白夜館

 

 

 

幻想館

 

月光仮面 怪獣コング

東映版の「月光仮面」シリーズの1本で、1時間足らずの中編。

タイトルからすると、内容はテレビシリーズでの「マンモスコング篇」に当たるはずなのだが、キング・コングのように巨大怪獣だったマンモスコングの話は、全く別の東映独自の等身大怪人の話に変貌している。

敵の首領を演じているのは、「怪人二十面相」でもお馴染みの加藤嘉なのだが、又、変装シーンがあるので、最後はお得意芸の、前歯の入れ歯を外して、ふがふが言う老人を演じるのかな?と思っていると意外なラストが待ち受けているので、加藤嘉ファンは必見かも知れない。

子供向けの作品のはずなのに、誰に対するサービスのつもりなのか、トルコ風呂やキャバレーが堂々と出て来たり、今の感覚で考えると信じられないような演出が次々と出て来る。

おそらく、この当時のトルコ風呂と言うのは、まだ単なるスチーム風呂の事で、水着姿の女性が付き添う以上の怪し気な行為はしていなかったのかも知れないが、子供にわざわざ教えるような物でもないような気はする。

話の展開もかなり大雑把で、原子爆弾の放射能を防ぐ血清のような「原子抗素体」なる摩訶不思議な物が話の中心になっているのも時代を感じさせる。

初代「ゴジラ」同様、当時、世間で関心が高かったであろう社会ネタを、興行目的で子供用にアレンジし、あげくの果てに、それでモンスターが出来るなどと言うご都合主義の固まりのような設定にしているのがミソ。

どう観ても、元ネタは「ジギルとハイド」のように思えるのだが、「原子」と言う当時の流行り言葉が、何だかもっともらしい物に聞こえる。

最後に、山脇博士が開発した「原子抗素体破壊光線」なる機械も、単なる「懐中電燈」にしか見えないのがご愛嬌。

この当時の、子供向け実写ヒーローものに登場する「光線銃」の類いは、光線を作画合成するなどと言う面倒な事を避けるためか、大抵「懐中電灯」だったような気がする。

途中、警視総監の病室に見舞いに来た客が、「国際暗殺団」などと言う、それまで警察もマスコミも知らなかった敵組織の名前をぽろっと口にしているのに、その場にいる警視総監も警部も全く気づかなかったり、敵の服装のまま捕まり、牢に入れられていた祝探偵が、次のシーンでは、スーツ姿になって牢に入っているなど…とおかしな箇所はいくつもあるのだが、その辺も、子供向けのご都合主義と言うことだろう。

しかし、この作品、見所も多く、冒頭のラジオアナウンサーは、初代ゴジラで鉄塔と共に最後の放送をする池谷三郎さんである。

巨大怪獣風の特撮こそないが、月光仮面がトンネル内に入るや否や起きる爆発など、合成が巧くて、どこまでが実写で、どこまでがミニチュアなのか判別出来ないくらい。

怪獣コングの初登場のシーン、シルエット表現ながら、その笑い声は、どう聞いてもバルタン星人の声である。

意外と、この辺りのイメージが、後のウルトラシリーズなどに影響を与えていたのかも知れない。

又、劇中、カボ子から叱られた五郎八が、「あ〜あ、私は先生になりたい…」と呟くのは、同年テレビでヒットした「私は貝になりたい」と言うフランキー堺のセリフのパロディだろう。

テレビの「マンモス・コング」の用なスケールの大きさはなく、映画の方がいかにも低予算のこじんまりとした展開に収まっているのも、この後徐々に、テレビに映画が観客を奪われる前兆だったようにも思える。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1959年、東映、川内康範原作、織田清司脚本、相野田悟監督作品。

台風25号が午後8時25分、伊豆半島から上陸、中心湿度は960ミリバール、関東地方は戦後最大の脅威にさらされることになる。

ラジオスタジオでは、アナウンサー(池谷三郎)が、台風情報を放送していた。

祝探偵事務所では、台風の目が上空に差し掛かった時、電気が点いたり消えたりしていたので、祝十郎(大村文武)の側に集まって座っていた、袋五郎八(柳谷寛)、カボ子(若水ヤエ子)、少年茂(原国雄)、少女木の実(藤井珠美)らは、怯えていた。

祝探偵は、懐中電灯や蝋燭の準備は良いか?と五郎八に尋ね、大丈夫ですと隣の部屋に向かった五郎八だったが、蝋燭が見当たらないとうろたえだす。

そんな五郎八に、茂が蝋燭の包みを渡すと、意地悪だな、隠すなんて…と五郎八が言うので、さっき買いに行った五郎八さんが店に忘れて行ったと、店の人が届けに来たんだよと茂は呆れる。

その会話を聞いていた祝探偵は、日本一の探偵を目指すなら、自分のやった事をごまかしちゃ行けないよと五郎八に言い聞かす。

その時、ラジオから、5時10分、刑務所から8名の死刑囚が脱走し、内3名はすぐに捉えたが、残りの5名は行方不明とニュースを流しだしたので、祝探偵は耳をすます。

雨の中、非常警戒体制が敷かれ、雨合羽姿の警官たちが車の検問を行っていた。

その時、警視庁の松田警部(須藤健)から電話が入り、又別の事件が起こり、山脇原子抗素体研究所の山脇博士と助手が襲われ、博士は誘拐されてしまったと言う。

祝探偵は、五郎八に留守番を頼むと、自分は山脇原子抗素体研究所に向かう。

現場検証している中、左頬に痣がある助手から話を聞いていた松田警部は、原子抗素体の秘密は実は助手も教えられておらず、まだ完全な物が作れなかったからではないかと聞かされていた。

祝さん、弱ったことになりましたな、敵は博士を誘拐して、その原子抗素体を完成させるに違いありませんと松田警部は言う。

しかし、その原子抗素体と言うのは、この間の新聞によると、原子爆弾の放射能を防ぐ血清のような物だそうじゃないですか?と確認すると、助手は、もちろんそれが第一の目的です。しかしそればかりではないのです。それ意外に途方もない力があると言っておられたのです…と言う。

とにかく万難を排して、博士を救い出さなければなりませんと言うので、その通りですと祝探偵も頷く。

一緒に話を聞いていた祝探偵は、しかし松田さん、博士はもう抗素体を完成していたでしょう?と松田警部に告げる。

その時、鑑識班が、松田警部、大変な物が!と言い、床に落ちていた謎の紙に水をかけてみると、「祝探偵に告ぐ この事件に手を出すな 怪獣コング」と言う文字が浮かび上がる。

足跡を調べようとかけた水で現れましたと鑑識は言う。

祝さん、怪獣コングとは何者でしょう?と松田警部が聞くと、私にも分かりません。しかし、怪獣コングと名乗る男は、山脇博士が原子抗素体を完成するのを待っていたんですと祝探偵は答える。

集団脱獄と誘拐…、私はこの2つの事件は同一犯の仕業だとだと思っていますと祝探偵が言うので、松田警部は驚き、しかし一体何が目的で?と聞く。

それが最大の問題です…、犯行は何を目的としているか…と考えていた祝探偵は、さっきの助手の人は?と松田警部に聞く。

頬に痣があった助手の姿が見えなくなっていたからだった。

その時、ガラス窓に怪しい人影のような物が見えたので、全員そちらに注目すると、影は不気味な笑い声を上げながら振り向く。

顔を見せろ!言え!何者だ!と祝探偵と松田警部が呼びかけると、お前らを追って来たのだと言うなり、急にガラス窓の一部が割れ、そこから銃撃して来たので、祝探偵たちも応戦しながら、ガラス窓の向うを見ると、既に影の主は逃げ去った後で、外窓の鉄格子が凄い力でねじ曲げられていた。

怪獣コング(山本麟一)は車で逃亡していたが、その後を追って来たのは祝探偵の車だった。

車を反転させたコングは、祝探偵の車に正面衝突しようとしたのd、それを間一髪避けた祝探偵の車は、壁に激突して停まる。

車から降りたコングが、祝の事を確認しようとしていると、そこに笑い声が聞こえて来て、バイクに乗った月光仮面が接近して来る。

コングは再び車に乗り込むと逃げ出す。

コングは追って来る月光仮面に気づくと、不敵な笑みを浮かべてトンネルの中に入る。

その後を追って、トンネルに月光仮面が入った瞬間、入口の天井部分が爆発し、トンネルは埋ってしまう。

その頃、国際暗殺団に捕まっていた5人の脱獄囚の1人が、逃げ出そうとして、ドクター(ヨセフ・オットマン)に射殺されていた。

そこに戻って来た首領(加藤嘉)が、ドクター、みんな言うことを聞いたか?と聞くと、一人が聞かずに逃げようとしたので撃ったとドクターは答える。

今や4人になった脱獄囚たちに、お前たちは、俺たちが助けなければ一生出られなかったんだ。お前たちは国際暗殺団の正体を知った以上、ここからは逃げられない。例え、100人が束になってもな…、良いものを見せてやろうと言い、二階部分に上がってスイッチを押すと、二階部分の壁が降りて、その背後に鉄格子が見えて来る。

囚人たちが恐る恐るその奥に目をやると、その牢に入っていたのは観るも恐ろしい化物だった。

それこそが、怪獣コングだった。

コングは鉄格子を掴むとねじ曲げ、外に出てきそうだったので、ドクターたちが拳銃を撃つが、全く倒れる様子は見えなかった。

やがて、又、鉄格子の前の壁が上がり、コングの姿は見えなくなったので、恐怖のどん底に落ちていた脱獄囚たちはほっとし、横から出て来た首領が、どうした?俺に逆らう者は、ただちに、あの怪獣コング様の餌食になるぞ。あの怪物は不死身だ。鉄砲も大砲も通さない。その上、ごらんの通りの怪力だ。どうだ、決心がついたか?それとも、嫌な奴は前に出ろ!と脅すと、脱獄囚たちは、何でもやらせてくれと頼む。

我々はこれから、日本の重大頭脳を次々と消して行くのだ。やがて日本の政治も経済もその機能を停止して、日本は混乱に陥る!我々の狙いはそこだ!と首領は呼びかける。

それから、国際暗殺団になった囚人(花澤徳衛)は郵便屋に化け、「青戸村」と書かれた表札や「東山」と言う表札の側に黒い謎のシールを貼って行く。

そのシールを貼られた青戸村博士(立松晃)がある晩、書斎で勉強をしていると、急に電燈が点滅しだして切れたので、ランプを取り出して、それにマッチで点灯しようとした時、博士の背後に立っていた怪獣怪獣コングが、突然、博士の首を絞めて来る。

続いて、国防長官の東山も同じようにコングに襲撃される。

原子科学界の世界的権威青戸村博士と、東山国防長官が絞殺された事は新聞紙上で大きく取り上げられる。

秘密基地にいた国際暗殺団の首領は、今頃、祝も警察も泡を吹いているだろう。だが我々の仕事はこれからだ!とこう笑し、第三の血祭りは警視総監の秋山だ!と宣言する。

警視庁の「怪獣コング事件捜査本部」にいた松田警部を訪ねて来た祝探偵は、大変な事が起きてしまった。例え何者であろうと我々は草の根を分けても探し出さねばならないと言う松田警部に、そうです。しかし事件はこれからも続くとみなければなりません…と言いながら、自分の家に送られて来た「第三号は秋山警視総監」と書かれた挑戦状を見せる。

それを読んだ松田警部は驚き、総監は八王子に出張されたばかりだ!直ちに緊急手配だ!と命じる。

秋山警視総監(松本克平)を乗せた車を尾行していたのは、山脇研究所にいた痣の男源次だった。

やがて、八王子街道を走っていた総監の車の前に、怪獣コングが立ちふさがる。

後部座席に乗っていた秋山警視総監は、拳銃を撃って応戦するが、全く効かないばかりか、コングは車ごと持ち上げひっくり返してしまう。

秋山警視総監は、一瞬早く外に脱出していたが、コングはそんな秋山に迫って来る。

その時、月光仮面のバイクが近づいて来たので、源次たちは、畜生!生きてやがった!と悔しがる。

秋山警視総監と怪獣コングの間を一旦バイクですり抜けた月光仮面は、反転して来て、コングに飛びかかる。

頭部を負傷したらしき秋山に近づいた月光仮面は、大丈夫ですかと問いかけ、あなたは?と効かれると、月光仮面ですと答え、もうすぐ、あなたの部下が到着するでしょうと教える。

しかし、その時、近くに潜んでいた国際暗殺団の連中が機関銃を乱射して来る。

月光仮面は、襲って来た暗殺団の一味と戦い始める。

やがて、敵わないと気づいた一味の連中が車で逃走したので、バイクで後を追った月光仮面は腰の2丁拳銃を取り出すと撃ち始める。

その時、背後から一台のヘリコプターが接近して来る。

それを操縦していたのは怪獣コングだった。

コングは、操縦席から機関銃を発砲して来る。

一瞬姿を消したと思われた月光仮面だったが、電波塔の上に姿を現すと、接近して来るヘリコプター目がけて発砲する。

ヘリコプターは、電波塔にぶつかり大破する。

秘密基地にいた首領は、コングは月光仮面の前から逃げ出したとドクターから言われ、コングは不死身だ。何か計画があっての事だろうと答える。

逃げ延びたはずの3号がまだ戻っていなかったが、その直後に戻って来て、コングはやられました。ヘリコプターが木っ端みじんになって…と報告する。

首領は、コングは不死身だ。そんなはずはないと否定し、みんなに見せたいものがあるから一号倉庫に集合させろと部下たちに命じる。

しかし、覆面をかぶった3号だけはその場に残り、基地内の様子を探っていた。

一号倉庫の中に集まった手下たちを前に、首領は、国際暗殺団は、一度狙った獲物は必ず仕留める!明日の午後6時、警視総監はこの世から消えるのだと言うと、試験管の中に入っている液体を見せ、この試験官一本分の液体は、東京駅と丸ビルをいっぺんに破壊出来る強力爆薬液だ。明日は警視総監にその威力を味わって頂くと言いながら、スポイトで少量の液体を吸い上げ、床に垂らしてみせる。

すると、それだけで爆発が起きたので手下たちは驚く。

翌日、秋山警視総監は、入院中の病室で、新聞記者の山本(長谷部健)から、総監が襲われたその怪物は何だと思われますか?と取材を受けていた。

分からん…、わしはあんな恐ろしい者は観たことがない。ありゃ、ものすごい力で、拳銃を撃っても何の手応えもないんだと答える。

それを横で聞いていた松田警部は、それは我々が山脇研究所で影だけ観た奴に間違いありませんと教える。

祝探偵はどうしたんですか?と別の汽車から効かれた松田警部は、あの人の事だ。きっと何かを掴んでいるとは思うんだが…と答えるしかなかった。

山本記者が、ところで、八王子街道で長官を救った月光仮面はどうしたんですか?と聞くので、あの怪獣の後を追って行ったんだが…と秋山も分からない様子。

そこに入って来た警官が、醍醐物産の社長長長曽我部さんがお見えになりましたと秋山に知らせる。

さっき、見舞いに来てくれると言う電話をくれたんだがねと秋山は松田に教え、お通ししてくれた前と警官に頼む。

それを潮に、記者たちは全員帰って行く。

財界の実力者と言う長曽我部さんですか?と松田が意外そうに聞くと、興業クラブで会ったんだが、なかなか面白い人だと秋山は言う。

そこに、その長曽我部(加藤嘉-二役)社長がやって来て、大変な目に遭いましたな。ご無事で何よりでした、しかし、全くけしからん事で…などと話しかけて来る。

面目ないことで…、しかし、私まで狙われると言うことになると、次はあなたかもしれませんよと秋山は笑う。

脅かしちゃ困る、わしだってまだ国家のためにしなくちゃならん仕事が山ほどあると言いながら、腰を降ろした長曽我部は、見舞いとして持参した花駕篭を手渡す。

それを受け取った秋山は、華に添えられていたメッセージカードを観ると、これはあなたにだと言いながら長曽我部に渡す。

それを開いてみた長曽我部は「長曽我部一郎 次はお前の番だ! 怪獣コング」と書かれた文字を見て、わしゃ、もうダメだ!と急に怯えだす。

あいつに狙われたら絶対助かる見込みはない!と立上がったので、長曽我部さん、ご心配は煎りません。警視庁は全責任を持ってあなたを御守ります!と松田警部は落ち着かせようとするが、嫌、ダメなんだ。この国際暗殺団の毒牙から誰一人逃れることは出来ないのだ!と長曽我部は室内をうろつく。

そんな事はありません。現にこの私が助かっているじゃないですか!とベッドの上の秋山警視総監が慰めると、分かるものですか!あなただって、今日のうちにも襲われるかも知れないのですと言うので、さしもの長官も、え!今日のうちに?と驚く。

その後、秘密基地の中で無線室に入り込む3号の姿を、他の手下が目撃していた。

電信を打っていた3号は、突然背後から笑い声が聞こえて来たので、思わず手を止める。

いつの間にか後に立っていたのは、首領たちだった。

首領は手下に、3号のかぶっていた覆面を脱がせるが、中に入っていたのは3号ではなく祝探偵だったので驚く。

祝探偵は、そのまま手下に捕まり、山脇博士(増田順二)が入れられていた牢に入れられる。

博士が無事だった事を喜んだ祝探偵が、何をなさっているのです?と聞くと、原子抗素体を破壊する方程式を出せと言われているのですが、これは死んでも奴らには渡しませんと言う。

そんな博士に祝探偵は、6時きっかりに、秋山警視総監が入院している病院が爆破されるのです。爆薬は少量なので、誰にも発見されないでしょうと伝える。

それが爆発をすれば、総監だけではなく、数百人の犠牲者が出る可能性すらあった。

1時10分

病室では、紅茶を入れて来た秋山の娘美恵子(白河道子)が、ステキだわ。まるで恋人にもらったみたいと、窓際の棚の上に置かれていた花籠を観て喜んでいた。

秘密基地の牢の中では、山脇博士と祝探偵が、何とか総監に危機を知らせる方法がないかと頭をひねっていた。

その頃、病室の秋山警視総監も、何ごとか考え込んでいた。

そんな父親を慰めようと、美恵子は、花籠を父親の枕元の台に写し、横にならせる。

牢の壁を崩そうとしていた祝探偵だったが、その背後も岩場だと知ると、五郎八に病院の危機を知らせる寸前で捕まってしまったので、今頃、近くまで来ているはずなのだが…と悔しがっていた。

その頃、基地内のドクターは、新聞社の車が近づいていますが?と首領に報告していた。

首領は、手下2人に、変装して来いと命じる。

山本記者と共に、基地の側まで接近して来た五郎八とカボ子は、おかしいな?先生からここに来るように無電をもらったんですがね…と、何もない場所で迷っていた。

変だね、戦争中はこの辺は、陸軍の高射砲陣地があった跡でね、さんざん空襲されたあげく、今じゃご覧の通り荒れ放題さ…と山本記者は言う。

なるべく遠くへ追い出せと首領に言われた手下たちは、わざとカボ子に発見され、車でわざとらしく逃げ出す。

それに気づいた五郎八は後を追おうとするが、山本記者は、無闇に動かない方が良い。祝先生から何か連絡があるかも知れないからと止めるが、奴らの行き先には、必ずや国際暗殺団のアジトがあるに違いないと言う五郎八は、カボ子をスクーターの後に乗せると、手下たちが乗って逃げた車の後を追って行く。

五郎八たちがつけて来た事に気づいた手下は、来たな…と車の中でほくそ笑む。

1時50分

秋山警視総監は、何も知らず病室のベッドで熟睡していた。

一方、牢に閉じ込められていた祝探偵は、いつの間にかスーツ姿になっており、妙な匂いがしませんか?と山脇博士に言う。

博士が言うには匂いの元はガスだそうで、壁の隙間から漏れている事に気づく。

祝さん、私に良い考えがあります、あなたはマッチを持ってませんか?と山脇博士が言うので、持ってます。博士、火を点けるんですか?と祝探偵は聞く。

そうです。巧くいけばここを爆破出来るかも…と言う。

その頃、手下の車を追って町中にやって来た五郎八たちは、手下が、「トルコセンター トルコ風呂」と書かれたビルに入って行ったので、敵はトルコ風呂に潜り込んだぞ!と言い、カボ子と一緒に中に入ってみる。

ちょっと五郎八が、うちの先生はいつも肝心の時に見つからないんだからな…、全くしようがないな…と、祝探偵のことを嘆くと、うちの先生の悪口言うんでねえの!うちの先生は御清潔で、ご立派で、心からご信頼出来る、尊敬出来るお方ですからね!頭の弱いのも程度がある!とカボ子が言い返して来たので、五郎八はしらけ、あ〜あ、私は先生になりたいなどとぼやく。

山脇博士は原子抗素体の一部だと言うカプセルを3錠持っており、これを服用しておれば、ここを爆発しても、怪我をせずにすむはずですと祝探偵に教える。

その頃、五郎八とカボ子が、女性を横に待機させ、スチーム風呂に客が入っているトルコ風呂の部屋の中を覗いていた。

やがて、彼ら2人が覗いたフロアでは、ドラムが鳴り、トランペットが鳴り響き、全身を金色に塗った男のダンサーが踊っていた。

それにしばらく見とれていた2人は、背後に近づいていた手下に拳銃を突きつけられ、慌てて逃げ出す。

基地内にいた首領は、山本記者だけが残っていたので、構わないからやれ!と部下に命じる。

部下は基地内から機関銃で、外に立っていた山本記者を狙っていたが、そこに、スクーターに乗った五郎八とカボ子が、奴らの計略にかかりましたと言いながら戻って来る。

その五郎八もまとめて手下が基地内から機関銃で狙い、引き金を引こうとしていたが、その瞬間、基地内で大爆発が起こる。

五郎八や山本記者は、周囲の地面から爆発が次々に起こったので、驚愕する。

さらに驚いた事に、爆発の直後、月光仮面が出現し、山本記者と五郎八たちに、秋山警視総監が入院している病院で、自爆装置を発見するんだ。祝探偵は無事だから安心しろ。私は奴らから、爆弾の隠し場所を聞き出さねばならんと言い、吉に戻って行く。

月光仮面は、爆発から助かった山脇博士を助け起こすと、側にいた手下に拳銃を威嚇発砲しながら、時限爆弾の場所を聞き出す。

病院の花籠の中と知った月光仮面だったが、そこに、岩を突き崩して怪獣コングが出現する。

山脇博士は、目を狙って下さいと指示を出す。

月光仮面から目を狙われていると気づいたコングはその場を逃げ出し、後を追おうとした月光仮面だったが、天井が崩れ落ちて来て通路が埋ってしまう。

月光仮面!俺は負けないぞ!警視総監の命はもらうと言う首領の声と笑い声がどこからともなく聞こえて来る。

6時7分前 

6時3分前

総監の病室にやって来た美恵子は、この病院のどこかにお父様の命を狙う爆弾が仕掛けられていると松田警部から連絡がありましたと秋山総監に知らせる。

そこに、山本記者を伴った松田警部が到着し、月光仮面から連絡がありましたと言う。

その頃、バイクに乗った月光仮面が病院に向かっていた。

美恵子は何も知らず、花籠を、お父様、これ、私にくれる?とねだっていた。

その時、窓辺に現れたのが月光仮面で、駕篭の中から時限装置を取り出すと、タイマーを解除し、正に30秒前、危機一髪でした。これが爆発していたら、この付近千メートル四方は跡形もなくなくなる所でしたと松田警部や秋山総監に告げる。

その頃、何とか、秘密基地から脱出した山脇博士に、祝探偵が近寄って来て、原子抗素体のお陰で助かりました。これで警視総監さえ助かれば…と話しかけていたが、そこに、パトカーに乗った五郎八始め、繁や木の実、山本記者や松田警部たちも到着し、先生!と嬉しそうに駆け寄って来る。

僕たちもここが国際暗殺団のアジトだと月光仮面に聞き、警視庁に教えに行き、又、帰って来たんですと、五郎八とカボ子が報告すると、警視総監は?と祝探偵が聞くと、月光仮面のお陰で助かりましたとカボ子が教える。

すると、それは良かったと祝も喜ぶが、木の実たちに、こんな所に来ちゃ行けないな。五郎八が教えたんだな…、悪い奴だと言うので、五郎八は首をすくめる。

その時、警官が近くで発見した置き手紙を持って来る。

そこには、「明日、午後10時に注意せよ。警視総監殺害計画を再び実施する 怪獣コング」と書かれてあった。

翌日、秋山警視総監の自宅は、大勢の警官隊で警護されていた。

9時30分になろうとする頃、総監の書斎に一緒にいた松田警部は、これじゃあ、いかに国際暗殺団でも手が出ないでしょうと余裕の表情だったが、秋山警視総監は、国際暗殺団はもしかすると、私の方に中尉を向けさせといて、わしの次に狙うと言っていた長曽我部さんが危ないじゃないだろうか?と言い出す。

向うの警備は数名しか配置していないと知ると、足りないんじゃないか?電話をかけてくれ、出来れば今夜は、長曽我部さんもここに来てもらった方が良いと秋山は命じる。

その頃、祝探偵は、山脇博士の研究所に来ていたが、そこで、車の陰に隠れていた暗殺団の手下の姿を見かける。

祝探偵事務所で留守番をしていた五郎八は、山脇博士から電話を受け、先生は出かけられましたと答えるが、え?実験の結果が出ましたか!と喜ぶ。

原子抗素体には力の制限が…、どのようにすれば?と問いかけた五郎八だったが、そこで相手の声が途絶える。

山脇博士は、こちらが教えてもらいたい事だと言うドクターに銃で脅され、電話を切ると、これはもらっとくぜと、博士が発明したばかりの原子抗素体破壊光線銃を奪い取ると、覆面をかぶった手下たちと共に博士を実験室から連れ出す。

一方、秋山警視総監の書斎では、10時10分前になっていた。

パトカーに先導され長曽我部がやって来たので、出迎えた松田警部はそのまま秋山総監の書斎に案内する。

その頃、山脇博士を乗せた車の助手席に乗っていたドクターは、もう10時だ…、今頃警視総監は…と笑っていたが、そこで道が違う事に気づき、覆面姿で運転している手下に停めるんだ?と命じる。

すると、運転していた手下が覆面を脱ぐが、その中から現れたのは祝探偵だった。

貴様は祝!とドクターが驚くと、そうだとすれば、貴様たちの行く先は刑務所しかないはずだ。おい、暗殺団の手下共、観念しろ!と祝探偵は車を運転しながら言う。

総監の自宅の庭先で見張っていた松田警部は、山脇博士が暴漢に襲われ行方不明だ。直ちに警視庁に連絡を取って欲しいと言う連絡がありましたと警官から教えられる。

すでに10時を回った事を知った秋山警視総監は、さしもの国際暗殺団も、この厳重な警備では手が出なかったようですなと一緒の部屋にいた長曽我部に嬉しそうに話しかけるが、しかし総監、あなたはすでに、10時以前から、国際暗殺団に捕まえられているのですよと、メガネを外した長曽我部は言い出す。

何ですって?あなたは何をおっしゃる!と総監が驚くと、もう袋のネズミだと言いながら、長曽我部は拳銃を突きつけて来る。

貴様〜!と立上がって相手を睨みつける秋山に、総監!約束通りあなたの命を頂く!と拳銃を向ける長曽我部。

何だと?貴様は何者だ!と秋山総監は声を挙げる。

すると、おい、俺の面を良く見ろ!と長曽我部は言うと急に笑い出し、見る見るその顔は、恐ろしい怪獣コングの顔に変身して行く。

コングは秋山総監に迫って来るが、異変を察知した警官たちが書斎になだれ込んで来る。

美恵子も書斎に飛び込むと、コングの姿に悲鳴を上げながらも、父親を守ろうと、果敢に秋山の元に駆け寄る。

そんな父娘を捕まえたコングは、二人を抱きかかえたまま、庭先から逃げ出そうとする。

その頃、月光仮面はバイクの後に山脇博士を乗せ、総監の屋敷に向かっていた。

総監と美恵子がコングに捕まっている以上、警官隊もうかつに発砲出来ない。

庭に到着していた山脇博士も、原子抗素体破壊光線銃を手にしながら、それを浴びせるチャンスを待ち受けていた。

美恵子の母親も取り乱していたが、警官たちに押さえられていた。

その時、待て!怪獣コング!と言う呼び声と共に、庭先に月光仮面が出現する。

2丁拳銃を取り出し構える月光仮面に、うなり声を上げるコング。

月光仮面はコングの目を目がけて発砲し、コングと戦い始める。

コングはその怪力で、庭の置き石を持ち上げて投げつけたり、大木を引っこ抜いたりするが、目を撃たれていたためか、もう力は弱まっているようだった。

警官隊も発砲を開始、コングがひるんだ時、月光仮面が、先生!今の内!と声をかける。

山脇博士は、持っていた原子抗素体破壊光線銃を、庭木を倒してまだ暴れ続けているコングに浴びせる。

すると、恐ろしい怪獣コングの姿は、国際暗殺団の首領の姿に変身する。

松田警部が、その時やってきたコート姿の祝探偵に、この男は?と倒れていた男を指差すと、総監、醍醐物産の社長長曽我部こと国際暗殺団の首領を逮捕して頂きましょうと言い、助かった秋山総監も頷き、長曽我部が国際暗殺団の首領とは知らなかったと言う。

総監、本当に危なかった、私の不注意ですと、松田警部も詫びる。

山脇博士も祝探偵に、私も今日まで、原子抗素体を破壊する物を作れないでいたのです。原子抗素体が私と違った志の人間を鋼鉄と怪獣のような身体にしてしまうと分かった矢先、この男に盗まれてしまったんですよ…と打ち明ける。

その時、倒れていた首領が目を覚ましたので、松田警部は手錠をかけさせる。

屋敷の門前には、マスコミ陣が殺到していた。

祝探偵が出て来ると、山本記者、五郎八、カボ子が近寄って来る。

大分、難事件だったようですね?と山本記者が聞くと、いや〜…、月光仮面のお陰ですよ、解決出来たのは…と祝探偵は謙遜する。

側にいた松田警部が、月光仮面はどこに行ったんでしょう?と周囲を探し始めると、さっきまでいたんだが…と廻りも不思議がる。

すると祝探偵は、いや、別に不思議ではありません。あの人は又日本に重大な事件があれば、必ず正義の味方として姿を見せてくれるでしょうと言う。

先生、良かったですねと繁と木の実も声をかけて来たので、君たちも来てくれたのかと祝探偵は喜ぶ。

先生!まずはめでたし、めでたしですねと五郎八が言い、今度は私たちの力も大いに認めて下さいねとカボ子も言う。

今や、君たちも一流の名探偵だよと祝探偵は2人を褒める。

では、名探偵の写真を一枚と山口記者がカメラを構えたので、ポーズを取ってみせる五郎八とカボ子。

その時、どこからともなく聞こえて来る月光仮面の歌に全員が気づき、空を見上げた美恵子が、あ、月光仮面だわと指差す。

みんなが夜空を見上げる中、三日月に向かって飛んで行くバイクの月光仮面の姿が見えた。


 

 

inserted by FC2 system