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THE NEXT GENERATION パトレイバー 第1章

冒頭のシバシゲオ整備班長の言葉で、巨大ロボットなんてアニメの中でくらいしか通用しない代物だとまず断り、世のオタクたちをさっさと置いてきぼりにすると、後は、現実世界に巨大ロボがあってもこんな感じですよ…と、一見ありふれた退屈な日常生活を過ごす若者たちをゆる~く描いた作品。

「エピソード0」で、アニメ版と実写版の時間経過と設定の変化をざっと説明し、「エピソード1」で、新しい第三世代のキャラクター紹介と、非常に特殊な勤務体制の説明を行っている。

このため、事件らしい事件はこの作品ではまだほとんど登場していないと言って良い。

最後の最後で一応事件らしき物が起こるが、アニメのロボット対決のようなスペクタクルを期待しても、この予算の雰囲気では期待する方が無理と言う物だろう。

この第二小隊の勤務体制は異常と言うしかなく、こんな体制に耐えうる人材など、現実にはほとんどないのではないかと思えるが、予算の少なさを逆手に取ったアイデアのように感じる。

本来なら、もっと隊員の数を増やして、現実でも出来そうな体制にする所を、最初から6名だけの二班体制にすると言うアイデアで、主要なキャストも絞り込んでいる訳だ。

そして、現実にはほとんどパトレイバーが出動するような事件などめったに起こらないと言う設定にし、その分、暇を持て余した若者たちのじゃれ合いみたいな日常生活を描いている。

その辺の意図を飲み込めば、地味ながらも、これはこれで面白いと言える。

そもそも最初から押井監督作品だと分かっているので、アニメのようなものは期待していないし、松竹絡みでは予算もないことも察せられる。

多少のアクションは最終劇場版でやるのだろうし、それまでの小出しの作品はそのお膳立てのような物だろう。

マルチメディア展開用に作られた作品であり、一種のイベントムービーとして楽しむべき作品だと思うし、一見、衛星放送用の安っぽいドラマ映像のように思えても、これを映画館上映の形で観ると、結構楽しめたりする。

冒頭の説明篇であるだけに、あくまでもプロローグ、序章として、今後に繋がる伏線などを探りながら、その世界観に馴染むのが良いと思う。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

2014年、「THE NEXT GENERATION パトレイバー」製作委員会、「エピソード0」押井守脚本+田口清隆監督、「エピソード1」押井守脚本+監督作品。

エピソード0

朝、歯磨きしながら、開いた「特2」と書かれたシャッターの外に出てみた警視庁警備部特科車両二課 整備班シバシゲオ(千葉繁)は、上空を飛ぶ飛行機を観る。

構内に入ると、部下たちが皆、お早うございます!と挨拶して来る中、イングラム輸送車両の後に座り、タバコを吸い始めるシバ。

ハイパーテクノロジーの急速な発展と共に、あらゆる分野に進出した汎用人間型作業機械「レイバー」…

しかしそれは、「レイバー犯罪」と呼ばれる新たな社会的脅威をも生み出すことになった。

警視庁は、本庁警備部内に「特課車両二課」を創設してこれに対抗した。

通称「特車二課パトロールレイバー中隊 パトレイバー」の誕生である。

「栄光の特車二課」

…てなことで、今を去ること十数年前、1998年に創設された「特車二課」だったが、その栄光は短く、苦難の道は長かった…(…と、タバコを吸い終わったシバは物思いにふけっていた)

元来が、「特車二課」はレイバー運用のノウハウを蓄積するために創設された実験部隊であり、レイバー大隊構想を横目に観つつ、取りあえずつばをつけておこうと言う官僚らしい発想から出発した部隊だったから、出世の王道たる警部内にあって優位な人材がこれに当てられるはずもなかった…

気が強過ぎて島流しにされたキャリアの女隊長と、頭は切れるが、やる気があるのかないのかさっぱり分からない水虫の隊長…

そして、この隊長が選抜した隊員たちが問題だった。

ソフトウエアに無知なロボットフェチの少女、泉 野明…

能書きが多い割に1人じゃ何も出来ない若者篠原遊馬

トリガーハッピーな粗暴な警察官太田功

コンピューターには強いが度胸の欠片もないサラリーマン、進士幹泰

操縦者志望ながら巨体故にレイバーに搭乗出来ない悲劇の巨人山崎ひろみ

そして、足りない女っけを補うかように、アメリカから人材交流でやって来た帰国子女、香貫花・クランシー

「特車二課」と言う組織のその後の運命を決定づけたその6人の隊員たちも、数年を経ずして部隊を去り、以下は第二世代の隊員たちを迎えたが、これが又しかし、つまんない奴らだったな〜…

もう名前も忘れちまった…

篠原遊馬は父親の会社篠原重工のレイバー開発主任におさまり、その開発部専属のテストパイロットになった泉 野明とは、公私にわたるパートナーとなった。

悲劇の巨人は帰郷して稼業を継ぎ、水虫の隊長は、例の暴力警官やサラリーマンと小さな警備会社を設立…、だが、放漫経営と無茶な業務内容が祟って、1年を待たずしてあえなく倒産…

進士幹泰は友人とソフトウエア会社を設立して成功したが、太田功は暴力事件を起こして収監中、例の気の強い女隊長は、噂では、難民高等弁務官事務所のスタッフとして中東の難民キャンプで働いているらしい。

水虫の隊長は杳として行方が知れない。

で、今の「特車二課」はと言えば…、バブル崩壊後の長期的不況から、警視庁レイバー大隊構想も市場の夢と消えた。

「第一小隊」は解体され、レイバー運用経験継の続と言う名分の元、かろうじて存続を許された「第二小隊」

その装備はと言えば…、改造を重ねて、もはやメーカーサポートも怪しくなった、出戻りの98式AVが2機と、そして…、3代目の隊員たちはと言えば…、はぁ〜…、落日の「特車二課」…、警視庁の盲腸集団…、栄光の日々…、今何処にありや…

タバコを吸い終わり、建物の中を見回ったシバは、大きなため息をつくのだった。

そのシバは、いつの間にか横に立ってイングラムを見上げている少女の姿に気づくと、苦笑いをする。

好きだね〜、相変わらず…シバがそう話しかけると、少女はうん…と答える。

毎日眺めているのも良いけど、その正義の味方みたいなポーズ、止めた方が良いぜ…、レイバーはジャイアントロボでもマジンガーでもないし、お嬢ちゃんも少年ジェットじゃないんだから…とシバは言い聞かす。

でも、正義の味方でしょう?私たち…とお嬢ちゃんと呼ばれた少女

正義の味方は、「特車二課」の良き伝統だったけどね〜…とシバは呟く。

だった?…と戸惑う少女。

正義なんてもんは、今は15歳以下の専売特許なんだ…とシバ。

まぁ、それはそれとして…と少女が言ったので、何だ?とシバが聞くと、私の1号機、又少し変わってません?頭の辺りが、何かこう…と少女が聞くので、音響センサーとMAアンテナのレイアウトをいじったんだ。干渉してるんじゃないかって言ってたろう?とシバが答える。

そうそう、頭部を動かす時に、角度によってヘッドセットが…と呟いていた少女だったが、急に笑顔になりシバを観ると、直してくれたんだ!と感激する。

苦労するよ、本当…、部品はおろか、サポートも怪しい期待だからな〜…とシバはぼやく。

で、今は動きます?と聞く少女に、動くよ、5分以内ならなと笑いながら答えるシバ。

かつては、警視庁きっての金喰い虫とか盲腸とか言われていたけど、今じゃただのお飾り…、神社の狛犬みてえなものだ。立つことくらいしか、動かすこともないだろう…と諦め気味のシバ。

外国要人が来日する時、警護出動して、はったり聞かせるくらいしか仕事ないし…と少女も哀し気に付け加える。

そもそも戦場の上空を無人機が精密ミサイルを抱えて飛び回っている御時世に、二足歩行ロボット…、それも人間を搭乗させ運用しようなんて発想が、二廻りも時代遅れなんだ。二足歩行ロボットなんて、今時日本以外に世界のどこを探したってお目にかかりゃしない。

その日本の中を眺めたって、一部の工事現場を除けば、メンテの手間ばっかりかかるレイバーなんて、とっくにお払い箱になっちまったし、ライバルだった陸自のレイバー部隊も解体されちまった!と、いつの間にか離れていった少女に気づかず、独り言を言っていたシバのもとにやって来た淵山義勝(藤木義勝)が敬礼し、整列しました!と報告する。

巨大ロボを操縦して系譜を書き、搭載砲で戦闘するなんて、所詮はアニメの中に登場した与太話に過ぎない!と、部下からハンドスピーカーを受け取ったシバはまだ独り言を言っていた。

二足歩行なんてファンタジーに入れ込んじまったお陰で、日本のロボット技術はいつの間にか後発の国の後塵を拝するようになっちまった!

二足歩行ロボットと言う存在自体が、純粋な工学技術の成果と言うより、ある種の願望やフェチズムの産物だったんだ!要するに…とシバは1人で興奮しながらしゃべっていると、一緒に付いて来た淵山が、でも、自分は嫌いじゃないっす!と横やりを入れて来る。

するとシバは、俺だってそうだよ!と部下に怒鳴りつけ、ようやく、少女など既に側にいなくなったことに気づくと、ちっ、くっそ〜と呟き、整列して待ち構えていた部下の元に近づく。

班長訓辞!一同傾注!と淵山が整備班全体に声を挙げる。

良いか?手前らに、急速と言う二文字はねえ!直ちに作業を開始する!あのポンコツの2号機を今日中に稼働状態に持ち込め!と、作業台の上からハンドスピーカーで呼びかけるシバ。

はい!と即答する部下たち。

特車二課整備中隊、隊歌斉唱!と部下が叫ぶと、全員で「正しい整備員の歌」を「アインス、ドゥ、トゥリー、ス♪」と歌いながら、作業に向けて行進して行く。

時は移り…、人も又変わる。祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり…か…、個性的な初代、凡庸な二代目、そして三代目は無能と相場は決まっちゃいるが…と、シバは心の中で呟き、「安全第一」と書かれた神棚風の棚の上に飾られた初代班長の遺影に敬礼をする。

変わらないのはこの俺と、特車二課のパトロールレイバー、98式AVだけだ…。

いや〜…、改造を重ねて、こいつも随分変わっちまったが…と、シバはイングラムを見上げながら心の中でため息をつく。

もう1度見せてもらおうか…、「特車二課」の良き伝統って奴を…と、振り返ったシバは腰に両手を添え呟くと、少し笑って歩き始めるのだった。

エピソード1

飛行機が近くの国際飛行場に降下して来る下、川沿いの土手の道をベスパに乗ってやって来た少女。

整備場の中では、整備員たちが立ったまま忙しそうに朝飯をかき込んでいた。

そこに混じって飯を食い始めたのは、 特車二課 第二小隊二班 キャリア担当御酒屋慎司(しおつかこうへい)と、特車二課 第二小隊二班 操縦担当太田原勇(堀本能礼)だった。

大田原は、あんな女呼ぶな。飯がまずくなる!と吐き捨てるように言う。

机に座り、きちんと合掌して食事を始めた特車二課 整備班 班長シバシゲオは、いきなりデザートに箸を付け始める。

そんな整備場の中にベスパで到着した少女こそ、特車二課 第二小隊一班 操縦担当泉野 明(真野恵里菜)だった。

一足違いでチャリでやって来て、明に、オッス!と声をかけて来たのは、特車二課 第二小隊一班 指揮担当塩原佑馬(福士誠治)

珍しく早いじゃない?と明から言われた佑馬は、天気良かったからなと答え、そのままチャリで奥にある98式イングラムの前を通過する。

「三代目出動せよ」

8時35分

何かあるか?と二課の事務所内で大田原が聞くと、何かって言いますと?と御酒屋(みきや)がキーボードを打ちながら聞き返す。

互いに目も合わさない。

何かニュースはないかと聞いてるんだと大田原が苛つきながら聞き返すと、別にないと思いますけど…と御酒屋はタイピングを続けながら答える。

又書き込みか?良く厭きないものだ…、ニュースを見ろと大田原が言うと、さっき観ましたと、キーボードを打ちながら御酒屋が答える。

で?何かあるだろ?と大田原がしつこく聞くが、何も…、今日も日本は平和です…と御酒屋は答えるが、何かあるだろ!と突然立上がった大田原がいら立ったように怒鳴りつけて来たので、呆れたように、ありませんってば〜と言い返す。

そのとき、部屋に入ってきた明が、どうした?2人とも…と興味なさそうに話しかけて来る。

何でもない!と大田原が、苦虫をかみつぶしたような顔で答えると、食べてすぐ怒ると寿命が縮むよ…と明は諭す。

すると、良いです!僕なんて、長生きしたって…と、御酒屋は自虐的に答えたので、明は苦笑し、暗いな〜、良い天気なんだからさ、もっと爽やかに生きようよ!と2人に言い聞かせる。

そこに、天気がなんだって?と言いながら、チャリを担いで上がって来たのが佑馬。

何でもないと明が言うと、せっかくの天気なんだ。もっと爽やかに生きようぜと佑馬も同じようなことを言う。

そこにロシア語で挨拶しながら入って来たのが、特車二課 第二小隊二班 指揮担当エカテリーナ・クラチェヴナ・カヌカエヴァ、通称カーシャ(太田莉菜)だった。

ヘビイスモーカーのロシア人女性だったので、早速、煙草に火を点けようとライターを開けようとするが、カーシャ、構内全面禁煙になったんだ、忘れたのか?と佑馬が注意する。

火、点けてないわとカーシャが言い訳すると、でも、点けるつもりだ?と佑馬は言い返したので、でも点けるつもりよと、又ライターを開けようとするので、禁煙だ!全面禁煙になったんだと佑馬は念を押す。

カーシャは立ち上がり、なおも言葉をかけて来た佑馬に、うるさいんだ、バカ!とロシア語で返事したので、佑馬は唖然とし、明は笑う。

自分用の小型扇風機を点けた佑馬に、ねえ、カーシャって、何でカーシャなの?と明が聞くと、何だそれ?と佑馬は興味なさそうに返事したので、カヌカエヴァさん家のクラチェヴナ、エカテリーナ…、それが何でカーシャなの?と聞き返すと、ネットで調べれば良いだろと佑馬はいら立ったように答える。

検索の仕方分かんないよ〜と甘えたように明が言うと、ゲームばかりやってるからだよ、御酒屋さんに頼めよと佑馬は面倒くさそうに言い、御酒屋も、今度調べておきま〜す!と生返事をする。

大田原が、缶ジュースを飲みゲップをしたので、臭えんだよ!親爺!と佑馬は切れる。

下の作業場で打ち合わせをしていた整備班の若者たちは、中二階部分に立っていたカーシャが何か口パクで言っているようだったので、リフトに乗り近づいてみると、ライター!と言うので、慌てて、3人の整備士は自分のライターを取り出す。

すると下から、手前ら、何やってんだ〜!と怒鳴られたので、3人とも火の点いたライターを差し出したポーズのまま、リフトが降りて行く。

作業に集中せい!と竹刀を振りかざし、鬼のような顔で叱ったのは、特車二課 整備班 副班長、淵山義勝だった。

8時56分

そろそろ儀式の時間だな…と、掛け時計を観ながら佑馬が言う。

遅いね…と明も答えていると、僕ならいますけど…と突如、特車二課 第二小隊一班 キャリア担当山崎弘道(田尻茂一)が声をかけて来たので、急に湧いて出るなよ、びっくりするだろうが!と佑馬は文句を言う。

すると、身体は大きいが気は小さそうな山崎は、すみません!と頭を下げて来る。

メンバー全員揃った所で、二班指揮官カーシャたちから一班指揮官佑馬たちへの任務交代の儀式が始まる。

一班がその後の宿直勤務を始めることになる。

敬礼を終えると、カーシャはすぐに煙草を出す。

明はゲームを始め、佑馬は航空機の雑誌を読み始める。

大田原は、一応、周囲を気にしながらも、引き出しの中に入っていたポケット瓶を取り出し酒を飲み始める。

山崎は、鶏小屋で、「タツオ、ヒロヒデ、マコト、コウジ、ミホ、サチコ、サナエ、ジュンコ」などと勝手に名付けた鶏たちの世話を始める。

鶏が生んだ卵が、といを伝って床に置いたトレイに集まって来る。

御酒屋が、宿直の報告書を出しに事務所を出て行く。

中二階のロビー部分にいたカーシャはけだるそうに手すりに身を持たせかけ、下の作業場の様子を観ていた。

御酒屋は隊長室に入ってみるが、隊長はいなかった。

仕方なく、御酒屋は下の作業場に降り、隊長を捜し始める。

見つからないので、作業中だった、シバに声をかけ、隊長、まだ来てないようなんですが、ご存知ありませんか?と聞く。

後藤田さん?とシバが聞き返したので、隊長、1人しかいないと思うんですけど…と御酒屋が答えると、昔はもう一人いたんだけどね〜とシバは言う。

警部部長の呼び出しで本庁行ったらしいとシバは教え、何故か愉快そうに笑う。

11時5分

そろそろ注文の時間だけどと明がゲームをしながら言うと、何だ、もう昼飯の心配かよ…と雑誌を読みながら佑馬は答える。

だって、今から予約しとかないと、昼は混じゃない…と明は言う。

どうせ、また上海亭だろ?と厭きたように佑馬が言うと、他に出前もって来る所ないんだから、仕方ないじゃんと明もつまらなそうに答え、いらないわけ?と聞く。

喰うよ…と答えた佑馬は、当番誰だっけ?と聞く。

御酒屋さん、出前の申告!と明が声をかけると、カニチャーハンお願いしますと御酒屋は手を挙げると、肉ネギラーメン大盛りに半ライスと佑馬は答え、大田原は、カツカレー大盛り!と頼む。

カーシャは五目焼きそばと頼む。

ひろちゃんは?と明がメモを取りながら聞くと、又、鶏でも構ってるんじゃないか?と佑馬は言う。

チキンラーメンでも頼んどけと大田原が冗談を言うと、御酒屋も変な声で笑い出す。

明が部屋を出て行くと、暇つぶしに無駄話でもしませんか?と御酒屋が提案する。

どうせ、大した話じゃないんでしょう?とカーシャがバカにしたように言うので、だから無駄話と言ってるだろ?と佑馬が声をかけ、それで?と御酒屋に聞く。

隊長が本庁に呼ばれたらしいです。しかも朝一番に…と御酒屋が教えると、警備部長にか?と寝ていたようだった大田原が聞いて来る。

事件か?と大田原は言うので、警備部には事件も事案もないの!捜査課じゃないんだからとカーシャがバカにする。

緊急に要人の来日ってありましたっけ?と御酒屋が聞くと、でも朝一番はないだろと佑馬は答え、出動絡みなら、隊長が戻ってくれば分かるとカーシャは当然に要に言うので、それじゃ、話が終わっちゃうだろと佑馬は苛つく。

だからテロだと言っとるだろうが…と、寝ているような大田原が言う。

だとしても、僕たちは警備に動員されるだけですから…と御酒屋が答え、事前に呼びだされる訳がないか…と佑馬も考え込む。

もしかして…、例の話じゃないですかね?と御酒屋が言い出したので、例の話って、あの話?と佑馬も乗って来る。

特車二課がついに解体されるって、本庁じゃもっぱらの噂らしいですからねと事情通らしい御酒屋が言う。

ただの噂なんじゃないの?ただの噂でデマかも知れないじゃない!と佑馬はやや興奮気味に御酒屋に詰めよる。

確かに、ただのデマだって話もありますねと御酒屋は肯定したので、どっちなんだよ!と佑馬は切れる。

すると、大田原が立ち上がり、どっちでも良い!と怒鳴り、潰せるもんなら潰してみやがれ!と啖呵を切る。

潰せるんじゃないの?警察の官僚なんてどこも同じ、下っ端の都合なんか関係ない…と、タバコを吸いながら、冷めた口調でカーシャが言う。

すると大田原は、聞いた風なこと抜かしやがって!と怒り出し、おめえの親爺はAKBの…と言うので、御酒屋が「KGB(カーゲーベー)」と小声で訂正すると、高級将校だったそうじゃないか!大田原はカーシャを責める。

お前はその後進の…「FSB」から交換研修で日本生きてやがるくせしやがって!親子揃って国家警察のエリートだろうが!と大田原が悪口を続けると、何だと!とさすがに聞き捨てられないと言う風にカーシャも立上がり、どこの国の下っ端も同じね。向上心のないバカは、吼えるだけで噛み付けない脳なし!あんたみたいな脳なしは、子孫を残さないように祈ってるわ!とロシア語でバカにする。

大田原も、俺と喧嘩するなら日本語で語れ!とけんか腰になったので、そん2人をなだめながら、噂が本当かどうかはともかくとしてですよ、今頃こんな半端な部隊が生き残っていること自体が奇跡みたいな物ですからねと御酒屋は言い、まあ、確かに…と佑馬も同意する。

何故、サッサと潰しちまわないんでしょう?と御酒屋が問いかけると、俺ならすぐ潰すけど?と佑馬は答える。

ほらやっぱり…、あれですかね?と御酒屋が言うと、あれってあの話?と佑馬も興味を示す。

先代の隊長が残していった遺産…と御酒屋が言い、下手に触れると警備部が吹っ飛ぶ時限爆弾だろ?と佑馬は教える。

すると、ただの噂ですけどね?と御酒屋は繰り返し、デマかも知れないじゃんと佑馬も同じことを繰り返す。

どっちでも良い!と又後藤田が立上がると、どっから来たんだろうな?その話…と、佑馬が無視して聞く。

古株の整備員の間ではそう言うことになってますけど?と御酒屋が言うと、その古株は誰から聞いた訳?と佑馬は突っ込む。

すると、シゲさんらしいですけどね…と、あっさり御酒屋が教える。

ああ〜…、あの人も良く分からない人だからな〜…と佑馬は困り顔になる。

ところで、出前どうなったんだ?と大田原が聞くので、秋田が今注文取ってる所だろうが!と佑馬は苛立たしそうに言い、そこに明が。ああ、参った…、みんなバラバラなんだもの〜と愚痴りながら戻って来る。

毎日同じ店ので前喰ってるんだ。メニューくらい選ばないとなと佑馬は悪態をつき、明は上海亭に電話を入れる。

肉ネギラーメンとかにチャーハンと…と明が注文を言い出すと、ああ、分かった、分かった、お前らチャーハン喰いたいんだろ?チャーハン30人前だななどと、勝手に上海亭の主人は答える。

明の電話の様子がおかしいので、どうした?と佑馬が聞き、何だか良く分からないけど、今日はチャーハンしか出来ないって言ってるみたいと明が答えると、何だと!と鬼の形相のような大田原が電話を取り上げ、貴様!チャーハンしか出来ないってどう言うことだ?と脅すように聞く。

黙らっしゃい!お前らは俺の作るもん、喰ってりゃ良いんだよ!もし上海亭がなかったら、お前ら今頃のたれ死にだぞ!と上海亭の主人もいら立って来たようで、それを聞いた大田原は、やかましい!俺と喧嘩するなら日本語で語れ!と電話口に怒鳴る。

もう良いよ、チャーハンで…と佑馬は諦め顔で言い、御酒屋はカニチャーハンなら出来るんでしょう?と聞く。

私、五目チャーハンとカーシャが言い、明は、私、エビチャーハン!と言い出す。

上海亭の主人は、分かった、分かった、チャーハンな?すぐすぐ…と言い、電話を切ってしまう。

主人は慣れた手つきでリズムを取りながらチャーハンを作り始める。

「中華・定食 上海亭」

上海亭は、軽トラで整備棟にやって来ると、主人自ら客寄せを始める。

その間に、運転席にいた中国人は、パトレーバーの本物を観て感激し、カメラで盗み撮りする。

どうやら本国でコピー商品を作るつもりらしい。

ちぇっ!結局、みんな揃って五目チャーハンかよ!と佑馬は文句を言いながら、下で他の整備員たちと一緒にチャーハンを食うはめになる。

作るのも簡単だし、皿洗うのも簡単だしな。そもそも個皿使ってませんよ!などと御酒屋たちも文句たらたらだった。

その内、御酒屋がチャーハンに生卵をかけ、合うと言うので、隣にいた大田原も真似する。

午後、イングラムの前で、淵山副長の号令の元、整備班有志による空手の型練習が始まる。

中二階から、良くやるな〜と佑馬が感心して観ていると、手すりにもたれかかってその様子を観ていた明は、食後にあんな運動して良いのかな〜?と呟く。

その時、アナウンスが聞こえる。

どうやら、外の草刈作業をやると言うことだったので、明はがっくりする。

整備班と特車二課の面々総出で外出し、倉庫の外の海岸縁の草を刈り始める。

そんな中、カーシャは1人、AKを持って銃剣術の訓練を始める。

それを観た明は感心し、親父さん仕込みの銃剣術だからなと佑馬が言うと、シバも銃剣術もそうだが、あのAK、最近のモデルガンは見事なもんだな〜と、カーシャが持っている銃に感心する。

あれって、電動弾かな?ガス弾かな?などとシバが言うので、佑馬と明は黙って草刈を始める。

5時10分

大田原が、帰宅しようとしていた御酒屋の腰にしがみつき、車に乗せると、一緒に飲みに行こう無理強いをする。

シバは、それじゃ、後は頼む。何かあったら電話な…と淵山に頼み、自分はヘルメットをかぶってバイクのエンジンをかける。

カーシャも赤いバイクに乗り、帰ろうとしていた。

特車二課の24時間常時待機は、隊員たちの自己犠牲、つまり、個人生活の全面放棄によってかろうじて成立しているに過ぎない。

特車二課本来の二直制は二個小隊の交代制、すなわち、訓練を稼業とする早番の小隊と、即時待機任務に就く遅番の小隊が一週間ごとに交代することによって実現されていた。

第一小隊が実質的に消滅し、第二小隊のみで臨戦態勢を維持している現在、二直制は小隊6名のみで実現せねばならない。

これがどう言うことかと言えば、つまりこうだ。

第二小隊6名は、装備する二機のレイバーを運用するために、2つの班で構成されている。

すなわち、一号機指揮担当の佑馬に操縦担当の明、キャリア担当の弘道、そして2号機指揮担当のロシア女カーシャと操縦担当のアル中大田原、キャリア担当のパチプロ御酒屋

この2班が日替わりで即時待機任務に就くと、一体どう言うことになるか?

準待機班の3名は、前日の宿直班から即時待機を受け継ぎ、即時待機班となる。

宿直明けの3名は準待機体勢に移行し、帰宅は許されるが、緊急事態に供えて、常に所在を明らかにし、携帯の電源を切ることは許されない。

総員出動がかかれば、夫々が指揮者に従いレイバーに乗る。

で、即時待機班の3名は直ちに宿直に入り、翌朝に始業9時に非番明けの3名に引き継ぐまで即時待機任務に就くことになる。

つまり24時間勤務

このシフトを日替わりで維持すると言うことは、つまり、24時間勤務と8時間勤務を交互に繰り返すことを意味する訳だが、これを別な言い方で述べるならば、特車二課第二小隊6名の隊員は16時間のインターバルを挟んで、常時任務中と言うことであり、最低睡眠時間の6時間と出退勤時間の2時間を除けば、個人として消費し得る時間は2日に1時間しかないことになる。

しかも6名全員が独身であるから、掃除洗濯炊事買物と日常生活を維持するための活動時間も重要だから、プライベートな時間はさらに少なくなり、つまり…、2人シフトのコンビニエンスストアと変わりない状況と言うことになる。

厚生労働省の見解がどうであれ、公務員たる俺たちに人権はない。

「人権」の大文字テロップ

人権がなければデートする権利もなく、それ以前に合コン、ナンパ…と、彼女をゲットする権利もなく、結果として結婚する権利も、家庭を持つ権利も、子供を作り育てる権利もなく、いや…、それどころか酒を飲む権利も、好きな物を喰いにいく権利もなく、日々、整備班の軍隊飯と、上海亭の出前と、コンビニ飯で最低限の生活を維持することしか許されないと言うことがある。

俺たちに人権はない。

従って、青春もなく自由もない。

ある物と言えば任務とレイバーと、陰険なロシア女やアル中の親爺や女房に逃げられた人格破綻者と言ったステキな仲間だけであり、それは一体何のための状況かと言えば、つまり…、正義の実現のためなのだ。

「正義」と言う大きな文字のテロップ

更に言うなら、隊長は1人しかいないので、緊急出動の呼び出しを除けば、通常勤務だけだ。

お帰り!と、コンビニからチャリで帰ってくる途中、ペットボトルがぶつかるなどしながらも戻って来た佑馬を迎えた明は、山崎と将棋崩しをやっていた。

隊長から電話あったよ。遅くなったから本庁から直帰するって…と明が教えると、直行、直帰か…、良いよな、隊長は…と佑馬はうらやましがる。

何の話だったろうね?と明が言うが、さあな?と佑馬は答えるしかない。

佑馬が缶ビールを取り出し、夜は若者の天国だ!シゲさんも帰った…などと言っていると、こんなこと繰り返してると地獄に堕ちるんだからねと秋田は睨み、この埋立地が地獄なんだよ!飲むもの飲まずに正義がやってられるか!と佑馬は言い、プルトップを開ける。

私たちの夕飯は?と明が聞くと、焼き肉弁当も有機野菜カレーも品切れだったと佑馬は言い、レジ袋の中を覗いた明は、何だ!カップものとおにぎりだけじゃん!とがっかりしたように言う。

贅沢抜かすな!買い出しに感謝の念が足りんぞ!と佑馬は言い返すが、夕飯にカップだったら、夜食はどうするのさ?と明は膨れ、隣に座っていた山崎は、ダメなんですよね、あのコンビニ…、橋の向うの上羽まで行けば色々あるんですけど…と言うので、行けってこと?と佑馬は問いかける。

人権も青春もない俺たちにあるものと言えば、それは膨大な時間だけだ。長い、ほとんど無限とも言える待機の時間をどう潰すか、それが俺たち第二小隊のメインテーマだった。

訓練でもするかと言えば、何しろ、動かせば、どこかが壊れると言うレイバーだから、シゲさんの厳命によって、訓練は必要最小限以下に押さえられており、どこかの国の空軍のような有様だから問題外。

テレビは知能を低下させる陰謀としか思えず、レンタルDVDにはたちまち飽食し、読書は高尚過ぎ睡魔を招くのみであり、危険ですらあった。

結局、落ち着いた先はこれしかない。

ほぼ全員がネット中毒に犯されるのにさしたる時間はいらなかった。

シャッター音に気づいた佑馬は、俺を撮ったのブログにアップするの禁止!と、横のソファでアイパッドをいじっていた明に命じる。

何となく撮っただけ…と明は微笑む。

勤務中の書き込みは禁止と先日お達しが出たろう?と佑馬が叱ると、だから呟いてないってば〜!と明は怒る。

気になった佑馬が明の横に座り、何観てるのかな~と言いながら覗き込むと、人のタブレットの賊なんて最低〜!と明は離れる。

元の椅子に戻った佑馬が、何かニュースあるか?と話題を変えると、ない!今日も日本は平和です!と明は即答する。

本当かよ?と疑りぶかそうに佑馬が聞き返すと、平和を信じられない性分なんだ?と明は笑う。

正義の味方だからな〜…と佑馬は言い、だから、何かニュースないのかよ!とちょっと苛つく。

自分で観れば良いじゃんと明は素っ気なく答えると、嫌いなんだよ、ニュース…と佑馬は、模型の部品を磨きながら言う。

その時、非常ベルが鳴り響き、警視庁警備部より特車二課!杉並区方南町方面に201発生!601体制に移行せよ!と言うアナウンスが聞こえる。

イングラムの赤色灯が自動点灯する。

整備班たちも601体制だ!と言いながら、構内に飛び出して来る。

装備を着た佑馬は指揮車に乗り込み、明はイングラムに乗り込む。

鶏を抱えて鶏舎にいた山崎の元にも、装備を持った整備班が駆け寄り着替えさす。

トランスポーターに乗せるか?と佑馬が整備班に聞くと、俺は班長の許可が必要ですよ。勝手に乗せたらどやされますよ!と言うが、又誤報っすよ!と若い整備員が言い、先輩にどやされる。

602が出てからじゃ間に合わん、明602下手だし…と佑馬は心配する。

操縦席に乗っていた明は、それを聞いて、失礼なこと言うな。この間メーカーでシミュレーションして来たんだから…と膨れる。

一号機改造しまくったから、シミュレーターも適応してないんだよと佑馬が言うと、一発で決めるから。操縦担当を信用しろ!と明は答える。

信用出来ないから言ってるんだ!と佑馬も譲らない。

そこに、バイクでシバが戻って来て、勝手に乗っけるんじゃねえ!と怒鳴る。

又あちこち壊されてたまるか!と言うので、でもシゲさん…と佑馬は指揮車の上から頼むが、どうしてもあいつに乗っけるって言うんならな、俺を轢き殺してからにしろ!とシバは、指揮車の前に立ちふさがる。

明、整備班長のお達しだ。踏みつぶせ!と佑馬は無線を送り、それを聞いた明は、ええっ!と驚く。

冗談だよと佑馬は言い、部下たちに作業を命じたシバは、隊長はどうした!と聞くと、山崎が今来ますと答え、そこに車が到着する。

パジャマにコートを羽織っただけで降りて来たのが、特車二課 第二小隊 隊長後藤田継次(筧利夫)だった。

601だって?と後藤田が聞き、杉並区方南町で201だそうですと佑馬が伝えると、201?俺は808だって聞いたぞと後藤田は怪訝そうに言う。

それを聞いた全員驚き、808と言ったら、自爆テロじゃないですか!マジですか?と佑馬は唖然とする。

すると、後藤田は、冗談だ…とさらっと言う。

その時、先ほどの杉並区方南町201は誤報と判明、601体制は解除のアナウンスが構内に響き渡る。

それを聞いた整備班の若者が、ほらなと言うと、ほらなじゃねえよ!とシバは切れる。

腕時計を確認した後藤田は、俺が若い頃はな〜と部下に説教していたシバを後に車に乗り込むと、じゃあ、帰るから!後15分でマンユーとチェルシーがキックオフなんですよ!と言い残し、さっさと帰って行く。

その後、ゲームをしていた明は、夜食でも喰うかと佑馬から声をかけられると、カップしかないよと答える。

カップで良いと佑馬は言うので、何それ?まさか、作れって言ってるんじゃないだろうね?と明が聞くと、作れと言うので、嫌だ!と明は答える。

頼むから!と佑馬は頼むが、嫌だよ!と明が無視すると、分かったよ!良いよ!自分作るよ!と佑馬が言うと、私、醤油味、汁は少なめ、麺は固めねなどと明が言うので、何だよそれ?と佑馬は呆れる。

お前、友達いねえだろ?と佑馬は嫌味を言う。

弘道呼んで来いよと言い残し立上がると、お湯沸かしに行くんでしょう?ついでに呼んでくれば良いじゃないと、ソファーに腹這いになりゲームをしながら明は答える。

あ、そう…と言い、一旦立ち去りかけたと見えた佑馬だったが、突如、明に飛びつくとヘッドロックをかける。

弘道も呼び、3つのカップ麺に佑馬がお湯を入れていると、お湯が少ないんじゃない?と明が言って来たので、良いんだよ、これで。俺が新しく開発した喰い方教えてやるからと佑馬は言う。

私、普通が良いんだけど?と明は不満そうに言うが、良いから、任しとけって!と言った佑馬は、ストップウィッチで時間を計り始める。

1分経って佑馬が動き出したので、まだ早いんじゃない?と明が注意すると。良いんだよ、これで…と言いながら、佑馬は、カッターナイフでカップに切込みを何個も開け、カップ焼きそばのように、中野湯を捨て始める。

そしてスープを半分くらい入れて、蓋が付いた状態でシェイクして中味をかき回す。

何これ?と明は呆れるが、佑馬は、騙されたと思って黙って喰え!食感は焼きそばで味はラーメンなんだよと言う。

それでも明は、私、普通が良いと反抗する。

だから、騙されたと思って喰え!と佑馬は勧めると、横に座っていた山崎がそのカップを手に取る。

麺を一口すすった山崎が固まったので、明も割り箸を割り、そのカップを取り上げてみる。

一口食べた明は、騙された…と言い、山崎は泣き出す。

お前な〜!この野郎!と立上がった佑馬が明の頭を掴んでいると、又非常ベルが鳴り、特車二課!霞ヶ関で202発生!601体制に移行せよ!と言うアナウンスが響き渡る。

佑馬は指揮車に乗り込み、明は、行きます!と待機していた整備班に声をかけ、イングラムに乗り込む。

山崎も装備を着込む。

トランスポーターに乗せるぞ!と佑馬が言うと、だから、あれは班長の許可がいると整備班が答え、又誤報っすよ!と若い整備員が言い、お前、そう言う態度はな〜と先輩にどやされる。

602が出てからじゃ遅いんだって、明の奴が…と佑馬がいら立つと、操縦担当を信用しろ!と明が膨れ、指揮担当に従え!と佑馬が命じていると、又バイクでシバがやって来て、勝手に乗せんじゃねえや!と怒鳴る。

淵山が班長!と呼び掛け、隊長はどうした?とシバは聞く。

ここにいますと、先ほどと同じ恰好の後藤田が車の横に立っていたので、今度は霞ヶ関で202ですと佑馬が伝えると、202?おれは909と聞いたぞと言う。

えっ!909って言ったらクーデターじゃないですか!と佑馬が驚くと、冗談だと後藤田は平然と答える。

警視庁警備部から特車二課!先の霞ヶ関での202は誤報と判明、301体制は解除のアナウンスがある。

ほらな…と若い整備員が言い、シバが又癇癪を起こすと、後藤田はすぐに車に乗り込む。

試合どうなりました?マンユーとチャルシー?と声をかけると、ドローで終了した!酷いゲームだった…、じゃあ!と後藤田は答え、帰って行く。

ふやけまくった麺を頬張り泣き出す山崎。

それを静かに見つめる佑馬と明。

買い直して来ようか?と佑馬が言うと、当直制待機を離れてコンビニなんて行って、ばれたら始末書じゃすまないよ…と明が言うと、どうせ事件なんか起きないよと佑馬が答えると、私、カップもの嫌だからね…と明はわがまま言う。

お前、絶対友達いないだろ?と、横に座っていた佑馬は、まじまじと明の顔を見て聞く。

コンビニに行き、ぶつぶつ言いながらコミックを読んでいた佑馬は、テレビ画面に出た「新宿副都心で建設作業用レイバー暴走事故か」と言うテロップに釘付けになる。

思わず、やべ!と呟いた佑馬は、チャリを猛スピードで走らせ帰る。

倉庫内では、7丁目で901発生!特車二課第二小隊に出動命令!とアナウンスが流れており、整備班は、リボルバーカノンの準備を始めていた。

佑馬さん!603が出ました!と、チャリで戻って来た佑馬に、指揮車で待機していた整備班が伝え、二班にも召集がかかりました。今向かっていますと山崎が報告する。

それに頷いた佑馬は、明!今度こそ乗せるぞ!とイングラムに呼びかけ、動けよ、お前も、早く!と、おっとりしている山崎に怒鳴りつける。

そこに、チャリで出勤して来た整備班が合流する。

バイクのシバとカーシャもやって来る。

御酒屋と大田原はタクシーで駆けつけるが、大田原はすっかり泥酔しており、車から降りた途端吐く始末。

それを観た佑馬は、大田原はダメだな。カーシャ、念のため俺の指揮下に入れと声をかける。

後藤田も車で来ていた。

シバは、1号機乗せるぞ!かかれ!と作業帽をかぶって部下に命じる。

イングラム1号機が移動し、トランスポーターに乗せられる。

固定化され、リフトダウンされると、リボルバーカノンも搭載されると、特車二課第二小隊出撃!と後藤田が命じ、自らはミニパトに乗り込む。

帽子を取ったシバが、帽を振れ〜!と部下たちに命じ、一列に整列した整備班が全員帽子を振って見送る中、ミニパト、指揮車、トランスポーターの順で倉庫を出て行く。

緊急車両が通ります!道を空けて下さい!とアナウンスしながら、公道を走る特車二課。

現場に着いたので、後藤田の命令でイングラムをリフトアップする。

状況はどうですか?と現場の機動隊隊長に近づいた後藤田が聞くと、最悪だ。労働中のレイバーは、水道橋重工のクラタス。犯人は現場作業員。恋人に振られて、やけになっている上に泥酔中…と言うので、それは本当に最悪だ…と後藤田が同意すると、まだある、逃げ遅れた作業員がいると機動隊隊長は言う。

人質?と後藤田が確認すると、機動隊隊長は頷く。

犯人に告ぐ!あんた!あんたのことだよ!と後藤田はハンドスピカーを使って呼びかける。

クラタスは、その右手に人質の作業員の足を掴んでいた。

速やかに人質を解放して、レイバーを停止させて出て来なさい!と後藤田は呼びかけるが、来るな!近づくと、この若造を握りつぶすぞ〜!と、操縦していた犯人(神戸浩)は言う。

止めなさいって!女なんか広い世間にいっぱいいるじゃない!と後藤田は呼びかけるが、うるせえ!てめえなんかに俺の気持ちが分かってたまるか!と犯人は言う。

俺には〜、俺には〜…、あいつしか〜…と言って泣き出す犯人。

みんなそう!振られたときはそう思うの!あいつしかいないって。俺にはあいつだけだって!あいつと一緒になれない世の中なんか、ぶち壊して死んでやるって…、そう言う自分を観て、きっとあいつも後悔の涙を流すだろうって…、俺って男を振ったことを悔むだろうって!でもそれは間違いな訳。そう言うことは全然ない訳ですよ。バカな男のバカな死が3面記事を飾って、世間の物笑いの種になる頃、女は別の男と引っ付いて、子供ぽこぽこ産んで、それで世の中丸く収まったりする訳だ!バカバカしいと思うだろう?と後藤田は切々と訴える。

何でえ、おめえは?と驚いたように犯人が聞くと、それで説得しているつもりなのかよ〜!帰れ〜!と興奮して怒鳴り返して来る。

それとも何か?あんた、誰か良い子でも紹介してくれるのかよ?とまで犯人は言うので、警察はそう言うことはしない!ときっぱり答える後藤田。

だったら帰れよ!帰らねえとこの若造を…と言いながら犯人は右手を持ち上げ、左手のハサミを動かし始める。

まずいなこりゃ…と呟く後藤田。

イングラムがクラタスに歩いて近づき、もう撃てる状態ですか?と後藤田から聞かれた佑馬は撃てます!と答え、じゃあ、明、撃っちゃえ!と命じる。

それを操縦席で聞いた明は、えっ?本当に撃っちゃうの?と驚く。

お前な、指揮官の言う事聞けねえのか?撃てったら撃てよ!と指揮車の上でいら立つ佑馬。

責任取ってくれるんだろうね?と鳴きそうになる明。

責任は隊長が取ってくれるだろう?と佑馬が言うので、隊長、責任取ってくれるんですよね?と明が泣きそうな顔で確認取ると、取らないと言う返事が帰ってくる。

ええっ!とパニクる明に、冗談だ!良いから撃って!と命じる後藤田。

意を決した明は、撃ちます!と答え、右足に仕込まれリボルバーカノンを取り出すと発砲する。

ものすごい爆発が起こる。

その後、整備工場に戻って来たトランスポーターとイングラム。

隊長室に集合した特車二課の面々を前に、今日はどうもご苦労さんでしたとねぎらった後藤田は、自分の好物のミルクをコップに注ぐと、実はね、本庁から朝一番で呼び出しがありまして、案の定と言うか…、やっぱりと言うか…、以前から懸案になっていた特車二課の存続問題なんですが…と言い出したので、全員緊張する。

あの…、存続問題と言うのは、特車二課が解体されるとか言う…?と聞くと、お前たちも噂くらい聞いたことあるよな?と後藤田は全員に聞く。

聞きたいか?と後藤田が聞いて来たので、聞きたい!と全員同時に答える。

今まで、酔って寝ていたと思っていた大田原まで真剣なまなざしで聞く。

困った表情でミルクを飲んだ後藤田は、教えて挙げないとカメラ目線で答える。

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