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Present For You

実写とマペットアニメを融合させた実験アニメのような作品

アートアニメは嫌いではないので、この作品情報を知った時から見たかった作品の一本

実際に観てみると、ブラックーユーアのようなシュールな内容で、期待以上に面白く感じた。

これを全編実写ドラマにしてしまうと、ちょっとステレオタイプなキャラクターとか、後半、かなり臭い浪花節風の展開になるので、不満が出た内容かも知れないが、ファンタジー風の人形劇スタイルになっているので、意外とすんなり受け入れてしまう世界観になっている。

ずっと英語字幕が出ていたのは、海外版を上映していたのかも知れない。

シーンごとに、実写の役者とそっくり人形が入れ替わり、役者と役者が芝居をしていたかと思えば、次のシーンでは、人形と役者の会話、次のシーンでは人形同士の芝居…とめまぐるしく編集されており、幻惑されているような非常に不思議な感覚が味わえる。

役者とそっくり人形が両方出て来るキャラクターもいれば、声だけ本人で、画面に出て来るのは、本人のそっくり人形だけと言うキャラクターもおり、楽しい。

先年亡くなられた夏八木勲さんがちらっと出て来るだけなのかな?と思っていたら、メインのキャラの1人として、かなり出演シーンが多いのも嬉しい。

ただし、3D効果は相変わらず薄く、3Dにしている意味があまり感じられなかったのが残念。

▼▼▼▼▼ストーリーを最後まで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

2014年、PLUS heads、臺佳彦製作総指揮+脚本+監督作品。

わしは信じない…、あの街は嫌いだよ…、信じ合う奴は嫌いだよ…と呟いた社長は、急に笑い出すと、所詮、お前らは池の鯉だ…、誰かが餌をくれてやらないと死んでしまう。良いか?えさを食え!と命じる。

社長に逃げられ、自分はバイトに過ぎないと、車の後部座席の真ん中に乗せられ、親爺と呼ばれる社長の所へ連れて行かれる梶原茂(オダギリジョー)は、隣に座っていた社長秘書鏑木義男(石丸謙二郎)に抗議していた。

言われた通り、月3万で友達を集めた!とも梶原は説明するが、そのまま、「Give Me Money」と言う会社の社長(夏八木勲)が待つ部屋に連れて行かれる。

梶原の姿を観た社長が、何だ?このチンピラは?と聞くと、仕事途中で逃げ遅れたアホでして…と鏑木が横に立って説明する。

鏑木、後どのくらい足りない?と社長が聞くと、5億ほど…と鏑木が答えたので、大金だ…、おい坊主、君がやりなさい。毎月9万振り込まれる…といきなり社長は梶原に命じる。

仕方なく、梶原は、事務所に戻ると、電話でねずみ講の勧誘を始める。

一方鏑木は、仕事の合間にSMクラブで、赤毛のキャバ嬢なみこ(永島暎子)から、鞭で尻を叩かれ快感に溺れていた。

ここはみんなが住む街…

金髪の男や、太った女、仕事を首になり、毎日、弁当を持って、ビルの上で食べている中年男などが暮らしていた。

そんな街の中のビルにある事務所内で、梶原は仕事をしていたが、鐘が振り込まれていないと言うクレーム電話に対しては、最初は丁寧に対応していたが、相手がしつこいと、突然恫喝して電話を切る。

そんな梶原は、同じ部屋にいた男から屋上に呼ばれ、三島駅に行け、親爺の別荘がある。これで行きなと金を渡される。

別荘にやって来た梶原は、待っていた社長の横に座ると、緊張のあまり、唇がくっついて何もしゃべれない状態になる。

そんな梶原に気づいたのか、社長は鏑木に飲み物を出さんか!と叱りつけ、鏑木が、缶ジュースとコップを持って来て梶原の前に置いて勧めると、注いで差し上げんか!と社長が又叱って来たので、慌てて、コップにジュースを注いでやる。

交渉、説得、恫喝、なかなか巧くやるそうじゃないか。総会屋のやり方だ。頼もしいね…と梶原に笑いかけた社長は、ジュースを飲もうとした梶原に、ゆっくり飲みなさい。上着を脱いでも良いよなどと優しく言う。

その言葉に甘え、上着を脱ぎかけた梶原だったが、シャツの腕に赤いバラの刺繍があることに気づき、一瞬動きを止めるが、ためらいを捨てそれを見せると、きれいなバラだな…、刺青のよう…、お前らもこのくらいのおしゃれしてみろ!どいつもこいつも同じ格好しやがって!と、部屋の中に控えていた黒スーツの舎弟たちを叱りつける。

さらに社長は、今夜はフランス料理だ。それまでゆっくりしてろよと梶原に声をかける。

夕食は、「オマールの皇帝風キャビア添え」とか「ウズラのパイ包み」など、全く喰い慣れないフランス料理を、社長と、見知らぬ和服の女と3人だけで食うと言う気まずいテーブルだったので、梶原は、喰い方も味も良く分からないまま相手するしかなかった。

食後のデザートに、白桃にトリフをスライスしてくれと注文した社長は、1986年ものの酒を鏑木から勧められると喜び、呆然としている梶原に、池の鯉でも見てみたらどうだと勧める。

梶原が部屋を後にすると、社長は鏑木に、どうだろ?あいつにやらせちゃ?この国の生ゴミを捨てさせなさい。誰かがやらねばいかんのだ。だから、俺が餌を撒く。所詮、あ前たちは池の鯉だ。俺が餌をやらないと死んでしまう…と伝えると、庭で池の鯉を見ていた梶原の側に行き、期待してるぞと声をかける。

別荘を帰る梶原に、明日の朝、社長室に来い。スーツでな…、これで買えと言いながら、鏑木は札束を手渡すと、お前は社長に気に入られた珍しい奴だと伝える。

翌日、買ったばかりのスーツ姿で社長室に行った梶原に、来たか、一丁前になったな。今日からお前、健康食品の社長をやれと社長は突然命じる。

梶原が部屋を出て行くと、しかし、もうちょっとどうにかならんのか?あの髪…、蠅でもいそうだぞ…と、茶をすすりながら鏑木に話しかけた社長は、桃饅!と茶菓子を催促する。

かくして、梶原は「プレゼント フォー ユー」なる会社の社長になったので、街に戻ると、路地裏でへたっていたサトル(青木崇高)をアルバイトに雇ってやると一方的に声をかける。

そこへやって来たマッサージ嬢のリリコ(風吹ジュン)も、自分も雇ってよ!と強引に売り込んで来たので、結局、3人で仕事を始めることにする。

その後、街の焼き鳥屋でサトルと飲んでいた梶原は、事務所と同じビルの1階のラーメン屋の主人島ちゃん(藤木勇人)がやって来て、ミーちゃんと喧嘩したなどと泣き出したので、島ちゃん、愛があるだけデラックスだね…などと慰めてやる。

翌日、4階の事務所では、リリコが手慣れた口調で健康食品の電話営業をしていたので、梶原は巧すぎ!などと感心していた。

そんな梶原に、この薬、やばくないっすか?とサトルが扱っている商品のことを聞いて来たので、薬じゃない!健康食品だ!言葉に気をつけろ!と梶原は注意する。

そして、事務所の窓から見える地上636mの高さの「GMM(Give Me Money)本社」を見ながら、あんなふざけた名前の会社だが、ありとあらゆるものを売っており、売ってないのは善意だけみたいだ。あそこから親爺が餌を撒くと、みんなぱくっと喰うんだ。

悟は1階のラーメン屋に飯を喰いに行き、沖縄出身だと言う店長の島ちゃんにアグーを注文する。

社長は鏑木に、グループ会社で見つかった発がん物質の件はどうした?と聞いていた。

鏑木は、一応販売差し止めと発表しましたが、2000トンもの汚染物質なんて誰も分かりゃしません、普通に出荷しときました。人の口に入るのが一番安全です。ウ○コになるんですから…と説明し、それを聞いた社長も愉快そうに納得しながらも、友愛党の宗岡総一郎が動いたのか?と聞く。

政治資金がないと泣きついて来ましたと鏑木が答えると、あいつの賞味期限も後わずかだ。回顧録出そうとしてるそうじゃないか?きれいに消した方が良くはないか?と社長が話しかけると、鏑木は、自殺します。秘書は一番良く知っているので片付けておきましたが…と答えるが、梶原の所へ送れば良いと命じた社長は、いつものように好物の桃饅を頬張る。

しおれた花をちぎるだろう?すると又新しい花が出るんだ。人間も同じだよと社長が言うと、さすが、社長!と鏑木はよいしょする。

その後、街の空地で元気なく座っているスーツ姿の男がいたので、金髪のあんちゃんがおい!と肩を揺すってみると、そのスーツの男はそのまま横倒しになる。

その夜も、梶原と一緒に焼き鳥屋で飲んでいたサトルは、先に帰った梶原を追って店を出る。

翌日、事務所に来たサトルは、空地で秘書が死んでいたらしいと聞いても、代議士の秘書が死んだなんて、どの新聞にも出てないっすよと不思議がる。

政治家の秘書なんて全国に何人もいて、軍団とか言うそうじゃないか。秘書になれるのは、口の堅い奴だそうだなどと梶原は豆知識を披露したので、サトルは感心し、これ絶対自殺ですよと断定する。

あたしだって夢くらい見るよと口を挟んで来たリリコとしゃべっていたサトルは、1階の島ちゃんが、出前のアグーラーメン持って来たので、何で沖縄なのにソーキソバじゃないの?などと聞き、450円を値段を聞くと、高!と驚く。

何でこんな男がミーちゃんなんかと結婚するかね?とサトルが不思議がると、男には見えない所に実力があるからねなどと威張った島ちゃんだったが、お釣りをごまかして帰ろうとするなどセコい所を見せる。

ビルの外では、ミーちゃんがキャバ嬢のなみこ(永島暎子)に、自分もSMやってみたいなどと話していた。

その夜も、サトルと梶原は焼き鳥屋で飲んで帰る。

雨が降る中、男と相合い傘で歩いていたなみこは、雨、好きだわ〜と口走り、側を自転車で通った男に、ふざけやがってと罵倒される。

翌日「プレゼント フォー ユー」の事務所に、新しい荷物が届いた…と嬉しそうに呟いていたのは、最初にこの事務所に届いた荷物だと言う和服姿の男の幽霊だった。

椅子に縛られた初老の男の顔を見たサトルは、新聞に出ていた友愛党の宗岡総一郎(柄本明)と知り驚く。

宗岡は、花村ユキと言う女優を愛人に持つと噂されるスケベ親爺としても有名な男だった。

縛られていた宗岡は、ロープを外せ!と事務所内で喚くが、もう動いちゃってんだよ。最終が車庫に入っちゃってるんだ。始発は出ないよ…と梶原は説明する。

そこに、リリコも出社して来る。

宗岡は、金森だな?いくらもらった?などと聞くので、リリコは、私知ってる、この人の息子!と言い、宗岡の息子も心の愛党の党首で、金森とは昔、MKコンビとか言われていたんだって?と梶原は面白そうに宗岡に聞き返し、俺たち、あんたをきれいに消さなくちゃいけないんだと説明する。

誰が運んで来たかも気づかなかったの?と聞くと、マンションの前で、いきなり袋に入れられたんだ!と宗岡は言う。

そんな宗岡を見ていたサトルは、去年、何で友愛党なんかに入れたんだろう?と反省する。

そんなサトルの言葉を聞いた宗岡は、サトル君と言ったね?君は見所がある!一緒に日本を作り直そう!チルドレンにしてやっても良い!などと宗岡が話しかけて来たので、サトルも梶原も呆れてしまう。

あんたも、親爺と色々やったんだろ?だから消されるんだ…と梶原は、ヒントを出してやる。

そんな事務所に、ノックもせずに、タンメンの出前を持って来たのが島ちゃんだった。

タンメンを頼んだのはリリコだった。

そのリリコにタンメンを渡し、料金700円を受け取った島ちゃんは、後から見てもふてぶてしいな…と、背中から見た宗岡の事を言う。

そんな島ちゃんに、君!助けてくれ!拉致されたんだ。通報してくれ!と宗岡は背中越しに頼むが、島ちゃんは、この街はみんな仲間なんだと申し訳なさそうに答えるが、宗岡の顔を改めて見て、今朝のニュースに出ていた人だ!ここに来てたんだ〜!世の中、びっくりすることだらけだね〜…などと呟きながら部屋を出て行く。

街の中の「酒々」と言う店では、一郎(杉浦孝昭)と二郎(ピーコ)と言う、梶原と馴染みの双子のサラリーマンが飲んでいた。

梶原は事務所で、俺たちは、汐留の親父さんの足下で暮らしているんだ…と打ち明け、それを聞いた宗岡は、GMMか!と気づく。

親爺が送って来た袋を、俺たちがきっちり片付けるんだと梶原が説明すると、何でGMMが俺を殺すんだ?と宗岡は不思議がり、しばし考えた後、発がん物質混入の口封じか!と思いつくと、混入しちゃったんだ!あんたが!と聞いていたサトルたちは呆れる。

うちの秘書もやったのか!と宗岡は気づく。

そんな「プレゼント フォー ユー」の入ったビルの様子を、サングラスをかけた男が路地裏から見張っていた。

その直後、梶原君!と言いながら事務所にやって来たのは、なみこだった。

なみこは、椅子に縛られている宗岡に気づくと、お取り込み中のようね…と空気を察するが、誘拐されたんだ!助けてくれ!と宗岡が頼むと、出来ないのよと断る。

それでも、宗岡から、君の名は?と聞かれると、なみこと教える。

金ならいくらでもやる!店でもマンションでも何でも買ってやる!逃げ出せるんだぞ!このクズのような街から!と宗岡は説得しようとするが、私にはここが幸せよと答える。

所詮、お前らは池の鯉だ。誰かから餌をもらわないと死んでしまうだろうが!と宗岡がバカにすると、このバカ!ふざけんじゃないよ!と言いながら、怒ったなみこはバッグで宗岡を殴りつける。

目の前だけを見て生きて来たら、20年も経っちまった。良いことなんて何にもなかった…。でもこの街の奴らは、ここではたった一つでも良いことがあれば生きていけるのさ。沢庵一つでも白飯喰えるのさ。あんたの鼻くそみたいな餌なんか喰わないんだよ!殺されに来たんでしょう?あの世で本当の居場所を探すのよ…と啖呵を切り帰って行く。

それを聞いていた宗岡は怒るどころか、良い女だね〜と感心する。

奴ら、ぐずぐずしてるんだって?目の前の餌にたかって、言われたことだけやっていると何かを失うぞ。お前のことかも知れないぞ。尻だけじゃなく、顔も叩かれれば良いんだ。明後日の朝までにやらせるんだ!と、車の中で鏑木から梶原たちの行動を聞いた社長は言い放つ。

事務所では、汚染物質を第三国経由で買って、GMMがやっているんだ。何もかも知らないことが大事なんだ…と、宗岡が梶原に話していたが、そこに、夜勤明けのサトルが、昼頃やって来たのので、なみこって女に会ったぞと教えた宗岡は、俺だって、地元に帰ればドブ板だ。地面に跪いているんだ。いつも人間相手なんだ!と威張るので、心なんか置かないだろ?地べたには…と梶原が嘲笑する。

その時電話が鳴ったので、梶原が出ると、相手は鏑木で、処分を急ぐようにとの催促だったので、立て込んでいたんです!と言い訳してごまかす。

空地が見えるか?と鏑木から言われたので、窓から下の空地を覗くと、一郎と二郎が黒服の男たちから蹴られていた。

あいつらだけじゃすまないかも知れんぞ。お前の大事な奴を数えてろよ。親爺は気が短いからな…と鏑木は脅して来る。

ビルの外では、太ったKumi(森公美子)が、キツネ目の男がうろうろしてるよ、梶原さん国会議員連れ込んでいるんだって?と、金髪モヒカン男と話していた。

リリコは、暴漢に襲撃された一郎たちの手当をしてやっていた。

事務所では、お前たちは、始末するのが仕事なんだな?目的は金か?と宗岡が梶原に聞いていた。

考えたことねえよ…と面倒くさそうに梶原が答えると、考えないのか…、救いようのないバカだ。出来損ないってことだと宗岡はバカにする。

でも俺たちは、アップアップして生きているの。俺がやらなきゃ、誰かがやられちゃうかも知れないと梶原が答えると、じゃあ、お前らが人質だ!と宗岡は指摘し、それを聞いた梶原も、巧い事言うね。先生のこと、気に入ったよと梶原は嬉しそうに言う。

俺の命で、お前らみんなが助かるのか?そりゃ良いや!と言うと、宗岡は、椅子に縛られてまま笑い出したので、おかしくなったんじゃないか?このまま放っといても死にますよなどと、一緒にいたサトルは呆れる。

1階のラーメン屋では、島ちゃんがミーちゃんに、梶原さん襲いな〜、材料そろえたのに…と、厨房内でそわそわしていた。

そこに、なみこがやって来て、一郎さん、そこの空地でやられたんだって?などと話しかけて来る。

そこに、梶原とサトルがやって来て、上はシンスケが見ていると言い、勝手に店のビールなど取り出してテーブルに座る。

ミーちゃんは、そんなサトルに文句を言いながらも、なみこに、自分も女王様やりたいなどとなみこに頼む。

あんたなら鞭持っても巧いんじゃない?となみこがおだてるので、サトルも、俺もミーちゃんに叩いて欲しいなどと冗談を言うが、それを聞いた島ちゃんは、サトルちゃん、困るよ!と真顔で睨みつけて来る。

そこに、リリコがやって来て、一郎たちを治療した後、薮に置いて来たと言うので、今回やることにしたと梶原が言うと、2人目だよねと答える。

ミーちゃんも、最初は爺さんだったねと口を出す。

俺がビビって逃がしたもんだから、みんなに迷惑かけちゃって…と梶原が謝ると、許さんから!と島ちゃんが文句を言う。

今まで、1人しかやってないの、バレてるんじゃないのかな?又、店閉めるってのも…と島ちゃんが案ずるので、島ちゃん、鍋で煮るの?と梶原は確認する。

時間かかるけど…と島ちゃんは答える。

梶原が事務所に戻ると、私はどうやって死ぬんだ?と宗岡が聞いていた。

どうせ、生ゴミなんだろ?自分から辞められないんだろ?逃げちまったんだろ?と宗岡が梶原を挑発していた。

その頃、痛いよ!梶原さん!と、襲撃されたKumiが倒れて呻いていた。

事務所では、宗岡が、水をリリコに飲ませてもらっていた。

焼き鳥屋では、見慣れないサングラスの男が、つくねを注文していたが、一緒にカウンターで飲んでいたなみこが、ここでは肉団子って言うんだよ。繋ぎを使ってないから、つくねとは言わないの。あんた、この辺の人?と、サングラスの男を怪しんでいた。

そこにやって来た金髪モヒカンが、いつもの5本!と焼き鳥屋の主人に頼みながら、表に座っていた爺さんを見ると、その爺さんは、4階の窓から下を覗いていたサトルを見上げ、サトルはその合図を受け取る。

事務所の中では、宗岡が、ユキだけは幸せにしてやりたいと訴えていた。

リリコはそんな宗岡の肩を揉んでやり、梶原はサトルにメモを渡し、ここに電話しろと命じる。

翌日、島ちゃんが留守にしているラーメン屋にやって来たのは、GMMの社長だった。

1人店番をしていたミーちゃんにビールを注文した社長は、この街は好きじゃない…、この匂いも好きじゃない…、信じ合う奴も好きじゃない…と呟くと、ミーちゃんを呼び寄せ、色々教えてくれてありがとう。ゲームが楽しくなったよ。直、ここから出してやる。たまにはおしゃれでもするんだね…と言いながら金を渡してやる。

そこに、出前から戻って来た島ちゃんが社長に気づき、あれ?お客さん?もうそろそろ終わりなんですが…と断ると、ビール一杯で失礼すると答えた社長は、コップに注いだビールを一口に飲み干すと、紙幣をテーブルに置き帰って行く。

カウンター席に何気ないように座っていたミーちゃんは、島ちゃんに気づかれないように、その札束を取り上げる。

相変わらず、物陰からは、サングラス姿の男が街の様子を監視していた。

事務所には、サトルから呼びだされたユキがやって来て、パパ!と椅子に縛れていた宗岡に抱きつく。

あんたのケイタイを見たんだと梶原が教えると、何故呼んだ?目当ては何だ?金か?と宗岡は怒鳴りつけるが、ユキは、自分もパパと一緒に死ぬなどと言う。

その時、梶原が、助けるんだよ、あんたらを…と言い出す。

そこへ電話が入り、Kumiがやられて入院したと知ったリリコが出かけて行く。

梶原は、ラーメン屋の調理部屋にいた島ちゃんに会いに行き、豚骨と白菜で行く。自信ないけど…と島ちゃんから聞き、宜しく頼むわと言っていた。

一方、ビルの階段の所に座っていたミーちゃんは、作戦変更って、社長に知らせなきゃ…と呟きながら、ケイタイをいじっていた。

事務所では梶原が、あんたら一体何なんだ?とユキと宗岡に聞いていた。

そこに、Kumiは集中治療室に入っていると、病院から帰って来たリリコが報告する。

ユキは、私が棄てた女が生んだ子だ。娘じゃないんだ!私は昔秘書をしていた。先生の地盤を継いで立候補した。

タエと言う女で、ユキは母親にそっくりだ。

タエと別れるよう先生に言われたんだ。それで、タエに頼んだ。選挙が迫っていた。

私はタエを襲わせた。心根のきれいな女だから、自分から身を引いてくれるだろうと思っていたんだ。

まさか、そいつらの子を妊っているとは思わなかったんだ。

タエは私の前から姿を消した。

ユキちゃん、耳を塞いでいなさい!と言った宗岡は、私とユキは偶然出会った。

私は確信した。ユキはタエの子だと…。

私はユキを愛してしまったんだ…と宗岡は告白するが、それを黙って聞いていたリリコは、勝手な話しないでよ!吐き気がしてくるわ!と不快感を露にする。

私は全てユキに話した。この子だけは幸せにしたいんだ。神様が許してくれないことは分かっているんだ…と宗岡が言うと、私はパパもみんなも不幸にする女だわ…とユキが言い出す。

私は復讐しか出来ない汚い女なんです…などと言うユキに、ごめん、もう終わるから…と宗本が詫びる。

死んじゃえ!あんた、誰1人幸せにしてないんだから!とリリコが宗岡を罵倒する。

しかし、ユキが、違うわ!私、幸せになったの!宗パパがママに出会わなかったら、私は生まれてなかったのと否定し、それを聞いていた宗岡は、サトル、絞めてくれと頼むが、それまで黙って話を聞いていた梶原は、ロープ、ほどけよとサトルに命じる。

その直後、島ちゃんが、あのキツネ目ずっとうろついているさ、しつこいよな〜と事務所に電話して来る。

サトルは、ロープを外して立たせた宗岡を窓際に連れて来ると、そこで首を絞める真似をする。

床に倒れ込んだ宗岡は、少し苦しかったので殺す気か!と怒る。

おれたちはどっかからか見張られているから…と梶原が、窓の下に身を伏せた宗岡に説明する。

待て!俺のこと、死んだことにしたいんだろ?と聞いた宗岡は、そのままトイレの中に入る。

その直後、トイレの中から、宗岡のうめき声が聞こえて来たので、自殺?とサトルたちは慌てるが、トイレから出て来た宗岡は、自分で抜いたらしい自分の歯をサトルに渡すと、これで奴らも信用するだろうと言う。

そんな宗岡とユキに袋をかぶせるサトル。

そんな事務所内の様子をビルの屋上から身を乗り出し、探ろうとしていたサングラスの男鏑木は、誰かから背中を押され落ちかける。

押したのは、毎日、ビルの屋上で弁当を食っていた失業した中年男だった。

助けてくれ!とビルの縁に掴まって頼む鏑木を引き上げてやったので、自殺願望の男が人命救助か…と鏑木は皮肉を言うが、その直後、その中年男自らがビルから飛び降りてしまう。

しかし、その男は墜落しなかった。

家族の元に帰りなさい。今はまだ生きていけると言いながら中年男を掴んで屋上へ戻したのは、事務所で最初に殺された和服の爺さんの幽霊だった。

中年男は、あたかも空中を泳いでいるように手足をばたつかせながら屋上へと戻る。

それを偶然地上から目撃していたのがなみこだった。

ラーメン屋の調理部屋にやって来たなみこは、そこで待っていたユキに、あんた、私になるんだから良く見ておくのよと言うと、宗岡には、あんたはこの爺さんに化けるのよと教える。

そんななみこに、梶原は、頼むねと言って部屋を出て行く。

なみこは、自分の赤毛のウィッグを脱ぎ捨てユキにかぶせると、男客の誘い方を教え、宗岡には、爺さんが来ているダボシャツを着せ、爺さんに化けさせる。

ユキと宗岡が外に出て行くと、同じく、部屋の中に残っていて、ウィッグを取った自分をじっと見つめている爺さんに、何、見てる!爺!と睨みつける。

赤毛のウィッグをかぶり、なみこに化けたユキは、しばらく道路で客引きのまねごとのようなことをやってみる。

一方、爺さんに化けた宗岡は、いつも爺さんがやっているように、ビルの前で座ってぼーっとし出す。

そんな様子を、監視役の鏑木が物陰からじっと見張っていた。

一方、島ちゃんは、2人分は大変さ…などとぼやきながら、豚骨を割りながら寸胴に入れていた。

その調理部屋から出る匂いを、換気口の所に来ていた鏑木が必死に嗅いでいた。

夕方になり、新聞配達の男がチャリでやって来て、爺さんに新聞を投げて渡すと、それを合図に、立上がった宗岡は、爺さんの振りをしながらゆっくり街を出て行く。

ユキもさりげなく街を後にする。

翌朝、島ちゃんは、軽トラの荷台に、黒いビニール袋に詰めたものを大量に積み込んで、さりげなく地面に、宗岡の歯を落とし、車を出発させる。

その直後、そこにやって来て、落ちていた歯を確認する鏑木。

軽トラでミーちゃんと一緒に某所にやって来た島ちゃんは、産直だよ!ただだよ!と客を呼び集める。

その後、入院していたKumiは、遺影になって街に帰ってくる。

事務所では、姉さんって言う人が遺骨を持って行ったとサトルとリリコが話していた。

愛って、色んなものがくっついて来るんだよね…と、リリコが訳知り顔で呟く。

梶原は黙々とラーメンを食っていた。

ユキと地方の草原にやって来た宗岡だったが、夕日の中、急に気分が悪くなり、草むらに倒れる。

パパ!今逝っちゃダメ!とユキは哀しみ、パパ…、私ね…、知ってたんだ、ずっと前、ママから聞いて…、パパがママにしたこと…、だから会いに来たの。私が背負って来た不幸なんて、ママに比べたら大したことはないわ。

私はママに愛されてたんだもの…、でもママはそうじゃなかった…。これが、パパが死ぬ時に言っとかなきゃいけなかったことなの…と話しかけるユキ。

それを倒れたまま聞いていた宗岡だったが、でも私、パパって…とユキが話しかけた時、息絶えてしまう。

そんな宗岡を、立ったまま見つめるユキと、その横にはタエの幽霊が見つめていた。

聞こえる?最後まで聞かないまま死んじゃったけど、パパ、愛してる。ずっと一緒だよ。もうユキ、どこにも行かないから…、パパ、愛してる…と言ったユキは、その後、宗岡の遺骨を抱いて、バスの停留所に一人座っていた。

事務所では、サトルは梶原に、宗岡、死んじゃいましたよと報告していた。

梅は咲いたか〜、桜はまだかいな〜♪

桜の木の前に浮かび、良いね〜と嬉しそうな和服の爺さんの幽霊。

梶原さん、こっち来なよ!春だね~…と、嬉しそうに呼びかけるKumiの声

桜の木の前の空間に浮かぶサトル、金髪モヒカンの男、Kumi、梶原の姿

良い桜だね〜

桜の花びらが雪のように舞い散る中、スタッフロール

社長室の石像の尻に頬ズリする鏑木の姿


 

 

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