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軍神山本元帥と連合艦隊

山本五十六の後半生を描く戦争大作

三船敏郎が山本を演じた「連合艦隊司令長官 山本五十六」(1968)の10年以上も前に作られた作品だが、1年くらいは暴れてみせますと言う山本のセリフや、山本が甘党だったエピソード、ブーゲンビル上空での最期などは、既にこの作品に描かれている。

佐分利信の山本五十六は、風貌的にはかなり本人に雰囲気が近いようにも思える。

戦争シーンの大半は記録フルムを使用しており、部分的に足りないシーンを特撮で補っている印象だが、モノクロ作品と言うこともあり、同じ新東宝戦記物でスケールの小さなミニチュア主体だった「戦艦大和」(1953)の時ほどチャチさはそんなに感じない。

特撮と言っても、海戦シーンは、小さなプールにスケールの小さな模型を浮かべて爆発などを撮っているため、爆発がやけに大きく見える。

空戦は、グラスワークや機体のシルエットアニメ(?)のようなものが主で、こちらも、記録フィルムとの併用なので、言うほどチャチには感じない。

ただし、ラストの山本長官の最期のシーンは、ミニチュアに頼るしかなかったらしく、ジャングルに長官機が墜落して爆発する所などは、どう見てもミニチュア丸出しである。

ドラマ部分は、カメラをフィックス(固定)した範囲内だけのセットを作っている感じで、全体的に動きに乏しいカットが多いのだが、一応、実物大の飛行機なども何機か用意されており、ミッドウェイでの惨敗振りは見せ場として、それなりに丁寧に描かれている。

一応、新東宝の若手総出演と言う感じだが、アクションもなければ、ただ突っ立ってセリフをしゃべっているだけといった芝居が多く、取りあえず顔を出しているだけの顔見せ興行と言った感じだろう。

全体を通して出演シーンが多いのは宇津井健扮する三島航空参謀なのだが、いつものようにまじめなキャラと言うだけで、特に見せ場が用意してある訳ではない。

高島忠夫、若山富三郎、丹波哲郎、天知茂辺りは、ほとんど見せ場なしと言っても良い。

戦争ものだけに、女性もほとんど登場しておらず、華やかさもなければ、ドラマ的な盛り上がりにも乏しく、エピソードをいくつか羅列しただけのかなり単調な展開になっている。

エピソードの大半も、セットに座ってしゃべっているか、立ってしゃべっているかのどちらかで、動き的なものはほとんどない。

司令官になってからの山本五十六を中心に描くと、どうしても部下たちの話を聞くとか、別の偉い人と会談すると言った「静」の芝居ばかりになり、「動」的な要素がほとんどなくなってしまうのだ。

では、それを補うような若手のアクションがあるかと言えば、それも全くなく、全員ほとんど棒立ち芝居。

「動」の要素は記録フィルム部分だけでは、物語を楽しめと言う方が無理である。

分かるのは、山本五十六は部下思いで温厚な良い人だったと言うだけ。

製作年代を考えると、伝えるべき事はそれだけでも良かったのかも知れない。

ある種、「偉人伝」みたいな映画なのだろう。

そんな中、2.26事件のシーンなどは、一部とは言え、雪の中での官邸襲撃シーンを描いてあり、この作品の他の部分に比べると妙に金をかけて作ってあるように見えるので、何か他の映画の流用ではないかと思う。

それでも、所々に挿入される軍艦マーチや軍歌の雄々しさに、戦争記録映像が重なると、それなりに高揚感のようなものがわき上がるのが不思議。

戦後の作品なのに、反戦と言う雰囲気は希薄で、何故かプロパガンダ的な印象を受ける不思議な作品になっている。

南雲忠一長官を、この映画では「八雲長官」と名前を変更しているのも何かしらの意図があるのだろう。

歴史や戦争ものの知識がないだけに、この作品で描かれている事がどの程度が史実に近いのかすら分からなかった。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1956年、新東宝、館岡謙之助脚本、志村敏夫監督作品。

この映画を、山本元帥と戦没将兵の霊に捧げる…とテロップ

会社クレジット

タイトル

翻る旭日旗と軍艦マーチのメロディに乗せキャスト・スタッフロール

昭和6年、秋、日本は三国軍縮条約で噸数制限を受けた。

連合艦隊は、この劣勢を挽回するため、月月火木金金の猛訓練に明け暮れた。

第一航空戦隊司令官だった山本五十六海軍少将(佐分利信)は、その日も海の若鷲の育成に当たっていた。

一緒に艦上から航空隊の勇士を見上げていた賓客が、きれいなものですな〜と感激すると、遊びごとではありません!命を縮める思いですが、国のためと思ってやらせておるのですと山本が注意したので、賓客は恐縮する。

練習後、艦内では、将校たちが将棋を指したり歌ったり、酒を飲んで、しばしの憩いを楽しんでいた。

そんな中、将棋をしていた一群の藤田少佐(高島忠夫)が立ち上がり、地区群はその内、海軍にも手伝ってくれと言うようになるのでは?満州事変みたいな事になるが…と戦況を案じていた。

そこに山本少将がやって来て、大門に将棋をやろうと言うので、ビールを勧めるが、山本少将は、酒はいらん。甘いものをもらおうと言う。

藤田少佐が山本少将に、議会では満州事変の事が話題になっていますが…と話しかけるが、酒の肴に政局話など良くないと山本は諌める。

その場には、三島航空参謀(宇津井健)も一緒に将棋を観ていた。

その後、山本の危惧する通り、戦火は上海に飛び、内においては、5.15事件で犬飼首相が倒され、外にはヒトラーの台頭あり。

やがて、日本国際連盟脱退を経て、第二次軍縮会議のロンドン予備交渉が行われることになった。

海軍省に呼びだされた山本少将は、航空に詳しいと言うことでその全権をやってくれとの依頼を受ける。

君に出来るだけの努力をしてもらえば良いのだと言われた山本だったが、一日考えさせて下さいと答える。

その後、堀内軍務局長(江川宇礼雄)に誘われ、料亭「菊奴」にやって来た山本は、誰が俺を推したんだ?と憤慨するが、俺だよと堀内があっさり答える。

堀内、貴様か!と山本は呆れるが、行ってぶち壊すだけなら、軍備拡張になってしまうと堀内から説得された山本は、結果は請け負えんぞと答えると、努力してダメなら仕方あるまい?引き受けてくれ!頼む!と堀内から懇願されると、うんと承知するしかなかった。

その返事を聞いた堀内は喜び、それじゃあ、壮行だ!と言うと、手を叩いて、待たせておいた芸者を呼び寄せたので、どうも俺ははめられたようだな…、一生涯の悪日だ!と腐り、酒を進めて来る芸者にも、わしは飲まん!と断る。

三島と共に列車に乗り、神戸へと向かう山本を、妻(相馬千恵子)と4人の子供たちが駅のホームで見送る。

神戸に着いた山本は、船で出航する。

船上の人となった山本は、随行していた三島に、見送りしてくれるのはありがたいが…と言うと、三島は、東亜会などに偏ってますな…と、駅に見送りに来ていた顔ぶれを思い出す。

予備会議は、全権同士の意見が正面対決で結果が出ず、山本全権は長期の休暇を言い渡され、堀内軍務局長も勇退させられた。

やがて山本は、郷里の長岡にその姿を表した。

墓参りを住ませた山本が帰宅している時、すれ違った農民が、五十さん?五十さんだ!山本五十六さんだ!と声をかけて来たので、山本が振り返ると近所の馴染みだったので、30年振りかな?と笑った山本は、手合わせでもしましょうか?晩にでもいらっしゃいと声をかけ帰路につく。

その後ろ姿を見送る農民の娘と妻は、今度、海軍中将になったんだなと言い、一番の出世頭だ。どえらい人が出たもんだ!と農民は感心する。

兄の家に帰り着いた山本だったが、客があると言うので庭先を観ると、そこには、河合千代(前田通子)と言う農家の娘が来ており、一緒に連れて来た弟の四郎(北原隆)を海軍兵学校に入れたいのだが、母も父も亡くなっているし、今、自分は百姓やる傍ら、行商もやって育てていると言い、兵学校は親のない子や貧乏人は入れないと聞きましたが…と言うので、山本は、そんな事はない。身体が頑健で、成績が良ければ誰でも入れますと答えると、四郎もこれで、どんなに励みになるか…と明るい顔になった千代は、山本に礼を言い帰って行く。

そこにやって来たのが堀内だった。

浪人したんで、色々整理して来た…と山本が言うと、ご苦労だったな、貴様…と堀内はねぎらう。

そんな堀内に、お前に旨いものをごちそうしようと言い出した山本が、連れて行った先は「三色団子」の店だった。

俺の家は貧乏でな…、小さい頃、これが好きだった…と団子を食いながら山本は言う。

俺は貴様の決心を壊しに来たんだ。日本の将来を思うから言うんだ。

海外強硬論は貴様しかいない。将来の戦いは航空線になる!と堀内は山本を説得する。

国家は山本を、放っておかなかった。

その年の暮れ、山本は、横須賀海軍航空隊本部長に迎えられる。

世界的には、ヒトラー再軍備宣言、ムッソリーニの台頭。

日本も、2.26事件が起こった。

雪の日、首相官邸を襲う青年将校たち。

高橋蔵相殺害

海軍省に赴いた山本は米内海相(阿部九洲男)に会い、日独伊軍事同盟などバカな事です!と進言していた。

三国問題から海軍は批判されているから気をつけろと米内海相が注意すると、自分は憲兵が護衛してくれます。どこまで当てになるか分かりませんが…と苦笑し、山本は帰宅する。

海軍次官官舎に帰って来た山本を出迎えた夫人は、東亜会の方が見えています。お気をつけて…と案ずる。

応接室で待っていたのは、東亜会会頭黒川(丹波哲郎)、大石(天知茂)ら5名であった。

あなたには即座に辞職を願いたい。米英に応じて国家を誤っている。あなたのようなふぬけには任せられん!と大石が責めて来たので、英米も枢軸もない!と山本が答えると、日独伊三国が組むのを拒んでいるのは、米英を恐れている証拠じゃないか!と大石は詰めよる。

物量が何だ!日本には大和魂がある!と黒川がぶつので、山本は、大和魂は、向こう見ずに走ることがあると皮肉を返したので、この国賊を斬らん限り…と気色ばむ。

しかし、小刀を抜きかけている相手を見据えた山本は、国賊とは貴様たちのようなものを言うのだ!斬れるものなら斬れ!この山本が死んでも、海軍の1人1人に変わりはない!と怒鳴りつける。

昭和12年7月盧溝橋事件を端に発し、日支事変の火の手は広がった。

独ソ不可侵条約後、ドイツはポーランドに侵入。

第二次世界大戦の幕は切って落とされた。

山本は連合艦隊司令長官として、海の守りを一身に引き受けることになった。

米内大将も首相の大命を拝す。

山本はすぐに難局に対処することになる。

日独伊三国軍事同盟締結。

身を呈して、三国同盟に反対した山本長官の胸中いかばかりであったろう…

ABCDラインが日本を孤立させようとした。

山本は米内大将に私信をしたためる。

「真珠湾攻撃作戦」の会議が始まる。

日米開戦が決まったら、必ず真珠湾をやる!と山本は決意を述べる。

意見を求められた八雲司令長官(藤田進)は、慎重な意見を言うが、東京が焼け野が原になったら、南方進行が出来るか?主力航空部隊でアメリカの航空部隊と戦うしかない!大本営はこれに反対するだろう。しかし、ハワイを攻撃せず我らの勝利はない!と山本が力説すると、八雲司令長官も、全力を注ぎます!と協力を約束する。

機動部隊は、十分訓練をやってもらいたい!と山本は頼む。

土浦海軍航空隊では、士官候補生たちが訓練を続けていた。

そんな候補生を前にした山本は、34年前のわしを思い出す。日本海海戦のおり、三笠で伝令として乗り込んだ。東郷元帥の元、Z旗を仰いだときの感激は忘れられない。諸君らも海軍軍人として任務を全うしてもらいたい!と挨拶するが、整列して聞いていた候補生の中に、見覚えのある顔を見つける。

長岡の河合四郎です!と挨拶して来たのは、あの時の弟だった。

萩外荘で、山本は近衛文麿首相(高田稔)と会う。

近衛首相は、交渉妥結に努力したい。万一、交渉まとまらない場合は、海軍の見込みはどうですか?と聞いて来たので、1年くらいの短期間でなければ勝つ見込みはありません。

不幸にして開戦になれば、1年くらいは暴れてみせます。山本も旗艦の上で安閑としているつもりはありませんと山本は答える。

その先はどうなります?と聞かれた山本は、長期戦になれば、10対1の物量戦になる公算大ですと答える。

しかし結局、近衛、ルーズベルト会談は行われなかった。

その後成立した東条内閣は日本の運命を決定した。

ある日、山本の部屋に来た内海水雷参謀(沼田曜一)は、湯浅中尉(杉山弘太郎)と松葉中尉(御木本伸介)が、特殊潜航艇に付いてお話があるそうですと伝えに来る。

しかし、山本は、特殊潜航艇の帰還の可能性は低く、混乱期に使うものだと持論を述べるが、取りあえず2人に会おうと答える。

部屋に入ってきた2人の中尉は、どうか参加をお許し下さいと願い出るが、1割の生還もしないようなものを参加させないと山本は断る。

しかし2人は、緒戦の成果は大切です!と粘る。

かくて、昭和16年11月中旬、真珠湾攻撃作戦は大本営に承認された。

作戦会議の席、岡田先任参謀(細川俊夫)は、作戦決行の暗号は「新高山登れ」とすると全員に伝える。

出撃後、日米交渉妥結の時は、すぐさま帰還せよとの作戦を聞いていた作戦参謀(若山富三郎)は、それは無茶だ!目と鼻の先まで来ているのに…とぼやく。

しかし、山本は、100年兵隊を養っているのは、あくまでも平和のためだ!と言い聞かせる。

第6艦隊第一潜水戦隊として、その甲板には特殊潜航艇が乗っていた。

三島航空参謀らが帽子を振って見送る中、機動部隊は一機、又一機と搭乗して行った。

奇襲決行日は昭和16年12月X日なり、全艦隊の諸君、本職と生死を共にせよ!と山本は放送で呼びかける。

しかし、山本個人としては、戦争に把握まで反対ですと米内大将に伝え、それを聞いた米内大将は、山本君、ご苦労だな…とねぎらう。

私の目指す所はワシントン!と山本は笑う。

12月8日未明

ホノルルから約230マイル北にいた機動部隊が攻撃命令を待っていた。

広島湾上の戦艦「長門」内では、山本長官が岡田先任参謀に、開戦通告は間違いなく攻撃前にアメリカ側に伝わってるな?と確認していた。

通告なしに敵の寝首をかいたとあっては、日本海軍末代までの恥だと山本は言う。

山本は三島航空参謀に、作戦命令!新高山登れ!ハワイ方面攻撃作戦のX日は12月8日なり!皇国の興廃、この一戦にあり!と八雲司令長官宛に打電させると、それを聞いた機動部隊の兵士たちは一斉に歓声を上げる。

(軍艦マーチが鳴り響く中)攻撃機に乗り込んだ藤田少佐は、長官、行って参ります!と八雲司令長官に敬礼し、出撃して行く。

深夜3時5分、「長門」の中の山本や宇田参謀長(田崎潤)は、成果の連絡を今か遅しと待ち受けていた。

真珠湾上空に飛来した藤田少佐は、全軍突撃せよ!と無線で味方機に命じる。

東京では、真珠湾攻撃成功の号外が配られ、祝賀の花電車が走る。

山本の元にやって来た松井副官(中山昭二)が、東京では祝賀会が大変なようですと嬉しそうに伝えるが、この艦内でもやっていると教えた山本は、副官、惜しい若者たちを死なせてしまった…、特別攻撃隊など出すんじゃなかった…と悔む。

その後、マレー方面を担当した日本海軍基地航空部隊は、英軍の「プリンス・オブ・ウエールズ」や「レパルス」を急襲。

その連絡を受けた宇田参謀長は、航空部隊と戦艦の戦いですな…と感慨深気に呟き、「プリンス・オブ・ウエールズ」は撃沈したとの連絡を受けると、やっぱりやりましたな…と顔をほころばせる。

山本は副官に、みんなにビールを御馳走してやれと命じる。

陸軍はその後もマレーを南下。

シンガポール、バタビア沖

パレンバン

セイロン作戦

陸軍は、その後も、スマトラ・インドネシアに侵攻。

昭和16年12日16日 フィリピンを陥れた。

やがて「戦艦大和」が、連合艦隊旗艦として就役した。

「大和」に乗り込んだ乗り込んだ三島航空参謀は、今年の花火は、艦上からですな…と一緒に乗り込んだ山本に話しかけるが、山本は、油断ならん…、敵には一流の艦隊が残っとる。「サラトガ」「レキシントン」「エンタープライズ」「ヨークタウン」…と表情を引き締める。

やがて山本の心配通り、「ホーネット」が日本に接近、B-29で東京空襲を行う。

精神戦と思ってはいけないと山本は言う。

敵の主力船を撃たなくてはなりません。早期決戦の準備を整えないと…宇田参謀長が会議の席で発言、岡田先任参謀はソロモンが妥当かと…。東に進攻すれば、アメリカも対抗せざるを得ませんと意見を言うと、アメリカが全力で来るかどうかは分からんと宇田は答える。

三島航空参謀が、ミッドウェイ作戦はやるべきです!アリューシャンも進撃出来ますと進言する。

アメリカが進撃して来るかどうか、こちらが維持出来るかどうか…、多少の危険も覚悟せねばならんと山本は言う。

山本はその後も米内大将に手紙を出し、和平交渉を進めるように進言していた。

しかし、ミッドウェイ島へ出撃

第一艦隊は八雲司令長官の元、空母「赤城」「加賀」「飛龍」「蒼龍」に加え、戦艦「榛名」「霧島」らの精鋭主力部隊が5月29日に出動した。

アリューシャン部隊103隻

はたして、第一次攻撃隊は敵航空隊の主軸を発見、第二次攻撃の必要ありとの連絡が入る。

こうして、第二次攻撃隊に装着していた魚雷を陸用爆弾に変更せよとの命令が出る。

偵察機返電、敵らしきもの10隻見ゆ。巡洋艦5隻、駆逐艦5隻…、空母がいない!

八雲司令官は、空母を伴わないで来るだろうか?と疑問を持っていた。

その直後、敵空母らしきもの補足!

今取り替えたばかりの陸用爆弾を魚雷に再装着せざるを得なかった。

この知らせを受けた岡田先任参謀は、いよいよ空母が出て来ましたなとうめき、「赤城」に攻撃命令を出すしかないかな?と山本は判断する。

第二次攻撃隊の陸用爆弾をもう1度魚雷に付け替える指示がとび、整備塀の懸命の交換作業が続く。

攻撃機発信の連絡が届かない山本は、何か事故が起きているのではないか?と危惧する。

敵空母より発進する攻撃機。

機動部隊も向かいつつあった。

攻撃機は、準備出来次第、発艦せよ!との命令が発せられるが、後5分!と整備兵が叫ぶ。

その時、敵機が襲来する。

敵機の機銃掃射で、次々に攻撃機が大破して行く。

船体も大破し、作戦参謀は負傷する。

山本は、この状況を受け愕然とする。

10時30分、「ヨークタウン」撃沈、しかし、我が方も巡視艇4隻を失い、八雲司令官たちは「長良」に避難する。

陛下に頂いた艦を失い、兵を失った。何とお詫びをして良いのか…と憔悴しきっていた。

参謀長は、司令部に連絡して山本長官の裁断を仰ぎましょうと進言する。

一旦、八雲を部屋に残し、部下と共に廊下に出た参謀長だったが、途中で長官の事が気になり、引き返して観ると、八雲町間が腹を斬ろうとしていたので、慌てて手を押さえ、長官!早まった事をしないで下さい!と諌める。

陛下にお詫びするのだ!と八雲は叫ぶが、この仇はどこかで必ず!と説得する。

その頃、司令部では、岡田先任参謀に内海水雷参謀と三島航空参謀が、このままおめおめと帰れません!と訴えていたが、宇田参謀長は山本に、明日の夜明けまでには4時間しかありませんと報告する。

岡田先任参謀は、作戦命令!と伝え、小島通信参謀(舟橋元)が発信する。

このままでは、陛下には何とお詫びを…と三島航空参謀が言うと、陛下にはもちろん、銃後の人たちにも、この山本がお詫びをする。この程度の被害は、日露の時にもあった。まだ空母は8隻ある!戦局の厳しさは、まだまだこれからだ!と山本は答える。

第一次ソロモン海戦 清算な争奪戦が繰り広げられた。

第二次ソロモン海戦 ガダルカナルの激戦

第三次ソロモン海戦

昭和18年4月3日 司令部をラバウルに移すと、山本長官は自ら陣頭指揮に立つことになる。

ラバウルで挨拶に立った山本は、ラバウルは日本の最前線である。本日よりこの山本も戦う!と述べていたが、その時、長官!河合四郎です!と声をかけられたので、立派になったなと感心すると、爆撃隊分隊長ですと誇らし気に四郎は挨拶する。

姉さんに手紙を書く時は、この山本もよろしくと言ってくれと山本は微笑みかける。

爆撃隊に戻った四郎は、日本が勝つか負けるかの天王山だ!と部下たちに喝を入れ、全員でラバウル航空隊の唄を歌い始める。

明日の出撃機は224機ですと内海参謀から報告を受けた山本は、三島参謀は?が聞くと、病気です。一週間前からマラリアにやられましたと宇田参謀長が答える。

病棟にやって来た山本は、ベッドで寝ていた負傷兵たちに、早く良くなってくれよと声をかけ励ます。

ベッドで寝ていた三島参謀は、松井副官らと共に山本の姿を観ると起き上がり、ベッドの上に正座する。

レントゲンは撮ったか?と菊と、腹部に異常はありません!と三島は答えるが、もう1度、レントゲンを撮ってやって下さいと医者に頼むと、看護婦たちもねぎらい、みんな、掛け買いのない人たちだから、良くして下さいと頼む。

大事にしてくれと三島に声をかけた山本は病棟を後にする。

翌日、飛び立って行く、攻撃隊を見送る山本、内海参謀、松井副官たち。

その後、機体の修理をしていた整備兵の所へやって来た山本は、直るか?と聞き、一機でも半機でも欲しいんだ。頼む!と声をかける。

その後、出撃した攻撃隊から、敵大部隊の攻撃を受けると言う連絡が小島通信参謀に入る。

爆撃地点に到達!全軍突撃せよ!大型輸送船撃沈!巡洋艦、駆逐艦撃沈!輸送船撃沈!ガダルカナル空港大炎上中!と次々に連絡が飛び込んで来る。

帰りを待っていると、一機、又一機と、攻撃部隊が戻って来る。

しかし、味方機の損害も多く、黒板に書き記された戦死者の名前の前に立った山本は1人黙礼する。

東条内閣は何をしている!大本営は何をしている?前線の労苦を他所に、政略ばかりではないか!向うが10機なら、こちらは2機でも3機でも…、大臣にも曹長にも、お伝え願いたい!頼んだぞ!と内地から来た将校に託す山本。

そんな中、松井副官が、食事を持って来て、内地のキュウリですと山本に教える。

そのキュウリを観た山本は、いつまでも内地頼りではいかん。何とか自給自足でやってもらわんとねと呟く。

その後、三島参謀に食事を運んで来た看護婦が、このキュウリは長官から頂い内地のものだそうですよと告げると、えっ!長官が?と三島は感激する。

その後、又山本が見舞いに来たので、先ほどはキュウリありがとうございました富島は礼を言うが、機動部隊で気づいた事はないか?と山本は問いかけて来る。

アメリカの陸軍と海軍は協力していないと思うんだ。そこを突いて行けば、この戦局は有利になると山本は伝える。

翌日、再び飛び立つ攻撃隊を前に、しっかり頼むと挨拶をした山本だったが、四郎が右手に包帯をまいている事に気づくと、大丈夫か?と案ずる。

しかし、四郎は、大丈夫です!と明るく答え、出撃して行く。

そこに岡田先任参謀がやって来て、艦載機を全部引き上げるそうですと山本に伝える。

補充困難なためだそうですと言う内容を聞いた宇田参謀長は驚く。

その後、山本は内海参謀に、前線基地の視察をするので、ブーゲンビルに連絡をしておいてくれと頼む。

そこに、攻撃機から、敵輸送船補足、全機突撃せよ!との連絡が入る。

攻撃中の四郎は、敵弾に撃たれる。

意識が遠のく中、大空に、姉の千代の姿が浮かぶ。

四郎ちゃん!四郎ちゃ〜んと姉が呼びかける声が聞こえたように思った。

あ、姉さん!何とか正気付いた四郎は、我、敵戦艦に突入!と自ら叫ぶと、敵戦艦に体当たりして散る。

戦死者として河合四郎の名が書かれた黒板を前に、机に座っていた山本は憔悴しきっていた。

長岡で、畑仕事をしながら弟の帰りを待ちわびているだろう姉の千代の姿が脳裏に浮かんでいた。

そこに、松井副官と内海参謀がやって来て、ブーゲンビルには明朝6時、ラバウル発、24機の零戦が護衛しますと連絡に来る。

しかし山本は、護衛が多過ぎる。みんな疲れているんだ。6〜9機で良いと指示を出したので、しかし長官、万一の場合…と内海は懸念するが、では9機にと従うと、そうしてくれと山本は感謝する。

翌朝、視察に向かう長官機を見送る参謀や病棟の看護婦、そして三島参謀も見送っていた。

しかしこの時、日程の暗号は解読され、ノックス長官より、襲撃命令が発せられていた。

長官機は、敵機の攻撃を受け、山本五十六長官はのけぞって息絶える。

そのまま長官機は、炎上してジャングルに落ち、爆発する。

ついに山本長官は、志半ばにして帰らぬ人となった。

もし長官が生きていれば、日本は誤りなきを得たであろう。

山本長官の葬儀の模様

山本長官の遺影のアップ

翻る旭日旗


 

 

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