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花のヒロイン 

 

 

 

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猿飛佐助 千丈ヶ嶽の火祭

藤田進が猿飛佐助に扮した忍術映画

1950年の大映作品と言う事は60年代に同じ大映が「忍びの者」シリーズで忍者ブームを牽引する10年以上前の作品と言う事になる。

関ヶ原の戦いをシャモの闘鶏で表現すると言う所から見ても分かる通り超低予算の作品で、山中のセットなども背景は絵を描いたホリゾントである。

「姿三四郎」や戦時中のプロパガンダ映画などで、朴訥ながら人情味溢れるヒーロー像を演じて来た藤田さんが、今度は、戦が嫌いで簡単に死を選ぶ考え方も嫌いな人情味溢れる忍者像を演じているのが興味深い。

終戦後間もない時期の作品なので、戦争や死を美化する考え方を否定しようとしているのだと思う。

大映作品なのに藤田進さんだけではなく加東大介さん、月形龍之介さんなども出ているのは、まだ「五社協定」が出来る前だからだろう。

注目すべきは、この作品での戦のときの忍者佐助は鎖帷子の衣装を着ていると言うことと明るい色の忍び装束が出て来ることだろう。

明るい色と言うことで分かるだろうが、これを着ているのは女性と言う記号的表現だと思う。

戦後の忍者映画の中で女性忍者が登場する早い時期の作品ではないだろうか。

劇中ではまだ「くノ一」と言う言葉は使っておらず「女間者」と言っている。

佐助の移動法も変わっていて、ジャンプして姿を消すと少し先に身体が現れ、又ジャンプして姿を消し…と言う風に、小規模なテレポーテーションを連続させているようにも見えるし、単に大きくジャンプして移動している間、スピードが速過ぎて見えないだけと言う風にも見える。

青海入道と一緒に旅をする時も佐助はこの術を使っているので、スピードは普通に歩いて付いて来る青海入道より若干早いくらいにも見え、あまり大した忍術ではないようにも感じる。

手裏剣は小柄のようなもので表現しており、まだ十字手裏剣や八方手裏剣、くないのようなものは出て来ていないが、手裏剣が次々に木に刺さったりする描写はある。

さらに水中撮影もあり、古くさいトリック撮影だけではない新しさがあり、その内容や技術から見ると完全な子供向けとも言えないし、かと言って大人物とも言いにくく、今で言うファミリー映画と言った所か?

惜しむらくは、玉垣と言う伊賀の女忍者役の女優さんがきれいなのだが名前が分からない。

どう見てもこの人がヒロイン役なのだが、主要なキャストに入ってないのが不思議。

悪役を演じる月形龍之介さんは重厚で、これを見るだけでもこの作品は価値があるようにも思える。
▼▼▼▼▼ストーリーを途中まで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
1950年、大映、富田常雄原作、安達伸生脚本+監督作品。

炎の中に浮かび上がる巻物に「猿飛佐助」の文字が入っている。

その巻物が開くと中には山の絵が描いてあり、そこに「千丈ヶ嶽の火祭」の白抜き縦書きタイトルが重なる。

巻物の絵が横移動する中、キャスト、スタッフロール

世は平和なき安国の戦国時代ー(シャモの闘鶏を背景にテロップ)

慶長5年9月 石田三成の西軍 徳川家康の東軍 関ヶ原に合戦す

真田幸村は西軍に組して徳川秀忠の軍を苦境に陥らす

ここ、信州小縣大明神岳の山中ー(とここまでテロップ)

白髪の老人と戦う背負い刀の猿飛佐助(藤田進)

どちらも鎖帷子に鎧を身に着けていた。

白髪の老人が姿を消すと佐助も姿を消し、別の場所に双方出現して戦いを続ける。

白髪の老人が刀を投げつけると、大きく後方へジャンプして避けた佐助は、老人が気を失ったのを見てにやりと笑い、側に近づく。

老人の様子を覗き込んだ青年は、勝負はついた、わしの勝ちだと言うと、その場を立ち去ろうとする。

すると倒れていた老人が待て!と呼びかけ、さ、とどめを刺せ、とどめを…と要求して来たので、いや、わしは人を殺すことは嫌いだ…と佐助が言うと、卑怯だ!逃げるのか!と老人は言う。

すると佐助は、逃げはせん、勝負が終わったから帰るんだと言い聞かせ去ろうとするが、その袴を掴んだ老人は、刺せ、刺してくれ…、武士の情け!と懇願して来る。

すると佐助は、いやわしは生まれつきの武士ではない、断ると頭を下げるので、だが忍術伊賀流の鑑札もあるこの遠見伊賀守が勝負に負けておめおめと生き恥が晒せるかと老人が言うので、いくら術比べに負けたからと言って、いちいち死んでいては、命がいくつあっても足らんと佐助は言う。

すると老人は、分からん、お前には武士の面目など…などと言うので、面目か…、だから武士は嫌いだ…と呟いた佐助は、ではご免と言い残しその場から駆けて姿を消す。

後に残された伊賀守は、自分で小刀を抜くと首を突いて自害する。

そこに父上!と呼びかけながら近づいて来た娘が、父上!どうしてこのようなお姿に?と抱き起こして聞くと、玉垣!わしは悔しいが負けだ、そればかりか死ぬ以上の恥ずかしめを受けた…と虫の息の中で伊賀守は答える。

そんな伊賀守の前に、あいては?相手は何者ですと跪いて聞いて来たのは室賀信賢(月形龍之介)だった。

信賢(のぶかた)か!と気付いた伊賀守は、相手は甲賀流の猿飛佐助…と知らせる。

わしは年老いて破れた…、そなたの術ならば必ず彼奴に勝てる…と言いながら伊賀守は、鎧の下の懐から巻物を取り出し信賢に渡す。

信賢は絶命した伊賀守の前で、私は真田一門の1人1人の命を奪い、先生や父の霊前に餞します!と誓い、矢を地面に突き刺す。

横で跪いていた玉垣も、父上!必ず猿飛佐助に勝って伊賀流の恥をそそぎますと言い、同じように矢を地面に突き刺す。

すると背後に控えていた家来も進み出て、この与作(加東大介)も若様のお供をして必ず室賀の御家と大先生の恨みを晴らしてみせますと誓い、矢を突き刺すと、3人で合掌をする。

すると背後に控えていた家来も進み出て、この与作(加東大介)も若様のお供をして必ず室賀の御家と大先生の恨みを晴らしてみせますと誓い、矢を突き刺すと、3人で合掌をする。

側に落ちていた六文銭の旗印を拾った信賢は、それを引き裂いてみせる。 関ヶ原の合戦は西軍の敗北となり真田幸村の一党は紀州九度山に蟄居を命ぜられる(と山裾の田んぼで農作業をする男たちの姿を背景にテロップ)

農作業をしていた佐助は、ああ良いなあ〜働くってことは…と感動していた。 わしは百姓をしていると全くのびのびする…と佐助が嬉しそうに言うと、又始まった!佐助、お前はやっぱり…と側で働いていた三好伊三入道(玉置一恵)がからかうと、三入道、止せ止せ!武士の心は武士でないと分からんと由利鎌之助(伊達三郎)が後ろから言葉をかけて来る。

しゃがんで又稲刈りを始めた佐助が入道を見上げてにたりと笑ったので、だが由利、真田一門の中にも…と入道が反論しようとすると、待て待て今は畑の季節さ、今は野良仕事をしていてもだ、今に合戦となれば、あの御旗を押し立てて手柄を立てる…と由利は、近くに集めていた旗指し物の方を指して言いかけるが、その時、止めろ!見回り役浅野但馬守の犬、いつまでも叩く庄屋の陣九郎だと言い佐助が口止めする。 入道と由利が陣九郎を探してキョロキョロすると、止せ止せ、忍術者の目は忍術者でなければ分からんと佐助は笑う。

それに使う大阪辺りでも日増しに活発になっておる…、そうなれば戦…と但馬守と陣九郎がしゃべりながら歩いていた時、近づいて来た女に気付いて陣九郎に立ち去るよう命じる。 事情を知った陣九郎は、なるほど…と笑いながら山の方へと去って行く。

通り過ぎようとした娘に、おとね(相馬千恵子)殿!お出かけかな?と呼びかけた但馬守は、どちらに行かれる?と嫌らしい笑いを浮かべながら近づいて来る。

殿様の御用でちょっと畑まで…とおとねが答えると、と言って、又佐助の顔を見に…と但馬守はからかう。

失礼しますと挨拶しその場を去ろうとしたおとねに、これ!と言い寄りながら但馬守が手を掴んで来たので、何をご冗談を!とおとねは振り払おうとするが、冗談ではない、真剣じゃ!とにやつきながら但馬守はおとねに抱きついて来る。

放して!と叫んで逃げようとするおとねを近くの大木に押し付けようとした但馬守だったが、その時、手裏剣が幹に突き刺さり、但馬守の髷が落ちる。 その時、木にしがみついていたおとねが、あ、佐助様!と喜ぶ。

佐助は途中姿を消しながらあっという間におとねと但馬守の前に近づいて来る。

失礼…と但馬守に詫びた佐助は、いやと言うのはつまりいやだと言うことだと思って、つい…と言いながら、幹に刺さった手裏剣を抜く。

佐助様、殿様が…とおとねが言うと、聞こえた、忍術の耳には真に困ると愚痴った佐助は、ごめん!と但馬守に一礼するとおとねと共に走り去る。

真田幸村(香川良介)は一子大助(久原亥之典)と共に真田紐を編んでいる所で、近くこの真田紐の行商に黎明を出してやりたいと思ってな…と、やって来た佐助に話す。

それを聞いた佐助は、みんな喜びましょう、百姓が嫌で嫌で堪らぬ合戦キ○ガイばかりですからとと答える。

うん…、だが今度の行商は心の目、心の耳を働かせて、天下の京成をあらかじめ探るのが目的だ、とにかくこのままでは1年と持つまい…と幸村は言うので、佐助も神妙になり、合戦ですか?と聞くと、せねばなるまいと幸村は答える。

佐助が、合戦はいやだな〜と呟くと、嫌か?と幸村が聞くので、大嫌いです!と佐助は即答する。

その頃、武士と言うのはなかなか辛い物じゃて…と飲み屋で酌婦相手にくだを巻いていたのは三好清海入道(山口勇)だった。

どうして?と酌婦が聞くと、女子に恋も出来ず我慢をして来たが、おかめ、わしはお前を見てからはもう!と入道が言うので、急に笑いながら席を立とうとした酌婦のおかめ(美奈川麗子)だったが、その手を引き膝の上に抱いた入道は、嘘ばっかりと言うおかめに本当じゃと口説く。

おかめは、おようさんに散々うれしがらせをおっしゃっているくせに…と嫌みを言うと、何、あれは本のお世辞だけだよと入道は笑ってごまかす。

そこに客を連れて入って来たおようが、へえ、お世辞をね…と声をかけて来たので、およう、そこにいたのか!と慌てた入道は、急に皿の肴を食べながらうつむいてしまう。

おかめはそんな入道を笑いながら、お用が連れて来た客に目で合図を送る。 姐さん、お安くないなと笑いながら、おようの肩を叩いたその旅人風の客は変装した室賀信賢だった。

いいえ…と否定したおようは、嫌らしい生臭坊主、さっさとお帰り!と入道に悪態をつく。

急に団扇で仰いでごまかした入道は、席を立とうとしたおかめに、あ、おかめ、河原に出て涼まんか?と声をかける。

河原に付いて来たおかめは、いつも立派な身なりの入道様が何故紐の行商などに御出でになさるの?と聞くと、それはその〜…と入道は答えに窮する。

あまり情けないではございません?とおかめがからかうと、そこじゃて…、紐の行商と見せかけてな…と入道が言うので、本当は?とおかめが先を促すと、つまり…と周囲を見回した入道は、心の目、心の耳を働か…と言いかけた所で頭に泥の礫が投げつけられる。

誰じゃ!と入道が周囲を探すと、又顔に泥を投げつけられたので、無礼者!と言いながら刀に手をかけ走り出そうとした所で足をすくわれ転んでしまう。

その時、草むらから出て来た佐助が、入道、帰ろうと言うので、何だ佐助か…、こいつ、無粋な奴じゃとぼやきながら入道は起き上がる。 だがあの女はもうおらん…と佐助が笑うと、確かにおかめの姿はもう見えなかった。

あの女はいかん、もう諦めろと佐助は言い聞かすと、どうして?と入道が聞くので、あれは徳川の女間者だと佐助は教える。

何!と入道が驚くと、罠にかかって危うく口を滑らす所だったぞと佐助は注意すると、そうか…、うかつだったな〜と入道は頭を掻いて反省する。

しかもあの女は伊賀流の忍術者だと佐助が指摘すると入道はえっ!あのおかめが?とあっけにとられる。

その夜、部屋で書き物をしていた幸村は、どこからともなくヤモリや蛇が部屋に入り込んで来たのに気付き筆を留める。

そして、傍らに立てかけていた刀を取ると、迫って来る蛇に向かって構える。

その時、部屋の明かりが消える。

闇の中で気配を感じ、窓の所でえいっ!と斬り下ろした幸村は、誰かおるか?よ呼びかけ、返事があると明かりを持て!と命じる。

くせ者でございますか?と明かりを持って来た家人が聞くと、うんと答えた幸村は佐助を呼べと命じる。

忍び装束のくせ者が屋敷の屋根を移動していると、そっと武蔵が石垣の方から近づく。

忍び装束のくせ者が屋敷の屋根を移動していると、そっと武蔵が石垣の方から近づく。

森の中に降り立ったくせ者を佐助も木々の間を縫って追うと、相手は気付いたらしく、手裏剣を投げて来る。

佐助も手裏剣を投げると、敵は逃げ出したので佐助が後を追う。

逃げる忍び装束のくせ者、それを追う佐助をレール撮影で延々と追う。

逃げ切れぬと判断したのか、敵は止まって佐助に相対峙すると、刀を抜いて斬り掛かって来る。

少し組み合うが、姿を消して逃げようとした相手に、まだ追うか?ここまで来たらお前の負けだ、潔く渡せ!わしの勝ちだ、行くぞ!と佐助は呼びかける。

それを合図に両者は同時にジャンプし姿を消す。

敵は川に飛び込み水中を泳いで逃げようとしたので、佐助も飛び込んで水中を追う。

水中で組み付いた佐助が敵の衣装を剥ぐと、長い髪が現れる。

敵は女で玉垣だったのだ。

両者はその後も水中での追跡戦を続け、力尽きた女を岸へ挙げて焚き火の火で衣装を乾かしてやることにする。

玉垣は横たわっていたが気がついて起き上がる。

それに気付いた佐助は、女と知っていたらこんな乱暴なことはしなかったと弁解する。

玉垣は着物の乱れを気にしているので、これで間に合うだろうと言い、佐助は刀の縛り紐を投げ与える。

その紐を帯代わりに玉垣は着物を縛る。

女では男に敵わないのは当たり前だ…と佐助は玉垣の方を見ないようにしながら言う。

諦めて取った物を渡すが良いと告げ、今日はわしが勝ったが、明日はお前が勝かもしれん…、さ、出せ!と佐助は右手を出して迫る。

すると、玉垣はその場に泣き崩れるので、苛立った策ヶは、何故出さぬ?出さねば裸にしても…と言いかけて止める。

すると覚悟を決めたのか、玉垣はお渡ししますと言い、あそこですと近くの木の枝を見やる。

そこに手裏剣で串刺しにした書状があったので、抜いて、なかなかやるな、お前も…と苦笑しながら手裏剣を投げ捨てると、玉垣の方も嬉しそうに微笑んだので、佐助はちょっとバツが悪くなる。

書状を開いて中を確認した佐助が笑い出したので玉垣は不思議がるが、起きて来た玉垣がその書状を覗いてみると、中に描いてあったのは「鳥獣戯画」であったので玉垣は恥じる。

わしの御大将はな、こう云う人だと書状を見せながら佐助は笑う。

こんな物1つでお前はわしと一晩中の命掛けの渡り合いをしたのだと佐助は指摘し、お前の負けだ…、わしもだと言って又笑い出す。 すると玉垣が急に手を付いて、お慈悲です、私を殺して下さいと言って来る。

何故だ?と佐助が問うと、この上はおめおめ生き恥を晒せませんと言うので、伊賀流では勝負に負けると必ずそう言うのか?と佐助は聞く。

それともお前は遠野伊賀守の娘ではないか?と聞くと、違います!違います!どうか死なせて下さい、お願い!と玉垣は懇願して来る。

いくら伊賀流と言っても、負けたからと言って命を捨てるには及ばん、さ、行くが良い、ぐずぐずしてると人目につくと佐助は優しく言い聞かす。 それを聞いた玉垣は、ではお屋敷に引き立てもせずに…と怪訝そうに聞くので、何、これさえ手に戻れば申し訳が立つだろうと笑顔で言いながら、佐助は書状を懐にしまう。

お見逃しなさるのですか?と玉垣が聞くと、うん、折が会ったら又勝負しよう…と佐助は応え、立ち上がると刀を腰に差し、ではご免と言い残して立ち去って行く。

その時玉垣が、あ、お待ちくださいませ!と呼びかけたので、何だ?と佐助が振り向くと、所詮ない命をお助け下さった貴方様、どうぞ何なりとお使いくださいませと玉垣は頭を下げて来るので、入道ではあるまいし、その手には乗らんと佐助は断ると、いいえ、貴方様のお人柄を見込んでと言うので、止せ止せ、この猿飛佐助はまだ袋返しの術なんかにはかからんぞと答える。

そして、ではご免!と再び言い残し、ジャンプして姿を消しながら佐助は遠ざかって行く。

屋敷に戻った佐助は幸村から、それより佐助、今夜入道と発ってこの絵図面を大阪城へ届けてくれと依頼される。

その仕事を引き受けた入道だったが、その足で又凝りもせずおゆうに会い膝枕に頭を乗せながら、佐助もおとね殿と十分別れを惜しんでいるであろうなどと言っていた。

じゃあ私たちもしっぽりとね…とおゆうは言い、徳利を摘んだ時、部屋の隅で奇妙な物を目にする。

畳の上に大量の蛙が集まっておりぴょんぴょん飛び跳ねているではないか! それに気付いたおゆうは悲鳴を上げ、持っていた徳利の酒をねていた入道の顔に浴びせかけてしまう。

どうしたんだよと入道が抱きついて来たおゆうに聞くと、あれ!あれ!と言うのでそちらへ目をやると、大量のカエルが自分たちの方へ這って来ていた。

すると笑い声が聞こえて来て、開け放っていた窓框に佐助が出現する。

一方、夜道を1人寂しく帰っていたおとねの背後から口を塞ぎ、草むらに押し倒した浅野但馬守は、おとね殿!声を立てるとこれだ!と刀を抜いて突きつけながら迫る。

先ほどからそなたの帰りを待っておったのだと言いながら抱きつこうとしたので、おとねは悲鳴をあげるが、その時、木の陰から棒のような物が振りかざされ但馬守を打ったので、誰だ!と肝をつぶして但馬守が立ち上がると、木の陰から編み笠をかぶって杖を持った修行僧のような人物が姿を現す。

やけになった但馬守は刀で斬り掛かるが、あっさり杖で額を殴られ気絶する。

ありがとうございましたとおとねが礼を言うと、危ない所、ちょうど良かった…と答えた修業姿の男は室賀信賢だったが、もちろんおとねが知る由もなかった。

真田屋敷へお帰りかな?と信賢が笑顔で聞くとはいとおとねが答えたので、お送りしようと信賢は申し出る。

道すがら、青海入道が今夜旅に出たとか?行く先をご存知かな?とさりげなく信賢が聞くと、おとねはいえ…あの…存じませんけど…、一体どなた様で?と相手を怪しんで答える。

すると信賢は見知りの僧ですが、何なら伊三入道様に言いながらおとねが振り返ると、今隣にいたはずの信賢は疾風のように遠ざかって行く所だったので怯える。

一方、ジャンプして姿を消しながら旅を続けていた佐助に歩いて付いて来た入道はすっかり疲れ果てていた。

ああ、お前みたいに術で飛び跳ねる奴と一緒じゃ全く汗だくだ…と、岩肌に腰掛けた入道はぼやく。

では入道、明朝六、住吉の両空寺で落ち合おうと佐助は提案したので、良しと承知する。

しかし佐助と別れた入道は信賢に捉えられてしまう。

縛られた入道を前にした信賢は、死にたいか?死ななくても殺してやる!と言い、錫杖を両手で持つ。

そして、真田に滅ぼされた室賀信敏の一子、信賢が刀に込めた恨みの第一番は三好清海入道、貴様だ!と叫んだ信賢は杖で入道を殴り始める。

亡き父上もお聞きください、真田一族に代え、この仕事の音!と言いながら何度も杖を打ち据える。

八大地獄の鉛の首を!と打っていた信賢が、斬る!と言った瞬間、身を避けた入道は側にあった川に飛び込む。

その後、両空寺にやって来た信賢は、佐助が近づいて来たのに気付くと、大きくジャンプして渡り廊下の屋根裏に飛びついて貼り付く。

その時、大量の鳩が飛び立ったのに気付いた佐助は異変を察し、周囲を警戒しながら側にあった石灯籠の陰に身を潜める。

その時、着物を頭にかぶった女人が石灯籠の側を通り過ぎ、旅の姿にお気をつけなさって…と言葉をかけ通り過ぎたので、ありがとう、おかめ殿!と佐助は礼を言う。

その時、裏切ったおかめの首筋に長い針が刺さり倒れ込んだので、佐助が抱き起こして木の陰に引き込む。

さらに信賢が…j港裏から手裏剣を投げつけて来たので、佐助は木の陰に身を隠してそれを避ける。

そして佐助も手裏剣を投げ返したので、信賢は渡り廊下に降り立って火薬玉を投げて来る。

佐助は大きくジャンプして寺の本堂の入り口に到達し、信賢との距離を縮めて互いににらみ合う。

その時、佐助〜!と呼びかけながら入道が近づいて来たので、それに気付いた信賢は逃げ出したので、佐助もその後を追う。

渡り廊下ら飛び降り、松林の中に姿を現した信賢は火薬玉を投げて来たので、佐助はそれ以上深追いをするのを諦め、強い奴だ、伊賀流にもあんな達人がいたのかと感心する。
 


 

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