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菊次郎の夏

北野監督の子供連れロードムービー

柄の悪い大人が薄幸な子供と共に母親探しの旅に出る…と言うのは、「男はつらいよ 寅次郎物語」(1987)など、過去にも似たような例があるし、子供の目線から見たとぼけた大人たちの描写などは、ジャック・タチ監督「ぼくの伯父さん」(1958)などを思い起こす。

最初は子供に無関心で、子供連れを面倒臭かっていた菊次郎が、旅を続けるうちに子供と自分の境遇との共通性、母との縁の薄さに気付き、徐々に子供に優しくなっている所が見所である。

前半の競輪場での子供と菊次郎の掛け合いなどは面白いが、それ以降のコントじみたアイデアはさほど感心できるものでもない。

途中で挟まれる、漫才ネタのような掛け合いや、タップやジャグリング、ダンスなどと言った若い才能の紹介もわざとらしさの方が気になるし、後半の軍団仲間内での悪ふざけネタは少々食傷気味で凡庸と言わざるを得ない。

バイオレンス系の映画が苦手な自分には馴染み易かったが、何となく「無難な路線で来たな」と言う印象がないではない。

淡々と観れて後味も悪くはないが、新鮮味には乏しい気がする。

ただ、菊次郎を演じる武さんを始め登場している役者陣が全員若く、吉行和子さんなどはまだ「おばあちゃん」と言うには若すぎる印象である。

映画初心者にも取っ付き易いタイプの「北野ワールド」かも知れない。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1999年、バンダイビュジュアル+TOKYO FM+日本ヘラルド映画+オフィス北野、北野武脚本+監督作品。

目の中にピンク色の服と帽子をかぶった天使が描かれた絵を背景にスタッフ、キャストロール

タイトル

天使の羽が付いたリュックを背負った少年が走っている。(音楽と小さな鈴の音のような音が重なる)

絵日記

おばあちゃんの友達(菊次郎と女房が写った写真風動画に文字)

商店街を歩いていた少年正男(関口雄介)は、一緒に歩いていた友達のユウジ(荒井賢太)から、お父さんの所へ行くの、海が近いからと話しかけられ、良いな~とうらやましがる。

その直後、ゲーセンの前で不良を発見したので2人は、ユウジがこっちから行こうと言う別方向へ駆けて行く。

助六と揚巻の顔抜き人形に顔を入れた後、2人は「二天門」の大提灯ある浅草にやって来る。

川沿いの道のベンチで高校生がタバコを吸っていたので、煙草なんか吸っちゃダメでしょう。ちゃんと学校行ってるの?そんなことしてたら、この人みたいになっちゃうよ…と、菊次郎の女房(岸本加世子)が連れていた菊次郎(北野武)をこづくと、菊次郎はピースサインをして来る。

そこに、正夫がやって来たので、正男君!今日早いね、もう学校終わったの?と女房は声をかけると、明日から休みだから…と正男は答える。

おばあちゃん、元気?と女房が聞くと、うんと正男は答え去って行く。

目の中にピンク色の服と帽子をかぶった天使が描かれた絵を背景にスタッフ、キャストロール

タイトル

天使の羽が付いたリュックを背負った少年が走っている。(音楽と小さな鈴の音のような音が重なる)

絵日記

おばあちゃんの友達(菊次郎と女房が写った写真風動画に文字)

商店街を歩いていた少年正男(関口雄介)は、一緒に歩いていた友達のユウジ(荒井賢太)から、お父さんの所へ行くの、海が近いからと話しかけられ、良いな~とうらやましがる。

その直後、ゲーセンの前で不良を発見したので2人は、ユウジがこっちから行こうと言う別方向へ駆けて行く。 助六と揚巻の顔抜き人形に顔を入れた後、2人は「二天門」の大提灯ある浅草にやって来る。

川沿いの道のベンチで高校生がタバコを吸っていたので、煙草なんか吸っちゃダメでしょう。ちゃんと学校行ってるの?そんなことしてたら、この人みたいになっちゃうよ…と、菊次郎の女房(岸本加世子)が連れていた菊次郎(北野武)をこづくと、菊次郎はピースサインをして来る。

そこに、正夫がやって来たので、正男君!今日早いね、もう学校終わったの?と女房は声をかけると、明日から休みだから…と正男は答える。

おばあちゃん、元気?と女房が聞くと、うんと正男は答え去って行く。

菊次郎に言うが、何か陰気くせえガキだなぁ~、あれと菊次郎が悪態をつくので、前に私がすんでいる所の近所にいた子でさ、おばあちゃんとすんでいるんだよと女房は教える。

親どうしたんだ?と菊次郎が聞くと、父親はいないみたいよと女房が言うので、母親は?と聞くと、どっかに働きに出てるんじゃない?と女房は言う。 何だ、男捕まえてどっか行ったんだよと菊次郎は嘲るように言う。

すると女房は、あんたんちの母親じゃないんだからと言い返して来たので、てめえん所も3回も再婚してるじゃねえか!馬鹿野郎!と菊次郎は女房に突っ込む。

余計なお世話よと女房が怒ると、俺だって余計なお世話だ、この野郎!と菊次郎は睨みつける。

自宅に帰って来て、テーブルに用意してあった食事をし、サッカーのユニフォームに着替え、ボールを持って出かける正夫。

しかし、元堀町の元堀グランドにやって来た正夫は、やって来たコーチから、何やってるんだよ、サッカー教室、今日から休みじゃないか…、しようがないな~と言われる。

その後、着替え終わったコーチは、まだグランドにいた正男に、正男、夏休みなんだからさ、海かどっか行って来いよ、楽しいぞ!と話しかけ、自転車で帰って行く。

夜、近所の路地裏で花火をする子供たち

家で、おばあちゃんが出してくれたスイカを前にぼーっとしている正夫に、そんなこと言ったって、お父さんは事故で死んでいないし…とおばあちゃん(吉行和子)が皿洗いをしながら言うので、お母さんは?と正男が聞くと、お母さんはお前のために働いているんだからちゃんと勉強しなきゃ、もっと大きくなったら1人でどこへでも行けるんだからとおばあちゃんは言う。

翌朝、花火の燃えカスが道に落ちている。

朝起きた正男は、布団の上に座ってぼーっとしていた。

おばあちゃんは、テーブルにおにぎりとサラダの皿を置き、正男、早く朝ご飯食べちゃいな、おばあちゃん仕事に行って来るから、危ない行っちゃダメだよと声をかける

食後、ユウジ君の家に向かい、遊ぼ!と外から声を掛けるが、返事がない。 おばあちゃんは人形焼きの店で働いていた。

正男は続いて団地の友達の所へ来ると、家族揃って車で出かける所だった。

正夫がユウジの家に行ってみると、ユウジと妹は、両親と車で出かける所だった。

仕方がないので、家に戻り、1人で絵日記を書いていると、杉山さん、宅配便です!と宅配業者がやって来る。

正男が玄関口に行くと、ハンコある?と言われたので、受け取り用のハンコを探していた正夫は、両親が写っている写真を見つける。

ハンコなければ、名前書いてくれりゃ良いよと言われたので、うんと答える正男。

ここに書いてくれる?それで良いよ、じゃあどうも…と言って業者は帰って行く。 宅配の送り先を見ると、「愛知県豊橋市前島町3-106」と書いてあった。 正男は、結婚写真と一緒に引き出しに入っていた自分のお宮参りのときの写真を見る。

そこには、赤ん坊時代の自分を抱いたおばあちゃんと母親が一緒に写っていた。

正男は、住所を写したメモとドリルなどをリュックに積め、外に飛び出して行く。

橋を渡って仁王像の所へ来た正男は、不良に捕まり、金を取られそうになる。 そこに、菊次郎と女房がやって来て、何してんのよ!今お金取ったでしょう?何でそう云うことするの!返しなさい!と女房は不良を叱る。

不良が差し出した金を受け取った菊次郎が、自分のポケットに入れようとするので、女房は取り返し、正男に渡す。

すると菊次郎は、もっと出せ!殺すぞと不良に嚇し付けたので、あんたがかつあげやってどうするのよと女房は呆れる。

その後、菊次郎は喫茶店でアイスコーヒーを飲んでいたが、若いバーテンコンビがタップの練習をしていたので、さっきからカタカタうるさいよ!と注意する。

タップですよと聞くと、何だよそれ?と聞くので、知らないんですか?とバーテンたちは呆れる。

お母さんに会いに行くったって豊橋なんて遠いし、1人で行けるはずないじゃない。お金だって持ってないし、おばあちゃん、知ってるの?と、パフェを前にした正男から事情を聞く女房。

正男が首を振るので、知らないの?おばあちゃん心配するよ!今度誰かに連れて行ってもらいなと言い聞かせる。

結局、菊次郎に正男を連れて行かせることにした女房は、ちゃんと連れてってよ、変な所へ行かないでよ!と言いつける。

すると菊次郎がもう1万円くれと言うので、5万あれば十分でしょう!早く行きなと女房は叱りつけ、正男にはどうしたの?おばあちゃんにはちゃんと話しておくから、早く行きな、はぐれちゃうよと勧める。

しかし、女房がいなくなると、正夫がいるにも拘らず、浅草東宝前のストリップ小屋の看板を見る菊次郎。

一方女房は、正夫のおばあちゃんに、さっき花屋敷の所で正夫に会ったんだけど夏休みどこも行かないって言うので、うちの人が海に2~3日連れて行っちゃったんだけど良いよね?うちの人、子供好きだからと教える。 おばあちゃんは売り物を女房に渡す。

しかし、菊次郎は、正夫を連れ競輪場に来ていた。

外れ券を破っていた菊次郎の隣で、又当てちゃったよなどと言う若者がいたので、おい、向こうへ行けよ、貧乏神!てめえがいるから当たらないんだよ!などと菊次郎はいちゃもんを付ける。

その後も菊次郎は、前にいた男に、おいハゲ、まぶいんだよ!レースが見えねんだよ!向こう行けよ、この野郎!と文句を言っていた。

レース場内では、転倒して気絶した選手を係員が運び出している所だった。 すっかり持っていた金を使い果たし、床に新聞を敷いて寝転んでいた菊次郎だったが、正夫が持っていた5000円出せと脅すと、1~10までの数字でお前の好きな数字2つ言ってみろと命じる。

すると正夫が適当に6と3と答えたので、6-3で買うと見事に適中してしまう。

金が入ったので、ホテルに泊まることにした正男は、ドリルに挟んで持って来た母親の写真をじっと見つめる

菊次郎はソファにしがみつくように眠り、正男だけがベッドで眠り、6-3で当たって大喜びした菊次郎が焼き鳥を両手に持って駆け寄って来る姿や、その後、菊次郎に連れて行かれたきゃバレーのホステスに色々話しかけられる夢を見る。

競輪の鐘を叩くイメージと話しかけて来るホステスのクローズアップ。

翌朝、モーニングコールで起こされた菊次郎は、不機嫌そうにまだ寝ていた正夫を起こすと、今日、お母さんに会いに行かなきゃな~…と言う。

正男は嬉しそうに、うん!と答える。

しかし、その日も競輪場にやって来た菊次郎は、競輪のユニフォームとヘルメットを無理矢理着せた正男に自分がこれを買ってやったんだよと強引に恩を売る。 そして1万円を正男に渡し、昨日のように数字を言わせると、4と9だと言う。

ところが4と9の2人の選手は落車してしまったので、落車する奴じゃなくゴールに早く入る奴を当てるのなどと菊次郎は正男に注意するが、落車した2人を言い当てたので天才かもしれないななどと持ち上げる。

次に正男が思いついた数字は3と5だった。

結果は3-9だったので、惜しいな、3は当たっている、大分近づいて来たな、調子出て来た?次は何だ?と菊次郎は正男をおだてる。 正男は5と3と答える。

結果は330円だったので、次が勝負だとおだてて聞いた数字は7と9だった。

結果は9-7と逆だったので、菊次郎は38000円、この野郎当たってたらこんなもんじゃなくアルマーニ買ってやったのに、何やってるんだ!と正男を叱る 続いて正男が言ったのは4と5だったので、4が最初なんだな?5-4はないのか?と菊次郎は念を押すが、正男はない!ときっぱり答えるので、逆に来たらただじゃおかねえぞ、この野郎!と菊次郎は脅し、逆に買っとこうかな…などと裏を読む。

結果は3-7と全く関係ない数字だった。 こんなもん買ってやって1万円もやったのに!金なくなって来ちゃったよ!何だ次は?と菊次郎は怒りながら聞くと、1と2と正男は答える。 本当か?と念を押すと、3と4と正男は答えるので、本当か?とさらに念を押すと、5と6などと言うので、123456繋がってるじゃないか、売っちゃうぞ、てめえなんか!と菊次郎は癇癪を起こす。 結果は3-9だったので、何が天才少年だ、この野郎!全然当たらないじゃないか、馬鹿野郎!服脱げ!1万円だってやったじゃないか!てめえなんかどっかに行っちまえ!とヘルメットを殴りつけるが、おじさんと、床に座り込んでいた正男は呼びかけ、落ちていた当たり券を菊次郎に渡す。 どうした、これ?と聞くと、ここに落ちてたと正男が言うので、何かやる少年だなと呆れた菊次郎は金に換えに行く。 戻って来た菊次郎は、これ、昨日だろう?と車券を投げ捨て、1万円返せ!と言うと、正男から金を奪い取って行く。

「こわいおじさん」(写真フレームの中で怖いおじさん(麿赤兒)が笑う)

どと文句を言うが、そんな良いの使ってたら、この値段では出せませんよなどと主人から言い返させる。

外に出た菊次郎は、正男がいないので、側で掃き掃除をしていた男に、ここにいたガキを知らないか?と聞く。 何か、中年の男の人が連れて行きましたよと言うので、どんな奴?と聞くと、頭がハゲてて、普通の背広着てましたと言う。

どっち行った?と聞くと、公園の方だと言うので、菊次郎は公園に向かう。

その間、公園内の暗闇で、知らないおじさん(麿赤兒)に、パンツを脱いだらお母さんの所に連れて行ってやるから、早くしないと、おじさん忙しいんだから、あんまり構ってられないんだから…などと言われパンツを脱がされそうになっていた正男は必死にパンツを押さえて抵抗していた。

その時、おい!と声をかけて来た菊次郎がユニフォームを着せた正夫を明るい所まで連れて来ると、お前、知らない人に付いてっちゃダメだよと注意する。

変質者は、菊次郎に殴られたのか倒れていた。 その男の側に戻って来た菊次郎は、自らズボンを下げてパンツを露出した格好で、パンツ脱がせてどうするんだ!とおじさんに仁王立ちになって迫る。

しゃぶるんです、良いじゃないですか!と言いながら、おじさんは菊次郎のパンツまで脱がせようとするので、何するんだ、この野郎!と怒って殴りつけた菊次郎は、その変質者の財布を奪って正夫と去って行く。

タクシーの中で正夫は泣いていた。 坊主、もう泣くの止めな、おじさん悪かったから。ちゃんとお母さんの所に連れて行くからよと後部座席の隣に乗っていた菊次郎は優しく謝る。

タクシーの運転手がトイレに行った隙に、何だこんなに行ってるのか、メーター、金がもったいない…、俺、運転しちゃうかと言い出した菊次郎が運転席に乗り込み車を走らせる。

あんまり下手な運転なので、すぐに車から煙が出て来る。

翌朝、タクシーを捨て歩き出した菊次郎は、途中缶ジュースを与え道ばたで休憩すると、おまえな、おじさんのこと、ちゃんと母さんに紹介しろよ。親切なおじさんが忙しいのに、お金使って連れて来てくれたとちゃんと言えよと正夫に言い聞かす。

「へんなおじさん」(写真フレームの中で、正男と一緒にプールに入ったおじさんが浮き輪を付けて頭を水中に漬けて逆立ちしている)

ホテルにやって来た菊次郎は、ガキと一緒に泊めろとフロント係(右近良之)に言うと、ご予約は?と聞かれたので、してねえよ、馬鹿野郎!と菊次郎は怒る。

ご予約がないと…とフロント係が困惑するので、何気取ってやがるんだ!金払えば良いじゃないか、泊めろ!泊めろ!この野郎!と脅かす。

正夫はロビーの一画の売店でアイスどら焼きを食べる。

すると、菊次郎が、派手なアロハとサングラスをかけ、どうだ、坊主、似合うか?と聞いて来たので、うんと正男が答えると、嬉しそうに笑い出し、そうか、お前にも買ってやるからなと得意がる。

フロント係は、そんな菊次郎の様子を怪しむように監視していた。

いつの間にか、正男が着ていたユニフォームとヘルメットは、売店の衣料棚に商品のように吊るされていた。

正男もアロハとサングラスをかけ、菊次郎と共にプール脇を歩く。 正夫はサングラスを取ると、リュックからドリルを取り出すと勉強を始める。

その時正男は、アロハを脱いで裸になった菊次郎の背中に刺青があるのに気付く。 先にプールに入った正男が、おじさん、泳がないの?と声を掛けると、うんと菊次郎が答えたので、泳げないの?と聞くと、泳げるよ、バカやろう!何言ってるんだ!と菊次郎は怒り、浮き袋をしてプールサイドに立つ。

そして、坊主!良く見てろ、この野郎!と正男に呼びかけると、プールに飛び込んで、めちゃめちゃなクロールをやってみせるが、最後は、「犬神家の一族」のような足だけが水面に突き出た姿になって止まる。

溺れた菊次郎を救いに救急隊員がやって来て、大丈夫ですか?とプールサイドに引き上げた菊次郎に話しかけるが、大丈夫だよと虚勢を張った菊次郎は自分で立ち上がり1人で戻って行く。

救急隊員たちは無事だと思い、行こうと声を掛けるが、その瞬間、水音が響いたので何事かと目をやると、プール際に菊次郎が倒れていた。

救急車を呼んだフロント係は菊次郎の素性を怪しみ、プールサイドのチェアに座っていた正夫に、あの人、お父さんじゃないのか?と聞いて来る。

うんと正男が答えると、何で一緒にいるの?とフロント係が聞くので、お母さんの所に連れてってもらうのと答える。

その後、ドリルをやっていた正男の側に着た菊次郎は、坊主、又勉強してるのか?と声を掛けると、これ分かんないと正男は言う。

分からない?と言いながらドリルを覗き込んだ菊次郎だったが、うんと言うだけで何も教えず、身体もがたがたになっちゃったななどと言いながら側に座り込むと、坊主、ちょっと叩いてくれ!と肩を指す。

正男が肩を叩き出すと、そうそうと言うが、すぐに頭じゃないよ!と菊次郎は注意する。

正夫は、菊次郎の刺青のイメージから怖い夢を見ていた。 正夫は縛られており、側で、パンツを脱がせようとしたおじさんが奇妙な踊りを踊っていた。

母親は笠をかぶってその側に立っていたが、おじさんが正男に迫って来ても、自分の身体に触ろうとしてもその場を動こうとはしなかった。

ベッドで目覚めた正夫は、隣で寝ていた裸の菊次郎の刺青を観る。

ホテルのロビーに置いてあったビーナス像の股間部分には、陰毛のように黒いビニールテープが貼られているのをフロント係は気付く。

フロント係は、展示品としておいてあった船の中に座り込んでいた菊次郎と正男を発見し、ここには入ってはいけませんよと注意する。

その後、フロント係は、池の所で釣りをしていたサングラスにアロハ姿の2人を見て、釣りをしては行けませんよ、釣ったらダメなんですと注意する。

チェックアウトしようとした菊次郎は、請求書を見て、高えよ、ぼったな、この野郎!とフロント係に文句を言う。

シーズンですし、水着やサングラスもお買い上げになってますし普通ですよとフロント係が反論すると、高えよ!馬鹿野郎!と文句を言った菊次郎は、タクシーが待ってますんでとフロント係が急かすと、返せ!金なんかないじゃないか!お前、乗せてけよ!と切れる。

私はまずいですよとフロント係が断ると、何がまずいだ、金取りやがって!乗せてけよ、外で待っているからな!と言い捨てた菊次郎は、正男、行くぞ!何してるんだ!とロビーのソファに腰掛けていた子供の頭を叩くが、振り向くと見知らぬ子供だった。

側にいた両親が近づいて来たので慌ててその場から離れた菊次郎は、反対側にいた正男の手を引いて、待ってるからな、来いよ!とフロント係を睨みながら出て行く。

「だめだった」(写真フレームの中に、バスの停留所で座っている正男と菊次郎)

車で菊次郎たちを近くの「たぬき茶屋」の駐車場まで送ったフロント係は、降りてくださいよ、もう着きましたから。ここなら乗れますよと、いつまでも乗っている菊次郎に話しかけ降ろす。

何だ、変な所連れてきやがって!と降りた菊次郎はフロント係に文句を言う。

車が停まってますから、聞いて乗せて行ってもらうと良いですよと教えたフロント係は、じゃあな、坊や、又遊びにおいで、これで何か買いなと言いながら、正夫に小遣いを渡すので、正男はおじさん、ありがとうと礼を言う。

菊次郎は、フロント係の財布を指して、てめえ、それ、俺の金じゃねえか、馬鹿野郎!人でなし!と文句を言うが、フロント係は返事もせず車に乗り込むと帰って行く。

菊次郎は正夫にヒッチハイクをやるよう命じ、正夫は素直に、駐車場内に停まっていたトラックの運転手に、豊橋まで連れてってくれない?と声をかけるが、ごめん、反対方向なんだよと断られる。

隣のトラックの運転手も、ちょっと寝なくちゃ行けないんだよ、ごめんなと言うので、菊次郎の側に戻って来た正男は、ダメだったと報告する。

代わりに菊次郎が、降りて来た運転手に、おい、豊橋まで乗せてけ!と居丈だけに話しかけると、何だ、てめえは?と運転手は聞き返す。

ヒッチハイクじゃねえか、この野郎!と菊次郎が言うので、仕事中だ、馬鹿野郎!何だ、その口の聞き方は!乗せる訳ないじゃないか!と呆れられる。

菊次郎は、「たぬき茶屋」へ向かって行ったその運転手に、石をぶつけるつもりか小石を拾いかけるが、諦めて正男の所に戻って来る。

お前ね、顔がダメなんだよ、哀しそうにしなくちゃダメだと正夫に言い聞かしながら、正男の目の下をわざと涙で汚れたようにして、再度、デート中のカップルが乗った車に声をかけさせる。

転する男の方は、正男から豊橋と聞き、そっちの方は行かないな、それに今、デート中だからと答えるが、 女(細川ふみえ)の方が、乗せて行って上げなよ、可哀想じゃない、こんな小さい子…と男に言い聞かす。

それでも男は嫌だと言うが、乗せて行ってあげなってと説得した女が、坊や、良いから乗りなと正男に声を掛けると、反対側から、姉御、かたじけねえと言いながら、隠れていた菊次郎が車に乗り込んで来る。

しかし、ちょっと待っておくんなせえと言って、一旦車を降りて行った菊次郎は、トラックのフロントガラスに石をぶつけて車に戻って来る。

運転手は菊次郎の車を追って来て、外に呼び出し、自分のトラックの前に連れて来る。

フロントガラスを見て、俺じゃねえよととぼけた菊次郎だったが、運転手にトラックの背後に呼ばれ殴り飛ばされる。

二三度吹っ飛ばされた菊次郎だったが、最後は運転手を叩きのめしてしまう。

菊次郎が宙に投げ捨てた木の棒が、女のジャグリングのボールとオーバーラップする。

菊次郎も女を真似てジャグリングの真似をしてみる。

坊や、ここにお金入れてごらんと言いながら、男の手に渡す振りをさせると、男がロボットダンスを始める。

女の方は、天使の羽根が付いたリュックを正夫に渡し、飛んでごらんと言うので、正男は周囲を駆け出す。

彼らが休憩していた芝生は、立入禁止と大きく看板が立っている場所だった。

北古谷バス停で降ろされた菊次郎は、こんな所に車来るのか?ケチ!と菊次郎は男女に悪態をつくが、カップルは笑って車に乗り込み去って行く。

画面が、タイヤホイールに写った景色のように回転する。

バス停で待つ菊次郎はミカンを使ってジャグリングをし、何だ、簡単じゃないか、偉そうにあのの女…とバカにする。

そこに、作業服姿の男(ビートきよし)が暑い、暑いと言いながらやって来て、菊次郎の隣に座る。

暑いと分かってるなら、座るんじゃない!と菊次郎は腕が当たった男に文句を言うが、座らせてくださいよ、僕だって…と男は言い返す。

車、来るのか?と菊次郎が聞くと、来ますよと男は答える。

何か役所やってるのか?と聞くと、いやいや、銀行員なんですと言うので、お前、この顔がどこが銀行員なんだよ!と菊次郎がバカにすると、本当の事言うとね、楽器屋に勤めているんですよなどと男は言う。

楽器屋?何売ってるんだ?と菊次郎が怪しむと、ピアノですよと男が言うので、ピアノって顔か?その顔が、嘘つくんじゃないと菊次郎は突っ込む。

ピアノを作っている訳じゃなく、僕はそこの守衛なんですよと男は言う。

泥棒来るように、シャッター開けてやがるんだな?この野郎!などと菊次郎が言うと、そんなことしないっすよと男は否定し、ちょっとおしっこして来ようかな?と言いながら、停留所の外で出て行く。 菊次郎は、男が置いて行った紙袋の中のアルミホイルに包まれた握り飯とみかんを入れ替える。

どな…と男は言う。

しかし来たのは軽トラだったので、バスじゃねえじゃねえか、馬鹿野郎!と菊次郎は悪態をつく。

どうもすみませんと言い残し、男はその助手席に乗り込んで去って行く。

坊や、これ食べなと言いながら、菊次郎が握り飯を渡すと、おじさん、これどうしたの?と正男は不思議がる。 ホテルでな、作ってもらったと菊次郎はごまかす。

食べろよと勧めると、おじさんは?と正男が聞いて来たので、おじさんもおなか空いてるけどな、我慢するから、お前食べろと菊次郎は言い聞かせる。

大人はな子供のために命賭けなきゃな…と菊次郎は言うが、ちょっとトイレに行くと言い、自分用に隠していたもう1つの握り飯を持ってバス停の横に行き、そこで隠れて握り飯を食べようとするが、溝に落としてしまったので、それを拾おうとして頭から自分が落ちる。

いつまで待ってもバスは来ないので、正夫は顔にタヌキの絵を描いて車を停めようとするが誰も停まってくれなかった。

バスなんか来るのか、これ30年前だぞ…と菊次郎はぼやく。 その後、菊次郎が停留所の前でタップダンスの練習をし、何だ、タップなんて簡単じゃないかと言う。

その時、良いこと思いついたな…と呟いた菊次郎は、サングラスをかけて白い杖を持ち、盲人の真似をしてみる。

正男は車を停め、目の見えないおじさんを豊橋まで連れて行ってあげたいので乗せてくれませんか?と頼むが、参ったな、まだ仕事中でさ、それにこの車まだ新車でさ、ならし運転中なんだよとなどと運転手は言う。

すると、すぐ横に来ていた菊次郎が、何が新車だ、こんな汚え車、それにあんなださいお守りなんか付けやがって、馬鹿野郎!と悪態をつく。

すると運転手は、何だてめえ、目見えてるんじゃないか!と怒り、すぐに去って行く。 演技下手なのかな?…と菊次郎は呟き、俺1人でやってみると言い出す。

その直後、停留所の前で様子を見ていた正男が、おじさん、車、来たよ!と呼びかけると、盲人に化けた菊次郎が停留所の外に出て来るが、すぐに轢き逃げされる。

夜、雨が降り始める。 正夫が母親の写真を取り出して見始めたので、横から覗いた菊次郎が優しそうだな…と声をかけると、正夫は知らない…と答える。

お前、お母さんに会ったことないのか?と菊次郎は驚き、いつしか、正夫は菊次郎の膝の上で寝てしまう。

そんな正夫を観ながら、この子も俺と同じか…と菊次郎は呟く。

翌日、2人は歩いて豊橋へ向かう。 やがて歩き疲れた菊次郎は、あのな、車がパンクしたら、2人で手伝うんだぞ、そしたら乗せてくれるからと菊次郎は正夫に言い聞かし、路上にピンを置かせる。

やがて、思惑通り、通りかかった車がパンクするが、その勢いでスリップし、土手から車ごと落ちてしまったので、2人は慌てて逃げる。

その後、2人は車に乗せてもらい移動していた。

おじちゃん、普通に頼めば良かったねと正夫は言うので、うるせえ、馬鹿野郎と菊次郎は言い返す。

その車も途中の畑の側で降ろされたので、最後まで乗せてけ!どこだか分からねえじゃねえか…と文句を言い、腹いせに近くに停まっていた車をパンクさせようと、坊や釘拾って来い、太いの!と正男に命じる。

しかし気付くと、背後で運転手(今村ねずみ)がしっかり観ていた。

言ってくださいよと車の運転手は親切にも2人を乗せてくれる。

あんちゃん、何やってるの?と菊次郎が聞くと、全国回って、詩を書いたり、曲作ったり…、本当は小説家になりたいんですけどねと言っていたが、何とか目的地のすぐ側のトンネルの所まで送ってくれる。

ここ降りるともうお母さんちだぞ、え?興奮するな。

俺、ちょっとトイレ行って来るから待ってろ!と正男に言い、菊次郎は走り去る。 正男がベンチに座っていると、すぐに菊次郎が戻って来て、ちょっと考えたんだけど、お前、今日お母さんに会ったら、お母さんちに泊まるんだろ?俺、どうしようかな?と今日の泊まる場所に困る。

おじちゃんも泊まれば?と正男が言うので、俺?そりゃまずいだろう、お前…、でもお前のお母さんきれいだからな、何か言い仲になってやっちゃったりしてな。そしたら俺、結婚しちゃうよ、お前のお母さんと…。

するとお前は俺の子供になっちゃうんだ。そうだろう?そうなったらパパって呼ぶんだ、パパって呼んでみろなどと正夫をからかい、手を引いて歩き出す菊次郎。

「天使の鈴」(ガラス細工の天使の人形が揺れている)

住所を書いた正男のメモを頼りに、とある家を探し当てた菊次郎は、待っていた正男の側に戻って来て、あのな、住所はあの辺なんだけど、お母さんの名前何て言ったっけ?と聞くと、杉山里子と正男は答える。

もう一度、その家の前に行ってみた菊次郎は、「吉村」と書かれた表札を見て、薄々事情に気付く。

その時、家の中から、正夫の母親(大家由祐子)が出て来るが、新しい夫らしき男とその間に生まれたらしい娘も出て来て、それを手を振って見送った後家に戻ったので、菊次郎と正夫は唖然とする。

正夫は泣き出すが、行こう、なんか人違いだったみたいだな…と菊次郎は話しかけ、一緒に立ち去る。

近くの海辺にやって来た菊次郎だったが、やっぱり、お母さん、引っ越したんじゃないかな?おじさん、さっきの人たちに聞いて来るから待ってろと正夫に言い聞かし、1人戻って行く。

正夫は海辺で一人泣いていた。 トンネル脇のトイレに来た菊次郎は、天使の鈴が付いたバイクが置いてあるのに気づく。

ハゲ(井手らっきょ)とデブ(グレート義太夫)の2人の男がトイレから出て来たので、ベンチに座っていた菊次郎が、おい、あのちびっこいのなんだ?と声をかける。

天使の鈴ですとデブが言うので、だから何だよ?と聞くと、お守りですけどと言うので、くれよと菊次郎は脅す。

嫌ですよとデブが言うので、何でくんねえんだよ!と菊次郎が聞くと、彼女にもらったんですとデブが嬉しそうに言うので、てめえ、彼女って顔か!馬鹿野郎!ハゲなんか連れやがって!と菊次郎は文句を言う。

これは彼女じゃないっすよとデブが慌てて否定すると、エンジン取っちゃうぞ!と菊次郎が無茶を言い出したので、止めてくださいよとデブは困惑する。

くれよ!と強引に迫った菊次郎は、いつしか天使の鈴を手にしていた。

バイクで立ち去るデブとハゲは、不満そうな顔で振り返っていた。

菊次郎は波打ち際に座っていた正夫の所に戻って来ると隣に座り、やっぱり、お前の母さん、引っ越しちゃったんだって。そんでね、もしお前が来たらこの鈴渡してくれって…。

これね、天使の鈴って言ってね、苦しいときや哀しいとき、天使が来て助けてくれるんだって…、ほら、鳴らしてみ、天使がお母さん連れて来てくれるかもしれないと言いながら渡す。

天使来たか?と空を見つめて菊次郎が聞くと、何にも見えないと正男は言う。 もうちょっと振れば…、天使来るだろうと言い聞かせる菊次郎。 空を見上げ、分かんない…と落ち込む正男。

「おじちゃんが遊んでくれた」(砂浜に作られた天使の形)

帰ろうか?帰ろ…と菊次郎は言い、正夫はしばし考えた末、菊次郎の元に駆け寄り手を握る。

空に浮かんだ天使の鈴が揺れながら、土管の中にいた正夫に舞い降りる。

2人はまた一緒に歩いて行く。

「階段から落ちたおじちゃん」(写真フレームの中で倒れている菊次郎)

その後、地元の祭りで射的をする2人だったが、全く当たらないので、正男にパンと口で言わせ、菊次郎が石を投げつけて商品を落とす。

しかし、テディベアのぬいぐるみを持った店主は、落ちる訳ないでしょう、飾りなんですから…と呆れる。

落としたからくれって言ってるんじゃないかよ!と菊次郎が凄むと、落としたら上げますよ。20年以上飾ってるんですから、落ちないっすよと店主が言うので、それじゃあ、詐欺じゃないか、この野郎!と菊次郎もむきになる。

詐欺?お祭りってそう云うもんでしょう?と店主は言い聞かせようとする じゃあ、買い取れ!と菊次郎が言い出したので、いくらですか?と店主が聞くと、2万だよなどと無茶を言うので、2万円って、あんた、勘弁してくださいよ、これ2000円ですよ!と店主が文句を言うと、てめえ、2000円で商売してるのか!じゃあ3000円で買い取れ!出せ!この野郎!と菊次郎は脅す。

店主は諦めたような顔で、分かりました、出しますよ…と答えたので、当たり前じゃねえか!と菊次郎は言う。

金魚すくいも、紙の網ではなく金属カップで掬い出した傍若無人な態度の菊次郎を見た店の主人は、黙って立ち上がり、暗闇の中に消えて行く。

その後、パンダ人形を抱えた菊次郎と正男は前島神社の所で鈴を鳴らし、帰ろうと言い出した菊次郎が、何を拝んだんだよ?と聞くと、正男は内緒と言う。 そんな菊次郎の前にヤクザ風の男が4人立ちふさがり、あんちゃん、ちょっと顔貸してくれよ、色々暴れてくれたそうで…と言うので、だからどうしたって言うんだよ!と菊次郎は睨み返す。

何だと、この野郎!ちょっと面を貸せとヤクザの1人が言うので、菊次郎は、坊主、ちょっと待っててくれと後ろの正男に声をかけ、男たちに着いて行く。

てめえ、俺の身体にちょっとでも触ってみろ?てめえの首潰すぞ!と人ごみのない暗がりに来た菊次郎は強がりを言う。

相手は笑って、やってみろと答える。 神社で待っていた正男はベンチに腰を下ろす。 その後、鼻血を出していた菊次郎は、子供がいるんだよ、もう殴んないでくれないか?と頼むが、ガキなんか出しに使いやがって、汚え野郎だ…と相手は答える。

夜も更け、 祭りの行灯が消される。

結局、倒れるまで殴られる。 神社で菊次郎を待っていた正夫に2人の男(橋本拓也、石坂勇)が近づいて来て、坊や何してるの?こんな所にいたら天狗にさらわれちゃうよと話しかけて来て、その直後、大木から舞い降りて来たその赤い顔の2人の青年は、坊や、坊や…と言いながら天狗の舞いを踊る。

居眠りをしていた正男が目覚めると、その赤い天狗の顔が傷だらけの菊次郎の顔に変わる。

ごめんな…、階段から落っこっちゃって…と言いながら、血まみれの菊次郎が戻って来る。

夜中、店じまいをしている露天商の間をぬい、近所の「まるや薬局」と言う店の戸を叩く正夫 戻って来た正夫が、菊次郎の鼻血を拭いてやると、坊や、ありがとうな…、ごめんな…と菊次郎は詫びる。

翌朝 宮司は境内に落ちていたパンダ人形を拾う。 蕗畑に引いてあった水道の水で身体を拭いた菊次郎は、頭に大きな蕗の葉を乗せて正男と畑を出て行く。

その後、菊次郎は、別の畑に成っていたトウモロコシを盗み始める。

すると、同じようにトウモロコシを盗んでいた豊橋まで車に乗せてくれた小説家志望の男と遭遇したので、2人で畑の側で産地直売を始める。

菊次郎からその後の話を聞いた小説家志望の青年は、そうだったんですか、坊や、可哀想なことしましたよね。でもそう云う話、小説には良くありますけど…、そうだ、2~3日、キャンプでもして帰りましょうよと菊次郎に勧める。

「タコ男」(川に首を出したタコに扮したハゲ)

トンボの目線で、近づいて来る小説家志望青年の車。

テントを作り、その前で座り込む青年と菊次郎。

正夫は、竿の先に天使の鈴を付けて釣りをしている。

そこに、その天使の鈴の持ち主であるハゲとデブがバイクでやって来て、こんにちはと挨拶して来たので、何だ、デブとハゲ、この野郎!と菊次郎が返事をすると、暇なんですよとデブは言う。

菊次郎は2人に、おい、坊主に鈴のことを言うなよ!と忠告すると、正男の方を見やったデブは、あんな所、魚いませんよと言うので、いないの?と菊次郎は聞く。

いないっすよ、あんな所とデブが呆れたように言うと、何だこの野郎、お前ら魚をやれ!と菊次郎はいきなり命じる。

デブは身体に鱗模様を描き、川でばしゃばしゃ暴れ、出来ませんよタコなんて…と言う。

似てねえよ!と水辺から叱った菊次郎は、タコ用意!と呼びかける。

ハゲがタコの格好になって立っていた。

デブ、太東町って知ってるか?とバイクの所にいたデブに聞くと、はい、こっからだったら案外近いっすよとデブが言うので、何で知ってるんだ?と聞くと、地元ですからと言う。

坊主、ちょっと行って来るからな、お兄ちゃんと遊んでもらいなと正男に声をかけ、良し行こう、大東町だよとデブに命じ、バイクに乗せてもらって出かける。

一方、正夫は、小説家志望の青年から石を使った手品ごっこをしようか?と勧められる。

テーブルに伏せた3つのカップのどれかに石を隠させ、青年が当てると言うものだった。

最初は青年が当て、2回目は外したかに見えたが、正男がこれだよと上げてみたカップのしたの石は、いつの間にかキャンディーに変わっていた。

菊次郎は老人ホームに来る。 竹田さん、どうぞ!と養護の女性に招かれた菊次郎が施設の中に入って行く

休憩室では、1人の老婆がテーブルに座っていたが、別の老婆が同じテーブルに座り、こんにちはと声を掛けると、急に立ち上がり、窓際のテーブルに移ってしまう。

そんな老婆の姿を入り口から見ていた菊次郎は、養護員から声をかけますか?と聞かれるが、良いですと答え、ホームを後にする。

バイクの所で待っていたデブが、お母さんいましたか?と聞いて来たので、」いたよと答えた菊次郎だったが、どうでした?とデブが聞くと、うるせえんだよ、帰れよと菊次郎が言い出したので、歩くと1時間以上かかりますよとデブは教える。

「池ノ谷」と言うバス停で待つ菊次郎に必死に説得するデブ。

結局、元の場所にバイクで戻って来た菊次郎だったが、バイクの所から動こうとしなかった。

正男に弓を作ってやったハゲが打ち方を教えようとしてつい手を滑らせ、前を歩いていたデブの尻に刺さってしまう。

とっさにハゲは正男に打つの早いよと罪をなすり付ける。

ハゲが、バイクの所でぶすっとしているだけの菊次郎に、一緒に遊びましょう?子供が可哀想ですよ…と声をかけると、遊ぶよ!と菊次郎はふてくされたように答える。

正男とデブと一緒に草むらに座った菊次郎が、行くぞ!とデブに命じると、デブがバケツを太鼓のように叩き出す。

インディアン用意!と菊次郎が命じると、上半身裸の小説家志望の青年が飛び出して来て踊り出すが、裸のハゲも一緒に出て来て踊り出したので、ハゲ!何で出て来るんだよ!と菊次郎は叱りつける。

夜、ハゲに宇宙人の格好をさせた菊次郎は、UFOが落ちたって言って子供連れて来るから、お前は林の方から出て来るんだ、宇宙人だって言って、そうすると、子供喜ぶから、頼むぞと指示を出し、ハゲに宇宙人の演技をやってみさせる。

正男君、私は宇宙人だ!とハゲが演じてみせると、馬鹿野郎、何で宇宙人が子供の名前を知ってるんだ、宇宙人だだけで良いんだと菊次郎は演技指導する。

良いか?巧くやれよ?練習しとけよ、子供連れて来るから、今日はお前が宇宙人、明日はお前が子泣きジジイだ、子供のためだからよ、行こうと言う。

小説家志望の男は正夫に、柄杓の形をした星座の話を話して聞かせていた。

昔々ね、日照り続きの村々があったのね。 そこに1人の少女がいたの。

ある日その少女はお水を探し求めてずっとさまよい歩いていたの。

どうしてかと言うと、少女の母親が病気で熱があったから…。 けど、水はどこにもありませんでした。

少女は疲れ果てて道にばったり倒れてしまいました。

ふと気がつくと、この柄杓にお水が一杯入っていました。

少女は喜んで母親の元へ帰りかけますが、気がつくと目の前に、小さくて痩せ細った戌がヨロヨロと現れた。

少女は可哀想に思い、水の半分をその子犬に分けてやりました。

すると、少女が持っていた柄杓は銀になりました。

それはもう美しく光り輝く柄杓に成りました…と青年は言う。

ハゲが草むらで1人、宇宙人の練習をしていたが、他の連中はみんな眠りにつく。

宇宙人の姿のハゲが戻って来ると、菊次郎はテントの中でいびきをかいて寝ていた。

翌日 テントで寝ていた菊次郎が起きて来ると、みんながスイカを食べていたので、スイカどうしたの?と聞くと、そこの畑でちょっと…とデブが言う。

がめたの?お前らバカやろう!お百姓さんが一生懸命作ったんじゃないか、何て事するんだ!だから出世しないんだ、お前ら!と叱りつけ、自分もしっかりスイカを食べると、冷えてないじゃないか!種があるじゃないか!と文句ばかり言う。

その後、正夫に目隠しをして、スイカ割ごっこをやるが、スイカ役はデブだった。

殴られたデブは、痛えと叫ぶ。 スイカ2号はハゲで、顔にメイクをして待機していた。 その内、みんなで裸で「ダルマさんが転んだ」をやる。

最初に動いたのはデブのおじさん!と正男が言ったので、デブは誰?と周囲を見回すが、デブって言ったらお前しかいねえだろう!と菊次郎が叱る。

次に動いたのは優しいおじさん!と正男が小説家志望の青年を見て言うと、あれ?見つかっちゃった?とハゲが嬉しそうに近づいて来たので、お前はハゲのおじさんだろう!この野郎!と菊次郎は叱りつける。

今度は「裸のダルマさんが転んだ」をやろうと菊次郎が言い出す。

ダルマさんが転んだで服を着ていくんだけど、動いたら負け、後のルールは同じと言うので、ハゲとデブは嫌がるので、何だこの野郎、やれよ!と菊次郎は命じる。

菊次郎が「ダルマさんが転んだ」と叫ぶと、パンツ一丁の正男が服やズボンが並べられた砂利道に出て来る。

続いて他の大人たちも砂利道に飛び出して来るが、何故かハゲだけは素っ裸(股間にはタコに化けたハゲの写真が出ている)だったので、菊次郎が、ハゲ!何で裸になっちゃうんだよ!バカ!と叱りつける。

全員、ロープにしがみついてターザンごっこをやっている時、ハゲは又しても素っ裸でター難の雄叫びを上げる。

デブがやると、ロープがほどけ肥だめに落っこちたので、泣きながらデブが這い出て来ると、みんなが逃げ出す。

「サヨナラ」(バイクの前で手を振るデブとハゲ)

その夜 ふぐに化けて川の中に沈んでいるデブ。

タコに化けたハゲ。

菊次郎はテントの中で泳いでいる夢を見ていた。

その手が当たったデブが、兄貴!と迷惑そうに声をかける。

小説家志望の優しいおじさんは、明日東京に帰らないとな…と呟き、昨日話した柄杓の星があれだよ…と夜空の星を正夫に教える。

テントで寝ていた正男は、星座の中で「ダルマさんが転んだ」をやっている夢を見る。

弁慶や遠山の金さん、新縁組など色んな扮装をして正男に迫って来る菊次郎たち。

翌朝、ハゲとデブたちと別れ、優しいおじさんの車で出発した菊次郎と正夫 途中の広い堤防の所ででかくれんぼをやる。

菊次郎はドラム缶の中に入り、そのドラム缶を持って正男の背後から近づく青年だったが、途中でドラム缶ごと倒れたので、見つけられる。

東京まで送って来てくれた小説家志望の優しいおじさんは、大阪や九州の方へ南下します。坊や、元気でね!と言い、そこで別れる。

俺たちもここでお別れだな…、またお母さん探しに行こうな、元気でなと菊次郎が言うと、おじちゃん、ありがとう…と正夫は礼を言う。

主、おばあちゃん、大事にしないとダメだぞと言い聞かせる菊次郎

正夫が、おじちゃ~ん!おじちゃんの名前はなんて言うの!?と聞くと、菊次郎だよ、バカやろう!早く行け!と菊次郎が怒鳴り返す。

正夫は走って橋を渡って行く。

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