白夜館

 

 

 

幻想館

 

神さまの言うとおり

コミック原作らしいが、原作は知らないので、以下、あくまでも映画としての感想。

冒頭は、不条理ドラマのような展開で、バラエティでお馴染みの「罰ゲーム」のような展開が続く。

退屈な世界に嫌悪感を持っており、偽悪趣味の自己中で、自分は優秀だとうぬぼれており、自分以外の他人は全部バカにしている…と言う、典型的な思春期青年の妄想のような世界なので、これはどうやら主人公の夢の世界であって、最後は夢落ちなんじゃないだろうな?などと推測していたが、物語は途中から、SFゲームっぽい展開になって行く。

SFと言うにはサイエンスが不足しているが、ゲームとしてはアイデアに満ち、無邪気な子供の伝統的な遊びと容赦のない殺戮と言うミスマッチ感が面白い。

主人公と同年輩の観客にとっては、生き残っているものたちへの共感と、サバイバルゲーム感覚にストレス発散出来るのではないか?

一見、テレビ局映画のような印象だが、実はこれ、東宝が幹事となって作っている映画で、ヒロイン役は東宝シンデレラ出身。

一時期の東宝自社作品と言えば、「ゴジラ」以外は、まじめなだけで面白みに欠ける文芸ものだったりして、興行的にはぱっとしなかった印象があるが、近年、少しずつ、若者向けの娯楽指向を強めたためか、ヒット作を生み出すようになって来ている。

客層は、高校生中心のように見えたが、見終わった後の会話を耳にした感じ、何となく面白がっている印象だった。

大人の私が観ても、ものすっごく面白い!と言うほどでもないが、安心して最後まで観ていられるのも、原作の力に加え、三池監督の安定した演出力のお陰かも知れない。

R15+指定指定になっているが、基本、それほどグロテスクな残酷表現はなく、あくまでも漫画的描写に押さえられている印象で、コミック原作の奇想ファンタジーと割り切って観れば、特に問題があるような描写はないと思う。

続編がありそうなエンディングなのだが、今現在の成績で観る感じ、続編を作るかどうかは微妙な感じがする。

主人公を演じている福士蒼汰さんは、キャラクターの性格から考えると、ちょっと見た目優し過ぎるのではないかと言う気もするが、女性ファンから観れば、応援したくなるキャラとしては、こういう優男タイプの方が良いのかも知れない。

そのライバルを演じている神木隆之介さんの方も、女子高生の受けは良かったようだ。

登場する巨大人形たちは、当然ながらCGIなのだが、びっくりするほどリアルで現実感がある…と言うほどではなく、動きも全体的に軽過ぎて、重量感のようなものは感じないが、かと言って、チャチ過ぎて正視出来ないと言うほどでもなく、まあ低予算なんだろうな…と思えば我慢出来るレベルではないかと思う。

ただし、クライマックスの城のセットなどは、東宝美術の仕事だと思うが、相変わらずしっかり作られている。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

2014年、「神さまの言うとおり」製作委員会、八津弘幸脚本、三池崇史監督作品。

白い羽が舞い落ちるイメージ

高校生たちの登校風景

神様…、僕の人生は退屈です…

そう心の中で呟いたのは、高校生の高畑瞬(福士蒼汰)だった。

お前、何のために生まれて来たの?

そう心の中で自問したのは、瞬と同じ高校に通う問題児、天谷武(神木隆之介)だった。

(都会の空撮をバックに)タイトル

「ダルマさんが転んだ!」そう呼びかけた声が終わると同時に、床に赤いビー玉が大量に転がり、教室内で女子高生が倒れる。

それは、瞬の教室での出来事だった。

何故か、教壇の上にダルマが置いてあり、黒板の方を向いたそのダルマ自身が「ダルマさんが転んだ!」と声を出し、クラス全員が立ったまま動きを停めていた。

「ダルマさんが転んだ!」とダルマが言い終わり、振り向いた瞬間、誰かが少しでも動くと、次の瞬間、その生徒の頭部は弾き飛び、切断面から大量後の代わりに真っ赤なビー玉が大量に床にこぼれると同時に、頭部を失ったその生徒はその場に倒れて行く。

正に「死のダルマさんが転んだ」だった。

その中に混じって動きを停めていた瞬は、心の中で、神様!僕の退屈を元に戻して下さい!と必死に願っていた。

他の生徒たちも、突然のこの不条理な状況に付いて行けず、足が吊っちゃう!などとパニクる男子もいた。

女子たちも、嫌!死にたくない!などと喚いていたが、そうした生徒たちは、次々に振り向いたダルマに動きを見つけられ、即死していた。

教室から逃げ出そうと戸を開けようとしても、何故か戸は堅く閉まったままだった。

何故、こんな不条理な状況になってしまったのか…

瞬は、同じ教室内で同じゲームのただ中にいた、メガネをかけたサタケとゲームソフト屋で出会った時の事を思い出していた。

その時、瞬は、ゲームを万引きしようとしていた所だったが、そのゲームはつまんねえぞ!と背後から声をかけて来たのがサタケだった。

そのに、監視カメラの死角になっている場所を教えてもらった瞬は、やる時は冷静にかつ大胆になどとサタケから万引きのコツまで教えてもらい、一緒に万引きをしたのだった。

(回想明け)あのダルマの背中に書いてあることを読め!

ダルマの背中には「押したらおわり」と書かれた文字が書いてあり、その下には大きなボタンがついていた。

つまり、そのボタンを押したら、この状況は終わりと言うことらしい。

任せろ!と男子の1人が言い、ダルマに近づこうとするが、それまで間延びしたようにゆっくり「ダ~ル~マ~さ~ん~が~」と言っていたダルマが、急に「転んだ!」と早く言い、素早く振り向いたので、ボタンを押そうと近寄りかけていた男子は勢いを止められず、そのまま頭が弾けてしまう。

どうやらダルマが「フェイント」を使ったようだった。

しかも。良くダルマの背中を見ると、そこにはタイマーが付いており、刻々と時間が減って行っている、

後1分17秒しかないと言うことらしかった。

サタケの方がダルマに近かったので、何とか背中のボタンを押そうと近づく。

その時、急に脱まが口から赤いビー玉を吐き出す。

もはや、教室内で生き残っていたのはサタケと瞬の2人だけだった。

もう、ダメだ!と瞬は呻き、その場にしゃがみ込んでしまうが、その時、サタケが、俺を踏み台にして死体を飛び越えろ!と言いながら、その場にしゃがみ込む。

瞬は、サタケに近づこうとするが、床に散らばった大量の赤いビー玉に足を取られ転びそうになる。

後24秒しかなかった。

運を天に任せて、瞬は四つん這いになっていたサタケの背中を踏み台にし、級友たちの死体を飛び越え大きくジャンプすると、ダルマの背中のボタンを押す。

タイマーは、残り1秒でストップする。

ピロリロリン♪ピロリロリン♪終了~!とダルマが言う。

思わず立上がったサタケはガッツポースをするが、その瞬間、彼の頭は破裂し、頭をなくしたサタケは中指を突き立てたポーズになってその場に倒れ込む。

スイッチ押したのは…、高畑瞬!生きる!とダルマが告げたので、1人生き残った瞬は、何だよ…、これ…と呆然となる。

(回想)自宅でソファに座りテレビゲームをしていた瞬は、母親から、もう物置の片付けやってくれたの?と声をかけられたので、ああ…と生返事を返すと、1ヶ月もその返事じゃないの…と呆れられる。

ゲームを止め、TVに切り替えると、どこかの国の自爆テロのニュースが流れていた。

反政府軍の犯行と観られていると言うことだった。

登校していた瞬は、背後からチャリでやって来た女子秋元いちか(山崎紘菜)に、お早う!瞬!と声をかけられるが無視する。

すると、後ろを歩いて来たサタケが、何で彼女と付き合わない訳?と聞かれる。

家が隣で、小さい頃から知っているし…と瞬がかったるそうに答えると、彼女もいつまでもいる訳じゃないよとサタケは忠告する。

そんなサタケと瞬は校舎内で、狂ったように数人の同級生を殴り倒していた天谷武の姿を見かける。

あいつ…、完全にイッてるね…とサタケが呟く。

西洋史の授業中、居眠りをしていた瞬を先生は呼び、はっとして目覚めた瞬に、諦めたように、もう寝てて良いから…と諭すが、次の瞬間、先生の頭は破裂し、大量の赤いビー玉が床に散らばったかと思うと、先生の頭はダルマになっており、体は倒れるが、ダルマの方は教台の上に乗り、「死のダルマさんが転んだ」ゲームを始めたのだった。

(回想明け)神様!僕の退屈を戻して下さい!

チュウ!チュウ!お前はネズミや。もうすぐ来るで!もうすぐ猫が来るで!とダルマ(声-トミーズ雅)は妙な大阪弁で言う。

その時、突然、今まで開かなかった後の戸が開き、瞬!と呼ばれたので振り向くと、そこには朝、声をかけて来た秋元いちかだった。

彼女の制服にも血が付いている所から観ると、どうやら彼女のクラスでも「死のダルマさんが転んだゲーム」があったらしい。

廊下に出た瞬に、良かった…、生きてて…、私、みんなを助けようと思って…、一番近くにいた私がスイッチを押したの…、私のせいで…といちかが哀しむので、俺も同じだ!俺もサタケを…と悔む。

警察に知らせなくちゃ!と思いつき、スマホを取り出した瞬だったが、何故か「圏外」になっていた。

チュウ!お前らネズミや!もうすぐ猫が来るで~と、又妙な大阪弁のダルマが前の戸から顔を出し2人に告げる。

後者から出ようとした瞬といちかだったが、何故か、入口の戸は開かず、ガラス窓を破ろうと、瞬が消化器を投げつけてもびくともしなかった。

どうやら2人とも、校舎から出られないようだった。

仕方なく、体育館に行きドアを開けて中を覗き込むと、そこには自分たち2人以外にも助かった生徒たちが集まっていた。

少し安堵し2人が中に入ると、その途端、ドアは閉まり、慌てて開けようとしてもびくともしなかった。

無駄だよ、一度中に入ったら出られない…と、中にいた先客たちが教えてくれた。

改めて体育館の内部を観察してみると、床に「ネコに鈴 つけたなら おわり」と大きく白文字が書いてあった。

一緒にそれを読んだいちかは、どう言うこと?と瞬に問いかけるが、瞬にも訳が分からなかった。

その時、生徒会長が、さあ早く、君らも着替えないと…。逆らうと何が起こるか分からない…と言いながら、ネズミの衣装を差し出して来る。

確かに、床には人数分のネズミの衣装が置いてあり、着替えるよう文字が床に書いてあった。

その時、地震の要の体育館が揺れ始めたかと思うと、床の舞台近くの部分が突然開きだし、その下から、巨大な招き猫人形が浮上して来る。

やがて、「ネコ踏んじゃった」のメロディが流れ出したかと思うと、巨大招き猫は急に動き出し、ネズミの衣装を着ていた生徒たちを食べ始める。

首の部分がバネ仕掛けになっており、巨大ネコの頭が伸びて、慌てて逃げ惑う生徒たちをくわえているのだった。

そんな中、いちかの足下に、大きな鈴が転がって来る。

観ると、巨大招き猫の咽の所にバスケットのゴールが付いており、鈴に付いたタイマーは後3分ちょっとを示していた。

みんな!この鈴をあの中に入れれば良いのよ!といちかが気づき、声をかけると、女子が、秋元!パス!と返事して来る。

そんな中、吉川晴彦と言う、毎日500本のシュートを自分に課し、爪をはがしたことも30回以上になると言うバスケ部の生徒が、なぜ今までこんな辛いことをやって来たか、今ようやく分かった!この瞬間のためだったんだ!と叫びながら、100%の自信を持って、受け取った鈴を、招き猫の咽元に付いたバスケットゴールに投ずる。

鈴はまっすぐゴールに向かって円弧を描き、確実に入るかと思われた次の瞬間、招き猫の両手が動き、その鈴をゴール前でキャッチしてしまう。

吉川は唖然としたように、手、動くのかよ…と呟くが、招き猫はその吉川目がけて鈴を猛スピードで投げ返したので、吉川の体は壁に激突して押しつぶされる。

「死の壁ドン」だった。

みんな!着ぐるみを脱げ!奴は着ぐるみを着てない奴は狙わない!と瞬が気づいて叫ぶ。

どうやらそれが正しいらしいことに気づいた全員は、慌ててネズミの衣装を脱ぎだす。

確かに、全員ネズミの衣装を脱ぐと、一旦招き猫の動きは停まったが、すぐに来ていない生徒たちを食べ始める。

瞬は、ネズミが一匹もいなくなると、仕方がないから人間を食べるようになったんだ!と気づく。

タイマーは後3分しかなく、時間がなかった。

いちかがネコに喰われそうになったとき、チュウ!と声がしたので、ネコはそちらを向く。

瞬が囮役として、自らネズミの衣装を着ていたのだった。

こっちだ!とネズミになった瞬がネコを誘い、誰かシュートしてくれ!と呼びかける。

その時、「かいーの!背中がかいーの!痒くて眠れないわ!」と招き猫が女性の声(前田敦子)でしゃべりだす。

しかし、他の生徒にはその声は聞こえてない様子だった。

俺にしか聞こえてない?やっぱりそうか!この着ぐるみを着るとこいつの声が分かるようになるんだ!と瞬は気づき、巨大招き猫の背中によじ上り、首輪用の紐に掴まって背中をかき始める。

もっと!もっと掻いて!とネコは猫なで声で言うので、みんな!助けてくれ!手伝ってくれ!と瞬は他の生徒に声をかける。

鈴に付いたタイマーは、後2分を切っていた。

ネコの声が聞こえてない他の生徒たちは意味が分からず、動こうとしなかったが、そんな中、いちかが勇敢にもネコの背中を上って、しゅんと同じように首輪用の紐を掴んで巨大招き猫の背中をかき始める。

すると、それに追随する生徒も数名現れ、背中をかかれた招き猫は気持ち良さそうに眠りだす。

作戦は成功したかに思えたが、その時、ダルマの時のように、シュートした奴だけが生き残れるのだとしたら?と誰かが言い出したので、鈴の奪い合いが始まる。

眠っていた招き猫の耳がぴくんと動き、生徒たちの騒ぎで、眠っていた招き猫が眼を開いてしまう。

その時、生徒会長命令だ!と言って無理矢理鈴を奪い取ろうとしていた生徒会長だったが、目覚めた招き猫は、急に伸びた手の爪で、生徒会長ら2人を斬り裂いてしまう。

もう1度眠らせなきゃ!といちかは焦るが、もう無理だ!時間がない!と瞬が叫ぶ。

しかし、瞬はその時、床に落ちていた割れてへしゃげたバスケットボールを発見、それを拾い上げた瞬は、いちかその鈴持って来いと叫び、自分は体育用具室に駆け込む。

残った生徒たちは、瞬といちかが逃げ出したと思い込んだようだったが、瞬は、用具室の中にあったバッグの中に鈴を詰め込んでいた。

用具室を出て来た瞬といちかは、それぞれ同じバッグをぶら下げていた。

どちらも同じように膨らんでおり、鈴がどっちに入っているか見た目だけでは判断出来なかった。

確立は50%だ!どっちが鈴か当ててみろ!と招き猫に呼びかけた瞬は、ネコに近づく。

その時、招き猫は、きちんと閉まっていなかった瞬のバッグの口からバスケットボールがのぞいていることに気づき、思わずほくそ笑む。

瞬といちかは同時にバッグを招き猫の喉元のバスケットゴール目がけて投ずるが、招き猫は余裕で、いちかが投げたバッグの方を弾き飛ばす。

しかし、弾かれたバッグからこぼれ出たのは真新しいバスケットボールだった。

本物はこっちだ!と瞬が叫んだので、招き猫と同じように、さっきバレてしまったと思い込んでいた生徒たちは、それがフェイントだったことを知る。

瞬のバッグの中の破れたバスケットボールの皮の下から飛び出した鈴は、ゴールに入ろうとするが、金具に弾かれてこぼれてしまう。

瞬は絶望するが、そのこぼれた鈴を掴んだのは、いつの間にか招き猫の背中に上っていた天谷武だった。

次の瞬間、首輪の紐に掴まった天谷は、受け止めた鈴をゴールにダンクシュートする。

ピロリロリン!ピロリロリン!終了~!と招き猫が宣言し、瞬は思わず、やった~!と叫ぶ。

今回生き残ったのは、天谷武、高畑瞬、秋元いちか、以上3名、生きる!と招き猫は言い渡す。

その直後、瞬は、天谷が生き残っていた生徒たちを、どこで見つけたのか剣のようなもので串刺しにしている姿を目撃する。

これは紙がおこした運命だ!力があるものが生き残り、力がないものは死に絶える。力が全て!ありがとう、神様!感謝します!無能な奴らは死んで当たり前だ!そう思うだろ?高畑瞬!お前も俺と同類だ。同じ匂いで分かる。死を身近に感じることでしか生きがいを感じない…。お前は今も世界を望んでいたんだ!俺と同じだ!と言いながら、天谷は、いつの間に撮っていたのか、瞬の顔が写っている写真をスマホで見せつける。

違う!高畑君はあんたなんかと全然違う!強くて優しくて…、あなたと同じじゃないから!と口を出して来たのはいちかだった。

あっ?そう…と天谷は軽く受け流す。

その時、巨大招き猫は、霧のようなものを発生し始める。

TVでは、同時多発テロが起こったニュースを流していた。

世界中で既に1000万人以上の死亡したらしいなどととんでもない情報が流れていた。

安倍川首相は国家危機レベル4を発動!

東京上空に巨大な白いキューブ状の物体が飛来し、それを地上からレポートしていた石波と言う女性キャスターは、あの立方体の中に多くの若者が閉じ込められていると言われていると発言していた。

自衛隊が出動する中、巨大なキューブは、東京タワー上空で静止。

下には大量の野次馬と、パトカーが何台も集結していた。

ホームレスのグループの中で、ラジオニュースを聞いていた1人は、大事な所でラジカセの調子が悪くなったので、いら立ちながらラジカセを叩いたりしていたが、そこに通りかかった1人のホームレス(リリー・フランキー)が軽く叩くと、あっという間にラジオ放送は元通りになる。

TVに出演した奥平忠勝(佐藤佐吉)なる風変わりな評論家は、これはテロなんかじゃありません!宇宙人の侵略とかのレベルと同じようなことが起こっていますと発言し、司会者を慌てさせていた。

ネットでは、生き残った子供たちを「神の子」として敬う風潮が生まれていると言う。

ある家では、タクミ(大森南朋)と呼ばれる引きこもりに、母親(池谷のぶえ)が食事を運んで来ていたが、いつものように、二階の部屋の中に呼びかけても返事はなかった。

タクミは、少女アニメが流れている部屋の中で、パソコンでネットに流れていた「神の子きた~」とかの書き込みを凝視していた。

大丈夫?高畑君…と呼び起こされた瞬は、いつの間にか白い服を着せられており、見知らぬ部屋の中で気がつく。

呼びかけていたのは、以前、中学で一緒だったことがある高瀬翔子(優希美青)と言う女の子だった。

翔子は、気づいたら個々にいたの、私、中2の時転校したから、3年振りかな?これって一体、何が起きてるの?と聞いて来るが、瞬も戸惑っていることに気づくと、無事で良かったねと笑顔で伝える。

うん…、高瀬君にも会えたし…と瞬も笑顔を取り戻すが、その時、少し静かにしてもらえないかな?と注意する声がしたので、そちらに目をやると、パソコンで何やら難しそうな計算をしている青年がいた。

平良幹則(山本涼介)さん、そっちにいるのは 田岡由実(萩原みのり)さん…と、翔子が瞬に、部屋の隅に踞っていたもう1人の少女の名を教える。

田岡、高瀬、高畑、平…、もしかしてこの部屋って50音順で入れられているのでは?と瞬は気づくと、「あ」の部屋にいるはずの秋元いちかを探しに行こうとドアを開けようとするが、鍵がかかっていて開かない。

そんな瞬に、見苦しい真似は止めなよと声をかけた平は、何かのスイッチを入れると、空間にニュースを報道しているテレビ映像が浮かび上がる。

誰も助けに来ない…、今の自衛隊には僕たちを助けるスキルはない。待つのさ、次のゲームが始まるのを…、あって欲しいんだよね、バカが駆逐されるのがたまらない!神の子…、悪くないね…などと嬉しそうに呟く平も、まともではなさそうだった。

その時、空間に映し出されていたモニター画面に「カギで開けたら おわり」と言う文字が出て来る。

そして、ドアをノックする音がしたので、中にいた4人が入口に目をやると、ドアが開いて、「遊ぼ!」と言いながら入って来たのは、「あけみ」「けんいち」「はなこ」「たろう」と夫々の名前が書かれた4体の巨大なこけし人形だった。

最初にこけしが遊ぼ!と指名したのは平だった。

「かごめかごめ」しましょ!ずるはなし!とこけしから誘われた平は、愉快そうに同意し、目隠しをして部屋の中央に立つ。

すると、4つのこけしは、「かごめかごめ♪」を歌いながら廻りだす。

平は、歌い終わった時、背後にいるこけしを推理しようと考え込み、「あけみだ!」と答えるが、はなこでした!バイバ~イ!と言ったはなこは、目隠しを取ってそれを確認した平の額目がけ、レーザーのような光を浴びせる。

すると、平は自分の意志がなくなったように自分で自分の額を壁に打ち付け死亡する。

続いてこけしたちは、田岡由実に遊びましょう!と声をかけるが、怯えていた由美は、遊びたくない…と言い出したので、こけしたちは露骨に不機嫌そうになる。

まずい空気になったと察したのか、すぐに態度を変え、無理矢理やる気を見せた由美は、平と同じように目隠しをし、「かごめかごめ」を始めるが、後にいるこけしを答えることができなかった。

すると、ブーッ!時間切れ~!と言いながら、背後にいたはなこが眼からレーザーを出す。

すると、由美の意志とは無関係に、足が上下に開いて床に腰を落とす恰好になり、その開いた両足が反対方向に引っ張られて、由美は生きたまま両足を前後に引き裂かれる。

悲惨な状況を観てしまった瞬だったが、次に声をかけられたのが高瀬だったので、思わず、俺が先に遊んでやるよ!と言い出す。

すると、こけしたちは、良いね!アホだ!などと口々に言い始める。

目隠しをした瞬は、心の中で、聞き分けろ!と自分に言い聞かせていた。

「かごめかごめ」を歌いながら廻っている4体のこけしの声を聞き分けろと言うことだった。

しかし、歌い終わった時背後に浮いていたこけしは、急に姿が変わる。

瞬は名前をなかなか決めかねていたが、その時、ブーッ!時間切れ~!と言うはなこの声が聞こえたので、瞬は慌てて、けんいち!後はけんいちだ!と答える。

時間切れじゃん!と指摘したあけみに、ぎりぎりセーフ!と瞬は言い、持っていたスマホを取り出し、田岡さんの時、録音しといたんだ。これを使って、その声に騙されててついしゃべったアケミの声をヒントに、後のけんいちを推理したんだ!アホはお前だ!と説明する。

すると、アホ呼ばわりされたアケミは倒れ、こけしの下半身部分が大きな鍵の形になる。

高畑君、良かった!助けてくれてありがとう!と言いながら、翔子が思わず瞬に抱きついて来る。

アケミの鍵を使ってドアを開け廊下に出てみると、奥の方から、妙な形のこけしに追いかけられた男子が助けてくれ!と言いながら瞬に飛びついて来る。

その男子と瞬と翔子が手を繋ぐと、空中を飛んで迫って来ていた「えんがちょ」人形は急にストップし、お前ら仲間か?良いな~…、チェッ!と言いながらその場から去って行く。

助かった…、誰かと手を繋いでないと、あいつが襲って来るんだ…と、今来た男子が説明したので、高畑君、手を離さないでねと翔子は瞬に訴えて来る。

その翔子の首元を観た瞬は、ネックレスのように彼女が首から下げているものが、壊れたコーヒーカップの取っ手の部分だと気づき、翔子と出会った時の事を思い出す。

(回想)中学時代、苛めを受けていた翔子は、ノートに酷い落書きをされたことでショックを受け、校舎の屋上から身投げしようとしていた。

その時、側で何かが割れる音がしたので振り向くと、瞬が箱に入れて持って来たコップなどガラクタの類いを壁に投げつけて割っていた。

瞬の方も翔子に気づいたのか、やる?とコップを見せると、翔子は黙って受け取り、壁にぶつけて割る。

すっきりするだろう?と瞬に言われた翔子は、泣き笑いのような表情になる。

(回想明け)翔子の首にかかっていたのは、その時割ったコーヒーカップの取っ手だったのだ。

その時、悲鳴が聞こえて来たので、行こう!と瞬はその声の方へ向かおうとするが、逃げて来たのはいちかだった。

やはり、えんがちょ人形に追いかけられていたが、途中で転んでしまったので、瞬は、それまで繋いでいた翔子の手を離して倒れていたいちかに向かってジャンプして手を取る。

ちっ!さびしいよ…と言いながら、えんがちょ人形は飛び去って行く。

良かった、間に合って…、天谷は?と言いながら立上がった瞬に、分からない、こけしを倒して1人で鍵持って出て行っちゃったから…といちかは答えるが、その時、翔子がいるのに気づく。

翔子は、瞬と手が離れたので寂し気だった。

その時、突如、通路の横の壁を突き崩し、巨大な人形の顔が出現する。

鍵!7つの鍵を7人同時に廻してね!と人形は言うが、そこには、近づいて来た2人を合わせても6人しかおらず、鍵は3つしか手元になかった。

しかも、巨大な人形の顔にはタイマーが付いており、残り時間は2分しかなかった。

どっか探すしかない!と瞬は焦るが、今から鍵を3つ集めるなんて無理だよと他の男子は諦めムード。

その時、3つの鍵を、瞬たちの足下に放り投げて来たのは、知らない男子を掴んでやって来た天谷だった。

鍵は集まったけど、人間が1人多い!と誰かが言うと、問題ない…と言いながら、天谷が捕まえていた男子の首をひねって、その場で殺してしまう。

こけしに狙われないためだけに、一緒にいただけだ…と冷たく言い放った天谷に、唖然とした男子たちはこんな狂った奴と一緒なんて…と怯える。

しかし、天谷の方は、俺たち仲間だよな?とにやつきながら勝手に合流し、時間がないので、全員仕方なく、人形の額に付いていた7つの鍵穴に全員が鍵を1人ずつ差し込み、せーので一斉に廻す。

12秒前で、終了~!となる。

ここでは7名が生き残った。

私服に着替えて下さいと巨大顔が言うので、周囲を見回すと、そこには、銭湯の衣装籠に入れられた各人の私服がいつの間にか用意されていた。

全員が着替え終わった時、壁から突き出ていた巨大人形顔が引っ込み、その後にトンネルのような穴が出来る。

お出で~!お出で~!と人形の顔が奥から呼びかけて来たので、全員仕方なくそのトンネルの中に入って行く。

その頃、下界の渋谷の交差点の巨大モニターには、失踪した瞬の顔などが映し出され、神の子!などと集まった群衆が浮かれていた。

そんな中、TVに出演していた奇妙な髪型の評論家と、不思議な力を持ったホームレスが互いに気づく様子もなくすれ違う。

(巨大キューブの中)ここ、どこ?銭湯?と、7人が巨大な空間に戸惑っていると、突然、スケボーに乗った巨大なシロクマ人形が出現、くわえていた木彫りの鮭を吐き出して着地する。

ど~も~!アイスが好きです。純白が大好きで~す!とおどけた挨拶をする巨大シロクマ。

床に落ちた木彫りの鮭も生きているかのようにはねている。

腹黒いことは大嫌い!本当のことを言ったら、終わり~!質問に全員が答え、全員が本当のことを言ったら終了!噓を言ったら、1人ずつ生け贄を出してもらうことにする!と言い出したシロクマは、質問!あなたの好きな食べ物は何ですか?と7人に問いかける。

その質問を聞いた7人は、簡単だと思い、寿司、ラーメン、肉、パセリ、カレー、オムライス、ミルクレープなどと答える。

しばし、その答えを吟味していたシロクマは、怒りの形相も露に、噓ついたな!噓ついてる奴を2分以内に探し出せ!と言う。

それを聞いた7人は驚き、誰が噓をついたんだ?と互いに疑心暗鬼になり、腹の探り合いを始める。

床ではねていた鮭の木彫り人形が、残り時間を言っていた。

やがて、パセリと言った奴が怪しいと言うことになる。

肉と答えた天谷も、含み笑いを押し殺すように、じゃあ、そう言うことで…と、パセリ犯人説を容認する。

パセリと言った生徒は、パセリが好きなんだ!と冤罪を叫びながら、巨大シロクマが振り下ろしたげんこつで床に押しつぶされる。

噓つくと、こうなちゃいますからね~、気をつけてね~とシロクマは忠告する。

次の質問は、あなたは高畑瞬君のことが好きですか?と言う意表をついたものだった。

男子たちは全員、好きだと答えるが、女子はどうかな?とシロクマに聞かれたいちかは戸惑い、幼なじみだし、どっちかと言うと好きかも…などと曖昧な答え方をしたので、聞いていた瞬は、そんな…、仕方ない感じで…と複雑な表情になる。

翔子は、私も好きですと答えたので、モテモテじゃん!とシロクマは瞬をからかい、で、自分はどうなの?と瞬自身に問いかける。

瞬は一瞬戸惑い、え?俺は…、ノー!自分のことを好きになったことない!と答える。

全員の答えを聞き終えたシロクマは、しばし考える振りをし、お前たち!又噓言ったな!嘘つきは誰だ!2分前!と怒りだす。

またもや7人は戸惑い、誰だよ!いい加減にしろよ!と切れだす。

もしかして、あなた…、私たちを殺そうとしたのに、瞬のことが好きだなんて…、おかしくない?といちかが天谷を観る。

すると天谷は、殺すことと愛することは同じでしょう?と天谷は平然と答える。

自分のこと、嫌いなんて言う人いるのかな?と、今度は瞬に疑いの眼が向けられる。

そうした中、瞬は、やっぱりおかしい…と呟く。

そもそも、正直に言えば助かるのに、誰が何のために噓をつくんだ?と、このゲームの矛盾点を突く。

それは、僕たちの仲間がこの中にいるからだよとシロクマが答える。

こいつらの中の1人があいつらの仲間?瞬は驚く。

天谷は相変わらず、にやつきながら、今も状況を楽しんでいるようだった。

1分前!と木彫りの鮭が言う。

その時、僕と奥君は大天童高校、君たちは美空高校だろ?だったら、敵の仲間は…と前田小太郎(高橋直人)が言いだし、1人だけ高校が違う翔子の方を観る。

罠じゃないのか?とみんな疑心暗鬼に陥るが、その様子を天谷は楽しんでいた。

スパイが誰か、分かったかな?とシロクマが聞くと、奥栄治(入江甚儀)が、こいつだよ!と翔子を指差したので、止めろってと天谷は注意しながらも笑う。

噓なんか言ってない!とスパイ呼ばわりされた翔子は叫び、私、本当に高畑君のこと…と言いかけ、近くにいたいちかを突き飛ばす。

次の瞬間、翔子はシロクマの巨大なげんこつで床に落ち潰され、後には、あのカップの取っ手をネックレスにしたものが残っていた。

それを観た瞬は、えんがちょに出会った時、手を離さないでねと訴えていた翔子のことを思い出す。

は~い!残念でした!彼女は人間だったね~と、シロクマは床に残った血だまりを観ながら言ったので、瞬は、ワ~ッ!と絶叫する。

じゃあ、次の質問…とシロクマが続けようとした時、ちょっと待て!と瞬が止める。

何だよ~、せっかく良いとこだったのに~とシロクマは不満そうに言うが、分かったよ!噓ついていた奴のこと、分かった!と瞬が言いだす。

それを聞いた天谷も、やっと気づいたか?とからかうように瞬を見やる。

誰なの?といちかも不安そうに聞いて来る。

嘘つきの正体は…、お前だ!と瞬は巨大シロクマを指す。

俺は最初っから気づいていたんだけどな…と天谷は自慢する。

敵の仲間なんていない。高瀬さんの血がそれを教えてくれたんだ!お前はシロクマなんかじゃない!と瞬が指摘すると、観たな~!と呻いたシロクマの白い表皮が解け落ち始める。

白い表皮の下から黒い皮膚が現れる。

条件通り、本当のことを言ってやる!お前はどす黒いクマ、悪魔だ!と瞬が告げると、終了~!と黒クマは言い、高畑、天谷、秋元、奥、前田…、以上5名、生きる!と宣言する。

地上では、集まった群衆たちが上空に制していた巨大キューブを見上げていた。

キューブの中の5人は、いつの間にか、夕日が沈みかけている西洋のどこかの海辺にある城の前に出る。

瞬は、翔子の遺品のネックレスを持っていた。

今度は何をやらせられるんだろう?とみんな心配するが、「ま」で始まる何かですねてんと前田が言い出す。

今までのゲームは全部、しりとりで繋がっているじゃないですかと言うのだ。

「ダルマ」「招き猫」「こけし」「シロクマ」…、次も「ま」で始まる何かのはずですと言っていると、城の入口から出て来たのは「マトリョーシカ人形」だった。

お前ら、良くここまで来たな、ここがラストステージで~す!最後はみんなで楽しく遊びましょう!と最初の人形の中から出て来た小さなマトリョーシカ信行が言い、「カンケリしたなら オワリ」と書かれた垂れ幕が、横の塔の壁に出て来る。

鬼は最初、城の上にある缶を取り、位置にセットする。その間、他の者は隠れ、鬼は誰かを見つけたら、はっきり顔を確認して名前を言い、あの缶を踏む。それで1人捕まったことになる。

捕まった人はあの牢に入れられる。

鬼より先に缶を蹴ると、捕まった人は助けられるけど、缶は蹴ると大爆発する。つまり自分が犠牲になる仕組みです。

ゲームが終わった段階で、鬼が3人以上捕まえていたら勝ち。

「死の缶蹴りゲーム」だな…と瞬は呟く。

鬼はこのくじで決めますと言いながら、小さなマトリョーシカ人形の口から棒が数本飛び出して来る。

最初に棒を引いたのは天谷だったが、いきなり棒の先に色が塗られていた。

俺が鬼だ!と天谷は嬉しそうに笑う。

制限時間は夕日が沈むまで!

天谷以外は、一番嫌な奴が鬼になったと感じながらも、出来るだけ遠くまで逃げようとする。

鬼が城の上に置かれた缶を取るまで時間がかかるだろうと思われたが、天谷は、目の前にあった大きなマトリョーシカ人形を取り上げると、いきなりそれを城の上にある壁にぶつけ、その反動で缶を落とす作戦に出る。

作戦は一発で成功し、缶を所定の位置に置いた天谷は、すぐに隠れた仲間を追いかけて走り出す。

前田と奥はあっけなく見つかってしまい、名前何だっけ?と戸惑いながらも、笑いながら元の場所に戻って来た天谷は、奥君、小太郎君見っけ!と言いながら缶を踏む。

そんな天野の様子を、塔の上窓から覗いていた瞬は、やっぱりあいつは普通じゃない…と呟く。

一緒に下を観ていたいちかは、何か、今、目が合った気が…と漏らす。

瞬は、ロープを窓から垂れして逃げ出そうとするが、その時、部屋の戸を開けようとする音が聞こえて来る。

やっぱり見つかって、天谷がやって来たのだ。

一応、戸の前には重しを置いて塞いでいたが、今にも開けられそうな勢いだった。

いちかは、一緒に逃げようと誘う瞬に、先に行って!と言うと、戸を押さえに行こうとするが、その時、戸が開き、秋元いちか見っけ!と天谷が顔を出す。

その時天谷は、窓から垂れていたロープに気づく。

牢の中に入れられていた奥と前田は、もうお終いですよ…、あいつが天谷に勝てるとは思わない…、あの夕日が沈んだ時、俺たちも終わりだ…などと話していた。

瞬は物置小屋の中で隠れていたが、そんな瞬に、天谷が、おれは3人捕まえた。これでもう生き残れる。だから、もうお前を捕まえるつもりはない。このまま2人で生き残ろう。俺たちは神が選んだ子だ。新しい世界で生きよう!と呼びかける。

その言葉を聞いていた瞬は、お前は今も世界を望んでいたんだ!俺と同じだ!と、体育館で天谷に指摘された時の事を思い出していた。

あの時、いちかは、違う!高畑君はあんたなんかと全然違う!強くて優しくて…、あなたと同じじゃないから!と瞬のことを弁護してくれた。

そのいちかは、前田や奥と一緒に牢屋に入れられていたが、私のことなんか全然分かってくれない!もう、あなたの顔なんて観たくない!だから、こんな奴のことなんか信じちゃダメ!さっさとどっかに逃げなさいよ!と呼びかけて来る。

その声を聞いていた瞬は、思い切って立上がる。

高畑!俺たち、仲間だろ?俺を信じて出て来い!と天谷がさらに呼びかけたので、分かった!今、出て行く!と瞬は答える。

それを聞いた天谷は笑い、牢の中のいちかは絶望しながら、瞬!信じちゃダメ!と呼びかけるが、そんな彼らの前に出て来たのは、重い鎧を来た瞬だった。

待たせたな、天谷…、確か、ちゃんと相手の顔を確認して名前を呼ぶんだったな?と言う瞬の顔は鉄仮面に覆われてほとんど確認出来なかった。

牢の中から瞬の作戦を観た前田たちは、でも、あれじゃ、簡単に捕まって、マスクを剥がされるよと案じる。

瞬は、剣を差し出して、近づいて来た天谷を防ごうとするが、鎧自体が重くて動き難いこともあり、すぐに落としてしまう。

その無様さを目の当たりにした天谷は、どうした?相手してくれるんじゃないのか?と嘲り、鎧に飛びかかると、鉄仮面を脱がせる。

素顔がさらけ出された瞬を見た天谷は、愉快そうに、高原瞬君、見っけ!と言いながら、缶の場所に戻ろうとする。

ところが、途中でその体が停まる。

瞬は、飛びついて来た天谷に、鎖を繋いでいたのだ。

鎖は短く、缶を踏むには、重い瞬の鎧ごとその場所まで引きずって行かねばならない。

それに気づいた天谷は、必死に瞬の鎧を引っ張ろうとする。

そんな中、お前の言う通りだよ、天谷。俺は世界全体がぶっ壊れれば良いと思っていた…、でも全然違っていた…。なくして始めて気づいた俺がバカだった…。みんなが生きていて、大切なものが普通にあって、そんな現実は最高だ!俺はお前とは違う!と瞬は言う。

さらに、心配ないよ、俺は最初からお前を助けるつもりはない。鎧着たのは、顔を隠すためでも爆発から身を守るためでもない。こうするためだ!と言うと、瞬は、城壁から海に身を投げ出す。

天谷は、城壁から落ちまいと踏ん張り、必死に鎧を引き上げようとする。

しかし、鎧から抜け出した瞬が、思い鎧を海から引き上げている天谷の横から這い上がって来る。

もう良い!もう止めて!といちかが止めるが、濡れ鼠になり、体力を使い果たした瞬は、サタケも翔子ちゃんも、まだやりたいことがいっぱいあったはずなんだ…、なのに…、何が神に選ばれた…だ!と言いながら、よろけながらも缶に近づこうとする。

一方、天谷の方も、全身の力で鎧を持ち上げようと踏ん張っていた。

この世界を本当に神様が作ったって言うなら、神様なんてくそくらえだ!と瞬は喚く。

その瞬が、缶の前に来て蹴ろうとした時、鎧を持ち上げ、鎖を外した天谷も駆けつけて来て缶を踏もうとするが、一瞬早く、瞬が缶を蹴る。

しかし、身構えた天谷と瞬の前に転がった缶は爆発しなかった。

あれ?と戸惑う瞬。

その時、海の向こうに夕日が沈み、終了が告げられる。

瞬は捕虜を助け、天谷は捕虜ゼロ!よってアウト!

奥栄治! 前田小太郎!秋元いちか!君たちの勝ち!とマトリョーシカ人形が言うので、でも、何で爆発しない?と瞬が聞くと、あれは噓〜!だってその方が面白かったでしょう?などと言うので、ふざけるな!と瞬は切れる。

死ぬって何のこと?負けたら死ぬなんて最初から言ってないよ?とマトッリョーシカ人形がとぼけるので、マジかよ…、ってことは…と瞬が考えていると、海の上に花火が打ち上げられる。

これで全部終了〜!みなさん、ここまで良く頑張りました。ご褒美です!と言うと、1つのマトリョーシカ人形の中からアイスバーが5本出て来る。

食べたら、出口に案内するからね〜!とマトリョーシカ人形は告げる。

牢の中から解放された奥や前田、いちかもみんな安堵してアイスを食べ始める。

そんな中、1人離れた所に踞り、敗北感を味わっていた天谷は、アイスを手に取りながらも、それを食べようともせず地面に落とす。

いちかと並んで座り、アイスを食べていた瞬は、ねえ、いちか、外に出たら一緒に美味しいものを食べに行こう。それから一緒に映画を観に行こう。それから…、いちかとやりたいこといっぱいあるよ。あ、おふくろに言われていた物置の整理もしなくっちゃ!と嬉しそうに言うので、それは1人でやってよ!といちかは呆れる。

親爺とお袋、何て言うかな?きっとどやされるだろうな?ま、それも悪くないだろうな…と瞬は下界に戻った時の事を想像し笑っていた。

そんな瞬は、アイスバーの棒の先に「あ」と言う文字が書いてあるのを見つけ、ラッキー!観てよ、いちか!と当たりくじを見せようとするが、気がつくと、いちかの方は暗い表情をしており、ごめんね瞬…、私、やっぱり映画観に行けないや…と言い出す。

瞬のアイスバーの棒には「あなた生きる」と書かれてあった。

その時、みなさん!生きる残るために必要なのは、知恵、体力、想像力…、それに後一つ…、最後に必要なものがあります。それは…言いながら、「運」と書かれた人形が出て来る。

瞬…、あなたのこと、ちょっとは好きだったかも…と告白したいちかが持っていたアイスバーの棒には「あなた死ぬ」と書かれてあった。

いちかは泣きながら「バイバイ!」と言う。

その様子に気づいた天谷は、落ちて溶けかけていたアイスバーの棒を拾い上げ確認する。

「あなた生きる」と書かれてあったので、天谷はにやりと笑う。

「運」と書かれた人形の眼からレーザー光のような光線が発射され、奥と前田、いちかの体は、一瞬の内に光の粒子なって空中に消え去る。

思わず、消え去ろうとするいちかの光を抱きとめようとした瞬だったが、握りしめた手のひらを拡げると、ビー玉のような光の粒子が飛び去って行った。

何だよ、これ!何なんだよ!これ!と腹立たしそうに喚く瞬。

その時、地面に敷かれていたレンガが光り、高畑瞬、天谷武生きると書かれた文字が浮かび上がる。

瞬と天谷は、空中に浮かぶ巨大キューブの上に出て地上を見下ろしていた。

その2人の姿を発見した群集たちは下から嬉しそうに手を振って来る。

そんな中、引きこもっていたはずのタクミが急に部屋から出て来ると、驚いた母親を他所に、ちょっと出かけて来ると言いながら下に降りて行ったので、何しに行くの?と母親が聞くと、世界を救いに…とタクミは答える。

あまり遅くならないようにね…と母親はおどおどと言葉をかけ、息子の予想外の行動を呆然と見送る。

「神の子!」と東京タワーの下に集まった群衆は頭上のキューブを見上げながら叫んでいた。

その声を聞き満足そうに喜ぶ天谷。

その横に立っていた瞬は、神様なんていない…と吐き捨てる。

それ、間違ってるぞ!と言う声が聞こえて来る。

「こけし」「シロクマ」「マトリョーシカ」「神」!と背後から告げたのは、先ほどのマトリョーシカ人形だった。

あの不思議な力を持ったホームレスの顔が写る。


 

 

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