白夜館

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花のヒロイン 

 

 

 

幻想館

 

空母いぶき

この手の原作付き映画は、原作ファン、ミリタリーファン、VFXファンなどかなりうるさ型のマニア層もターゲットとしているはずで、当然ながらその手の客層からの粗探しやクレームが多いであろうことも最初から想定していると思う。

個人的には原作を知らないし、本作が原作とはかなり違う内容になってるという情報も早い時期から聞いていたので、あくまでも映画としての感想になる。

さらにミリタリー関係にも全く無関心で知識も皆無なので、その手の粗探しができるはずもないのだが、本作の展開が現実ではまず考えられないかなり荒唐無稽なファンタジーに近いものだということはなんとなく分かる。

聞くところによると原作では特定の実在する国が登場するらしいのだが、過去に実際にあった戦争を扱ったような作品ならともかく、映画で「実在する特定の国を悪役に設定」すれば、いくらフィクションとは言え海外への権利販売など商品として扱いにくくなるだろうことは多少近年の映画を見ている人なら容易に予測できるはず。

下手するとプロパガンダ(国威高揚)目的だと言われかねない。

当然制作側も出資会社もそういうリスクは分かっているので、この手の映画では大抵「架空の国」設定になるのが普通だ。

観客は薄々その「架空の国」がどこを指しているかや、何故具体名を出せないのかも理解した上で見るのだが、「架空の国」設定である以上、風刺やファンタジーと解釈され、リアルなサスペンスなどが若干弱まるのは致し方ないところ。

さらに本作を見た印象では、そんなに予算もかかってない雰囲気で、同じ国会対応の描写などもある「シン・ゴジラ」などの半分程度かもっと少ない予算ではないかと想像する。

シーンの大半が屋内でのセット撮影とCGIでの戦闘シーンで成り立っている関係もあり、絵的にものすごく見応えのあるミリタリーアクション映画になっているかというと微妙だと思う。

シーンごとのセットや借り物の建物の写っている範囲も限定的で、モブ(群衆)シーンも少なかったりで、全体的にややスケール感に欠ける印象はある。

とはいえ伊藤和典さんの脚本なのでテンポは悪くなくそつなくまとまっているし、大作を期待しなければ普通に楽しめる作品になっていると思う。

CGIでの戦闘シーンなども特に口うるさいマニアでなければ許容範囲といったところではないだろうか。

この手の映画では往々に、国会議員、自衛隊員、マスコミ関係者など事件の中核部分にいる一部の人物だけのドラマになりがちで、日本に戦争の危機が迫ってる一般民衆のリアクションが弱かったりするものなのだが、本作ではそのシーンが成功しているかどうかの判断はともかく、一般庶民の描写をとあるコンビニの店員と店長のエピソードでユーモラスかつメッセージ性も含めて表現していたりする。

コンビニのシーンは一見無駄なエピソードに見えなくもないのだが、同じ伊藤さん脚本だった「ガメラ2 レギオン襲来」(1996)で、銭湯でテレビニュースを見ていた風呂上がりの父親が子供に分かりやすく状況を説明しているシーンなどを連想させる。

ラストの総理の言葉にある、なんでもない日常風景、平凡な平和というものの大切さを描いた貴重なシーンなのだと思う。

ただメッセージ性そのものは真っ当すぎて面白みに欠ける気がしないでもない。

架空戦記ものだと割り切っても日本の立場上戦うことを少しでも肯定的に描いてはマズイという枷があるため、日本が作る大衆向け戦争映画はこういう無難な落とし方しかできないということだろう。

後半の敵側の動きも謎で、いくら映画の見せ場作りのためとは言え、いきなりここまでやるか?と素人目にも不自然に映る。
▼▼▼▼▼ストーリーを途中まで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
2019年、「空母いぶき」フィルムパートナーズ、かわぐちかいじ「空母いぶき」原作、伊藤和典+長谷川康夫脚本、若松節朗監督作品。

子供達のざわめき…

そう遠くない未来…

東アジア地域の島嶼国家である東亜連邦は民族主義を燃え上がらせた…

沖ノ鳥島の西方450kmに位置する波留間群島内にある初島 海上保安庁の巡視艇「くろしま」は、初島に向かう20隻の漁船を発見

領海内に侵入を確認したので警告するため接近しようとした時、突如銃撃を受ける。

12月23日 初島に東亜連邦の国旗が立てられる。

「くろしま」が攻撃を受け負傷者が出た挙句、初島が占領されたとの知らせを受け、国会に非常招集がかけられる。

駆けつけた閣僚の内、防衛出動させるべき事案だろう!と 城山宗介副総理兼外務大臣(中村育二)が声を荒げる。

国連も手が出せない状況だった。

小笠原付近で訓練中だった第五護衛隊群を初島がある海域に向かわせたとの報告を受けた垂水慶一郎内閣総理大臣(佐藤浩市)は、「いぶき」か…と呟く。

航空機搭載型護衛艦「いぶき」と共に進む護衛艦「あしたか」艦長 浦田鉄人(工藤俊作護衛艦)

同じく護衛艦「いそかぜ」艦長 浮船武彦一佐(山内圭哉)

護衛艦「はつゆき」艦長 瀬戸斉明二佐(玉木宏)

護衛艦「しらゆき」艦長 清家博史二佐(横田栄司)

潜水艦「はやしお」艦長滝隆信(高嶋政宏)

第5護衛隊群群司令湧井継治(藤竜也)

「いぶき」副長新波歳也(佐々木蔵之介)

「いぶき」艦長秋津竜太(西島秀俊)

タイトル

(回想)「いぶき」は攻撃型空母でしょう!と女性国会議員が追求し、国民たちは「いぶき」反対のデモを行う。

(回想開け)そんな「いぶき」の過去を戦闘機の操縦席に座って思い出していた秋津は、艦長!群司令がお呼びです!と部下が知らせに来たので我に返る。

CIC(戦闘司令所)で待ち構えていた涌井群司令は、防衛出動が出るかもしれないというので、敵は我々が出て来ることは読んでいますと秋津が答えると、それにしても厄介な時にお客さんを乗せちゃったな…と涌井群司令はぼやく。

「いぶき」の士官予備室には特別に2社だけマスコミ関係者が乗っていたのだった。

ネットニュース「P-Panel」記者 本多裕子(本田翼)は、日本に「いぶき」は必要なのでしょうか?と秋津に質問した映像を部屋で確認していた。

秋津は、その質問に対し、私がお答えすることではありませんと答える。

そこに、早いな!と言いながら入ってきたのは、東亜新聞のベテラン記者田中俊一(小倉久寛)だった。

田中は、自分たちだけが取材を許されてラッキーだった、何せ物議を醸した船だからね~と「いぶき」の取材ができるチャンスに恵まれたことを喜ぶ田中に、副長さんと艦長さんとはあまり仲が良くないんですって?と裕子が聞くと、あの2人は防衛大時代からのライバルで、艦長は空自、副長は海自に入ったと言う曰くがあるんだと田中が教える。

国会では、城山副総理が東亜連邦とは交渉しようにも国交がない、この際、断固たる手段をとるべきではないか!と垂水首相に迫っていた。

「いぶき」の士官予備室では、やって来た井上明信海幕広報室員(金井勇太)が裕子と田中に救命道具が渡したので、事情を知らない2人の記者は何事かと不思議がる。

田中記者は、まさか取材中止じゃないでしょうね?と不安がるが、士官予備室から離れないでくださいと井上から釘を刺される。

その頃、「いぶき」の戦闘司令所では、ミサイル発射を感知!との報告を受けた涌井群司令が待ち伏せか!と緊張する。

ミサイルは12発だと言う。

総員、衝撃に備え!と指示が出る。

迎撃ミサイルで11発は撃ち落としたが、逸らした1発だけ着弾し、艦後方が被災、艦載機が出せなくなったとの連絡が司令所に届く。

修理時間を聞くと24時間…と言うので、12時間で頼む!と涌井は頼む。

国会ではこの報告を受け、やられてるじゃないか!総理!防衛出動だ!と城山が苛立つ。

しかし垂水総理は黙ったまま動こうとはしなかった。

「いぶき」戦闘司令所では、敵方からミグ35、60機を搭載した空母が出て来たことを知る。

一方、士官予備室に軟禁状態になった裕子は、出発の時編集長から無理やり持たされた衛星携帯を取り出していた。

それを見た田中記者は驚きながらも、許可なしに情報を出すのは禁止されているからと釘を刺す。

ディレクターの藤堂一馬(片桐仁)やアシスタント吉岡真奈(土村芳)が働いていたネットニュース「P-Panel」編集室にやって来た上司の晒谷桂子(斉藤由貴)は、姿が見えない裕子は今「いぶき」に乗って取材していることを思い出していた。

国会内に詰めていた垂水総理はアメリカの副大統領に、米中露会議への出席で不在の大統領に現状の報告と我々は何としても国土を奪還するつもりであることをお伝えくださいと電話を入れていた。

「いぶき」では、東亜連邦の潜水艦が前方から接近して来たことに気づく。

直進すべきだと主張する秋津艦長と慎重論を述べる新波副長がそれぞれ違った意見具申をした後、涌井群司令は直進を命じる。

艦内の異常な様子に気づいた田中記者は、何と戦うんだ?と戸惑う。

敵潜水艦の魚雷発射口が開いたと気づいた滝潜水艦「はやしお」艦長は、ここでやろうってのか!と緊張する。

近距離にいる「はやしお」は危険です!と具申された涌井群司令だったが、こちらが先に撃てば、敵に攻撃させる口実を与えることになる、敵が撃つまでは1発も撃ってはならん!直進しろ!と命じる。

その直後、立ち上がった涌井群司令が倒れる。

敵艦直上通過します!とに報告。 撃ってこなかった!と部屋でモニターを凝視していた垂水総理は安堵する。

第五護衛隊群は24時間以内に波留間諸島に入りますと報告を受けた国会では、敵が撃っていたら、今頃…と城山副総理は青ざめる。

涌井群司令が重傷を負ったため、秋津艦長に指揮権が移譲されますとの報告が入る。

血税39億を注いだものをお釈迦にできるか!と垂水は呟く。

医務室に運ばれた涌井群司令は、見舞いに来た秋津に、耳をやられていてね…と、先ほどのミサイル被弾で負傷していたことを明かし、秋津一佐!指揮権を貴官に移譲する!と命じる。

通路に出た秋津は、新波副長と出会う。

このまま行けば確実に戦死者が出るぞと新波は警告する。

しかし秋葉は、違う!犠牲ではない!国民を守って死ぬなら自衛艦として本望さ…と反論する。

大便所から出て来た垂水総理が手を洗っていると、沢崎勇作外務省アジア大洋州局局長(吉田栄作)が話しかけてくる。

その頃、とあるコンビニの店長中野啓一(中井貴一)は、アルバイト店員の森山しおり(深川麻衣)に、しーちゃん、明日の遅番を頼めないか?ダメだよね?イブだしね~…とすまなそうに頼んでいた。

しおりが承知すると、喜んだ中野は自分はクリスマス用の長靴を作ってくるからとレジをしおりに任せ、自分は奥の控え室へと向かう。

「いぶき」では、レーダーで敵のステルス機が接近して来たのを確認したとの報告が入る。

その後、偵察機が鉄器を目視したとの連絡が入ったので、待機しろ、領空侵犯すれば、お前たちの出動だ!と航空部隊に秋葉は命じる。

警告射撃をして、直ちに帰投するとの連絡が返ってくる。

しかし、次の瞬間、ロックされた!との連絡の後、偵察機は撃墜される。

その連絡を聞いた城山副総理は、戦死者?!空自の偵察機が撃墜された!と驚き、覚悟を決めなければこの戦は負けるぞ!と垂水に言う。

しかし垂水総理は、戦後日本が自慢できることは1人の戦争による死者も出さなかったことだと考えています、軽々しく「戦」などと言う言葉は使わないで欲しいと山城に釘を刺した後、武力攻撃事態と認識します、国会へは事後承認ということにし、防衛出動を命じますと宣言する。

さらに垂水総理は城山外傷に、自衛権を発動する旨、国連へ連絡をしてくれと頼む。

「いぶき」の秋葉艦長にも防衛出動が発動された旨通達される。

その艦内放送を聞いた田中記者は、防衛出動か…、とんでもないことになったぞ…と緊張する。

それを聞いた裕子も、戦争が始まるんですか?と怯えたので、戦争と戦闘って違うんだけどね…と田中はベテランらしく教える。

艦載機の所にやって来た秋葉は、 淵上晋第92飛行群群司令(戸次重幸)が1人服務規程を復唱していたので途中から自分も同じことを言いながら近づく。

秋葉は、戦場で私情にとらわれると目が曇ると忠告する。

その頃、「P-Panel」の編集部では、 晒谷桂子が「いぶき」に乗り込んでいた優子に連絡を取ろうと試みていたが繋がらないと気づくと、以前やった日本初の航空母艦「いぶき」の再特集をやろうと言い出す。

コンビニでは、奥の控え室内で、中野店長がクリスマス用の長靴にお菓子を詰め合わせていた。

しおりがクリスマス用のギフトが全部出ちゃいましたけど、後いくつくらい注文しときますか?声をかけに来ても返事をしないので、大きな声を出すと、ようやく気づいたように耳から耳栓を外し、集中するために…と言い訳をする。

明日の午後までに300個長靴を作らなければ間に合わないんだと中野店長は苦笑する。

12:39 「いぶき」では潜水艦のスクリュー音を探知するが、それは敵艦ではなく、米仏英の潜水艦でこちらの様子を伺っているようだった。

その直後、戦闘機が5機向かってくるとの連絡が入る。

敵機のミグだったので秋葉は緊張する。

ロックオンされました!敵機ミサイルを発射!8発撃って来ましたと報告が入る。

頼むぞ「あしたか」!と新波副長が叫ぶ。

1発も撃ち漏らすな!全ミサイル撃破! 砲雷長!敵機は5機編隊だったな?敵のミサイルは8発…、一機撃ってない!と秋津艦長は指摘する。

11時方向にミグ! 敵機は低空で接近している、「あしたか」!ミサイルを撃つ時必ずホップアップするはずだ、一撃で撃破しろ!と秋葉は命じる。

この距離で逃げられるのか?と新波副長が案ずるので、ここはすでに戦場だ!と秋葉は答える。

「あしたか」ミサイル発射!敵ミサイルを破壊!1発は敵機を狙います!敵機破壊しました!との報告が入る。

忘れるな!この実感を忘れずに!と秋葉は全員に言い渡すと、新波副長はパイロットの捜索を命じる。

士官予備室にやって来た井上明信海幕広報室員に、さっき爆発音が聞こえましたが?と田中が聞くが、20分ほどで船を降りていただきますと伝えられたので、田中は約束が違うと抵抗するが優子は私、降りますと答える。

秋葉館長は新波副長と今の状況判断について話し合っていた。

垂水総理は、敵機を撃墜したと聞き愕然とするが、石渡俊通内閣官房長官(益岡徹)が、しっかりしろと励ます。

甲板に連れてこられた田中が待機していたヘリに向かっていた時、見送りに来ていた秋葉艦長に優子は、秋葉さん!艦長!もう一度聞かせてください!日本に空母は必要なんですか?と食い下がるが、私がお答えすることではありませんと秋葉は冷静に答えるだけだった。

すると優子はこの船にいさせてくださいと願い出たので、これまで以上に規制が厳しくなりますが?と秋葉は答える。

田中とともに士官予備室に戻ってきた裕子だったが、なんで私、あんなこと言ったのかしら?と自問していた。

「P-Panel」でパソコンに向かっていた藤堂は、隣の部屋でクリスマスソングを鳴らして喜んでいた別部署の連中に苛立ち、音を止めてくれ!と文句を言う。

コンビニの控え室に休憩に戻って来たしおりは、中野店長が詰めていたクリスマス用の長靴の中味を見ていたが、1つ1つに、店長手書きのカードが添えられていることに気付く。

サンタさんからのメッセージとつもりらしいが、買ってくれた子供が喜ぶんだよね~と言いながら、照れ臭そうに中野は言う。

「君がみんなを好きになれば、みんなも…」としおりが読み始めると、ここで読まないでよ~と店長は恥ずかしがる。

17:20 国会では外交努力で事態を回避しようと努力が続けられていた。

一般国民に被害が及んだ時、それが戦争だ! その頃、潜水艦「はやしお」艦長滝は、先ほどの敵潜水艦がまた迫って来たことを知り、こいつをやらなければ「いぶき」が危ない!と緊張する。

魚雷発射用意!目標的潜水艦! 敵、撃ちました! デコイ発射! しかし滝館長は、発射止め!敵艦との距離2000!最大全速!との指示を出し、敵艦に向かって行く。

その動きに気づいた「いぶき」の新波副長は、衝突コースです、下手をすると300人がこの海に沈みます!と緊張する。

敵の魚雷は「はつゆき」を捉えています! 任せてください! 潜水艦「はやしお」は敵潜水艦の上部に接触、「はやしお」の方の損傷は軽微で済む。

敵魚雷は「いぶき」の前に立ちふさがった「はつゆき」に命中炎上する。

「はつゆき」は我々の盾になったんだ!と秋葉は言う。

裕子は田中とともに甲板に出て、炎上する「はつゆき」を目の当たりにする。

ハンディカメラを持って出て来た裕子だったが、燃え盛る護衛艦を見た裕子は泣いていた。

井上広報官は、戻りましょうか?裕子に声をかける。

損傷した「はやしお」は呉に向かう。

垂水総理の元には、国連安保理事会が召集されたとの報告が入る。

国会では、垂水総理が、専守防衛を守っていると言うのに対し、城山副総理は援軍を送って一気に叩くべきだ!と強硬論を述べる。

「P-Panel」の編集部のモニターに、当然「はつゆき」が炎上してる映像が入って来たので、藤堂さん、来ました!と真奈が叫び、上司の桂子もモニターの前にやってくる。

「いぶき」の士官予備室にいた田中記者は、大丈夫だよね?これ、僕も貰っちゃていいの?スクープだよと優子が衛星携帯で送信した映像を見ながら興奮していた。 コンビニのレジにいたしおりは、急に客が増え出したので何事かと驚く。

街頭スクリーンに炎上する「はつゆき」に映像が流れたので、街ゆく人々は足を止めて、この衝撃的な映像に見入る。

国会では、この事態を知り、誰が映像を漏らしたか詮索し始めるが、垂水総理はこれ以上国民に隠しおおせないと判断、緊急の記者会見を行うことにする。

対応を間違えれば内閣が吹っ飛ぶぞ!と議員たちは緊張する。

「いぶき」の士官予備室にやって来た井上広報室員に促され、裕子は衛星携帯を持って行かれてしまう。

秋葉艦長の元には「はつゆき」の重傷者15名などと言う被害報告が届いていた。

携帯を持っていかれ消沈していた優子に、孫への土産として近くのコンビニで買ったんだけど、潰れちゃったから食べてよと言いながら、田中記者がクリスマス用のお菓子の入った長靴を差し出してくる。

裕子は、その中に入っていたカードに「世界は一つ、友達なんだよ」とメッセージが書かれてあったのに気付く。

カードに見入る裕子に気づいた田中は、良いこと書いてあってね…と嬉しそうに教える。

そのコンビニでは、夜を徹して中野店長がお菓子の長靴用に新しいカードを書いていた。

「いぶき」は前方から接近してくる駆逐艦を発見する。 あくまで我々を阻止するつもりか…と秋葉艦長は呟く。

こちらと2艦で600名の命を奪い合うのか…、敵は長距離ミサイルを持っています、ここで彼らを撃沈して、万が一国民に被害者が出たら、あなたが言う戦争が起きますと新波副長は意見具申する。 敵艦向かって来ます!との報告が入る。

秋葉艦長は、副長!「いそかぜ」の主砲ならどうかな?それなら敵は沈まない…と提案する。

主砲?と驚いた新波だったが可能性があることを察し、やってみましょう!と答える。

新波副長からのお世辞を交えた指示を受けた「いそかぜ」 岡部隼也砲雷長(和田正人)は、やれと言われればやるしかないと覚悟を決める。

本艦の主砲の射程は20マイルです、敵艦の手法よりは長いですが敵のレーダー圏内に入れば、敵の対艦ミサイルの射程範囲内に入りますと聞いた岡部砲雷長は、ピンポイント攻撃せなあかんと本気になった時に出る大阪弁になる

秋葉艦長は、予備室の報告に来て帰りかけた井上三佐を呼び止めると、何やら耳打ちする。

「P-Panel」編集室では、総理の会見が開かれると聞き、裕子の映像が会見を引っ張り出したのよ!と桂子が嬉しそうに自慢していた。

しおりのいるコンビニは、戦争になるかも知れないと焦った客で溢れていた。

忙殺されていたしおりは、男のアルバイト店員に、当分帰れそうにないねとぼやいていた。

記者会見に出た垂水総理は、これはあくまでも専守防衛であって戦争ではないとの見解を述べていたが、列席した記者からは、100機の戦闘機が攻めて来たら100人殺さなければいけないですよね?これはもはや戦争では?と詰め寄られるが、国民の皆さん、不確かな情報に惑わされないように!我が国は絶対に戦争はしません!と垂水総理は断言し、会見会場を後にする。

敵対艦ミサイル感知! 護衛艦「はつゆき」では、タンサムを発射するなど応戦体制をとる。 敵ミサイル撃墜! 敵接近中! 頼むぞ「いそかぜ」!と秋葉艦長は祈る。

こっからは時間稼ぎや!と岡部砲雷長は大阪弁を隠さなくなる。 照準OK! いてまえ~!と岡部砲雷長が叫ぶ。

第一目標、第二目標命中!全目標に命中! 敵艦の甲板に「いそかぜ」の主砲が命中し、敵艦は破損する。

ロックされました! 急いでバックや!と岡部砲雷長が叫ぶ。

交わせ~!と新波副長が「いぶき」から叫ぶ。 何とか敵ミサイルを交わした「いそかぜ」では、当たらんかった~…と岡部砲雷長が呆然としていた。

敵無力化やりました!「いそかぜ」は無傷です!「いぶき」司令所に報告が届く。

秋津艦長は医務室で寝ていた涌井群司令の所に状況説明に行く。

その帰り、通路で秋津は又新波副長と会い、言葉を交わし合う。

秋津は新波に2人目の赤ん坊が生まれるんだろう?と聞き、君の子供たちが将来夢が持てる、そんな国にならなければならないと伝えると、独身のお前からそんな言葉を聞こうとはなと苦笑すると、この船に半年も新波さんが乗っている気持ちがわからん…と秋津も軽口を叩く。

国会の外務省には、1時間前に安保理が始まったとの知らせが届く。

沢崎アジア大洋州局局長たちは、何とかして外交ルートを通じ、この事態の収束ができないものか努力を続けていた。

「いぶき」の司令所では、潜水艦が1艦増えています!中国艦です!との報告を秋津は聞き、勢ぞろいか…と呟く。

次の瞬間、ミグ発艦!10機!の報告。

戦闘機で対抗するしかないと判断した秋津は、アルバトロス隊に出撃を命じる。

各校このエレベーターは何とか間に合ったので、良くやった!と秋葉は労う。

第92飛行群群司令淵上と秋葉艦長が、アルバトロス隊の面々に、一機も失うな!迷ったら撃て!などと指示を出す。

出撃するアルバトロスたパイロット柿沼正人(平埜生成)は、迷わぬためのお守りだと呟きながら、1人息子を抱いた妻(横山由依)の写真を操縦席の前に置く。

士官予備室に軟禁状態だった裕子と田中記者のところにやって来た井上広報室員は、布を被せたトレイを差し出し、官庁からの差し入れの非常食ですと言って立ち去る。

布を取ってみると、そこには非常食とさっき取り上げられた衛星携帯が置いてあった。

ミグ、ミサイル発射!各自対応せよ! アルバトロス隊迫水洋平(市原隼人)が機上から飛行中の部下たちに指示を出す。

アルファの5機、各自、獲物を決めて狙え!発射! 2機撃墜! アルファ4機撃墜! ミサイル1発残っています!残り6発! 後2~3分は燃料が持つ…と「いぶき」の司令所で秋葉艦長は考えていた。

敵ミサイル発射!6発全てアルバトロス機へ! ミサイル6発に追尾された柿沼機は海面に向かって突進する。

自分が囮になる気だと気づいた秋葉は止めるように絶叫するが、海面に衝突する直前柿沼は脱出する。

ミサイルは海面で爆発、それを買う人下敵機は帰投してゆく。

秋葉は柿沼と敵機の生存者発見を命じる。

知らせを受けた垂水総理も、パイロットは?と案ずる。

「いぶき」では、敵の搭載機は60機、我々は15機、覚悟してくれと秋葉艦長が伝達していた。

海面を漂っていた柿沼の家族写真が回収される。

コンビニの奥では、まだ中野店長がクリスマス用の長靴を作っていた。

海上で捜査中だった柿沼が無事発見される。

国会では、総理!朗報です、敵のパイロットを1名救助しましたとの知らせが入る。

捕虜ということか… 助かった柿沼と、確保した敵のパイロットが担架に乗せられ「いぶき」甲板上に運ばれてくる。

敵パイロットは、柿沼が乗せられた担架を運んでいた隊員の足につけた拳銃を目にし、思わずそれを奪い取る。

次の瞬間、銃声が「いぶき」の甲板上に鳴り響く。

銃声に気づいた裕子と田中が出ちゃ危ないという制止を振り切り甲板に出ると、銃を奪って撃った敵パイロットの前に秋葉艦長が立ちふさがっており、生還したはずの柿沼は撃たれて絶命していた。

銃を敵パイロットに向けた隊員たちに、待て!と秋葉は制止する。

この野郎!助かったのに!と柿沼を救助した隊員は悔しがる。

敵パイロットの前に立った秋葉は、海は冷たかっただろう?今日はクリスマスイブだ、君たちの国ではどうか知らないが、今日1日くらい穏やかでありたい…と言葉を掛ける。 その言葉が通じたのか、敵パイロットは銃を落として涙す。

カメラを向けようとしていた裕子は、そうした2人の様子を見てカメラを降ろす。

秋葉は、彼を後置室へ、何か温かいものを飲ませてやれ…と命じ、亡くなった柿沼の目をそっと閉じてやる。

敵パイロットは連れて行かれ、残っていた隊員たちには新波副長が、各自持ち場に戻れ!と命じる。

士官予備室に戻った裕子は、撃つな!と部下を制した秋葉の姿とクリスマス用の長靴に入っていたカードの言葉を思い浮かべていた。

まだ呆然としていた裕子に、田中記者がしっかりしろ!と励まし、裕子に向けたカメラのスイッチを入れる。

私は今日、護衛艦が巨大な炎を上げているのを見ました…、血まみれの人が倒れているのを見ました…と裕子はカメラに向かい話し始める。

それは世界に向け発信する現場からの生の声だった。

国会では垂水総理の元に、安保理から電話が入りました!との報告が入る。

「いぶき」では、敵空母から24機の戦闘機が飛び立ったとの報告が入る。

「いぶき」側からは、スパロー隊が出撃することにするが、迫水も、私も行かせてください!敵の癖を知っていますと秋津に志願する。

秋津艦長は、敵討ちを考えるな、目が曇るぞ!と忠告し、箱水の出撃も認める。

さらに、敵潜水艦から8本の魚雷も発射される。

国会では、垂水総理に国連から電話が入っていた。

敵ミサイル8発発射! 24機のお出ましかと飛び立った戦闘機から敵戦闘機を発見した迫水が呟く。

その時、秋葉から無線が入り、迫水!聞こえるか?海面すれすれを飛べ!そして敵空母の側面に穴を開けろ!ただし、ホップアップはするな!と命じてくる。

しおりが働くコンビニは大混乱だった。

店長にも応援を頼もうと奥の部屋に向かったしおりだったが、徹夜した中野店長が熟睡しているのを見て、何も言わずに店に戻る。

「いぶき」と護衛艦「あしたか」「いそかぜ」は迫り来る敵を目前に緊張の極限に達していたが、その時、艦長!潜水艦です!敵との中間です!との報告が秋葉に届く。

ずっと潜んでいたのか…と秋葉は緊張する。

「あしたか」「いそかぜ」戦闘態勢! 魚雷10本来ます! 魚雷進路分かりました!5本は我が方に!残りは敵に向かっています!との報告を受けた秋葉は驚く。

迫り来る魚雷に全員が緊迫するが、何故か5本の魚雷は艦にに当たる前で全部爆発する。

自爆しているのか?と新波副長は驚く。

敵艦に向かった魚雷も、同じように爆発しています! その時、敵艦と「いぶき」たちの中間地点の海上に謎の潜水艦が浮上してくる。

それぞれの潜水艦に国旗が翻る。

アメリカ、フランス、中国… 国連のコードです! これ以上の戦闘は国連として許さないのか…と新波副長がつぶやく。

国会では垂水総理が現地からの映像をモニターで見ながら、間に合ったか…と安堵する。

俺たちだけじゃない、ハードルを超えたのは…と秋葉艦長もつぶやく。

初島に上陸した漁船団も島を離れ始めました。

沢崎勇作外務省アジア大洋州局局長も、慎重に行くぞ!とスタッフたちに檄を飛ばしていた。

世界中のスマホに、裕子が配信したメッセージ付き映像が流れていた。

その頃、ようやく目覚めた中野店長が8割方できた…と言いながら店に出てくるが、店内の棚の商品が全部消えていたので、え、何?泥棒!と驚き、しおりと男性バイトが床に伸びていたので、しーちゃん!怪我ない!と声を掛ける。

早朝、「P-Panel」から帰る藤堂に、一緒にビルから出てきた桂子一緒に飲みに行かない?と誘う。

こんな時間に開いてる店なんかありますか?と藤堂が聞くと、東京をなめるな!と桂子は笑って答える。

しかし藤堂は、やめときます、もう子供たちが起きてますから…と言うので、幾つになったの?と桂子が聞くと、5才年長さんですと藤堂が答えると、はい、メリークリスマス!5歳児用…と言いながら、持っていた紙袋を桂子は渡す。

総理執務室に戻ってきた総理は、当たり前の生活を守る…、そのための政治家だからなと石渡官房長官と2人きりで話していた。

石渡、もう3年やって良いか?と垂水総理が聞くと、石渡官房長官は苦笑する。

「いぶき」では、秋葉艦長が新波副長に、各部署の人員に随時食事を取らせるように指示していた。

艦長の食事は部屋に運ばせますと新波が答えると、いや、食堂でみんなと一緒に食べたい、戦闘機乗りでも船と海の話を聞かせてもらいたいと秋葉が言うので、新波副長はうれしそうに了解!と答える。

敵艦に穴を開ける直前、中止指令を受け帰投していた迫水は、じっとなくなった渕上の認識カードを見つめていた。

世界に向けた配信を送り終えた裕子もようやく眠りに就いていた。

海面をバックにエンドロール
 


 

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