白夜館

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花のヒロイン 

 

 

 

幻想館

 

七色仮面 キング・ローズ 悪魔の薔薇

往年の人気番組で東映初の仮面ヒーローもの「七色仮面」の劇場用編集版。

当時はまだTVの普及率が低かったので、東映が本来TV放映用に作った子供向け30分連続テレビ映画を、TVで放映後再編集して映画館でもう一度かける「東映娯楽版」と言う子供だましの安上がり興行をやっており、東映の劇場版「月光仮面」などはTV版を作っていた宣弘社作品とは別物で、東映が独自に映画用に見せ場を盛り込んだ新作だったが、この「七色仮面」は30分連続TVシリーズの本編部分を2話分繋いで50分弱程度の尺にした添え物中編であり、話は冒頭から途中くらいまでで完結していない。

続きはおそらく翌々週、同じ映画館に又見に来てね…と言う連続活劇風の興行の仕方だったからだ。

内容が犯罪捜査物ということもあり、パトカーなど劇用車や警察関係の衣装、セットなどがいろいろ登場するので、おそらく当時の東映が「警視庁物語」など劇場用映画で作った刑事もののセットなどを流用して作っていたのではないかという気がする。

ちなみに、劇中、羽田空港のロビー内のセットが出てきたりするが、TV作品用に作ったとは思えない豪華さなので、何か航空物の映画の流用ではないかと探してみたら、同年9月、高倉健さん主演の航空サスペンス映画「高度7000米 恐怖の四時間」が公開されているので、時期的にこの作品のセットではないかと推測する。

「月光仮面」と同じ川内康範さんの原作で、おそらく公開以前の子どもたちに人気があったと言われる変装名人の名探偵「多羅尾伴内」シリーズ(その原点は怪盗ルパン)や「明智小五郎対怪人二十面相」辺りをヒントにした作品ではないかと想像するが、この作品、アクションもスペクタクルもほとんどない上に、子供が活躍する設定でもなく通常の刑事物に近いので、当時の子どもたちに取ってみれば基本退屈だったのではないかという気がする。

本作でアクションらしいシーンと言えば、逃走する犯人の車の屋根に七色仮面がへばりついているというものがあるが、「西部警察」などでもよく使われていたこのアクション、この当時からやっていたことが分かる。

今でこそ、変身ヒーローといえば東映と言われるほど子供向け実写映画は東映の稼ぎ頭に育ったが、当時は子供映画の模索期というか、子供向けは意外と金になると分かっただけでまだ手法は確立しきっていなかったのだろう。

一応、探偵もの+スーパーヒーロー物という仕掛けで、話の展開は、当時東映が得意としていた刑事物に似た雰囲気なのだが、事件は子供だましのあっけないもので、敵は超能力や超兵器のようなものを持っている訳ではなく、単なる普通の泥棒や強盗程度の悪人による通常の犯罪なので、正義の味方側が超能力を駆使するスーパーヒーローである必然性がなく、大人の感覚で見てしまうと敵も味方も互いに奇妙なマスクをかぶっている変人同士のコスプレ合戦と言う風にしか見えない

この当時のマスクヒーローは、TV版「スーパーマン」や明智小五郎や多羅尾伴内の影響もあったのか総じておじさん設定なのだが、マスクヒーローを演じる役者が若返るのはこの「七色仮面」の新シリーズ「新七色仮面」を演じた千葉真一さん辺りからではなかったかと思う。

月光仮面や七色仮面が2丁拳銃を武器にしているのは、当時の西部劇やガンブームが無関係ではないような気もする。

多羅尾伴内が特に子供を意識して作られていたわけではないのに子供を熱狂させたのは、そのあまりにも荒唐無稽な設定、そのバカバカしさが子供に受けたらしいのだが、この「七色仮面」はどう考えても最初から古い子供向きの漫画のような設定を意識して作られているため多羅尾伴内ほど荒唐無稽や意外性のインパクトがなく、大人が見るにしては現実味に乏しすぎ、物足りない世界観になっているような気がする。

事件そのものもなかなか起きないので子供はヒーローが出てくるまでに飽きてしまうと思う。

現場検証の場面などはエキストラも動員し、大人向けの刑事物さながらの画作りになっているのだが、連続スタイルだからということもあるが子供向けの30分番組としてとにかく見せ場がなさすぎる。

今見ると、蘭探偵が事件を予め予知していたような行動を取っているようにしか見えなかったり、一介の新聞記者が警察も知らない宝石商に何故か近づいたりと、行動に不可解な点が多く、説明不足すぎというか、ご都合主義も極まれりといった感じ。

ちなみにこの当時の子供向け作品に出てくるヒロインは、必ずベレー帽をかぶっているような気がする。

当時の流行りだったということなのだろうか? この作品に登場する三子というヒロインは、主人公のライバル探偵の助手なのだが、ベレー帽にメガネの明るい少女といういかにもなキャラクターになっているのだが、こうした事件に率先して首を突っ込みたがるおてんば型のヒロイン像の原型は「スーパーマン」のロイス・レインではないかという気がする。

敵の一味が自分たちのアジトの中でさえ全員覆面をしているのに、外に出るときはサングラス姿になるというのも良く分からない。

アジト内では仲間同士の判別も出来ないため、良く捜査側の人間が覆面をかぶって部下に化けてアジトに潜り込むというお決まりのパターンになったりするのだが、子供向けの仮面ヒーロー物特有のバカバカしい設定ながら、「スター・ウォーズ」のルークとソロたちがデス・スターに侵入する時、ストーム・トルーパーの鎧を着て敵に化けたりという例もあり、洋の東西を問わず、かなり昔からあるアイデアということかも知れない。

さらに、当時の東映の脇役常連だった岡部正純さんや杉義一さん、さらには当時の大部屋の二枚目や美人のような役者さんなどが出ているので、当時の東映内部の役者状況がわかって面白かったりする。

「地獄大使」で有名な潮健児さんなどもこのTVシリーズの常連だったような気がする。

何しろエピソードの冒頭部分を見ただけなので全体評は出来ないが、当時はこれで視聴率が取れていたということに驚きを覚える。
▼▼▼▼▼ストーリーを途中まで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
1959年、川内康範原作、結城三郎脚本、和田篤人監督作品。

海原に昇る太陽を背景に企業クレジット

宇宙空間にくるくる回る地球の遥か彼方より流れ星が飛んで来て画面中央にぶつかると、2丁拳銃を構えた七色仮面が現れる。

正義の使者 七色仮面!と七色仮面が名乗りを上げり2丁拳銃を発砲する。

「七色仮面」の主題歌とともにタイトル 銀座 そんな街角の一画に、気象庁発表の台風情報をお伝えします…と電気店に置かれた商品のラジオからニュースが流れてくる。

その電気店では台風に備えショーウィンドーの補強などを始めていた。

台風7号は午前9時現在、四国南方海上を毎時35kmの早さで北東に進み、その中心気圧は870mb、中心付近の最大風速は60m、中心から半径300km以内は風速30m以上の暴風雨となっています。

同じニュースを流していたカーラジオを消した車の運転手は、大分大きいらしいですね…と台風の話を客にする。

この分じゃ又相当荒れるかな?と運転手が案じると、後部座席に乗った客東都新聞記者川上(長谷部健)は、ん?無事にそれてくれればよいが…と窓の外を見ながら返事をする。

タクシーは東亜ホテルの玄関口に到着する。

フロントにやって来た川上は、受付係に東都新聞の者ですが…と身分を明かし、野毛村さんは?と聞く。

受付係(南川直)は、あちらでございますとロビーの奥の方を指す。

そこでは既に他社の記者たちが集まっており、野毛村夫妻に質問をしていた。

野毛村さんの孤児救済のために私財を投ずるというこの発表は、混乱した世相に対する一服の清涼剤と言うべきだと思いますが?と質問した記者は録音機のマイクを野毛村に向ける。

私はただ祖国日本に対してご恩返しがしたかったのですと、マイクを向けられた野毛村(大友純)は謙虚に答える。

実に33年の長い間、遠い南米にあって祖国に何ら尽くすことがなかった…、今度の帰国に際して私はできるだけのことをしたいと…、こう考えておりますと野毛村は述べる。

基金の具体的な使用法については?と記者が聞くと、私の1000万円だけではもちろん孤児救済には十分ではない、ただ私の行為をきっかけとして日本の金持ちが社会事業に関心を持つようになってもらいたいと思うのですと野毛山は言う。

なるほど!とマイクを向けていたインタビュアーが頷くと、これは全国民的問題として訴えるべきだと別の記者が提案する。

その時、野毛山さん、この問題は必ずあなたの志に沿うように我々で努力しますと川上が他社の記者たちを見ながら発言する。

何分宜しくと野毛山が言うと、ところで野毛山さん、お嬢さんからなにか一言…と川上が勧めると、笑いだした野毛山は、いつも皆さんから間違えられるんですが、実は私の妻ですと答えたので、いやあこれは大失敗だ、大変失礼しました!と立ち上がった川上が恐縮して詫びる。

その野毛山のインタビューを金有探偵事務所のテレビで見ていた助手荒井三子(小林裕子)は、きれいな人だな~、川上さん張り切ってるわと野毛山夫人のことを羨んでいた。

では改めて奥さんから日本の初印象について何か一言…と川上が水を向けると、野毛山の娘と間違われたことを嬉しそうな野毛山夫人(岡田敏子)は、そうですね~、想像していたよりも大変素敵ですわと答えるが、その時突然画面が乱れたので、金有左門(藤山竜一)は立ち上がってTVを消しに行く。

すると三子が33年なんてちょっとした浦島太郎ですねと話しかけると、うんそうだよ、全くの浦島だよ、金の使い方を知らねえやつだ…とバカにしながらTVのスイチを消した左門は所長の机に座る。

あらどうして?と三子が不満そうに聞くと、ええ?そうは思わんかね?つまりだ、年々増加する凶悪犯罪、そのためにわしは夜の目も寝ずに…と左門は威張りかけるが三子が睨んでいるので、昼寝は時にはするがね…と言い直したので、三子はおかしそうに笑い出す。

遁走しているわけだ、孤児院よりまず探偵学校じゃ!と気を取り直した左門は力説する。

なるほど!そういうことになると、校長はさしずめ金有先生ですね!と三子がお世辞を言うので、三子もお世辞を言う年頃になったなと左門はまんざらでもなさそうな笑顔で言う。

あら、これ本気ですよと三子が言い返したので、そうムキになるところなんかは、可愛い子だ!と左門はいやらしい笑いを浮かべ、宜しい!荒井三子を新教授に任命すると左門が命じたので、三子も上機嫌になり、ありがたき幸せ!と礼を言う。

貨幣局通用門から一台の現金輸送車が出発する。

助手の山田(岡部正純)がラジオを回し最新の天気予報を聞く。

中心気圧は870mb、中心より半径300km以内は風速30m以上の暴風雨となっておりますとニュースは報道する。

なお四国沿岸ではこの台風のため、死者8名、行方不明12名、家屋の全壊30戸、堤防の決壊…と続けていたラジオのスイッチを運転手の谷村(杉義一)が切ってしまったので、山田は怪訝そうに谷村の顔を見る。

ちぇ、嫌な天気になりやがった…、うまく海上に抜けてくれれば良いんだが…と山田が愚痴をこぼしても谷村は全く相手にしなかった。

ねえ、谷村さん!と話しかけても谷村は無視したまま。

やがて現金輸送車の進路が違うので、谷村さん、これは道が違う!集銀はまっすぐ行かなくちゃと山田が指摘するが、たまには違う道も気分が変わってよいだろうと谷村は平然と答えるので、そんなことして…と山田は狼狽するが、年がら年中同じ道じゃクサクサすると谷村は吐き捨てるように言う。

山田はそんな谷村の様子に違和感を感じ、いつもの谷村さんと違う!と膨れると、そう思うか?と谷村が言うので、そりゃそうですよ、僕が一緒に乗るようになってから始めてですよ、こんなこと…と山田は不満そうに指摘する。

それを苦笑しながら聞いていた谷村はバックミラーを確認し、尾行してくる乗用車を確認する。

つけてくる乗用車の後部座席には3人のスーツ姿に黒眼鏡の男が乗っており、その1人が拳銃上部をスライドさせる。

金有探偵事務所の前にやってきた乗用車の中から降り立ったのは川上記者だった。

川上が二階に上がってきたのに気づいた女性(奈良あけみ)は、事務所に入りかけていたが止めてしまう。

廊下で顔を見られないように背を向けている女性に気づいた川上は、金有探偵事務所ならここですよと声をかけ先に部屋の中に入ろうとする。

すると部屋の中から「ノック!」と声がかかり、ドアの横には「拳の絵」が貼られていたので、川上は苦笑しながらノックをする。

すると中から左門がカムイン!と声をかけてきたのでドアを開けて川上は中に入ると、やあ、お客さんですよと左門に話しかけ、さあどうぞと、背後から入ってきた女性を招き入れる。

あの…実は…と左門の前に立った女性客が言いかけると、いや、何にも言わないで、黙って座ればピタリと当たる!と左門は答えるので、女性客は首を傾げながらも頷いて椅子に座る。

事件ですな?と左門が指摘すると女性客は黙って頷く。

して事件の内容は?と左門が聞くと、あの…、お話しても宜しいので?と女性客は聞く。

もちろん!と左門が答えると、実は夫の行方がわからなくて困っているのですと言うので、ほお、そりゃお困りですなと左門は同情する。

こんなこと慌てて警察に届けて、かえって夫の恥になるのでは?と思って…と女性客が言うので、ご尤も、分かります、その気持と左門は話を合わせる。

しかし残念ながらわしは近々香港へ行かなきゃいけないんでねと言いながら、左門は部屋の壁に貼られていた「第3回アジア探偵会議 会場 香港:芳蘭公司ホール」と書かれたポスターを見る。

その時、あ、そうだ、僕はそのインタビューに来たんでしたと、部屋の隅で雑誌を読んでいた川上が口を挟んでくる。

うん?そうか、なんでも聞き給えと左門は鷹揚に構えて答える。

左門の前のテーブルに腰を下ろした川上は、しかしこの方のお話も聞いてあげたら?出発まで後1週間あるんですから…と眼の前に座っていた女性客の依頼を左門に勧める。

いや…、いやしくも吾輩も探偵であるからには事件を引き受けたいのは山々だが…、川上くん、どうじゃね?わしに代わるべき会議代償の人材はおらんかね?と聞いてくる。

その間茶を配っていた三子は、蘭さんでも生きていれば…と悔しがる。

蘭?あ、そうだ!と思い出した左門は、奥さん、蘭というのは日本の探偵界で金有か蘭かと謳われた男でしたが、前の事件で殺されました…、実に惜しいことをしました…、うん!と打ち明ける。

それを聞いた女性客は、困りましたわ…、せっかくこちらの評判を聞いてまいりましたのに…と落胆する。

すると左門は、心配無用、警視庁にごく懇意な警部がいます、山本さんというんですが…、紹介状を書いてあげますよと教える。

その時、誰かがドアから入ってきたので、左門はノック!と文句をいう。

入ってきたのは奇妙な顔をした神父のようで、金有先生、お久しぶりでと挨拶してきたので、誰かね君は?と左門は怪訝そうな顔で聞き返す。

するとその珍客は、私も香港へやってくださいと申し出てきたので、ふざけちゃいけない!誰かね君は?と左門は不思議そうな顔をする。

するとその客は、ヒヒヒヒ…と奇妙な笑い声を出し、蘭光太郎!と名乗ったので、三子は左門の方を見ながらクルクルパーの手振りをしてみせる。

左門もそれに気づいて無言で頷き、さあ、私は忙しいんだ、帰った、帰った!とその珍客に文句を言う。

するとその珍客は哄笑し出し、お分かりにならないな…、名探偵!と言いながら顔の変装を取ってみせる。

服も瞬時に脱ぎ捨てると、そこに立っていたのは紛れもないスーツ姿の蘭光太郎(波島進)だったので、左門も三子も仰天する。

川上記者も蘭さん!と驚く。

君はたしか死んだはずだったが!と左門が唖然としながら蘭を指差すと、そうです、私は死にました、しかし私は生きているんですと蘭はにこやかに答える。

蘭さん、こりゃ一体どうしたことなんです?と川上が聞くと、蘭光太郎は日本のどこにでもいるんですよ、正義を愛する人の心の中にね…と蘭は笑顔で答える。

左門は、うん、まあ意外だった…とつぶやく。

川上は、蘭さんが突然現れたとなるとこれはなにかとんでもない事件が起きたんですな?と推測したので、川上くん、目の色を変えて特ダネが欲しい顔だねと蘭は笑ってみせる。

すると川上は図星を当てられたと気づき、いやあこれは…と苦笑して頭をかく。

蘭は、金有先生、あなたはお忙しいようですから、この事件は私がお手伝いしましょうと言い出したので、女性客は、ではあのお…、私の方を引き受けてくださいますので?と嬉しそうな顔になる。

それに頷いた蘭は、金有さん、あなたはどうぞ香港の会議へ!と勧めるので、君がこの事件を?これはなにか曰くがある…と左門は意外そうな顔になって考え込む。

そして立ち上がった左門は、蘭君、わしのほうが先口じゃ、会議代理は君に譲るから事件は任せてくれと言い出したので、あら?香港行きは止めちゃうんですか?あんなに楽しみにしてたのに…と三子がからかうように聞く。

それを聞いていた川上記者も、先生一流の心境の変化さと横から口を出す。

左門は苦笑し、君子豹変したところだと自慢する。

そんな左門に、金有さん、いずれにせよ出発までまだ間がありますから何かお手伝いできるかも知れませんね?と蘭がにこやかに声を掛ける。

しかし左門は迷惑そうに、どうぞお構いなくと断る。

蘭は、ではご成功を祈りますと言い残しそそくさと帰ってゆく。

川上は驚き立ち上がると、蘭さん!まだお話が!と言いながら蘭の後を追って部屋を後にする。

しかし廊下には既に蘭の影も形もなかった。 台風が近づいた影響なのか風雨が強まった中、現金輸送車は鉄橋を渡っていた。

運転していた谷村は助手席で怯えている山田に気づき、何だ、震えているのか?なあ山田、お前まとまった金を握ってみたいと思ったことはないか?と言い出したので、ええ!と山田が驚いて谷村の顔を見ると、そんなに驚くことはないだろうと谷村が言うので、あんたまさか!と山田は察する。

お前にも儲けさせてやろうと思ったと谷村は笑いながら言うので、とんでもない、そんなことしたら…と山田は怯える。

すると谷村は、手が後ろに回るっていうのか?と睨んだので山田は何も言い返せなくなってしまう。

な~にこの天気だ、警察の手配も遅れるさと谷村は楽観視する。

それでも山田が、冗談はよしにしましょうよと抵抗すると、冗談?そう思うか?これでも本気さと谷村は平然と言うので、谷村さん、今日はどうかしてるよと山田が指摘すると、賛成出来ないようだな?と言いながら谷村は現金輸送車を雨の中に停める。

嫌がるものを無理にとは言わない、降りるなら今の内だと谷内は勧め、迷いながらも山田が助手席から降りようとした時、谷内は座席に置いてあったスパナを握ると山田の後頭部を殴りつける。

雨の路上に倒れた山田を見下ろした谷内は、悪く思うなよと言い残し運転席に戻る。

その頃、左門に失踪した夫の写真を見せていた女性客は、もう10日になります、大阪に行くといって出たきりと告げる。

坂本と名乗る女性の夫だというその写真に写っていたのは運転手の谷内だった。

左門はその写真を見て、奥さん、これは女の匂いがしますなと言う。

そんなこと!と坂本の妻は驚くが、そうはおっしゃいますがね…と左門が苦笑すると、坂本は私を愛してますのと坂本夫人は言う。

そうでしょうともと左門は答え、奥様はおきれいでいらっしゃいますものねと三子もお世辞を言う。

すると坂本夫人は、あら、そんなこと申しているのではございませんわと反論したので、そらそうだと左門も頷く。

しかしすべて犯罪の影には女がいる、だから女を探せ!というのが金有捜査師範の第一条じゃと言いながら 左門は自分の所長室に座り直す。

でも坂本はお金の工面にでかけたんですのよ、最近事業に失敗してとても困っていましたの…と坂本夫人は反論する。

側で話を聞いていた三子はメモに、坂本、10日前、大阪へ行く、金策…と書き込んでいた。

左門も、金か…、なるほど金なら第二ルールだ…と考え込み、写真があるんですから解決は時間の問題ですよと楽観視する。

三子も、先生がああ言ってるんですから大丈夫ですよと依頼人を慰める。

じゃあお願いしますと言い、坂本夫人が立ち上がると、大分降ってきましたね、じゃあお気をつけて!と三子が外の雨のことを気遣いながら送り出す。

分からない、蘭ともあろう男が何でこんな簡単な事件に乗り出そうとしたのか?と左門は1人首をかしげる。

警視庁 山本警部(大木史朗)の部屋では刑事たちが将棋盤の前に集まっており、そこは絶対銀打ちですよ!などと横から見ていた刑事が野次を飛ばしていた。

その口にチャックをかけてやりたいよなどと山本警部相手に将棋をやっていた刑事も苦笑しながら打つ。

そこに電話がかかってきて、受けた刑事が山本警部ですか?と応じ、受話器を山本警部に手渡す。

山本警部が電話に出ると、え?現金輸送車が行方不明!貨幣局から中銀に向かう途中?と驚いたので、側に居た刑事たちも聞き耳を立てながら立ち上がる。

ナンバーは?8の「た」0094…、時間は?30分前、ちょっと待ってくださいと山本警部は答える。

緊急手配だ、日本橋を中心に100km以内の道路をを閉鎖する、隣接各署、並びに管内各所に連絡してくれと命じる。

司令室から至急、至急!警視庁より各移動へ!貨幣局現金輸送車が行方不明!ナンバーは8の「た」0094!緊急発見に努めよ!と無線が発せられる。

警察電話を受けたパトカーは、警視3、了解!と返答し出発する。

部屋で待機していた山本警部は、パトカーからの連絡を今か今かと待ちかねていた。

晴れ上がった台風一過の翌日、山本警部以下刑事たちは川べりで発見された現金輸送車に駆けつける。

先頭を切ってやって来た山本警部は運転席を覗き込んでいた男が振り返ったのを見て、ああ、蘭さん!どうしてここへ?と驚く。

蘭は、ああ山本さん、遅かったと言いながら近づくと、ことは甚だ重大ですと山本が答える。

蘭は、ええ、この解決は急を要しますと言うので、蘭さん、又力を貸してくださいと依頼すると、私も及ばずながら全力を尽くしますと蘭も答え、まずはこの男…といいながら振り返る。

そこに寝かされていた男を調べていた刑事たちは、警部、この男、まだ脈があるそうですと言う。

助手の山田だな、柳井君、至急警察病院へ運んでくれ、意識が戻り次第臨床尋問にかかると山本警部は指示する。

山田が単価で運ばれていく中、三子を連れて現場にやって来た左門は、おお蘭!いつここへ?と声をかけてくる。

蘭光太郎はいつも事件と共にありますと蘭はにこやかに答える。

うん、その心がけじゃと褒めながら山本警部に近寄った左門は、ところで手がかりは?と聞く。

いや、まだ全然…と山本が答えると、しめた、三子、急げ!と左門は喜び輸送車の方へ向かう。

蘭が、山本さん、乗務員の1人が行方不明なんですね?と聞くと、谷村朝雄32歳ですと山本警部は教える。

うん…、その男も被害者なのか、それとも…と蘭が言うので、それとも?と山本が先を促すと、犯人の一味なのか?と蘭が続けたので、しかし貨幣局側の報告では勤続12年間無事故という男ですと山本は言う。

それを聞いた蘭は、う~ん、事件の鍵はその辺にありそうですと答え、それで被害金額は?と聞くと、およそ8000万ということですと山本警部は言う。

そこに近づいてきた左門が、山本さん、見つかりませんなと話しかけたので、何がです?と山本が聞くと、何がって、あれだけの現金をごっそり持っていくにはどうしたって車がいります、そのタイヤの跡が見つからないとは…、天に駆けたか地に潜ったか…と左門は言うので、つまり、現金を積み替えたのはここではないということですね?と蘭が指摘する。

それを聞いた山本は宇奈月、左門は、ほお、なるほど…と感心し、偉い!君もそう思うかね?と上から目線で蘭に話しかけたので、蘭は苦笑する。

山本さん、犯人は巧妙な奴です、おそらく手がかりは残していないでしょう、全ては山田の尋問の結果ですと蘭が指摘する。

それから、谷村の家族から事情を聞く必要もありそうですねと蘭が言うので、うん、工藤君、谷村の家族を参考人として召喚してくれと山本警部は側に居た刑事に命じる。

その工藤刑事が何か持っていたので、何だそれは?と山本警部が聞くと、アクセルの下に落ちていましたと工藤刑事は言う。

それはバラの花だった。 蘭がそのバラを受取り凝視すると、側にいた左門が花瓶の造花が落ちたんだろうと軽く言う。

しかし蘭は、いや、これは犯人のいたずらかも知れないと言い出す。

じゃあ、このバラに何か意味があるとでも?と山本が聞くと、そんな気がしますと蘭は答えバラを工藤刑事に返すと、金有さん、例の失踪事件の調査はどうなってますか?と聞く。

左門は、う?あ、坂本か?と気付き、この通り大事件が起きたのだから、あんな身の上相談に関わり合っちゃいられないさと笑いながら答える。

すると蘭が黙って去ったので左門は怪訝そうな顔になる。 そんな中、山本警部が、金有さん、私達はひとまずここを引き上げて被害者から事件聴取にかかりますと言うと、後は私にお任せください、きっと手がかりを見つけますよと左門は答える。

山本警部の帰りの車に同乗した蘭は、山本さん、現金輸送車は何故隅田川を渡ったんでしょう?と聞くと、そのときはもう犯人の手に渡っていたものと思いますと山本は答える。

山本さん、貨幣局から中銀まで繁華な通りです、おそらくその道筋で襲われたんではありますまい、とすれば、問題は谷村が何故いつもの道を通らなかったかということですと蘭が指摘する。

仕事の正確な谷村が何故そんなことをするのか?この辺に事件の鍵が潜んでいると思うんですと蘭は言う。

では、谷村が脅迫されてやったとでも?と山本警部が聞くと、この謎を解くだけの材料はまだ揃っていません…と蘭は言う。

警察病院の前で待っていた刑事は、やって来た山本の車に乗り込んできたので、どうだった?と山本警部が聞くと、はっ、山田を殴ったのは谷村ですと事情聴取した刑事は報告する。

じゃあ谷村はやっぱり犯人側だったのか?と山本が考え込むと、山田が言いますに谷村は昨日の朝から人が変わったようだったそうですと刑事が言うので、それを聞いた蘭は、何?人が変わった…と聞き返す。

ええ、あんなに責任感が強い人がどうしてこんなことをするようになったのか分からないと山田は言っています…と刑事は言う。

捜査本部に戻ってきた山本警部は、谷村の上司から事情を聞いていた。

そうです、谷村は私の部下ですが、彼ほど誠実で責任感が強く、仕事の正確な奴はおりませんと上司は褒めるので、局じゃずいぶん信用があつかったようですねと山本が聞くと、は、今度のことでも彼を疑うものはおりません、彼の生死のことが心配です、責任感が強かったばかりにかえって殺されるような羽目に陥ったのではないかと…と上司は案ずる。

何とか早く手がかりをつかみたいと思っておりますと山本警部は答える。

そもころ、まだ現金輸送車が乗り捨ててあった川べりに残っていた左門は足跡を見つけ、三子!巻き尺だ!と呼ぶ。

輸送者の下から、は~い!と返事をして出てきた三子に、どこに入っとるんじゃ、早く!と左門は急かす。

何ですか、先生?と駆け寄ってきた三子に、見ろ!足跡だ!大した手がかりだぞと左門は指さして教える。

そして、三子から受け取った巻き尺で足跡の長さを測った左門は、28cm…、ということは11文か…、わしと同じだと首を傾げ、自分の靴をその足跡に合わせてみるとピッタリ合うではないか。

先生、ピタリですよ!と三子が指摘するので、犯人はこのわし?と左門はボケてみせ、とんでもない、これは元々わしの足跡だった…と気づくと、いや~愉快だな~と笑いだしたので、三子は呆れたように左門の顔を見ながら、ちぇっ、ちっとも愉快じゃありませんよと愚痴る。

先生、ここには見切りをつけて別のところを探しましょうよと三子が提案すると、うんと左門も頷く。

捜査本部の部屋の前に子供連れでやって来た和服の女性は、捜査本部から出てきた刑事に、子供がおじさん!と呼びかけたので、母親と刑事は互いに会釈し合う。

その刑事がでかけた後、部屋に入った来た母子を見た山本警部は、部下の刑事の報告を聞き終えた直後だったが、谷村さんですね?と優しく語りかけ、どうもご足労願いまして…とねぎらう。

子供と谷村の妻に椅子を勧めた山本は、部下に目で合図をし、その部下は、坊や、いくつだい?と声を掛ける。

5つと子供の三郎が答えると、5つ!と驚いたふりをした刑事は、大きいなあ、じゃあもう直ぐ学校だな?と言いながら頭をなでてやる。

うんと答えた三郎に、おじさんが鳩見せてやろうか?と誘うと、鳩?と子供が興味を示したので、うん、伝書鳩だ、屋上にたくさんいるぞと刑事は楽しそうに話しかける。

三郎が行こう!と乗ってきたので、行こうと応じた刑事は三郎を連れて部屋を後にする。

母親と2人きりになった山本警部が、可愛いお坊ちゃんですねと世辞を言うと、それがとてもわんぱくな子で…と答えた谷村の妻に、ご主人と結婚なさってどのくらいになりますか?と聞く。

はあ、もう7年に…と妻が答えると、局ではなかなか評判の良い方のようですねと山本は谷内を持ち上げてみせる。

はあ、私の口から申し上げるのもなんでございますが、元々真面目な方なので…と事情をまだ知らない妻は夫の自慢をし、あの…、主人が何か?と聞いてくる。

山本がうつむいて何も答えないので、あの…、何か間違いでも?と妻がさらに聞くので、何か気になることでもありますか?と山本警部が逆に聞き返す。

いえ…、ただこの2日ばかり家へ戻りませんので…と妻は不安を覗かせる。

いつもはそのようなことは?と山本が聞くと、ありません、結婚して初めてです…と妻は言う。

なるほど…と山本が頷くと、局の方へ問い合わせてもはっきりした返事をしてくださいませんし…と妻が不安げに話している時、部屋に入ってきたのは蘭光太郎だった。

会釈をしながら谷内の妻と山本警部と同じテーブルの前に座った蘭は、その出かけられた朝の様子はどうでしたか?と質問する。

別に普段と変わりなく子供にお土産を約束していました…と妻が答えると、それは台風になる日ですね?と蘭が確認する。

妻が、いえ、前の日ですと答えると、蘭は、何、前の日?と驚く。

あの主人は?と妻が聞くので、私達もご主人の行方を探しているのですと山本は答える。

えっ?ではさっき局の課長さんが見えられたのもそのことなんですね?と妻は驚いたように問いかける。

その頃、屋上の伝書鳩が入ったかごの前では、鳩はね、とってもお利口な動物なんだよ、どんな遠いところからもちゃんと帰ってくるんだと刑事が三郎に説明していた。

ほら、僕もここからお家へ帰れるかな?と刑事がからかうと、分かんないや…と子供は困ったように答える。

山本警部は谷内の妻に、実はご主人の車が襲われまして…と打ち明けていた。

まあ!と妻が驚くと、ところがご主人に大変不利な証言がありますと言いにくそうに山本は続ける。

え?と驚く妻に、助手の山田くんを殴って失神させたというのですと山本警部は説明する。

まさか!そんな悪いこと、あの人にできるわけがありません!いいえ、あの人のことは私が一番良く知っています!と妻は力説する。

分かりました、あなたの言葉を信用しましょうと、妻の肩に手を添えて蘭が慰めている所に電話がかかってくる。

部下の刑事が電話を取り、蘭探偵?と相手に聞くと、蘭さん!と受話器を持って呼びかける。

もしもし蘭ですと蘭が受話器を受け取って答えると、蘭光太郎だな?俺は警告する!事件から手を引け!命が惜しければな…と電話の相手は脅すと笑い出す。

誰だ、君は!と山本警部を見ながら蘭が問いかけると、相手はキン・ローズだ!覚えておくが良い…と答えながら振り向く。

その男は派手な衣装に怪しげな仮面をかぶり大きな帽子をかぶった怪人だった。

相手が受話器を切ったので、キング・ローズ!と蘭は叫び、山本警部も、あのバラの花だ!と気づく。

その後、捜査本部の会議に参加した蘭は、敵は堂々と挑戦してきたんです、彼らなりに勝算があると思えますと蘭が発言すると、盗難紙幣がすぐにでも使用されるのは確かだと山本警部が言うと、それに対して我らは紙幣ナンバーから彼らを捕まえるのですと蘭は答える。

山上君、紙幣の盗難通知の方は?と山本が聞くと、2~3日中ですというので、督促してくれ、全国手配を急がねばならんと警部は指示する。

1万円札4000枚、5000円札4000枚、1000円札2万枚…、これだけの大量の紙幣を敵がどうやって捌くかが問題だと山本警部は指摘する。

その頃敵のアジトでは、札を小さなバッグに小分けしていた覆面の部下たちに、良いか、そろそろ警察が動きだす、かねての手はずどおりやるのだ!迅速に抜かりなく…、分かったな!と首領のキング・ローズが念を押していた。

迅速に抜かりなく…、な~に警察なんか問題じゃない、目障りなのは蘭光太郎1人だ!とキング・ローズは言う。

邪魔立てするようなら容赦はいらん!撃ち殺すんだ!とキング・ローズは命じる。

行け!とキング・ローズが命じると、整列していた覆面姿の部下たちは一斉に右手を上げて敬礼し、札束を詰めた小型バッグを肩にからげて部屋を後にする。

羽田空港に到着した車から降り立った黒眼鏡の男女たちは小型バッグを肩から下げて空港内に入ってゆく。

日本航空からお知らせを申し上げます、日本航空305便、大阪福岡行きご搭乗のご案内中でございます、お客様は国内線7番口よりご搭乗くださいとアナウンスが流れていた。 黒メガネの男女グループはそのアナウンスに従い、7番口から305便に乗り込む。

やがて305便は飛び立ってゆく。

その頃、山本警部の部屋にやってきた川上記者は、山本さん、貨幣局の車がやられたそうじゃないですか!被害金額はいくらです?犯人の目星は?と聞いてくる。

落ち着き給えよ!と山本が苦笑すると、落ち着いていられますか!と川上は興奮する。

川上君、今書き立てられちゃ困るんだ、全国手配が済むまで待ってくれと山本警部は頼むが、しかしこんな大事件をみすみす…と山本が反論するので、大事件だから頼むんだよ、センセーショナルに書かれてはいたずらに社会の不安を招くばかりだ、ここは1つ君の良識で!と山本警部は頼む。

川上記者は、そう言われると弱いな…と首をかき、分かりました、慎重にやりましょうと答える。

ところでこの事件の見通しはどうなんですか?と川上が聞くと、蘭さんも協力してくれてはいるが…と山本警部の表情が曇る。

川上記者は、蘭さんが!と驚き、では香港の会議、どうするのかな?と案じる。

それまでに事件を解決したいと言ったはいたがね…と山本警部が言うと、後1週間ですよ、大丈夫かな?と川上は指摘する。

蘭さんの見込みはどうなんですか?と川上が聞くと、これだけだよと言って山本警部は現金輸送車から見つかったバラの花を見せ、キング・ローズの出方を待つばかりだという。

東亜ホテル 受付にやって来た蘭光太郎は、南米から来られた野毛山さんはこのホテルで?と聞くと、受付かかりははあ、左様でございますが、只今、産業見本市へおでかけになりましたと答える。

まだ当分滞在されるんですか?と蘭が聞くと、そのように伺っておりますと受付かかりは答える。

そうですか、野毛山さんはいつこちらにおいでになったんですか?と蘭が聞くと、あの…、新聞社の方で?と受付が怪しんだので、いや…、まあそういった者で…と蘭は笑ってごまかす。

受付係は、2週間ほど前に…と答える。

ずっとこのホテルに?と聞くと、いえ、途中1週間ほど北海道へ旅行なさいましたと受付係は言う。

北海道へ?と蘭が怪しむと、は、なんでも、牧場を買収するので、その下見とか…と受付は言う。

では日本に永住されるんですかね?と蘭が聞くと、さあ…それは…と受付は首を傾げたので、ありがとうと答えた蘭が帰りかけると、お名前を伺っときましょうか?と受付が言うので、いや、改めて出直してきます、どうも…と答え、蘭は帰ってゆく。

蘭がホテルから出て行く姿を帰ってきた車の中で見かけた野毛山夫妻と召使いの黒田(陶隆)は、入り口に停めた車から降りて蘭の後ろ姿をじっと見守る。

夜、三子とともに事務所に帰ってきた左門は、非常口のドアが閉じたのを見て、あ、泥棒!と叫びながら追いかけようとするが、部屋の扉がひらっきぱなしになっていることに気づくと、探偵の所に盗みに入るなんて世も末だ…と嘆く。

でも先生、この前は交番に入った泥棒がありましたよと三子が慰める。

部屋の電気を取り中に入った左門は何を盗られた?と探し出すが、何も取られるようなものないはずだけどな…と三子は不思議がる。

やがて三子が左門の机の上に置かれた紙を発見する。

そこには「坂本の写真を当分お預かりする 七色仮面」と書かれてあった。

まあ七色仮面が!と三子が喜んで紙を渡すと、やや!待つこと久しい七色仮面!正義の味方ついに現る!と受け取って読んだ左門も浮かれる。

その時、サイレンが聞こえてきたので窓から外を見ると火の手が上がっていたので、どの辺でしょう?と三子は不安がる。

その頃、山本警部は、何!印刷所が火事!と部下からの報告を受け驚いていた。

は、原因不明の出火ですと部下の刑事は報告する。

盗難通知書はどうした?と聞くと、刷り上がったところを突然の火事で…と部下が言うので、焼けたか!と悔しがる。

は、工場ごと丸焼けです…と部下も無念がる。

捜査本部にいた別の刑事が、キング・ローズの仕業だ!と察する。 警部、敵は妨害作戦に出てきたのですと報告した刑事も指摘する。

札を手っ取り早くさばく算段だな…と山本が頷くと、それに違いありませんと別の刑事も賛同するが、しかしこうなっては全国手配が遅れる!困ったことだ…と山本警部は悩み始める。

応急手段です、新聞にナンバーを発表したらどうですか?と部下が提案すると、うん、やむを得ないと山本警部が判断し、提案した刑事は早速やりますと言い残し部屋を後にする。

蘭探偵はどこに行ったんでしょう?と別の刑事が案じると、うん、キング・ローズが動き出したというのに…と山本も苛立ちを隠さなかった。

その時電話がかかってきたので、はい山本ですと出ると、キング・ローズの一味は紙幣を有価物件に変えるはずです、直ちに貴金属商に手配!警戒してくださいとの内容だったので、あなたは?と聞き返すと、相手は七色仮面と名乗りすぐに切ってしまう。

七色仮面からだ!都内の貴金属商を調べて手配してくれ!盗難紙幣が出回る恐れがあると山本は嬉しそうに部下たちに指示を出す。

公園のジャングルジムに子どもたちがやって来て鬼ごっこで遊びだす。

僕も入れておくれよと谷内の息子の三郎がやってきたので、良し、それじゃあ鬼だぞ!と他の子が命じる。

しかし1人の男の子が、止せよ、三郎なんか入れるなよと言い出したので、意地悪よせよと他の子が諌めようとするが、家のお父さんが言ってたぞ、三郎はギャングの子だから遊んじゃいけないって!とその子が言うので、三郎は、嘘だ〜い!と反論するが、嘘じゃない!と意地悪した子も言い返してくる。

嘘だ、嘘だ!と言いながら三郎がジャングルジムに駆け寄ると、ギャングだ、逃げろ!と他の子はジャングルジムの上の方へ逃げ出す。

三郎がそれを鷹揚にジャングルジムを登り始めると、反対側から地上に降り立った2人の子が三郎の背後に回って足を引っ張る。

三郎は地面に落ちて泣き出したので、対処に困った子どもたちは、俺じゃないよ、僕も知らないよ!帰ろう!と口々に言いながらみんな逃げていってしまう。

1人泣いていた三郎の傍にやってきたのは蘭光太郎で、優しく三郎を抱き上げて立たせると、三郎君、君のお父さんは悪い人じゃない、ギャングなんかじゃないよと笑顔で告げたので、三郎はうん!と頷く。

それは蘭のおじさんが一番良く知っている、さ、お家まで帰んなさいと蘭は優しく言い聞かす。

走って帰りかけた三郎はすぐに立ち止まり振り返ると、おじさん、さようなら!と手を振ってくる。

蘭も笑顔で手を降ってさよなら!と返事する。

捜査本部で山本警部は、全国手配が完了したとなれば、後は敵がボロを出すのを待つばかりだと待機していた部下の刑事たちに話していた。

警部、キング・ローズは例の紙幣が国内で使用できないと分かれば香港へ送るのではないでしょうか?と刑事が指摘したので、香港へ?と驚く。

あそこのブラックマーケットでドルかポンドと交換するのでは?と刑事が推測すると、うん、それも考えられる、良し!各地の税関と連絡をとってみようと答える。

そこに電話がかかってきたので部下の刑事が取り、大阪から?もしもし、こちら捜査本部!え?盗難紙幣!と答えたので、山本警部も驚いて顔を上げる。

うん、うん、デパートの貴金属売り場で大量のダイヤと…、いつです?昨日?と部下が電話に答えていたので、それを聞いた山本は、手配が1日遅れた!と悔やむ。

分かりました、なお警戒してくださいと部下が言って電話を切ると、う〜ん、敵は関西に飛んだか…と刑事たちも無念さを口にする。

するとまた電話がかかってきて、札幌でも昨日同様の盗難紙幣が使われたことが分かる。

その後も続々、名古屋、仙台、福岡からの盗難紙幣発見の電話がかかってくる。

日本地図を前にした刑事たちは、これはみんな空港のある都市だと気づく。

飛行機で各地へ散らしたんだろうと山本警部が推測すると、しかし敵はまだ盗難金額の半分しか使っていません、又どこかで大きな取引をするに違いありませんと部下の刑事が発言する。

大きな取引となると、どうしても後東京と横浜ということになるが、まさか我々の目の前では…と意見が出る。

銀座 「宝石堂」と言う店の電話が鳴り出す。

もしもし、「宝石堂」でございますと店員が出ると、は?少々お待ちくださいと答え、東亜ホテルからお電話ですと支配人に告げる。

「宝石堂」でございます、は?野毛村様!ああ最近新聞で拝見しました、南米からお出での…と電話を変わった支配人は応答する。

は?宝石をお土産に?あ、左様でございますか、は?今晩7時、ありがとうございますと礼を言うと電話を切った支配人は、これは大きな商売ができるぞ、相手は南米の億万長者だからな…と店員に話しかける。

その頃、三郎を車に乗せて自宅前にやって来た野毛山は、外で掃き掃除をしていた母親に、三郎君のお母さんですね?と車から三郎を下ろして自分も降りると話しかける。

三郎君が道でいじめられていたんでお連れしましたと野毛山が言うので、まあ、それはどうも!と母親が頭を下げると、聞きました所、お父さんが行方不明で何か大変な嫌疑を受けているとか?と野毛村は聞いてくる。

はあ、主人は決して悪い人ではありません、それが…と母親が明かすと、そうでしょうとも、警察は何をぼやぼやしてるんでしょうねと野毛山は同情してくる。

はあ、今度のことは蘭探偵にも良くお願いしてあるんですが…と母親が答えると、ああ、蘭君!私も良く知っています、彼は優秀な探偵です、で、彼の見通しはどうなんです?どんな捜査をしてるんですか?と野毛山は探りを入れてくる。

さあ…それは…と母親が首を傾げると、私でもお力に慣れれば良いんですがと言いながら野毛山は上着の家ポケットから財布を取り出すと、これで三郎くんに何か…と言いながら札を渡そうとしたので、母親は、いけませんわ、そんなこと!と拒否する。

まあ良いじゃないですかと野毛山が金を差し出したので、知らない方からそんな…と母親は辞退するが、突然三郎が、お母ちゃん、七色仮面のお面を買ってよ、みんな持ってるんだ!とねだってくる。

それを聞いた野毛山は、七色仮面…とつぶやく。

その頃、金有探偵事務所では、三子がかぶっていた七色仮面のお面を頭の方へずらすと、七色仮面はなんだって坂本の写真なんかを持っていったんでしょうね?と疑問を口にしていた。

そうなんだ、わしもさっきからそれをずっと考えていたんだがねと左門も頷き、何はともあれ、あれがなくては坂本の捜索はお手上げだ…とぼやいてみせる。

その頃街の歩道を歩いていた坂本夫人の前に河童の扮装をしたサンドイッチマンが立ちふさがり、よお、待ちなっていうんだ!といきなり話しかけてくる。

ぎゃあぎゃあ騒ぎ立てするんじゃねえぞ!ええ?奥さん、坂本の命が惜しけりゃ黙っておとなしくついてくるんだと言うと、河童に扮した男は踵を返して歩き出したので、怪しみながらも、坂本は、坂本はどこに!と追いかけていった夫人は問いかける。

河童男は笑いだし、用がすみゃ返してやらあ、騒ぎ立てれば坂本の命はこれだ!と持っていたナイフを突き出してみせる。

坂本夫人が怯えると、活かすも殺すもお前さんの心がけ次第だぜと河童男は脅してくる。

その時、ちょうど目の前にあった金有探偵事務所から左門と三子が出て来たので、わかったな!と言い残し、河童男は走り去ってしまう。

呆然とそれを見送っていた坂本夫人に気づいた左門は、一瞬気まずそうな素振りを見せながらも気を取り直して、やあ奥さん!捜査は着々進行してます、間もなくご主人はお手元にお返ししますよと声をかけながら近寄る。

すると坂本夫人は、あの〜、先生、主人の事は…、主人の捜査は中止していただきたいのですと申し出る。

何を今更…と左門が驚くと、主人の命が心配なのです!今の男、騒げば殺すと行っていきましたと夫人は訴える。

今の男が奥さんを脅迫した?と驚いた左門に、男が逃げた方角を見た三子は、先生、これは大事件になりますよと忠告する。

しかし左門は、いやあ奥さん、ご心配なく、そんなコケ脅しに驚くような金有左門じゃない!と見栄を張ってみせる。

でももし主人の命が…と夫人は怯えるが、お任せください、わが胸中に秘策あり!などと自慢していた左門の背後から、金有さん!と呼びながら川上記者が近づいてくる。

蘭探偵を知りませんか?昨日から姿を消してしまって…と川上が聞いてきたので、何!と左門は驚く。

蘭君が誘拐されたというのかね?君は…と左門が言うので、まさか!しかし弱ったな…、香港行きは後5日先に迫ってるんですよ、それまでに事件を解決しなくちゃ…と川上記者は教える。

しかし左門は、なに、なるようになるさ、わしは谷村の家を偵察してくる、おいと三子に呼びかけその場を立ち去ってゆく。

その場に残った川上記者は、とにかくなんとかしなくちゃ!ここ一番が事件記者の腕の見せ所だと意気込む。

東和ホテルにやって来た「宝石堂」の支配人は、車から降りた所に何者かが近づいてきたので驚く

受付係はボーイに鍵を渡し、それじゃあ頼むよと依頼していた。

野毛村さんのお部屋は?と受付に聞いてきたのは変装した川上だったが、予め話を聞いていた受付係は「宝石堂」さんですね?と聞く。

は、7時の約束でしたのでと変装した川上が答えると、承っておりますと答えた受付係は自らどうぞと川上を部屋に誘導する。

部屋をノックすると、秘書の黒田がドアを開ける。

「宝石堂」でございますと川上が名乗ると、お待ちしておりました、「宝石堂」さんがお見えになりましたと野毛山夫妻に伝えると、さあどうぞと声を掛ける。

毎度ご贔屓に…と言いながら川上が夫妻に近づくと、「宝石堂」さん、わざわざすいませんな、早速見せてもらいましょうか?と野毛山が話しかける。

川上は、はっと答え、持参したカバンの中から宝石のセットを取り出してみせる。

ほお、これは見事なスターサファイアだ…と言いながら野毛山は宝石の1つを取り出して眺める。

お目が高うございますと言いながらソファに腰を下ろした川上は、それはつい最近、さる宮家から払い下げ頂いたた品…と説明する。

ほお、由緒あるもんですなと野毛山は感心すると、はあ、このダイヤはいかがでございましょう?10カラットはございますと川上が勧めると、ほほおと野毛山は感心するが、その時別のセットを見ていた夫人が、パパ、このベックレスはどう?と見せて来たので、どうぞおつけください、お肌によくお映りでございますと川上は勧める。

野毛山は、なかなか良い物があるとセットに感心したようなので、は、何しろ、銀座の真ん中で商売させていただいております「宝石堂」です、滅多なものをご覧に入れては店の恥になりますと川上は答える。

すると野毛山は、気に入りました、みんなもらいましょう、いくらになります?と聞いてくる。

川上は、は、ありがとうございます、皆で1500万円でお願いしたいんですが?と切り出すと、宜しい、黒田君、小切手を書いてくれと野毛山は快諾する。

しかし川上は、あの〜、現金でお取引願えませんでしょうか?と言い出したので、現金で?と野毛山は驚く。

いえ、何もお疑いするわけじゃございませんが、店の都合もございますので…と川上は心苦しそうな顔で頼む。

そうですか、それじゃ現金で支払ってくれと野毛山は承知し黒田に命じるが、は、しかし現金を出しますと、又銀行へ換金しに出かけなければいけませんが?と黒田は困惑したように言い返す。

しかし野毛山は、それが秘書の仕事じゃないかと言う。

はっ!と答えた黒田は、鍵をかけていた室内金庫から札束を取り出す。

テーブルに置かれた札束を見た川上は、確かに…と言ってカバンに詰めてゆく。

そして、どうもありがとうございました、これで失礼させていただきますと言うと、カバンを小脇に抱えて部屋を後にしようとする。

しかしドアノブが開かないので川上は焦るが、その時背後から野毛山の笑い声が聞こえてくる。

振り返ると、待ち給え!それで巧く化けおうしたつもりか?と言いながら野毛山が拳銃を取り出していた。

余人は知らず、俺はお前を知っている!蘭光太郎!その仮面を取れ!と野毛山が命じるので、ではお前がキング・ローズか?と川上が聞き返すと、想像に任せようと野毛山は苦笑すると、俺はお前に警告したはずだ、命が惜しければ事件から手を引けとな…と言う。

確かに聞いた!と川上が答えると、お前の命はこの俺の手の内にある!しかしキング・ローズはつまらぬ殺生は好まぬ、蘭光太郎、最後のチャンスを与えよう!手を引け!嫌か?良し、3つ数えるうちに返事をしろと言いながら野毛山はソファから立ち上がり川上の方へ近づいてくる。

イエスかノーか!と迫る野毛山から逃れようと身を避ける川上。

3!2!1!と野毛山が部屋の隅に川上を追い詰めた時、手を上げろという声が背後から聞こえたので野毛山たちは隣室へつながる扉の方を振り返る。

その扉がひとりでに開くとその奥には2丁拳銃を構えた七色仮面が立っていた。

それに気づいた川上が、ああ、七色仮面!と喜ぶと、そうだ、正義の味方七色仮面だ!と言いながら七色仮面は部屋の中に入り込んでくると、キング・ローズ、拳銃を捨てろ!と迫る。

野毛山が判断に迷っていると、それともゼロと数えようか?と七色仮面は言う。

その時、隙きを突いて秘書の黒田が部屋の電気を消したので、野毛山はソファの影に身をかがめながら七色仮面に向かって発砲する。

しかし瞬時に身を隠した七色仮面が撃ち返し、野毛山の拳銃は弾き飛ばされる。

そこに川上が掴みかかってて野毛山と取っ組み合いになる。

野毛山が川上をけとばした隙きを突いて、野毛村夫妻と黒田は部屋から廊下へと飛び出して逃げる。

すぐに3人を追って川上はエレベーターの前に駆けつけるが、下の階に降りているエレベーターと登ってゆくエレベーターがあり、3人がどちらへ乗ったか判断できなかった。 川上は変装を解いて、畜生!と悔しがる。

野毛山夫妻と黒田はホテルの外に停めてあった車に乗って逃走する。

川上はすぐに警視庁に電話を入れ、山本警部を!東都の川上ですと頼む。

川上記者からの通報により、直ちにパトカーが出動する。

山本警部が乗った警察車両に、七色仮面から山本警部へ、キング・ローズの車はもっか墨田橋後面へ向かいつつあり!との無線が入ってくる。

何と、七色仮面は片手に無線機を持ち犯人たちが乗った車の屋根にへばりついていたのだった。

エレベーターで3階に戻ってきた川上はがっかりしていたが、談笑しながら階段を降りて近づいてきた野毛山夫妻と黒田を見て驚く。

あっ、あなたは野毛山氏!と川上が呼びかけると、おお川上さん、例の孤児救済運動の方はどうなりました?と野毛山が親しげに話しかけてきたので、それどころではありませんよ、たった今、あなたの偽者が現れたのですと川上は教える。

ええ?偽者?と野毛山たちは驚く。

目標は円形建物!目標は円形建物!と七色仮面からの無線は随時山本警部の車に届いていた。

3人組が乗り込んだ車がやってきたのはドーム状の巨大な建物だった。

いつの間にか黒覆面をかぶっていた野毛山夫妻らしき男女が車を降りた時、車の屋根から七色仮面が降り立ったので、犯人たちは驚き、車の後部に隠れながら発砲してくる。

運転していた黒覆面も撃ってくるが、七色仮面は巧みな拳銃さばきで女の拳銃を撃ち落とす。

黒覆面の3人組は慌てて建物の中に逃げ込んでゆく

七色仮面も後を追って建物の中に入るが、物陰に潜んでいた3人組が発砲してくる。

その後、七色仮面は3人組が逃げ込んだ部屋に用心深く侵入するが、そこにはベッドと大きな鏡だけがある部屋で誰もいなかった。

七色仮面は消えた3人を探しながらゆっくり大鏡に近づく。

その時、床に落ちていたバラの造花に気づく。

そのバラの花を拾い上げた時、ドアがいきなり閉まったので、七色仮面は驚いて振り返る。

開けようとするが鍵がかかっており開かない。

そしてどこからともなく笑い声が響いてくる。

七色仮面!お前に我々の別荘を提供する、ほれ、ちゃんとベッドもある!我々の仕事が済むまでゆっくり休むが良い、キング・ローズは親切な男だぜと声は言い、又笑い出す。

その間に、黒覆面の男女3人組は建物の脇から川に繋いだボートに乗り込み逃走する。

そこへ山本警部らが乗ったパトカーが橋を渡ってやってくる。

その橋の下を3人組が乗ったボートが通過していくが、誰も気づかなかった。

百万長者に化けて宝石を狙うキング・ローズ、彼を追跡してその罠にかかった七色仮面は、このピンチをいかに切り抜けるでしょうか?(とナレーションがかぶり、ボートは遠ざかってゆく)


 


 

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