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その壁を砕け

脚本の新藤兼人さんと中平康監督が組んだ冤罪サスペンス。

同じコンビ作の喜劇「才女気質」(1959)同様、緻密な展開で、幸福の絶頂から一気に地獄の底に突き落とされた恋人たちの苦しみを最後まで見せて行く。

恋人の女性の方が看護婦で、罪を背負う男の方が小高雄二と言う辺りは、同じ年のラブロマンス、日活版「網走番外地」(1959)を連想させる。

日活での公開順に言うと、「網走番外地」(2月17日公開)「才女気質」(4月14日公開)「その壁を砕け」(6月23日公開)と言うことになる。

事件を追うのは、新米刑事役の長門裕之と、個性派弁護士役の芦田伸介。

キネ旬データのキャスト表によると、この芦田伸介が菅井一郎と表記されていたり、望月優子を北林谷栄と書いていたり…と相変わらずミスが多く、あまり参考にならない。

殺される谷川徳蔵役は二木草之助とキネ旬データではなっているが、画面で死体を観た感じ、特徴的な出っ歯などから、自信はないが、榎木兵衛のようにも見える。

犯行直後に、記憶が生々しい被害者に面通しを行う…と言う、一見正しそうに思える警察側の行為が、結果的に冤罪を産んでしまうと言う辺りが恐ろしい。

一旦被害者の口から飛び出した言葉は、その後、最も信憑性のある言葉として他人は鵜呑みにしてしまうし、言葉を発した側もその「思い込み」に自ら縛られてしまうからである。

これを客観的な立証で覆すのは容易ではない。

この作品では、最初にその事件に関わった警官が、その功績で刑事に出世してから、自らその事件に疑問を持ち、偶然、怪しい人物と出会う所から反証が始まり、結果的に、裁判所の実地検証を勝ち取り。その実験の最中、意外な事実が浮かび上がると言う展開になっている。

独自に再調査を始めた新米刑事が偶然真犯人に遭遇し、その追跡がスリリングに描かれている辺りの成り行きは、かなりご都合主義に思えるが、娯楽作品としては巧い。

主人公の車移動で軽快に始まり、ショッキングな事件と冤罪での逮捕と言う重い展開。

それが、途中から、がらりスピーディーな追っかけに代わり、やがて、クライマックスの行き詰まる実地検証…と変化する緩急の付け方などは巧い。

この当時の長門裕之は、こうした新米刑事役が多かったようにも思える。

一方、この作品の後、TVの「七人の刑事」で沢田部長刑事を演じて人気者になる芦田伸介が、ややクセのある弁護士を演じているのも珍しい。

被害者の1人を演じる望月優子、人情派の警察署長を演じている清水将夫、強面の刑事部長を演じている西村晃、裁判長役の信欣三に、裁判官役の大滝秀治、検事を演じている鈴木瑞穂、事件現場の隣の酒屋の主人を演じている浜村純、咲子の夫になる神山繁など個性派脇役好きにはたまらない作品。

渡辺美佐は、最初の登場シーンから何やら思わせぶりな態度なので、何か秘密を握っている雰囲気はあるが、最後のどんでん返しは、シンプルながらなかなか予想出来ない。

観客は、真犯人には最初から薄々気づいている。

探偵役も途中から大体分かる。

意外なのは、唯一の目撃者と思われていた人物が証言能力がなく、このままでは真相究明は無理か…と思われたとき出現する、第二の目撃者!

この物語は、一見法定ミステリか?と思わせ、実は、意外な目撃者を暴く、ちょっと捻ったミステリドラマになっているのだ。

新米刑事の母親を演じているのは三崎千恵子で、先輩刑事を演じているのが下條正巳、「男はつらいよ」のおばちゃん、おいちゃんである。

冒頭に登場する佐野浅夫と刑事部長役の西村晃は、共にTVの「水戸黄門」を後に演じる人たち。

展開の面白さだけではなく、登場人物の多彩さも魅力の作品である。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1959年、日活、新藤兼人脚本、中平康監督作品。

留置場の中の状況描写をバックにタイトル

テーブルの上に、5000円札をびっしり並べていたのは、自動車修理工渡辺三郎(小高雄二)だった。

きっかり20万ですねとそれを確認し受け取ったのは、自動車販売員の男(佐野浅夫)

あなたが3年間真面目に働いて貯めた20万だと言うので、サービスしたんですよ。このワゴン車なら、何でも仕事はもらえますよ。

修理はあなたは専門だし…と調子のようセールストークを言いながら、三郎をワゴン車の所に連れて行く。

三郎は、はじめて買った新車に乗り込むと、嬉しそうに販売店を出て行く。

深川の修理工場に着くと、仲間の工員たちが集まって来て、新車をうらやましがったり、新潟で待っていると言う三郎の恋人のことで口々に冷やかして来る。

3年前に出会った恋人と結婚を約束して、今から迎えに行くと言う三郎のために退職金も出した!と説明する仲間の1人。

三郎は舞い上がっており、俺、嬉しくて、嬉しくて…。これから新潟に向い、明日の朝8時に新潟駅前で待っているあれを乗せて帰って来るんだ!と満面の笑みで話す。

そんな三郎を、工員たちが取り囲み、胴上げをして送り出す。

修理工場を後にした三郎は、すぐにワゴンに乗り込み出発すると、戸田橋を通過する。

新潟にひた走る三郎のワゴンをバックにキャストロール

途中、バイクに乗ったアベックの女が三郎に手を振って追い越して行く。

その頃、新潟病院では、三郎の結婚相手の道田とし江(芦川いづみ)が、婦長室に辞表を提出に来ていた。

出迎えた婦長は、いよいよ明日ね。部長がお祝い下さったわと封筒を渡すと、今夜はみんなで送別会ですってね、私も参加させれもらうわ。おめでとう!ととし江を祝福する。

阪東橋を通過する三郎

肩先から沼田に入った所で、手打ちうどん、中華などを出す大衆食堂に寄った三郎は、ラーメン大、ワンタン、大盛り飯2つと注文し、2つですか?と女店員に驚かれる。

さらに、握り飯作ってくれと注文した後、店の前に停めてあるワゴンの埃を払いに行くが、食い逃げとでも思ったのか、女店員が店先から覗き込む。

その時、トラックが、水溜まりを撥ねて通過して行ったので、少しは遠慮しろよ!とワゴン車をかばいながら、三郎は走り去ったトッラクにぼやく。

その頃、新潟病院の看護婦寮に集まった看護婦たちが、とし江から、三郎とのなれそめを聞き出そうとしていた。

3年前、私が食堂で働いていた時、そこに良く食べに来ていた自動車修理工の三郎さんが、ある日突然、結婚しないかって言って来たんです。私、びっくりして、何も言えなかったの…と恥ずかしそうにとし江が説明すると、看護婦仲間たちは互いに抱き合ってふざけ合い、椅子から転げ落ちる。

丸善のガソリンスタンドで給油に寄った三郎は、出て来た女店員に新潟へはこの道で良いのかい?と聞くと、もうすぐ三国峠だよと教えられたので、これから恋人に会いに行くんだよと言ってしまう。

夜、床に入ったとし江は、明日迎えに来る三郎のことが気になって、布団を抜け出すと窓から外を見るが、周囲で寝た振りをしていた看護婦仲間たちは、そんなとし江を見ると、三郎さん、どこかしら?などとからかって、全員起き上がって電気を点けて起きて来てしまう。

夜道を走っていた三郎は、三国峠に来た時、車を停め、外に出ると、先ほど食堂で作ってもらった握り飯を頬張る。

すると、向い側からトラックが近づいて来たので、新潟に行くにはこの道で良いかね?明日の8時までに間に合うかね?と停めて運転手に聞く。

この先一本道で、時速40kmで行けば大丈夫だと教えてくれたので、握り飯どうかね?と勧めるが、お神酒ならともかく、飯じゃ手が出ないよと運転手は断り、走り去って行く。

その後、暗闇の中を走る三郎のワゴン車。

11時40分

鉢木村の駐在所の前を通過する。

中では、警官が誰かと将棋をしている所だった。

その直後、車の前に飛び出して来たレインコートを来た男が立ちふさがり、駅まで急用があるので、便乗させてくれないか?と停まった三郎に頼んで来る。

同じ年頃の青年と言うこともあり、気安く乗せてやった三郎は、東京から来た。新潟まで行くんだ。恋人が待っているんだ。3年前の約束守るために迎えに行くんだと話して聞かせる。

この車も買ったばかりなんだ。20万現金でなどとも教える。

良い車じゃないですかと助手席の男は愛想を言い、天神橋の所で、ここで良いと車を停める。

駅までもうすぐじゃないか、乗せて行ってやるよと三郎は勧めるが、男は、彼女に宜しく!と離れて行ったので、嬉しがらせるじゃないか!と笑顔で見送った三郎は、そのまま橋を渡り、鉢木駅前を通過しようとする。

その時、駅前派出所の警官が2人出て来て、ワゴン車を停めたので、何ごとかとおとなしく停めた三郎だったが、いきなり腕を掴まれ、降りろ!と命じられる。

三郎は訳が分からず、何をするんだ!俺はこれから新潟に行くんだ!放してくれ!とわめくが、警官たちは強硬だった。

越後屋酒店の左横にある鉢木郵便局から駅前派出署から電話を受けた鉢木駐在所の警官森山竜夫(長門裕之)は、何!逮捕した!今本署に連絡した所だ!すぐ行く!と興奮気味に話し終えると、事件現場である郵便局の住居部に向かう。

そこには、布団の上で頭を割られ、斬殺されていた主人谷川徳蔵(二木草之助)の横で、呆然としゃがみ込んでいる妻(望月優子)がいた。

駆けつけて来た医者が死体に近づこうとするので、それを止めさせ、重傷の妻民子の方を診るように命じると、森山に事件を知らせた隣の越後屋の主人(浜村純)にバイクを借りるぞ!と声をかける。

玄関に向かっていた森山巡査は、帰って来た次男芳吉(木浦佑三)とその妻美恵(峯品子)に、どこ行っとったんじゃ?徳蔵さんが殺されてるぞ!と知らせ、表に飛び出して行く。

奥の部屋に向かった芳吉と美恵は、凄惨な現場を観て立ちすくむ。

森山巡査が酒屋のバイクで駅前に向かう中、村では非常時を知らせる半鐘が鳴り響いていた。

やがて、森山が駅前に到着した直後、相生署から刑事部長(西村晃)たちもジープでやって来て、警官2人に捕まっていた三郎を観て、それか?と聞きながら降りて来る。

森山は、現場を保存して来たこと、主人は死亡、妻は重傷です!と伝えると、記憶が生々しいうちに面通ししといた方が良いんだと言う刑事部長と三郎を同乗させたジープを先導するためバイクで走り出す。

郵便局に到着した刑事部長たちは、取りあえず、玄関口に三郎を警官に押さえさせておくと、住宅部の事件現場に入って行く。

凶器は?と聞くと、寝間着姿の男が鉈を持って来る。

その時、越後屋の主人が金庫がたたき壊されていると持ち上げてみせたので、勝手に触るんじゃない!と注意し、金はどうしたと聞くと、全部なくなっている、15万入っていたと言う。

さらに、越後屋は、車の音を聞いたと言う。

ここから駅までどのくらいかかる?と刑事部長が聞くと、20分くらいですと森山が答える。

森山が、次男夫婦と紹介された芳吉と美恵は、事件当時、隣町に映画を観に行っていたと言う。

亡くなった長男の嫁だと紹介された咲子(渡辺美佐子)は、隣の納戸で寝ていたと言う。

そこに、滝川検事(伊達信)が到着する。

医者が、殺された方は頭を鉈で殴打されており、妻の方は2ヶ月の重症だと報告する。

刑事部長は、警官に連れて来いと命じると、容疑者の面通しをやりたいと言うので、医者は絶対安静何だが…と渋るが、刑事部長は頓着せず、芳吉に起こして下さいと頼む。

芳吉が頭に包帯を巻いた母親民子の上半身を起こすと、刑事部長は、奥さん、良く観て下さい。誰ですか?と警官に連れて来られた三郎を見せる。

民子は、三郎を見ると、この人です!この人です!と叫ぶ。

それを聞いた三郎は、違う!俺じゃない!と怒鳴るが、その場にいた相生署刑事(下條正巳)に手錠をかけられてしまう。

三郎を乗せ相生署に向かったジープを見送りに外に出た森山に、お手柄だったねと警察署長(清水将夫)が、ねぎらうように肩を叩いて来る。

翌朝、新潟病院を後にするとし江を、看護婦たちが全員で見送っていた。

病院から出て、新潟駅に向かうとし江を、1人の男が尾行し始める。

町中に来たとし江は、昨夜12時頃相生郡鉢木町で起こった殺人事件は、官民の協力によるスピード逮捕として話題になりましたと伝えるアナウンスが流れる中、新潟駅へと急ぐ。

駅前までやって来たとし江は、前から近づいて来た男に気づくと、振り返り、病院からずっと尾行して来た男とに挟まれる。

前から近づいて来た男は、道田とし江さんですね?と確認すると、警察のものですと言いながら、警察手帳を差し出す。

相生署の留置場に入れられた三郎は、出してくれ~!とわめいていた。

その間、刑事部屋に戻って来た刑事たちは、渡辺が言うには、郵便局前からレインコートの男を天神橋まで乗せたと言っているんですが、都合が良過ぎます。駅の切符は売れていません。

次の列車は、翌朝の朝までありません。相生駅は急行が停まらないので、あそこであの時間降りたとすると途中下車しかなく、途中下車したのは当夜2人しかいませんなどと聞き込みに行っていた刑事たちが報告していた。

捜査部長は、犯行の印象が消えないうちに面通ししたのが、前開の事件同様成功したと満足げだった。

あの長男の嫁と言うのは?と署長が聞くと、夫に先立たれたようですが、人柄も良く、今でも郵便局を1人でやっているようですと刑事部長は報告する。

翌日、森山がバイクで天神橋の所まで来た時、出稼ぎから帰る石工の一団と遭遇する。

夕べ、森山と将棋をしていた親方(松本染升)は、夕べはお手柄だったそうだね?と話しかけて来て、これで本署勤めに出世だな…とからかう。

同行していた1人の石工(神山繁)が、もうここでは仕事がなくなったので帰る所だと言い、森山と別れる。

森山は、越後酒店の前に戻って来ると、バイクを借りた礼を店の中に言い、郵便局を覗いてみる。

咲子が窓口でいつも通り働いているのが見えたので、隣の入口から住居部屋の方に入り込む。

手前の部屋では、越後屋の主人など数人の男が話し込んでいたが、越後屋が、やっぱり奴に決まったか?と森山に聞いて来る。

そこに出て来た芳吉が、夕べはありがとうございましたと挨拶して来たので、線香を上げさせてもらいに来たと言いながら森山は上がり込む。

越後屋の仲間たちが、咲子さんが納戸に寝ていたのに駆けつけるのが遅かったと芳吉さんがえらく怒っているそうだね…などと口さがない噂を始めると、同じ部屋で皿を出そうとしていた美恵が動揺したのか、つい音を立ててしまい、男たちも気まずくなって黙り込む。

仏壇で森山が拝んでいると、重傷で寝ているはずの民子が部屋の前に立っていたので驚く。

慌てて、芳吉と美恵が母親を寝かせに行く。

そこに、異変に気づいた咲子がやって来て、根説のを手伝おうとするが、何故か次男夫婦は咲子を無視していた。

駐在所に戻った森山は、「星は何でも知っている♪」などと歌いながら風呂に入る。

その間、村から夕食の仕度に来てくれた母親(三崎千恵子)が、茶碗くらい食べたらすぐに洗っとけ!米粒が落ちやしねえ!早く嫁さん、もたえ。巡査になって1年半にもなるからな…などと文句を言っていた。

風呂から上がり、母親手作りの夕食を食べ始めた森山は、今度のことで俺、本署勤めになるかも知れんと嬉しそうに母親に話す。

夕べは、石工の親方と将棋をして、三タテを食らって負けたんだけど、その時、酒屋が飛び込んで来たんだ!と詳しく話して聞かせ、本署勤めになったら刑事になるんだと自慢するので、嫁をもらえと又母親は言う。

嫁をもらう!と森山が答えると、お前が夕べ手柄を立ててくれたので、おら、村でも鼻が高いよと母親は嬉しそうだった。

その頃、留置所から出された三郎は、刑事部長立ち会いのもと、新潟から連れて来たとし江と面会する。

駅前で待ってたんだろう?約束の時間に行くつもりだったんだ…と三郎が詫びると、今に分かるわととし江は慰める。

何もしてないんだ!と三郎が伝えると、あなたが出て来るのを待ってるわ。私のことなら心配いりません。身体に気をつけて…ととし江は言う。

立った数分で面会時間は終わり、すぐに三郎は又、刑事に留置場へ連れ戻される。

翌日、刑事部長は現場の再確認に来る。

他の刑事たちは、三郎の足取りを確認しに、ワゴンを買った自動車販売店や、途中で立ち寄ったガソリンスタンドの女店員らに事件当日のことを聞きに行く。

そんな中、警察署長は、とある大衆食堂に来ると、道田とし江と言う女の子がいるだろう?と店主に聞く。

署長がとし江を外に連れ出すと、主人はその時来ていた客たちに、10日ばかり前に泣きつかれて雇ったんだが、あれがこの前の犯人の情婦だったのはね~、寝首をかかれる所だったよ…などと話していた。

線路脇に来た署長は、君、身寄りはないのか?あんな所で働かなくても、新潟の病院に帰った方が良いんじゃないのかい?と聞くと、もうあそこへは帰れません。噂が広がってしまって…、ここの方が良いんです。三郎さんの近くにいたいのでととし江は答える。

渡辺は起訴されることになった。アリバイが何もないんだ。当日乗せたと言う青年も何の証拠もない。当日の足取りを当たってみた結果、犯行の20分前に、渡辺の車は鉢木村に差し掛かっていることになるんだと教え、どうも、あんたの顔を見ていると、あんたを信じたくなるんだが、最後の決めては公判廷で争いなさい。後に花月で公判が始まるから、良い弁護士を頼みなさい。少しでも早く。裁判は長岡で開かれるから、長岡に良い弁護士がいるよと署長は親切に言ってくれる。

さっそく、長岡駅に向かったとし江は、署長から紹介された鮫島卓次(芦田伸介)と言う弁護士の家を訪ねる。

書斎で、釣り竿を磨いていた鮫島は、お金はあるのかね?と単刀直入に聞いて来る。

病院で働いて貯めた貯金が6万円ありますととし江が答えると、それを全部使うと生活に答えりゃせんかな?と鮫島は心配する。

しかし、とし江は、私、働きます!と答えたので、渡辺三郎の家には金はないのかね?と鮫島は確認する。

三郎さんのお兄さんが、千葉の勝浦で漁師をしているらしいんですが、暮らしは楽じゃないようですととし江が言うので、6万じゃ足らんかも知れんよと鮫島が念を押すと、私が働きますと又言うので、働き口はあるのかね?と鮫島は聞く。

するととし江は、これから見つけます!この長岡で働きます。ここで裁判が行われるんですから!としっかりした表情で答えたので、あなたは全てに自信を持っているようだね…、良し引き受けよう!と鮫島は答える。

相生警察署の入口から出て来た森山は、自転車で帰って来た同僚から、どうだった?と聞かれたので、明日から本署勤めだよと嬉しそうに答える。

バイクで帰る途中、森山は鉢木駅の前で咲子と会ったので声をかける。

どちらへ?と聞くと、里に帰るんです。離縁になって帰ることになったんです。私、あの家にいてもしようがないんですと言うので、離縁されたんですか…、言うてみれば他人みたいな物ですからね…と気まずそうに森山は話を合わせる。

咲子は、里は柏崎ですので、お近くのお寄りの際はお越し下さいなどと社交辞令を言い、私は明日から本署で刑事に…と言いかけた森山だったが、お元気で…と、駅の中に向かう咲子を見送る。

越後屋にバイクを返しに行き、出て来た越後屋の女将に、本署へ決まったがね!と嬉しそうに報告した森山だったが、女将は、今、隣に弁護士が来ていると耳打ちして来る。

見ると、見慣れぬ男が郵便局から出て来ると、何かを調べるように、店の前から入口に入る振りなどをしてみていた。

それは鮫島弁護士で、郵便局に入る森山に会釈して来る。

住居部に入った森山は、出て来た芳吉に、駅前で咲子さんに会ったよと教えるが、帰ってもらったんです。納戸に寝ていたなんて言ってますが、あの夜、怖くて隠れていたに違いありません。薄情な奴だ!と芳吉は吐き捨てる。

美恵は、離れの縁側に座れるようになっていた民子に食事をさせていた。

相生署の留置場にいた三郎は、看守に面会だと呼びだされる。

面会に来たのは鮫島弁護士だった。

どうだい、元気かい?とねぎらった鮫島弁護士は、千葉の勝浦に行って兄さんにも会った。深川の修理場や中華料理屋にも行った。みんな警察の調べた通りだった。この事件は難しいね…。俺もベストを尽くすが、君も頑張れ。あの人はしっかりした人だと説明する。

しかし、三郎が、こんな所にいたら気が狂いそうだ!と平常心を失っていたので、木を落ち着けて良く寝るんだと励ます。

森山は刑事に昇進し、スーツ姿で相生署にやって来ると、三郎のワゴンを庭先に運び込んでいる同僚たちに気づく。

タイヤはパンクし、自動車はみじめな姿になっていたが、証拠物件と言うことで保管しなければ行けないのだと言う。

刑事部屋にやって来ると、新聞を読んでいた先輩刑事が、あの弁護士さん、頑張ってるな…とからかうように言う。

森山を迎えた刑事部長は、おふくろさんから手紙をもらった。嫁さんを世話してやってくれと言って来たぞと声をかけて来たので、洗濯物のために欲しいですと森山が答えると、そんなことを言ったら人権蹂躙だぞと苦笑する。

その後、真顔に戻った刑事部長は署長に向い、弁護士は、凶器の鉈に指紋がないので犯人は手袋をしていたに違いないと言っとるが、手袋がいまだに見つからん。川に捨てたのだ…とつじつまを合わせとりますが…と報告する。

長岡地方裁判所法定での第一回公判

鮫島弁護士は、その証拠物件の鉈を手にし、この鉈を持った物は他におります。容疑者を早急に被害者に面通しした結果、誤解が生じた。その結果、捜査が一本調子になったのですと裁判官たちに説明していた。

傍聴に来ていた森山は、咲子も来ていることに気づくが、途中で姿が見えなくなったことを知る。

被告は中華食堂で食事をし、村に12時30分頃到着した。

郵便局から天神橋に何者かを乗せた。

村のはずれに被告が到着したのが11時40分で駅前で捕まったのが12時30分。

40km平均で走ったと仮定すると、15分余るだけ。

わずか15分で、1人殺し、1人重傷、金庫をたたき壊し、金を奪って車に乗ったのでしょうか?

裁判所を出た森山は、鮫島弁護士から、うどんでも食べませんか?と声をかけられる。

立場上ためらう森山に、何も聞きやしませんよと笑いかけるので、仕方なく一緒に近所のうどんやに入る。

きつねうどんを2つ注文した鮫島は、独り言を言うだけですと断り、不思議なのは、金庫から盗まれたのは15万なのに、三郎君が持っていたのは4万ちょっと…、私が三郎君が使っている信用金庫に聞いてみると、金額がちょうど合う。

そこに、きつねうどんを運んで来たのは道田とし江だった。

森山は気づかなかったが、鮫島が、彼女は道田とし江で、新潟駅で翌8時に待ってたんですよ。渡辺が出て来るのをここで待つと言うんです。あの人が殺しをやるような人じゃないと思っているんですな…と教える。

それを聞いた森山は、調理場の暖簾を潜りかけ、気になるように振り向いたとし江と目が合う。

夜、相生署に戻って来た森山は、表に停めてあったワゴンの側に寄り、パンクしているタイヤや運転席に吊るされたマスコット人形を眺めると、署内に入り、咲子のことを思い出す。

翌朝、刑事部長の前に来た森山は、見合いをしたいんで、2、3日、休暇を頂けないでしょうか?と申し出る。

刑事部長は、とうとう決意したか!と笑う。

柏崎にやって来た森山は、咲子の実家の酒屋を探し当て、出て来た母親らしき女性に咲子さんは?と聞く。

相生のもので、その辺まで来たものですから…とごまかすと、気の良さそうな母親は素直に信じたようだが、咲子は佐渡へ嫁入りしたと言うではないか。

どうせ二番煎じだけん、良い所には行けんですがな…などと母親は自嘲気味に打ち明ける。

帰路の列車に乗り、弁当を食いながら、結婚か…と呟いた森山だったが、「どうせ二番煎じだけん、良い所には行けんですがな…」と言っていた母親の言葉が気にかかり、途中で気が変わって、車掌に佐渡への連絡船の時間を確認すると、切符の行き先を変更する。

佐渡に渡った森山は、たらい舟漁などが行われている港付近をうろついていたが、偶然、買い物に出て来たらしい咲子と出会う。

咲子は、突然目の前に現れた森山に驚いて立ち尽くしていたが、ちょっとその辺まで用事で…と森山が言い訳をすると、笑顔になって挨拶をする。

その時、森山の背後から近づいて来た漁師を見た咲子が主人ですと紹介したので振り返って相手を見るが、それは、相生村の天神橋ですれ違った石工の1人だった。

互いに相手を思い出し、君だったのか…と驚いた森山は、ちょっと寄ったんだよ…とごまかす。

すぐに2人と別れ、海岸にやって来た森山だったが、何事かを考え込んでいた。

家に戻って来た石工と咲子は夕食を食べ始めるが、互いに相手の目線を気にしているようだった。

新潟に帰る連絡船の甲板で、森山は、もし渡辺の犯行ではなかったら…と自問していた。

翌日、鉢木村巡査駐在所の後任の巡査に挨拶に来た森山は、郵便局に寄ると、お母さんはどうですか?と美恵に聞く。

相変わらずなんですよ…と美恵は答える。

縁側に座っていた民子は、焦点があってないような目つきでぼーっとしていた。

その後、天神橋にやって来た森山は、橋の下の河原に降りてみたとき、側の草むらで蠢いている怪しい人影を発見し、とっさに身を隠す。

その男はレインコートを着ており、草むらから出て来ると、バッグを持って橋に登る。

それをやり過ごした森山が、今男が踞っていた場所に行ってみると、何かを掘り起こしたらしい穴が残っていた。

慌てて、橋の上の男の様子を見上げると、ちょうどやって来たバスに乗り込む所だったので、慌てて追いかけようとするが、もうバスは走り去っていた。

急いで越後屋に向い、親父!バイクを貸してくれと声をかけるが、出て来た女将が言うには、主人が町まで乗って行ったと言うではないか。

焦った森山は、配達用の自転車を借りると、全速力で駅へと向かう。

諏訪宿行きのバスで相生駅に着いたレインコートの男は、駅に到着した蒸気機関車に乗り込む。

その列車が動き始めたとき、駅に到着した森山は、自転車を乗り捨て、危ないですよ!と制止する駅員の呼び掛けも無視して、ホームに入り込むと、最後の車両にかろうじて飛び込む。

客席を前方へと進み、先ほどのコートの男を捜す森山だったが、なかなか相手は見つからなかった。

諦めかけたその時、トイレから出て来る男を発見したので、洗面所の隣に身を隠し様子をうかがう。

その時、機関車がトンネル内に入ったため、室内に煙が充満して来たので、思わずハンカチで口を塞ぐ森山。

その直後、手を洗い終わった男が出て来て席に向かう。

長岡駅に着いたとき、男は弁当屋から、ビールとサンドイッチを180円で購入、紙コップに注いでビールを飲み始めたので、さりげなく近寄った森山は、一つ前方斜めの席に座って背後の男を監視し始める。

男は上野駅で降りたので、森山も一緒に降り、飲屋街の方へ尾行するが、そこで相手の姿を見失ってしまう。

しかし、とある無人のキャバレー内に人影を感じたので、中に入ってみた森山は、2階の部屋のドアを開けて、電気のスイッチを入れた所で、あの男が殺されているのを発見する。

見ると、窓が開け放たれており、隣の電燈が揺れていたので、犯人は窓から逃亡した直後だと言うことが分かる。

相生署に戻って来た森山は、警察署長と刑事部長にこの結果を報告する。

殺されたレインコートの男は富永清美(沢井保男)25才で、競輪キ○ガイだったようで、15万円を持っていた。

犯人は、上野の愚連隊のメンバーで、すぐに捕まり、動機は、賭博の貸し借り。

(回想)捕まった愚連隊の男(梅野泰靖)は、富永の奴が借金を返さなかったんだよ…と供述する。

(回想明け)前の日に新潟競輪があったんです…と森永が報告を終えると、その資金を捻出するために、富永が犯行に及んだと言うのか?今更そんなことが言えるか!それが本当だったら我々は全員首だぞ!と刑事部長は激高する。

その時、窓の外には雨が降りだし、表に置いてあった三郎のワゴンも濡れ始める。

郵便局の咲子は、堤防工事でこちらに来ていた石工と結婚していましたが、どうも2人の様子が変なんです。その結びつきが不自然なんですとも森永は言う。

厳しい顔でその話を来ていた署長は、疑問が出て来れば、見直さない訳にも行くまい。私たちも検事も責任を取らねばならない…と沈痛な面持ちで言お。それにしても、君をこんなにも駆り立てた動機は何なんだ?と森山に聞く。

とし江と言う渡辺の恋人に会ったんです…と森山は打ち明ける。

必要なのは我々の勇気だよ…と署長は言うが、案の定、その後報告を受けた滝川検事は、今頃どうして恥じさらしが出来るんだ!と怒りだす。

森山の下宿先にやって来た母親も、甘えがあんな事を言う物だから、部長さんも署長さんも首になるんだよ!と説教するが、しょうがねえじゃないか、やっちまったんだから…と森山は答えるだけだった。

2回目公判で、鮫島弁護士は、相生署の森山刑事が入手した写真を、被告に見せても良いでしょうか?と裁判長(信欣三)に聞き、許可が降りたので、三郎にその富永の写真を見せると、これだ!俺のワゴン車に乗ったのはこいつだ!と三郎は叫ぶ。

その瞬間、傍聴席で聞いていたとし江は思わず涙を流す。

続いて、鮫島弁護士は、森山刑事を証言台に呼ぶと、あの晩、将棋を指していたそうですが…と聞くと、石工の親方とやってたんですが、三番とも負けたので、勝った親方はすぐに帰って行きましたと答える。

車が通った音は聞こえませんでしたか?と鮫島が確認すると、自分は覚えてないと森山は答える。

続いて、石工の親方が証言台に呼ばれ、あなたは将棋に勝ったんですから、気持ちに余裕があったはずです。あの晩、車の通った音を聞きませんでしたか?と鮫島が聞くと、親方は、聞いたような気がする。郵便局の方へ行った。そうだ、確かに聞いた!俺は将棋に勝って、あの時俺は余裕があったんだ!王手飛車をかけたんだ!と答える。

(回想)一升瓶から酒を飲みながら、将棋盤を見つめる石工の親方は、車が通るライトに照らされる。

(回想明け)その10分後、越後屋の主人が現場に駆けつけております。事件の実地検証をやって頂けないでしょうか?と鮫島は裁判長に頼む。

意見を求められた主任検事(鈴木瑞穂)は、必要ないと思いますと答えるが、一旦、奥の部屋に引っ込んだ裁判官の1人(大滝秀治)は、私は調べ直した方が良いと思うと裁判長に意見を言う。

それを聞いた裁判長は、実地検証をやりましょう!と答える。

裁判所から帰るとし江の姿を咲子は偶然目にする。

うどん屋の主人は、帰って来たとし江に、どうだった?と聞くと、実地検証をやることに決まりましたと嬉しそうにとし江が言うので、良かったな!と言ってくれる。

佐渡に戻る連絡船の甲板で、咲子は波頭をじっと見つめ物思いにふけっていた。

いよいよ実地検証の日がやって来る。

相生村の郵便局の前は人だかりがしていた。

そこに警察車両がやって来て、警察署長、刑事部長に連れられた三郎を始め、事件関係者が全員集まって来る。

森山は、とし江を連れて来るが、野次馬の中から、あいつが犯人の情婦だぜ!おとなしそうな顔して!と言う声が聞こえると、とし江に石を投げつける者がいた。

それに気づいた森山は、乱暴をやっちゃいかん!と叱りつける。

郵便局の庭先に入り込んでいた子供たちを警官は表に追い出す。

雨戸を閉め、事件当夜と同じような状況を再現し始める。

裁判長は、被害者の民子に、どうぞ寝て下さいと声をかけ、横の主人の布団には、刑事の1人が代理で横になる。

事件の状況を思い出したのか、民子は顔を覆い怯えるので、芳吉がそれを慰める。

犯人役は、手ぬぐいで顔を隠し、凶器の鉈を手にして待機すると、関係者一同が見守る中、部屋の電燈が消される。

第一の実験

犯人役が、老夫婦が寝ていた寝室に入り込み、まずは、主人の徳蔵役の刑事の頭を殴る振りをする。

徳蔵役の刑事は悲鳴を上げ、次に犯人役の男は、民子の頭部を殴打しようとするが、民子は怯えて掛け布団を頭からかぶってしまう。

第二の実験

刑事部長が咲子に依頼し、寝室前の廊下から咲子が、誰か来て下さい!と叫ぶ。

第三の実験

咲子が、誰か来て下さい!と叫ぶと、隣から、越後屋の主人が入って来て、どうしたんです?と咲子に聞き、芝居を終えると、照れ笑いして観ていた者たちに会釈をする。

第四の実験

もう1度、犯人役が寝室に入り、徳蔵を殴った後、民子を殴ろうとすると、民子は上半身を起こしたまま、ぼーっとしていたので、ちょっと待って下さい!と裁判長が再現芝居を止める。

さっきの時、奥さんは布団をかぶりましたね?思い出して下さい。事件当夜も、奥さんは思わず布団をかぶったんでしょう?それで、案外傷が浅かった理由が分かった…と裁判長は納得する。

犯人の顔は観てないんじゃないですか?と裁判長が民子に聞くと、その場で様子を見守っていたとし江も、奥さん!本当のことを言って下さい!私たちを助けて下さい!奥さんの一言で、私たちは自由になれるんです!と頼む。

しかし、民子は呆然としているだけで、何も答えようとはしなかった。

興奮したとし江に、向うへ行ってらっしゃいと鮫島が声をかけると、裁判長も芳吉に、お母さんを休ませてあげなさいと声をかける。

第五の実験

納戸の布団で寝ていた咲子に、あの時、隣の物音を聞いたんでしたよね?やってみて下さい、どうぞと裁判長が頼む。

横になっていた咲子には、側に立って見守っている三郎の手錠が気になって仕方なかった。

なかなか咲子が動き出そうとしないので、咲子さん?と森川が声をかける。

すると、咲子は、私、ここに寝ていなかったんです!と布団に横になったまま言い出す。

私、裏の納屋にいたんです!

(回想)納屋の中で、咲子は、石工の男と抱き合っていた。

それは、今、結婚したあの主人だった。

物音の気づき、物置の扉の隅から外を覗いた咲子は、レインコートを着た男が母屋の方から出て来て、手袋を外しているのを目撃する。

(回想明け)その時、お義父さんが殺されていたの、私、知らなかったんです…と咲子は言う。

(回想)胸騒ぎを感じ、1人寝室へ向かった咲子は、寝室の入口付近で何かを踏んだので、それを拾い上げると、血まみれの鉈だったので、思わず落とす。

そして、部屋の中を観た咲子は悲鳴をあげる。

(回想明け)私、その時、恥ずかしいことしてたんです。あの時、すぐに言っていれば良かったんです。怖かったんです。ここに嫁に来て、半年後に主人が亡くなりました。頼る人が欲しかったんです。寂しかったんです。あの時、すぐに言えば良かったんですが、私に勇気がなかったんです!すみません!すみません!堪忍して下さい!と、正座した咲子は頭を下げ続ける。

ありがとう!あなたが言ってくれたことで、真実に光を当ててくれたんだと感謝した鮫島は、この人ですか?と持参した富永の写真を見せる。

この人です!確かにこの人です!と咲子が叫ぶと、その咲子の前に跪いたとし江も、ありがとうございます!と感謝し、咲子は、すみません!と答え、2人とも頭を下げたまま泣き出す。

パンクをしていたワゴン車のタイヤに空気が入れられる。

相生署の前で、釈放された三郎ととし江がそのワゴン車に乗り込む、

運転席に近づいた森川が手を差し出すと、三郎はその手を握り返す。

その様子に気づいたとし江も笑顔を見せる。

ワゴンが出発し遠ざかって行くのを見送る森川、署長、刑事部長たち。

天神橋を通り過ぎた辺りで、一旦停まったワゴンは、突然、大きなクラクションを鳴らしながら、鉢木郵便局前を通り過ぎる。

その音に驚いて飛び出して来る越後屋の主人や村人たち。

村を通り過ぎるとワゴン車を止め、三郎ととし江は後ろを振り返る。

そして三郎をとし江は互いに笑顔で見つめあう。

もう後を振り返らんぞ!そう言った三郎は、ワゴンを走らすのだった。

 


 

 

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