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暗黒街の顔役 十一人のギャング

鶴田浩二主演のギャングもの

共演は杉浦直樹で、そこに、石井輝男監督同様、新東宝から移籍した三原葉子や丹波哲郎が加わっている。

高倉健さんも、鶴田浩二の次にキャストロールには登場するが、この作品ではあまりメインの役とは言えない。

むしろ、女にだらしがなく、犯罪計画を危機にさらす軽薄なチンピラ風のキャラクターなのだが、最後の方で見せ場が用意されている。

前歯に銀か何かをかぶせた独特のメイクで、終始口元をくちゃくちゃさせ、安っぽい男を演じている。

主役の鶴田浩二と相棒役杉浦直樹は、平素何で喰っているのか分からない妙なキャラクターになっている。

堅気ではないことは分かるが、いわゆる組に属したヤクザでもない。

遊んで暮らしているように見えるのだが、結構、金に不自由はしていないように見える。

そんな彼らが大犯罪を計画し、それを実行しようとする犯罪ものなのだが、この手の話特有の予想通りの結末が待ち受けている。

石井輝男監督自身のオリジナル脚本らしいが、相変わらず面白い。

待田京介や「吸血鬼ゴケミドロ」でお馴染みの高英男など、個性の強い役者の登場も嬉しい。

基本的に男向けのサスペンスなのだが、三原葉子、本間千代子、瞳麗子、そしてベテラン木暮実千代など、女優陣のキャラクターも印象深い。

色気を武器に裏社会を泳ぎ回っているような面妖なキャラを演じる木暮実千代さんの存在感は特に見事。

三原葉子も同じように、色気を武器に男たちの作戦に絡んで来るが、こちらも印象に残る。

梅宮辰夫さんなどはまだチンピラ役で、あまり見せ場はない。

この作品で、軽薄な下品さと無鉄砲なキャラクターを披露した健さんは、2年後に、石井監督、丹波哲郎らと組み「網走番外地」を世に出すことになるが、橘真一のキャラの原点はの作品にあるように思えなくもない。

そう言う意味でも貴重な作品ではないだろうか。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1963年、東映、石井輝男脚本+監督作品。

刑法第199条と第236条が黒地に白文字で出る。

俺たち二人でやるのが良いとは思うんだが、これだけの大仕事なればそうもいかない…と、簡単な現場の略図を前に遠野(杉浦直樹)に計画を打ち明けていたのは権藤(鶴田浩二)だった。

ハジキを持って見張る男が2人はいる。

現金を詰め込んだら、乗用車で1本桧の所まで運び、そこで待機しているトラックの定期便に積み替える。

乗用車を運転する人間も必要だが、この定期便の運転手の方はうってつけの良い奴を見つけたんだ…と言いながら権藤が遠野を見るので、俺がやるんだね?と遠野が念を押す。

あんたの口八丁で頼んで欲しいんだ、これが資料だと権藤は取り出して見せる。

王子運送、沢上定男、傷害で3年食らっている…と権藤は教える。

一生大金持ちかどん底かの勝負は24日の晩につく!と権藤は言う。

カレンダーの24日の日付のアップ

通り過ぎる電車をバックにタイトル

走る電車の空撮を背景にスタッフ、キャストロール

急行電車「六甲」が浜松駅に到着する。

サングラス姿の遠野が列車から降りる。

王子運送浜松営業所に戻って来た定期便トラック運転手沢上(高倉健)は、スピードが出ねえよ!と整備係(岡部正純)に文句を言うので、スピードってどのくらいだよ?よ整備係が聞くと、120kmだよと沢上は答え帰って行く。

その営業所に来ていた遠野は、帰って行く沢上に気づき尾行する。

沢上がやって来たのはアパートの二階で、まゆみちゃん!と呼びかけながら部屋のドアをノックするが返事がないので何度も叩く。

すると、隣の部屋の女性が出て来て、うるさいわよ!ここは夜遅い仕事している人が多いんだからと文句を言って来る。

留守かい?と沢上がその女性に聞くと、知らないわよ!自分の女くらい管理してもらいたいわ!などと女性は迷惑そうに答える。

その後、町の通りを横切ろうとした沢上は、タクシーの走行を邪魔する形になり、運転手が怒鳴って来たので、怒鳴り返す。

酒屋でウィスキーのポケット瓶を買って出て来た沢上は、それをラッパ飲みしながら不機嫌そうに歩き出す。

ロバのパンの馬車の横を通り過ぎた時、大分荒れているようだが、どうしたんだ?と背後から遠野が声をかける。

誰だい、あんた?俺にアヤ付けようってのかい?とウィスキーを飲みながら、うさん臭気に振り返る沢上。

良い運を付けてやろうってんだよ、兄さん。付いて来な…と話しかける遠野。

やがて遠野は、浜松城が見える無人のプールの客席に沢上を連れて来る。

女にモテる手を教えてやる。そんな酸っぱい顔してるからモテねえんだよと遠野が話し始めると、ゴロ巻こうってのか?と沢上が睨みつけて来たので、女ってのは、欲しいものを何でも買ってやれば喜ぶんだよ。ドレスでもキラキラしたダイヤでも…、兄さん、買えないんだろ?東京-浜松の定期輸送の稼ぎくらいじゃ…と遠野が言うと、何で俺のこと知ってるんだ?兄さん、警察関係かい?と沢上は怖じ気づく。

追っかけられたことはあるよと遠野が答えると、沢上は安堵したようだった。

おめえの給料の3年分を1晩で稼げる仕事があるんだと遠野が切り出すと、やばいんだろ?と沢上は警戒する。

お前のトラックがいるんだと言うと、何だ、俺はトラックの添え物かと沢上はむくれるが、それで3年分稼げりゃ文句ないだろう?と遠野は言う。

麻薬見てえなもんか?もっと詳しい話聞かねえことには…と沢上は気乗りしない様子なので、この仕事は黙って言われてことを聞くのが条件だ。無理には勧めねえ、候補者はいくらでもいるんだと遠野は言葉巧みに誘う。

沢上は、水を抜いたプールの底にホースの水を撒き、汚れを洗い流している様子をじっと見つめて考え込む。

悪かったな、こんな所へ引っ張って来て!と詫び、タバコ銭だ、少ないが取っといてくれと言いながら札束を沢上に渡し、遠野は去って行く。

その場に残った沢上は、3年分って言やあ…と呟く。

ついてねえぜ…と、飲屋街の麻雀屋でぼやいていた海老名(江原真二郎)は、窓から外に来ていた権藤を見つけると、途中で麻雀を抜け、外に飛び出すと、兄貴!と嬉しそうに呼びかける。

どっか静かな所ないかな?と権藤が聞くと、久しぶりに会った兄貴に散在させる訳にいかねえし…などと海老名が迷っている様子なので、申し訳ねえって柄かいと権藤は冷やかす。

海老名は権藤をまだ開店前のバーに連れて行き、酒を持って来たママを遠ざけて2人だけになる。

仕事の話って?と海老名が興味を示すと、かみさんどうしてる?と権藤が聞いて来たので、療養所にいますよと海老名が答えると、お仕着せの飯なんか食わせたって良くなりはしないよ。旨いもんでも喰わせるんだな。400万は下らないと権藤は答える。

何人で分けるんです?と海老名が聞くので、お前1人でだよと権藤が教えると、海老名は、こいつはどえれえ仕事だと仰天する。

おめえは銃持って、15分くれえ立ってりゃ良いと説明した権藤は、ダチはいるかい?と聞き、達者な奴なら2人で良いと指示すると、当座の小使いだと金を少し渡して行く。

その夜、クラブ「ロリータ」のホステスまゆみ(三原葉子)は、沢上のテーブルにやって来るが、あんただったの、もう立て替えるの嫌よと、迷惑そうに先手を打って来る。

すると沢上はにやつきながら札束を取り出し、いつも世話になっているボーイにチップやってくれと気前の良い所を見せ、今朝、寄ったんだぜとアパートを訪ねたことを打ち明ける。

昨夜、真知子さんが手がつけられないほど酔ったので、送って行ってそこで泊まったのよよ真弓は言う。

俺もやっとすげえまとまった金が手に入るんだ。ダイヤでもキラキラしたドレスでも何でも買や良いじゃねえかと沢上は上機嫌に言う。

するとまゆみは、いじわるね、何も大事なこと話してくれないんだもの…と甘えて来たので、良いんだろ?今夜?ホテルに行きましょう、一流の所へなどと沢上は嬉しそうに誘って来る。

トイレに行って来ると言って席を立ったまゆみは、パチンコ屋の経営者の黒川(安部徹)にこっそり電話し、急に金回りの良くなった客がいると告げ口する。

黒川はまだ興味を惹かれた風ではなかったが、ものになりそうだったら又電話してくれとまゆみに伝える。

電話を切った黒川に、兄貴、仕事かい?と聞いて来た金光(梅宮辰夫)に、「ロリータ」のまゆみだよよと教えると、ああ、お父xりゃんがタタキでムショに行ったあの女ですかい?と金光は苦笑する。

親子揃って良いタマだよと黒川も笑う。

深夜、女中が寝室のアコーデオンカーテンをノックして来たので、胸元も露なネグリジェ姿で起き上がった山之内美和(木暮実千代)が、今頃どうしたんだい?と聞くと、権藤と言う方が御見えになっていますと女中が恐縮そうに伝える。

同衾していた芳賀邦光(丹波哲郎)が起き上がり、ガウンを着ると私が出ましょうと美和に言い、部屋を出て行く。

何です?今頃…と迷惑そうに芳賀が姿を現すと、待っていた権藤が、そちらの都合を考え、この時間を選んだんですが…、東光銀行の件でと言って頂ければ必ず会ってくださるはずですと権藤は平然と答え、山之内社長は独身だと聞いて来たんですが?と逆に芳賀のことを詮索する。

君みたいなのが来た時のためだ…と芳賀が答えると、権藤は、番犬か…と納得する。

再三の権藤の頼みに対し、どうしても断ると言ったら?と芳賀が立ちふさがると、権藤は黙って銃を取り出してみせる。

芳賀はやむを得ず、アコーデオンカーテンを開き、権藤を奥へ誘う。

ごめんなさい、こんな格好で…と言いながら、ガウンをはおっただけの姿の美和が応対するので、良いですね、家庭的な雰囲気でざっくばらんに行きましょうと権藤も気にしないように答える。

東光銀行の件についてだそうですが?と美和が聞くと、あなたが何度も逃げている話ですと切り出した権藤は、あなたが経営なさっている「グルリバイカル」は既に二重抵当になっているし、この屋敷も担保になっている。あなたはさらに8000万も融資したがっているが、これは不正融資ですね?と具体的な話をし出す。

随分良く調べておられること…、でも私には政界に友達がいますの…と美和が答えると、利口な政治家なら、今の時期、あなたにタッチはせんでしょうと権藤は追求する。

側で一緒に話を聞いていた芳賀が睨みつけて来ると、あなたを絞りに来たんじゃない。逆に融資しようと思って来たんですよ、2億ほど…、話に乗りますか?と権藤は言う。

嫌と言っても乗せるんでしょう?それで私はどうすれば良いの?と美和が淡々と聞くと、2億手に入れるための資金を1200万ほど融資して頂きたいのですと権藤が続けたので、美和は芳賀に眼で合図をする。

ホテルの一室で目を覚ました沢上は、先に起きた真弓がカーテンを開けたので、閉めろよ!まぶしいから…とベッドの上で文句を言う。

もう12時よ、1時に誰かと約束あるんじゃなかったの?とまゆみは注意する。

踏切で待っていた遠野は、沢上がやって来ると、5分遅れてるぜと腕時計を見ながら言うと、すまねえと詫びた沢上の顔を何度もビンタし、何するんだよ!と沢上が気色ばむと、お前、俺に手を貸すって約束したよな?おめえの仕事は高級時計より正確さが要求されるんだ!まさかおめえ、仕事のこと誰にも漏らしてないだろうな?ときつく言い渡す。

何をやるのか知らねえのに、しゃべるはずねえだろ!悪かったよ…と再度詫びた沢上は、別の見晴らしの良い場所に連れて行かれ、あの会社は?と遠野から聞かれると、東亜鋼管さと答える。

製菓会社の所で男を一人乗せろ。街道を8km行くとお前の会社だ。24日に東京便の順番が当たるように細工しろ。その辺お前の会社は甘いなはずだ。一本桧の所で俺が乗り込むのが9時8分!後は、いつものように東京へ向かえば良いのさ。24日までに予行演習しておくんだなと遠野は具体的な指示を出す。

それだけのことで3年分ももらえるのか?と沢上が半信半疑で聞くと、お前のアパートへ送ってやるよと遠野は答える。

その後、沢上と別れた遠野は、東亜鋼管の門の前をさりげなく通りながら、守衛の様子などを観察するが、そんな遠野を密かに監視していたのは、沢上を尾行して遠野を知ったまゆみだった。

その頃、権藤は米軍基地近くの町のバーに来ると、ジョージさんいるかい?とホステスに尋ねる。

ジョージと言ったって何人もいるけど?とホステスが無愛想に答えると、ジョージ片桐さ、いるかい?と権藤は聞く。

それならマスターよとホステスが二階を指すので権藤が上がって行くと、テーブルでブランデーを飲んでいた男(八名信夫)が立ち上がり、権藤の後ろ姿を睨みつける。

あんたが欲しい銃は?と二階にいたジョージ(アイ・ジョージ)が聞くと、ワルサー三丁と権藤は答える。

家は小口は扱わないんだが、遠野の紹介じゃあな~とブツブツ言いながら、トランクに入ったワルサー三丁を出して見せる。

噂通り、品揃えは豊富だなと権藤が感心し、ワルサーの一丁を手に取ろうとすると、その手を握って来たのが、下にいた男で、何の真似だ?とジョージが聞くと、小口を扱うと必ず手入れ食らうと男は言う。

俺がデカに見えるか?と権藤は答え、ちょっと調べるだけだと身体に触れようとして来た男と殴り合いを始める。

それを煙草を口に平然と見ていたジョージは、男が叩きのめされると、あんた、ガンさばきはいけると睨んだが、パンチもなかなかだな…と権藤を褒める。

そして、気絶した男を子分に下へ運ばせると、ブツは気に入ったかい?ちょっとイカすのがあるんだ。アトラクションを見せてもらった礼だと言いながら、ジョージは機関銃を二丁出して見せる。

一方、客を装ってとある銃砲店に来ていた海老名は、さりげなくライフルを見せながら商品の説明をする主人の葉室(待田京介)に仕事の話があると囁きかけると、この先にある「ブランシーク」って店で待っててくれと耳打ちされる。

今日は下見に来ただけだから…と小声で海老名は打ち明ける。

一方、権藤は、とある街角の一時預かり所にやって来ると、23日の晩に取りに来ると女将に頼み、2万円を女将が呼んでいた雑誌の上に落とす。

25日の朝、段ボールの箱が届くはずだ…、それは手付けさと権藤は言って帰る。

素早く札の挟まった雑誌を閉じた女将は、何て良い日なんだろうねと喜ぶ。

そんな権藤を密かに尾行していたのは芳賀だった。

茶店で葉室に仕事の話を持ちかけた海老名は、これだけギャラを払うって言うんだ。相当どでかい仕事に違いねえ。交渉次第でもっと金は入るはずだぜと囁きかける。

1万でも1000万でも労力は同じだ。おめえに任せるよと葉室が言うので、現ナマ積む時、俺が交渉するよと海老名は言う。

強盗の途中で賃上げ闘争か…と葉室は苦笑する。

帰宅した芳賀から、権藤は立川に行ったと話を聞いた美和は、麻薬か他の密輸の始末を付けるつもりなんじゃないかしら?と推測し、1200万持ったままドロンすることないかしら?と不安がる。

芳賀は、おそらくガンを使うやつを探っているんでしょうと言うと、実はあの1200万、半月で返す約束なの…と美和が焦っているので、後は、やるかやらないか決心一つですと助言する。

それもそうね…と美和はあっさり覚悟を決める。

浜松駅で15時33分の東京駅の切符を買う遠野の様子を観ていたまゆみは、駅から黒川に電話を入れる。

その報告を聞いた黒川は、こっちから人を送っても良いんだが、時間がない。行ってくれるか?そいつがどこに住んでいるか、仲間関係など出来るだけ調べてくれとまゆみに頼む。

一方、権藤は、外で子供たちが拳銃ごっこをして遊ぶ貧しい地域のアパートに来ると、その一室に入る。

部屋の中で内職の編み物をしていた母のくめ(吉川満子)は権藤を見て喜ぶ。

路子は?と権藤が聞くと、バイトに行ってるよ。国際貿易の玩具の自動車荷造りしてるの。修学旅行の費用、自分で出すんだって…と母は言う。

権藤は金を渡し、これ、路子にやってくれ。バイトしなくても良いってと言うと、母親はその金の出所を怪しんだのか、お前、今、何してるのと聞いて来る。

その内堅い商売するから…と権藤が答えると、早くそうなって、みんなで暮らせるようになりたいねとくめが言うので、路子に元気でやれって言っといてくれと言い置き、権藤はアパートを後にする。

くめは、再び内職の編み機に向かうが、その手はしばし動かなかった。

帰りかけていた権藤に、兄ちゃん!と駆け寄って来たのは妹の路子(本間千代子)だった。

今帰ったら、兄ちゃんが帰ったばかりだと言うので追いかけて来たのだと言う。

良いもんあげるから目をつむってと言うので、言うとおりに権藤が目をつぶると、手を出してと路子は言う。

権藤が素直に右手を差し出すと、路子は小さな箱を乗せて来る。

それはミニカーだった。

大人の玩具なんですって。オシャカになったやつ、もらったのよ。

今度兄ちゃんにやろうと思って…と路子は嬉しそうに話す。

又な…と声をかけると、今度いつ来る?と路子が子供のように聞いて来たので、ちょっと遠くへ行くんで、しばらく会えないかもしれないなぁ…と答えた権藤は、ハンカチを取り出すとそれにつばをつけ、路子の喉元についていた油煙を拭き取ってやる。

そして、早く帰って母ちゃんを手伝ってやれと路子に言い、別れる。

東京にやって来たまゆみは、遠野を追って地下鉄の通路に降りる。

すると、ちょっと目を離した隙に姿を消した遠野が、柱の影から飛び出して来て、お嬢さん、何か用か?どっから付けて来たんだ?と立ちふさがり、まゆみの手を掴むと、後でゆっくり聞くことになるよと脅す。

するとまゆみは、おつむ、おかしいんじゃない?人を呼ぶわよ!と睨みつけるが、なるべく派手な声でやんなよと平然と答えた遠野は、まゆみの手を掴んだまま地上に出ると、タクシーを呼び止める。

「赤坂プリンスホテル」にタクシーで乗り付けた遠野は、まゆみを伴ってバーにやって来る。

スコッチのオンザロックを遠野が注文すると、まゆみも同じものを頼む。

そして、温泉マークへでも連れて行かれるんじゃないかとドキドキしたわと言うので、女はキザなやつが好きなんだろう?と遠野はうそぶく。

しかし、まゆみは嫌いよと言うので、だったら、どうして俺の後を付けた?早く吐いちまいな!と言いながら、遠野はまゆみの手を掴んで捻り上げる。

まゆみが痛がっていると、隣に座っていた外国人が何か話しかけて来たので、まゆみはその外国人にベリーグッド!と笑顔で答え、乾杯!と音頭を取る。

一方、別のクラブに来ていた権藤のテーブルに近づいて来たヌードダンサーユキ(瞳麗子)は、いつもの所ね?と囁きかける。

その頃、ホテルの部屋に遠野と共に入ったまゆみは、素敵なお部屋ね…と気に入ったようだった。

遠野は、ここならいくら騒ごうが文句は来ないぜと軽く脅す。

窓の外は雨になっていた。

話を聞かせてもらおうじゃないか。お前のボスは誰なんだ!と遠野は聞くと、気分が乗らないな~、もっとロマンチッックな話をしない?とまゆみははぐらかす。

酔ってるのか?すぐに正気になる手があるぜ…と言いながら、自分のベルトを引き抜いた遠野は、好ましくない方法だが、この際、この方が良いかもしれない!と言うと、そのベルトでいきなりまゆみを打ち据えて来る。

待って!と叫んだまゆみは、自らベッドの方へ向い、話はベッドの中でも出来るわと誘いかけて来る。

そんなまゆみの背中から抱きしめて来る遠野。

土砂降りの雨の中、店の外に出て来たユキは、あんた!車、拾ってよ!と頼むので、権藤は通りかかったタクシーを停め、一緒に乗り込む。

ユキのアパートに来た権藤は、棚にブランデーあるわよとユキから言われたので、棚を見るとヘネシーが置いてあった。

無理したな…と言いながら瓶を取り上げると、あんた好きなんでしょう?とユキが可愛いことを言って来るので、虎の子を使わせたな。今度2人きりで乗る車を買おう。これで一切合切手を切る。サツともお前の裸を見ている嫌らしい連中とも…。

田舎でリンゴ園でも経営しよう、お前も一緒に畑に行くんだと権藤が夢を語ると、お母さんも呼びましょう。それからあんたのペット…とユキが言うので、路子か?と権藤は笑う。

あんた、私のこと巧く紹介しないとね。クラブのヌードダンサーなんて言えないわねとユキが案ずるので、女教師とでも言うか。俺もお前も運がなかった。そのせいで人生の半分はパーにした。今度はこっちが借りた利息をつけて返してもらうと権藤は言う。

するとユキが、血を見るのは嫌よと言って来る。

私、リンゴ園じゃなくても良いのよ…、女中でも良いのよ…とユキが言うので、急に夢が小さくなったな?こんなでかいことをした奴はいないと権藤が計画を諦めないようなので、何を言っても無駄なようね…とユキは哀し気に言う。

ユキ、そんな顔をするのは止せ!もっと明るい顔をするんだと権藤は言い聞かせる。

その頃、ホテルのベッドで事を終えたまゆみの方は、いつ会えるの?と甘えたようにベッドの遠野に聞いていた。

浜松に帰ったら、俺が話した通りを報告するんだと遠野が念を押すと、私が裏切るとでも言うの?よまゆみが聞いて来たので、信じろって言うのか?いっぺん寝たくらいで?と逆に遠野は皮肉を言う。

生理学の問題じゃなくて心理学でしょう?あんたの仕事に不利になるのなら浜松へ帰らなくっても良いのよ…とまゆみが言うので、お前はそんなにとびきりの美人って訳でもねえが、いつも一緒にいたくなるタイプだぜと置き上がった遠野はまゆみに抱きつき、2人は又キスをした後、激しく抱き合う。

海老名は雨の中、広岡(高英男)に会って、仕事の話を持ちかけていた。

鉄砲屋が一緒にやるのか?あいつの顔を見ているストレス感じるんだなどと広岡は気乗りしない素振りだったので、じゃあこの仕事に縁がなかったと言うことか…と言いながら海老名が帰りかけると、待ちな!断っちゃいねえぜと広岡は声をかけて来る。

ユキのアパートへやって来た遠野を迎えた権藤は、側にいたユキに、バスを使うんじゃなかったか?と言葉をかけ、部屋から追い出す。

金は明日、出資者の所に行けばもらえると伝えた権藤だったが、もう1人の乗用車を運転させる奴、ケーブルの所からあの一本桧まで運転する奴がなかなか見つからねえんだ。こいつが一番何題かもしれんと焦りを見せる。

すると突然、私が運転しようか?とユキが近寄って来たので、お前聞いてたのか!何故余計な口出しするんだ!と近藤は顔を曇らせる。

しかし、ユキの顔を見た遠野は、悪気じゃないらしいと権藤を制し、いっそのこと運転をまかせたら?と提案する。

私、あんただけ、知らない所へ行かせたくないのよ!とユキも真剣なまなざしで訴えて来るし、どうせ、話を聞かれたんだと遠野も権藤を説得する。

私、度胸のない女じゃないわ。お嬢さんじゃないのよ。あんたの女じゃない!とユキは訴える。

権藤が折れたらしかったので、話は決まった。明日、出資者の所で会うことにしようぜとまとめた遠野は、権藤とブランデーグラスで乾杯する。

翌日、美和の屋敷に出向いた権藤と遠野は、美和と芳賀に、自分たちの犯罪計画を詳細に打ち明ける。

24日、守衛が見回りの帳簿にハンコを押せば、当分戻って来ることはない。俺と遠野で会計課に行き、出入口を塞ぐと権藤が説明すると、芳賀が、もう一つドアがあるな?と略図を見ながら芳賀が指摘する。

俺たちが入って来たドアだ。そこにには俺が立つと権藤が答える。

俺ともう1人で金を詰め、見張りの3人は後8分立っている…と遠野が補足する。

鉄管の所で私が遠野さんを乗せ…とユキが話に加わると、遠野と金だろう?と芳賀が念を押す。

遠野が途中で降りて、車が戻って来るまで往復8分だ。

俺と会計課の3人はケーブルの所へ飛び出し、引き返して来た車に乗って時速80kmで製菓会社の看板の所に来る。そこにトラックが来るので、ライトを点滅させると俺が降りる…と権藤が続ける。

定期便が突っ走る。それに俺と遠野が乗る。

金を段ボールに詰め替え、小包に見せかける…と権藤が説明すると、当然サツは検問を張るだろうなと芳賀が口を挟む。

サツはおそらく大井川辺りで食い止めるつもりだろう…と権藤はそこまで読んでいることを明かす。

それを黙って聞いていた美和は、大変立派なプランだわと感心し、その小包の送り先は?と聞くので、吾妻橋の所の一時預かり所の後家さんですよ。信用できる人ですと権藤が説明すると、

その後家さんは安心でも、あんたたちの方が心配だわと言う美和は、その送り先は私にしてちょうだいと言い出す。

疑われるのは不愉快だな…と遠野が不平を言うと、そんなに睨まないで、私気が弱いので貧血起こすかもしれないわなどと美和は言う。

それを横に立って聞いていた芳賀が、俺が介抱してやるのさ…と付け加える。

権藤は腹を決め、おっしゃる通りにしますと答えたので、気になさることないわ。検問に引っかかっても、私の名前なら開けられないわと答えた美和は、政界財界のしきたりでは、こう言う話の時にはリベートと言うものがあるのよ。この計画のために私の1200万がキャスティングボードになるのよ。

あんたたちは私のお金で5億手に入るのよなどと美和が言い出したので、あなたは男に生まれたら、総理大臣になれるでしょうと権藤は皮肉を言い、明後日会うことになるでしょうと付け加える。

そんな中、美和が権藤が作戦の計画の説明用に使っていたミニカーを乱暴に扱っているのを、権藤がむっとしながら止めたので、ごめんなさい、御大事なもの?と美和は聞く。

マスコットなんですよ…とミニカーを愛おしそうに触る権藤。

そこに、芳賀が1200万円を持って来る。

ご成功を祈りするわと美和は言葉をかける。

その後、ユキが運転する車に乗り込んだ権藤と遠野は、一緒に歩いていた海老名、葉室、広岡の三人を尾行しながら、顔をユキに確認させる。

あれが海老名だ。この道じゃあ、うるさい男だと権藤は説明する。

じゃあ、8時に行ってるぜ!と挨拶した遠野は車を降りて行ったので、ドライブでもするかと権藤は言い出したので、嬉しがらせるわねとハンドルを握っていたユキも笑う。

汽車が混んだからと言い訳しながら、屋上の望遠鏡をのぞいていたまゆみに近づいて来た遠野は、早くこんな所から出ようと急かす。

黒川って奴に会うとまずいから?本当は早く2人きりになりたいんでしょう?とまゆみがからかうと、それもちょっぴりあるな…と遠野は笑う。

その頃、権藤とユキは、夕方の浜辺にやって来ていた。

静かね…、私、こんなところがあるの忘れてたわ…とユキが呟くと、私たちって言って欲しいなと権藤が口を挟んで来たので、ごめんなさいとユキは笑う。

まゆみとしけこんでいたホテルにかかって来た電話を取った遠野は、電話の相手が沢上であり、辞めると言うので、今更何を言い出すんだ!と怒るが、電話は切れてしまう。

どうしたの?とまゆみが聞くと、今夜の定期便の奴、辞めたがっている。だが俺は奴がどこにいるのかも知らない…と遠野は絶望したかのように教える。

するとまゆみは、「ロリータ」に行ってみなと言い出したので、お前のこと追っていると言うのか?と権藤は呆れる。

その頃、海老名は、権藤に指示されたホテルで広岡を前に、良いか?お前さんもどこに現金が運ばれるか調べてくれと指示をしている所だった。

その時、一緒に話を聞いていた葉室が銃を取り出し広岡に向けたので、おい坊や、オイタは止めろ!怪我の元だぜと広岡は椅子に腰掛けたまま無表情に言う。

クラブ「ロリータ」では、沢上が酔って荒れていた。

そんな沢上の様子を離れたボックス席に座っていた黒川は、惚れた女に嫌われたから荒れてるよとホステスから聞かされ、愉快そうに見守っていた。

そんな沢上のテーブルにやって来た遠野は、話し合おう。ギャラが不足なら倍出そうと話しかけるが、俺はもう金なんかどうでも良いんだ!と沢上が言うので、おい、沢上!それでもムショの飯を食った男か!それが仁義か!と迫る。

そうだと行ったらどうする!と寄って座った目で沢上が答えると、これで決着付けてやろうか?と言いながら、遠野はテーブルの上に置いたハンカチ包みの一部を拡げ、その中に銃が隠してあるのを見せる。

やってもらおうじゃないか!楽団の演奏付きでご機嫌だよ!早くやれよ!何故撃たねえんだ?おっかねえのか?と沢上は挑発して来る。

その時、待って!と声をかけテーブルにやって来たのはまゆみだった。

まゆみ!何でこんな所へ来たんだ!と遠野は驚く。

その様子を見ていた黒川は、大分面白くなって来たな…と薄笑いを浮かべる。

何だか分かって来たような気がするよ…と遠野とまゆみの態度を見ていた沢上は言い出す。

良し!オレ、気分変わったぜ!今になって約束の仕事やる気になったぜ!と言うので、それを聞いた遠野は、沢上さん…、あんた…と絶句する。

まゆみも、男同士の話に口は出さないわ…と言うが、時間ないんだろ?後はトラックの長い道中で…と言うと、沢上は店を出て行く。

その頃、見張り役3人が集まっていたホテルにやって来た権藤に、兄貴!何か手違いでもあっやんじゃ…と海老名が心配していた。

その時、電話が鳴ったので、受話器を取った葉室は、権藤に手渡す。

ようやく遠野から電話が入ったのだった。

良し!そこで待っててくれ!と電話の向うの遠野に答えた権藤は、良し!出発だ!と3人に伝える。

そして、分かっていると思うが、俺の指図に従ってもらう。銃は俺が用意している。自前の拳銃は出してもらおうか?と権藤が言い出したので、海老名ら3人は緊張する。

しかし、権藤が機関銃を手に持っているのでどうしようもなく、やむなく3人は自分の拳銃を差し出す。

権藤はその銃を集め、工場に入る前にワルサーを渡すと言うので、ギャラの残金はどうなってるんです?と海老名が聞くと、ここにあるよと権藤はバッグを見せ、1時間後に戻って来て、ここで受け取ってくれと3人に伝える。

権藤は吸っていた煙草をコップの中に残っていたウィスキーで消す。

「庄田の木工機」と書かれた看板の所に、ユキの運転する車でやって来た権藤は、みんな時計を合わせてくれ。今、8時25分、50分になったらここに来るんだと3人に指示を出す。

葉室はユキに、じゃあ、25分経ったらデートしようぜと軽口を叩く。

工場の前で降り立った3人にワルサーを渡しながら、相手は堅気さんだ。めったなことで撃つんじゃねえぞと権藤は釘を刺す。

守衛が、見回り表をチェックして移動したのを確認した権藤と遠野、3人の見張りたちは、給料の計算をしていた会計室に、ハンカチで口元を隠しなだれ込む。

悲鳴をあげる女子工員もいたが、全員、部屋の奥へ移動させ、壁の方を向かせて立たせると、広岡と遠野は布袋に机の上に積んであった札束を入れて行く。

その頃、酔った沢上は、いつものように東京行きのて行きトラックの運転席の乗り込んで来たので、助手が、代わろうか?すごく匂うな…と酒のことを注意するが、匂うわけねえだろと答えた沢上は、そのままハンドルを握り出発する。

一方、会計室で遠野たちが金を詰め込んでいる中、権藤に銃を突きつけて近づいた海老名は、兄貴、ここにある金、頭割りにしてもらおうか?と言い出していた。話つくまで俺は動かねえぜと海老名は脅し、海老名さん、早く片付けちまおうと葉室も銃を突きつけて来るが、権藤は動じず、そんな手つきで撃てるのか?と挑発して来る。

それに怒った葉室が引き金を引くが、弾が出ない。

驚いて撃とうとした海老名の銃も弾が出なかった。

お前らの中に弾が入ってないことが分かったら、壁を向いている奴らも黙っちゃいねえぜ…と小声で権藤が脅すと、すまねえ兄貴!分かった!だから詫びているんだと急に怯えながら謝って来る。

金を袋に入れ終わった遠野と広岡は、布袋を持って会計室を逃げ出すと、外で待っていたゆきの車に布袋を積み込むが、遠野は広岡に、お前さんはここで留守番してなと言い、自分だけ車に乗り込むとユキに車を出発させる。

その頃、沢上は助手に、たまには仕事をさぼって遊びに行きたいと思わないか?などと話しかけていたが、やがて道の真ん中に立っていたまゆみに気づくと急ブレーキを駈ける。

運転席を覗き込んで来たまゆみは、沢上さん、話があるの…と言葉をかけて来たので、沢上は、良いんだよと答える。

そんな二人の様子を見た助手は、じゃあ、さっきのお言葉に甘えて…と言うと、気を利かして車を降りて去って行く。

まゆみがトラックの荷台に乗り込むと、沢上は又トラックを出発させる。

そんな沢上のトラックを、金光が運転し、黒川と子分たちが乗った乗用車が尾行していた。

ユキの車はある地点まで来た所で停まり、遠野が現金を積めた布袋を抱えて降り、草むらに身を隠すと、ユキは又、時速80kmを守って車を走らせる。

その間、海老名たちと会計室に残っていた権藤は、壁に向かって立っていた会計係の面々を見張っていたが、念のために言っておくが、電話線は切ってあるし、守衛も仲間が始末した。30分じっとしておくように…と言い聞かせると、海老名と葉室と共に工場を逃げ出す。

そして、戻って来たユキの車に広岡も含め全員乗り込むと、出発する。

車中、権藤は、海老名、もう妙な気を起こさねえ方が良いぜ、このまま行けば、ホテルのあの金にお目にかかれるんだと言い聞かす。

やがてユキは、未知の反対側から近づいて来たトラックのライトに気づき、自分の車のライトを点滅させる。

それに気づいた沢上の方も、ライトを点滅させて合図を返す。

権藤は、計画が順調進んでいると確信し、運転していたユキに笑いかける。

「サンリツパン」と書かれた看板の所で、権藤は車から飛び降りると、停まっていた沢上のトラックの荷台に乗り込む。

ユキの車はそのまま走って行き、沢上もトラックを出発させる。

権藤は遠ざかって行くユキの車のバックライトを見ながら微笑むが、次の瞬間、荷台の影に人の気配を感じ、誰だ!そこにいるのは!弾を喰いたくなければ出て来な!と呼びかける。

荷物の間から姿を現したまゆみを観た権藤は、何だい、あんたは?と驚く。

やがて、その荷台に、布袋を持った遠野が乗り込んで来る。

その頃、ホテルに向かっていたユキの車では、スピードを緩めろ!と海老名がユキに声をかけ車を停めさせていた。

ユキの車が急停車したので、尾行していた黒川の車は思わず衝突しそうになり、ハンドルを切り損ねて路肩に乗り上げてしまう。

その結果、黒川の車は動けなくなったので、降りた子分たちは、ユキの車を取り囲み、車をチェンジしろ!と命令する。

しかし、後部座席に乗っていた海老名たちが、おとなしく引っ込んでいた方が良いぜなどと啖呵を切り動こうとしなかったので、金光たちは一斉に海老名たちに銃弾を浴びせて来る。

慌てて外に飛び出し、草むらの方へ逃げ込もうとした葉室、広岡も背後から撃たれ、逃げていたユキも又、背中を撃たれて倒れる。

黒川は、そんなもん放っといて早く来るんだ!と子分たちに呼びかけると、ユキの車に乗り込みトラックを追跡始める。

トラックの荷台では、沢中の女だったまゆみと遠野が出来ていたことを知った権藤が呆れていた。

惚れた弱みを知られた遠野も、言い訳出来ねえ…と謝るだけだった。

それでも計画途中の権藤と遠野は、トラックに積んであった段ボール箱に布袋の中の札束を詰め直すしかなかった。

そんな中、トラックが急に停まると、運転席から降りて来た沢上が荷台を覗き込み、おい!誰か前に一人来てくれ!助手のいねえ車なんて一番お巡りの目を惹くからなと言って来る。

やむなく、遠野が助手席に向かうことにする。

助手席に乗り込んだ遠野に、そこの作業着でも引っかけなよと声をかけた沢上はトラックを動かす。

遠野は気まずさをごまかすように、早えとこ話つけよう…と口を開くが、沢上はらだ、まゆみを捨てたらただじゃおかねえぞと言っただけで、それだけさ…と話を終えると、吹けば飛ぶような〜♪と歌を歌い出す。

そんな沢上の男気を知った遠野は、沢上…、おめえって奴は…と言うだけで、後は絶句する。

その直後、よ小野はバックミラーに映った尾行車に気づき、後ろから来る車、何か嫌な感じだぜ…と沢上に教える。

すると沢上は、からかってやろうか?と言い出し、スピードを上げる。

ユキの車の運転をしていた金光は、勘づいたみたいですね…と後部座席の黒川に伝える。

もはやこれまでと銃撃して来る黒川の子分たち。

荷台の権藤と助手席の遠野も撃ち返す。

まゆみは荷台の影に身を隠す。

金光たちの車がよタックの前に出ると、黒川は、相手は銃は一丁だ、ゆっくり狙って行け!と子分たちに命じる。

やがて。トラックは「庄田の木工機」の看板の所を通過する。

家具屋の街だ!これじゃあ、検問を通れねえぜ!と沢上が叫ぶ。

走りながらの銃撃戦が続く中、良い知恵が浮かばねえ!と権藤も焦っていた。

降ろして逃げなよ!と沢上が言うと、俺はもう頭に来たぜ!と遠野は言い出す。

トラックが停まると、二台からまゆみと権藤が降りて逃げ出す。

この街道を4kmも行けば袋井だと権藤はまゆみに言い聞かせ逃がそうとする。

一方、黒川の方は、二手に別れようと子分たちに命じていた。

遠野も助手席を降りると、運転席に残っていた沢上は、俺は降りねえ!「ロリータ」でこの車に乗ろうと決めた時、運命は決まってたんだ!どうせ勝って監獄、負ければ地獄だ!と言うと、ポケット瓶のウィスキーを一気にあおり、子mの極道共!と叫びながら、沢上はトラックを前を塞いで停まっていた黒川たちの車に激突して行く。

黒川の乗ったユキの車は爆発炎上し、沢上のトラックにも引火する。

燃え上がるトラックの荷台によじ上った遠野は、火が付きかけていた段ボール箱を外に引きずり出し、懸命に逃げようとする。

そこに権藤も戻って来て一緒に段ボールを引っ張り始める。

草むらを先回りしていた黒川たち一派が、突然、横手から姿を現し、遠野を射殺する。

権藤も撃たれるが、権藤の放った弾が黒川とその子分たちに命中し、全員倒れる。

そこにまゆみが戻って来て、流れ弾に当たる。

倒れかけたまゆみは、道に倒れていた遠野に気づくと、遠野さん!と呼びかけるが、まゆみ自身息絶える。

遠野も刀に絶命していた。

それを見る権藤。

全員息絶えた所で、権藤は必死に段ボールを引きずって行こうとするが、やがて自らも倒れて動かなくなる。

数時間後、現場に駆けつけた警官隊が現場検証を始め、遠野、まゆみ、権藤らの死体を担架に乗せて運んで行く。

権藤の身体から道に転げ落ちたのは、ミニカーだった。


 

 

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