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東京アンタッチャブル 脱走

三國連太郎と高倉健のバディ刑事ものシリーズ第二弾らしい。

東映でお馴染みの「警視庁物語シリーズ」の長谷川公之氏原作、脚色らしく、手慣れた刑事物になっている。

舞台は八王子の北多摩署で、三國さんと健さんは、そこの主任と新米刑事と言った役柄のようだ。

若い健さんが、「太陽にほえろ!」の新人刑事のように全力で走るシーンなどが新鮮。

三國さんの方は、妻を亡くし、男手一つで子供を育てていると言う設定になっており、今回は、その息子を轢いた強盗脱獄犯人を追う姿を描いている。

子煩悩な役柄を演じている三國さんと言うのは「馬喰一代」の主人公などを連想させる。

逃げる犯人を演じているのは、デビュー作「殺人容疑者」(1952)を連想させる丹波哲郎。

それに、「月光仮面」の大村文武や世志凡太などが逃亡犯を演じている。

逃亡犯の1人の母親役を演じているのは、見た目まだ若い菅井きんさん。

婦警役で登場している三田佳子さんなども初々しい。

練馬にある東映東京の映画で八王子が舞台と言うのも珍しいような気がするが、刑事もの好きには楽しめる作品になっていると思う。

丹波哲郎と健さんの格闘シーンなどは、2年後の「網走番外地」(1965)を連想させ、興味深い。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1963年、東映、長谷川公之原作+脚色、関川秀雄監督作品。

留置場には、女が歌う「若い二人」の声が響いていた。

監督と呼ばれる看守が、おい!静かにしろ!と注意しても、相部屋の男たちの牢が並ぶ中、端の留置場にただ1人入れられていた女は止めなかった。

その時、監督さん!と呼びかける声がして、又お前か!と看守から呆れられたのは、4人が入っている牢にいた川本五郎(丹波哲郎)だった。

小便しながら脱走なんかしやしねえよと笑いながら、牢から出してもらった川本は、留置場の隅にある便所に連れて行かれる。

その川本が抜けた4人部屋の大一房に、新入りとして連れて来られたのは山口豊(岡本四郎)だった。

その山口が、牢に入るなり、お兄いさん!お控えなすって!と仁義を切り始めた所に便所から帰って来たのが川本で、そんな来る臭い仁義止めとけと注意すると、山口の名前や年齢、捕まった罪などを聞く。

山口は素直に、21才でスリでパクされたと教えたので、そんなちっぽけなことをやらないで、もっとどえれえことをやるんだなと忠告する。

一緒の房にいた守田三郎(大村文武)も、おふくろさんも寂しがるだろうと山口に話しかけ、桐ノ江一夫(小川守)や金森正吉(世志凡太)も、好きな食べ物は?などと親し気に聞いて来る。

一番は天丼ですが、さっき調べ室でデカさんにご馳走になったばかりだから…などと山口は答える。

すると、山口、酒飲みたくならねえか?と、又、川本が山口の首根っこを引き寄せ小さな声で尋ねる。

しかし山口は、サツの旦那が、悪いようにはしないって言ってますから…などと言う山口に、逃げねえか?といきなり囁きかけて来た川本は、実はな、山口、今度鉄筋のブタ箱が出来るんで、それたちはそこに移される。今日が最後のチャンスなんだよと説明する。

どうやって?と驚きながらも小声で聞いた山口に、もうちゃんと細工は出来てるんだ。川本の兄貴が後の面倒を見てくれるんだとよと守田が補足する。

どうだ?一緒にトンズラするか?と川本が聞くと、山口はこっくり頷く。

タイトル

監督さん!とただ1人の女が呼び掛け、留置場を出て便所に行かせてもらう。

看守が便所の晩をしている間、大一房の5人は、互いに肩車して天井板の片隅を持ち上げ、その上に上がり込んだものが下の仲間を引き上げてやる。

最後の1人になった山口は、天井裏に引き上げてもらう途中で腕がすっぽ抜け、したたか床に知りを打ち付けてしまうが、何とか大きくジャンプして、天井裏へと引き上げてもらう。

そして、天井板をはめ終わった時、牢を見回りに来た看守にによって、脱走がバレてしまう。

川本たちは、塀の上に張り巡らされた鉄条網の一部を倒し、早朝の外へと逃げ出す。

スタッフ・キャストロール

通りかかったタクシーに乗り込む5人の脱走犯

西山直人(三國連太郎)は、交通事故で入院していた息子の弘()病室に見舞いに来ていた。

弘は意識不明の重態で、未だ昏睡状態のままだった。

(回想)通りで弘をバイクで轢いたのは川本五郎だった。

川本はその場で捕まり、事情聴取した西山と原田芳夫(高倉健)に、急いでいたものだから…と言い訳をする。

お前、ピストル強盗をした信用金庫から逃げる途中だったんだろう?目撃者は犯人はお前にそっくりだったと証言しているんだ!と西山が責めると、他人の空似ですよ。第一ピストルなんて持ったこともありませんよととぼける。

確かに、捕まった時、川本はピストルを持っていなかった。

(回想明け)看護婦が病室の顔を出し、刑事課の原田さんからお電話ですと知らせに来たので、電話の所へ向かうと、川本を含めた5人が全員脱走したとの知らせだった。

隣接署に緊急手配しています!と原田は告げるが、川本らが乗ったらクシーを止めようとした警官二人は、タクシーがそのまま暴走し始めたので、慌てて飛び退くと、バックナンバーを記録する。

後部座席に近づいた警官は、その場で川本から

北多摩署の刑事部屋で電話を取った原田は、犯人が乗っていたタクシーが八王子方面に逃亡したと警官から連絡を受ける。

署に戻って来た西山は、看守はいたんですがね~…と不思議がる原田に、看守のいない留置場がどこにある!だから、君たちには責任がないと言いたいのか!と叱りつける。

その頃、タクシーの運転手に、左へ廻れ!などと方向を指示していた川本は、すっかり怯えている運転手を、山道で停めさせ、仲間たちに引きずり降ろさせると、その場にあった殴る蹴るの暴行を加え、あげくの果てに、その場に落ちていたレンガで頭を殴りつけ、気を失いかけた所を崖から突き落とす。

5人は林の中に逃げ込むが、崖から落とされた運転手はまだ息があった。

ある地点にやって来た川本は、地面の目印の下に隠していたビニールに包んだ拳銃を取り上げ、西山警部に見つからなかったものだと薄笑いを浮かべる。

弾は後6発残っていたので、大事に使わなくちゃ…と川本は呟くと、運転手から奪って来たわずかな金の中から1000円だけを守田に渡し、自分は食料や衣服を探して来ると言い残し、4人をその場に残したまま立ち去る。

その頃、北多摩署の片桐課長(河野秋武)は、八王子方面に逃走したタクシーが川本たちかもしれないと睨んでいた。

原田たちは、逃亡した5人の立ち寄りそうな場所を当たりをつけていたが、川本の住所だけが掴めないと西山は苛立っていた。

片桐課長が西山に、息子さんの容態を聞くと、医者が言うには、脳症を起こさなければ大丈夫だと…と答えるが、男手一つでは看病もできんな…と片桐は同情する。

あの状態では、いてもいなくても同じですから…と西山は答える。

その時、署に電話が入り、受話器を取った片桐課長は、タクシー発見した?卍峠のトンネルの前?運転手は瀕死の重傷?と確認すると、署の名誉にかけて今日中に捕まえるんだ!と西山や原田たちに檄を飛ばす。

廊下に飛び出た西山に、弘ちゃん、あのままですか?と声をかけて来たのは、婦警の井上百合子(三田佳子)だった。

今日も病院に行けそうにもないと西山が言うと、私、今日の仕事の帰りに寄りますから、主任さん、御心配なくと由利子は言ってくれる。

乗り捨てられていたタクシー現場にやって来た西山は、崖から引き上げられ介抱されていた瀕死のタクシー運転手に、連中、どっちに逃げたか分かる?と聞くと、多分、あちら…と運転手は答える。

救急車のサイレンが聞こえる中、林の中の廃墟に集まっていた守田たちは、誰か来るぞ!と警戒する。

1人の見知れぬ中年男がバッグを持って近づいて来たので、守田、桐ノ江、金森、山口らは袋叩きにしようとする。

すると男は、俺は川本の使いで及川(永島明)と言うものだ!バカやろう!デカが1人で来ると思うか!と叱りつけ、バッグに入っていた衣類とパンをその場に落としてみせる。

早合点に気づき、しょげる4人に、お前たちはタクシーやっただろう?あの辺はもうサツで一杯だぞと及川が言うと、兄貴がもうすぐ戻って来るから…と守田たちは答えるが、奴なら戻って来ねえよ。おめえたちに銭渡しているから適当に逃げるだろうって言って、出て行ったぞと及川が教えると、畜生!1000円しか渡しやがらないで…と、4人は川本に騙されたことに気づく。

それでも、及川が持って来てくれたコッペパンにかぶりつきながら、これから4人はどこまでも一緒にいようと守田が3人に言う。

その時、間近で銃声が聞こえたので、及川がサツに捕まったのかもしれねえ!と慌てた4人はその場を逃げ出すが、脱走の時、床に落ちて尻に怪我をしている山口は巧く走れなかった。

やがて、置いてきぼりを食らった山口の側に犬が駆け寄って来る。

もしもし、どうしたのかね?と山口に声をかけて来たのは、猟銃を持った猟師だった。

さっきの銃声は、この猟師の撃った音だったのだ。

しかし、山口は観念し、俺は北多摩警察署から逃げて来たんだ。駐在に連れて行ってくれと自ら頼んだので、猟師は驚きながらも、山口に猟銃を突きつけながら近くの駐在に連れて行くことにする。

片桐課長は、今朝方、脱走した5人の氏名と前科を記者たちに発表していた。

川本三郎34才、守田三郎27才、金森庄吉21才、桐ノ江一夫21才、山口豊21才…

そして、襲撃された運転手は全治二か月の重症だが、命に別状なし…と発表する。

そんな中、刑事部屋では、原田が西山主任に、私用で出かけたいんですが…、今日非番だったものですから…と申し出ていた。

私用?何だ?と西山が、こんな時に…と迷惑そうに聞くと、国からお袋が出て来るんですよ。駅まで迎えに行きたいので…と原田が言うので、ちょうど電話がかかって来たこともあり、良いよ、良いよ、行けよ!と西山が言いながら電話を取る。

山口が自首?!すぐに連行してください!と電話を受けた西山は驚く。

八王子駅で母親(不忍郷子)と会った原田は、持参して来た見合い写真を見せようとする母に、下宿に行こうと勧める。

駅の前を北多摩署から犯人が脱走中と言う広報車が走っているのに気づいた母が、あの事件たいね…と言うと、ものすごう忙しっちゃんと御国言葉で原田は答える。

その頃、西山は、連行されて来た山口を尋問していた。

川本のことを聞かれた山口が、ピストルと運転手から取った有り金全部を持って逃げたと言うので、ピストル?と西山は驚く。

どこにあったと聞かれた山口は、林の中に埋めてあったんですよと言うので、畜生!と西山は呻く。

弘、ひき逃げの時、拳銃を持っていなかった理由が分かったからだ。

一方、川本は、世話になったな…と礼を言い、及川の住まいを出ようとしていた。

パクられたら死刑になる。預けてある金さえ受け取ればこっちのものだ…などと川本はうそぶいて表に出るが、見送りについて来た及川は、くれぐれも気を付けろよと注意する。

こいつにはまだ弾が残っていると答えた川本は、サングラスをかけて去って行く。

その後、川本は、自分たち逃亡犯のことを広報車が流している八王子の町中に来ると、人目を避けるようにストリップ小屋に入り込む。

一方、守田、桐ノ江、金森の3人は、隠れ家を探し、森の中をさまよっていた。

そこで一休みしようと、金森が指差した小屋は便所だった。

その近くに、鍵が壊れたバンガローを見つけ、ひとまずその中に身を隠す3人。

空腹に耐えかねた金森が、喰うもん探しに行こうと言い出すと、3人別々に出かけ獲物を探した方が効率的だ。

もし途中でパクられたら、絶対口を割るんじゃないぞ!と守田が言い、3人は小屋を出ると、別々の方向へ散って行く。

桐ノ江は、川に遊びに来ていた若者たちのグループを見つけ、彼らが持っていたバスケットを持ち去る。

一方、金森の方は、近くの農家の縁側に忍び込んでいた。

一番先にバンガローに戻って来た桐ノ江は、バスケットの中に入っていたトランジスタラジオで、自分たちの脱走のニュースを聞く。

その直後、風呂敷包みを下げた金森が戻って来たので、バスケットに入っていた魔法瓶のコーヒーなど桐ノ江は飲ませる。

金森の方は、農家で地下足袋など盗んで来たと自慢するが、慌てて詰め込んで来た衣類の中には、女の腰巻きなども混ざっていたのでがっかりする。

守田の帰りが遅いので、パクられたのかも?と案ずる2人だったが、男女の話し声が近くで聞こえたので、慌てて2人は、小屋の奥に身を隠す。

小屋に入って来たのは男女のカップル(小嶋一郎、阿久津克子)で、いきなりその場でキスをすると、男の方がコートを床に轢き始めたので、奥から盗み見していた金森と桐ノ江は生唾を飲む。

その時、突然、守田が戻って来たので、カップルは驚き、管理人さんですか?戸が開いていたもんですから…と男の方が慌てふためき、クミと言う女を連れ、慌てて逃げ出す。

唖然と立ち尽くしていた守田の前に、惜しいことしたな…などとにやつきながら金森たちが姿を現したので、ぼやぼやしてるとヤバいぞ!と守田は叱りつけ、3人はその小屋を後にする。

北多摩署に原田が戻って来たので、おふくろさんどうした?とラーメンを啜っていた西山が聞くと、訳を話して、下宿に置いて来た答えた原田は、同僚(相馬剛三)から、山口だけ逮捕したことを聞かされる。

その時部屋に入ってきた井上婦警が、仕事が終わりましたから、これから病院に行ってきますと挨拶してきたので、ありがとうと西山は感謝する。

そんな中、電話が入り、ドライブの連中が山で盗難に遭い、ビスケットなど入ったバスケットが近くのバンガローにあったと原田が聞く。

現場に直行した西山や原田は、駐在から、若い二人によると守田三郎が小屋に入って来たそうです。手配写真で確認しましたと言う報告を受ける。

早速付近を警察犬で追おうとするが巧くいかなかった。

その頃、逃げ回っていた守田ら3人は、遠くに見える八王子の町に気づき、あそこから逃げて来たんじゃねえか…と感慨にふけっていた。

一方、ストリップ小屋からでテ来た川本は、劇場の前でタクシーを拾い、それに乗り込む。

しかし、タクシーはすぐに、警官2名の検問に引っかかる。

後部座席を覗きに来た警官を銃で射殺した川本は、怯える運転手を脅しそのまま突っ走らせる。

人気のない所でタクシーを停めた川本に、運転手は命乞いをするが、弾が惜しいからなと笑った川本は、金だけ奪い取って逃走する。

暗くなった道を歩いていた川本は、向い側からパトロールの警官2名が近づいて来たので、出会う前に、側にあった「北多摩運送」と言う運送屋の会社の門の中に忍び込む。

トラックの背後に隠れ、様子をうかがっていると、運転手と助手らしき二人が、横浜工場には何時頃に着くかな?11時頃だろうなどと会話しているのを聞き、少し思案した後、トラックの荷台に乗り込む。

検問の巡査が殺されたと知った北多摩署の片桐課長は、使用された銃は川本のCZ7連発だ!わが署の面子丸つぶれだ!と激怒していた。

西川は、張込みを続けるよりしようがない…と答えるしかなかった。

その時、病院に行っていた井上婦警から電話が入り、弘ちゃんの様子がおかしい。うなされていると連絡して来たので、それを聞いた西山は、先生は何とおっしゃってました?容態が変わり次第、私に電話くれるよう看護婦さんに伝えてくださいと頼む。

その頃、小学校の校庭に忍び込んでいた守田たち3人は、水道の水など口にしていたが、空腹は収まりそうにもなく、給食室に何かあるかもしれないと桐ノ江が言い出す。

学校に入ると、宿直室の方からNHKの9時の時報とラジオニュースが聞こえて来る。

川本が検問中の田口健吉巡査を射殺、甲州街道を逃亡中などと聞こえて来るが、3人はもうそんなことはどうでも良くなっており、ひたすら空腹を満たすものを給食室で漁り出す。

何か汁もののようなものが釜に残っていたので、3人は全員柄杓を持ってその汁を啜り出す。

その時、宿直室から小使い(内藤勝次郎)が見回りに出て来る。

その気配に気づき、慌てて身を隠した3人だったが、一旦は中を見回し、異常なしとして帰りかけた小使いは、急に吐こうとした金森の声に気づき、もう1度、懐中電灯で給食室内を良く見回した結果、隠れていた3人を見つける。

泥棒!先生!と小使いが騒ぎ出したので、守田は、近くにあった出刃包丁で小使いの腹を突き刺して逃げ出す。

駆けつけた宿直の先生は、刺されながらも、泥棒!と叫んでいた小使いを助け起こすが、既に3人は逃げ出した後だった。

その頃、川本の乗り込んだ輸送トラックは検問に引っかかっていたが、警官が荷台を調べようとした時、すぐに次の車がやって来たので、あっさりトラックは解放されてしまう。

川本は、走り出したトラックの荷台でほくそ笑む。

山を逃げ回っていた守田たちだったが、その途中、桐ノ江が野壺に落下してしまう。

川本を乗せた輸送トラックは、途中で運転手と助手が中華そばを食べに停まったので、川本は荷台から降りて逃げ出す。

その頃、病院の弘の病室にやって来た西山は、井上婦警が編み物をしながらまだいることに気づき感激する。

弘の容態は、先ほどの電話の後、収まったと井上婦警は言うので、寒いですね〜などとねぎらう。

お仕事の方はどうなんですか?と聞かれた西山は、巡査が殺され、小使いさんが刺されました。何もかも後手後手に廻っていますと悔しそうに教える。

主任さんだけの責任じゃありませんわ。お疲れでしょう?と井上婦警がねぎらうと、ねえ、井上さん、そろそろお嫁さんですねと切り出すと、同じ警察官じゃ具合悪いでしょう?やっぱり、若くてハンサムな方が良いんでしょう?などと続ける。

それを聞いた井上婦警は、そんなことありませんわ。人柄の良い人なら…と答えたので、あなたのような人をもらう人が羨ましい。きっとあなたは良いお嫁さん、良いお母さんになれますよと西山は褒める。

すると井上婦警は、私、明日、休暇を取りますが、夕方にはここに来られますと言うので、世話をかけますね、毎日…、もう良いですよ。送ろうか?と西山は声をかける。

しかし、大丈夫です、すぐそこですから。それに私、護身術を習いましたからと言い、井上婦警は帰って行く。

西山は、パイプでタバコを吸い出すと、窓から、帰って行く井上婦警の様子を眺めるのだった。

翌朝、水門の所で、桐ノ江は、汚れた衣服を洗っていた。

側でたき火をしていた守田は金森に、奴は乾かして逃げるつもりか?と小声で聞くと、2人で逃げるか?と誘う。

それを聞いた金森は、3人はいつも一緒と言ってたのはお前じゃねえかと呆れるが、このまま桐ノ江を待つ気もなかったので、2人とも、桐ノ江が川に向いている隙を狙い、そっとその場を逃げ出して行く。

その直後、まだ匂いの取れない衣服を手にたき火の所へ戻って来た桐ノ江は、畜生!どこへ行きやがった!と裏切られたことを知る。

一方、逃げていた守田と金森は、向い側からチャリでやって来た警官と出会うが、向うは3人と思っているはずだからバレねえよと小声で告げた守田だったが、すれ違い様、もしもし…と警官から声をかけられると、金森を警官にぶつけて転ばせると、自分だけは知って逃げ出す。

警官は呼び子を吹き出す。

一方、立川駅に着いた川本は20円区間の切符を買って列車に乗り込もうとしていたが、駅前で張っていた原田がそれに気づいて、慌てて追いかけるが、改札を通る時、定期をはっきり見せて!と駅員に停められてしまったので、警察手帳を見せている間に、川本の乗った列車は出発してしまう。

ただちに、北多摩署の西山に電話を入れた原田は、川本が買ったのと同じ20円区間の切符は、当日25枚当駅で売れていると報告する。

捕まった金山が連行されて来る中、サングラスにコート、黒いメッシュの靴と言う西山は川本の服装を詳しく原田から聞く。

電話を終えた原田は相棒の刑事に、ガンガン怒鳴られたよと苦笑し教えると、駅員から、この駅から中央線の20円区間は日野、豊田、国立、国分寺と聞く。

しかし、川本は途中の駅で降りたかもしれなかった。

西山は取調室の金森に、川本はどこに行った?隠す義理ないじゃないか?と尋問していた。

金森は、旦那、早く奴を捕まえてくれよ。腹の虫が収まらないよと言うだけだった。

その後、片桐課長は西山に、立川から20円区間の切符を調べた結果、川本が降りた気配はない。未回収の3枚の切符を手配したと教える。

そこに病院から西山に電話が入り、坊ちゃんの意識が回復した。坊ちゃん、とてもお父さんに会いたがっておられますと連絡があったので、片桐課長にそのことを報告した西山は、原田たちに、守田の愛人がいる新宿の「ビオラ」と言う店に行ってくれと頼む。

その頃、その愛人岡テル子(八代万智子)は、2人の刑事に尾行されているとも気づかないで、喫茶店「ビオラ」に出社する。

すると、同僚のウエイトレスがロッカー室で、テルちゃん、守田さんの事知ってる?小学校の小使いさん殺したのよと教える。

私のためよと照子が嬉しそうに言うので、あなたって幸せねと同僚は皮肉を言う。

私、あの人、断然、匿ちゃう!などとテル子は浮かれていた。

その頃、北多摩署には、桐ノ江が残して行った臭い衣服が届けられていた。

それを観た西山は、課長、その内、盗難届が出るかもしれませんね?と桐ノ江の動きを推測する。

「ビオラ」にやって来た原田と同僚は、先に店内で張り込んでいた刑事たちと合流し、店にかかって来た電話に出るテル子の様子を監視し始める。

同じ頃、タクシーを降りた川本は、とある商店の脇の路地を入り、奥にあった「中西武治」と表札がかかった家に入ろうとする。

しかし、無人のようで鍵がかかっていたので、鍵をこじ開けて中に入り込む。

北多摩署には、西山の予想通り、紺のジーパンと黒の革ジャンが盗まれたと言う盗難届が出たと電話を受けていた。

盗まれた場所は、京王線の高幡不動の近くですねと片桐部長に西山は報告する。

直ちに管轄の日野署に連絡を取る西山。

新宿の「ビオレ」では、電話がかかって来たので、受話器を取ったテル子が、嬉しそうに、サブちゃん?私は大丈夫…、貯金降ろしているわなどと話し始めたので、原田の相棒が、そっと席を立って、テル子の側に近づき、会話を盗み聞きする。

電話を終えたテル子がいそいそとロッカールームに向かったので、同僚のウエイトレスが、テルちゃん、本当に行くの?と心配そうに声をかけて来る。

マスターには病気とか何とか、適当に言っといてよと同僚に頼んだテル子は、通用口から店を出ると、タクシーを停めてそれに乗り込む。

店の外に出て来た原田と相棒は、それに気づくと、慌てて停まっていた別のタクシーまで駈け、急いで乗り込むと後を付けさせる。

相棒は、テル子の乗り込んだタクシーのバックナンバー「は-1645」を手帳に書き留める。

テル子がやって来たのは、とある寺の境内の墓の側だった。

テル子が本堂の方に近づくと、そこで待っていた守田が出迎え、地方へ旅立つんだ、地方の飯場に逃げるつもりなんだと言うので、1人で逃げるつもり?とテル子は聞く。

隠れるにはその方が安全なんだ。ずらかるには金がいるんだ。持って来てくれたかい?と守田が金を要求するので、サブちゃん、私のために殺したんじゃないの?一緒に行かないの?とテル子は躊躇し始める。

すると守田は、テル子、金を寄越せ!とテル子につかみ掛かって来たので、側で様子をうかがっていた原田と相棒が飛びかかり、原田を確保する。

捕まった守田は、お前がもたもたしているからだ!バカやろう!とテル子に怒りをぶつける。

テル子は泣き出すが、そんなテル子に近づいた原田は、危ない所だったですね。これを機会にきっぱり諦めるのがあなたのためだと思います。分かりましたね?と諭し、守田を連行して行く。

ブンヤ相手の会見を終えて刑事部屋に戻って来た片桐課長に、西山が、未回収の切符が見つかったそうですと言いながら出かけようとするので、じゃあ、行きがけに病院へ寄ってやるか?どうせ通り道なんだから…と独り言のように片桐は言う。

その言葉を聞いた西山は、弘を見舞いに病院に寄る。

弘はベッドで眠っていたが、真苗を呼びかけると、静かに目を開ける。

良かったね…、お父さん、随分心配しちゃったよと西山は笑いかける。

お父さんね、すぐ又出かけなくちゃ行けないんだと言うと、弘は、僕、つまんないな…とすねるので、お前、飛行機の模型、買って来てやろうか?と西山が言うと、いらないよと言う。

自動車の方が良いか?なあ…、僕は良い子だろ?と西山は立ち去りがたく困っていたが、そこにやって来た井上婦警が、飛行機の模型を弘に手渡すと、急に喜び、出かけようとしていた西山に、お父さん、自動車買って来てねと声をかける。

西山は苦笑し、げんこつでこつんと殴る真似をする。

病室に残った井上婦警が、お粥を食べたと言う弘に、他に食べたいものある?と聞くと、ショートケーキと弘は答える。

駅前の交番にやって来た西山は、原田と合流する。

川本は今朝10時頃、タクシーに乗ったそうですので、手配しておきましたと、先に来ていた原田が報告するので、随分手回しが良いんだなと西山はからかう。

「高橋」と言う表札がかかった屋敷に侵入した桐ノ江は、キッチンの模様ガラスの前に立ち、軽く叩きながら、無効に微かに見える人影に向い、母ちゃん!俺だよ!と声をかける。

一夫!と顔を出したのは、桐ノ江の母で家政婦をしているさく(菅井きん)だった。

母ちゃん、今度はでっかい屋敷だねと言いながら、勝手口からキッチンに入り込んだ桐ノ江は、ここへは刑事来なかっただろう?俺しか知らないからな…。オレ、腹ぺこなんだ。何か喰わしてくれよと言いながら、テーブルに置いてあったリンゴをかじる。

さくは急いで、ごはんを茶碗によそい、みそ汁を注いでやると、それを受け取った桐ノ江は、みそ汁を飯にかけてかき込む。

そんな桐ノ江を、屋敷の娘が発見してしまう。

さくは、コロッケも出してやると、自首しておくれ、毎日、新聞にも出てるんだから。母ちゃんのために自首しておくれと頼むが、飯くらい静かに喰わしてくれよ!と桐ノ江は癇癪を起こす。

その時、桐ノ江は、自分をじっと見ている娘の姿に気づき、逃げ出そうとするが、さくは、誰も来やしないよ。もっとお上がりと言いながら、ごはんのお代わりを出してやる。

そしてなお、ねえ、一夫、母ちゃんの一生のお願いだから自首しておくれと頼むと、母ちゃん、世間に気兼ねなんかすることないんだとよ、就職の時、俺は片親しかいないからダメだったじゃないかと桐ノ江は言う。

それでもさくは、母ちゃん、お前のためにここで働いているんじゃないか!と哀し気に言う。

金くれよ、持ってないの?と桐ノ江が言うので、私の部屋に行けばあるよ…と答えたさくは、一夫、お前、自首しなさい。そうでないと、困ってしまうよ、母ちゃん…と言いながら、キッチンの外に出る。

そして、そこに置いてあった電話から110番すると、屋敷の奥さんと娘に詫びるさくであった。

間もなくパトカーがやって来たので、母親に告げられたと悟った桐ノ江は、母ちゃんが電話したんだな!とさくの方を睨みつけるが、勝手口から警官が入って来たので、奥へ逃げようとするが、反対側からも警官がなだれ込んで来て桐ノ江を逮捕する。

母ちゃん、きっと会いに行くからね…と連行されて行く桐ノ江に話しかけると、キッチンで一人泣き崩れるのだった。

駅前の交番にいた西山は、川本を乗せたと言うタクシーの運転手がようやくやって来たので、写真を示し確認してもらうと、原田と共に、川本を降ろした地点まで乗せて行ってもらう。

その頃、あんた?帰ってたの?と言いながら中西の家に帰って来た情婦うめ(浦里はるみ)は、そこに見知らぬ川本がいたので、誰?どなた?と声をかける。

川本って言うんだよ。中さんのダチさと聞くと、昨夜から帰って来ないでねとうめは鷹揚に答える。

商売でか?と川本が聞くと、博打ですよ。おっつけ帰って来るでしょう。オケラになっているでしょうから…とうめは言う。

川本は、冷えるねえ〜…、表の酒屋で買って来たのさと言いながらウィスキーを1人で飲んでいた。

そんな中、西山と原田は、タクシーを降り、目の前にあった紹介で話を聞く。

中さんは女道楽じゃないからまだ良いじゃないかと川本はうめに話しかけていた。

するとうめは、そうなら良いんだけど…と口を濁したので、まさかあの年で?と川本は意外そうに聞く。

信じないでしょう?と言いながら、うめが流し目を向けて来たので、俺は信じても良いんだよ…と言いながら、川本はうめの手を握ってやる。

そして川本はうめを抱き寄せキスをする。

そんな中西の家の前にやって来た原田は、玄関先に黒のメッシュの靴が置いてあることに気づき、西山に目で促す。

そこに帰って来たのが中西武治(沢彰謙)だったので、西山と原田はさりげなく身を隠す。

家の中に入った中西を、襟元が乱れたうめが出迎える。

誰か来てるのか?と中西が顔を強張らせると、川本さんって人とうめは教える。

その時、ふすまの陰から川本が姿を見せ、例の金をもらって飛ぼうと思うんだと言う。

中西が黙って札束を取り出すと、これだけかい?預けたのは200万だったはずだが?と川本は額の少なさを疑う。

すると中西は、八王子のピストル強盗の件、指されたくないだろう?これが俺たち夫婦ぐるみの答えさ。不服だったら、ちょいと表のデカさんに声をかけようか?と開き直る。

信じねえのか?俺がデカを見誤るとでも思うのかい?それよりも俺たちの親切を受けないか?と中西は、厳しい顔になった川本に迫る。

玄関前では原田が、主任、踏み込みますか?と聞いていたが、西山は様子を見よう…と言うので、一旦、脇の暗がりへと身を避ける。

パイプを取り出した西山が、君煙草持ってるかい?と聞くと、原田が差し出したので、それを1本もらい、パイプに挿す。

とうとう川本を追い込んだな…と感慨深気に西山が言うと、主任、弘君の容態は?と原田が聞いて来る。

大分良いんだよ。さっき来がけに寄って来たんだ。井上婦警が寄ってくれてね…と嬉しそうに西山は教える。

その時、中西の家から、サングラスに大きなマスク姿の男が、中さん、世話になったなと挨拶しながら出て来る。

路地の途中で捕まえた原田たちだったが、マスクとサングラスを取ってみると、それは川本ではなく中西だった。

裏をかかれた!と気づいた2人は、中西の家の裏に廻ると、果たして、そちら側から川本が逃げる所だった。

逃げる川本は、踏切の所で、通り過ぎた貨車の荷台に乗り込む。

西山と原田が、その貨車の後を追って行くと、川本が撃って来て、一発が西山の左腕を貫通する。

衝撃でぐらついた西山だったが、倒れることなく、自分も銃を撃ちかえす。

西山が撃たれたことに気づいた原田は主任に駆け寄るが、傷が浅いと気づくと、畜生!と言いながら走って貨車を追いかける。

やがて、操作場に着いた貨車が停まったので、川本は飛び降り、銃撃をしながら停まっていた別の列車の背後に逃げ込む。

同じく応戦しながら迫って来る西山。

用心深く様子を見る原田。

とある貨車の前を歩いていた西山の背中を、運転席の影から銃で狙う川本。

それに気づいた原田は、川本が立上がって引き金を引く前に銃撃し、慌てて逃げ出そうとした川本に飛びかかると取っ組み合いを始める。

そこに近づいて来た西山が、川本の手を掴み手錠をかける。

翌朝、撃たれた左手を吊って病院へやって来た西山は、井上婦警と飛行機の模型を持って遊んでいる弘の姿を観る。

完成間際の編み物を見た西山は、弘のですか?と井上婦警に聞き、本当のママが作ったみたいだねと弘に笑いかける。

事件はどうなりました?と聞かれた西山は、今度作ったコンクリートの留置場に入れときましたと笑顔で答える。

そこに原田がやって来て、主任、大丈夫ですか?百合子さんがこっちに来てると聞いたものですから…と言い、実は僕たち、近いうちに結婚するんです。同じ署内なんで噂が立っても何なんで、黙っていたんです…と西山に告げる。

お母さんはなんて言ってた?と井上婦警が聞くと、今、下宿に寄ったから話をしたら、きっと良いお嫁さんになるって言ってたよと原田は嬉しそうに伝える。

そうだったのか…と呆然とする西山。

井上婦警は、弘ちゃん、これ着てねと編み物を置いて行くと、原田と二人で病室を出て行く。

2人きりになった病室で、弘、お前、お母ちゃんがいなくてさみしくないか?と西山が聞くと、お父さんと同じさ、百合子姉さんみたいな人なら良いんだけどね…、仕方ないよねと弘が言うので、生意気言って…と西山が苦笑すると、今度は弘がげんこつでこつんとする真似をする。

そんな弘にキスをしてやる西山だった。

病院を出た原田と井上婦警は、そんな病室の方を笑顔で振り返ると、肩を並べて去って行くのだった。


 

 

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