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幌馬車は行く

赤木圭一郎主演の、西部開拓時代風無国籍映画

季節の花畑を求め、日本各地を転々と移動する移動養蜂隊と言うのが、今でも現存するのかどうか知らないが、「旅ゆく養蜂隊」(1942)と言う記録映画があるようなので、昔は実際にあったらしい。

さすがに、馬車で移動したと言うのは、西部劇風に見せる映画独特のアイデアではないかと思うが、観ていてさほど不自然な感じはない。

不自然と言えば、貨物列車を襲撃して、積み荷を強奪する一味と言う方がちょっと違和感があり、殺人の危険を犯してまでも奪う価値がある積み荷って何だろう?西部劇の中ならともかく、普通に警察が登場する今の日本では、盗品を売りさばくことさえ無理なのではないかと思ってしまう。

途中で、鬼島たちが乗ったトラックの積み荷が一瞬写るシーンもあるのだが、セリフでの説明はなかったようで、その正体をきちんと把握できなかったことも、個人的にすっきりしない部分だ。

幌馬車隊、列車強盗と言う、西部劇風の要素を加えるため、半ば強引に設定したことの無理が出ているのだが、荒唐無稽な娯楽映画と割り切って観れば、特に気にするほどのことではない。

映画としては、美しい自然をバックに、ある意味ロードムービー的な要素もあり、養蜂隊と言う設定の珍しさもあり、それなりに楽しめる展開にはなっている。

ただ、ものすごいサスペンスとか、ものすごいアクションなどを期待していると肩すかしを食う。

比較的牧歌的な物語だと思う。

主演の赤木圭一郎も、ヒロイン役の笹森礼子も、決して達者な俳優と言う感じではないが、共に瑞々しく好感は持てる。

聞き違いでなければ、列車強盗のシーンで、鬼島が赤木圭一郎扮する野上に、トニー!撃て!と命じているように聞こえたのだが、何故、トニーと呼ぶのか説明がなく、分からなかった。

もちろん、赤木の愛称が「トニー」であることは知っているが、役名は野上雄二(キネ旬データ上では雄介と書かれているが、ヒロインは絶えず、ユージさん!と呼びかけている)で、どこにも「トニー」と引っかかる要素がないからだ。

観客も、当時は「赤木=トニー」と言う認識だったので、劇中でそう言う呼び方をしても誰も気にしなかったと言うことなのかもしれない。

当時の日活映画でお馴染みの「劇中でタイアップ商品をわざと写すコマーシャル演出」はこの作品でも健在で、越中八尾駅で話している男たちが飲んでいる瓶牛乳のラベルをはっきり写したり、アサヒの缶ビールとか、「エスタロン」などと言う栄養ドリンク(?)、氷見市でヒロインたちが買物をする店の名前など、これでもかと言わんばかりに大写しで紹介している。

劇中で、悪役の政役の郷英治までもが、蜂蜜をわざとらしく紹介しているので、そう言ったタイアップもあったのだろう。

ちょっと驚かされたのは、実際にミツバチの巣箱の周辺で、役者たちが芝居をしているように見えること。

まさか、ぶんぶん空中を飛んでいるハチたちが、ブルーバック合成されていたとも見えないので、本当にハチが群れ飛ぶ中で芝居をしているのではないかと思う。

実際の養蜂業者などのアドバイスのもと撮っているのだろうが、主役級の人や女優さんが刺されでもしたら…と心配しないでもない。

待田京介が、ハチの研究に一生を捧げる研究者みたいな役で登場しているのも、ちょっと珍しい。

日活時代の待田京介は、どちらかと言うと、まじめで二枚目的な役柄が多かったのだろう。

キネ旬データのキャスト欄には佐野浅夫も出演していると書かれてあるのだが、残念ながら、どこに出ていたのか気づかなかった。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1960年、日活、中江良夫原作、直居欽哉+窪田篤人脚本、野口博志監督作品。

日本中の花を求め、生活雑貨の一切を積んで旅を続けるジプシーのように漂い続ける集団を「移動養蜂隊」と言う。

タイトル

船に乗ったり、トラックで日本中を移動する養蜂隊の映像に、赤木圭一郎の歌が重なる中、キャスト・スタッフロール

走る機関車の屋根の上を走る、覆面姿の男2人。

彼らは、機関室に乗り込むと、列車を停める。

その列車と並走していたトラックも停まり、乗っていた男たちが列車の機関室に入り込み、運転手に銃を突きつける。

その時、機関士助手の缶焚きの青年(山口吉弘)が逃げ出したので、鬼島(水島道太郎)が、トニー!撃つんだ!と命じる。

言われたトニーこと野上雄二(赤木圭一郎)は、迷いながらも、鬼島の命令に背けず、線路上を逃げていた缶焚きの背中に向かって発砲する。

胸を撃たれ倒れた缶焚きの横に立ち、気まずい表情で見つめる野上。

翌日の新聞に、列車強盗の記事が載る。

祭りが行われている越中八尾駅では、地元の男2人が、牛乳を飲みながら、列車強盗が警官隊と撃ち合って山に逃げ込んだらしいとか、撃たれた缶焚きは20になったばかりだったそうだなどと噂話をしていたが、そこへ、「山善養蜂園」と書かれた馬車に乗った1人の老人山善(芦田伸介)が降りて来て、改札口の方へ入って行ったので、山善の爺さん、下りで誰か来るのかな?と不思議がる。

ホームに入った山善は、到着した列車から降り立って、おじいちゃんと呼びかけて来た孫娘の十美(笹森礼子)に、かえって来たか!疲れたろう?と嬉しそうに駆け寄って出迎える。

山善の馬車の御者席に乗り込んだ十美(とみ)は、やっぱり、こっちの空気は美味しい!と喜び、学校の休みはいつまでだ?と手綱を引く山善から聞かれると、9月10日まで、1ヶ月半いられるわと答える。

そんな山善の馬車の前に突然立ちふさがったのは、胸から血を流した野上だった。

馬車から降りた山善は、意識朦朧としていた野上を助ける。

うなされていた野上が気づいたのは、見知らぬテントの中だった。

十美が、ダメよ、まだ起きたりしちゃと声をかけて来るが、野上は慌てたようにベッドの上で何かを探し出したので、これでしょう?と言いながら、十美が、帯留めをペンダントにしたものを差し出すと、野上はそれを奪い取るように受け取る。

ここはどこだい?と野上は聞くが、十美は、あんた、丸2日も寝てたのよ。ここは移動養蜂隊のテントよ、人は私たちのことを「花のジプシー」なんて呼んでる人もいるのよと教えると、あんた、うわごと言ってたわよと言うので、野上は慌てて、何をしゃべってた?と聞く。

そこに入って来たのが山善で、十美の話では、医者も呼ばず、山善が自分で治療をしたらしかった。

誰かに知らせなくちゃいけないんじゃないの?と十美が心配すると、知らせる所なんてありゃしねえと野上は答える。

名前を名乗り、東京から材木の買い付けに来て道に迷い、崖から足を滑らせて落ちたんだ…と説明した野上に、1人でゆっくり眠るこったと言葉をかけた山善と十美は、テントの外に出て行く。

野上は、テントの外の様子を見る。

そこには、数組の男女がハチの世話をしていた。

十美は、養蜂隊の1人岸本(待田京介)に誘われ、水を汲みに出かける。

ミツバチが群れ飛ぶ中で仕事をしている彼らの側に近づいて来た野上は、ハチを追い払おうとするが、払うとかえって危ない。ハチは何もしなければ刺さない。ハチこそおとなしい生き物なのよ。悪人と善人を見分けるのなどと注意され、顔の防護ネットを渡される。

あのハチはどこに行くんだ?と野上が聞くと、2km離れた花畑よ、ハチはどんなに遠くへ行っても、帰巣本能で自分の巣箱に戻って来るのと教えてくれた妙子(堀恭子)は、巣箱の中にいる女王蜂と数万の雄蜂と働き蜂の違い、ローヤルゼリーの効能などを教えてくれる。

そんな妙子の夫は、親父さんのラジオで聞いたんだけど、今も近くで列車強盗があって、その犯人たちを追って山狩りをしているらしい。立山連峰に入ったら逃げられるんじゃないか?などと噂し始めたので、野上は緊張する。

そんな中、山善が1人馬に乗ってどこかに出かけて行き、妙子たちも、変だわ?私たちに黙って…と首を傾げるので、野上は嫌な予感に教われる。

その山善が帰って来て、テントの中で、富山県の天気予報をトランジスタラジオで聞き始めたので、野上は、さっきどこに行ったんです?と聞く。

山善は、行き先を一々言わんといかんのかね?と言い、そんな身体で1kmも歩いたら、又傷が開くぞ。今度はわしの手にも負えん…と言い聞かせるので、どうしてこんなに親切にしてくれるんです?と野上が聞くと、飛び立ったハチは雨に打たれて死んでしまう。どう言う訳か、お前をそんな目に遭わせたくないんだ…と山善は答える。

その時、車が停車する音が聞こえたので、山善は外に出て行き、野上がテントの中から外を覗くと、警察が乗ったジープが停まっていたので、畜生!と呟き、テントの中に置いてあった猟銃に銃弾を詰め、それを持って…とから近くの林の中に逃げ込む。

その直後、林の中に入ってきた山善は、猟銃を持って隠れていた野上に対し、出て来たらどうだ?ブヨに刺されるぞ。それは何の真似だ?気の毒な奴だ。人を信じることができないのか?お前の目はその引き金を引けるような目じゃない。何か勘違いをしているな?あのジープは山狩りの手伝いに来た連中で、怪しい奴を観たら知らせてくれと言いに来ただけだ。わしはさっき、次に行く予定だった花畑を持っている農家に、到着をもう4~5日待ってくれと頼んで来たんだ。けが人がいるんでな。わしには分かっている。お前のその怪我は鉄砲傷だ。わしも昔は満州で士族と渡り合ったものだ…などと言いながら、黙って、野上のてから猟銃を取り上げる。

そこにやって来た十美は、何やってるの?おじいちゃんの話はみんなホラなのよと教える。

巣箱の所に戻って来た十美に、今度こそ成功させてみせるよと意気込みを見せた岸本は、今までのより病気に強い日本固有の女王蜂を作る研究にいそしんでいた。

そんな夢を熱く語る岸本に近づいた野上は、不思議な話だな…、こんなものに男が一生を賭けるなんて…と嫌味を言ったので、岸本とにらみ合う始末になる。

何てこと言うの!と怒った十美が野上を連れて場所を離れて叱ると、妬ましくなったんだ。俺ももう少し早く親父さんたちに会っていれば良かった…と野上がすねた風に言うので、知ってるわ、うわごと聞いたから…。何度もお母さんを呼んでたわと十美は教える。

これは母さんの形見なんだとペンダントを出して見せた野上に、あんた、今日まで1人ぽっちだったのね。おじいちゃんは言ってたわ。あんたは私の死んだ父さんにそっくりだって。私の母さんはおじいちゃんの娘だったんだけど、昔、満州で母さんが知り合った父さんを信じられず、おじいちゃんは2人の仲を引き裂いたのよ。

その後、私を産んで母さんは死んだの。

おじいちゃんは1人で私を育ててくれたんだけど、今でもお酒を飲むと、あの時、あの男を信じられなかったんだと私に謝るの。あんた、私たちと一緒に旅してみない?人間の苦しみなんて、花の匂いに閉じ込められてしまうんだわ…と十美は勧める。

その言葉に従い、野上は、山善養蜂隊の馬車で一緒に旅をすることにする。

しかし、他のメンバーたちは、親爺さん、何であんな男を?と、見知らぬ部外者を仲間に入れたことを不思議がっていた。

場所を移動中、トラックで移動していた同業の高村養蜂園の連中とすれ違う。

高村養蜂園の面々は、いまだに馬車などで移動している山善に呆れているようだったが、山善は、山の中はこっちの方が便利なんだと笑顔で答える。

互いに、又、来年な!と挨拶をしてトラック部隊と馬車部隊は別れる。

山善グループと、食事休憩していた野上は、馬に乗った警官が2人近づいて来て、途中で誰か見なかったか?列車強盗の一味がうろついているかも知れないんだと山善たちに質問して来たので、思わず顔を伏せる。

山善は知らんなと答える。

警官たちが去った後、急いで馬車の御者席に乗り込んだ野上は、いつの間に乗り込んだのか、鬼島の配下で一緒に列車強盗をやった柄政(郷英治)とサブ(鹿島貞夫)が、荷台に乗り込んでいるのに気づく。

政はにやつきながら、1人だけこんな良い隠れ場所見つけやがって…と野上に笑いかける。

山善もすぐに2人に気づき、何だ?お前たちは?と聞くと、野上さんの友達ですと政が丁寧に答えたので、野上は慌てて、2、3度会ったことがあるだけで友達なんかじゃないと否定する。

しかし、政は、丸2日何も喰ってないんです?と泣きついて来たので、仕方なく、山善は十美に、弁当を分けてやるように言うと、次のキャンプ地はみくりが原だ。そこまでで良かったら送ってやろうと政たちに伝える。

その後、旅に同行することになり、テントにいた政に会いに来た野上は、サブと一緒に出て行ってくれ。ここの人たちは人種が違うんだと申し出るが、あんな良い女がいるんだ、めったなことでは降りられねえなどと笑いながら政が答えたので、あの子にちょっとでも手を出したら承知ないぞ!と野上は凄んでみせる。

しかし、政は、俺たちの素性をバラしたら、おめえの素性も分かるんだぜ?と苦笑するだけだった。

そこに、事情を知らない十美が、結婚飛行よ、観に来ない?などと野上を呼びに来たので、もうそんな関係になったのか?と政が驚くと、ハチの結婚飛行のことよと、十美は呆れたように教え、野上を連れて行く。

テントの中に残った政は、あんな良いスケに手を出すななんて…、無理な注文だぜ…とサブに笑いかける。

その夜、山善のテントに十美さんは?と野上がやって来ると、谷川へ行ったぞ…と答えた山善は、あの2人には出て行ってもらった方が良いと政たちのことを言い、俺は1度信じた男は最後までとことん信じるつもりだと言い、野上を見つめる。

十美は、人気のない近くの小さな湖に身体を洗いに来ていた。

服を脱いで水の中に入った十美は、人の気配を感じ振り返ると、そこに政が立っており、俺も一浴びするかなどと言いながら服を脱ぎ始めたので身をすくめる。

そこに政!止めろ!と言いながらやって来たのが野上で、歯向かう政と、殴り合いを始める。

そんな2人の様子に怯えた十美は、すぐに湖を出ると、側の木の枝にかけておいた服を取る。

政と野上はもみ合ったまま湖の中に落ち、喧嘩に勝った野上は、どこへでも消えちまえ!二度と帰って来るなよ!と政に命じる。

政が去った後、雄二さん!と言いながら近づいて来た十美に、分かったろう?俺はそんな男さ…と野上は自嘲する。

あんただけを想って待ち続けている女がいたとしたら…?と十美が問いかけると、思わず野上は、十美と抱きしめるのだった。

山善養蜂園の一行は、やがて川船に乗り込み、庄川峡にやって来る。

三楽園から雄神橋にバスで向かう。

久々に氷見市の町中にやって来た十美と野上は、酒屋で山善用の酒を買ったり、赤ん坊が近々生まれる妙子のために、赤ん坊用の服などを購入する。

すると、女性店員が、2人を若夫婦と間違ったりしたので、2人は照れくさそうに笑う。

その直後、野上は、店の外に立っていた男を観て顔が強張る。

鬼島の配下トム(武藤章生)だったからだ。

野上が近寄ると、兄貴、一緒に来てくれよ。命令なんだよと言うので、先に帰ってくれと十美に伝えると、嫌よ、一緒に帰るのよと十美は、野上の身を案じて反論する。

そんな十美に、十美ちゃん、いつか、後ろを振り返るなって言ったね?そのために俺は行かなければいけないんだと野上は諭す。

トムは、そんな野上を、氷見市中央通りにあるバー「アンカー」に連れて行く。

昼間なので、客もいない地下の飲み屋には、政やサブら子分たちと一緒に、鬼島が待ち受けていた。

野上の顔を見た鬼島は、俺は改心した悪党ってのが大嫌いなんだと皮肉をぶつけて来る。

しかし覚悟を決めてやって来た野上も引かず、ナイフをいじりながら後に立っていたトムに、そいつを俺の背中に投げたって良いんだぜ…と振り向かずに伝える。

鬼島は、柄政の話を聞いてやれと言うので、野上は、抜けさせてもらうぜと言い出す。

すると鬼島は、食い詰めて、のたれ死にしかかっていたのを拾ってやったのは誰だったかな?と言い返す。

政は、おめえが銃を持ってないのは知っているぜと言いながら、自分が持っていた拳銃を野上に投げ渡すと、決闘しようとする。

しかし野上は、待て!と制し、柱にかけてあった舵輪の飾りを撃ってみせ、その腕前が衰えてないことを示すと、帰りますよと鬼島に告げ、階段を登って行く。

そこへ奥の部屋から出て来たのが、列車強盗の現場にも付いて来たあけみ(楠侑子)で、野上の顔を見ると急に笑い出し、仲間と縁を切ったって、シャバに戻れると思ってるの?人殺しのくせに!と吐き捨てる。

立ちすくんだ野上に、鬼島は持って行けよと今、野上が撃った拳銃を投げて寄越す。

野上が店を出て行くと、鬼島は急にアケミの顔を叩き、ばかやろう!野上をかばいやがって!と叱りつけると、俺bに巧い考えがあるんだと、不満そうな顔つきの政たちに告げる。

山に戻って来た野上は、林の中で自分を待ち受けていた十美に気づくと、俺の親爺は陸軍の将校だったが、中国で部下の罪を背負い処刑された。

その後、遺されたおふくろは、家の遺産をおじたちに食い荒らされて死んだ…、その時、おふくろは、この親爺の思い出の帯留めを握りしめていた。

俺はいつの間にか、人を信じない男になったんだ…、お互い、あんまり夢は持たないことだな…と十美に言い聞かせる。

十美は、そんな野上の考えを聞くと、雄二さんのバカ!と言い捨て、先に走って帰る。

その夜、養蜂園のメンバーたちは、十美たちが町で買って来た酒を飲み、くつろいでいた。

弥作(大町文夫)は、「エスタロン ローヤルゼリーゴールド(?)」が身体に良いんだなどと言い、その場で開けて飲み、妙子とその夫も、「エスタロン」を分けてもらって飲む。

そんな中、踊ってくれよと声をかけられた十美は、その場で「草競馬」の音楽に合わせ踊ってみせる。

すると、岸本も立ち上がり、十美の相手をして踊り始め、やがて、仲間たち全員が立上がってフォークダンスのように踊り出す。

そんな様子を煙草を吸いながら座ったまま観ていた野上を、踊っていた山善が誘って無理矢理立たせると、自分と一緒に踊らせる。

翌日、働いていた妙子が、近づいて来るトラックに気づく。

トラックから降りて来たのは、鬼島と、猟銃を持った政たちだった。

政は、先だっては世話になりまして…と慇懃無礼な態度で挨拶して来る。

トラックには彼らが奪った盗品が積んであった。

鬼島は山善に、行く先は同じだろう?運ぶのを手伝って欲しいんだ。俺たちは10日くらい同行させてもらう。仲良くやろうじゃないか?旅は道連れと言ってねと、にやつきながら一方的に申し込み、俺たちのことは、その男に聞くと分かるさと野上の方を見やったので、山善は思わず野上の方を振り返る。

野上は、言うことを聞いた方が良いぜ…と言うしかなかった。

その夜、十美は悔しいわ…と、鬼島らの言いなりになっている状況を嘆くが、山善は、相手はキ○ガイなんだ、辛抱しなさいと言い聞かす。

あんな奴、死んでしまえば良かったのよ!と十美は呟く。

馬車の外では、十美に罵倒されたとも知らず、野上がつらそうな顔でしゃがみ込んでいた。

翌朝、いきなり、銃を持った政が、養蜂隊に向かって、出発!と叫び、鬼島も10分以内に出発だ!と言うので、今花畑に行っているハチはどうなるんだ!と養蜂隊の面々は騒然となる。

食って掛かろうとした岸本は、殴られてしまったので、それを観た十美は、獣!と罵倒する。

すると、あけみが、気をつけた方が良いね、獣は人を殺すことだって何とも思ってないからね~…と十美を脅して来る。

山善は、ここには明後日までいるつもりなんだと説明するが聞き入れられず、やむなく出発するしかなかった。

しかし、移動の途中、巣箱の温度が上がっている!風を入れさせてくれと女性メンバーが訴え、妊娠していた妙子が苦しみ出したので、夫が、馬車を停めてもらおうと言い出すが、あの人たちから何されるか分からないから…と妻は止める。

御者席で馬を操っていた山善は、奴らを追い払う方法はある…と、隣で怯える十美に言い聞かせる。

十美は、馬車の横を歩いていた野上に、雄二さん、私たちをどうするつもり?昔、毒蛇を助けたけど、その毒蛇にかみ殺された猟師の話を聞いたことがあるわ…と嫌味を言う。

次の休憩時間、政は、酒を飲んでいた鬼塚に、騙されたと思って…蜂蜜を飲んでみろと勧め、飲んでみた鬼塚は悪かねえな?と喜ぶ。

そして、サツもまさか、俺たちが蜂屋に化けているとは思うめえ、骨休めしとけと、上機嫌に政に言い聞かせる。

その頃、1人、離れた所で横になっていた野上は、突然目隠しをされたので、あけみdさんだろ?あんたの香水は、この辺の花より強いからね…と迷惑がる。

しかし、野上に気があるあけみは、逃げない方が良いよ。あんた、十美って女、好きなのね?何だあんな小娘!と罵り出したので、俺を1人にしてくれよ!と野上ははねのけようとするが、あけみは無理矢理抱きついて来る。

そこにたまたま近づいて来たのが十美で、抱き合っている2人を見つけると、驚いたように逃げて行く。

妊婦の夫は、そろそろ医者に診せないと…と案じ始める。

そんな中、ハチにたかられた政が癇癪を起こし、側にあった巣箱に向けて発砲し始めたので、それを止めようとした岸本が又殴り倒される。そこにやって来た野上は、政!止めろ!と言いながら、政が持っていた銃を撃ち落とす。

そして、ハチはこの人たちの命だ!と野上は言うので、側で聞いていた鬼島は、この前の列車強盗で、機関士殺したのは誰だったかな?一頃した奴が、ハチを殺すなんて良く言えるな…と嫌味を言う。

そんな状況に嫌気がさした良太と言う少年が、養蜂隊を逃げ出そうとする。

驚いた大人が追いかけて行き、道路にやって来た時、不二越銅材工業と書かれた車が近づき、運転手が近寄って来た良太に、坊や、どうした?鉄砲の音が聞こえたけど?と聞いて来る。

しかし、良太が何も言えないでいる所へ駆けつけた山善が、クマ撃ち用の銃をこの子が悪戯して撃ってしまったんだとごまかす。

良太は、何も否定しなかったが、思わず、車を出そうとする運転手に、おじさん!と呼びかけるが、運転手が何台?と聞き返すと、何でもないよ…、さようなら…と言うだけだった。

車が立ち去ると、心配して駆けつけた鬼塚らはほっとし、出発だ!と全員に声をかける。

赤沢岳、五色原の標識が出ている場所に来た鬼島は、左に進めと命じる。

我々の行き場所は農林局から決められているんだ。左に行くと山に入ってしまうぞ。花がなかったら、ハチは全滅だよと山善は抗議するが、ハチと人間、どっちの命が大切か、良く考えるんだな?と鬼島は脅して来る。

刈安峠の所で逃げ出そうとした弥作を、政が撃ち、弥作は崖から転がり落ちて絶命する。

岸本は激怒し、又殴られ、山善が持っていた猟銃を野上が奪い取ったので、お前たちが獣だってようやく分かった…と、山善は悔しそうに告げる。

鬼沢も、この辺で撃ったって、クマ狩りくらいにしか思われないさと苦笑する。

その頃、先ほど少年に声をかけた工業会社の運転手が、強盗事件の捜査本部に出頭し、山善養蜂園の一行の様子が明らかにおかしかったと刑事たちに申し出ていた。

刑事たちは、天狗小屋から下った辺りだと言うその証言を重視する。

山を登ることになった養蜂隊の面々は、このままではハチは飢え死にしてしまうと案じていた。

やがて、先頭を歩いていた良太が、花畑を見つけたので、山善は、わしたちはここを一歩も動かん!あの花にハチをやってやらんと、俺たちも死ぬ!と迫る。

さすがにそこまで言われた鬼塚は、今日だけだぞ、わがままを許すのは…と、そこで留まることを許可する。

テントの中で、貨物列車を襲った犯人の行方がまだ分からず、その一味は盗品を運んでいると思われる…と言うニュースを聞いていた山善たちだったが、山岳地帯は今後荒れ模様になるでしょう…と天気予報に代わった時、鬼塚の配下にそのトランジスタラジオを取られてしまう。

十美が近くの川で水を汲もうとしていると、近づいて来た野上がバケツを取り上げ、自分で水を汲んでやると、毒蛇だって御を知っている者もいるんだ、そう親父さんに伝えてくれと話しかけて来る。

しかし、側にいたあけみは、あの男は私たちから離れられないんだ。人殺ししたんだからと十美に聞こえよがしに言う。

その夜、ラジオの天気予報通り、山は雷雨になる。

山善のテントに来ていた妙子の夫は、これじゃあ、ハチどころか、我々だって全滅ですよ。妙子だっていつ産まれるか…と案じていたが、そこに十美が、妙子さんが!と夫に知らせる。

妙子の容態は思わしくなく、いよいよ医者を呼ばないと危ないと言うことが分かる。

一方、鬼島たちが集まったテントでは、アサヒの缶ビールを飲みながら、勘づいたかな?あいつらだって、いざとなったら死にもの狂いだ…と山善一行の動きを心配し始める。

早くバラさないと…と政が言うと、俺には俺の考えがあると鬼島は答える。

その直後、誰か来てくれ~!と外で叫ぶ鬼島の配下の声が響いたので行ってみると、妙子の夫が医者を呼びに行くために馬車を奪おうとして、見張り役から殴られていた。

ちょっとでも動くと、土手っ腹にぶち込むぞ!と、政が銃を夫に突きつける。

そんな中、野上は鬼島に、この人は離してやってくれ!6年前、行き倒れになった所を救ってもらった恩は忘れない。でも、この人たちだけは離してやってくれ!と頼む。

しかし鬼塚は、のぼせやがって!構わねえ!叩きのめせ!と部下たちに命じる。

部下たちから袋叩きになり、負傷して山善のテントに運ばれて来た野上に山善は、許してくれ!例え一時とは言え、君を疑ってしまったと詫びる。

すると野上の方も、俺のためにこんな目に遭わせて…とすまながる。

山善は仲間たちに、わしたちもやろうじゃないか!弱いミツバチだって、集まれば牛だって倒せるんだ!と呼びかける。

早朝、養蜂隊の面々は鬼島たちの目を盗み、幌馬車の一台に妙子を運び入れると、野上が手綱を持ち、馬車を出発させる。

明るくなり、起きてそのことに気づいた鬼島は、残っていた山善らに激怒し、政たち2人に馬で馬車の後を追わせる。

幌馬車に乗っていた妙子と同伴して来た女性たちは、背後から追って来た政たちに気づき、御者席の野上に知らせる。

野上は助手席に座っていた十美に手綱を渡すと、素早くは知っている馬車から飛び降り、近くの岩の陰に隠れ、後からやって来る2人の追手を待ち受ける。

野上は投げ縄で通り過ぎた追手の1人を引っ掛け、馬から引きづり落とすと、殴って気絶させ、追手の馬に乗って、馬車に追いつき停止させた政の所に向かう。

そして、自分も馬を降り、政と殴り合いを始めると、十美に馬車を走らせるように声をかける。

その頃、鬼島は、残っていた山善らに、全員で責任を負ってもらうと脅し、逃げた奴を片付けて政たちが戻って来たら出発だ!と命じていたが、その時、接近して来る車に気づいた子分たちが、警官だ!とざわめく。

鬼島は、色めき立つ養蜂隊の面々に、山善の親父のどって腹に風穴が開くぜ!と脅し付け、その場を移動するよう命じる。

現場に到着した刑事や警官たちは、さらに山奥に向かっている鬼島グループと養蜂隊の姿を見つけ後を追う。

鬼島たちは、養蜂隊を人質に、とある洞窟の中に入って行き、その後に到着した警官隊がその入口を包囲する。

鬼島は、良太を捕まえ銃を突きつけ、それ以上来ると、人質の命の保障はしんえ!ガキの命が惜しかったら帰れ!10分だけ待ってやる!と洞窟の中から怒鳴る。

それを入口付近で聞いた刑事たちは、養蜂隊の人たちを助けるのが先決だ!と話し合い、中に入らないまでも退却はしないことにする。

鬼島の配下たちもさすがに動揺していたが、こういうときは粘る方が勝ちなんだ。俺に任せておけ。要するにここさ!と、自分の頭を指しながら言い聞かせていた。

時間はまだある。奴らがどうするか…と鬼島が呟いている外では、警官隊が、後5分か…と焦っていた。

そこに駆けつけたのが野上で、洞窟の中に入ろうとするので、君は誰だ?と刑事に聞かれるが、山善の息子です。親爺が危ないのにじっとしている息子はいないでしょう。ここは俺に任せて下さいと言うと、刑事たちの静止を振り切り、穴の中に入って行く。

野上は、中にいた仲間に向け、持っていた拳銃を発砲し始めたので、野上!てめえ、サツのイヌになったようだな?と鬼島は怒鳴りつける。

その時、来ちゃダメ!と野上に抱きついたのがあけみで、鬼島が撃った弾は、そのあけみの背中に命中する。

倒れたあけみを抱き起こそうとした野上に、話さなきゃないことがあるの…と、虫の息のあけみは言い出し、列車の機関士助手を撃ったのは、あんたじゃなく鬼島だったのよ…と告白し、野上の腕の中で息絶える。

生き残った鬼島とトムが、さらに洞窟の奥へ逃げたので、山善に、親父さん頼みがある。中にサツを入れないでくれ。

例え人殺しはしなかったとは言え、列車強盗の罪は消えねえ…と告白した野上は、そのまま鬼島を追って奥へと進む。

鬼島とトムは、反対側の出口付近で待ち受けていた。

出口の外は崖で、それ以上先に進めなかったからだ。

野上はトムに、出て来い!お前は死なせたくないんだ!と呼びかける。

その誘いにトムは一瞬迷うが、横で隠れていた鬼島は、どうせ出た所で縛り首だ!どうだ!俺と勝負しねえか!と野上に呼びかけると、トムを突き飛ばし撃って来る。

前にも言ったろう?俺は改心した悪党が嫌いだって!と言いながら、さらに撃とうとする鬼島に、転ばされたトムがナイフを投げつける。

ナイフは鬼島の腹に刺さり、驚いた鬼島はトムを撃つ。

野上が鬼島を撃つと、撃たれた鬼島は体勢を崩し、そのまま反対側の出口から落ちて行く。

撃たれたトムに駆け寄った野上は、すまなかったと礼を言うが、トムは、俺はおめえを助けた訳じゃねえ。あいつが裏切ったからだ。誰でも一生に一度くらいまともになりたい時だってあるさ…と言い残し、息絶える。

妙子を医者に預けて馬車で十美が戻って来ると、ちょうど、野上が警察のジープに乗せられ連行される所だった。

雄二さん!と呼びかけながら近づいた十美が、きっと又お会いしましょうねと声をかけると、野上は首にかけていた母親の形見のネックレスを引きちぎり、預けておくよと十美に手渡す。

それを受け取った十美は、これから私たちは北海道へ行くの。11月までよ。来年は伊豆の高原よと居場所を教え、一緒に見送る山善も、必ず戻って来いよと声をかける。

野上を乗せた警察のジープが出発する(赤木圭一郎の唄が重なる)

十美は、野上から渡されたペンダントをじっと見つめる。

その後、山善養蜂園の馬車も出発するのだった。


 

 

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