白夜館

 

 

 

幻想館

 

少年探偵団 二十面相の悪魔

江戸川乱歩原作の映画化で、「少年探偵団 妖怪博士」の続編に当たる子供向け中編作品。

明智のみならず、子供たちにも復讐をしようとする大人げない怪人二十面相が、今回も、原子炉の設計図を盗むために、博士の子供の誘拐と言う卑劣な犯罪を起こす顛末を描いている。

後半は奥多摩の鍾乳洞を舞台に「八つ墓村」のような展開になるのが見所。

少年探偵団の活躍をメインに描いているため、名探偵であるはずの明智小五郎が何だか間抜けに見えるのがちょっとご愛嬌。

しかし、明智役の岡田英次のイケメン振りもさることながら、二十面相を演じている南原伸二のイケメン振りもなかなか。

現代劇で、ヒーローもライバル悪役も共にイケメン同士と言う趣向の走りではないのか?

通信士役を演じているのは、地獄大使こと潮健児である。

あまりに若いので、ちょっと見、分かり難いが、目元の印象は似ている。

本編では、巨大なゴリラ像が出て来るのが見物。

ホリゾントに頭と両手だけを立体化して3D風に見せているのだが、照明の巧さもあって、なかなか迫力がある。

吊り天井に水攻めと、時代劇でもお馴染みの拷問が今回も登場しているが、今回は大掛かりな鍾乳洞のセットが組まれており、水攻めシーンなどはなかなか迫力がある。

誘拐された少年が、電車が接近している線路を間一髪横切るシーンなど、一体どうやって撮っているのか分からないほど、合成が巧い。

このシリーズの特撮は、白黒と言うこともあるのだろうが、今観ても感心するシーンが少なくない。

当時の東映特撮の面目躍如と言った作品だと思う。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1956年、東映、江戸川乱歩原作、小川正脚色、小林恒夫監督作品。

お馴染みの「少年探偵団」の唄が流れる中、ステッキと山高帽に白いマフラーなど、二十面相の衣装を背景にタイトル

壁に写るシルエットの人物が様々な姿に変化するのを背景に、キャスト・スタッフロール

前作「妖怪博士」のあらすじが流れる。

原子力工場から秘密設計図を盗むのに失敗した怪人二十面相を、僕と僕の小さい部下である少年探偵団に挑戦状してきたた。

少年たちは毎日、隠れ家の捜索と張込みを続けたが、少年探偵団の相川君(原国雄)は、ある日、コジキが地面に奇妙な記号を書いているのを発見、その後を追い、古い西洋館に忍び込んだが、かえって二十面相に捕らえられてしまった。

彼の催眠術の虜になった相川君は、自分の手で自分のお父さんの大切な原子炉の設計図を盗み出し、二十面相に渡した。

一方、3人の少年は、謎の記号を追って西洋館に踏み込んだ。

彼らも外国人に化けた二十面相の魔の手に落ちてしまった。

原子力工場に、英国帰りの探偵と称する殿村と言う男が来て、怪人二十面相と捕らえてみせると断言した。

僕は彼の挑戦に応じて、2日後の夜11時と約束した。

約束の時刻、殿村は関係者を西洋館に案内して、4人の少年と設計図を一同の前に差し出した。

だが、僕は…

殿村幸三!犯人を前にしている明智小五郎とは、この僕だ!と言いながら、新聞記者に化けていた変装をその場で解いてみせる。

逃げ出した殿村を追って戦う明智。

しかし、明智や中村捜査課長(神田隆)は、落とし穴に落とされ、石膏を混ぜた水攻めなどを受けながら、明智たちを探す岸マリ子(中原ひとみ)や少年たちの目の前で、西洋館自体は時限爆弾で大爆発を起こしてしまう。

少年探偵団は、崩壊した屋敷の中を探し、石膏で固まりながらも何とか生きていた明智たちを無事発見するのだった。

明智探偵事務所に戻った明智は、学校からかけて来た少年たちの見舞いの電話を笑顔で受けながら、岸マリ子から、負傷した耳に包帯をまいてもらっていた。

先生、私、今度の事件でどうしても分らないことがあるんですけど…と言うマリ子は、何故、蛭田博士や殿村幸三に成り済ました怪人二十面相が自分の罪を自分で明かすような真似をしたんでしょう?と聞く。

僕や少年探偵団に復讐がしたかったんだよ。つまり、怪人二十面相は子供たちにさんざん怖い思いをさせ、僕を探偵として失脚させようとした訳さ…と笑いながら明智は答える。

でも、お父様の設計図は元に戻ったし…と、事務所に来て花瓶を飾っていた相川春美(古賀京子)が言うと、設計図は確かに戻ったが、その設計図が写真に撮られていたとしたら?と明智は案じる。

その時、事務所内の万能無線機からモールス信号が聞こえて来る。

ただちに、マリ子が無線機の前の机に座り、その内容をメモし始める。

「日本一の名探偵明智君!君はまたまた土壇場で俺を逃がしてしまった。そして明智君、これから最後の俺の仕事と復讐が始まる。今度こそ俺の知恵の恐ろしさを貴様と少年探偵団の小僧たちに堪能させてやる。 怪人二十面相」と、マリ子はその場でメモを読み上げる。

どうも、明智小五郎の株も下落したようだな…と笑いながら明智が上着を着ていると、怪人二十面相からの脅迫状だよと中村捜査課長が持って来たので、明智はその内容を読んで、ほう、あなたの所へも来たんですね?と言うので、えっ、ここにも?と中村課長は驚く。

うちにも短波が来たので、すぐに電波管理局に問い合わせてみたのだが、三ヶ月ほど前から奥多摩から国外への怪電波を数回キャッチしているそうだと中村課長は言う。

三ヶ月前と言うと…、ちょうど…と明智は合点がいったようで、中村課長は、電波管理局でも発信地は分からないそうで、僕の方でも奥多摩に捜査員を送るつもりだがね…と言う。

明智を窓際に誘った中村課長は、実は明日、大阪の研究所の図面輸送が急に変更になってね、所長の小泉氏が持って行くことになったんだと打ち明ける。

じゃあ、後は手はず通りに?と明智は呟く。

中村課長の厳重な警戒の中、羽田空港に到着した日航のプロペラ機から降りて来た小泉信太郎博士(山形勲)は車で出発する。

その頃、小泉博士の息子小泉信雄君(泗水成一)は、少年野球の試合に出ていた。

その時、一緒に観戦していた担任の猪又康子先生(伊藤慶子)に、大変です!今、小泉君のお母さんから電話があり、お父さんが交通事故で危篤なので、子供をすぐに病院の方へ寄越すようにと…、迎えの自動車ももうじき学校に着くと思いますと小使いが連絡に来る。

ちょうど、ランニングホームインした小泉君を呼んだ猪又先生は、お父様が自己で怪我をなすってようですから、すぐに病院に行きましょう。先生も一緒に行きますと声をかける。

猪又先生はみんなを集め、先生はこれから出かけます、雨も強くなってきましたから、野球はこれで中止、後は教室で自習して下さいと指示すると、学校の前に停まっていた車に小泉君を連れてやって来る。

車に乗り込んだ猪又先生は、出発した車の運転手に、お父様はどちらで御怪我なすったんですか?と聞くが、博士は先ほど飛行機で大阪から帰京され、自宅に戻られる途中、京浜国道で事故に遭われたのでありますと運転手が答えたので、病院は?と聞くと、大森の斉木病院だそうであります。何しろ、正面衝突だったんだそうでありますなどと言う。

じゃあ、お父さんの怪我はどうなんです?と助手席に乗っていた小泉君が聞くと、さあ?私も工場で聞いただけなんでありますと運転手は言うだけ。

病院の前に着いた車の後部座席から先に降り、小泉君を降ろすため、助手席を開けてやろうとした猪又先生だったが、突然、車が発車したので驚く。

車の中では、運転手が笑いながら、片手で銃を小泉君に突きつけ、片手で運転していた。

慌てて、斉木病院に駆け込み、小泉君の自宅似電話を入れた猪又先生は、小泉博士は無事に自宅に帰り、その後、工場の方に向かったと聞く。

猪又先生からの電話を受けた小泉君の母親(飛鳥圭美)は、それで信雄はどうなったんです?と聞き、えっ!その車に!と驚く。

鉄橋を渡って走っていた車は、前方から来たトラックに正面衝突しかけたので、運転手は慌ててハンドルを切るが、その隙を突いて、小泉君は助手席のドアを開け、外に飛び出すと、土手を転がって行く。

すぐに、停車した車から降りた運転手が追って来るが、小泉君は土手を逃げ、線路を越え、ちょうど電車が通り過ぎる直前に向こう側に渡りきる。

小泉君は、遊園地に逃げ込むが、運転手は雨が強まった中、執拗に追いかけて来る。

運転手は、回転木馬のスイッチを入れると、その上に乗っていた小泉君を追いかけて来る。

その時、スイッチが自動的に切り替わったので、回転木馬のスピードが異常に速くなる。

木馬に捕まっていた小泉君は、近づいて来る運転手を逃れるために、転がって回転木馬台の外に転がり出ると、今度は近くの時計塔の階段を登って逃げる。

運転手も後を追って階段を登って来る。

上の方は螺旋階段になっており、小泉君は運転手に追いつめられてしまう。

急に笑い出した運転手は、小泉君、こんな景色の良い所で、君と話し合えるとは思わなかったよと声をかけたので、僕をどうしようと言うのだ?と身を潜めていた小泉君が聞くと、あわてるな、俺は怪人二十面相…と、東北なまりの運転手は言い出す。

場合によっては貴様に死んでもらいたいのだなどと二十面相は笑いながら近づくと、小泉君を捕まえ、大きな時計の文字盤の長針がギロチンのように3時の所から降りて来る下と、金網の間の部分小泉君の頭を押し出す。

お前の首は大時計の針に挟まれるのだ。重たい鉄の刃と同じような針の間になと二十面相は愉快そうに言う。

今は1時16分!後2分後に回転する長針のために貴様は窒息する。5分後には貴様の首は胴体とおさらばして地上に落下する…、どうだ?小僧…、お前の首にもうすぐだ!などと二十面相は笑いながら脅かして来る。

おい!貴様に最後に言いたいことがある。お前の返答一つでお前の命は助かると言うことだ。わしの言う事が聞けると言うのならな…。ほら、後1分だ!地上に首を落とすか?わしの言うことを聞けるか?と二十面相は迫る。

地上に降ろされた小泉君は、紙とペンを出され、僕の言う通りに書くのだと、運転手に化けた二十面相に頭をなでられながら命じられる。

どうした?小泉君、君はもう1度、あの時計塔に登りたいかね?ただし今度は首を落とすためにね…と言いながら、二十面相は手刀で小泉君の首を斬る真似をしてみせる。

やむなく、小泉君はペンを握る。

「お父さま 僕は悪者のために恐ろしい目にあっています。早く助けてください。この手紙を持って行く人の言う通りにしてくれれば僕は助かるのです。お願いです、早く僕を助けて下さい 信雄」と書かれた息子の手紙を、帰宅して来た家の前で読んだ小泉博士は、手紙を持って来た植木屋に、信雄はどこにいるのですと聞く。

坊ちゃまは無事でいるのは確かなようですと答えた植木屋は、もう一通の手紙を取り出すと、これを読んでいた抱きましょうと差し出す。

今夜12時、雪舟のダルマの掛け軸を持って来られたし…と書かれた内容を読み終えた小泉博士は、気がつくと、今まで目の前にいたはずの植木屋が消え去っている事に気づく。

家の中では、猪又先生と母親が小泉の帰宅を待ちかねており、小泉博士から二十面相の脅迫文を渡され、それを読み始める。

小泉博士はすぐに警察に連絡しようとするが、母親が、待って下さい!そんな事をしたら信雄は…とうろたえながら止める。

信雄も無論大事だ。しかし二十面相が狙っているのはただの掛け軸ではない。誰にも渡すことができぬ大事なものなんだ…と言い、又警視庁に電話をしようとするので、母親は、でも信雄が…と言い、夫にすがりつく。

そこに近づいて来た猪又先生が、明智先生にご連絡すれば、きっと助けてくれるでしょうと伝えたので、それを聞いた小泉博士は、そうでしたな…気がつきませんでした。番号は?と聞いて来る。

猪又先生は、56番の3601番です…とすらすらと教える。

明智探偵事務所で電話を取ったマリ子は、先生は席を外しており。後5、6分で戻って来ますと答えるが、小泉博士は、至急ご相談したい事件が起こりましたので、帰り次第、私の家に来て頂きたいとお伝え下さいと伝言する。

その小泉の電話を庭先で盗み聞きしていたのはあの植木屋だった。

屋敷の外に出た植木屋は、公衆電話に入ると、568601…とダイヤルを廻し、どこかに電話する。

玄関の呼び鈴が鳴ったので、玄関に出た小泉家の女中(津田光子)は、そこに、顔に包帯を巻いた不気味な男が立っていたので驚くが、明智ですと言われたので、信じて中に招き入れる。

御怪我をされていたのに、わざわざ御呼びして申し訳ありませんと小泉博士は、包帯の男に詫びると、私には分からない。設計図の半分を大阪から東京に移した事を知っているもの…、ましてやそれを私が飛行場から持ち帰り、それを雪舟の掛け軸の中に隠している事を知っているのは、警視総監、あなた、相川さん、中村さんと私…、それを何故二十面相が知っているのです?と小泉博士が不思議そうに尋ねる。

それが二十面相の二十面相たる所以ですよ。警視庁の方に連絡なすったんですか?と包帯の男が聞くと、いや、やたらに騒ぎ立ててはかえって悪いと思い、工場の連中にもその事は口止めして、あなたに連絡したんですと小泉博士は答える。

分かりました。今度こそ、信雄君を取り戻すのはもちろん、問題の掛け軸も渡さず、奴をひっとたえてみせますと明智が言うので、それをうかがって安心しました…と、小泉博士も安堵する。

しかし…、掛け軸も渡さず、信雄を救い出すと申しますと?と小泉博士が聞くと、掛け軸は私が預かります。私には清算があります。とにかくこれは私に任せて下さいと包帯の男は荒間を下げて来る。

明智さんがそう言われるのなら…、とにかく、掛け軸を観て頂きましょうと言い、小泉博士は包帯の男を廊下に誘うと、雪舟のダルマも、他の掛け軸と一緒に、あの蔵の中に入れてあるのですと、離れの蔵を指差して教える。

むさ苦しい所ですがどうぞ…と小泉博士は包帯の男を蔵の中に招き入れると、2本のダルマの絵を見せながら、一方は模写ですよ。本物を手に入れる前に騙されましてね…と教え、設計図は本物の軸の中に入っていると打ち明ける。

包帯の男は、模写の方を持って行きましょうと言うが、いや、二十面相の目はごまかされないでしょうと小泉博士は危惧するが、大丈夫、奴に中味を改めさせないうちにひっとらえてご覧に入れますと包帯の男は約束する。

私は無論、信雄の事も心配だ。だが、設計図の半分が二十面相の手で国外へでも出るようなことがあれば完璧な損失です。何分、よろしくお願いしますと小泉博士はその時、本物の掛け軸を箱の中に仕舞いながら頭を下げる。

その時、包帯の男も、偽物の掛け軸を同じ所に置いてあった空箱を取ろうとしたので、手が交差し、2本の掛け軸が床に落ちてしまう。

ひとまずこれをお預かりしておきます、遅くとも7時頃までには信雄君をお連れします。それまで御心配なさらず、ごゆっくりお休みになる事ですと、片方の掛け軸を箱に収め、包帯の男はねぎらう。

みんな、病院に行ってるのかも知れないぜ。小使いさんも病院の名前くら聞いておけば良いのにな…などと話しながら、小泉家の門前にやって来たのは少年探偵団の面々だった。

その時、横門から包帯の男が掛け軸の箱を持って出て来たので、明智だと思った少年たちは、先生!と呼びかけて近づくと、先生!小泉君のお父さんの事を聞いたんですか?と尋ねる。

すると、包帯の男は、大した事はないんだ。もう良いから、今日はお帰り…と言うので、怪しんだ小林少年(小森康充)が、先生、その包帯、怪我が酷くなったんですか?と聞く。

う、うん…と口を濁した包帯の男は、急用があるんだ、君たちとはここで別れようなと言い、立ち去って行く。

その後を追いかけた小林少年は、包帯の男の耳を観察すると、両耳とも包帯の外に出ていたので、先生の耳は悪いはずなんだ…と思いつき、前に出て、先生!と言いながら立ちふさがろうとすると、どけ!と突き飛ばされたので、あれは先生じゃない!と小林少年は指摘し、他の少年たちと共に逃げ出した包帯の男の後を追い始める。

1人の少年が石つぶてを包帯の男の背中にぶつけ、掛け軸の箱を落とした所に、小林少年が縄を投げ、相手の右手を絡める。

少年たちが協力して綱を引くと、綱は切れてしまい、包帯の男は逃げ去る。

少年たちも後を追跡するが、突然、男が乗った車が橋の上を迫って来たので避けると、車は走り去って行く。

しかし、小林少年は冷静に「3-48613」と書かれたバックナンバーを記憶する。

警視庁 公安三課 課長室

結局、奥多摩の怪電話は怪電波で終わった訳か…、同じ場所から発信する事はないと思うんだがな〜と明智は、マリ子と中村課長の前で考え込んでいた。

そこに電話が入り、受話器を取った中村課長は、君の小さい部下からだと明智に受話器を渡す。

受話器を受け取った明智は、自分に化けた二十面相が、小泉君の所から雪舟の掛け軸を持ってちゃったんですと言う少年の報告を聞き、しまった!設計図をやられた!と中村課長に知らせる。

3-48613だな?と二十面相の車のバックナンバーを確認した明智は、ただちに中村課長に知らせ手配を頼む。

二十面相は、急に小泉氏の声で断りの電話をかけ、僕に変装して掛け軸を奪ったんだ!と明智は悔しがる。

通信室からただちに渋谷区から逃げ去った二十面相の車の緊急手配の指令が発せられる。

パトカーが次々と展開し、検問を始める。

やがて、中村課長の元に、路上に放置されていた手配の車を発見したとの連絡が通信室から入る。

田立のその車の元に駆けつけた明智は、停まっていた二十面相の車の向かう側に、時計塔が聳えているのを発見する。

遊園地の中の杭に引っかかっていた帽子を小林少年に確認させた明智は、小泉君のものと知る。

明智、中村課長、マリ子、少年探偵団の面々は、中で開催されていた菊人形展の会場を見て回る。

すると、山のセットの後から、巨大なゴリラのような怪物の人形が出て来たのを目撃する。

明智君、少年探偵団のガキ共!警視庁の旦那方…、わざわざおいでいただくとは、この二十面相、光栄の至りだと、そのゴリラの怪物がしゃべりだす。

おい明智、この二十面相は、まだお前たちに捕まるほど老いぼれてはおらん。貴様ともそろそろお別れの時が来たようだ…。約束の復讐を果たさぬのは残念だが、俺の仕事はもはや終わったのだ。間の抜けたお前たちの捜査網を潜ってな…とゴリラの人形は嘲るように話し続けていたが、そのゴリラ人形の左手が抱きかかえているのは気絶した小泉君だとマリ子が気づく。

すぐにその側に駆け寄った明智が小泉君を救い出し、中村課長が抱きかかえて戻って来たので、少年探偵団が駆け寄り、名を呼びかけると、ようやく気づいた小泉君は立上がって、子供たちと喜び合う。

そこへ、箱を抱えて来た明智が、二十面相はこれだったよと言い、箱の蓋を開けてスイッチを入れると、それはテープレコーダーだった。

「警視庁 事件の全容を発表 融合反応 原子炉設計図 二十面相、明智氏に変装 大阪原子力研究所所長 小泉氏邸から奪う」「怪人二十面相 海外逃亡の恐れ 警視庁 全管下に戒厳令」と、翌日の新聞紙上に載る。

小泉少年は、二十面相から手紙を書く時渡されたペンを、そのままポケットの中に入れて忘れていたと少年探偵団に見せながら教えていた。

そのペンを観た少年の1人が、このペンは鍾乳石だぜ。僕の家に鍾乳石の置物があるんだよと言い出す。

おい、マリ子姉さんも奥多摩の怪電波の話をしていたなと小林少年は、そのペンを持ってみんなに確認する。

奥多摩…、奥多摩なら鍾乳洞がある…と、小泉少年が思い出す。

それだ!鍾乳洞だ!と小林少年が言うと、二十面相は鍾乳洞にいるの?と少年たちも気づき、先生に連絡して、早速奥多摩行きの手配をしようと小林少年は言う。

マリ子と少年探偵団は、みんなリュックを背負って、奥多摩の山中にやって来る。

洞窟を発見した小林少年は、みんな準備しよう。十分警戒して行動しよう!とみんなに命じる。

その時、おめえさんたち、何しに来ただね?と声をかけて来た山の案内人がいた。

マリ子が、ハイキングなんですけど…と答えると、おら、ここの案内人だよ、おめえさんたち、この中に入るかに?とその男は言う。

ほなら、オラが案内してやんベと勝手に言って来る。

1人の少年が、おじさん、この頃、この洞窟…とと聞こうとすると、小林少年は機転を利かし、姉さん、僕たちだけで行ってみようよと声をかけ、マリ子もそうね…と答える。

おめえたちだけで行くなら、行くが良いだんべと言い残し、案内人は去って行く。

おい、変な事聞くなよ、壁に耳あり、石に目ありって言うぞと小林少年は、余計なことを言いそうになった少年に注意する。

少年たちは、コウモリが飛び交う鍾乳洞の中を探検し始めるが、先ほどの案内人が背後に潜んでいたとは気づかなかった。

マリ子は、天井からぶら下がった蜘蛛にさえ悲鳴をあげる始末。

奥へと進む少年たちの様子を、黒ずくめで顔だけ出した敵の手下たちが、壁に溶け込み監視している事も気づいていなかった。

天井や横の岩陰から出て来た黒ずくめの手下たちが、少年たちの一番後の子を1人ずつさらって行くが、前に気を取られ進んでいた少年たちは気づかなかった。

さらに黒の手下の1人は、少年たちの命綱を密かに切断してしまっていた。

やがて、最後尾を歩いていた篠崎少年(後藤頼久)が振り返ると、後にいたはずの少年が懐中電灯を振り回しながら闇の中に消えて行ったので、上村君がやられたんだ!と小林団長に知らせる。

マリ子もようやく、みんなもいない事に気づく。

小林少年は、命綱も切られた事を知る。

みんなを探さなくちゃ!とマリ子は戻ろうとするが、小林少年は待ちたまえ!と制すると、前方で蠢く気配を感じ、残った3人だけで前進する事にする。

そこには無線装置が置いてあり、二十面相の隠れ家だと分かる。

篠崎少年は、無電で先生に連絡しようと言い出し、マリ子は、側の机の上に置いてあった設計図を発見する。

さらに、この前盗まれた設計図の残りの半分を写真に撮ったものもあった。

その時、背後に、あの山野案内人が立ち、自分たちを睨みつけている事に小林少年とマリ子は気づく。

案内人の背後には、全身黒ずくめの手下たちも揃っていた。

小林たちは逃げ出すが、途中、転んだマリ子は、前を逃げたいた小林少年たちとはぐれてしまう。

篠崎少年も転ぶが、暗い岩陰にへばりつき、追手をやり過ごす。

先頭を進んでいた小林少年は、集められていた少年たちと再会する。

設計図を取り戻したんだと小林少年は、マリ子と篠崎君は?と聞かれると、追われている途中ではぐれてしまったんだと打ち明ける。

その時、1人の少年が、設計図を隠そう!僕たちにはもう逃げ場がないんだと言い出したので、頷いた小林少年は、持っていた設計図を近くのいわの陰に隠す。

そこにやって来たのが、スーツ姿の二十面相が笑いながら近づいて来て、君が小林君だね?僕が二十面相だ。さ、設計図と写真の原板を返してもらおうと紳士的に言って来る。

背後には黒ずくめの手下たちを従えていた。

その場で小林君の身体検査と持ち物検査をした結果、設計図がないことを知った二十面相は、さすがに賢明な諸君だと感心する。

しかし、君たちの小さな頭から絞り出した知恵は、帰って不幸な災いになるんだと言うことをお見せしよう…、そう言いながら、とある岩場に近づいた二十面相が手を挙げると、大きな岩が横にスライドし、奥に空間が現れる。

その様子を、密かに近づいていた篠崎少年も観察していた。

奥の部屋の床には、縛られ猿ぐつわもはめられたマリ子が寝かせられていた。

次の瞬間、大きな鍾乳石のとげがたくさん生えた天井部分が、マリ子の上に降りて来るではないか。

それを観ていた篠崎少年は、急いで無電室に戻ると緊急通信を始めようとするが、すぐに捕まってしまう。

諸君、後数秒間の猶予だ!賢明な判断をしたまえと少年たちと真理子の間に立ちふさがった二十面相が静かに言う。

待て!設計図を渡す!と、耐えきれなくなった小林少年が言うと、二十面相は直ちに吊り天井を止める。

小林少年から設計図と写真を取り戻したに樹面そうは、又手を上げ、吊り天井を上げ、マリ子も少年たちの元に返す。

少年探偵団の諸君、そして名探偵明智小五郎の助手マリ子君。今日はこの二十面相が日本を後にする日だ。そのお見送りにここまで来てくれた諸君には、一つ最上のおもてなしをしましょう。諸君、最上のおもてなしとは…、これだ!と急に表情を変えた二十面相は、岩のスイッチを押し、急に周囲から大量の水が溢れ出して来る。

洞窟内の水攻めだった。

無電室の篠崎少年は椅子に縛り付けられており、無電に近づけなかった。

二十面相は笑いながら、閉まる岩扉の背後に消えて行く。

篠崎少年は、懸命に足を伸ばし、靴のかかとで無電を撃ち始める。

その頃、奥多摩にやって来ていた警官隊の車の列の先頭を走っていたパトカーに無電が入る。

警視庁から警視18号!少年探偵団より無電連絡あり。怪人二十面相は双葉鍾乳洞にあり、逃走の恐れあり、警視18号は直ちに現場に急行せよ!

先頭車に明智小五郎長と共に乗っていた中村課は、急ぐんだ!と運転手に頼む。

洞窟内の少年隊とマリ子は、すでに腰の辺りまで水に浸かっていた。

篠崎少年が縛られていた無電室にやって来た二十面相と同じく、全員スーツ姿に着替えていたその手下たちは、出発だと二十面相から言われると、その部屋の中に大きなダイナマイトの箱を設置する。

パトカーと警官を乗せたトラック二台が、鍾乳洞に到着する。

手下は、ダイナマイトの導火線に火を点け逃げ出す。

洞窟内では、少年たちとマリ子が、胸の所まで水に浸かっていた。

洞窟の入口に近づいた警官たちに、中村課長はガス弾の準備を促すが、中には子供たちがいるかも知れないと明智が止める。

篠崎少年が、縛られていた綱から身体を抜き、無電室を飛び出した瞬間、無電室は大爆発を起こす。

入口付近でその轟音に驚く明智たち。

爆発で洞窟内が崩壊したため、水も流れ出し、マリ子と少年探偵団は、外から漏れる光りを頼りに、脱出出来そうな隙間を見つけ、全員で岩を押し始める。

一方、洞窟から出て来た二十面相とその手下たちは、警官隊が入口付近を固めている事に気づくと、逆方向に逃亡しだす。

その後から外に出て来た篠崎少年が、先生!こっちだ!こっちだ!と明智に呼びかける。

二十面相は近づいて来た警官隊目がけ、マシンガンを乱射し始める。

洞窟内では、少年たちが懸命に岩を押していた。

山の方に逃げる二十面相一味、それを追う警官隊。

ようやく、小林少年やマリ子が、岩の隙間から外へ出て来ると、二十面相の手下たちが、警官隊に手榴弾を投げている所だった。

爆発を避けながらも、岩場を登りながら、拳銃で応戦する明智と警官隊。

別働隊が、二十面相たちの背後に回り込み、銃撃を加える。

挟み撃ちにされてもマシンガンを撃ちまくる二十面相。

少年たちも崖を登り始めたので、マリ子は思わず、危ない!止めて!と声をかける。

さらに逃げようとした二十面相を隠れて待ち受けていた小林団長以下、少年探偵団は一斉に投げ縄を投げつけ、二十面相の首にロープを巻き付ける。

少年たちは力を合わせてそのロープを引き、拳銃で子供たちを狙った二十面相だったが、脇から明智が発砲し、銃を落とす。

次の瞬間、足を滑らせた二十面相は崖から落下し、落ちた川の中で、うつぶせのまま蠢いていた。

小林少年たちは明智とようやく合流し、奪い取った設計図を手渡す。

その横を、担架に乗せられた重傷の二十面相が警官隊に運ばれて行くのが見えた。

先生、二十面相って、やっぱり凄い奴でしたねと小林少年が言うと、もう安心だよ、国際スパイ団は全員捕まえちゃったんだもの…と別の少年が言う。

でも、これで終わりだと思うとつまんないなと誰かが言い、全員が笑い出す。

いや、終わりじゃないよ。僕の仕事も君たちの仕事も決して終わりなることはない。今日もどこかで第二の二十面相が誕生してるのかも知れないしね…と明智が言い聞かせ、遠ざかって行く警官隊の車を見送る。

少年探偵団の歌が流れる中、少年探偵団は橋を渡って帰路につくのだった。


 

 

inserted by FC2 system