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やくざの墓場 くちなしの花

渡哲也のヒット曲「くちなしの花」を織り込んだ無頼派刑事物。

力でヤクザと対決しようとするレイバン姿の刑事を演じる渡哲也の役名が黒岩で、その上役を藤岡重慶が演じていたりするので、どうしてもテレビの人気番組「大都会」(1976〜1979)や「西部警察」(1979〜1984)などを連想する部分がある。

本作では、満州生まれの黒岩刑事が、朝鮮人のヤクザやハーフの女と意気投合し、むしろ、彼らと敵対する警察内部に巣食う悪と対決すると言う展開になっている。

そんな黒岩に協力するようになるチンピラとして千葉治郎や小林稔侍が出ており、さらに驚くべきは、大島渚監督が警察本部長役で登場して、長ゼリフを言っていたりする。

東宝配給の「ゴキブリ刑事」(1973)辺りがイメージの原点のようにも思えるが、アクションものとしてキレがなかった「ゴキブリ刑事」に比べると、さすがに深作欣二監督の手にかかるとイメージが一変している。

黒岩と喧嘩を通じて意気投合する「ダボ牛」こと岩田を演じている梅宮辰夫も悪くないし、敵役を演じている佐藤慶も良い。

相変わらず、金子信雄はユーモラスな小悪党を楽しそうに演じている。

梶芽衣子も悪くはないが、武闘派と言うキャラではなく、薄幸な美女と言う、どちらかと言うと受け身な立場と言うこともあり、今ひとつインパクトが感じられないのが若干残念。

全体を通して、出来はまずまず…と言った所ではないだろうか。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1976年、東映、笠原和夫脚本、深作欣二監督作品。

これはフィクションであり、実在の実在の人物や組織とも関係ありません…と言った断り書き。

ナイトゲームが行われている広島球場の裏側で、発砲騒ぎが起こる。

警察本部では、大村本部長(大島渚)が、対立深まる山城組と西田組に対し、断固取り締まるが、民主警察として暴力はいかんぞと訓辞を垂れていた。

そんな中、パチンコ屋で、球が出ないと喚いていた労務者(片桐竜次)に、西田組のチンピラ数人が取り巻き、店の外に連れて行く。

その側で打っていたアロハにカンカン帽、サングラス姿の男が、連れて行かれた客が打っていた台に残されていた大量の球をすばやく頂くと、そのまま隣の引き換え所で元金に替えて帰ろうとする。

その時、先ほどのチンピラたちが前を塞ぎ、わしらが知らんと思うてるのか?盗みは盗みや!サツに突き出したろか?ここは西田組のシマや?と脅して来たので、サングラスの男はぺこぺこ謝り、今、引き換えた金を全部返しただけではなく、自前の財布の中味まで全部抜き取られてしまう。

チンピラたちが金を持って去って行った直後、サングラスの男は、物陰で素早くアロハを脱ぐと、その下は黒のダボシャツにピンクの腹巻きと言うド派手な衣装を着込んでいた。

タイトル

素早く変装したその男は、意気揚々と歩いて行く先ほどのチンピラたちを尾行し始める。

4人いたチンピラたちは、途中で今奪い取った金を分け合い、2手に別れる。

黒いダボシャツにサングラスの男は、片方の2人組若本英夫(矢吹二朗=千葉治郎)と北島明(小林稔侍)を追跡し始める。

尾行されている事など全く気づいていない2人は、もめ事の仲裁に商店街に来ていた警官のパトカーの側面に、知らん振りをしてコインで傷を付けて行く。

その内、2人は揃って立ち小便し始めたので、後から近づき、前に顔を出してイチモツを眺めたサングラス。

それが、さっき金を奪い取った男と気づいたチンピラ2人が、何や?さっきのガキやないか!と息巻こうとするが、サングラスの男が腹巻きをめくると、ベルトに拳銃と手錠のサックが付いていたので、ポリや!と気づく。

パチンコ屋からここまでの間に色んなことしてくれたな?恐喝、暴行、器物破損、合計したら3年は食らい込むとサングラスの男黒岩竜(渡哲也)は、逃げ出した若本をボコボコに殴りつける。

公務執行妨害は見逃したるさかいかかって来い!と挑発し、さらに若本を叩きのめして手錠をかけた黒岩は、身体検査する振りをして相手のズボンのポケットから、弾丸を見つけてみせるが、何じゃ、このマメは?と聞くが、それを観せられた若本は、そんなもの俺は持ってないと驚く。

しかし、署に連行された若本は、梶山刑事(川谷拓三)から、このマメ(弾丸)は、モデルガンを改造したもので、夕べ野球場の発砲事件で使われたものやな?と取調室で追求される。

若本は、山城組や!などと言い訳をするが、梶山刑事と同席していた黒岩にボコボコにされる。

そこへやって来た赤間署長(金子信雄)が、黒岩に、西田組の事は多少情報があるので、分からないことがあったら相談してくれと言葉をかけて来る。

そして、若本が所持していた弾丸を見ると、このマメは38口径やな。この辺りには22口径以上のものはないんやなどと言い出したので、若本は赤間の言葉に勇気づけられて急に態度がでかくなったので、又、黒岩から痛めつけられる。

刑事部屋で古島捜査四課長(藤岡重慶)は、そんな黒岩に、ここでは始めての仕事や。君のそう言うスタンドプレイがいかんと黒岩の過激な捜査方法を注意する。

赤間署長も、一部の記者が今回の強引な逮捕の事を気づいたんで、釈放したんやと言うので、黒岩は4課の事は自分も良く知ってます!と反論するが、暴力で取り締まるんやない!と古島から説教させる。

憮然として部屋からでようとした黒岩だったが、そこに、寺光伝之肋(佐藤慶)が入って来て、近々、署長クラスの移動になると言うと、赤間は急に態度が卑屈になる。

そんな寺光は黒岩に気づくと、君は2年前、城北署で暴力事件を起こした黒岩じゃないか?と驚く。

こちらに呼び戻しましたと古島が答える。

その後、黒岩は、赤間署長に誘われ、西田組の宴席に出席するはめに陥る。

組員一同を紹介された黒岩は、組長の杉政明(藤岡琢也)から、うちは博打一本で暴力には一切関わらない組だ。喧嘩を売って来ているのは竹田組の金井と言う奴だ。山城組の情報が手に入ったら教えてくれ、こちらもあんさんの手柄になるようなネタを探すさかいなどと言われる。

さらに、同席していた松永啓子(梶芽衣子)から、帰りの御車代になどと言われ、札束の入った包みを渡されそうになったので、呆れた黒岩は立上がって帰ろうとする。

そこに、岩田の叔父貴がお帰りになりました…と三下がやって来たので、場の空気が凍り付く。

やって来た岩田五郎(梅宮辰夫)は、廊下に出かけていた黒岩を発見すると、わいは「タボ牛」言うんや…と言いざま、いきなり殴り掛かって来る。

黒岩も殴り返そうとすると、この席で起きた事はうちの責任です。お送りしますと啓子が止めに入る。

黒岩が帰るのを見届けた杉は、ああ言う猪みたいなんがころっと変わるんや。敬、あんたに任すと声をかけると、九州の方はどうやった?と岩田に聞く。

岩田が入手して来た情報を伝え、早く竜神会と組んで山城組潰した方が良いなどと話し、残っていた赤間署長が豆千代はどうした?などと鼻の下を伸ばしていると、突然戻って来た黒岩が、わざとテーブルの上に忘れて来ておいた煙草を取って、知らん顔して帰る。

どうやら、今までの話は全部聞いたようだった。

黒岩は、その後、荒井初江 (八木孝子)とホテルのベッドにいた。

初江は、いつも同じホテルで同じ事をやってばかりで面白くない…と文句を言っていた。

今日、店に来た客は警備会社の人で、今、人手不足で、特に元警察官は歓迎する言うてた。景気がええのんや。いつまでも極道相手の刑事やってるより警備会社の方がええのと違うか?紹介したろか?などと女は言う。

あんた、ちっとも私の事考えてくれへんやろ?他の子、どんどん店持ってるんやで。主人殺しといて…!あんた、何にも感じてへんのか?と初江は黒岩を責めて来る。

(回想)城北署時代、日高刑事(室田日出男)とヤクザの幹部のアパートに向かった黒岩は、突然、女房の初江の背後にいた荒井真吉(野口貴史)が発砲し、日高が腕を撃たれたあげく、部屋から飛び出したヤクザが二階から逃走しようとしたので、やむなく発砲するが、撃たれた荒井は転落し、死亡する。

初江は、黒岩に、畜生!人殺し!と言いながらつかみ掛かる。

(回想明け)責任感じとるさ…と黒岩が答えると、命助けた女を自分の女にしたちゅうこと?と女が嫌味を言って来る。

(回想)後日、再びアパートを訪れた黒岩は、睡眠薬を飲んで倒れていた情婦を発見、無理矢理、洗面所の所へ連れて行き、口移しで水を飲ませて何とか命を取り留めさせる。

(回想明け)どうしたん?いつまで黙ってるつもり?手を切るつもりなら、店一軒もたせて欲しい。ポリス言うても、人1人殺したら、弁償金くらい用意して欲しいわ!と初江が言って来たので、さすがにビンタして、黒岩はホレルを後にする。

道に停まっていた車の横を通りかかった黒岩は、突然、待ち受けていた暴漢に襲撃されるが、反撃して、逆に暴漢たちを車の中に詰め込む。

暴漢は仇討ちのつもりの若本と北島だった。

黒岩に痛めつけられた2人は、野球場の事件は自分たちが勝手にやっただけで組は関係ないと言うので、銃は?と黒岩は追求する。

若本は、飲み屋をやっている母親君代(菅井きん)の店に黒岩と北島を連れやって来ると、預けてあるもん、出してくれと頼むと、母ちゃん、俺、この人と旅に出るかも知れんと黒岩を紹介する。

事情を知らない君代は、酔っていることもあり、黒岩を兄貴分かなにかと思ったのか愛想を振りまき、酒を振る舞うと、この子は極道になってもチャラチャラしたできそこないになってしもうた…と愚痴り始める。

てて親は競輪に凝って家出してしまい、うちが働かんといけんくなったので、この子が4人の兄弟の面倒をみてくれてね。そんな生活に負けんようにするうちに極道になったんや…と過去を打ち明ける。

話を聞いていた黒岩はいたたまれなくなり、金を置いて店を出ると、先に店を出ていた若本がしゃがみ込んで泣いていたので、包まれた拳銃を渡すと、親戚に話して明日中に自首して来いと言い聞かす。

後日、若本キックボクシングのジムで練習をしていた岩田の元にやって来た黒岩だったが、黒岩は、背後に控えていた若本た北島を前に、若いもんが借りを作ったそうやな?と面白くなさそうに睨みつけて来る。

若本と北島を伴った黒岩は、西田組の賭場で金を作ろうとする。

資金は若本から組の金をもらっていたが、思うように勝てないでいた。

その時、同じ賭場にいて、やはり負け込んでいた金井勝次(曽根将之)が、奥に控えていた西田組の江崎信久(八名信夫)の側に行くと、オケラになった。これで100万貸してくれと言いながら銃を取り出す。

いつ返すんや?と江崎が睨みつけると、明日なったら返すと金井は答えるが、そんな金井の名を若本が黒岩に耳打ちする。

黒岩は、若本と北島に、奴をつけてヤサを突き止めろと命じる。

若本と北島は、インスタントデカやな…と喜ぶ。

その後、「山光総業」にやって来た黒岩は、トイレから出て来た金井を捕まえると、拳銃不法所持の容疑者として話を聞くなどと言いながら、もう1度男子トイレに押し込めて暴力を振るっていたが、それを止めに来たのは。黒岩も面識がある城北署の元刑事鬼頭(林彰太郎)だった。

社長室に入ってみると寺光伝之肋がおり、何ごとだと言うので、お客さんにバンかけてたので…と元刑事が説明、寺光は、うちはみんな元デカの猛者なんやと言う。

金井の所属する武田組と組んで山城組との関係を持とうとしていた寺光は金庫から札束を取り出すと、一回の人生なんやから、花咲かせんとな…などと説得するように黒岩に渡そうとするので、受け取った黒岩は、その場で札に火を点けて燃やしてしまう。

廻りにいた元デカたちはいきり立つが、寺光はそれを制し、やった金をどうしようとあちらの勝手だと言う。

わいは、枠にはめられるのが嫌なんや!と言い残し、黒岩は帰って行く。

それを見送った金井は、あれに良う似た奴が向うのボンにおった…と思い出す。

後日、中華料理屋で仲間と一緒に飯を食っていた金井の元にやって来た江崎率いる西田組は、貸した金500万を返せと迫るが、金井は悠然と、そっちの落としまえ付けてもらおうか?我んとこのボンにはデカを囮に置いとくんか?あのデカにきっちり落し前付けさせえ!と息巻く。

何だと?と江崎は戸惑うが、一緒に付いて来た三下が、話し合っても無駄や。身体で払ってもらおうと言うや否や、隠し持って来た拳銃をぶっ放し、金井は射殺される。

これをきっかけに、山城組と西田組の抗争は激化。

警察は大掛かりな手入れを開始する。

しかし、その後も、小学校側で乱射などという記事が新聞紙上をにぎわす。

捜査に忙殺され、くたくたになって独り住まいの団地に帰って来た黒岩だったが、部屋の入口の脇で待っており、声をかけて来たのは松永啓子だった。

部屋の中は荒れ放題で、人間の住む所やないよ…と自嘲しながら、黒岩は布団の上に倒れるように横になると、お前はんらが騒ぎ起こすからくたくただとぼやく。

すると、入口で立っていた啓子も、あんたが賭場におったのが騒ぎの元やと言うとるよと言うので、わしを強請りに来たんか?と黒岩は答える。

啓子は、急用で旅に出んといかんのやけど、警察にマークされていて動けないんですと言うので、どこまで行くんや?と聞くと、鳥取だと言う。

啓子の亭主の松永が、向うの刑務所に移されたのだと言う。

その後、鳥取刑務所で松永俊二(今井健二)と面会した啓子は、組の事で大事な話があると切り出すと、江崎を頭に挙げてやってくれ。あんたがおらん間、誰かが頭にならんと組が持たんのやと説得するが、わしの女房なら、わしが出るまで持っとらんか!男が出来たんか?今、誰と突ついているんや!と怒鳴りだした松永は終始が付けられなくなり、刑務官に押さえられ、暴言を吐きながら面会室からそのまま連れて行かれる。

失望した啓子は、鳥取砂丘にやって来ると、うちは海が観たいんよ…、人間は腐るとよ…と言うので、後から付いてきた黒岩は、そやから会わん方がええ言うたんや…と話しかける。

やがて、海が見えたので、海や!と啓子は喜ぶ。

海言うても、起こってる時もあれば笑ってる時もある…などと黒岩が言い出したので、黒岩はん、ここの生まれなん?と啓子が聞くと、ここで育った。生まれたんは海の向う、昔は満州言うたんや。ガキの頃引き上げてきた。土地のもんに虐められてな…と黒岩は教える。

それを聞いた啓子は、うちも何度海の向うへ行こうと思ったか…、父は半島の生まれで、母は日本人やった…。子供の頃から簡易ハウスを転々としているうちに母は死んで、父は半島に帰る金を貯めるために仲仕の仕事をしていたけど、船から落ちて死んでしまった…と打ち明けた啓子は、突然、黒岩が持っていた酒瓶を奪い取って、そのまま波打ち際から海に入ろうとする。

驚いた黒岩が、止めようとすると、離して!向うへ帰るんや!朝鮮、死ねって!言われたんや!うちかて帰るとこあるんや!と啓子は喚きだす。

(「くしなしの花」のメロディがかかる中)そんな啓子を抱きしめ、黒岩は波打ち際を転がり回る。

やがて、江崎が逮捕される。

朝礼の席、本部長の訓辞の後、何か質問は?と聞かれた時、ただ一人挙手して立上がった黒岩は、西田組だけ追求するのはおかしくないですか?と疑問を口にするが、本部長は君の意見なんか聞いとるんやない!と古島捜査四課長が注意する。

そんな会議室にやって来たのは、警部補になって転勤して来た日高善人だった。

日高はかつて城北署時代の同僚だった黒岩を見つけると再会を喜び、その晩は一緒に鍋を突ついて飲む事にする。

日高は、ヤクザから撃たれたときの怪我が元で勉強ができ、昇進試験に受かったと言う。

さらに、お前、あん時の仏さんの女と出来るそうやが本当か?だとしたら、責任取って結婚せんといかんな…、世間体もあるし…などと分かったように言って来たので、御と気、女、薬飲んでな…、知らんもんがガタガタ言うな!と思わず黒岩は怒鳴りつけ、席を立ってしまう。

おいおい、それが警部補に向かって言う言葉か?お前が四課におられるのも外すのも、俺の判断一つなんやど…と店を後にする黒岩に声をかける。

団地に帰って来た黒岩は、むしゃくしゃした気分を晴らすために、ロックを大音量でかけ、寝っころがって角瓶のウィスキーを飲んでいた。

そこに、初江から電話がかかってきて、今バーの売り物があるんやけど、この前もらった金くらいでは権利金にも足りん。この際、あんたん所に席を入れて結婚しようと思うとるんやなどと言ってくる。

その時、隣の主婦が、届け物を預かっていると持って来る。

初江は、別の男と一緒にいたホテルのベッドからかけていたが、電話の向うから聞こえて来るのは大音響のロックだけなので、ちょっとその音決してえな!人が大事な話してるのに!と怒りだす。

黒岩は勝手に電話を切ると、隣の主婦が入口付近に置いて行った届け物を観に行く。

「贈り物 結婚披露宴 松永啓子」とのしに書かれており、箱を開けると、中には白のスーツが入っていた。

その直後、近所の主婦たちを伴い警官がやって来て、その音に苦情が来とるじゃないか!と黒岩に文句を言う。

後日、「雄心会 西田組 結婚披露会」と銘打たれた盛大なセレモニーがホテルで執り行われる。

会場では、関西の雄心会の会長波多野武市(織本順吉)が挨拶をしていた。

出席していた岩田五郎組長代行に、赤間署長が挨拶に来る。

その時、岩田は、白いスーツを着て式に出席していた黒岩と啓子が、同じテーブルで仲睦まじくしている様子を観て逆上し、なんぼダンゴしとうてもな、相手は亭主のいる身や!空き巣みたいな真似は止めろ!と怒鳴りながら近づくと、黒岩をいきなり殴りつける。

黒岩も殴り返し、2人の壮絶な喧嘩が始まったので、セレモニーは騒然となる。

しかし、波多野は、そんな2人を面白がり、ええ根性しとる。好きなようにやらせてやれ!もっとやれ!もっとやれ!などと囃しながら、会場を後にする。

赤間署長も、テーブルでバナナを食べながら面白そうに見物していた。

自分に用意されていたホテルの部屋の洗面所で、傷だらけになった顔を洗っていた黒岩の元に、同じように腫れ上がった顔の岩田が酒を持ってやって来ると、おまはんも大概強いな…と、ドアの所で感心したように話しかけて来る。

俺の親爺はアル中で、おふくろはパンパンやった。子供の頃から三度の飯は万引きやったもんや。喧嘩もようやったし、セ○ズリもようかいた…などと岩田が言うので、喧嘩の後は無性にしたくなるんやと黒岩も同意する。

すると、岩田はにやりと笑い、ほんなら、わいたち「セ○ズリ兄弟」や!今からお祭りやるか?と言い出すと、連れて来ていたエミーとマリーと言う外国人娼婦を部屋に招き入れる。

そして、黒岩にも1人をあてがい、4人でベッドに飛び込む。

事が終わり、熟睡していた黒岩だったが、最初に目覚めた岩田がそっとベッドを降り、黒岩の頭部に拳銃を突きつけると、起きいや。おまはんに惚れたさかい、命もらいたいんやと岩田が声をかける。

薄く目を開いた黒岩が、欲しけりゃくれてやるさと答えると、ポリ公にしてはええ度胸しとると岩田はますます感心する。

かくして、すっかり仲直りした黒岩は、後日、岩田と啓子に聞かされた、ボンの客で3000万負けた奴がおり、会員ハウスを手放したと言う話を調べてみたら、善隣防犯協会と言う所が5000万で借りたそうや。その協会の楠本と言うのが入口になており、金は山光総業の金庫に入っているらしい。つまり、山光総業と言うのは山城組の金庫番やと教える。

一緒に話を聞いていた啓子は、3000万よりその方、何とかなりませんか?と黒岩に聞く。

この前の詫びをしたいと岩田が金を黒岩に差し出そうとする。

松永の事は啓ちゃんから聞いた。よう分かった。松永出るのを啓ちゃん15年も待っていたらババアになっちょる。あの子ハーフやさかい、松永の下でお春(売春)やっとったこともあるんやが、しっかりしたええ子や。黒はん、あんた、力になってくれんか?ここでわいと盃飲んで欲しいんやと岩田が言うので、警官とヤクザの兄弟盃なんて聞かんな…と黒岩は苦笑する。

まじめやで…、わしは混じりっけなしの朝鮮人や。それでも飲んでくれるか?と岩田に言われた黒岩は、分かった。喜んで飲もうと答える。

後日、任意同行で署に連れて来た男を、梶山刑事と黒岩は、練習場で汗かこうか?などと言って、柔道の稽古場に連れて来ると、梶山がまず柔道で投げ飛ばそうとする。

しかし、あまりに弱く、容疑者から逆に投げ飛ばされてしまったので、黒岩が代わり、柔道で相手を投げ飛ばす。

梶山も竹刀で容疑者を叩き回る。

そこに、本部からすぐに帰って来いとの知らせが黒岩に届く。

本部長は、黒岩君、君の身辺調査をさせてもらった。自宅謹慎してくれと突然言い渡す。

岩田と黒岩が義兄弟の盃を交わしたと言うのは本当か?と日高警部補が聞いて来る。

黒岩が答えないと、黒岩!貴様!と古島捜査四課長も睨みつけて来て、自分のやった事が分かっとるのか?二年前、殺した相手の女房と関係を持っているそうじゃないか!と問いつめる。

本部長も、君に弁明することがあれば聞こうと声をかけて来るが、黒岩は、自分もあんたらと同じ赤い血が流れとるんです!と言うだけなので、本部長は、それだけでは分からないと戸惑い、同席していた野崎副本部長は、国家公務員法に違反しているので、西田組とは今後一切接触するな!破った場合は、即刻拘束する!と黒岩に言い渡す。

しかし、その後、黒岩は、啓子の赤い車の中で会っていた。

どうやら、あんたの側にタレコミ屋がいると伝えると、裏切りもんはうちらで始末すると啓子は答える。

わいはあんたと岩田に身を預けたんや。一心同体や。わいに構わんで山城組をやってくれ。西田組が一枚岩でぶつかれば、潰せるはずやと黒岩は言い、車を降りようとしたので、黒岩はん!と呼び止めた啓子は運転席でキスをする。

その後、黒岩は車を降り、雨の中1人去って行き、啓子も車を出発させる。

後日、山城組の組長山城剛志(吉田義夫)が、長らく入院していた病院から退院する日を迎える。

パトカーなども警備している中、突然、一台の車が入口に接近して来るなり、中に乗っていた黒服の男たちが機関銃を乱射して来る。

逃げようとした車から1人落ちてしまうが、それは西田組の若本だった。

車を運転していた北島が慌ててバックして来て、若本を拾い上げると逃げ出す。

パトカーが追跡して来るが、前を塞いだパトカーにぶつかって、北島たちは逃げきる。

その後、キックボクシングのジムにやって来た岩田は、物陰から飛び出して来た黄色いヘルメットをかぶった工事人風の3人組に襲撃される。

追え!と足を撃たれた岩田は命じ、手下たちが後を追おうとするが、事務所前で警備していた警官たちに阻止させ逃げられてしまう。

武田の嫌がらせやと岩田は喚く。

その後、今度は、杉政明の自宅前で車から降りようとしていた妻と娘が、通りかかった車から乱射されると言う騒ぎが起きる。

幸い、妻も娘も無事だったが、家から出て来た杉は青ざめる。

本部では、この騒ぎに対し、記者会見が行われる。

そんな騒ぎの中、岩田は、見舞いに来ていた黒岩に、これからおもろなるんや…と苦笑する。

どっか他所に行ったらどうや?と黒岩は勧めるが、そこに奈良の叔父貴から電話が入ったので、早う、金を送ってくれと岩田は頼むが、山光に全部サルバージされていると言う。

署に帰ると、日高から、誰に会うて来たんや?と詰問しながら電話で上司に連絡しようとしたので、殴って車を走らせる。

黒岩は港に車を放置する。

梶山、日高、野崎副本部長は、杉政明を署で締め上げていた。

お前は教唆で15年の刑務所行きや!とか、組を解散する事も出来るんやど!と脅された杉は、しゃあない、お手上げや!とあっさり手を挙げる。

赤間署長は、寺光から虎の飾り物をもらい上機嫌だったが、黒岩君はあんたの方で処分できんか?と頼まれる。

赤間は、私の移動の方は…と訪ね、話しはしてあると寺光も答えていたが、その時、けったいな男がいると部下たちが寺光に知らせに来る。

黒岩が、寺光の電話の盗聴を試みていたのだが、山光総業の部下たちがやって来たので、北島に、岩田を呼んで来てくれと頼み、先に逃がすと、自分は手下たちに捕まってしまう。
岩田のヤサはどこや?義兄弟やったら知らん事ないやろ!と拷問を受けながら聞かれる。

その様子を観ていた寺光は、もう一息やな…、例の奴、打ってみ?と部下に声をかける。

黒岩は、昔、ドイツ軍が作ったと言う自白剤を注射されてしまう。

どこまで効くか、自分の身体で試してみいと寺光は冷酷に言う。

その頃、黒岩と合流するつもりでいた北島は、岩田を匿っていたマンションの一室で、黒岩はん、何しとるんや?とぼやいていたが、岩田は酒でも買うて来いやと金を渡し、北島を外に出す。

その直後、部屋になだれ込んで来たのは赤間署長と日高ら刑事たちで、1人だった岩田はあっさり逮捕されてしまう。

警察署に連れて来られた岩田は、署長からの差し入れや、便所に行って飲んで来いと、刑事から缶ビールと煙草を渡される。

便所に行き、一服した岩田は、周囲に人影が全くない事に気づき、思い切って逃亡を図ろうとする。

しかし、それは罠で、あらかじめ隠れて待ち受けていた警官たちが、逃げようとした岩田を警棒でめった打ちにし、逃亡しようとしての転落死と言うことになる。

その報告を事務所の電話で受ける寺光。

葬儀の席で杉は、岩田も自業自得やな…、この世界泣いてもらうしかない。山城組と事を構えたらあかんで…などと言っていたが、そこに現れたのが黒岩だった。

黒岩はん、あんたにはもう縁はないんや、いんでもらおう…と杉は冷たく言うが、黒岩の姿を見つけた北島は、叔父貴を殺したのはこいつや!叔父貴の居場所を知っとったのは、俺とこいつだけやったんや!と叫びながら、黒岩に襲いかかろうとしたので、仲間たちが止める。

黒岩は、啓子のアパートでヤク中になっていた。

他になかったんや…、あんたを寝かせるには、もうペイしかなかったんや…と啓子が打ち明け、言うて!叔父貴さん売ったのだれやねん?あんた?あんたとしか考えられん。うちを騙した落としまえや…と言いながら、啓子は、
そして、倒れていた黒岩に銃を向けると発砲するが、弾が逸れて腕をかすっただけだった。

もう一回やってみい!どないなと好きなようにしてくれ!と、捨て鉢になった黒岩は啓子に頼む。

啓子は、黒岩が撃とうとしていたヤクを取り上げると、自分の腕に打ったので、啓子!と黒岩は驚く。

うちはね、13の年からお春やって来たんや。淫売や。こうしてペイやって来たんや。松永にもあんたにも惚れてへん!うちは誰の女でもあらへん!うちは朝鮮人でも日本人でもあらへん!ハーフでもあらへん!と啓子が喚くので、思わず立上がり、啓子を掴んで引きずり倒した黒岩は、啓子!お前はわしの女や!と叫び、そのままキスをする。

お前だけは裏切ってへん。その証拠見せたる!そう叫びながら、又、黒岩は啓子のキスをする。

警察本部にやって来た黒岩を観た同僚は、退職するって聞いたけど…と話しかけて来る。

そのつもりや。拳銃を直接課長に返して来るから出してくれと黒岩は言い、ロッカーの中に仕舞っていた自分の拳銃を受け取る。

会議室では、西田組の解散について話し合いが行われていたが、そこにいきなり黒岩が入って来たので、本部長以下、出席者は驚く。

寺光さん、この場で正直に話してくれませんか?岩田の事から全て、正直に話して下さいと言いながら、寺光に近づくが、こいつ、薬でも使うとるやろ。精神病院へでも行った方がええな…などと寺光は動じず嘲る。

次の瞬間、黒岩は銃を取り出し発砲する。

目の前で寺光が斬殺された中、凍り付く警察幹部たち。

話せば分かる!と黒岩を落ち着かせようとする野崎副本部長。

しかし、黒岩はそのままきびすを返し、部屋を後にする。

黒岩〜!と叫びながら追いかける日高。

警察本部を出て、外に停めた赤い車で待っていた啓子の元に近づいて来る黒岩だったが、その背後から追って来た日高が発砲する。

胸を撃たれた黒岩は、啓子の目の前で倒れる。

あんた〜!と叫びながら近づく啓子

倒れた黒岩は近づいて来た日高に、煙草を求めるためか、二度目だと言うつもりなのか、日本指を突きつけ、そのまま息絶える。

(「くちなしの花」の歌が流れる中、海の波打ち際をバックに)キャストロール

黒岩と啓子の回想シーンが重なり、最後は、波打ち際で抱き合ってキスする2人の姿。


 

 

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