白夜館

 

 

 

幻想館

 

警視庁物語 遺留品なし

いまだにテレビの刑事ドラマを作り続けている東映の、刑事映画の原点とも言うべき人気シリーズ作品の一本。

強面の役者は刑事も似合うのだが、捜査主任の神田隆や山本麟一の刑事役と言うのも、最初の内こそ「悪役イメージ」の先入観から若干違和感を感じるものの、観ているうちに馴染んで来るから不思議。

特に、終始にこやかで温厚な物腰の神田隆と言うのも、見慣れて来るとなかなか良いし、外では眼光鋭くパワー溢れる感じの山本麟一の刑事も、刑事部屋などでは穏やかな感じで、これも悪くない。

長田部長刑事役の堀雄二は「七人の刑事」でも有名だし、老刑事役の花澤徳衛もなかなか味がある。

「ウルトラセブン」の「V3から来た男」のクラタ隊員で知られる南廣や、「ひとりぼっちの地球人」の仁羽教授役や「第四惑星の悪夢」のロボット長官などでも知られる成瀬昌彦の若い頃が観られるのも嬉しい。

今回の事件は「結婚詐欺」がテーマになっている。

30歳になり結婚を焦っている職業女性が複数の結婚相談所に登録していたり、結婚をちらつかせる医者を名乗る男にあっさり騙されたり…と、この当時の女性の生態の一面が描かれている。

株を買い集めていたり…と、当時の職業婦人の将来を見据えた貯蓄感覚も興味深い。

木村功や「キューポラのある街」の吉永小百合さんの母親役杉山徳子などが、ちらっと登場しているのも楽しい。

そんなに複雑な話ではないが、ちゃんとレギュラー陣が全員動き回るくらいの展開は用意されており、安心して楽しめる一品である。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1959年、東映、長谷川公之脚本、村山新治監督作品。

坂道を降りて来た小学生の女の子が、タカシ君、お早う!と明るく声をかけると、そのタカシと呼ばれた小学生の男の子が女の子と一緒に学校に行きかけたので、母親(藤里まゆみ)は袋を渡しながら、自動車に気をつけるのよ!と声をかけ、「清風荘」アパートの部屋に戻ろうとする。

その時、坂井久子の部屋からラジオの音楽が鳴りっぱなしなので、坂井さん!今日は早いわね!と声をかけながらドアを開けて中を覗くと、レインコートをかぶった坂井久子(杉丘のり子)が寝ているように見えたので、どうなさったの?と言いながら、レインコートをそっとはいで顔を覗き込むと、頭から血を流して死んでいる久子の顔が見えたので、その母親は息を飲む。

音楽が鳴り響いているビクター製のラジオへカメラがパンし、タイトル

ハンカチを使い、そのスイッチを切る捜査主任(神田隆)

発見者の主婦から事情を聞いているのは金子刑事(山本麟一)

坂井さんは、伝言ビルで交換手をしていたはずと言う。

林刑事(花澤徳衛)は、被害者の首に巻かれたコードが、近くに転がっていた電気スタンドのコードだと気づく。

スタンドの電球は割れていたがスイッチは入ったまま、その側には、明かり用に使ったと思われるマッチの燃えカスが何本か落ちていた。

6号室の大学生(友野博司)が言うには、夕べの8時10分頃、アパート全体が停電した。調べてみたらヒューズが切れており、誰かがショートさせたらしい。

坂井久子の部屋のテーブルには、紅茶のカップが2つ置いてあり、灰皿に残されていた煙草の吸い殻には口紅はついてなかった。

3号室の女主人(星美智子)は、お隣の坂井さんとは付き合いがなく、部屋には客は来ていないと思うと言う曖昧な答えだった。

久子は、何枚もの株券を持っていた。

捜査一課長(松本克平)は、死体にコートをかけたのは、顔を見たくなかったんだな。犯人は顔見知りではないかと呟く。

夕べの8時10分頃、ショートして停電したらしい。

痴情のもつれではなく怨恨ではないか?遺留品がないので、ここには高津君に残ってもらい、後は聞き込みの一本槍で行こう!と主任は指示を出す。

長田部長刑事(堀雄二)と林刑事は、被害者が勤めていた伝言ビルの交換室に向い、久子と親しかった同僚の岡山光江(東恵美子)を交換主任に呼んでもらう。

光江は、久子が殺されたと聞くと驚くが、株券を買っていた事は知っていましたか?と聞かれると、このビルの1階のサービスセンターの小柳さんから勧められて買っていたようですと答える。

他に男関係をご存じないですか?久子さんは満30と言うことですから、男友達の1人や2人いたのでは?…と林刑事から聞かれるが、心当たりはないようだった。

そこに、交換主任が、もう1人の同僚井口花子 (谷本小夜子)を連れて来る。

花子は口が軽いタイプらしく、久子さん、ご両親も兄弟もいなかったはずだけど、お葬式は誰が出すのかしら?あのお医者さんに頼みましょうか?あなたと映画を観に行った時会ったじゃない!などと光江に話しかける。

その方はどう言う方ですか?と聞くと、池…なんとかさん…、池田?…とか言う名前の人で、東都医科大学の生理学教室に行っている方だそうですが、私が言いに来たのはその人の事じゃなくて、このビルの5階の太陽建設に勤めている須貝さんと言う人の事なの…と花子はあっけらかんと言う。

でも、あの人なら、久子さん、この春頃ちょっと付き合ってすぐ別れたって言ってたわよと光江は言う。

林刑事は、その後、1階の「丸安サービスセンター」の小柳(成瀬昌彦)に、久子が持っていた株券の事を聞きに行き、長田部長刑事と山村刑事は、5階の太陽建設の須貝に会いに行く。

太陽建設の受付嬢は、須貝は今出ており、昼頃戻ると言うので、昨日の事を聞くと、昨日は頭が痛いと言って、定時の5時に帰宅したと言う。

この頃は徹夜続きだったらしい。

本人が不在では仕方がないので、長田は山村に、東都医科大学へ行こうと行き先を変更する。

久子は、無記名の投資信託を35万円分うちから買っていると小柳は教える。

それを聞いた林刑事は、無記名なら、ホシが売ることもありますな…と聞く。

株以外に35万も投資信託を持っているんだと、坂井光江さんは相当お持ちですね…、色々ご相談するうちに、彼女からボーイフレンドの事まで聞きましたよ、この春…と小柳が言うので、須貝と言う男の事ではないですか?と林刑事は聞く。

久子が購入した投資信託の控え番号を聞いた林刑事は本部に電話で連絡しておく。

小柳が言うには、久子はボーイフレンドから冒険を求められたのだと言うので、純血の問題らしいですな?と林刑事が応じると、男なんてそんなものでしょうか?結婚してくれる人いないだろうかと、最後には人生相談のような事まで聞かれましたよと小柳は言う。

それで、私の従兄弟が、丸の内ソシアルクラブと言う独身者の社交場で女性と知り合ったらしいとお教えしましたら、半月ほど前に良い人が見つかったとおっしゃってましたと小柳が言うので、それは、医大の先生で池田…とか言いませんでしたか?と林刑事は確認するが、はっきり覚えている訳ではないようだった。

その頃、東都医科大学生理学教室にやって来た長田部長刑事と山村刑事は、女性研究員から、池田達夫なら、実家の方へお帰りです。茨城だったと思います。最近、結婚なさるっておっしゃってました。明日、教授が見えるので、日帰りで帰るって言ってましたと聞かされる。

「交換嬢殺人事件特別捜査本部」では、林刑事からの報告を聞いた捜査主任が、結婚相談所と言ってもピンキリあるだろうと聞くと、調べた所、都内に9カ所ありますと林刑事は答える。

その時、長田部長刑事から電話が入り、池田教室員の写真を手に入れたとの報告がある。

早速その写真を持って、岡山光江と井口花子に見せに行くが、2人ともはっきり分からない様子。

長田部長刑事と山村刑事は、太陽建設の須貝に会っていた。

アリバイ調べですね?と鷹揚に答えた須貝は、夕べは実はちょっとさぼりましてね。僕もチョ○ガーですからね。ただし売春じゃないですよ!エレベーターガールですよ。篠原セツ子。今、昼休みですから、屋上にいるはずですとあっさり答える。

すぐさま、山村刑事が屋上に向い、当の篠原セツ子(八代万智子)と会って話を聞く。

大平建設の須貝さんと夕べご一緒だったそうですね?と聞くと、噓!須貝さんとなんかお付き合いしてません!と言うではないか。

すぐさま、太陽建設の長田部長刑事の元に戻って来た山村刑事は耳元でそれを伝え、篠原さんは夕べ、1人で映画を観て帰ったと言ってるそうですよ。ほんの参考人程度でご同行願えませんかと長田が須貝に伝える。

それを聞いた須貝は驚き、温泉マークの名を場所まで言ってるじゃないですか!と憤慨する。

本部に来てからも、夕べ8時頃旅館の近くで火事が会った事も知っているんだ!朝刊にも出てたでしょう!これは人権蹂躙だ!と須貝は興奮していた。

それをデスクでニコニコ聞いていた捜査主任は、新聞に書いてある事は誰でも知っている事ですし、もうちょっと待って頂きましょうと声をかける。

その頃、金子刑事と渡辺刑事(須藤健)は、「清風荘」側を事件当日通りかかったと言う寿司屋の出前に話を聞いていた。

すると、事件当時、「清風荘」から服装は立派なのに裸足で靴を持ってでて来た男がいると言う。

その時間「清風荘」は停電していたかも知れないが、自分は配達が遅れたので叱られたから8時15分頃ではなかったかと思う。自分が配達し終えて帰ってくる時、その男はタクシーに乗って走り去った。年は30くらいで細面だったと言う。

捜査本部に戻って来た山村刑事から報告を受けた捜査主任は、待たせていた須貝にお引き取り願うことにする。

帰りかける須貝に、山村は、火事の時飛び出して行ったときの忘れ物ですと言って、温泉マークからもらって来たカフスボタンの片方を渡す。

そして、山村は、あの子19なんですって…と呆れたように、噓をついていた篠原セツ子の事を捜査主任に教える。

それを聞いた林刑事は「ハイテーン(ハイティーン)」って言う奴だな…と慣れない言葉を使ってみせる。

若い子ほど、はっきりしてますね…と苦笑した捜査主任だったが、これで又振り出しに戻ってしまった…と刑事たちに告げる。

長田部長刑事が、寿司屋が目撃した男が池田達夫だったかどうか確認しに行く。

渡辺刑事は、怪しい奴が乗ったと言うタクシーを手配しに行く。

長田部長刑事と金子刑事は、入手していた池田達夫の写真を寿司屋の出前に観てもらうが、分からない様子。

仕方がないので、長田と金子は「清風荘」の方に行ってみることにする。

林刑事は、結婚相談所廻りをしていた。

「聖心クラブ」と言う結婚相談所で、名簿を観ていた林は、そこに坂井久子が登録していた事に気づく。

所長は、その名簿から過去の紹介履歴を調べ、うちではどなたにもお世話していないと答える。

続いて「丸の内ソシアルクラブ」なるグループのダンスパーティにやって来た林は、坂井久子を知っていると言う女性から久子の事を聞くが、いつも壁際に立っていただけで地味な印象だったと言う。

グループの担当嬢も、ここでは特定の方に人気が集まりまして…、積極性がないと…と林に伝える。

本部に戻って来た長田部長刑事は、結局ダメだったか…と、成果がなかった事に落胆していた。

林刑事は、投資信託が売られたって言う話は?と捜査主任に聞くが、まだ連絡はないようだった。

捜査主任は、遺留品がない事件は得てして長引くものさ…とみんなを落ち着かせる。

林は、今日は高津君ピンの方を廻りましたから、明日はキリの方を廻ってみますと言う。

翌日、再び東都医科大学の生理学教室にやって来た山村刑事だったが、その日も池田は来ておらず、アパートにも帰ってないので、これから茨城の方へ言ってみようと思うのですが…と捜査主任に電話で伝える。

主任は、まだ確証を掴んでないのだから、失礼のないようにしてくれよと山村刑事に伝える。

そこに、手配していたタクシーの運転手らしい人物が警官に連れて来られる。

それは女性だったので主任は驚くが、女性ドライバーの方も、都内では、私ともう2人しかいないので…と珍しがられることに慣れているようだった。

時間と場所から言って、私の乗せたお客さんじゃないかと思って…と言う女性ドライバーに、池田の写真を見せて見るが、違うと言う。

降ろしたのは中野だったと言うので、渡辺刑事と長田部長刑事がその場所まで案内してもらう事にする。

それを送り出した金子刑事は、林さんが結婚相談所の方で良い成果を掴むとはっきりして来るんですが…と主任に話しかける。

女性ドライバーのタクシーで、中野の下宿にやって来た長田部長刑事と渡辺刑事。

その事、林刑事と高津刑事(佐原広二)は、小規模の結婚相談所巡りをしていた。

下宿のおばさんから男の行き先を聞いた長田部長刑事と渡辺刑事は、再び女性ドライバーのタクシーで「ミリオンダンス教習所」と言う場所へやって来て、女性ドライバーに相手の顔の確認をしてもらう事にする。

鏡の前で1人ポーズを取っていた細面の男(八名信夫)がその男だった。

その頃、本部にいた捜査主任は、丸密商事と言う金融会社が手配の投資信託を昨日買ったと言う電話を受けていた。

主任は金子刑事に、その金融会社に行ってくれと頼む。

長田部長刑事は、「清風荘」3号室の女主人を訪ね、問題の男がお宅から出て行ったのではないか?と確認していた。

女主人は、客が来たので、一旦は隣の部屋に隠れてもらったんですが、その客と言うのはうちの人だったものですから…と恥ずかしそうに答える。

聞いた所では、ご主人は月に1度来られるそうで…と長田が聞くと、それが急に2度になったものですから…と浮気をしていた女主人は答え難そうに打ち明ける。

一方、「丸屋氷店」と言う店の二階で、マッサージ業の傍ら、結婚相談所もやっていた川西(殿山泰司)と言う男の名簿を調べていた林刑事は、その中に坂井久子がいたのを見つける。

名簿には27才と書かれてあった。

缶詰をおかずにドカベンを喰い始めた川西にその写真を見せると、3つくらいサバは読むでしょうなどと言いながらも、その人なら池原清と言う東都医科大学生理学教室の人に紹介したと言うので、池田の写真を見せると違う、もっと良い男だったと言う。

その男の住所は?と聞くと、カードは又作りに来ると言ってすぐに帰ったと言うではないか。

捜査本部に戻って来た金子刑事は、投資信託を売ったのは池田ではなかったと主任に報告する。

その時、林刑事から電話が入り、池原清と言う名前を聞いた主任は、その直後、茨城に言った山村刑事から電話が入ったので、池田はシロらしいので帰って来てくれと指示する。

伝言ビルの屋上に高津刑事とやって来た林刑事は、井口花子に会うと、前にあなたが会ったのは、池原清と言う人じゃありまりませんか?と聞くと、そうそう池原清さん!今、思い出したわ!と花子は笑顔になり、そこにやって来た岡山光江に、光江さん!分かったわよ!あの男の人、池原清って人よ!と教えるが、それを聞いた光江は、急に困惑したようで、池原さんが何かしたんですか?と聞いて来る。

坂井久子さん殺害の有力な容疑者ですと林が教えると、そんなはずがありません!と言い出す。

捜査本部に連れて来られた光江は、あの日は私と一緒だったんですと言うので、かばってるんじゃないでしょうね?と主任が聞く。

最初にお会いした時に何故言って下さらなかったんですか?と長田部長刑事から聞かれた光江は、池原さんと親しくなった事をお友達に知られたくなかったんですと言うので、いつから付き合うようになったんですか?と長田が聞くと、ばったり会った翌日に、先方から電話があったんですと言う。

乗り換えたって事ですな…と長田が言うと、そんな言い方止めて下さい。真剣に結婚を考えていたんです!と光江は気色ばむ。

一昨日、パール座に映画を観に行ったそうですが…と主任から聞かれた光代は、7時ちょっと過ぎに行ったんですが、席が1つしかなかったんで、そこには私が座り、池原は立ち見席の方へ行ったんです。映画が終わって観に行くと、彼は後の方で眠り込んでいました…と言うので、それじゃあ、証拠はないじゃないですか!と主任は呆れる。

あなたは大分信用していますが、池原は偽医者ですよと長田が教えると、そんな!と光江は驚く。

東都医大にいる池がつく医者と言うのはは、池田達夫と言う人だけですと長田は言い聞かすが、でもあの人、研究費用が足りないと言うので、10万都合してくれないかと言うので、さっき、有楽町の喫茶店のレジスターに預けてきましたと光江は言う。

それは何と言う喫茶店ですか?と聞くと、高速道路下の「パロマ」と言う店だと光江は答える。

そこに、池田の写真が載っていると光江が言っていた「サンデー毎日」を林刑事が持って来て、載っているグラビアページを教えてもらう。

主任は、金子刑事を金融会社へ、長田、林、高津の3刑事に「パロマ」に行くように指示を出す。

あの人が私を騙していたなんて…、私考えられません…と、本部に残っていた光江は泣き出してしまう。

「パロマ」にやって来た長田部長刑事が、レジ係の女性(月村圭子)に、池原はまだ金を取りに来てないんですね?と聞くと、多分…と曖昧な答え方をするので訳を聞くと、店の表にある私書箱に入れときましたから…と言う。

鍵は客本人が持っているのだと言う。

しかも、レジ係の女性は、池原は良く女生徒一緒に来ていたが、いつも違う方でした…と言うではないか。

それで、高津に私書箱を張ってもらう事にし、長田と林は、「パロマ」の中で客を装い、池原を待つことにする。

高津は、地下街の私書箱の向いにある蕎麦屋で「もり」を注文し、窓ガラスのカーテン越しに見張る事にする。

捜査本部では、渡辺刑事が、長田さんは何も言ってきませんね?と連絡が遅いので主任と心配していた。

主任も、金子君、遅いな…とぼやいていた。

「パロマ」のメニューを読んでいた林刑事は、そこの「待てば回路の日和あり」と書かれているのを発見する。

その時、先に客として座っていた女(杉山徳子)が、池原さんから何か預かっていませんか?とレジ係に聞いているので、林は話をしてみますか?と言うが、長田は、レコ(と小指を突き立て)だったりして、通報されたら敵わないからな…と小声で答え、もう少し様子を見る事にする。

本部には、本ボシが見つかったんですってと言いながら金子刑事が戻って来るが、それと一緒に警官が持って来た夕刊を開いてみた主任は、そこに「交換嬢殺し 池原某か?」なるスクープ記事を見つけ、読売の奴、飛んだスクープをしたな…と呟く。

誰から漏らしたんでしょうか?と聞かれた主任は、あっちだって独自に取材してるからね…と答えるが、そこに金子刑事から電話が入り、金融会社に売りに来たのはやっぱり池原だったと聞く。

すぐさま主任は「パロマ」の長田部長刑事に電話をする。

ホシの事が夕刊に載ったそうだと長田が林刑事に教えると、ホシが読んで飛んだんじゃないかね?と林も心配し、あの女に当たってみますか?と確認し、先ほどの女の席に近づく。

丸メガネをかけ変装していた林刑事は、失礼ですが、池原を待っていらっしゃるのでは?私、池原に少々金を貸しているものですがね?と言って、女に声をかける。

それを聞いた女は焦ったように、私、あの人からお金を今日中にもらわないと困るんです!と訴えて来る。

来るでしょうかね?と林刑事が聞くと、きっと来ますわ。今日ここへ来ないと、あの人大変なことになるんですと女は言う。

本部では、主任が光江に池原のアパートの住所を知らないか?と聞いていたが、知らないと言う。

「パロマ」で待っていた女が言うには、以前、池原を一緒の会社で働いていて、2人で使い込んだ金を半分ずつ弁償しなければいけなくて、池原は昨日、30万持って来たが、後10万ないと、会社が訴えると言っているんですと言う。

林刑事は、自分の正体を明かし、あんた、池原の住所を知りませんか?と直接聞く。

主任は、林からの連絡で、池原のヤサが分かった!と聞くと、3人ともいてくれ。緊急逮捕すると指示する。

蕎麦屋で陣取っていた高津刑事は、私書箱の前をうろつく男を見つけるが、その男は女を持っていただけだったと知る。

池原のアパートにやって来る金子刑事たち。

長田部長刑事と林刑事は、まだ「パロマ」の客席で入口の方を注視していた。

金子刑事たちは、池原の部屋をドアを開けると、そこには、バッグに荷物を詰め込んでいた本人がいたので、池原清!強盗殺人犯で逮捕する!と声をかけると、慌てて窓から外へ逃げ出す。

坂道を逃げる池原を追っていた刑事たちは、下から大型ダンプが近づいて来たので、危ない!と声をかけ、その場で池原に手錠をかける。

池原逮捕の連絡を受けた主任は、長田君の方には私の方から電話しようと答える。

夕暮れが迫ったので、部屋の電灯スイッチをつけようとした主任は、薄暗い部屋の隅にまだしょんぼり座っていた光江を観て手を止め、どうも長い事ありがとう。帰って頂いて結構ですと声をかける。

池原さんは?と光江が聞くので、黙って頷いた主任は、世間にはもっとまじめな青年がいますよ、そういう人と巡り会って幸せになる事ですなと優しく声をかけてやる。

光江は黙って立上がると、そのまま帰って行く。

その後、部屋の電気を点けた主任は、長田部長刑事に賭ける電話のダイヤルを回し始める。

ダイヤルに「終」の文字が重なる。


 

 

inserted by FC2 system