…、もっと給料やるんだったな…、裏切らない程度に…と宮島は答える。

そして、廃墟のテーマパークの方に向い、朝6時まで待ってやる!朝の6時までだ!と呼びかけると、なぜ今、大声を出したか分かるか?おめえの役目は終わったんだ。走ったって良いんだぜと尾形に告げる。

覚悟を決めた尾形は、身を翻すと、風間たちの方へゆっくり歩いて戻りかけるが、その背中に銃弾が浴びせられる。

倒れた尾形を見た風間は、尾形は俺たちが殺したんだ…と悔む。

夜になったら来るんじゃないのか?と言う仲間たちの声を聞いた風間は、夜中にこそこそ逃げるって言うのか、モグラみたいに…と嫌味を言うと、側で聞いていた岸田が笑いだし、奴等は皆殺しと言ってる。もちろん俺は組織にとってはなくてはならない存在でもなく、私が死ねば、新しい会長を決めるさ。みんな若いんだ。その力を組織で生かしたらどうだい?と風間に忠告する。

しかし風間は、忘れちゃ困るぜ、俺は組織を潰すって言ったんだと風間は言い切る。

一方、車の所で待機していた近藤は宮島に、夜、奴等はどう出ますかね?と聞いていた。

廃墟の酒場の入口にバリケードを築いた風間たちは、取りあえず腹ごしらえすることにして、志賀が焼き飯を作り、高本等に飯出来たぜ!と声をかける。

楠も、腹減ったな…とぼやいていたが、柾江はそんな楠に、夜までに何とかしないと…と囁きかける。

焼飯を喰っていた風間は、あいつらだって獣さ、いざとなったら牙をむくさ、「流し」の奴もそうだったろうと高本等に話していた。

一方、部屋に閉じ込められた岸田は秋子に、落ち着きなさいと言い聞かせていた。

すると秋子は、お父さんはいつでも落ち着いているのね、私が玩具にされようとしたときも…と皮肉を言ったので、岸田は、秋子!と叱ろうとする。

それでも秋子は、私、学校でお父さんの名前書こうとした時、いつも芯が折れていたので変な気がしたわ。お父さん、もし私が組織のことを話したらどうする?ガイジンとの取引のこと、ホテルで聞いたの。止めても無駄よ、殺しでもしない限り…、それとも娘の私を殺すの?と言い出したので、さすがの岸田も表情が厳しくなる。

そこに、親子喧嘩か?と言いながら風間がやって来たので、驚いたわ、お父さんの慌てた顔を見てはっきりしたわ。お父さんは私の命なんて何とも思ってないことが分かったから…と秋子は言い切る。

その会話を聞いていた風間は、面白えことになったな、爺さん、これじゃあ、奴等ぶっ潰す前に潰れるぜ…と皮肉を言う。

その後、下に降りた風間の所に志賀がやって来て、女が話があるそうだぜ…と伝え、俺はああ言うタイプは苦手なんで…と言う。

二階に上がり、秋子が待っていた部屋に入った風間は、何だい?話って…、俺は少し、寝とかなくてはいけないんだ…、奴等やって来たら5時だろう?と話しかける。

すると秋子は、何故勝てると思ってるの?と聞いて来たので、負けるってのは、生きているときから降参する奴だと風間は答える。

私、今まで、何やっても面白くなかった。戦ったことなかった…と秋子は言う。

あなたを見ていたら、世の中には2つしかないと分かったの。狙う奴と狙われる奴…、私、今まで何も欲しいものがなかったの。でも今、欲しいものが出来た!資格よ、狙う奴の…。恐くなって来たのは、欲しいものが出来たからだわ…と秋子は言い出し、私に貸して…と手を差し出す。

そんな秋子に、風間は黙って、持っていた銃を手渡す。

そして、変だな…、どうしてピストルなんて渡したんだろう?と風間が呟くと、きっとあなたに似て来たのよ、私が…と秋子は笑う。

翌朝、楠本が寝ている中、柾江はこっそり部屋を出て行く。

それに気づいた高本は、自分も裏の窓から隣の屋根に飛び移ると、下に降りるが、逃げようにも見張りがいることに気づき、その場に留まる。

柾江は岸田の所に来ると、早く!今なら逃げられるよと声をかけるが、岸田は薄笑いを浮かべているだけ。

その時、柾江は、部屋の入口に立っている楠に気づき、あんた!と驚く。

俺はお前が1人で逃げたと思ったんだ…と楠が情けなさそうな顔で言うと、あんた、お金が出来たら香港に行って、青い屋根のうちに住もうって言ってたじゃないか!嫌だ!死にたくなかったんだ!と柾江は言い訳するが、楠は哀し気な顔で妻をその場で射殺する。

その銃声に下にいた風間も気づくが、その時、外を見ていた志賀が、兄貴!奴等が来たぞ!と叫ぶ。

その言葉を聞いた楠は、畜生!と言うと、酒場の入口から外に飛び出し、自棄になったように大声で喚きながらショットガンをぶっ放し始める。

しかし、すぐに弾切れになり、そのまま組織の銃弾に倒れる。

その姿を、物陰に潜んでいた高本が目撃する。

入口のバリケードの隙間から銃撃を始める風間。

高本は、側にあった車に乗って逃げようとするが、車に到達する前に撃たれる。

負傷した高本は、近くの物陰に飛び込むと反撃を始める。

そんな高本に気づいた風間は、坊や、降りて来い!と上にいた志賀を呼び寄せる。

そして、高本を助けに行く!援護しろ!と志賀に頼むと、入口を飛び出し、怪我をして踞っていた高本の側に駆け寄る。

今更迷子になるつもりか?と風間が皮肉を言うと、全くおめえは馬車馬だと高本が言うので、ここでくたばらねえで待ってろよと言い残し、又、酒場の入口に戻ると、坊や、寂しかったか?と1人で援護していた志賀に笑いかける。

志賀は怖がるどころか、面白れぇぜ!と興奮状態だった。

そんな2人の背後では、銃を手にした秋子がじっと息をひそめていた。

しかし、圧倒的に数で有利な敵の銃弾に志賀も高本も傷ついて行く。

それでも撃ちまくる風間と志賀だったが、埒あけねえぜ!とぼやく。

外に飛び出した風間は、とうとう狂いっぱなしで逝っちまった。景気良くやろうぜ!と志賀に呼びかけ、ダイナマイトは?と聞くと、車の中だと言うので、車の側に駆け寄って乗り込むと、志賀が運転し、組織の車の方へ突っ込んで行く。

車は大爆発を起こし、志賀も風間も車の中で死んだようだった。

宮島たちも爆発に巻き込まれ死んでいた。

銃声が途絶えた後、秋子は1人で酒場の外に出て来ると、爆発した車の側に来る。

すると、風間はまだ死んでおらずゆっくり起き上がると、坊や!と運転席の志賀に呼びかける。

兄貴…と答えた志賀もまだ死に切っておらず、かっこ良く行くってことは楽じゃねえな…とつぶやくと息耐える。

坊や!坊や!と呼び掛けた風間だったが、もう死んでいる事を知ると、爺さんは?と秋子に聞く。

見ると、酒場の外に岸田が出て来たので、風間は。おい、爺さん!俺の逝った通りになって来たぜ…と呼びかけながら近づいて行く。

すると、どこに隠していたのか、小型銃を取り出した岸田は、その銃を自らのこめかみに押し付け自殺する。

それを観た秋子は仰天し、お父さん!と叫びながら駆け寄る。

風間はその場から立ち去ろううとするが、秋子はそんな風間に付いて来る。

まさか、自殺するたあ思わなかったな…、あの爺さん…と呆然とした顔で風間が言うと、どうするの?と秋子が聞いて来たので、10年前に後戻りだと答える。

本当にくたびれない人ね…と秋子が呆れると、会長が死んでも、奴等が手を引くとも思えねえ…。となると、俺は何をやって来たのかな?仲間をなくしただけだ…と風間は呟く。

すると、私が仲間になってあげると秋子が言い出したので、バカ言え!と、今度は風間の方が呆れる。

言ったでしょう?私、欲しいものが出来たの、そしてあなたに似て来たの…と秋子が言うので、思わず秋子と見合った風間は笑い出す。

良し!お互い、出直しだな…と語りかけた風間と秋子は、2人並んで歩き始めるのだった。


 

 

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