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東京ドドンパ娘

渡辺マリのヒット曲を元にした歌謡映画。

職人的な高橋二三氏の脚本だけに、軽いタッチで明朗な娯楽映画になっている。

善人役が多い印象がある森川信さんが悪役を演じているのも珍しいような気がする。

冒頭、レコード会社の社長が旧弊で、古い歌を再生して、親父にも分かる新しい音楽を企画しているのが面白い。

この頃から既に、新しい音楽は親父には分からなかったということだろう。

そして、その新しいリズムを聞いた社長が、頭がガンガンする!と言うのは、後のビートルズの音楽を騒音と称した文化人たちを思い出させる。

ここでは、頭がガンガンと言うのは病気の前兆だったことになっているが、ドドンパというリズム、今聞くと、ノリは良いものの、いたっておとなしい曲にしか聞こえない。

歌っている渡辺マリも、あまり動かず歌っているのが珍しい。

せいぜいタンバリンを叩いてリズムを取っているくらいで、ノリが良い曲なのに、歌っている本人はせいぜい手でポーズを取っているだけ。

それでも、当時の大人たちからすれば奇妙奇天烈な音楽だったのだろう。

話の展開は大体最初の方から予想できる程度のアイデアで、意外性はあまり感じないのだが、上映時間64分という中編だけに、あまり入り組んだ話にはし難かったのだろう。

逗子とんぼ等と言う人は久々に観た気がするし、木原部長をやっている神戸瓢介と言う人も、転び方が本気なので、喜劇畑出身の人なのかもしれないと感じた。

調べてみたら、元々は上方落語の林家染之助と言う人らしく、かなり早く亡くなられた方のようだ。

道理でヨイショが巧い設定になっている訳だ。

社長令嬢役をやっている田代みどりさんも可愛い盛り。

主人公の恋人役を演じている香月美奈子さんは、珍しく健気なヒロインをやっている感じで、普段は悪女みたいな役が似合う方だ。

主人公を演じている沢本忠雄さんは、明るい好青年を好演しているが、普段は脇役止まりで、あまり大成しなかったような印象がある。

低予算のプログラムピクチャーとしてはまずまずと言った出来だと思う。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1961年、日活、高橋二三脚本、 井田探脚本+監督作品。

画面向うから、地面すれすれに置かれたカメラ目がけ迫って来た白いオープンカーから降り立った娘たちは、「ダイヤモンド・レコード社」の建物に駆け込むと、「録音中立ち入り禁止」と立て看板があるスタジオ内に入り込む。

そこでは今正に、レコード会社所属のドル箱女性歌手の美鳩ゆかり(水森亜土)たちに、30年も昔の歌を歌わせようとしている所だった。

そのスタジオを見るブースの中には、社長の鶴野亀三郎(嵯峨善兵)がおり、専務の小松(森川信)ら相手に、これからは親父も知っている曲だ、安く上がるしな…と自らの発案の企画を自慢していた。

そんな鶴野社長、愛用の口臭消臭剤「カオール(kaol)」を口に含むと、これが売れれば、今、世間で吸収合併されるのではないかと噂されているイミテーション・レコードの話も消えるはずだと自慢するが、その時、ブースに入って来た鶴野社長の娘恵美(田代みどり)が、合併するって本当?などと松造に聞いて来る。

その時、スタジオ内では、先に待機していた女性歌手を押しのけて、私に歌わせて!と強引にアピールする娘がいた。

現代の音楽教えてあげる!と恵美が鶴野に言い、スタジオでは、渡井マリ(渡辺マリ)と名乗った観たことがない娘がタンバリンを叩きながらドドンパを歌い出す。

ウキウキでしょう?ドドンパって言うの!と恵美は売り込むが、老人の鶴野には、頭ががんがんする!止めさせろ!止めろ~!全く!何がドドンパだ!と叫ぶと、椅子から転げ落ちる。

それを観て慌てた小松が救急車を呼べ!と部下たちに命じる。

(救急車が走る映像をバックに)タイトル

文芸部では、社長が倒れたことを、いよいよワンマン社長引退か?などと社員たちが噂し合っていたが、そこにやって来たマリが、私の歌いかがでした?と聞いても、みんな、バカにしたように笑うだけだった。

その頃、小松専務の部屋に来ていた木原部長(神戸瓢介)は、新しい社長は専務をおいて他にありません!などとヨイショしまくっていた。

そこに電話がかかって来たので、受話器を取った木原はすぐに違うよ!と言って切るが、又かかって来たので、苛立たしそうに受話器を取って、違うよ!と怒鳴りつけ切ろうとした時、相手が数日前に倒れた社長と気づき、慌てて小松に渡す。

小松は、社長の屋敷に呼ばれたので驚くが、それを知った木原は、いよいよですね!と次期社長任命の話だと思い込みおだてる。

上着を来て出かける小松も、スーツを裏返しに着ていることも気づかないような慌てぶりだった。

鶴野社長の屋敷に着いた小松専務は、車椅子生活になった鶴野社長と久々に会う。

鶴野は、妻の郁代(小園蓉子)から「カオール」を受け取ると席を外させ、今度の病気を機会に社長を引退しようと思うと言い出したので、小松の目が輝くが、俺の後釜を狙い、手ぐすね引いて待っている奴がいることは知っている。ついては次期社長には息子を任命したいと思うと言うので、小松は驚き、社長には息子さんなんかいらっしゃらないじゃないですか!と答える。

実は25年前、ある女と出来ちまった。そして子供まで出来ちまった。女房に知られるのが嫌だったので、金づくで棄ててしまった。その女は、私の暮らしを壊したくなかったのか、わしの前に二度と姿を見せることはなかった。浅草で鳩の餌を売っているおむめ婆さんという人が色々後始末してくれたので、彼女しか手掛かりがない…、君!息子を捜して来てくれないかと鶴野は言う。

しかし、今まで会ったこともないどこの誰かも分からない人を社長にするのはいかがなものでしょう?と小松が案ずると、社長なんて床の間の置物だといつも言っているのは誰だ!と鶴野が言うので、思わず、私ですと答え、慌てて口をつぐむ小松。

その直後、小松は廊下で花瓶に花を生けていた郁代に会い、社長には隠し子がいらっしゃいます!どう思われますか?と自分の味方にしようと打ち明ける。

しかし、郁代は、しばし考えていた後、いきなりハサミを取ると、花瓶の中の花を1本切り、これですっきりしました。その話は15年も前に聞きました。その子を探し出そうとしましたが、おうめさんの居所がどうしても分かりませんでした。主人がとうとう打ち明けてくれたんですね。私からもお願いします。何とか見つけてやって下さい!と小松に頼む。

会社に戻って来た小松は、次期社長に自分が指名されなかったことに癇癪を起こし、さんざんヨイショされた木原部長を呼び出し、君がおだてるからその気になってしまったからこんなにがっかりしたんだ!出て行ってくれたまえ!と叱りつけていた。

がっくりして帰ろうとした木原は、その場に躓いた瞬間、何かを思いついたようで、私は噓はもうしませんなどと言いながら、小松に耳打ちをする。

その後、2人でやって来た浅草寺の前では今でも、おうめ(武智豊子)が鳩の餌用の豆を売っていた。

鶴野の息子のことを聞くと、両国の金物屋にもらわれて行ったが、空襲で一家全滅したと噂を聞いた…と言う。

木原は札束をおうめに渡すと、今後、その子が生きていたとしても、鶴野家とは無関係と言ってもらいたいと小松が頼む。

金を受け取ったおうめは、すぐに札束を胸の中にしまうと笑顔で承知する。

その後、知り合いのイカサマ興行社をやっている悪津(由利徹)経営のクラブ「エイプリル・フール」にやって来た小松は、ステージで歌っているのが、先日スタジオに現れた渡井マリと気づき驚く。

そこに、支配人(野呂圭介)がやって来て、二階の悪津の部屋に案内する。

悪津に会った小松は、社長の息子を仕立てて、会社を乗っ取る計画を打ち明ける。

誰か手頃な人材はいないかと聞かれた悪津は、喧嘩っ早いが嘘がつけない、ちょっと教養があるうちの若いのがいると答える。

小松は、教養は必要だよと乗り気になる。

その若いのとは、下のキャバレーでバーテンをやっていた並木五郎(沢本忠雄)だった。

そんな五郎の所へやった来たマリがお酒ちょうだい!と言うので、君いくつ?と五郎が聞くと、17歳というので、じゃあ、ダメじゃないか!ミルクだと言って、五郎はミルクを注いでやる。

悪津に呼ばれた五郎は、一人前のヤクザになれるチャンスだ。成功したら、キャバレーの一軒も持たせてやるし、悪津一家の子分にしてやると言われたので乗り気になる。

その場にいた小松は、君の名は今日から桜井光彦だ。このことは誰にも口外してはならないと釘を刺す。

その夜、五郎は恋人の吉田京子(香月美奈子)と会っていた。

京子は、五郎をヤクザな道から抜けさせようとしていた。

しかし、「千萬」と書かれたマージャン牌をペンダントにしたものを、これはお袋の形見なんだといながらいじる五郎は、俺だって身捨てたもんじゃないんだぜと反論していた。

京子の松造は、元やくざ狩りの刑事だったので、今のままでは紹介できないと京子は訴えて来る。

五郎は、今度仕事をもらったんだと自慢するが、京子が一体どんな?と聞いても、詳細はあかせなかった。

翌日、「エイプリル・フール」の前から、小松の車に同乗した五郎は、火打石を打る悪津らに見送られ出発する。

後部座席でふんぞり返った五郎が、横に座っていた小松にタバコの火につけさせようとするが、一旦、火をつけかけた小松は、威張るのは人前だけだ!と叱りつける。

鶴野の自宅に、五郎…、否!光彦さんをお連れしました!と小松が五郎を連れて行くと、鶴野は不機嫌そうに、どうして君はプライバシーが守れんのかね!と小松を怒鳴りつける。

何のことかと戸惑う小松だったが、鶴野に指差され後を見ると、そこには、5人の若者を連れたおうめ婆さんが笑ってたっていた。

おうめ婆さんも、独自に偽者を仕立て上げて来たのだった。

五郎も一緒に若者たちと横並びになり、名前と年齢を聞くと、全員が桜井光彦23歳と答えるので意味がなかった。

鶴野は若者たちに全員この場で裸になり、持ち物はこの場に置いておきなさいと命じる。

実は光彦の左の腰には小さな痣があるのだと言うと、それを聞いていた小松は、パンツ姿の五郎を柱の背後に連れて行き、五郎の左の腰にマジックインキで偽の痣を書く。

ちょうど執事の竹造(河上信夫)がその側を通って鶴野の元へ向かっていた。

小松が五郎を連れ、腰の痣を披露すると、頷いて本物と認定した鶴野は、許してくれ、いつか名乗り出ようと思っていたが時期がなかったんだと詫びる。

わしは、今は生きているだけと言った状態で、お前に社長をやってもらいたい。ダイヤモンド・レコードを頼んだよ。ダイヤに磨きをかけるのがお前の仕事だと鶴野は五郎に頼む。

五郎の座ったソファーの隣に座っていた恵美は、恵美って呼んで、お兄様!と甘えて来たので、恵美!と後藤が呼んでやると、お兄様!と言って泣きながら抱きついて来る。

そんな家族の様子を側で観ていた竹造は、しきりに首を傾げていた。

「ダイヤモンド・レコード社」に戻って来た小松専務は、木原部長に、社員たちを全員、文芸部に集めいるよう指示を出す。

文芸部の部屋に集まった全社員を前に、小松は五郎を新社長として紹介。

五郎は、ダイヤモンドは磨かなければ美しく輝きません。それを磨くのが君たちの仕事です!と先ほど鶴野が言っていた通りを復唱し、残りの挨拶は小松に任せる。

社長室の椅子に座らせられた五郎は、木原が持って来た書類を前に、社長なんて床の間の置物と一緒なんだから、全部、メ○ラ判を押せば良いんだ!と小松に言われるがまま、内容も読まずに、機械的に判を押して行く。

「エイプリル・フール」では、ステージ上でマンガ家がガラス板に白墨でエロティックなヌード絵を描き、それを瞬時に別の絵に変化させる芸を見せる中、ダンサーたちが踊っていた。

そこに来ていた小松に、ご紹介したい人がいると悪津が紹介したのが、イミテーション・レコードの極東総支配人ジェリー・横溝(南利明)だった。

ビジネスの話なので、2階の悪津の部屋に行くことにする。

横溝は、僕は大きなことをやりたい、そのためには、引き抜きと工場の獲得が必要と言う。

それを聞いた小松は、ダイヤモンドをイミテーションにすり替えるのが私の仕事ですと笑う。

その頃、ジャズ喫茶「ジュリー」の第二連絡口から出て来た京子は、あの五郎が車で待っており、家まで送って行くと言うので戸惑う。

京子の家まで走る間、五郎は今、僕の名は桜井光彦と言うので、名前まで代えて何するつもり?悪いことはすぐバレるのよ。お父さんに会って何もかも話して!と訴えるが、京ちゃんは、僕のこと何も分かっちゃくれないんだね…と、運転する五郎は面白くなさそうだった。

家の前で車を降りた京子は自宅に入るが、松造の松造(丘窮児)は弟の竹造と飲んでいた。

松造は京子の顔を見て、顔色悪いぞ。どうかしたのか?と聞いて来るが、何でもないわと答えた京子は、台所で2つの丼に即席チキンラーメンを入れてお湯を入れ、二人に持って行ってやる。

竹造は、自分の屋敷に来た青年がどうも怪しいので、元刑事の父に調べて欲しいと頼みに来ていたのであり、桜井光彦と名乗っているが、確か専務は五郎とか呼んで、慌てて取り消していたはずだと自分が聞いた話を教える。

それを隣室で耳にした京子は、ゴローさん?と呟き、愕然とする。

翌日、恵美は友人のマリを連れて、「ダイヤモンド・レコード」の社長室にいた五郎を訪ねて来るが、恵美に紹介されたマリと五郎は互いの顔を見て驚く。

「エイプリル・フール」で互いに顔なじみだったからだ。

今から映画に行くのと言い、恵美とマリは部屋を出て行くが、すぐにマリだけ戻って来て、驚いたわ〜、五郎さんも大したものね。口止め料!と要求して来たので、五郎は恐る恐る金額を聞くと1500円というのであっさり払ってやろうとする。

しかしマリは、お金なんかいらないわ。マリの歌、レコードにして欲しいのと言いながら楽譜を渡して来る。

一応受け取った五郎だったが、その曲で社長は倒れたんだからレコード化は難しいよと言うと、お年寄りが倒れるくらいじゃないと売れないのよとマリは反論する。

困ったときは連絡するよと答え、五郎は楽譜を引き出しの中にしまう。

その頃、小松専務の部屋に、専属歌手の大林君を急に辞めさせるなんてどう言うことですか!と抗議しに来ていたのは、社員の三宅(逗子とんぼ)だった。

小松は、そんな尊大な三宅を逆に叱りつけていたが、そこにやって来た木原部長は、いきなり転んでみせたので、場がしらけ、三宅は部署に戻ることにする。

そんな紀尾井町にある「ダイヤモンド・レコード社」にやって来たのは京子だったが、入口付近に松造が会社の方を見張っていたので、慌てて電柱の影に身を隠し、父の目を盗んで通用口から社内に入る。

ちょうどそこにいたのが三宅で、何の御用ですか?と聞いて来たので、京子はつい、並木五郎さん…、いえ、桜井光彦さんに会いに…と答えたので、三宅は、ああ社長ですかと分かり、社長室の場所を教えてやる。

しかし、京子が社長室へ向かうと、並木五郎?と、三宅は、たった今、京子が言い間違えた名前を気にする。

社長室で五郎に会った京子は、こんなこと止めてちょうだい!化けの皮が剥がれるのは時間の問題よ。お父さんが動き出したの。鶴野家の執事の人が頼みに来たのよ。お父さんはやくざ専門なのよと訴えるが、心配しなくても大丈夫だよと五郎が言うので、こんなに頼んでも?と京子が念を押すと、今は聞けないんだと五郎も頑固に言う。

京子は絶望し、社長室を飛び出して行く。

社長室の窓から外を見下ろした五郎は、松造と出会う京子の姿を見つける。

松造は娘が突然現れたので驚くが、偽者は社長室にいるわ、早く捕まえて!捕まえた方が五郎さんのためだわ!などとまくしたててくるので、捜査はゆっくり慎重にやるべきだ、徹底的にやるから…と落ち着かせようとするが、京子はそのまま走り去って行く。

それを窓から確認した五郎は、わざと玄関から出て行って車に乗って出かける。

電柱の影に身を隠していた松造は、タクシーを拾って五郎の車を尾行し始める。

車を降りた五郎は、町中を歩き始めたので、松造も懸命に後を付いて行くが、途中で五郎を見失ってしまう。

慌てて、周囲を探していた松造は、「カオール」のポスターを観ていた五郎らしき後ろ姿を見つけたので、安堵し、肩を叩いて振り返らせるが、その男は右頬に凄い傷を持つ全くの別人だった。

驚いた父がその場を逃げ、物陰に隠れた時に背中を叩いて来たのが、追っていたはずの五郎だった。

一杯行こうじゃありませんかと五郎から近くの屋台に誘われた松造は、好物の酒にありつけるのでありがたく付いて行く。

そんな松造に酒を注ぎながら、あなたは僕のお父さんになるんですよなどと馴れ馴れしく五郎が話しかけて来たので、わしは30年も刑事をやっているんだ。酒は好きだが、仕事とは別だからな!と意地を張る。

それでも、へべれけになって帰宅した松造は、先に家にいた京子に、会って来たぞ、五郎に。奴は気っ風が良くて可愛い奴で、しっかりした奴だななどと褒めるので、がっかりした京子は、もう買収させらのね…と嘆く。

酔った松造は、もう一杯!と京子に酒をねだる。

「エイプリル・フール」で横溝にビールを注いでやっていた小松専務は、作曲家の池田は?と聞かれ、辞めましたと笑いながら教える。

後は大森工場の売却だけだな…と横溝は呟く。

「ダイヤモンド・レコード社」を出て来た作曲家の池田(三国一朗)に、待ち構えていた新聞記者たちが駆け寄り、先生がお辞めになると、一緒に辞める歌手の人たちも多いんじゃないですか?と質問する。

それは個人の自由だからね〜、まあ中には僕の曲じゃなきゃ嫌だと言う人もいるでしょうね〜などと池田は笑って答える。

その後、美鳩ゆかりまで辞めました!と三宅が五郎の所に直談判に来たので、五郎は、レコードはビニールさえあればいつでも作れると言い訳する。

すると、急に三宅は嘲笑するような顔になり、芝居は辞めたらどうです?並木五郎さんと言い出したので、顔色が変わった五郎は、俺にアヤをつけようと言うのか!表で勝負してうある!といきり立つ。

近くの寺の境内で対決することにするが、対する三宅は余裕綽々の表情で、僕はこう見えても大学時代はボクシングをやってまして、4人をカ○ワにしました。

親父も空手をやっており、合気道も出来ます。やっぱり止めときましょう、やくざは刃物がないと喧嘩できないと言いますからと挑発して来る。

頭に来た五郎は、三宅に殴り掛かるが、本当に三宅は強く、忍者のように鐘突き堂にジャンプして飛び乗ったりする。

その後を追った五郎も、三宅の頭を鐘と鐘つき棒の間に入れ、棒で叩き潰そうとするが、三宅の空手チョップで逆にやられてしまう。

結局、互いに強いことが分かり、両者は地面に大の字に寝たまま意気投合する。

五郎は三宅の口から、小松専務の会社乗っ取りに自分が利用されていたことを聞かされる。

今は、大森の工場まで売ろうとしていると知った五郎は悔しがるが、三宅は、あなたは今まで通り、社長になっていれば良いんです。今後は僕があなたを利用するんですと言う。

その後、いつもの通り、大量の書類を持って来て、五郎にメクラ判を押させようとした小松専務だったが、五郎がハンコを押そうとしないので、お前に英語の書類が分かるのか?とバカにして来る。

大森の工場をイミテーション・レコードに売ろうとして言うくらいは分かるよと五郎が答えると、言うことを聞かんと、ボスに言いつけて痛い目に遭わすぞ!と小松専務は書類を押し付けて来る。

すると、五郎が押したのは「否決」のハンコだった。

「エイプリル・フール」の悪津に会いに行った小松は、相手のおでこにたんこぶを作るくらい殴りつけ文句を言う。

悪津は、今度入ったのは見込みがありますなどというので、今更交換など出来んだろう!と小松はいら立ち、五郎を脅して言うことを聞かせろ!そうしないと、お前の所は金づるをなくすことになるぞ!と脅す。

根性を叩き直してやる!と意気込み、五郎の社長室に支配人と共に乗り込んだ悪津だったが、支配人がハジキをちらつかせると、今こいつを殺す訳いかないからな〜…と自分たちが不利な状況にいることに気づく。

そんな悪津に、僕と手を組みませんか?金は出すよと誘うと、悪津は態度を豹変させる。

その後、小松の部屋にやって来た五郎は札束を見せる。

それを観た小松は、詫びに来たか?とあざ笑うが、五郎は持っていた札束で小松の頬を叩くと、気持ちばかりの餞別だ。君は首だよ!と言い渡す。

そこにやって来た悪津も、小松さん、人間、往生際が大切ですよ。人間、少しでもギャラが高い方が徳だからね…と寝返ったことを打ち明ける。

「ダイヤモンド・レコード社」を首になった小松は、木原を連れ、「イミテーション・レコード」のヨコミゾに会いに行くと、こうなったら、タレントを片っ端から引っこ抜きましょうと提案する。

すると横溝は、僕たちだけでピックアップ出来ます。あなたには餞別あげたいけど、アメリカにはそう言う習慣がありませんし、我が社にはあなた方が座る椅子はもうありませんと冷たく言い聞かす。

その頃、五郎の前にやって来た所属歌手や作曲家たちは一斉に辞表を出し止めてしまう。

全員、「イミテーション・レコード」に引き抜かれてしまったのだ。

工場の行員たちもいなくなり、今や会社に残った社員は三宅だけだった。

五郎は、SOSTVで時代劇を撮っていた宮田に、会社に戻るように説得しに行くが、宮田は、イミテーション・レコードに行くと言って聞かなかった。

他の歌手たちや作曲たちも、何とか復帰してくれるよう足を向け説得した五郎だったが、誰1人相手にしてくれなかった。

鶴田家の屋敷に帰った五郎を出迎えた恵美は、お嬢さん、実は僕…と正体を明かそうとする五郎に、三宅さんから何もかも聞きました。あなたの気持ちは分からなくもないけど、今ここで打ち明けたら、パパがダメになるわ。あんまり申告に考えないで、血のつながり何て言っても、みんな偶然なせる技であって、関係ないわよ。会社を立て直して、ねえ、お兄さん!と言い聞かす。

それを聞いた五郎は思わず泣いてしまう。

翌日も、作曲家の大林(宮川敏彦)に会いに行き、ギャラを前の3倍にしますとまで説得するが、大林は黙って車に乗り込み去ってしまう。

そんな五郎の所にやって来た京子は、まだ懲りないの?自首して!あなたがやっていることはいけないことなのよと説得して来る。

それでも五郎は、今が一番大事な時なんだ。僕の意地なんだよ。やり遂げないと男じゃないなどと体面を気にするので、思わずビンタした京子は去って行く。

夜の10時、社長室にいたのは五郎と三宅だけだった。

五郎はヤケになり、一緒に飲みに行こうかと誘いながら、机の引き出しを開けかけるが、その時、中にあったものを観て、一か八かやってみるか…、世の中既製品ばかりじゃ面白くない。育てれば良いんだ!三宅君、飲むのはやめだ。今から録音の準備をしてくれ。東京ドドンパ娘だ!と五郎は、引き出しの中から取り出した楽譜を持って言う。

1961年のリズム誕生!新聞に宣伝が大きく載り、レコード化されたマリの歌は飛ぶように売れて行く。

人気はうなぎ上りで、レコードはたちまち50万枚突破の大ヒットとなる。

その記念パーティが、鶴野邸で行われることになり、渡井マリは、車椅子の鶴野から花束を受け取る。

その屋敷に、大嘘つきの片棒を担いでまで良い目を観たいの!と抵抗する京子を無理矢理引っ張って連れて来たのは彼女の松造だった。

来客たちを前に、鶴野は、今回の大ヒットを機会に成績に自分は引退し、会社の実権を全て息子に譲り、社長になってもらうと宣言する。

社長就任の上人は株式総会に計るとして、この場で持ち株の譲渡を行おうと思うと言うと、株券を五郎に差し出すが、それを押し返した五郎は、社長、申し訳ありません!僕は社長の息子でもなんでもありません。並木五郎というケチなチンピラです。正真正銘の偽者です!と打ち明ける。

三宅君の働きで会社が立ち直ったのがせめてものお詫びです!と言い、部屋を出ようとした五郎は、そこに松造に無理矢理連れて来られた京子がいたので笑いかける。

京子と二人で部屋を後にしようとした五郎に、待ちたまえ!と鶴野が声をかける。

行かんでも良い。君は正真正銘のわしの息子なんだ。わしが、何の証拠もなしにお前を息子と認める訳がないと言うので、痣でしたら、あれも偽物ですと五郎は打ち明ける。

分かっとる、そんなことではなく、お前は「麻雀パイ」を身につけてるだろう?それには「千萬」と書かれておるはずじゃ。

わしの名は鶴野亀三郎!鶴は千年、亀は萬年…つまり「千萬」はわしのことなんだ。

松造さんが調べてくれた…と鶴野が言うと、君の戸籍だよと松造が持って来た書類を五郎に見せる。

分かったら戻りなさいと諭した鶴野は、光彦にはかねてから意中の人がいたようだ。京まで2人の間には色々いきさつがあったようだが、彼女も正式に鶴野家に迎える事にしたと言い出したので、京子も唖然とする。

マリが楽団の前に行き、自分が指揮して「ウェディングマーチ」を奏で出す。

そして、階段に登ったマリは、「東京ドドンパ娘」を歌い始めるのだった。

鶴野はさすがに顔をしかめるが、他の客たちは一斉にダンスを始める。

恵美は母親と、五郎と京子、松造は三宅と組んで踊り続ける。

マリが歌い終わると、ホールにいた客たちが一斉に拍手をするのだった。


 

 

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