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連合艦隊司令長官 山本五十六

山本五十六を中心として、いくつもの作戦を円谷英二の特撮で見せて行く、2時間以上に及ぶ戦争大作。

新東宝の佐分利信主演版を東宝お得意のミニチュア特撮で膨らませ、近年の東映の役所広司主演版を繋ぐ位置にある作品ではないかと思う。

実在した人物の生涯を描いたものなのでやむを得ないものの、エピソード的には新東宝版をほぼなぞっている印象が強い。

正直な所、何度も観ている作品だが、冒頭の、加治川で山本が逆立ちするシーンと、最後、山本がブーゲンビル上空で戦死するシーンの二つ以外にはほとんど記憶に残らない。

映画の大半は、ミニチュア特撮による戦争シーンの羅列が続く。
ガダルカナルの悲惨な状況等も描かれているが、今一つ人間ドラマとしては弱い。

大勢の出演者たちが、一通り顔見せのため登場しているだけといった印象が強く、陸軍と海軍との対立という要素以外、特段、ドラマにひねりがある訳でもなく、サスペンスのような要素がある訳でもない。

基本的に大平洋戦争を描く以上、仕方ない事なのだが、後半、日本人から観て盛り上がり様がないのだ。


これは、娯楽映画としては、かなり厳しい条件といわざるを得ない。

三船演ずる山本五十六は、大半はセット内で会議に臨んでいるだけといった印象しかなく、こちらも、人柄を伝えるいくつかのエピソードが挿入される以上の、人間としての独自の掘りさげがある訳でもない。

円谷の特撮は、戦時中に自ら作った「ハワイ・マレー沖海戦」(1942)のカラー再現風シーンなど、前半は確かに見ごたえのあるシーンが並んでいるのだ が、途中あたりから、戦闘機と艦隊だけの同じような印象の場面が多くなり、特に頭に残るような独創的なシーンが見当たらなくなるのが惜しい。

俳優陣は、宮口精二、森雅之、藤田進、稲葉義男、加東大介、平田昭彦、佐原健二、藤木悠、土屋嘉男、久保明、佐藤允、江原達怡ら東宝常連組をはじめ、松本 幸四郎、田村亮、安部徹、太田博之ら、女優陣も、司葉子と酒井和歌子が参加、ナレーションは仲代達矢と多彩な顔ぶれで、まさにオールスター映画といった趣きながら、戦争映画なので、女優陣の見せ場などほとんどなきに等しい。

男優の若手では黒沢年男がやや出番が多いかな?と言った所で、久保明、佐藤允辺りでさえ、ああ…出てたんだな~と分かる程度。

若手の中では、夏木陽介が出ていないのが珍しいくらいか?

公開当時は大ヒットしたようだが、正直な所、この作品も、大作にありがちな「大味感」から脱する事が出来なかった感じがする。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1968年、東宝、須崎勝弥脚本、 丸山誠治脚本+監督作品。

日本と中国の武力衝突は留まる所を知らず、日本では日独伊三国同盟の必要を説く声が大勢を占めようとしていた。

そうした中、わずかではあるが、日本にも良心が残されていた。(ヒトラーの台頭などの記録フイルムを背景に仲代達矢のナレーション)

タイトル

昭和14年

長岡は桜が満開の春を迎えていた。

川沿いの桜を見に、大勢の人が出て来ている中、川を進む一艘の小舟に乗っていたのは、海軍次官山本五十六(三船敏郎)だった。

小舟を漕いでいた船頭喜太郎(辰巳柳太郎)が、お客さん、長岡の人だね?言葉で分かると話しかけて来たので、墓参りに来たんだ。わしも船乗りだと答えた五十六は、親父さんは船を漕いで何年になると聞き返す。

すると、15年になるかの~と喜太郎が答えたので、まだ当分働けるの?と五十六が励ますと、もう次の桜は見れないかも知れん。戦争が始まるし…などと喜太郎が顔を曇らせたので、急に顔色を変えた五十六は、そんなことは心配せんで良い!来年も再来年も船頭を続けなさい!と声をかけ、一つ賭けをやろう。わしはここで逆立ちをするから、親父さんが無事船着き場まで着けたら船賃を三倍出そうと言い出す。

喜太郎は、銭なんかいらねえ!と言うが、五十六は、その場で横板を掴むと逆立ちを始める。

これに気づいた土手の見物客たちが注目する中、無事、喜太郎は船を船着き場に寄せたので、万雷の拍手が起きる。

五十六はあっぱれな腕前だ!と感心し、喜太郎の方も、あんたは大した度胸だと魂消る。

約束通り、五十六は財布を差し出そうとするが、喜太郎はいらないと突っぱね、頑固な二人が小舟の上でもみ合ううちにバランスを崩し、2人とも川に落ちてしまう。

小舟にすがりついた2人は、互いに顔を見合わせ愉快そうに笑うのだった。

そんな2人の様子を土手の上で注視していた背広姿の男二人が、山本五十六の自宅を訪問して来る。

2人は憲兵隊の江藤と鈴木と名乗り、最近、閣下を狙う右翼の動きがありますので、身辺警護に付かせて頂きますと申し出る。

鈴木は、当地、長岡で入手したと言う右翼の斬奸状の中身をその場で読んでみせる。

そこでは、戦争反対の態度を取っている五十六を逆臣と呼んでいた。

それを聞いた五十六は、君たちもわしに対しては腹に据えかねんと言う顔をしとるとからかいながらも、仲間が集まっているんで飲んで行きなさいと勧める。

上座に座った五十六の両脇に座った憲兵たちだったが、正体を知らずに酌をしに来た芸者(豊浦美子)が、こちらも海軍さんですか?私、海軍さん大好き!陸軍さんは野暮なくせに威張り腐っているでしょう?などと江藤に話しかけたので、五十六は、こちらは陸軍さんだぞと芸者に注意する。

その時、飲んでいた客の1人(若宮忠三郎)が、海軍はやっぱり日本が世界一でしょう?などと聞いて来たので、日本に大和魂があるなら、アメリカにはヤンキー魂があり、イギリスにはジョンブル精神と言うのがあるから手強いぞと答える。

やがて、芸者たちが「佐渡おけさ」に合わせにぎやかに踊り出したので、客たちもそれに混ざって踊り始める。

五十六も、それを観ながら、自分も「佐渡おけさ」を歌い出す。

翌日、五十六は墓参りをしていた。

海軍省

廊下を歩いて自室に戻ろうとしていた五十六は、陸軍の辻参謀(中谷一郎)から、話があると声をかけられるが先客があるので待っていてくれと別室を指差す。

自室で待っていたのは、木村幹助(黒沢年男)と言う青年で、兵学校の校長の紹介で次官に会いに来たと言う。

用件が良く分からない五十六は紹介状を手に戸惑うが、自分は幼少の頃、両親を亡くし、小間物の行商をしている姉に育ててもらったのだが、貧乏人は兵隊になれないと聞いた姉が次官に私のことを話した所、兵学校にご紹介いただいたそうで…と木村が説明すると、そうか!思い出した!と五十六は破顔する。

次官!その節はありがとうございました!と木村が礼を言うと、君も立派な青年になれ!と五十六は嬉しそうに励ます。

その後、別室で待たせていた辻参謀と2人の参謀(伊吹徹、黒部進)に会った五十六は、海軍がしっかりして頂かないと、陸軍は統制が取れません!と苦情を言われる。

世は不穏な情勢になっており、これは革命に他なりませんとまで辻参謀が力説するので、革命が起きても国はなくならん!と五十六は答える。

今こそ日本は、盟邦ドイツと手を結ばなければなりません!と他の参謀が言うので、断る!日本はそんな戦争をすべきではない!と五十六はきっぱり拒絶する。

今度ドイツへ行こうと思うと言う辻参謀に、アメリカに行って、工場の煙突の数でも数えて来なさい。君たちはそんなにドイツと仲良くなりたいんですか?と五十六は忠告する。

しかし、そうした五十六の願いも空しく、日独伊三国同盟を願う気運は国中で高まって行く。

その後、米内海軍大臣(初代松本白鸚)と会った五十六は、アジアに戦果だけに止めたい。君も長年の次官勤めてくれたが、これからが大変だ。連合艦隊司令長官は君にぴったりだよと励まされていた。

五十六は、承知しましたと引き受ける。

長官になった五十六の元に渡辺戦務参謀(平田昭彦)がやって来て、陸軍は三国同盟にすっかり目を奪われていますと言うので、米内さんがいる限り大丈夫だよと答えるが、世間では米内内閣を倒そうと言う動きがありますと報告したので、五十六は顔を曇らせる。

官邸では、畑俊六陸軍大臣が米内首相に辞表を提出し、それを受理した米内首相から後任の推薦を求められると、今の内閣では陸軍としては推挙するのは不可能とまで言い放ち、米内首相に退陣を求める。

これがきっかけとなり、昭和15年7月22日、米内内閣は総辞職に追い込まれてしまう。

その後、海軍省に呼びだされた山本五十六は、資源に乏しい日本は、その大半を英米の勢力圏に依存しているが、そうした中、三国同盟を結べば、それらの補給路が全部ストップしてしまうがそれで宜しいのか?と意見を具申するが、すでに決定済みのことなので…、なにとぞご了承を…と逃げ口上が返ってくるのみ。

物動計画は?と再度五十六が尋ねても、やむを得ず…と言うだけなので、話にならん!と五十六は立腹する。

その問答を聞いていた栗田司令官(清水将夫)は、やむを得ない…と言うしかなく、結局、昭和15年7月27日、三国軍事同盟は締結されることになる。

日本は戦争への道に大きく踏み入れた。

そんなある日、藤井政務参謀(藤木悠)相手に将棋を指していた五十六だったが、全く将棋に集中していないようで、あっさり負けた後、自室に戻って行く姿を見ていた宇垣参謀長(稲葉義男)は、長官は自らの信念に反する米英戦のことで頭が一杯なのだと見抜く。

鹿児島湾では、毎日、零戦による目的不明の訓練が続けられていた。

そんな訓練機の1機に乗っていた木村少尉は、操縦士の野上一飛曹(太田博之)に海面ぎりぎりまでの急降下を命じる。

野上も喜び、海上に浮かぶ漁船目がけて急降下して行くが、その真下を別の訓練機が通過して行ったので、慌てて急上昇して衝突を回避する。

その様子を観ていた高野大尉(久保明)は、降りて来た木村と野上に、今、お前たちがぶつかりそうになった機に誰が乗っているか知っているのか?撃墜王と言われている伊集院大尉(加山雄三)だ!と叱りつける。

慌てて、木村は伊集院大尉に詫びに行くが、伊集院大尉は笑って、あれが実戦なら敵は轟沈間違いなし!と褒めてくれる。

安堵した木村に、木村じゃないか?と声をかけて来たのは、部屋に先に来ていた同期の三上中尉(田村亮)だった。

2人が知り合いだと知った伊集院大尉は、2人にウィスキーを注いでやり、祝杯と行こう!と言ってくれる。

何のためにこんな訓練しているんですか?と木村が聞くと、ここの地形に似たどっかの港を想定しているらしい…と伊集院大尉も想像を話すだけだった。

黒島先任参謀(土屋嘉男)から提出された「真珠湾攻撃計画書」を観た栗田司令官は無理だよと首を振る。

山本五十六は、三国同盟に夢中になるばかりの陸軍に危惧感を持っていた。

早期講和の道を選ぶには、この計画しかないしかないと考えていたからだった。

私も腹を斬る覚悟で参りました!と黒島先任参謀が訴えると、永野軍令部総長(柳永二郎)は、山本は、言い出したら聞かん男だ…と諦めたように呟く。

長官は格下げされても良いから陣頭指揮をさせて頂きたいと…と黒島先任参謀申し出るが、さすがにそれは無理と断られる。

そうした上官たちに、この計画がいっぺんの反古になるように、戦争回避に今一度のご努力を!と黒島先任参謀は具申する。

五十六は米内首相に、個人としての考えに反することでも、政府の方針となれば決断せざるを得ない。これも命というべきか…と手紙をしたためていた。

宇垣参謀長は、真珠湾に向かうには北方のコースを取ることにする、この作戦は隠密ですと、南雲機動部隊司令長官(藤田進)や草鹿参謀長(安部徹)を迎えての計画会議の席で説明する。

しかし、草鹿参謀長は成功の望みはない。緒戦に敗れるようなことがあっては…と作戦の危うさを指摘する。

五十六は、アメリカと四つに組んだのでは戦は出来ない…と持論を述べる。

そして、会議の後、甲板に出た草鹿に、君の言いたいことは良く分かっている。だが、ハワイ攻撃は私の信念から出た作戦なんだと五十六は声をかける。

それを聞いた草鹿参謀長は、今後は反対しませんと答える。

その後、近衛総理(森雅之)は五十六に、アメリカ大統領と腹を割って話し合うつもりだと約束する。

アメリカとの交渉が決裂した場合、海軍の実状はどうでしょう?と近衛総理が聞くと、半年、1年は暴れてみせます。しかし、2~3年になれば確信はありません。英米相手は避けるべきです。総理も決死の覚悟で時局を収拾して頂きたい、何とか、日米交渉妥結へ!と五十六は答える。

そのように尽くします…と近衛総理が答えてくれたので、安心して船に帰れますと五十六は安堵する。

その近衛総理が辞職したとの号外が町で配られる。

五十六は、身の回りの世話をする近江兵曹(小鹿敦)に、この仕事を始めてどのくらいになる?と聞くと、1年10ヶ月であす!と答えたので、近頃の大臣より辛抱強いな…と苦笑する。

しかし、こうした努力も虚しく、開戦を迎える気運になる。

宇垣参謀長が、真珠湾攻撃具体策を会議で発表、暗号は「ニイタカヤマノボレ」であると伝達される。

五十六はそれでも、まだワシントンで日米交渉中である。直前に反転してもらう可能性もあると念を押すが、南雲機動部隊司令長官は、そこまで出かけておいての反転は極めて難しい。矢は放たれているのですと反論する。

とうとう「ニイタカヤマノボレ」が発せられる。

作戦決行日は、昭和16年12月8日なり!

その通達を聞いた木村少尉は、緊張した表情で、隊長!やるんですね!と伊集院大尉に確認する。

五十六は藤井政務参謀(藤木悠)に、間違いなく、アメリカに通達はしたんだろうな?だまし討ちで敵の寝首をかいたとあっては、海軍、末代までの恥だと確認する。

藤井政務参謀は、間違いありませんと答える。

攻撃機で出撃する木村や高野大尉を前に、南雲機動部隊司令長官が、攻撃方法は訓練と全く同じである!と挨拶する。

伊集院大尉も攻撃にに乗り込み、航海士(堺左千夫)が、取りかじ10度!と声を発する中、第一攻撃隊発進せよ!と南雲機動部隊司令長官が命じる。

12月8日未明 350機の大編隊を機動部隊は放った。

結果を旗艦の作戦室で待っていた宇垣参謀長は、そろそろハワイの夜明けですな…と言うと、うん…と五十六も答える。

飛行士!太陽です!と野上一飛曹が背後の席の木村少尉に伝える。

雲海の間から覘いた朝日を確認した木村は、素晴らしいな!と感激する。

野上一飛曹も、たった今、自分の飛行時間は一千時間を超えました!と嬉しそうに報告する。

伊集院大尉も、オアフ島だ!と眼下に見えて来た島を確認する。

攻撃隊は山の間を縫って飛び、伊集院大尉は、全軍突撃せよ!と命じる。

て!

真珠湾に停泊していたアメリカの船を目前に、攻撃機から魚雷が発射される。

突っ込め~!と高野大尉が叫ぶ。

作戦室にやって来た通信参謀(佐原健二)は、電報が入りました!我、奇襲に成功せり!と報告。

黒島先任参謀が戦果報告、それを聞いた宇垣参謀長は、嬉しそうに、アメリカの主要艦隊は全滅したようですなと言うが、五十六は、空母をうちのがしている…と無表情に答える。

渡辺戦務参謀は、戦勝祝賀会が行われるそうですと伝達に来るが、五十六は、そのような招きは全部断るように!たがを緩めているときではない!アメリカの工業力がある以上、反撃して来る!と厳しい表情で答える。

ただし、機動部隊の将兵たちには休暇をやるように…と五十六は付け加える。

久々に、国元に帰った木村少尉に、庄助さん!と声をかけて来たのは、幼なじみの矢吹友子(酒井和歌子)だった。

友子は、先に来村家に向かうと、お姉さん!帰って来たのよ、庄助さんが!と教える。

まあ!と喜んだ姉の木村澄江(司葉子)だったが、なかなか弟の庄助が戻って来ないので、不思議がって、坂を降りてみると、真珠湾の英雄として喜蔵(清水元)ら、近所の住民に歓迎されている木村大佐の姿を発見する。

姉の姿を観た喜蔵らは、引き止めていた詫びを言い、木村少尉の方も、2~3日厄介になりますので、後ほどご挨拶にうかがいますと挨拶して姉と自宅に向かう。

そんな2人を観ながら、澄江さんも苦労の甲斐があったな…と喜蔵(は嬉しがる。

家に帰って来た木村は、友ちゃん、誰かいないかな?姉さんの婿さんになる人…などと友子に聞くので、友子も澄江も呆れる。

澄江が手紙呼んでくれた?と聞くと、手紙っていつ?と木村が怪訝そうに聞き返すので、11月末に…と澄江が答えると、その頃は訓練の最中だったからな~と木村は答える。

友子がこれで帰ると言い出したので、木村は送って行くことにする。

機動部隊はその後も連戦連勝で、南方資源地域を確保した。

今こそ、講和の時期ですと五十六は米内に伝える。

しかし米内は、今は日本中が初戦の勝利に有頂天になっているからね~…と考え込み、もう1度、講和の機会を作ってくれ、日本に有利なように…と五十六に頼む。

すると五十六は、うちのがした空母を撃滅するしかありません…と答える。

かくして「ミッドウェー作戦計画」が作成される。

五十六を前に、黒島先任参謀 と渡辺戦務参謀は、大本営はニューカレドニア作戦をやるべきだと言ってますと報告する。

しかしその後、空母「ホーネット」を発進したB-25爆撃機による日本本土初空襲を機に、ミッドウェイ作戦を実行することになる。

第一航空戦隊、空母「赤城」と「加賀」の出航を五十六が、健闘を祈る!と見送る。

さらに、第二航空戦隊「蒼龍」「飛龍」も出撃する。

草鹿参謀長は、全員、意気軒昂です!と南雲機動部隊司令長官に伝える。

船室に集まった空戦隊に参加していた木村少尉は、隣に座っていた三上中尉が写真を仲間たちに見せ、それを観た伊集院大尉は、こりゃシャンだななどと感心していたので、何気なく自分の胸ポケットを確認してみた所、その写真は自分が持っていた友子の写真と気づき、慌てて奪い返す。

伊集院大尉は、13年前、着艦に失敗して甲板の端に引っかかった帰還機に、脱兎のごとく駆け寄ったのが、当時長官だった山本五十六だと自分の経験談を話す。

それを聞いて、立派だな…と感心した木村は、自分と五十六との出会いを話そうとするが、急に口をつぐむと、自分の胸の中だけに仕舞っておきたいんだと言って止める。

第一攻撃隊が出撃し、木村少尉と共にミッドウェイ島を初めて観た野上一飛曹は、小さな島ですね…と感想を述べる。

その第一次攻撃隊から、攻撃不十分、第二次攻撃の必要ありとの連絡を受けた源田航空参謀は南雲機動部隊司令長官に、今すぐに攻撃機に搭載している魚雷を通常爆弾に取り替える訳にはいきませんと具申する。

敵空母が必ず来るはずと読んでいたからだった。

その後、索敵機より、敵艦隊らしきもの10隻見ゆとの連絡が入る。

それを聞いた草鹿参謀長は、「らしきもの」とは何だ!といら立つ。

その後、空母はいないとの電信が入ったので、ミッドウェイの基地を叩くべきですとは進言する。

第二次攻撃はミッドウェイに向かうことになり、今搭載している魚雷を陸よう爆弾に付け替えるよう指示が出る。

ところが、その直後、航法より敵空母2隻発見との知らせがより入る。

草鹿参謀長は、戦闘機はどうする!と焦る。

源田航空参謀も青くなる。

南雲機動部隊司令長官は考えたあげく、正攻法で行こう!と決断する。

付け替え作業中だった陸用爆弾を、元の魚雷に戻すように指示が出る。

急いでくれ!と源田航空参謀は叫ぶ。

そこへ索敵機より、空母より敵機が出撃との電信が入る。

敵機来襲まで後わずかしか残されていなかった。

攻撃隊の準備出来次第発艦せよ!と源田航空参謀は伝えるが、その時、敵機!の声が響き渡る。

とりかじ一杯!

真っ先に飛び立った攻撃機の大森二飛曹(阿知波信介)は、隊長!飛んでいるのは自分たちだけです!と伊集院大尉に告げる。

敵機の攻撃を受けた「加賀」が沈んでいくので、伊集院は敬礼する。

旗艦にいた五十六や参謀たちに、敵艦載機の攻撃を受け「赤城」「加賀」「蒼龍」大火災!「飛龍」は健在なり!と宇垣参謀長が報告する。

伊集院大尉は、「飛龍」の攻撃隊と合流すると決断する。

往復300マイルでは、燃料が足りません!と大森二飛曹が言うと、片道300マイルで十分だ。帰ってもおそらく母艦は沈んでいるだろう…と伊集院大尉は呟く。

かくして、日本の空母4隻は全て沈没、大本営は主力部隊をミッドウェイに急行させたが、敵は夜戦を避け、東へ移動…

負け勝負を、もう1度、もう1度と続ける奴は頭が悪い…と宇垣参謀長は言い、ミッドウェイ作戦は中止だ!陛下には私がお詫び申し上げる…と五十六は言う。

機動部隊は再建できない訳ではない。振り出しに戻った。戦はこれからだ。今回の戦いで戦死したものの名簿を届けてくれと渡辺戦務参謀に頼んだ五十六は、作戦室を後にして自室に戻る。

このミッドウェイの敗戦により、早期講和への道は崩れ去った。

「大和」は反転、帰路につき、三日間経過した。

南雲機動部隊司令長官と草鹿参謀長が五十六に会いに来る。

2人は、作戦失敗の指導不手際を詫びるが、責任はみんな俺にある。今一度復帰を!しっかり頼む!と五十六はねぎらう。

ミッドウェイの敗戦は国民には隠されていた。

木村少尉は、サイパンの航空部隊へ向かう。

その航空部隊に、山本五十六自ら激励にやって来る。

1人1人の兵士に飛行時間を聞く五十六だったが、みな200時間前後しか飛んでいないことが分かる。

飛行時間1000時間を超えるベテラン飛行士たちは、大半がミッドウェイまでに散っていた。

木村の前に来た五十六は、若い奴の目を観たら、次官室に来た若者の目を思い出したよ!と笑いかける。

国内では、大本営報道部長(加東大介)が、新聞記者を前に、最新の戦況を発表していた。

ガダルカナル総攻撃失敗以降、三本の滑走路を完成させていた敵の攻撃は、昼夜を分たず、日本軍を攻撃して来ていた。

この攻撃を受けた日本軍は、ジャングルに逃げ込むが、食料も武器もなく、全員餓死の危機に陥っていた。

五十六は、黒島先任参謀と渡辺戦務参謀に、ラバウルに飛んでくれんか?よくよくの事がない限り、先方の言うことを聞いてくれと頼む。

ラバウルでは、百武司令官(石山健二郎)が、どう島に取り残されている兵隊たちを救おうかと苦悩していた。

百武司令官は渡辺戦務参謀に、海軍の協力を頼む。

海軍は、食料を積んだ船をガダルカナルへ向かわせる。

食料はドラム缶に詰められ、島の沖合の海面に落とされる。

それを、島の日本兵達が、泳いで取りに行く、

しかし、その時、敵機が輸送船を攻撃して来たので、やむなく兵隊たちは島に泳いで戻るしかなかった。

「なつぐも」は沈没、「むらくも」は航行不能になったという電報を読む渡辺戦務参謀

それを伝え聞いた宇垣参謀長は、これ以上、船を失うと支障を来すと危機感を募らせる。

五十六は、疲れたように自室へ戻って行くが、その後ろ姿を観た渡辺戦務参謀は、日本全体が長官1人によかかっているようなものだから…と気の毒がる。

自室に戻った五十六は、椅子に腰掛けると、佐渡へ~佐渡へと~♪と佐渡おけさを口ずさみ出す。

それを聞いた近江兵曹が驚いたように聞き入っていたので、どうした?言ってみろと五十六は声をかける。

父のことを思い出しました。長官と同じ年ですと言うので、元気か?と五十六が聞くと、長官と違い、めっきり老け込んでいますと近江兵曹は答える。

息子がしっかりしてるからなと笑った五十六は、近江兵曹、これからわしが部屋を出る時は、二種軍装と言うことにしてくれと頼む。

白い奴ですか?と驚いた兵曹だったが、さっそく用意しておきますと答える。

ある日、五十六に会いに来たのは、陸軍辻参謀だった。

いつぞやは暴言を吐き、慚愧に堪えませんと詫びた辻参謀は、弾薬補給もままならず、ガダルカナル奪還のためなら、百武司令官自ら戦艦に乗るとまで言っておられます。

日米開戦に反対された長官のお気持ち、今、胸に沁みますと辻参謀は反省する。

必要とあらば、大和だって向かわせます。百武司令官に輸送船に乗ってもらう訳にはいかんだろうと五十六は答える。

その後、栗田司令官(清水将夫)を呼び寄せた五十六は、君に行ってもらいたい。飛行場を叩くしかない。「榛名」「金剛」で攻撃してくれんか?と頼む。

宇垣参謀長は、敵のレーダーは完成してないと言うと、やらせていただきます!と栗田司令官は答える。

廊下で藤井政務参謀に会った近江兵曹は、何故最近、長官は二種軍装しておられるのでしょうか?と尋ねる。

後100日で、命を燃やし尽くす…と、遺書のような言葉を、五十六が書いていることを藤井政務参謀は知っていた。

昭和17年10月14日

戦艦「榛名」「金剛」は艦砲射撃を開始、ヘンダーソン飛行場は火焔地獄と化した。

機動部隊は一旦北上するものの、山本五十六は南下を指示

機動部隊は10月25日南下

敵機編隊、我が方へ接近!

草鹿参謀長は、総員は位置に付け~!と命じる。

空戦で三上中尉が負傷していた。

三上の気の様子がおかしいことに気づいた木村少尉は、三上!もうすぐだ!頑張れ!と声をかけるが、やがて、三上は息絶え、乗っていた機体は墜落して行く。

それを見届けた木村中尉は敬礼をする。

かくして、南太平洋海戦は終わった。

ガダルカナル島に残された日本兵の飢餓のため、戦力の差が顕著となっていた。

島の兵隊たちは、海水を飲み、木の実やトカゲを食べていた。

陸軍司令官今村均(佐々木孝丸)が大和の山本五十六を訪ねて来る。

陛下はガダルカナル島では言語に絶する苦難している兵士を憂慮されております。万難を排して救えと…と今村が伝えると、申し訳なく思っておりますと五十六は頭を下げる。

くれぐれもご無理なさらないように…と今村司令官は五十六に声をかける。

ガダルカナル島では、2万4千人の日本兵が失われ、生き残った将兵たちも飢餓で絶滅の危機を迎えようとしていた。

百武司令官は、今の兵力では、この残された兵隊たちを救うことは万に一つの成功の望みもないと考え、ひたすら、ラバウルからの指示を待つことにする。

その後、今村司令官の元に、物資を輸送中の潜水艦がエスペランス岬で撃沈されたという電信を受ける。

もはや、ガダルカナルへの補給の道は絶たれた。

このままでは17軍1万2千の兵が全滅しそうだった。

ある日、渡辺戦務参謀が今村司令官に面会にやって来て、長官の命令で、ぜひお目にかかって、撤退をお考えなのか、直接聞いて来いと言われて…と部下に伝えるが、部下は、それは困る。軍司令閣下のお立場として、お会いになっても、閣下を苦しめるだけです。武士の情だ。私もお取り次ぎできかねる。このままお引き取り願いたいなどと言うので、そのまま報告して宜しいですな?と確認した渡辺戦務参謀は、それを五十六に報告する。

そうか…、良し分かったと答えた五十六は、自分が悪者になる覚悟を決め、ガダルカナルの将兵、1兵残らず救出せよ!と命じる。

ジャングルに潜んでいた日本兵に、船が出るぞ~!誰もいないか~!と呼びかけながら探していた救援兵は、ただ1人動けなくてしゃがみ込んでいた兵隊を見つける。

動けません…、船を出して下さい…と、その日本兵が言うので、馬鹿!しっかりしろ!と励まし、おぶって船まで連れて行く。

2月7日 1万350名全員、見事撤収された。

ラバウルに日章旗が翻った。

ソロモン奪還すべく、長官自ら陣頭指揮を執ることになり、木村大尉が出撃して行くのを見送っていた。

執務室での五十六は、亡くなった将兵の名前を、名簿から朱墨で消して行く。

攻撃機を見送っては、戦死者の名前を消して行く…、そんな日々が続いた。

そんなある日、本日を持って八号作戦を終了すると言い出した五十六は、ブーゲンビルやショートランドなど、前線を観て来たいと言い出す。

こっそり出かけて行って。最前列の将兵に見せたやりたいのだ、この面を。五十六が来たぞってねなどとおどけるように言う。

その後、長官室にやって来た木村は、自分らだけ内地に帰る訳には行きませんと言い出す。

それを聞いた五十六は、バカもん!誰のために戦争しているんだ!もっと大きく目を開けと言い聞かす。

遺骨を抱えて内地に帰る将兵たちに、見送る五十六は、これからなお一層の苦労を願うものであると挨拶する。

輸送機に乗り、トラック島を経由して日本に向かう木村大尉は、長官、ご無事で!と五十六に挨拶し出発する。

それを見送った五十六は、こちらの出発は決まったか?と聞く。

明朝00600と聞いた五十六は、これから病院観に行って来るよと言い、マラリアや負傷で入院していた将兵を見舞う。

薬十分にあるか?と軍医に確認したり、元気出せと負傷兵たちに声をかけて行く五十六だったが、長官!と声をかけて来た見知らぬ兵隊がいた。

怪訝そうな顔をする五十六に、俺の親父が長官を船に乗せたって…と説明すると、あの船頭さんの息子か!と五十六は長岡で会った喜太郎を思い出し笑う。

白井と言うその兵隊に、どこで怪我した!と聞くと、駆逐艦「ながみ」であります!と言うので、この手を握ってみろ!と五十六は右手を差し出す。

白井がその手を握ると、さあ、力一杯!と五十六は言い、良し!それくらい力があれば大丈夫だ!怪我はすぐ直る!と励まし、親父さん元気か?と聞く。

後100日に、余命を燃やし尽くす…

その言葉を聞いていた近江兵曹は、何か胸騒ぎを感じ、藤井政務参謀に、自分をラバウルにやってくれ!長官にお目にかからせて下さい!と願い出る。

その願いは聞き届けられ、ラバウルの長官室にやって来た近江兵曹を観た五十六は、何だ?どうした!と驚く。

長官、軍服を持って参りました!こちらに着替えて下さい!と第一軍装を差し出す。

戸惑いながらも、お前がそう言うのなら…と、五十六は言うことを聞く。

近江兵曹、船でお待ちしております!と挨拶した近江兵曹は部屋を出て行く。

その夜、森崎中尉(江原達怡)ら、明日護衛を務める面々が五十六に挨拶に来る。

その面々を見渡した五十六は、見覚えのある兵隊を見つけ、どこかで会ったな?と聞く。

岩国航空隊であります!とその兵隊が答えると、相変わらず大きな声だなと五十六は思い出し笑いをする。

翌朝、長官と参謀は、2機の一式陸上攻撃機に分乗、6機の零戦に守られ、基地を飛び立った。

しかし、山本五十六が視察に出かけるという暗号通信は、アメリカ軍に解読されていた。

護衛機は、やがて、燃料補助タンクを切り離す。

敵機が現れた不基地な前触れだった。

敵機との空中戦が始まり、長官機も攻撃を受ける。

長官機の操縦士は、緊急着陸します!と五十六に伝えるが、日本刀を持ち、微動だにせず席に座っているかに見えた五十六の背中には、小さな銃痕があった。

すでに五十六は死んでいたが、今も生きているかのように目を見開いていた。

長官機はジャングルの中に墜落して行く。

それを上空から確認した森崎中尉は、川の近くで炎上する長官機に向い静かに敬礼をする。

護衛機はいつまでも、長官機の上を旋回していた。

昭和18年9月18日

連合長官山本五十六は、ブーゲンビル上空に置いて戦死。

真珠湾攻撃から1年4ヶ月目のことだった。

志と違い、戦争遂行の責任を負いながら、その責務を全うしたのである。


 

 

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