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地獄の祭典

宍戸錠が野生児のように勘が鋭いラッコ撃ちを演じ、都会で暗躍する敵を相手に大暴れする通俗アクション映画。

前半の、山賊のようなと言うか、ホームレスのような扮装の宍戸錠さんが楽しい。

白木マリさんがお馴染みの踊子役で登場し、笹森礼子さんは気が強くでジープを乗り回す活発なお嬢さんを演じているが、男性向けアクションなので、女性陣の登場場面は少なめ。

声がでかい郷田役を演じているのは、錠さんの実弟郷英治さん、栗色の髪の混血の殺し屋を演じているのは小高雄二さん、他にも、威勢が良い三下を演じる桂小金治さんとか、心臓の悪い親分役の田中明夫さんなど、キャラクターは面白く作られている。

中でも注目すべきは、日活作品では珍しい田中邦衛さんが出ていること。

ここでは、コミカルな演技がない、不気味なキャラクターを演じている。

黒澤明の「悪い奴ほどよく眠る」(1960)で不気味な殺し屋を演じ、それが縁で、「若大将シリーズ」(1961〜)で青大将を演じることになったらしい邦衛さんだが、この作品での邦衛さんは、青大将のイメージではなく、初期の不気味な悪役のイメージなのが興味深い。

登場キャラクターたち全員が生き生きとしているし、話の展開も面白く、通俗活劇としては良くできている方だと思う。

劇中、回想シーンでの黄金丸沈没シーンの特撮を担当しているのは金田啓治さん。

引き上げられた錆び付いた黄金丸の内部はセットだと思うが、その巨大な外観は作り物とは思えず、何かありものを利用しているのではないかと思うが、クライマックスの舞台として巧く映画にマッチしている。

※キネ旬データのキャスト欄には、浜田寅彦氏演じる中国人の役名は「周」とあるが、劇中で何度も「ちょう」と呼ばれていたので、あらすじには「張」で統一することにした。

同じく、桂小金治氏演じる「ピン」や榎木兵衛演じる「李」も、劇中では違うように呼んでいたような気もするが、こちらは自信がないので、キネ旬の表記通りにしてある。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1963年、日活、遠山照彦原作、小川英脚色、牛原陽一監督作品。

北海の氷の海

そ〜ら、出た!と相棒の三吉(野呂圭介)が叫んだ次の瞬間、見事一発で海に顔を出したラッコを仕留めたのは、ライフルの名手ラッコの哲(宍戸錠)だった。

今年はこいつで規定量だ!と言う哲は、陸に上がり、密漁をやっていると飲み屋で因縁を付けられ、こっちはちゃんと限度は守っているんだ!と返事をすると、腕っ節にものを言わせ、相手をのしてしまう。

ラックの毛皮っていくらするか知ってるか?10万だぞ!目を撃たないとその毛皮に傷をつけてしまうんだろ三吉も解説する。

相手の財布を抜き取った哲は、今日の勘定を払っとけとそれをそのまま店の女に投げて渡すと、ラッコ撃ちとけんかをする時は、もっと腕っ節の強い奴連れて来い!と言い、相手を追い出してしまう。

店の女は、そんな哲に岡惚れしたわ~と近づいて来るが、あんた何かに似てるな~?と哲が言うので、女優かなにか?と女が期待すると、アザラシだ!と言って、何ですって!と怒った女から逃げるように哲は店を後にする。

夜の埠頭にやって来た哲は、三吉の奴、遅いな~などとぼやいていたが、そこに置いてあったコンテナの扉を開けてみると、中に大好きな馬が乗っていたので、仲良くやっぺ!等と言いながら、酔った勢いで眠ってしまう。

翌朝、その馬が乗ったコンテナは、中に哲が乗ったまま、船に積みまれてしまう。

タイトル

船に積み込まれた馬のコンテナの様子を観に来た船員は、中に顔は真っ黒に汚れ、髪もヒゲも伸び放題で、毛皮を着込んでいる山賊のような人間が乗り込んでいたので腰を抜かす。

うっかり馬のコンテナと一緒に紛れ込んだことを知った船長(大森義夫)以下、船の乗組員たちは、哲のことを面白がって集まる。

哲は面白くなさそうに、すぐ船を戻してくれ、網走で次の仕事があるんだと掛け合うが、それは無理だ、横浜まで付き合ってもらおうと船長は愉快そうに返事をする。

横浜?俺は対馬と北海道しか知らん!とふて腐れた哲が、この船はいつ北海道に戻るんだ?と聞くと。船長は10日後だと言う。

さすがに諦めた哲は、腹が減ったので飯を食わせろと言い出したので、こいつ密航したくせに飯まで喰わせろだと!と船員が呆れると、金ならあると言いながら、哲が開けたバッグの中から机の上に放り投げたのは、大量の札束だったので、船員たちはあっけにとられる。

やがて、哲を乗せた貨物船は横浜港にやって来る。

あれが横浜だと、デッキで船長が声をかけて来たので、嫌な街だ。あそこじゃ何が獲れる?と哲が聞くと、可愛い人魚かな?と船長は笑う。

人魚なんて、ふんだくられるだけだろう!と哲は吐き捨てる。

夜、波止場に降り、倉庫街を歩いていた哲の前に、1人の女性が、助けて!と言いながら飛びついて来たので、早速人魚か!と哲は呆れるが、次の瞬間、その女性は、哲に抱きつきながら倒れ込んでしまう。

驚いて助け起こそうとすると、背中にナイフが突き刺さっているではないか、その女性は哲に、「スペード…」と言うと息絶えてしまう。

驚いた哲は、逃げて行く足音を追って行くが、犯人の姿を見つけることは出来なかった。

諦めて、女性の元に戻って来た哲だったが、そこには女性の死体も、自分が置いていた金の入ったバッグも消え去っていた。

唖然とした哲は、たまたま近くを通りかかった警備員たちを呼び寄せる。

しかし、警察では、哲の言うことは全く信用されず、そのままブタ箱に入れられてしまう。

その留置場の中で哲が寝ていると、ラッコの哲だって?けんかは図体じゃなく、度胸でやるもんだ!などと、そのすぐ横で他の連中に威張っていたのがピン(桂小金治)と言うチンピラだった。

そのピンが急にかゆがって、服の中からノミを取り出し、衛生管理ないな、このサツは…と文句を言うと、寝ていたと思っていた哲がそのノミを奪い取り、これは北海道から連れて来た俺の友達だ!とピンを睨みながら、又自分の毛皮の中に戻すと、あんたに頼みてえことがあると言いながらムクリと起き上がったので、ピンはすっかりビビってしまう。

哲の頼みとは、自分が盗まれたライフルを探し出す手伝いだったが、留置場を出た後、哲に付き合って何軒もの銃砲店に案内させられたピンはすっかり疲れきっていた。

そんなピンに近づき、何事かを耳打ちして来た仲間がおり、それを聞いたピンは、篠原組に殴り込み!と驚くと、その男と一緒にどこかへ走り去ってしまう。

サルベージ会社篠原組の庭先で暴れていたのはライバルの黒塚組の連中だった。

そこに、ジープで乗り込んで来たのが、篠原組の社長の妹篠原恵子(笹森礼子)だった。

そんなジープに蹴散らされていた黒塚組の中、一人ライフルを持った六(土方弘)が、小娘のくせしやがって!と威嚇のため発砲するが、弾が予想外の方向へ飛び、仲間の帽子を弾き飛ばしたので、何だ、この銃は?と撃った男は呆れ、他の仲間たちと一緒にトラックに乗って逃げ去って行く。

そのトラックに乗り損なったのがピンで、そのピンの目の前に現れたのが哲だった。

何だこんな所まで来やがって!とピンが呆れると、助太刀くらいするつもりで追って来たのよと哲は言い、今の銃声聞いたか?と聞くが、ピンは近づいて来た栗色の髪の男黒猫マック(小高雄二)の運転する車の後部座席に乗り込んでしまう。

哲は、その運転手の腕を捕まえて話を聞こうとするが、男は、触るな!汚ねえ!とスーツの腕を払うと、そのままピンを乗せ、走り去ってしまう。

黒塚サルベージなんてヤクザじゃないか!100トンもある沈没船に夢中になるなんて…と、帰って来た社長篠原司郎(木浦佑三)が、妹の啓子から事情を聞き不思議がる。

篠原は、もう黒塚のことに首を突っ込むな!社長は俺だぞ!と注意するが、じゃじゃ馬な啓子は死んだお父様は、2人で盛り上げろって言ったわと反抗する。

そんな事務所に勝手に入り込んで来たのが哲で、昔、馬を飼っていたことがあり、勘の強い馬だったが可愛かった。あんた、その馬にそっくりだなどと啓子をからかう。

お前は何者だ?黒塚の手先か!といきり立つ篠原に、大体話は聞いたが、俺は別口だと答えた哲は、さっきこれを撃った奴を知らないか?と拾って来た薬莢を出して見せ、ちょっと撃芯が歪んでいるんだと説明する。

黒塚組で銃を持っていると言えば、マムシの六と言う兄貴分だろうと篠原が教えると、そいつはどこにいる!と哲は聞き、普段は「キューピー」と言うキャバレーにいると知る。

「キューピー」のステージでは、珠美(白木マリ)が派手な羽飾りをつけて踊っていた。

哲が汚い風貌と毛皮で店に入ろうとすると、ボーイに困ります、こんなお召し物では!と止められるが、遠慮するなといなした哲は、勝手に珠美に近づくと、羽の生えた人魚か!と不躾に話しかけたので、珠美から睨まれる。

その頃、社長室では、啓子1人に追っ払われたと報告を受けた社長の黒塚大五郎(田中明夫)が、呆れたように、おめおめと戻って来た六たちに嫌味を言っていた。

サルベージは任せるって言わせたんじゃないのか!と同じように、六たちを叱りつけていた子分の郷田(郷英治)の声があまり大きかったので、心臓が悪い黒塚は、今度発作が置きたら最後だ…と郷田に注意する。

そこに、六に会いてえって変な男が来てますぜと報告に来たのは、店のマネージャー東宗明(田中邦衛)だった。

何気なく、社長室から、店の中のボックス席を見た六は、あの男です!と驚き、こんな所までやって来た哲に、ピンも唖然としていた。

社長室に案内されて来た哲が、案内して来た東のことを聞くと、この店の持ち主、今はマネージャー、黒塚さんに店を取られた…と答えた東は、哲を部屋に押し込む。

そこで待っていた六が持っているライフルを見た哲は、こいつだ!俺の銃!と叫ぶと、ピンに気づき、おめえもこいつらのグルか?盗人めら!と睨みつける。

ハマの黒塚組を盗人とは何だ!と郷田が怒鳴り、六が、こいつは、客のボックス席に置いてあっただけだと言い訳したので、恐ろしく声がでかい奴だ!と哲は郷田を睨むと、北の海じゃ、やわな声では通じないんだ!と郷田以上の大声で叫び返す。

おめえの銃だと言う証拠は?と郷田が聞くと、部屋の隅で椅子を組んだものを指し、マムシ!ここを撃ってみろ!と六に声をかける。

六が椅子の足を狙って撃ってみるが、弾は背後の壁の飾り物に命中する。

そのライフルを奪い取った哲が、同じように撃つと、椅子の足4本を全部撃ち落とす。

銃のくせを知っているその腕前を見た郷田は、良し、信じようと答えるが、これだけじゃねえ!銭の入った袋があったはずだ!と哲は迫る。

そんな哲に、洋酒の瓶を背後から投げつけようとした六は、振り向いた哲から右手を撃ち抜かれる。

ラッコの方がもっと早いぜとうそぶいた哲は、ここにしばらく置いてもらう。出ようったって出られない、無銭飲食だから…と言い、部屋を出て行く。

裸にして放り出す!宜しいね?と黒塚に確認した東が部屋を出て行くと、もう2回もヘロをかっぱらわれ、若いものも殺されている!又やられたら、うちの面子は丸つぶれだ!このままだと薬は完全になくなる!明日の受け取りには誰が行く?と黒塚はいら立ったように子分たちを見渡す。

子分たちは、責任を取りたくないのでみんな黙り込むが、そうした中、郷田だけが俺が行きましょうと答える。

もう1人、行く奴いないのか?と黒塚が聞くと、東が戻って来て、あの男、眠っているが、銃は起きている…と妙なことを言って来る。

みんなで様子を観に行ってみると、確かに哲は椅子に座って寝ているようだったが、手にしたライフルは、しっかり背後を狙っていた。

黒猫マックが、試しにテーブルに積んであった灰皿を取り上げ、哲の方へ投げてみると、哲の撃った弾が粉砕する。

ガタガタ何を騒いでいるんだ。あまり苛つかせない方が良いぜと哲が言うので、3万2500円の飲食代の請求書を差し出した黒塚は、やってもらう、仕事をねと言い出したので、それを聞いていたマックは、俺は反対だ!と異を唱える。

すると黒塚は、マック、いつから黒塚組の社長になったんだ?と睨みつける。

ここは北の海じゃない。ここでやる時は紳士になってもらうよと黒塚は哲に命じる。

哲は、着ていた毛皮を脱がされ、女たちに髪とヒゲを剃られ、スーツを着せられ、いっぱしの真摯風に変身させられる。

俺の服どこへやった?と毛皮を預けたピンの元へ戻って来ると、ピンたちによってDDTを毛皮に撒かれていた。

そして、郷田の運転する車で羽田に向かうことになった哲は、行きな白マフラーなどを首に巻いたので、素人のくせに…と郷田は呆れる。

白い手袋をしているのは誰だ?と哲が聞くと、黒猫マックと言い、混血で、マニラじゃちょっとならした奴だそうだと郷田は答える。

仕事って何をするんだ?と聞くと、羽田に着いた相手からブツを受け取るんだと郷田が答えるので、密輸だな?と哲は察する。

俺だって、TVのギャングものくらいは観るんだ。「アンタッチャブル」とかな…と哲は言う。

やがて到着した羽田で待っていた、小さな仏像を持った中国人の張(浜田寅彦)と明敏(星ナオミ)を車に乗せ出発すると、黒めがねをした怪しい連中がその車に目を付ける。

運転していた郷田が、張と明敏と一緒に後部座席に座っていた哲に、調べろと命じる。

哲が、張から受け取った旅行カバンを調べ始めると、明敏のパンティなどが出て来たので驚く。

バカ!その下だ!二重底になっているはずだ!とバックミラーを見ながら郷田が叱ると、ようやく哲は、バックの底に潜ませてあった白い粉を包んだビニール袋を発見する。

郷田が、金の入ったバックを張に渡し、その中味を確認した張が、私たちはこの辺で…と言い出したので、郷田は車を停め、2人を降ろす。

再び車を出発させると、哲が今の奴は何者だと聞くので、張と言う男で、仏像を持っていただろう?あれが奴の商売だと郷田は教える。

古物商か?と哲が聞くと、学者だ。ああ言う連中は信用があるし口が堅いから、空港でも絶対バレない。今流行りだと郷田は言う。

その時、背後から近づいて来た白バイが停車を求めて来たので、停まると、免許証を見せてくれと言いながら白バイ警官が降りて来る。

旦那、勘弁してくれよ、たった5Kmオーバーだと郷田は泣きつくが、次の瞬間、黒めがねをかけた李(榎木兵衛)が銃を突きつけながら横付けして来た別の車から助手席に乗り込んで来る。

偽警官と気づき、何者だ!と郷田は聞くが、銃を突きつけ車を走らせるよう命じた李は、聞いても無駄だと言うだけだった。

その時、後部座席に乗っていた哲がバッグのチャックを開けようとするが、それをバックミラーで気づいた郷田が首を振ってみせたので、そうか…、まだ早いか…と哲は呟く。

やがて、李に脅され、人気のない海岸にやって来ると、車を停めさせられ、ここでお前たちは相打ちで死ぬんだ。嬉しいか?と李から言われる。

外に出ろ!と李に片言の日本語で言われたので、わかてるよ!ぱかやろ!と口まねで答えた哲は、いきなり先に降りていた李につかみ掛かって行く。

その時、李の仲間が乗って現場まで付いて来た車は、李に発砲し、逃げ去ってしまったので、何故あいつを撃たなかった!と郷田は逃げた車を見ながら怒るが、あいつはこいつを殺そうとした。こいつを生け捕りにした方が良い。カポネと言う親分がそう言っていたと哲が答えると、郷田は納得する。

撃たれた李の黒めがねを取ってみると、両目を撃たれて怪我をしていた。

「キューピー」の黒塚の元にブツを持って帰った郷田は、そのヘロインを、黒塚の目の前で調べ始めたマックの前で、これでも売りゃ5000万か…と感心する。

ヘロインを嘗めてみたマックは、急にコップに入った水にその白い粉を投入して混ぜ合わせたので、みんな驚くが、泡立ったコップを示したマックは、見た通り、粉石鹸だ!と断定する。

偽物を掴まされたと知った郷田は、あの学者!とぼけやがって!と激怒する。

騙されたのは俺たちだけじゃない!学者の張を探すんだ!送って来た写真をみんなに配れ!下の奴に吐かせるんだ!と黒塚は、人質にして来た李のことを命じる。

郷田が李を痛めつけ、この前かっぱらったヤクどこにある?と聞くが、なかなか李が答えないので、哲、本物のメ○ラにしてやれと黒塚は命じる。

哲がライフルを突きつけると、さすがに怯えた李は、待ってくれ!と命乞いを始める。

何か言いかけた李だったが、その時、ドアの隙間から何者かに撃たれてしまう。

慌てた子分がドアに向かうが、外から鍵をかけられていると言う。

瀕死の李は、抱き起こした哲の目の前で「スペード…」と言って息絶えてしまう。

そんなバカな!とマックは否定するが、確かに俺もそう聞いたぜと黒塚も同意する。

前にもそっくり同じ場面に出くわしたぜ…と哲が言い、スペードって何者だ?と聞くと、東南アジアの麻薬のボスで、セイロンで暗躍していた男だと黒塚が教えたので、やっぱりあの女は殺されたんだ!と哲は察する。

どう思う?マック、お前はスペードの幹部だったそうだな?と黒塚が聞くと、スペードって奴は人嫌いで、誰にも顔を見せなかったので、子分でさえ顔を知らなかった。あいつにカードを送られたものは、必ず殺される…とマックは言う。

キャバレーの店内では男性歌手(フランク・赤木)が歌を歌っていた。

哲はボーイに、何故、ボックス席に自分のライフルが置かれていたのか聞いていたが、ボーイは、店の女の子たちも誰も知らないと言う。

その時、珠美が哲に一杯おごると話しかけて来たので、カウンター席で飲むことにする。

哲は珠美に、娘を殺した幽霊を知らないか?20くらいの娘だと聞くが、珠美は知らないと言う。

俺に命を預けられたのは始めてだ。俺は何もしてやれなかった!白いコートを着て、左に泣きぼくろがある娘だと哲が嘆いていると、珠美の表情が変わったので、知ってるな!と哲は察する。

しかし、珠美は、早く北に帰ってアザラシでも撃ってた方が良いわよとからかって来たので、勘が悪くちゃ漁師はできねえ。マネージャーはあんたに惚れてるし、あんたは俺に惚れてる!と哲が言うと、私が?と笑うながら立上がった珠美は、哲の頬を叩いて去ってしまう。

同じカウンターの隅で1人ジョニ赤を飲んでいたマックは、ビンタされた哲の様子を横目で見ながら笑っていた。

メイク室に戻って来た珠美に、やって来た東は、あの男と何を話していた?と迫っていた。

その夜、哲は、娘の死骸が消えたあの横浜の倉庫街を歩いて何かを探していた。

誰か尾行している気配を感じた哲が振り向き、何だ、ネコかと呟くと、マックが発砲して来る。

ラッコ撃ちも、ライフルがなくては形無しだなとからかうように近づいて来たマックが、話があると言うので、組もうってのかい?でなければ、あんたがつけて来るはずがないと哲は勘を働かせる。

スペードは、麻薬を市場がでかい日本で売りたがっていた…と海辺にやって来たマックは話し始める。

それで、100トン級の船「金剛丸」に15kgのヤク、時価1億5000万を積んで日本を目指したんだ。

俺はその船の船長だったんだよ。

日本に来る途中、スペードが殺されたって噂を聞いた。

俺は計略を実行し、睡眠薬で他の船員たちを眠らせ、船を沈め、1人ゴムボートで脱出した。

そして、黒塚に取り入った。

ところが、篠原の潜水夫が金剛丸を発見し、先に届けてしまった。

こっちも申請したが、延々3年も待たされるはめになった。

このままでは、黒塚が強引に船を引き上げるだろう。

一緒に黒塚組を潰さないか?とマックが言うので、俺が社長に話したら?と哲が答えると、おそらく殺されるだろうな。俺の方が信用されているからとマックは言う。

じゃあ、俺が話した娘のことは何も知らないんだな?と哲は念を押す。

張を捕まえるんだ!麻薬が手に入れば、黒塚は調子づいてしまう。薬が切れている方が良いんだとマックは言う。

翌日、ソファでシェーバーを使っていた張は、突然部屋にライフルを持って飛び込んで来た哲にあえなく掴まってしまう。

あんたがあのとき拾ったタクシーのマークを覚えていたんだ。運転手を締め上げてここを知ったのだと哲が説明すると、張は、ご用件は?ととぼけるので、本物を渡して欲しいと哲は迫る。

すると張は、あれは香港で渡されたものだ!と反論するが、あの仏像をもらおうか?と哲が棚に飾ってあった小さな仏像を見ると、知ってたんですか!確かにあの仏像の中に麻薬が入ってますと張は素直に認める。

哲は、やっぱり山を張ってみるべきだな…と苦笑し、その仏像の底を調べると、中にビニールに入った白い粉を発見する。

ライフルは持参して来たゴルフバックの中に隠し、その麻薬をもらって変える哲は、途中の橋の上から川に向い、取って来た麻薬を全部破ってばらまいてしまう。

その後、何喰わぬ顔で「キューピー」に戻って来た哲は、マックに、張は見つかったか?と聞く。

するとマックは、それどころじゃない。情勢が変わったんだ。金剛丸の許可が降りたんだ、篠原サルベージだと言うではないか。

篠原組の事務所に哲がやって来ると、やっぱり黒塚組が絡んでたのねと睨んで来た啓子は、みんな明日の準備で出かけたわよと言う。

すると哲は、あんたをさらいに来たんだと言い、暴れて抵抗する啓子をさらおうとする。

啓子は哲の腕に噛み付いて来るが、噛ませたままピンが待っている車の所まで運んで来ると、そのまま啓子と一緒に車に乗り込み出発する。

いつになったら手を離してくれるんだ?と哲が言うと、鈍いのね!痛くないの?と言いながら、啓子は口を離す。

痛いのなんの!でも、言う事聞かない子馬ほど可愛いもんはないと哲は笑う。

その後、ホテル「かもめ」と言う安宿に啓子を連れ込んだ哲とピンは、啓子をシャワールームに押し込んで、ドアノブを縛って出られないようにする。

その後、会社に戻って来た篠原司郎は、表に片方だけ落ちていた啓子の靴を見つけ驚く。

事務所で警察に電話をかけようとしていた篠原だったが、そこに乗り込んで来たのが黒塚組だった。

おめでとう、許可が出たようだな?これにあんたのハンコをもらいたいと言いながら、黒塚は、サルベージの引揚げを黒塚組が引き受けると言う書類を突きつけて来る。

黒付かさん、啓子は無事なんですか?と篠原が聞くと、啓子さん、どうかしましたか?と黒崎がとぼけるので、分かった。判を押せば啓子を無事に返してくれるんでしょうね?と念を押し、篠原は素直にハンコをつく。

それでも黒塚は、何か勘違いしているようだが、もちろん、啓子さんは無事に帰って来るでしょうと笑う。

黒崎組が引き上げたので、篠原と社員たちが今後の対策を話し合っていると、そこの哲が戻って来て、妹さんは俺が預かっている。場所は今は言えねえなどと言うので、篠原は、あんた、我々の味方なのか?と聞くが、哲は、さあねえ?ととぼけるが、黒塚も長くないと答える。

この事件も黒塚の仕業なのか?と篠原が突きつけて来た新聞を読んだ哲は、戸川ゆかりと言う幼稚園の保母と、その兄の潜水夫が失踪していると書かれてあったので驚く。

聞けば、潜りのケンと呼ばれていた兄の方は、一ヶ月ほど前、たちの悪い奴らに掴まった時からいなくなったそうで、妹の方も何度も篠原組の事務所に来ていたのだと言う。

「キューピー」に戻って来た哲は、珠美に潜りのケンを知らないか尋ねる。

すると珠美は、いくら潜りの腕前が一流でも、それだけでは女を満足させられないわよと言うので、一つだけ教えてもらいたい。スペードって誰だ?あの妹は、スペードと言って死んだんだ。俺の腕の中で…、今でもあの時の顔が見える。今分かった。何故俺がこの嫌な町に釘付けになっているのか。そうじゃなきゃ、今頃は氷の海でオットセイを追っていたんだ。

最初はかっぱらいと思ったんだ。でも今、スペードの話を聞いても生きているような気がして歩き回った。この街に縛られたんだ。まるで糸の切れた凧よ…と哲がとうとうとしゃべり続けると、あんた、その子に惚れているのね?ラッコ撃ちが死んだ人魚に恋をした…と珠美はからかう。

2人をさらったのはスペードか?ケンをさらったのもスペードだな?と哲は迫るが、鉄砲一つで生きていくなんて、ここは北の海じゃないのよ!ここは街よ!出て行ってよ!と珠美はメイク室から哲を追い出そうとする。

ドアの所まで来た哲は、気をつけた方が良い。俺はあんたの命も危ない気がすると忠告するが、怒った珠美は、バカ!ラッコ撃ちが何さ!と言いながらブラシを投げつけて来る。

その後、哲は、バーで飲んでいた潜水夫たちに近づくと、けんかを吹きかけ殴り掛かる。

そして、2人の潜水夫を無理矢理屋台に連れて行くと、振る舞い酒と言い、断る2人に強引に酒を飲ますのだった。

翌朝、送れて黒塚の会社にやって来た2人の潜水夫は、凄い下痢でして…と言い訳し、便所の場所を聞く。

黒塚は心臓の具合が悪くなったのか、薬を飲みながら、他の潜水夫を連れて来い!と部下たちに怒鳴りつける。

そこに、別の部下がやって来て、どうもあの二人、下剤を飲まされたらしいと黒塚に報告する。

スペードの子分じゃねえのか?こいつを飲ませればすぐ直るからと言いながら、その場にいた哲は「ワカ末」の箱を取り出す。

そして、潜り、俺がやっても良いぜと黒塚に申し出る。

船に乗り込み、潜水服を着せられながら、ラッコ撃ちは、不漁続きのとき、こんなこととでもしねえと喰えねえんだ。プロと言うほどじゃねえけどな…と哲は説明する。

そんな哲と一緒に船に乗っていた黒塚は、用意できたらやれ!今日中にやるんだ!と声をかけて来る。

海の中に入った哲は、悪党って奴は間抜けだ。15kgの麻薬を素直に渡すと思ってるのか?15kg全部海の中にパーだ!誰が盗んだかで奴らは殺し合いだと考えていた。

汚ねえ海だ、街も良くねえが海も良くねえ…、あれだ!と「金剛丸」を発見したことを船上の黒塚に知らせる。

黒塚は、デッキに上がってキャビンの中に入るんだ、廊下の突き当りが船長室だ、分かるか?と指示を与える。

分かったと答えて来た哲に、ロッカーあるか?と黒塚が聞く。

返事がなかなかないのにいら立ったマックも、あったのか!と聞いて来る。

おかしいと言うので、すぐにロッカーを引き上げることにする。

切断機を持って来い!と黒塚は命じるが、切断機はいらねえようだぜ…と言いながら、ロッカーの扉をマックが開くと、中には麻薬ではなく潜水夫の死体が入っていた。

潜水帽を外してみると、中に入っていたのは、行方不明の潜りのケンだった。

先を越された!見てろ!船を引き上げるんだ!と黒崎が叫び出したので、ロッカーはこれ一つだぜ!と上がって来た哲は説明するが、興奮状態の黒塚は聞く耳を持たなかった。

引き上げられた「金剛丸」の中では、マックの記憶が間違っているかも知れない!3年間もヤクを待ち続けたんだ!と言いながら、郷田が切断機を使い、麻薬の在処を探していた。

このままでは、黒塚組は自滅だ!あの張を調べてみるか…と黒塚は焦っていた。

その後、黒塚の子分たちは、「キューピー」の事務所で次々とスペードのエースのカードを発見し、パニックになっていた。

心臓が弱っていた黒塚自身も、地下室を歩いているとき、何者かに後頭部を殴打され気絶する。

その頃、ホテル「かもめ」に軟禁していた啓子のために、食料を買ってもって来たピンは、シャワールームからシャワーの音が聞こえて来たので鼻の下を伸ばすが、浴衣取ってくれません?と中から呼ばれたので、余録、余録と嬉しがりながら、浴衣を持ってシャワールームに入ろうとする。

すると、中でシャワーだけをわざと流して音を出していた啓子が、シャワーをピンに浴びせかけ、ピンが驚いた好きに逃げ出そうとする。

一階に降りて来た啓子を追って来たピンが捕まえようとしていると、ちょうど、張の写真を持って、ホテルのクロークに聞きに来ていた六たちが見つける。

いちゃつきやがって…と六はピンのことをバカにするが、ラッコと社長に言われて…とピンが説明すると、何だと!と六は驚く。

そんな話を黒塚から聞いてなかった六は怪しみ、啓子を別室に連れ込むと、おとなしくしてな、俺は遠慮はしねえぜ、今度は本当の社長命令だからな…と脅す。

気絶している所を発見され、ソファに寝かせられていた黒崎は目覚めると、俺も黒塚大五郎だ!と喚く。

哲は、張り合ってくれないと俺が困るんだ…と、そん所側で呟いていた。

そこへ、六から黒塚に電話が入る。

何!そうか…、良し、そうしろ!と言って電話を切ると、哲、お前を信用したのは俺の間違いだったようだ、篠原の娘は俺の方でもらったぜと詰めよる。

それを聞いた哲は、バレたか…と呟く。

さらに、そこにやって来た社員が、潜りに聞いたら、下剤を奴らに飲ませた奴は、左の首の後にほくろがあったそうですぜと黒塚に報告する。

マックが確認してみると、哲の左の首の後にもほくろがあるではないか!

こいつもバレたか…と哲はとぼける。

哲!貴様!覚悟しろ!と怒ったマックが突き飛ばすと、床に転んだ哲のスーツの下から、大量のスペードのエースのカードがこぼれ出る。

その頃、六とピンは、啓子を金剛丸の中に連れて来ていた。

スペードの奴をふん捕まえようと思っていたんだ…と哲は言い訳するが、いい加減なこと言うな!と黒塚に怒鳴られる。

あんたの子分の中にスペードの身内がいるんだと哲が言うと、そいつは手前だろう?と黒塚は睨んで来る。

そう言う見方もある…とあっさり哲は認めるが、簡単に話そう。スペードなんていやしないんだ。何もかもこいつの仕業だったんだとマックも哲を睨むが、その時、部屋の中に黒めがねの一団がなだれ込んで来て、黒崎たちに銃を突きつけて来る。

そいつらを見た哲は、偽警官の仲間だな?と言い当てる。

顔中に、たくさんのほくろがある男が、私たちのボスが来ました。ホールで待っていますと告げ、スペードのエースのカードを出して見せる。

ホールへ行ってみると、そこで待っていたのは、張とその妻だった。

これはこれは…、皆さん、お揃いですな…、私、張…、又の名はスペード!宜しくと張は言い笑い出す。

気がつくと、ホールの柱の背後に隠れていた張の子分らしい連中が全員銃を構えて姿を現す。

哲の姿を見た張は、あなた、ライフルマン!この前、すっかりやられましたねと笑う。

黒塚は、そんな張に、日本の組織を甘く見てもらっては困ると虚勢を張るが、私ヤクを15kg持っている、あなたルート持っている。7分3分で私の方が有利なんじゃないですか?と張は余裕で笑いかける。

私、この店欲しくなった。素晴らしい人あると珠美を見ながら張は言うので、俺の所にも手下がいるのか?と黒塚が聞くと、今頃殺されてるよと張は答える。

俺を売った奴は誰だ!と黒塚が聞くと、俺だ!と言って、中二階に姿を現したのは東宗明(トン・スンミン)だった。

東は、しかし私はこの男の部下ではない!と言うので、怒った張が、殺せ!と部下たちに命じると、部下たちが銃口を向けたのは張の方だった。

分かったかね?ボスは私だ。私がスペードだ!東南アジアは住み難くなったので、日本にやって来た。3年間も前にだ…と言いながら、ホールに降りて来た東は、張の前に来ると、私を裏切るとは…、お前もバカなことを…と哀れそうに見つめる。

次の瞬間、スペードの手下たちの銃が一斉に火を吹き、撃たれた張は倒れる。

顔にたくさんのほくろがある男が、ナイフを投げて、張のとどめを刺す。

黒塚さん、あなたもこうなるのが望みかな?と東が言うと、胸を押さえて苦しがった黒塚は床に倒れ、薬を!と頼む。

よしよし…と言いながら、倒れた黒崎の上着のポケットから心臓の薬を取り出してやった東は、その薬を黒崎に渡す不利を下かと思うと、錠剤を全部床にぶちまけて、靴の外で踏みつぶしてしまう。

畜生!と黒塚は悔しがるが、奥でゆっくり話しましょうと言いながら、東は、他の子分たちを連れ奥へ引込んで行く。

そんな中、哲は殴られて、ホールに倒れ込む。

ホールで2人きりにされた哲は、黒塚さん、大丈夫だ!あんたは死にっこない。篠原の娘どこにやった?あんたの心臓が悪いのは神経だ。神経の心臓は死なないって本で読んだぞと言うと、その言葉に勇気づけられたのか、金剛丸だ。お前の言うとおりだ!何ともねえぞ!と言いながら、黒塚は笑顔で起き上がる。

社長室に来ていた東は、黒塚組は今日から俺がもらうぜと宣言していた。

そこに、銃を持った黒塚が飛び込んで来て、俺をコケにしやがって!と東に言うと、さすがにビビった東を見て、黒塚大五郎がスペードに勝った!と叫ぶ。

しかし、次の瞬間、急に苦しみ出した黒塚は、胸を押さえたままその場に倒れてしまう。

その姿を見た東は、可哀想に…、とうとう心臓がやられたらしい…と呟く。

廊下でその様子を観ていた哲は、やっぱり神経じゃなかったんだな…と1人で納得する。

子分たちに部屋に連れ込まれた哲は東から殴りつけられる。

李の奴を殺したのも、ゆかりをやったのもお前だろう!と哲が責めると、聞きたいか?ただで聞かせる訳にはいかん。酒を持って来い!と命じた東は、お前にもにわかメ○ラの味を知るんだな?と言うと、マックが手渡したジンの中味を、子分たちに捕まえられた哲の両目に浴びせかける。

強力なアルコールで、哲の目はかぶれ、一時的に眼が見えなくなる。

部屋でその様子を観ていた珠美は、あまりの惨さに目を背ける。

あの娘は利口だった。この女がケンを惹き付けたとき、俺がスパイだと言うことを知ってしまったんだ…と東が打ち明けると、酷いわ!私も殺す気ね!と珠美は叫ぶ。

珠美…、今でも愛している。お前に秘密を知られたのもそのためだ。

ここにいる明敏は私の妻だ。何も知らない。だから惚れない…と、張の妻を装っていた女のことを東は話すと、いきなり珠美を撃つ。

珠美は倒れながらも、黄金丸の調理場…!あんたは豚よ!私が彫れたのは、あんたでもケンでもない…と呟くと息絶える。

それを聞いていた哲が、くそ!と暴れ出したのをきっかけに、掴まっていたマックと郷田も、敵の隙を突いて反撃始める。

黄金丸だ!急げ!とマックたちも東たちが叫び、我先にと部屋を飛び出して行く。

その頃、黄金丸の中に連れ込まれていた啓子は、俺はラッコの哲に恨みがある!奴はあんたが可愛いからかばったんだ!俺はあんたをめちゃめちゃにしてやる!と興奮した六に迫られていた。

そこに、東たち一行が近づいて来る音が聞こえて来たので、六は、ヤバいぞ!と振り向く。

先に黄金丸の調理場に来ていたマックは、調理場の中から、ヘロインの入ったトランクを発見していた。

中味を嘗めてみて本物だと分かると、あったぞ!とマックは喜ぶ。

その時、外から銃声が聞こえて来る。

黄金丸の外では、郷田たちと東一味の銃撃戦が始まっていた。

哲はライフルを握りしめ、黄金丸の中に入り込んでいた。

啓子は側にあった鈍器で、背後に気を取られていた六の後頭部を殴りつけ、気絶させる。

そこにやって来た哲だったが、部屋に残っていた六の仲間に殴り掛かられる。

すぐに反撃して倒した哲だったが、こいつらがここにいるとは思わなかったと驚く。

そんな哲に、私を助けたいなら、どうして言ってくれなかったの?と啓子は責めるが、哲はピンがそこにいることに気づくと、ピン、この子を連れて警察に行ってくれと頼む。

ピンの方は、哲の目が見えてないことに気づき、大将!その目!と案ずるが、良いから行け!ピン、頼んだぞ!と哲は怒鳴る。

東!マック!お前たちが相打ちしたのではつまらんと言いながら、ライフルを持って哲が船橋に姿を現したので、それに気づいた東は、奴は目が見えるのか?と驚く。

そんなはずはない!と子分たちは否定するが、哲はライフルを撃って来て、次々に東野子分たちを倒し始める。

それに気づいた東は、分からねえ!だが、見えるはずはねえ!とパニックになる。

そんな中、ピンは啓子を連れ、黄金丸の背後に逃げ出していた。

東も哲に撃たれてしまう。

その時、トランクを持って船の中から出て来たマックが、動くな!と哲の背後から声をかける。

ネコか…と哲は気づく。

さすがのラッコ撃ちも、後までは勘は利かないようだな…とマックは嘲りながら、階段を降りようとするが、油がこぼれている部分に気づかず、足を滑らせてバランスを崩す。

その瞬間、振り向いた哲が発砲し、マックに命中したのでマックは驚き、哲!貴様…、どうして…?と呻く。

簡単なこった。俺もさっきそこで滑ったんだと哲は答える。

マックも死んでいた。

そこに、神奈川県警のパトカーがやって来る。

パトカーを降りた郷田が、哲!と呼びかけながら近づくと、誰だ?と哲が聞くので、郷田だ!本名は麻薬捜査官原田誠一!と答えると、いきなり殴りつけて来た哲は、何故それを早く言わなかった!と哲は怒る。

倒れた郷田こと原田は、殴られた顎を擦りながらも苦笑いする。

哲は、自分が乗って来た船が、再び北海道に戻る日、篠原組の啓子が運転するジープで港まで送ってもらう。

一緒にやって来た、篠原や社員たち、ピンらは、哲との別れを惜しむが、啓子だけは無言なので、篠原は何か言えよと声をかける。

そんな中、哲は元の毛皮を着込んで、船に乗り込んで行く。

社員たちが手を振って見送る中、ようやく啓子が、お元気で!その内、北海道に行くかも知れません。でもその時、私はもう、子馬じゃなくってよ!良くって?と船上の哲に声をかける。

哲は、ああ、分かった!と笑顔で答え、啓子は、さようなら〜!と別れを告げる。

どうだね?ハマの印象は?大分収穫があったようだね?と船長が哲に声をかけて来る。

哲は、毛皮の中からノミをつまみ出すと、お前が横浜のノミか?北は寒いぞと話しかけると、又元の毛皮の中にノミを戻してやる。

船は、横浜港を出港し、一路北海道を目指す。


 

 

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