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踊る龍宮城

一応、松竹歌劇団総出演のプロモーション音楽映画だと思うが、ファンタジー特撮映画でもある。

松竹作品なので特撮担当は川上景司さん。

最初に出て来る松竹の会社クレジットも富士山ではなく、廻る地球の特撮なのが珍しい。

内容的には、「浦島太郎」というよりは「カッパの三平」に近く、カッパの子供として、お嬢美空ひばりさんが歌っている。(ひばりさんの芝居は特になし)

竜宮城は冒頭に出てくるだけだが、絵合成やミニチュアはかなり良くできている。

ミニチュアの竜宮城の門をカメラがくぐり抜けたりするショットがある。

又、カメラ前に水槽を置いて、魚が泳ぐ向こうに竜宮城の絵を見せたりと言った工夫が見られる。

さらって来たアン子に水中ショーを見せるシーンでは、おそらくカメラ前に透明ガラスを立て、そこに上から水を流して水のスクリーンのようにだぶらせている演出も面白い。

さらに注目すべきは、この作品には、ロボットやテレビ、テレビ電話のようなものが登場しており、カッパ国をSF風に描いているのも興味深い。

1949年の作品なので、まだテレビなど日本では実用化されてなかった時代である。

コメディリリーフ役として登場しているカメを演じているのは、「エノケンの孫悟空」の猪八戒などでもお馴染みデブキャラ岸井明さんで、タコを演じているのが何と「男はつらいよ」の初代おいちゃん役森川信さん!この時期の森川信さんは若い事もあって、動きにキレがあり抜群に面白い。

亀やタコの扮装は、今のような着ぐるみ式ではなく、肌襦袢のような衣装に、ハリボテの甲羅や、おそらく中に綿を詰めたタコの足を首からぶら下げていると言ったコントレベルのもので、森川信さんは、そのぶら下がった足の部分を自分で掴んで動かして笑いを取っている。

その他、登場しているのは、当時人気のあった歌手の人たちで、アン子役の並木路子さんは「リンゴの歌」で有名。

霧島昇さんなど、後年の「懐メロ番組」で拝見する印象と全く変わってないことに驚かされたりもする。

浦島太郎を演じている川路龍子さんは、当時、人気のあった男役の方らしいが、鼻筋が通りきれいな顔立ちの方である。

現代世界に舞い戻った浦島が最初に目にするのは水着姿の娘たちが砂スキーで降りて来るなどと言った、今観ても斬新な発想がいくつも詰め込まれているのだが、さすがに話のテンポは遅く、いくらファンタジーとは言え、河童が出現する際の地震や、かっぱらい一味の倉庫にテレビジョンがあったりと言った、かっぱらい団とカッパたちの繋がりなど説明不足な部分も多く、釈然としないまま話が進んで行く印象は否めない。

今の感覚で観て、ものすごく面白いと言った感じではないが、まだ日本中が貧しかった時代、楽しそうに歌ったり踊ったり、ご馳走が出てくるシーンがあったり…と言うだけで、当時の庶民にとっては夢の世界だったのかも知れない。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1949年、穂積純太郎原作、津路嘉郎脚本、佐々木康監督作品。

廻る地球の模型の上に「松竹映画」の文字の会社クレジット

タイトル

竜宮城の門の中を潜り抜けるカメラ

天女のような者たちの踊りを観ている乙姫(奈良光枝)と浦島太郎(川路龍子)

その会場にやって来たのは、太った亀(岸井明)と痩せたタコ(森川信)。

ホールの中央に置かれた大きな貝が開き、中からビーナスの誕生のように美女が出て来て、男性ダンサーと踊り出す。

ショーが終わると、タコが乙姫に玉手箱を手渡し、それを乙姫が浦島太郎に渡しながら、これは欲のない方だからこそ終わらし出来るものですと説明する。

亀がその玉手箱の鍵を渡す。

欲深いものの望みはきりがない。

欲のないあなたのような方の望みなら、1つだけ叶いますと乙姫は言う。

そして二人はお付きの物たちが団扇を交差させた後ろで、別れのキスをする。

それをにこやかに観ていた亀とタコは、他のものたちもにやにや観ていることに気づくと、回れ右!と号令をかけ、後ろ向きにするが、その号令で自分たちは又乙姫の方向に向いてしまったので恥ずかしさと嬉しさで照れる。

その後、竜宮城の前で乙姫たちが見送る中、亀に乗った浦島とタコは海上を泳ぎ浜辺にたどり着く。

そんな浦島、亀、タコの様子を近くの砂場に置かれていた小舟の影から目撃したのは、スリのサバ吉 (大坂志郎)とその相棒サヨリ(小月冴子)だった。

浜辺に着いた亀とタコは、浦島に釣り竿と玉手箱を改めて手渡し別れを告げるが、玉手箱を渡す時、これは銭金に代えられませんなどとタコが言っているのを聞いたサバ吉は、飯にありつけるぞとサヨリに囁きかける。

亀の甲らに乗ってタコと亀が帰って行った後、砂浜を歩き出した浦島が観たのは、水着姿の娘たちがスキーに乗って上から大勢滑って来る様子だった。

彼女たちは浦島の横を滑り降りて行くが、最後の1人が浦島とぶつかってしまう。

その時、浦島が持っていた布切れが、転んだ娘のブラジャーの後に挟まってしまい、その娘は他の娘たちと一緒に砂浜でラインダンスを踊り出す。

踊り終え立ち去る娘たちの中の、先ほど転んだ娘のブラからさりげなく布を取り戻す浦島。

「浦島祭り大博覧会」と言う看板が揚がる中、浜辺の町から浜辺のある島に続々と人が集まってくる。

ステージの中央に立った3人の男たちのうち、まずは町長の多井氏(日守新一)、次いで警察署長のマグロ氏(中村是好)、最後に博覧会委員長のフグ氏(小林十九二)が進みでて、この島を陸の竜宮城として世界中に売り出したいと挨拶する。

やがて、流行歌手(霧島昇)が歌い始め、損も周囲に集まった見物客は、ロボットがあることに気づく。

そのロボットの口から金を入れると、入れた人の上着の襟の所に瓶のマスコットバッジをつけてくれる仕掛けだった。

それを知ったある男が、口からゴミを投げ入れると、彼の顔に「インチキ」というハンコがロボットの右手で押され、左出に持った手鏡でそれを確認させるという悪戯防止機能付きだったので、男は慌てて頬を隠す。

ステージでは「浦島コンクール」が開かれており、何も気づかず通りかかった浦島太郎は、その出演者と間違われ、係員の誘導のままステージに出されてしまう。

そんな浦島の後を、サバ吉とサヨリがそっと後を付いてきていた。

訳も分からず、出演者たちが踊っているステージの中央に出された浦島は、音楽に合わせて踊ってみせる。

それを、多井、マグロ、フグの三氏ら審査員が採点し、入賞者は浦島と言うことになる。

司会者が、入賞者の絵看板を持って来て名を聞いて来たので、浦島太郎と答えるが、ご本名をと言うので、浦島が本名で、それ以外に名前はありません?と戸惑うと、マグロ氏らは、これは精神鑑定が必要ですな?などと怪しみ出す。

何よりの証拠はこれですと言い、その場で開けてみた玉手箱には、ひよこが1羽入っているだけだったので、キ○ガイ病院送りだ!と警察署長に言われてしまう。

その時、この方の言うのは本当かもしれないじゃないの、だって、まだ本物の浦島太郎に会った人はいないんだからと助け舟を出したのは、父親と一緒に審査員を務めていた町長の娘アン子(並木路子)だった。

署長さん、この方を捕まえるより、箱を盗んだ人を捕まえるべきですわとアン子は提案する。

その頃、サバ吉とサヨリが盗んで来た玉手箱を開けようとしていたスリグループの親方は、どんな鍵を使っても開かないので、鍵を盗んで来ない奴があるか!盗んで来なければ飯はなしだ!と怒鳴りつける。

その後、浜辺にやって来たサヨリは、お腹空いたろう?どうだい?とサバ吉が差し出して来たパンを観て、どうせかっぱらってきたんだろ?もう、こんな暮らし、嫌なんだよ!まともな女に戻りたいんだ。女なのにこんな男の恰好をさせられて!と嘆くので、2個パンをかっぱらって来たサバ吉も、俺1人じゃ喰えないよ…と言い出す。

だったら棄てなよとサヨリが言うと、俺だって、かっぱらったパンなんか喰いたくねえよ!と言い、2個のパンを海に放り投げようとするが、さすがに1個は、こっそりポケットの中に隠そうとする。

しかし、サヨリが観ていることに気づくと、そのパンも海に投げ込み、ああ、お魚が食べてる!と残念がる。

その時、カツ男さんの船が帰って来たよ!とサヨリが気づく。

島に近づいて来るクルーザー

その甲板にいた船員は、やっぱり故郷の海は良いな〜、半年振りだから、たんまり可愛がってあげなよと、隣にいたカツ男(曙ゆり)に言う。

船を降り、キャバレーにやって来たカツ男は、二階席で町長や博覧会委員長と共に飲んでいた警察署長の父親にただいま!と挨拶をする。

いつ帰ったんだ?とマグロ氏が聞くと、たった今、船の予定が変わって…と答えたカツ男は、アン子さんは?と聞く。

着替え中だよとマグロ氏は教え、今度こそ結婚して幸せになるんだねと町長もカツ男に声をかけるが、カツ男は、今風のスーツに着替え終わった浦島と仲睦まじそうに一緒にホールに出て来たアン子を観て愕然とする。

あの男は何ですか?とカツ男が聞くと、キ○ガイだよとマグロ氏は教えるが、面白くないカツ男は、1階のバーのカウンターで、1人酒を飲み始める。

それに気づいたアン子が近寄って来て、いつ帰ってらしたの?ご紹介するわ、浦島太郎さんと話しかけるが、そんな人を信用してるのかい?僕だって信用しないよと吐き捨てたカツ男は酒を飲む。

カツ男さん、あなた誤解なすっているわとアン子はなだめようとするが、カツ男の態度は変わらなかった。

ちょうどホールでは女性歌手が唄い終わった所だったので、線陰謀をカウンター席に置き立上がったカツ男は、その歌手の所に近寄り、アン子に当てつけるように踊り出す。

仕方がないので、アン子も浦島と踊り出し、ホール内では2組のカップルの踊りが競い合うように始まる。

その時、突如、自身でも起きたようにキャバレー内が大揺れする。

揺れが収まった後、町長たちの席にやって来たスーツ姿の男たちは、大量の札束を町長に渡し、男たちが閣下と呼ぶ1人の紳士(大辻司郎)が同席して来る。

その閣下は、あの娘の歌を聴きたいと言い出したので、アン子!お出でになられた方がお前の歌をご所望じゃ!と町長が2階席から声をかける。

アン子は、青い月夜に咲きました〜♪と歌い出すが、歌い終わると、二階席へ招かれる。

みんな、飲んで歌ってくれ!と閣下が言い、お付きの物たちが、二階席からホールに大量の金をばらまいたので、それを拾おうと、大勢のダンサーたちが集まって来る。

やがて、その踊子たちが全員で踊りを披露し始める。

閣下と呼ばれる男は、横の席に座っていたアン子の手に触れようとする。

恋人のアン子になかなか近づけないのでしょげているカツ男に、くよくよするなよと慰めた船員仲間は、ビール瓶を持ったままフロア内を歩き出すと歌い始める。

追加の酒を頼みたいが金がないので我慢している男のテーブルに来た船員は、その男のコップにビールを注いでやる。

ソーダ水を2本のストローで飲んでいたカップルの席に来た船員は、2人をからかう。

1人トランプ占いをしていた女の席に来た船員は、悪いカードを素早く良い運勢に並べかけてやったので、女からウィンクされる。

ホステスを膝の上に乗せて酒を飲んでいた老船員の席に来た船員は、老人の船員帽を取り上げ、はげ頭をさらけ出す。

落ち込んだカツ男の所にやって来たのは、スリのサヨリで、どうしたんですか?町中の女が憧れるあなたが、何を考え込んでいるのですと話しかけると、おい、踊ろう!と誘われたので、うん!と返事をして一緒にダンスを踊るが、その時涙を流す。

ごめんなさい、あんまり嬉しかったのでとサヨリが言うと、サヨリを男の子だと思い込んでいたカツ男は、君は純情な少年だな〜と呆れ、帰って行く。

あの〜とその後を追おうとしたサヨリに気づいたカツ男は、ああ、ごめんと言ってチップを手渡して行く。

その様子を外で観ていたサバ男が近づいて来たので、世の中皮肉だわ…と嘆いたサヨリは、今もらったチップを持ってバーに戻ると、ウィスキーを注文し、くいっと引っ掛けると、急に踊り出す。

ホール内にいた女性たちと次々に踊って行くサヨリ。

そんなサヨリに、雨が降って来たから帰ろうよとサバ男は声をかけるが、サヨリは言うことを聞かない。

その内、外は嵐になって来たから、今帰らないと帰れなくなっちゃうよとサバ男は案じるが、その時、キャバレー内は真っ暗になり、やがて、停電が直ったかのように場内は明るくなる。

その時、町長や警察署長は、アン子と閣下、その配下らしき男たちの姿が見えなくなったことに気づく。

知らせを受け店に駆けつけて来た警官2名が、最近、娘の誘拐が続出しおり、ひょっとしたら噂のカッパ団の仕業かもしれませんと説明する。

すると、町長たちの上に葉っぱが大量に落ちて来る。

カッパ王国の大将九千坊の姿に戻った閣下は、女はまだか?と手下のカッパたちに聞くと、お前らもくつろげと声をかける。

4人の配下は、「赤」「青」「白」「黒」の腹巻きをしたカッパの姿に戻り、椅子に座って踊りを一緒に見物し出す。

カッパ王の前の広間ではカッパたちがカッパブギウギを歌っていた。

そんな中、1人の子供カッパ(美空ひばり)が出て来て、一緒に歌い出す。

奥の部屋では、さらわれて来たアン子が、先に誘拐されていた女性たちから、あの人に狙われたら最後よ。あなたはニューフェースよ。可愛がってもらった方が得よなどと説得されていた。

渋々、九千坊の席の横にやって来たアン子に、九千坊は酒を勧めるが、アン子は飲めないと断る。

すると九千坊はテーブル上の片隅にスイッチを出し、それを押して、デコレーションケーキをアン子の前に出現させる。

しかし、アン子が無反応なので、遠慮なくこれをやってくれと言いながら、別のスイッチを押して、テーブル上、ご馳走だらけにすると、カッパの国の踊りを見せてやると言うと、又ボタンを押す。

すると、アンコの前に水が膜を作ったようになり、その奥には、水中で泳ぐ美女たちの姿が出現する。

しかし、やはりアン子が反応を見せないので、こりゃしたり?女子には女子は興味あるまい…と合点した九千坊は、男性ダンサーを舞台で踊らせる。

アンコは、そんな九千坊の趣向に全く興味を示さず、自分の横に置いてあったテレビジョンのようなもののスイッチを入れてみると、円形の画面に、どこか花畑で歌っている女性たちの様子が写る。

その花畑の上では、たくさんの女性たちは踊っている。

しかし、九千坊は、この機械が気に入ったのか?つまらん!と苛立たしそうにスイッチを切ってしまう。

そんなものより面白いものを見せてやる。何が良いのだ?そなたのためなら何でも言うことを聞いてやると九千坊が言うので、帰して下さい!私にはカツ男さんという許嫁がいるのです!と訴える。

九千坊は、そうと聞けば余計募るのが男心だなどと答える。

その頃、町のキャバレー内では、多井氏、マグロ氏、フグ氏の3人が、善後策を話し合っていた。

しかし、何の妙案も思いつかず、互いにイライラし合っている時、やって来たのが浦島太郎で、私の玉手箱を探して下さい。あの玉手箱さえあれば、みんなが幸せになれるのですと訴えるが、この急がしい時にキ○ガイの相手などできるか!と相手にされず、ホールからつまみ出されてしまう。

一方、浜辺にいた警官たちに、何か手掛かりは?と聞きに来たカツ男も、全く何の進展もないと知り落胆する。

その頃、カッパ王国に捕われていたアン子も、遠く離れて君想う〜♪と寂し気に歌を歌っていた。

橋を歩いていたカツ男に声をかけて来たのが浦島太郎だった。

あなただけは信じて下さい。私はキチガイじゃありません!玉手箱があれば、アン子さんが救えるのですと言いながら、鍵をポケットから出そうとするが、鍵がないことに宇和島は気づく。

それを観たカツ男は、やっぱり君は、人騒がせなキ○ガイだよと言い放ち、立ち去って行く。

がっかりした浦島太郎も、もうこれで何もかもお終いだ…と打ちひしがれ、その場を去って行く。

海岸にやって来た浦島は、乙姫からもらった布切れを取り出してみる。

そこには、懐かしい竜宮城の絵が描かれていた。

同じく、海岸にやって来たサバ男は、海の水に姿を移し、髪を解いていたサヨリを見つけると、やっぱり女だね〜等と言いながら抱きつこうとしたので、サヨリは、知らない!と怒って身を避ける。

すると、サバ男はつんのめり、水辺にそのまま落ちてしまう。

驚いた小百合が駆け寄り、大丈夫?と声をかけると、起き上がったサバ男は、口から小魚を吐き出す。

罰が当たったのよとサヨリが言うので、まだあの男のことを考えてるのかい?とカツ男のことをサバ男が聞くと、忘れろという方が無理だわとサヨリは答える。

でも、スリの娘と警察署長の息子だぜ…と指摘したサバ男は、どうだい?あの鍵だよと、浦島から掏り取って来た鍵を取り出して見せる。

これで親方の所に帰れる!と嬉しそうなサバ男だったが、サヨリの顔色を見ると、君と別れるのがつらいから、もうしないよ…としょげる。

鍵を帰しに行こうと岩場を戻りかけたサバ男は転び、右膝にケガをする。

その傷を手当てしてやるサヨリは、あの箱も返してあげましょうと言い出す。

親方の住処にやって来た2人だったが、幸いみんな出払っていて留守のようだった。

宝の隠し場所は本棚の後だと知っていたので、スイッチを探すと、額縁の下にあるボタンをサヨリが見つける。

それを押してみると、本棚が移動し、その奥に大きな倉庫が広がっていた。

恐る恐る中に入る込む2人だったが、意気地がなく帰りたがるサバ男は、男でしょう!とサヨリにハッパをかけられる。

一番奥の部屋まで行くと、そこに円形の画面が付いた不思議な機械のようなものがあり、側にあったタンスの扉をサヨリが開くと、何故かそのテレビジョンのスイッチが入り、女性たちにマッサージをしてもらっているカッパ王国の九千坊の姿が写る。

しかも、その九千坊の部屋の奥に、あの玉手箱が置いてあるではないか!

玉手箱は、いつの間にかカッパの九千坊に持って行かれていたのだった。

それを観たサヨリは、早く知らせるんだわ!と言うと外へ戻って行く。

カッパ王国では、いよいよアン子を嫁に出来ると思い込んだ九千坊が、飲めや歌えの大宴会を開くんだ!と命じていた。

そして、アン子の部屋に来ると、蛇を象った杖を取り出し、それを持ったまま、どうだ決心はついたか?とアン子に迫ろうとしたので、思わず九千坊の頬をビンタするアン子。

すると九千坊は杖をアン子にかざすと、アンコは黒い下着姿になったので、慌てて背中を向ける。

どうだ?まだ早いか?と聞いた九千坊は、すぐに元の白いドレス姿に戻してやる。

その頃、島の海岸でカツ男を探していたのはサヨリだったが、彼女が見つけたのは浦島太郎だった。

それで、その浦島を連れて、森の中のカッパ王国に通じる穴の場所にやって来たさよりは、カツ男を見つけて連れて来たサバ男と合流する。

ここです!入口は!とサバ男が教えると、道中、サバ男から真相を打ち明けられたカツ男は浦島に、疑ってすまなかったと詫び、恋のためなら火の中でも水の中でも入ってみせるよと言うと、浦島と一緒に穴の中に入って行く。

それを見送ったサヨリは、幸せなお嬢さんだわ…とアン子のことを羨むので、後に残ったサバ男が、僕も火の中でも水の中でも入ってみせるよと迫ると、止してちょうだい!そんなセリフ聞きたくないわ!とサヨリは拒否する。

地下の森の中に入り込んだ浦島太郎とカツ男は、そこで、子供のカッパが「カッパブギウギ」を歌っているのを発見。

浦島は何かを思いついたように、カツ男に耳打ちをする。

王宮の広間では、今日は九千坊様とアン子様のための無礼講じゃ!と家来がみんなに言い渡していた。

広間ではフラダンスが始まる。

河童の子の群れの中から1匹を手招きした浦島は、その子ガッパに手紙を手渡す。

子ガッパは、それを持って広間に行くと、九千坊に気づかれぬようテーブルの下をかい潜り、そっとアン子の足を触り、気づいたアン子に手紙を渡す。

それを開いて読んだアン子は一瞬嬉しそうな笑顔になるが、すぐに九千坊に気取られぬよう真顔に戻る。

やがて、舞踏会に、マスクをつけたカーボーイ姿の浦島太郎と、アラビアンナイトの王子のような扮装をしたカツ男がさりげなく入って来る。

すぐに2人の正体に気づいたアン子は、私、踊ります!と九千坊に断り立上がると、九千坊は、お前も踊るか?さもありなん。心置きなく踊ってくれと寛容に許す。

ホールの中にいたマスクの王子姿のカツ男とさりげなく近づいたアン子は踊りながら、人ごみに紛れ、そっとホールを抜け出す。

しかし、森の中に出た所で、「ガマ口」と腹掛けに書かれたカッパの見張りに見つかり、投げ縄を投げて来られる。

綱の引き合いになったカツ男は、思い切り綱を引いてガマ口を転ばせる。

すると、仲間のカッパが強壮剤と書かれて大きな瓶を取り出し、大量の錠剤を飲ませる。

元気になったがま口は起き上がると、そのまま逃げ出したアン子とカツ男を追いかけ、勢いが止まらないまま大きな石碑に正面衝突して、石碑を壊してしまう。

倒れたがま口は、近くの岩の表面を扉のように開くと、中に電話機が置いてあったので、それを使って九千坊に、女が逃げました!と報告する。

その電話はテレビ電話で、森の中を逃げるアン子とカツ男の様子が王宮内から見ることができた。

アン子とカツ男は、突如行く手に炎が上がったので、逆方向に逃げようとするが、そこには突如、断崖絶壁が出現し、進退窮まってしまう。

そこに九千坊たちが近づいて来る。

抱き合うカツ男とアン子を前に、身の程を知らぬ奴らだ。逃げられると思ったのか?と九千坊はあざ笑う。

その頃、王宮内に残っていた浦島は、捉えられていた女性たちに、玉手箱があればみんな助かるのですと説明していた。

そこへ、再び九千坊に掴まったアン子と王子姿のカツ男が連れて来られる。

九千坊は、アン子に冷たくされるほど想いが募って来たと言う。

その頃、掴まっていた女性たちは、浦島を助けようと、九千坊の部屋に通じる廊下に立っていた見張りのカッパたちを次々誘惑し、他の場所に連れ出していた。

見張りがいなくなった九千坊の部屋に入った浦島は、そこで玉手箱を発見するが、それを持ち帰ろうと触れた瞬間、感電する。

その様子もテレビ電話で確認した九千坊は、そやつを地下牢へ叩き込んでおけと部下に命じる。

アン子は、椅子に縛られてしまったカツ男を観ながら、柵のある部屋の庭先から哀し気に歌い出す。

その頃、地上の入口付近で待ち受けていたサヨリは、遅いわね…、心配だわ…と案じていた。

カツ男は、王宮の広場の真ん中で十字架に磔になっていた。

それを九千坊の隣に座って見物させられることになったアン子は耐えきれず、カツ男さん!と立上がろうとするが、九千坊がそれを押さえる。

どうじゃ?助けたいか?あいつを生かすも殺すも、お前次第…と九千坊は迫る。

やがて、浦島太郎も広間に連れて来られ、カツ男の隣に、同じように磔になる。

玉手箱が九千坊の前に置かれ、その鍵も子分がテーブルに投げて寄越したので、浦島太郎は、お嬢さん!その鍵で玉手箱を開けて下さい!と頼む。

どうだ!生かすか!殺すか!と迫る九千坊は、アン子が返事をしないので、面倒だ!火あぶりの刑に処せ!と命じる。

広間の十字架の前に火が燃え出し、大勢のカッパが踊り始る姿がプリズムのようにだぶって廻り出す。

助けて下さい!とアン子が頼むと、俺の言うことを聞くか!と迫る九千坊は、どんどん燃やせ!と言う。

その時、広間にやって来たのは、竜宮城の亀とタコだった。

2人は、十字架にかけられていた浦島とカツ男を助けると、亀がタコの足を井戸の取手のように上げ下げする。

すると、タコは口から水を吹き出し、火を消し止める。

九千坊は、そんなタコと亀の前に、巻寿司と酒を出現させる。

2人が喜んで飲み喰い始めた時、4人の家来が持っていたキュウリを拳銃に変身させる。

しかし、その拳銃は水鉄砲だった。

タコは、亀の背中と甲羅の間から塩の入った壷を取り出すと、その塩を4人の家来カッパの頭の皿に撒いて撃退する。

九千坊はボタンを押して、亀とタコの上に投網を落とすと、捕まえた2人を玩具の姿に変えてしまう。

どうだ、恐ろしいか!と九千坊は威張るが、そこに出現したのは竜宮城の乙姫だった。

同じ水の中の仲間ではないですかと諭しながら九千坊に近づいて来た乙姫だったが、俺は塩気が嫌いだと九千坊は答える。

すると乙姫も、私もこんな泥臭い水は嫌だわ…と言い返す。

九千年の知恵を持った俺様の力を見ろ!と九千坊は蛇を象った杖で魔法をかけようとするが、乙姫には利かない。

開き直った九千坊が鍵を使い、その場で玉手箱を開けると、白い煙が立ち上り、九千坊は白髪の爺さんカッパになってしまう。

気がつくと、家来カッパたちも、広場に出現した大きな箱に身体を閉じ込められ身動きできなくなっていた。

元の姿に戻っていたタコが、自分の足を持って、家来カッパたちの頭を叩いて行く。

これは一体どうしたと言うんです!と助けられた浦島太郎が乙姫に尋ねると、あなたにお渡しする玉手箱を間違えてしまったのですと言う。

6号と9号の玉手箱を、骨がないタコがうっかり見間違え、この6号の化身の箱を渡してしまったのだと言い、これが幸せの玉手箱ですと、新しく持って来た箱を浦島に手渡すと、亀に清めの塩を撒かせる。

カツ男、アン子と誘拐されていた娘たちを連れ、元の世界のキャバレーに戻って来た浦島太郎と乙姫たちは、出迎えた町長や警察署長らを前に、皆様はこの島を陸の竜宮城になさるそうですが、この玉手箱を差し上げます。皆様の願いが叶います。皆様、どうぞ!と、その場にいたものたちに願いを思い浮かべるように促すと、では参ります!と声をかける。

浦島太郎は、元の釣り竿を持って腰ミノをつけ、髷を結った元の姿に戻っていた。

アン子とカツ男、サヨリ、サバ男コンビは、それぞれ新郎新婦の恰好になっていた。

浦島太郎は、やっぱり私は竜宮城の方が向いてますと言い、ここも立派な竜宮城ですと乙姫が宣言する。

階段を降りて来た流行歌手が唄い出し、乙姫も歌い出す。

ホールに集まっていたタキシード姿の町民たちも一斉に歌い出す。

やがて、歌いながら、町民たちは外に出て、小舟に乗って竜宮城に帰る乙姫、浦島太郎、亀、タコたちを見送る。

浦島たちが乗った小舟の先の空には、大きな虹と竜宮城の姿が蜃気楼のように浮かんでいた。

 


 

 

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