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嵐を突っ切るジェット機

小林旭主演の航空アクション。

主人公が自衛隊員で、航空自衛隊が全面協力しているように見える所が珍しい。

協力してもらっている分、自衛隊のPR映画風に見えなくもないが、物語の大半は自衛隊の中の話ではなく、民間航空会社の話になっている。

それでも、物語前半部の基地内の様子や、アクロバット飛行のシーンは実機を使った本物であり、その迫力は今見ても素晴らしい。

富士山の横をアクロバットチームのジェット機が飛んでいるシーンなど、随行する飛行機内(同じジェット機内?)から撮っているらしく、自衛隊からの提供映像か?と疑いたくなるほどきれいに撮れている。

芦田信介演じる杉江隊長が、着陸に失敗して炎上するシーンは、激突の瞬間の映像こそないのだが、実物大の残骸に放水したりしている所は特撮ではない。

では、特撮の類いは一切使ってないのかと言うとそう言う訳ではなく、さすがに、後半、チコが操縦するセスナ機が着陸に失敗するシーンや、雷雲の中をセスナ機が飛ぶシーンなどはミニチュアが使用されているが、なるべく目だたないように短く使われている。

ミニチュア特撮を極力使わないようにしているのは、なるべく嘘くさく見えないようにとの演出意図もあるだろうし、ジェット機のシーンに関しては、協力してもらっている自衛隊機が地面に激突するなどと言ったシーンは、フィクションとは言え、さすがに許可が下りなかったのかも知れない。

その効果はあり、全体的に、飛行シーンにチャチさは感じられない。

ドラマも、類型的な青春もののに通俗アクションを付け加えたような印象もあるが、それなりに面白くまとめられており、途中で厭きることはない。

例によって「キネ旬データ」のキャスト欄は間違いだらけで、高品格が演じている「太平洋航空」の整備士氷室と、江幡高志が演じている浜松基地の整備員白井の名前が逆になっているし、チコ・ジャクスンを演じているアフリカ系の外国人は、この当時、日本映画に良く出ていたチコ・ローランドではないと思う。

確かに同じような口ひげを生やしており、ひょっとすると、この作品の後、急激に太った可能性もないではないが、もっと痩せた別人で、キャストロールにただ1人カタカナ表記で出て来た「ホーへ・N・ナビー(?)」とか言う人ではないかと思う。

吉行和子さんが芦田信介の妻役だと思うが、出ているのも珍しい。

芦田信介の妹役で出ているヒロイン役の笹森礼子さんとあまり年が違わないのが、若干気にならないではないが、調べてみたら、吉行さんの方が笹森さんの5つ年長らしく、兄の嫁だったら、不自然ではなかったと言うことになる。

ただ、芦田信介さんと吉行さんの年はいくら何でも離れ過ぎており、後妻とかでもないと不自然な気がする。

笹森さんは、男所帯の民間航空会社をまとめあげる、積極的で明るいヒロインを好演している。

大物三国人劉昌徳を演じている山内明と言う人が、あまり悪役らしく見えず、普通のサラリーマンのおじさんみたいなのがちょっと物足りない気もしないでもないし、沖縄のシーンなども、セットで撮られているだけで、あまりそれらしく見えないこともあり、沖縄でのシーンが若干分かり難い面はある。

千石の女房役で、「男はつらいよ」のおばちゃん役三崎千恵子さんがちらり登場しているのも見所の一つ。

この頃からずっと、所帯染みたおばちゃんが似合う人だったことが分かる。

悪役イメージが強い郷英治さんや江幡高志さん辺りが、爽やかなパイロット役や純情な整備士と言うのも珍しいし、同じくクセの強い悪役イメージの草薙幸二郎さんが、ドクトルなどとあだ名を持つ好人物を演じているのも楽しい。

そうした中、葉山良二さんだけは、いつも通り、屈折した人物像を演じている。

劇中、東京タワーや首都高など、高度成長期の東京の町並みの空撮が登場して来るのも嬉しい。

▼▼▼▼▼ストーリーを最後まで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1961年、松浦健郎原作、星川清司脚色、蔵原惟繕監督作品。

航空自衛隊アクロバット・チームの補欠要員榊拓次二尉(小林旭)は、久々に兄英雄(葉山良二)と隊長の妹杉江マキ(笹森礼子)が4年振りに会いに来てくれたので、浜松基地で行われていた航空記念日の式典に遅刻しそうになるが、英雄とマキの2人を乗せ、ジープで何とか駆けつける。

途中、運転する拓次は、兄との久々の再会で陽気になり、ずっとトランジスタラジオの音楽を付けっぱなしだった。

基地内にやって来ると、仲間たちがバンドを鳴らして拓次の来るのを待ち受けていた。

すぐさま式場である講堂に入った拓次は、そこにいた隊長でマキの兄でもある杉江道彦(芦田伸介)に挨拶をし、そのままステージに向かうと、バンドの演奏をバックに得意の歌を披露し始める。

英雄と一緒に会場内にやって来たマキは、道彦に兄さん!と声をかける。

道彦は昔なじみ英雄に、マキの面倒を見てもらってすまんな、あれも跳ねっ返りだから困るだろう?などと親し気に話しかける。

ステージ上で一曲歌い終わった拓次は、自己紹介をした後、自分は補欠ですから乗れません。今日はヤケです!などと挨拶をしていたが、そんな会場に片桐司令(二本柳寛)と小宮副司令(鴨田喜由)がやって来て、拓次の搭乗を許すとの話が出たので、それを聞いたマキは、ステージ上の拓次に、ヤケストップ!飛べるわよ!と声をかける。

ステージ上で、その声を聞いた拓次はぽかんとしていた。

隊長の杉江と共に飛び立ったアクロバットチーム4機

3号機の操縦席からNo.3!と応答したのは村上吾郎(郷英治)、そして、同じく4号機からNo.4!と嬉しそうに答えたのが榊拓次だった。

タイトル

基地内の格納庫では、アクロバットを終え帰還した道彦が英雄にジェット機に乗らないか?と誘っていた。

もう、セスナに乗って、ビラばらまいている時代じゃないよ。これからはジェットの時代、宇宙時代さと拓次も誘うが、英雄は、こっちだって地を這いずるような仕事をしているだ。もう帰る。これから行けば汽車に間に合う。今日は良いもの見せてくれてありがとうと礼を言い、さっさと帰ってしまう。

拓次はマキを連れ、その後、レコード屋に寄ってジャズのレコードを見て回るが、マキは、拓次に買ってやろうかと思ったのか、自分の財布を確認しながら、ボスから帰りの汽車賃もらうの忘れた!と慌てる。

先に帰った英雄のことを言っているのだった。

兄貴、最近変わったな…、さっきもちょっと気になることを言っていた。地を這いずるような仕事をしているなんて…、俺たちの親父は空で死んだ…と拓次が暗くなると、あんたはジェット機とジャズでしょう?

東京タワー

海岸沿いの埋立地にある「太平洋航空会社」

そこにやって来たのは、セスナ機の機体の検査官たちだった。

千石(高原駿雄)は、建物の入口で椅子に腰掛け昼寝していた仲間に、検査だ!起きろ!と声をかけに行く。

あごひげの久保田(草薙幸二郎)は、他所のヘリばかり飛びやがる…と、オンボロセスナ機が3機しかない「太平洋航空会社」には少しも仕事が来ないことを愚痴る。s

そんな中、1人元気にポンコツ車を磨いていたのは、アフリカ系のチコ(ホーへ・N・ナビー?)だった。

憧れのマキとのデートを期待しているらしかった。

事務所では、英雄が、ビラまきの仕事を1時間3000円も値切られ、1時間1万6000円にしろとよ!と電話を切るなり、怒っていたが、そこに整備士の氷室(高品格)が、大将!又、承認降りませんと、管理官と共に言いに来る。

管理官は言い難そうに、航空会社も競争の時代で、お宅のこの施設では、6〜7年前までなら通用したんでしょうが…と、既に時代遅れの会社であることを英雄に通告する。

それを聞いた英雄は不機嫌になり、帰れ!と管理官に怒鳴りつけると、ビラまきだ!と仲間たちに命じる。

一方、拓次たちアクロバットチームは、その日も富士山の上空を杉江隊長と共に訓練飛行中だったが、そんな中、突如、隊長機から煙が出ていることに拓次が気づき呼びかける。

隊長の杉江道彦も異常に気づき、名古屋タワーにエマージェンシーを送る。

片桐司令が機体を放棄しろ、君の命の方が大事だ!と管制塔のマイクで呼びかけるが、道彦は何とか基地に独力で帰投しようと頑張っていた。

しかし、基地間近で操縦不能になり、そのまま隊長機は地面に墜落してしまう。

基地内の消防車が出動する中、隊長機を整備したのは自分だと名乗り出た白井(江幡高志)も、無理矢理墜落現場に向かう車に乗せてもらう。

帰投した拓次や村上たちもジープですぐに現場に直行するが、隊長機は無惨に燃え上がっており、道彦は帰らぬ人となる。

呆然とそれを観ていた拓次に、駆けつけて来た氷室が、隊長を死なせたのは俺だ!としがみついて来たので、拓次は追い払おうとするが、氷室は拓次の足にしがみついて泣き出す。

やがて、道彦の告別式が行われ、妻の夏子(吉行和子)が、自衛隊員たちが整列する中、遺骨を持って車に乗り込む。

そんな中、拓次や村上たちアクロバットチームの面々は、チームを解散すると片桐指令から聞かされ、必死に抗議するが、君たち1人に国民の税金が5000万も使われているんだ!と指令から反論される。

自分たちがやっているのは曲芸ではありません。実戦に備えるためにやっているんです!と村上も猛抗議するが、既に決定済みと言うことで相手にされなかった。

拓次は納得いかない気持ちをジェット機の先頭空洞部分に向かって叫ぶが、興奮冷めやらぬ拓次に帰ろうと、兄の英雄が声をかけ先に車へと向かう。

しかし、自分の車に乗り込もうとした英雄は、同じく別の車で来ていた男から声をかけられ、そちらの車に同乗するとどこかへ向かって行く。

その様子を、夏子と同じ車に乗り込んでいたマキが目撃する。

英雄が乗り込んだ車に乗っていたのは、昔、闇屋をやっていた時代からの知り合いで、今では、国際的な闇の商人になっていた劉昌徳(山内明)と言う第三国人と、その部下の宮田(土方弘)だった。

劉は逃亡したのと新聞記事に乗っており、昔、潰れかけていた英雄と父親の航空会社に援助したと恩着せがましく言い、又新しい仕事を頼もうとしていたのだった。

しかし、英雄は乗り気ではなく、降りようとして、2人から止められる。

その頃、自宅に帰り着いていたマキと夏子は、道彦と英雄が仲良くしていた昔の写真などを取り出して思い出に耽っていた。

そこにやって来た英雄が、仏壇に香典を置いたので、誰からの?新聞に載っていた方ね?頂く理屈はありません!と夏子が言い渡す。

その後、河原でトランペットのリードを1人吹いていた拓次に会いに来た英雄は、今日の基地での片桐指令への暴言や無礼な態度に付いて注意する。

しかし、拓次の方も、兄貴!今までどこに行ってたんだ!俺にははっきり言えないのか!随分大物になったんだってな?あの三国人…、あの時は仕方なかったけど、今度はダメだよ!と、劉と付き合うことを止めようとする。

そこにやって来たのが村上で、飛ばされたよ、俺とお前。神奈川基地だ。今日の首謀者だったからな…と、片桐指令に反抗したことへの処分と割り切って伝える。

神奈川基地に移ってからの拓次は、糸が切れた風船のように毎日、自分の好き勝手にジェット機を飛ばし、基地で待っていた赤松飛行隊長(井上昭文)への詫びとして、毎日罰金を払ったあげく無一文になったので、今日は掃除を自らやると申し出る。

控え室の床に水を撒き、両手にブラシを持って掃除を始めた拓次は、スクランブルの合図が出ても掃除を続けていたので、かねがねそんな拓次の捨て鉢な態度にいら立っていた村上が、榊!立て!スクランブルだぞ!と声をかけるが、どうせレーダーで誘導されて連れて行かれるだけだろう?などと拓次が興味なさそうに答えたので、村上はバケツの水をぶっかける。

首からぶら下げていたトランジスタラジオをゆっくり外してテーブルに置いた拓次が、黙って村上に殴り掛かる。

村上も受けて立ち、説教しようとするが、村上、止そうよ、つまらないよ…。ここの空にはぶつける物がない。それが欲しいんだなどと拓次が聞いた風なことを言うので、俺には何のことか分からんと村上が答えると、だから、お前は幸せ者だと言うんだなどとからかい、ますます村上を逆上させる。

しかし、村上と喧嘩をした拓次は南司令(河上信夫)に呼びだされ、ばかもん!別命あるまでフライト禁止だ!10日間の休暇をやる。どこへでも行って頭を冷やして来い!と叱りつける。

拓次は黙って部屋を出て行くが、男のヒステリーだと南指令は呆れるが、一緒に部屋にいた他の上官は、彼らとは世代の違いを感じますね…とぼやくのだった。

「太平洋航空」のボロビルの屋上で風速を計っていたマキは、突然やって来た拓次に驚きながらも、あっさり受け入れ、これから注文取りよと言うと、一緒にチコのボロ車で営業に出かける。

営業先の会社の担当は、マキに色目を使って来るが、今度来た運転手よとマキが紹介した拓次が一緒にいるのであっけにとられる。

マキは、その会社の大量のパッケージのようなものを拓次に車へと運ばせる。

途中、拓次が運転していたボロ車が路上でエンストしたので、拓次は、何だ?この車…と呆れながら降りるが、マキが運転を代わるとあっさり動き始める。

「太平洋航空」のボロビルにやって来た拓次は、建物内をうろついている野良犬を見つけたので捕まえようとすると、ちょうど、目薬を差していたチコを発見する。

拓次は榊だと名乗ると、お前、目が悪いのか?どの程度悪いんだ?パイロットにとって目は命だからななどと話しかけるが、いきなり自分の弱みを見られたと思い込んだチコは、俺の目は悪くない!と言いながら殴り掛かって来る。

すると拓次は、そうか、悪いこと言ったな、お前のことは誰にも言わない。俺もお前もパイロットだと言い、野良犬を抱えて部屋を出て行く。

屋上に行くと、マキがトライアングルを鳴らしており、夕食の準備をみんなに知らせているのだと拓次に教える。

夕食はバーベキューだと言うので、一緒にテーブルについた拓次は、喜んで串刺しの肉を口にするが、すぐに口から出し、こりゃ、何の肉だ?と呆れる。

これは鯨よと賄いのおばさんと一緒に作ったマキが教える。

みんなが集まったその場で、英雄が拓次を弟だと紹介し、拓次には会社の仲間たちを紹介すると言うと、仲間たちが互いに紹介し合うことになる。

チコ、百姓こと千石、ドクトルこと久保田、元自衛隊員だったと言う堂本(江角英明)、油虫こと整備工の氷室…と紹介されて行ったので、席を立上がった拓次は、まだ一人紹介されていない奴がいるぜ、俺の兄貴で、あだ名は俺が付けてやる。英雄(えいゆう)だ!と褒めるが、聞いていた英雄は無言だった。

その後、マキは拓次に噓をついていたことを謝っていた。

兄貴は飛んでないじゃないか!と、会社の実状を見た拓次は怒っていたのだった。

今でも英雄は、昔のように民間パイロットとして飛んでいるものとばかり思い込んでいたからだった。

俺の知っていた兄貴はもっと純粋だった…、親父と一緒に飛行機を守っていたんだ。その兄貴はどこへ行った?と嘆く拓次に、私の兄もその話をしてたわ…と、亡くなった道彦のことをマキも言う。

杉江さんはいない!2人ともいない!と拓次は悔しがる。

その頃、自室のベッドに寝そべり、煙草を吹かしていた英雄は、道彦から、自分と一緒に自衛隊に入らないかと誘われていた頃のことを思い出していた。

その頃、英雄は、闇トラックで油の運送をやっていた。

しかし、当時の英雄は、俺には親父ゆずりの飛行場があると言って、道彦の申し出を断ったのだった。

ビルの屋上にいた拓次はマキに、兄英雄が戦争中にいつも身につけていたと言うマスコットのペンダントを見せていた。

翌日、「太平洋航空」からセスナ機が飛び立っていた。

一方、ボロビルの中では、興奮したチコを必死に止めているマキがいた。

マキがチコの目が悪いことを知っており、病院に行った方が良いと勧めたのを、チコはてっきり拓次がしゃべったと思い込み探しに行こうとするので、慌ててマキが止めていたのだった。

マキは以前から、チコの目のことは知っていたのだった。

いくらマキがそう言っても、興奮しているチコには通じず、入口の椅子に座っていた拓次を見つけるとつかみ掛かる。

しかし、拓次も動じず、止めろ!俺はしゃべっちゃいないとチコに言い聞かすが、チコは納得せず、俺の目は悪くない!俺と一緒に飛んでみろ!と抗議すると、無理矢理拓次を整備途中だったセスナに乗せると、自分が操縦して飛び立つ。

首都高の上空をチコが操縦するセスナは飛ぶ。

その頃、高架下にある「龍安公司」と言う事務所に来ていた英雄は、劉から、あんたは7年前、麻薬商売の片棒を稼いだじゃないかと迫られていた。

その頃の英雄は、セスナの一台でも欲しかった頃だった。

今又、劉は英雄に、沖縄までブツを運んでくれと頼んでいた。

日本には信用できる男はいない。この割り符を持って行けば、あんたが行かなくても誰に行かせたって良いんだ。渡航手続きは出来ているんだ。ここは私の最後の隠れ家、あんたは私の最後の隠れ蓑なんだ!金がなけりゃ、あんたの航空会社は元の埋立地だ!と劉は説得する。

チコは無事操縦を終えて、「太平洋航空」に帰還しかけていたが、太陽光を観た時、急にそのまぶしさに耐えかねたのか、着陸時、機体がふらつき、翼などが壊れてしまう。

驚いて駆け寄って来る仲間たちだったが、英雄はチコに、何故操縦した!と言いながら殴りつける。

それを観かねた拓次は、兄貴、俺がやったんだよと噓を言い、俺が直してやる!と破損したセスナの修理を自ら申し出る。

翌日、再び「龍安公司」にやって来た英雄に、劉は、偽名で作った渡抗許可証を渡す。

その許可証を持ち、沖縄にセスナで飛び立つことになったのは千石だった。

オンボロビル内の事務所にやって来た拓次は、朝から兄の英雄の姿が見えないことに気づきマキに聞くと、フライトプランでは名古屋までってなっているけど、きっと沖縄まで行くつもりよとマキも気づいていた。

そこへ、英雄の友人と言う唐山(梅野泰靖)と言う男ら3人がやって来て、英雄の居所と、日本中をかき回している死の商人劉昌徳と言う男を知らないかね?と聞いて来たので、君はデカさんだね?と拓次は見抜く。

金山は、君は自衛隊だから、僕らは兄弟みたいなもんだねと冷静に答え、唐山警部ですと名乗ると、自分の名刺をマキに渡して部下たちと一緒に立ち去る。

その名刺を見た拓次は、防犯部麻薬課と書かれていたので、忌々しそうに名刺を破り捨てる。

沖縄に到着した千石は、市場で、子供に持って帰る人形を買っていたが、その頃、一緒に沖縄まで来ていた英雄の方は、地元のギャング連中に取り囲まれていた。

そこに、何も知らず帰って来た千石は、話を立ち聞きされたと因縁を付けられ、部屋の中に引っ張り込まれると、制止する英雄の目の前でナイフで突き殺されてしまう。

その夜、「太平洋航空」のオンボロビルの中では、ベッドの上でチコがトランペットを奏でており、それを仲間たちが全員で聞いていた。

しかし、その部屋に拓次が入ろうとすると、何故か邪魔されたので、俺だけ仲間はずれだ!と言いながら、強引に部屋の中に入ると、チコのトランペットを奪い取り、勝手に吹き始める。

チコは返せ!と迫るが、自分を仲間はずれにしようとする連中を拓次は、肝っ玉が小さいぞ!貴様らみんなクズだ!と挑発する。

すると、ドクトルたちもムキになり、けんかが始まるが、一緒にいたマキは、ペットが壊れちゃう!とけんかを止めさせると、拓次の手を引いて部屋から出る。

そして、あんたはバカよ!何でそんなにムキになるの?あんたは自衛隊でアクロバットをやっているときが一番充実しているのよ。スリルがあるし。でもそれじゃただのJJよ!どこまで行ってもJJよ!こんな吹きだまりにしか来るしかないあの人たちの悲しさが分かる?あなたは強いわ。一人でも生きていける!とマキは拓次に言い聞かす。

その時、強風で部屋の扉が開いたので、慌てて2人はドアを閉め、外が大雨になっているのに気づくと、みんなを呼び寄せ、2機のセスナを飛ばされないように固定するよう頼む。

マキと拓次は協力してセスナの機体を地面に固定する。

翌朝、オンボロビルの入口にいた拓次は、チコにタバコを勧めるが、チコはまだ心を開いておらずその場を無視して立ち去る。

しかし、ドクトルがやって来て、拓次の煙草をもらい笑顔になる。

氷室も、夕べは良くやったなと声をかけて来た。

他の仲間たちは、夕べのセスナ機固定の仕事を一緒にやったことで拓次に心を開いたようだった。

そんな仲間たちに、拓次は、今夜俺に付き合わないか?と声をかけると、今日は給料日だったな…と仲間たちも乗って来たので、俺がおごるぜと言い出した拓次は、チコの馴染みだと言う店に行くことにするが、肝心のチコは1人行かないとすねていた。

しかし、その夜、ジャズ演奏をやっているバーにやって来た拓次たちが飲んでいると、送れてチコがやって来たので、拓次は立上がって出迎え、手を差し出す。

すると、少し遅れてチコも手を差し出し、2人はがっちり握手して仲直りする。

チコは演奏していたアフリカ系のメンバーたちに声をかけ、拓次に歌わせろと勧めたので、驚いた拓次は立上がりながらも、サックスをメンバーから借り受けると、その場で吹き始める。

その夜、オンボロビルの屋上にいた拓次に気づいたマキが、まだいたの?と声をかけながら近づくと、よう、教えてくれよ。おれ、こんがらがっちまったんだ。俺の気持ちが分かんねえなどと言うので、進歩したのよとマキがからかうと、君が俺に吹き込んだんだからだと拓次は逆襲してきたので、子供じゃなくなったのよとマキは笑う。

翌日、チコ、ドクトル、堂本たちがセスナの整備をしている所へ英雄が帰ってくる。

事務所に来た英雄に、マキは、ボス!ビーチクラフト機を買うようですけど、払えるの?と予算を心配する。

そこにやって来た拓次が、千石が帰って来ないけど、沖縄か?と英雄に問いかける。

すると、英雄は、直接家に帰ったんじゃないか?金も十分にやったと言い捨て事務所を出て行くので、何だか変ね?いつもと違うとマキは案ずる。

自室に戻った英雄はベッドに横になるが、すぐに人が近づいた気配に気づき、籐椅子の方に移る。

入って来たのは拓次だったので、何見てる!出て行け!と怒鳴りつける。

ドクトルこと久保田が乗り込もうとしていたセスナに近づいた拓次は、八丈か?郵便だろう?俺が代わろうと声をかけ、自分が操縦してセスナを発進させる。

それを見送るマキ。

誰もいなくなったオンボロビルに突然やって来たのが劉で、1人残っていた英雄に、隠れる場所はないかと言うので、慌てた英雄はすぐに空き部屋に案内する。

一方、セスナで八丈に向かった拓次は、帰りに、千石の実家に立ち寄っていた。

千石の家は、7人の子供たちを、千石の妻(三崎千恵子)が1人で面倒見ており、拓次が挨拶すると、千石は元気ですか?何の因果で飛行機乗りを辞められないんですかね〜などと言い、最近、千石と会ってない様子。

会社に戻って来た拓次は、兄貴はどこだ!と氷室に聞き、ビルの中に入って行く。

そんな所へやって来たのが、劉の子分の宮田だった。

宮田と劉は、唐山刑事が1人で近づいて来たことに気づくと、建物内から外へ小石を投げて相手の気をそらし、その隙に近づいて拳銃で頭を殴りつける。

その頃、英雄の部屋にやって来たチコとマキが英雄に、2人で何を企んでいるの?と劉のことを問いつめていた。

英雄は、劉を目撃したチコがマキに教えたことを知り、殴り掛かる。

そこにやって来た拓次が英雄の手を握り、殴るのを止めると、兄貴!千石はどうしたんだ?千石は家には帰っちゃいない!と聞くが、英雄は顔をそらし、知らん!と言うだけ。

沖縄で何があったんだ?と問いつめた拓次だったが、兄が答えないのを知ると、ベッドの下を探し、そこから大量の写真を見つけ出す。

そこに写っていたのは、麻薬中毒患者たちの悲惨な姿だった。

これは?一体何なんだ!と拓次が聞くと、劉の仕事をやった結果よ。何十万と言う人の生活破壊…と、前々から薄々事情を知っていたマキが打ち明ける。

英雄は、俺1人でやることだ!と突っぱねるが、違う!みんなを裏切ることだ!死んだ親父はあんたが自慢だった。俺にとっても、いつもあんたは英雄だった。

親父は一生この飛行場にしがみつき、あんたと2人で飛んだんだ。俺だって夢だったんだ!と喚きながら、床に散らばった写真をかき集める拓次。

それでも、英雄が出て行こうとするので、お願い!行かないで!とマキは止めようとするが、俺はやらなければならん!と言い英雄は出て行く。

その後を追った拓次は、邪魔するな!と言われ、英雄に殴られ、その時落としたマスコットのネックレスを英雄は拾って持って行く。

チコも英雄と拓次の諍いを止めようとする。

飛んでみろ!飛ばねえから腐ってしまうんだ。飛んでみろ!死んだ親父が言ってたろう、空は一つだって!俺と一緒に飛んでみろ!あんたもパイロットなら飛んでみろ!とセスナ機に近づいた英雄を捕まえ、操縦席に無理矢理乗せようとする拓次は、いつしか泣いていた。

そんな拓次に言い聞かせるように、やらなきゃ、この飛行場はぶっ潰れるんだ。俺の気持ちが分からんのか!と英雄は答えるが、俺が言ってるのは違うんだ!と拓次は泣き叫ぶ。

そんな2人の側にやって来たドクトルたちは、ジェット、君の命令ならどんなことでもやる!と拓次に声をかける。

その時、マキの火事よ!と言う叫び声をみんなは聞く。

出火場所は、油のドラム缶が積んである倉庫だった。

拓次たちが一斉に消火に向かった時、表に出て来た劉が、今のうちに付いて来い!と銃を英雄に突きつけるとセスナ機に乗せようとする。

火を点けたのは劉たちだったのだ。

そこに近づいて来たチコが、俺が飛ぶんだと劉に絡み、操縦席に乗り込む。

拓次たちが、ドラム缶など運んでいる時、チコの操縦するセスナ機は飛び立って行く。

ビルの一室に閉じ込められていた唐山刑事が、流血しながら、劉昌徳が逃走したので、航空自衛隊の緊急出動を要請電話をしていた。

劉と英雄とチコがセスナで飛び立ったことに気づいた拓次も、もう一機のセスナ機に乗り飛び立つ。

拓次は無線で、兄さん着陸してくれ!このままでは自衛隊に連絡するしかない!不明機は撃墜されることになる!と警告するが、返事をしたのは劉で、やってみろ!兄貴も黒○ぼも死ぬんだぞ!と逆に脅迫して来る。

やむなく拓次は名古屋空港の管制塔にナイトフライトの要請を頼むが、台風が接近していることもあり、セスナのナイトフライトに許可が下りるはずもなかった。

拓次は神奈川基地から、ジェット機に乗り込もうとするので、仲間たちが全員で止めようとするが、その時、指令の命令が出たとのことで、拓次は無事ジェット機に乗り込むことができる。

雷雨の中、飛行するチコのセスナに、台風の中に入ったら、万に一つも助かる可能性はないぞ。こっちはジェット機だ、すぐに追いつくぞと拓次は無線で再度警告する。

そんな中、突然操縦をしていたチコが見えないと言い出す。

副操縦席に座っていた英雄が、俺に任せろ!と操縦を代わるが、その際、VHFのスイッチをこっそり入れたのを劉は見逃さなかった。

俺は騙されんぞ!思い切り低く飛ぶんだ!と劉は中を英雄に突きつけて命じる。

チコたちが乗ったセスナを発見できず、一旦神奈川基地に戻った拓次は、休む間もなく、ジェット機に乗り込もうとするので、浜松から移動していた整備班の白井が、榊さんはもう体力を使い果たしておられます。止めて下さい!と声をかけてくる。

しかし、拓次はそれでも飛び立って行く。

海岸線沿いを賢明に捜索していた拓次だったが、やがて、不時着していたセスナを発見する。

近くの空港に着陸し、ジープでセスナ機の元へ向かった拓次は、操縦席に駆け寄り、誰も乗っていない事を知ると、兄さん!と周囲を探し始める。

その時、草むらの中から立ち上がり、ジェット!と声をかけて来たのはチコだった。

拓次が近寄ろうとすると、劉たちの仲間が銃撃をして来る。

チコ!伏せるんだ!と拓次は叫ぶが、次に瞬間、チコは被弾して倒れる。

そこに駆け寄った拓次は、チコの身体をかばうように覆いかぶさる。

英雄のことを聞くと、いくら呼んでも返事がなかったと言うチコの目が、もう見えていないことに気づく。

拓次は、銃を持っている敵の1人に近づくと、岩の上から飛びかかり、殴り倒して銃を奪い取る。

英雄を連れて、岩場を逃げていた劉に発砲して牽制した拓次は、劉に飛びかかって行く。

もう1人の子分の銃を奪おうとした英雄は、相手に撃たれながらも、反撃して相手を撃ち殺す。

劉を叩きのめした拓次は、岩場に倒れていた英雄に駆け寄る。

そんな拓次の腕の中で、空は一つだ…と言いながら息絶えた英雄は、マスコットのペンダントを最後まで握りしめていた。

そんな兄を抱きしめながら、兄さん!死んじゃ嫌だ!と絶叫する拓次。

アクロバットチームが復活することになり、元のチームに戻った拓次は、自衛隊を辞める決心をし、その日が最後のフライトになるので、マキも観に来ていた。

みんな飛んでるか?とジェット機に向かう拓次が聞くと、あんたが帰って来たら飛ぶんだってはりきっているわとマキは答え、チコの目は手術をすれば直るとも教える。

そんな拓次に、兄さんもきっと見てるぞ!と同じチームの村上が声をかける。

管制塔の中では、片桐指令たちも観に来ており、榊を思いとどまらす説得はしてみたのか?と聞いていたが、赤松飛行隊長が、それは無理でしょう。あいつは今、人生の一番難しい曲がり角ですと答えていた。

その管制塔の中から拓次のラストフライトを一緒に見守っていたマキは泣きながら、あの人は、どんな生き方を空の男ですと呟く。

飛び立ったアクロバットチームの村上が、榊、お前、一体何が欲しいのか?俺たちは雲の上でしか生きられんぞ。それでも行くのか?バカな奴だ…と無線で拓次に呼びかける。

拓次は、リーダーに離脱を告げると、一機だけ編隊を離れ、太陽に向かって上昇して行く。


 

 

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