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青竜の洞窟

高垣眸原作の映画化で、前編「豹の眼」の一週間後に封切られた後編部分に当たり、上映時間41分の中編作品である。

併映のメインは、勝新主演の「まらそん侍」…、と言うことは、「まらそん侍」は子供ターゲットだったと言うことか?

前編に登場した地図には「イランゴル」と書かれていた国名が、何故か、後編の冒頭に流れるテロップには「イランゴール」になっている。

確かに、前編でも、陳爺は「イランゴール」と言っているように聞こえる。

どちらが正しい国名なのか良く分からない。

この頃の映画は、ただでさえ音質が悪い上に、滑舌の悪い俳優さんも多く、その上になお、アイヌの言葉や架空の地名などが入り交じっているため、非常に聞き取り難いのが難点。

本作では、北海道のアイヌに、中東風の衣装を着た姫、中国服風のヒーローと西部劇風のヒーローなど、全体の雰囲気としては、異国情緒満載の「無国籍映画」に近くなっている。

何故か、日本なのに、主人公も敵も全員銃を持っており、北海道の港は無法地帯でもあるかのように、西部劇風の銃撃戦を繰り広げる。

確かに、日活の「渡り鳥シリーズ」(1959〜)なども、日本なのに西部劇のような銃撃戦が普通に行われており、この作品などは、その先駆的な作品だったりするのかも知れない。

キャバレーと半裸の女性の踊りなど、子供向けらしからぬ演出も、今観ると奇妙に感じる。

話の展開は、単純明快と言うか、ご都合主義の連続と言うか、まさか、そんな安直な設定じゃないだろうな?と薄々想像する通りになっている。

さらに、少林寺拳法の使い手である主人公の兄を演じている浜口喜博と言う役者さんが、どう観ても素人で、棒読み台詞なのが気にかかる。

背は高く、体全体もがっしりしているので、本業は本物の格闘家か何かではないだろうか?と思い、調べてみたら、この方、ヘルシンキオリンピック男子800m自由形リレー銀メダリストで、後に俳優になった変わり種らしい。

つまり、昔の水泳選手から俳優に転業したターザン役者「ジョニー・ワイズミューラー」の日本版みたいな人だったようだ。

前編で、マスクを取って顔をスクリーンにさらす場面があり、正直誰だか分からなかったのだが、当時の観客にとっては、良く知った有名人だったのだろう。

劇中に登場する「青龍の洞窟」近辺の風景は、何となく、今でも特撮ヒーローものなどに登場する「大谷石地下採掘場跡」のようにも見えるが、山の中の様子は、八王子辺りを使っているのではないかと想像する。

洞窟の中のセットなどは、後のテレビ特撮もののセットと大差ないような感じで、雰囲気も昔のテレビ特撮ものに近い。

違うのは、初歩的なトリック撮影を使ったテレビ初期の子供向け東映特撮時代劇風のイメージと、西部劇風のイメージが入り交じっている点で、まだ、円谷系の空想特撮要素は全くない。

ただ、ジャガーが分身の術を使ったりするのは、バルタン星人の忍法の見せ方とほぼ同じ多重露光だったり、雰囲気の一部が初期の円谷系に見えなくもなかったりする。

王大人が使う少林寺拳法の表現に興味があったのだが、残念ながら、空手のような技は全く登場せず、鼻○そを飛ばすように石つぶてを飛ばす技だけなのが残念。

敵役のジャガーも、丸顔の温厚そうなおじいさんにしか見えず、初歩的なトリック撮影で、姿を消したりしてみせるだけなので、アクションとしては単調。

それでも、前編よりは、魔法合戦風で若干面白いと言う所だろうか。

前編で死んだと思っていた龍や鉄が、何ごともなく又登場していたり、拷問で死んだはずの陳爺が、又、都合良く蘇ったり…と、いくら子供向けとは言え、噓っぽいご都合主義の連続なのが、若干しらける部分はある。

前編でのドクター・ウスクラは、死人を蘇らせるには、死んだ人に蘇って欲しいと願う人の真心と、その人の寿命を3年削る事で可能だと言っていたはずなのだが、後編では、王大人から生き返らせてくれと簡単に依頼され、誰の真心の手助けもなく陳爺を蘇らせてた…ように見える。

やってられねえな…などとぼやきながら、自分の命を3年削って蘇らせたのだろうか?

誰か、自分の寿命を3年縮めても、陳爺を助けたいと願う人間が都合良くいたのか?

それとも、最初から、真心とか3年寿命を縮めるなどと言っていた事自体が噓だったのか?

その辺の説明が何もないので、気にしだすとどうにも気になる。

当時は、どうせ観客は子供だし、1週間前に公開した前編の詳細など誰も覚えてないだろうと言うことだったのかも知れない。

日本なのに、終始、中国風の服を来て中国人に成り済ましている日本人ヒーローと言うのも、かっこいいのか悪いのか判断し難かったりする。

アジアの小国を助けている地下運動の一員だから、国籍不明にしていると言うことなのかも知れない。

とは言え、ラストシーンが、完全に「スター・ウォーズ」(1977)のラストと同じだったのには驚かされた。

姫を助けた主人公が、姫から勲章を首からかけてもらい、姫を真ん中にして、一段低い所でもう1人のヒーローと挟むように立って、スクリーンの方に向くと言う構図までそっくりなのが凄い。

ひょっとしたら、さらに元ネタになるようなラストがハリウッドの古典にあるのかも知れない。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1956年、大映、高垣眸原作、中井新一脚色、鈴木重吉脚色+監督作品。

かつて…

ヒマラヤの山中深く

無尽蔵の富を秘めたイランゴールと言う国があったが

やがて…この国の平和は

その国の富を強奪しようとする

悪人豹(ジャガー)のために破壊された

そして財宝所在を秘めた「王位の指輪」は豹(ジャガー)のために奪われたのである

かくて…18年の後

物語は北海道に移り

国王の遺児沙利 (サリ)姫を助ける忠臣陳爺(チンイエ)

柔道の妙技をふるう義侠の青年旭杜夫

そして白馬を駆り少林寺拳法の秘術をつくす王(ワン)大人らの

「王位の指輪」をめぐる波瀾万丈の戦いが

まさに火ぶたを切ったのである(と、アジア地図をバックにテロップが流れる)

タイトル

アイヌ独自の文様をバックに、キャスト、スタッフロール

巫女ウルミを中心に、アイヌの村人たちが踊っている。

今日は「熊祭り」の日だった。

陳爺(花布辰夫)は沙利姫(藤田佳子)に、近くのパジメの港やマルコシの山の名前を教えていた。

そこにジーンズ姿の旭杜夫(北原義郎)が近寄って来る。

ここから、御母、王妃様が仰せられた所にとうとう参りましたと陳爺は言う。

あの山の中の宝を開き、イランゴール再興に使わなければ行けません。今こそ、母姫様から預かったこの「王位の指輪」をお渡しします…と言い、沙利の指に指輪をはめてやった陳爺は、この指輪がmあなた様の指にぴったり合うまでに18年の月日が経ちましたと感慨深気に言う。

沙利姫は、爺や、ありがとう、父上も母上もいない独りぽっちの私を、いつまでも可愛がっておくれと頼む。

それにつけても、これからですぞ。ジャガーが持って行ったもう一つの指輪を取り返さなければ、王位を継ぐ事も、宝を開く事も出来ませんと陳爺は言う。

やりましょう、姫!必ずその指輪を取り返してみせます!と、側の石に腰かけていた杜夫が声をかけると、沙利はありがとうと喜ぶのだった。

私の命に代えても、きっと取り返してみせます!と杜夫は誓う。

これで、やっと用がすみました。肩の荷が軽くなった気がします…と陳爺も安堵する。

その後、ウルミや村人たちの踊りを見物する杜夫と沙利姫たち。

その直後、突然ウルミが悲鳴を上げて倒れると、その胸には矢が突き刺さっていた。

矢には文が結んであり、ドクター・ウスクラ(吉井莞象)がそれを読むと、「沙利を連れて行く ジャガー」と書かれてあった。

陳爺が群衆の中を見渡し、沙利姫の姿が見えない事に気づく、

沙利姫は、鉄と手下たちに連れ出され、馬で去って行く。

それを陳爺と追って来た杜夫は馬はないかと見渡すが、どこにもいない。

ジャガーはどこだ?奴の巣を教えてくれ!と杜夫が陳爺に聞くと、一度聞いたことがある。マジベの港に十三番街と言う一度吸い込まれたら二度と帰れない悪の街があるらしいと言うので、良し、そこに行こう!と杜夫は言う。

「黒猫」と言う店の中では、半裸の女が男客を前に踊っていた。

奥の部屋では、鉄に連れて来られた沙利姫がおり、黒いフードの男から、どうだ、姫?わしはあなたをどうしようと言うのではない。あの「王位の指輪」が欲しいのだ。出しなさい!誰が持っているのだ?あの爺か?あの日本人か!と聞かれ、知りませんと答えていた。

黒いフードの男は、仕方ない…、ではあなたの身体に聞きましょうと言い、鉄が鞭で沙利姫を打ち始める。

下のフロアでは、カウンターで飲んでいた杜夫は、二階から船のキャプテンが降りて来たのを観て、自分もこっそり二階に上がってみる。

すると、女の悲鳴が聞こえ、奥の部屋から鉄が出て来たので、ドアを押し開け、中にいた2人の見張りを倒す。

その際、見張りが撃った銃声が響いたので、下にいた船員たちが上がって来る。

杜夫は沙利の縛めを解こうとするが鍵が見つからない。

沙利姫は、髪の中に隠していた指輪を取り出すと、これを持って逃げて!と言うが、ドアから、近づいて来る船員たちに発砲していた杜夫は、ドアの側に落ちていた鍵を見つけ、姫に投げ与えて鍵を解かせる。

ドアの鍵をかけた杜夫は、反対側の窓を破壊し、鉄たちが部屋に乱入して来た時には外に逃げ出していた。

龍や鉄が、霧の街に飛び出すが、外で合流した陳爺に沙利姫を託して先に逃がした杜夫は、1人、追手に銃を撃ち続けるのだった。

隻眼の龍は、街を逃げる沙利姫と陳爺に発砲しながら追跡する。

残って応戦していた杜夫は、弾切れになったので、塀沿いに逃げようとして、滑り落ち、地下室の床に叩き付けられる。

しばし、気絶していた杜夫が目覚めると、その地下室の一面にはドクロのマークがあった。

その時、杜夫!このメダルの鍵で開く門が、少林寺拳法の達人のいる所だよ…と言う陳爺の言葉が蘇る。

試しに杜夫は、持っていた髑髏のマークのペンダントを取り出すと、壁の髑髏の口に差し込んでみる。

すると、その壁は扉のように開く。

恐る恐る薄暗い中に入ってみると、そこには中国人がおり、どうぞこちらへと誘うので、ここはどこだ?と聞くと、旭杜夫様ですね?と言うではないか。

王大人がお待ちかねですと中国人は言い、部屋に通すと、そこには黒めがねをかけ、中国服に帽子をかぶった男が座っており、わしが王だ。君は旭杜夫だね?と言うので、どうして私の名を知っているのですか?と杜夫は不思議がる。

すると、立上がった王(浜口喜博)は、黒めがねと帽子を取ってみせ、分かるかね?と言うではないか。

その顔を凝視した杜夫は、あ!兄さん!と驚く。

香港で別れた兄だったのだ。

俺も会いたかったんだと言う兄に、兄さんは一体、どこ言ってたんですか?と杜夫が聞くと、お前と別れてから、俺はアジアの小さな国を飛び回り、人々を助けていたのだ。ここはその地下運動の本部なんだと言う。

やっぱりそうだったのか…と納得した杜夫だったが、僕は兄さんを捜している間に、イランゴールの事件に巻き込まれてしまって…と打ち明けると、うんと頷いた兄は、知ってるよ、あの陳爺はイランゴールの再興を計る志士なんだ。それに、少林寺拳法の仲間だと言う。

こうしてお前と会っていると、良く子供の頃、桑の実を取りっこしていた時の事を思い出すよと言い、僕も覚えているよ、兄さん!と杜夫が答えると、杜夫!しっかりやろう!と兄は励まして来る。

その頃、捕まっていた陳爺は、龍や鉄に拷問を受け、「王位の指輪」の在処を聞かれていた。

無理矢理、扉の覗き穴の方を向かされた陳爺は、そこに現れた黒いフードをかぶった白髪の老人ジャガーから、頑張ってもダメだ、お前が苦しむだけだぞと忠告される。

それでも、陳爺が首を振ると、良いものを見せてやる!頑張った褒美にな!ここまで連れて来いとジャガーは手下たちに命じる。

龍と鉄に抱えられ、隣の部屋を扉の覗き窓から無理矢理覗かされた陳爺は、そこに捕まっていた沙利姫が気絶しており、そこに黒いフードのジャガーが、良いか?仕度をしろ!と手下に命じ、姫に迫る姿を観て怯える。

その頃、王大人こと杜夫の兄は、ジャガーは自分の目的のためには手段を選ばない男だ…。杜夫、なかなか手強い相手だぞと杜夫に話し、小さな銅鑼を鳴らす。

おい、これが分かるか?この薬はな、こうなるのだ!と言ったジャガーは、手のひらの上に乗せていたピンポン球くらいの球を、部屋の中にいた手下の顔に近づける。

親分!と怯えた手下の顔に、ジャガーの手の上の球体から、何か粉のようなものが降り掛かる。

すると、その手下は急に笑い始める。

「笑死薬」、笑って笑って笑い死ぬのだ…とジャガーは言い、お前がどうしてもしゃべらなければ、これを沙利に打つぞと脅かす。

どうだ!指輪は誰が持っているのだ!と覗き窓の背後で苦悩する陳爺に問いつめるジャガー。

三つ数えるうちに返事をしろ!いと〜つ!ふた〜つ!とジャガーが数え始め、陳爺が答えないので、三つ!と言うなり、ジャガーは粉を姫の顔に振りかける。

すると、椅子に縛られ気絶していた沙利姫が笑い出したので、覗き窓から観ていた陳爺はああ!と絶望の声を挙げる。

杜夫と茶を飲んでいた兄の部屋に、王大人に話がある!と言うジャガーの声が聞こえて来る。

兄が声の方を振り返ると、棚の上に置かれた鏡の中にジャガーの顔が浮き上がり、良いか?良く聞けと言うと、沙利姫の笑い声が聞こえて来る。

手を引かなければ、皆、同じ運命になるのだとジャガーは言う。

杜夫、沙利は「笑死薬」をかけられたぞ!と兄は言い出す。

驚く杜夫。

その時、ブラック・クイーン号の男が木箱を届けてきましたと、中国服の召使いの男が知らせに来る。

大きな木箱の蓋を開けてみると、中に入っていたのは陳爺の死体だった。

これは一体どうしたと言うんだ?と杜夫が驚くと、兄は、陳爺の上に置かれていた紙を取り上げる。

「王位の指輪」を持って、ただ1人来たれ ただちに沙利姫を渡すであろう。 青龍の洞窟の豹(ジャガー)と書かれてあった。

いよいよジャガーの挑戦だ!と兄が言うと、これから行ってきますと杜夫は答える。

うん、良かろう!と兄も頷き、木箱の蓋を閉めさせる。

そこに駆け込んで来たのはウルミで、ウスクラがジャガーの一味が襲われましたと言う。

そうか…、ウルミ、陳を祈ってやってくれと頼んだ兄は、おい、馬を二頭用意しろと召使いに命じる。

馬に乗った兄は、ウスクラの家に行くと言い、もう一頭の馬で青龍の洞窟へ向かう杜夫と別れる。

ウスクラの家に到着した兄は、戸を叩いて呼びかけるが返答はなく、横の窓から中に入り込んでみるが、誰もいなかった。

散らかった室内を物色していた兄は、「笑死病 解毒剤」と書かれた小箱を見つける。

中には、カプセル状のものがいくつか入っていたが、中味は空だった。

馬に乗った龍や鉄が待ち構えていた山奥の「青龍の洞窟」に近づいて来た杜は、案内役ならお先に頼むぜ!と龍に話しかける。

一方、ウスクラの家の中にいた兄の方は、物陰に隠れていたジャガーの手下にいきなり急襲され、殴られて縛り上げられてしまう。

山奥にある階段を登って行く杜夫たちは「青龍洞」と書かれた場所にやって来る。

縛られた兄が連れて来られた地下室には、同じく縛られていたウスクラがおり、あなたまで縛られるとは!どうしたんです!と驚く。

ドクターの居場所が知りたかったんだと答えた兄は、えい!と言うかけ声と共に、縛られていた綱を引きちぎってしまう。

そして、ウスクラの捕縛も切ってやると、王大人、ありがとうございます!とウスクラは感謝する。

わしの所へ来てくれ!死人を蘇らせてくれ。沙利が笑死薬をかけられたのだ、薬もくれと王大人こと杜夫の兄はウスクラに頼む。

しかし、ジャガーがみんな持って行ってしまいましたとウスクラは言う。

すぐに調合してくれないか?と兄は頼むが、間に合いませんとウスクラは言う。

そうか!すると、ジャガーの奴を取り返すほかないな!と兄は言い、ウスクラも頷く。

ウスクラの手を引き、行こうと誘う兄に、抜け道があると言いだしたウスクラは、床に地図を書き始める。

その頃、龍と鉄は、大きな滝の裏側に隠れた洞窟の中に杜夫を案内していた。

杜夫が、岩の自動開閉扉の奥へ進むと、そこは部屋になっており、机の背後にいたジャガーが、待っていたぞ杜夫!と呼びかけて来る。

「王位の指輪」を持って来たろうな?と聞かれた杜夫は、もちろんだ!と答え、では、受け取ろうと手を差し出したジャガーに、待て、その前に沙利姫を連れて来てくれと頼む。

良し!と言ってジャガーが奥へ行きかけると、解毒剤を忘れないでくれと杜夫は呼びかける。

解毒剤?その代償は何だ?とジャガーが聞き、わしの手紙に解毒剤まで書いてないぞ!と凄んでみせる。

待て!とつかみ掛かろうとした杜夫だったが、ジャガーは妖術で背後に飛び下がる。

机をよじ上って近づこうとした杜夫だったが、またもやジャガーの妖術で机の上が傾き、塀のようになったので、滑り落ちまいとしがみついた杜夫だったが、その頭をジャガーは押しながら、馬鹿者!と嘲る。

ジャガーに殴られた杜夫は、机の前の床が落とし穴になっていたため、下に落ちてしまう。

その頃、黒服面に黒マントの兄は、白馬に乗って、敵の追手をかわしていた。

穴に落ちた杜夫は、上のジャガーから、その中で静かに考えろと笑われる。

その時、杜夫は、近くから女の笑い声を聞き、沙利だ!と気づく。

兄の方は、山の中を走り続けていた。

「王位の指輪」を出せ!と上から命じるジャガー。

卑怯者!こうなったら、渡すもんか!と答える杜夫。

よ〜し!後悔するな!と言いながら、ジャガーが持ち上がっていた机の上を叩いてみせると、地下室の岩が迫って来たので杜夫は驚く。

馬を降り、物陰に隠れていた兄は、馬で追って来た数人のジャガーの手下たちに、小さな礫を弾き飛ばし、全員崖から落とす。

どうだ!早く指輪を出さないか!と呼びかけるジャガーの声を他所に、杜夫は必死に、迫り来る岩に押しつぶされそうになるのを我慢していた。

山の岩場に近づいた兄は、岩の割れ間の中に入って行く。

ジャガー!俺は死んでも良い。沙利姫は助けてやってくれ!と叫んでいた杜夫だったが、とうとう、ジャガー!指輪を渡す…、沙利の病気だけは直してやってくれ!頼む!と言いだす。

それを聞いて笑い出したジャガーは机を又操作すると、落とし穴がふさがり、中の岩は離れて行く。

そして、杜夫の側面の岩が開いたかと思うと、そこにジャガーが立っており、こっちへ出て来いと杜夫に呼びかける。

さあ、指輪!と言い、手を差し出したジャガーに、ペンダントにして首から下げていた指輪を渡そうとする杜夫。

それを観たジャガーは、これで、マルスリ山の宝は、全部俺のものになるのだ!と大笑いして喜ぶジャガー。

偽物だったら命はもらうぞ!と念を押しながら近づいて来たジャガーの手に指輪を渡す振りをして、相手の手を取り、柔道の技で投げ飛ばした杜夫だったが、次の瞬間、ジャガーは妖術で消え去る。

卑怯者!と言いながら、杜夫の背後に出現したジャガーだったが、又杜夫の背負い投げに投げられる。

又姿を消したジャガーは、後にジャンプして行き笑い出す。

来い、ジャガーと呼びかけた杜夫だったが、ジャガーは、龍!鉄!来いと叫び、マントを翻して姿を消す。

すると、岩の一部がどんでん返しになっており、そこから龍と鉄が出て来て、銃を撃って来る。

杜夫は洞窟内を逃げ出し、2人はそれを追って来るが、その時、鉄に飛びかかったのは、隠れていた杜夫だった。

振り向いてそれに気づいた龍が撃って来るが、撃たれたのは鉄の方で、杜夫は倒れた鉄のショットガンを取り上げるとそれで応戦して来る。

さしもの龍も、杜夫の撃った銃弾で蜂の巣になって倒れる。

ジャガー!出て来い!と杜夫が呼びかけると、おう!なかなかやるな!と言いながら、ジャガーが姿を現す。

だが勝負はこれからだ!バラモンの秘方を見せてやるわ!と言ったかと思うと、エイ!と言う気合いのもと、ジャガーは分身の術で複数になり、どれが俺か分かるまい!と笑う。

杜夫が発砲して偽のジャガーを消滅させて行くが、残った本物は愉快そうに笑い出す。

畜生!と悔しがった杜夫は、残っていたジャガーに飛びかかって行くが、又消えられる。

杜夫は、お〜い、こっちだ!と別の場所に姿を現すジャガーにつかみ掛かって行くが、すぐに相手は消えてしまい、飛びかかった勢いで、背後の岩に頭をぶつけてしまう始末。

そんな杜夫の背後に出現したジャガーは、落ちていたショットガンの台尻で杜夫の頭を殴って来るが、森尾は果敢にも反撃して行く。

しかし、またもやジャガーは姿を消し、力尽きた杜夫はその場で気絶する。

すると、姿を現したジャガーは、馬鹿者め!と嘲りながら、杜夫の上着の下を探り、「王位の指輪」を奪い去る。

高い場所に飛び退ったジャガーは、とうとう「王位の指輪」は俺のものだ!と笑う。

その時、背後の石扉が崩壊し、後から杜夫の兄が入って来る。

黒マスクを剥ぎ、素顔をさらした兄が、ジャガー!と呼びかけると、あ!王大人!とジャガーはひるむ。

そんなジャガーにつかみ掛かった兄だったが、逃げ延びたジャガーは又姿を消す。

その時兄は、杜夫が倒れているのに気づき助け起こす。

気がついた杜夫は、あ!兄さん!と喜び、取り返してやったぞとその兄から指輪を受け取ると、それを胸ポケットにしまい、あのバラモンを封じてくれと頼む。

良し!と頷いた兄は、少林寺拳法を見せてやるぞ!と言いながら立上がると、ジャガー!出て来い!と周囲を見渡し、やあ!と気合いを入れると、踞っていたジャガーの姿が出現する。

沙利姫をどこにやった!と兄が詰めよると、「王位の指輪」を出せとジャガーは要求する。

そして、やあ!とジャガーが叫ぶと、兄の身体が吹き飛ぶ。

しかし、空中回転してすっくと立った兄は、やあ!と気合いを発し、礫をジャガーの胸に当てる。

さしものジャガーも倒れるが、ジャガーは念力を始める。

貴様の妖術を封じてやる!とマントで身を隠しながら小石を拾い上げた兄は、又礫を放ち、ジャガーの右腕に当てる。

まだ俺に抵抗するのか!と呻きながらジャンプして飛び退ったジャガーは、あの声が聞こえないのか!指輪を出せと言う。

どこからともなく沙利姫の笑い声が聞こえて来ていたのだ。

時が経てば、沙利姫の命はなくなるばかりだぞ…とジャガーは脅して来る。

その時、ジャガーの背後からこっそり近づいていたドクター・ウスクラが、持参して来た「笑死薬」をジャガーの顔に振りかける。

ジャガーは笑い出す。

その時、ジャガーの様子を見守っていた兄が、解毒剤を持ってるぞ!と杜夫に教える。

ジャガーが、胸から取り出したのだった。

その薬を難なく奪い取った杜夫は、良し!これで沙利が助かる!と呟く。

ウスクラは、命を蘇らせた陳爺も連れて来ていた。

イランゴールの碑を出せば、これを注射してやる。どうだ!と杜夫はジャガーに迫る。

すると、笑いながら立上がったジャガーは、ふらつきながら、洞窟内を歩き出す。

その間、兄はウスクラに解毒剤を渡し、沙利を助けて来いと命じる。

ジャガーの様子を観ていた珍爺は、右の目が怪しいと杜夫に告げる。

ジャガーには右の目がないのだと言う。

杜夫は、ジャガーの身体を仰向けに横たえ、その右目を抜き出す。

義眼だったのだ。

その中には、小さく折り畳んだ地図が入っていた。

ジャガーは立上がると、とある岩壁に近づき、背中で押すと、その岩がどんでん返しになっており、ジャガーは奥の空間に入って行く。

その時、助かった沙利を連れてウスクラが戻って来る。

ジャガーが持っていたイランゴールの碑ですと言いながら、杜夫は今義眼の中から見つけた地図と指輪を姫に渡す。

右目を押さえ、笑いながら、ジャガーは奥へと進んで行く。

杜夫!と兄が呼び、兄さんと近づいた杜夫は、ジャガーの最期ですねと言う陳爺の声を聞く。

笑うジャガーは、洞窟から逃れようと滝に近づいていた。

そしてそのまま、笑いながらジャガーは、滝壺の中に落下して行く。

二枚に別れていたマススリ山の地図を一枚に合わせてみると、財宝の在処がようやく判明する。

杜夫は、イランゴール国の王朝で王妃に襲名した沙利姫から、褒美の首飾りを首にかけてもらっていた。

その場に出席した兄が、杜夫に、祝福の握手を求めて来る。

沙利王妃の前に並ぶ兄と杜夫


 

 

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