白夜館

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花のヒロイン 
大阪万博関連作品

 

 

 

幻想館

 

来る

澤村伊智原作の映画化。

個人的には多少、実写版「進撃の巨人」途中降板と言う残念な過去への未練もあり、中島監督久々の空想系最新作と言う事で、映画館で本作の予告編に接した時点から期待が膨らみ過ぎた面もあるとは思うが、一言で言うと「残念な映画」だと感じた。

言わんとするメッセージも何となく分かるし、決して出来が悪い訳ではないのだが、途中までは凄くおもしろくなりそうな雰囲気なのに、後半は不完全燃焼…と言うか、これで終わり?と言う感じで、アイデアの詰まったコンパクトでスピーディなB級ホラーと言う感じでもなければ、かと言って予算を注ぎ込んだ見所満載のパニック大作と言う感じでもなく、何となくどっち付かずのやや中途半端で大味な普通の娯楽映画に収まってしまった印象。

主要な登場人物の誰1人として感情移入できる人物がいない上に、途中から登場するヒーロー的な人物はやや類型的で記号化されたキャラクターのように見えてしまうと言うのもあると思うが、個人的に気になったのは、この作品、話の骨格が過去の有名なホラー映画をいくつかアレンジした物のように見え、凄く斬新な物を見たと言うインパクトが希薄なのだ。

もちろん全く同じとか模倣と言う事ではなく、アレンジしてあるので表面的にはかなり違って見えるのだが、その骨格部分以外にも、ここはあれじゃないのか?とか、個人的に連想する映画が何本かある。

原作者は映画好きなのではないかと言う気もする。

そもそも、冒頭から主人公と言う感覚で見ていた人物が途中で…と言うのも有名な映画があるくらい。

未読の原作ではその辺の部分もきちんと説明されているのかもしれないが、映画としてはどうも雰囲気だけで強引に展開しているような印象が残る。

ただし、ホラー映画で似たり寄ったりの発想やパターンはありがちなのでたまたまそう感じただけなのかもしれないが、どこかで見た気がすると言う事は怖さもその分だけ希薄になると言う事だ。

前半に半端な霊能力者として登場する比嘉真琴が、自分は頭悪いから…などと最初から言い訳したり、民俗学者も怪異の解明などに熱心ではないため、怪奇の謎を探求するようなスリリングさは最初からない。

では、超常現象を今まで味わった事がないような見世物演出で見せて行くのか?と言うと、どこかで見たようなアイデアの組み合せのようにしか見えず驚きがない。

本作には日本独自の因習や民間伝承的な要素、現代の核家族への風刺など色々な要素が入っており、それなりに展開の意外性もあるので、類似など気にならない人には普通に楽しめるとは思う。

だが、本作に描かれているような人物や核家族の問題を抱えている家族は現在では特に珍しくないような気がする中、何故、特定の家族だけに怪異現象が起きたのか?と言う辺りの説明がきちんとされていないように思えるのも気になる所。

太古の昔からある地方の森の中にいたに違いない魔物が、最終的にあれほどの総力戦で迎え撃たねばならないほど巨大な力を持ち得たのは何故なのか?と言う部分の説明も弱い。

そもそもブッキー演じるキャラって、魔物に取り憑かれるほど酷い人間か?と言う疑問もある。

確かにお調子者で実がなく付き合いたいとは思わない人間だとは思うが、子育てを妻に押し付けたり、口先だけで行動が伴わない男などざらにいるだろう。

妻の方もそうで、都会の中で孤立し、子育てでノイローゼ気味になるなど珍しい話でもあるまい。

そうした親として完璧ではない人間は、子供や妖怪から罰を受けるほど悪い人間だろうか?

どんなに欠点があろうと、極端な話、虐待を受けていたとしても、親は子供にとってはかけがえのない保護者だろう。

その親を振り向かせようとする子供が本能的に持つ無邪気な残酷さが魔物に利用されたということなのだろうが、見ている側からすると悪人が罰せられる「因果応報」的な意味合いのように見えてしまい、その理不尽さにどうにも釈然としない部分がある。

もちろん超自然現象が登場するホラーなので釈然としない部分が残るのが悪い訳ではないのだが、それが怖さを強調していたり、独特の魅力を生み出していると言う訳でもないように感じるのが惜しまれるのだ。

ハリウッド映画や子供向けの作品なら、親は恐怖を味わった後改心し、親子の絆が強まる…と言う分かりやすいハッピーエンドになりそうなのだが、この作品はそう言う展開ではなく、では大人向けのラストになっているかと言うとそうでもない。

興行的には、そんなにどぎつい表現はないのだが、血はどばどば出て来るしベッドシーンなどもあるためか「PG12」区分になってしまい、その辺が客層を限定してしまったのかな?と言う気もしないではない。

通常この手のホラーの興行的成否は10代の女性層が牽引する物と思っていたが、今回、女性客はいたが、特に女子中高生が客席に目立ったと言う印象はなく、その世代を惹き付ける何か(キャスティング?)がなかったのかもしれない。

ただ個人的にキャスティングはおもしろく感じた。

「どろろ」(2007)で百鬼丸を演じて妖怪に強そうだった妻夫木さんが正反対のダメ男を演じていたり、真面目でモテ男風の岡田准一さんがこれまた汚らしいダメ男役を演じていたりと、身近にいそうなダメ男の集合振りをイケメンたちが演じていると言う部分が男の目で見るとおもしろいのだが、それを若い女性層などがどう感じたかは分からない。

▼▼▼▼▼ストーリーを途中まで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
2018年、「来る」製作委員会、澤村伊智「ぼぎわんが、来る」原作、岩井秀人+門間宣裕脚本、中島哲也監督作品。

ドン!と言う大きな音と東宝マーク

(回想)山の中にいた女の子が一緒にいた男の子に… 血!血が… 呼ばれてるねん、私悪い子やから…と打ち明ける。

寝とる時、力一杯引っ張られて連れて行かれそうになるねん… お山に連れて行かれるねん… 逃げられへんねん…、怖い?と少女は男の子に聞き、秀樹も呼ばれるで、きっと…、だって嘘つきやから…と断言する。

(回想明け)携帯がいきなり鳴ったので、慌てて廊下に落したので、急いで拾い上げて耳に当てた田原秀樹(妻夫木聡)は、もしもし?来ました?と相手が聞くので、まだです、でも準備は終わりましたと答える。

廊下には水を張った茶碗や丼が所狭しと並べられていた。

もしもし鏡も?と聞かれた秀樹は何かを思い出し、慌てて動こうとして滑って転ぶ。

だから秀樹さん…と相手は落ち着かせようとするが、化粧台の前に1つだけ残っていた手鏡を秀樹は割る。

大丈夫、ではドアを開いて下さい、迎え入れましょう、あれはあなたに会いたがっていると電話の相手が言うので、来たらと怯えながら秀樹が聞くと、大丈夫、これから先は私の仕事ですと相手は答える。

タイトル

山の中を走る細い道を走る車の鳥瞰。

ね、大丈夫?と後部座席で不安そうな香奈(黒木華)に、完璧だって!オヤジもおふくろもビビるってと秀樹は満面の笑顔で答え安堵させる。

秀樹の祖父の十三回忌に向かう所で、結婚直前の香奈は初めて実家に行くので緊張していたのだった。

お寺の境内で香奈を出迎えた親戚のおばちゃんが、顔ちっちゃ!とか色白!などとお世辞を言って来るので、秀樹は香奈を庇いながら本堂に上がる。

子供が走り回る法事の後、自宅で親戚一同揃っての宴が始まる。

そんな中、香奈は今ひとつ親戚たちのばか騒ぎに馴染めないまま時間を過ごしていた。

秀樹の母親(石田えり)らは香奈を客扱いする中、老人客が宴会席の中でも走り回る子供たちに、親の言う事聞かねえ子は、ぼぎわんに連れて行かれるど!と脅して来る。

悪い子さろうて山に連れて行くど!などと言うので、ぼぎわんって何?と子供が聞くと、怖い化けもんじゃと他の大人たちも面白がって教える。

親戚たちの中では、秀樹は東京に出て成功したただ1人の人間であり、東京で失敗し出戻って来て親戚一同から疎まれている男もいた。

ぼぎわんではなくガンコ言わんかったかな?ガコちゃうか?など化物話で男たちは盛り上がる。

そんな中、昔女の子おらんくならんかったか?と誰かが言い出す。

その時、おばあちゃんは?と女が気付き、便所では?などと誰かが言うので、秀樹が立ち上がり廊下に出ると、廊下にしゃがんでいた祖母が開いた戸から外を指差し、呼ばれたんや、主事さ~んて…と答えた祖母が秀樹の顔を見て、あんたは?と聞くので、秀樹だよ、孫の…と答えると、既に認知症が始まっていた祖母は、あんた秀樹さん?と言いながら笑う。

部屋に戻ると、母親と女性陣たちが香奈に秀樹の子供時代の写真を見せながら、いつでも違う服じゃないと写真に写りたがらん目立ちたがりの子やったんよなどと教えていた。

その時、この子や!と一枚の写真を指差した女が、何ちゃんやった?あんた良う遊んでたやろ?と秀樹に聞いて来るが、秀樹は忘れたと笑う。

この子の事で色々噂があったんや、親に殺されたんやないかなんて…、秀樹、何ちゃんやった、あの子の名前?とまた母が聞く。

(回想)もう臨終間際の祖父が意識もなく自宅で寝込んでいた時、子供時代の秀樹が1人で留守番していると、玄関のガラス戸に青虫が1匹へばりついていた。

やがてそのガラス戸がガタガタ音を立てたので、怖々座敷から身を乗り出した秀樹は、曇りガラスの向こうに誰かがいるのに気付いたので、えっと…、誰もいません点と答える。

すると大量の青虫がガラス戸から下に落ちて来る。

外にいる誰かの掌の影がガラス戸にへばりつく。

祖父は今にも息絶えそうな状況だった。

(回想明け)女性陣は麻雀をしていたが、その横で居眠りから目覚めた秀樹は、香奈の姿が見えない事に気付き外廊下に出て見ると、庭先でタバコを吸っている香奈を見つける。

縁側に2人揃って座ると、私、家族って慣れてないから…、大丈夫かな、私…と香奈が又不安がるので、完璧だよと答えた秀樹はそのまま庭先で香奈にキスをする。

秀樹と香奈の結婚式 招かれた女性客たちは、遊び人の秀樹が選んだ香奈のことを地味で、意外じゃない?などと噂し合っていた。 式では、新郎新婦の顔写真を引き延ばしたもので寸劇風に2人の出会いの説明が始まる。

月島製菓の社員秀樹がとび込みの営業で入ったスーパーでレジを打っていたのが香奈だったと説明されるが、客たちは、金貸していたらしいよ秀樹、奥さんに相当借金があったらしいよと噂する。

キャンドルサービスをしていた香奈が、子供だけのテーブルがあったので、お母さんは?と聞くと、つまんないから帰るって!と子供は答える。

その後、若い連中だけの二次会で、香奈は秀樹の高校時代からの大親友で、今は大学で民俗学を教えていると言う関西弁の津田大吾(青木崇高)から挨拶を受ける。

他の女客たちは、津田がまだ独身だそうよなどと噂する。

その間、疲れ切った秀樹はテーブル席に突っ伏してねていたが、ふと気がつくと香奈が赤ん坊を抱いていたので驚く。

出席者の子を抱かせてもらったらしいが、それを見て感激したらしき秀樹は、あのさ、香奈、絶対作ろうよ、2人の子供…とうるうるしながら香奈に言う。

その後、新婚生活を始めた秀樹に、出来たわよ赤ちゃん、今日病院に行ったら3ヶ月だって!と香奈が報告する。

僕らは遂に新しい命を授かったんだ!命の音を聞くだけでただ涙する…と、赤ん坊のエコー写真や心音を聞いた秀樹は感激し、2人でちゃんと育てよう、そしてそれを世界中に発信するんだ!と香奈に伝える。

こうして秀樹の「泣き虫パパの子育て日記」なるブログが始まる。

国の母親からばあちゃんが入院したとの電話があり、お守りは届いたか?と言うので、多過ぎだよ、そこら中の神社からかき集めたんじゃないかと思ったよと秀樹は笑う。

育児本などを購入し育児パパを目指す秀樹は、下が公園のマンションの自室に社員仲間たちを招待する。

うるさい同僚の高梨重(太賀)がベランダに出たのを見計らい、硝子戸を閉めた秀樹は、ブログに書いて「両親学校」で出会ったパパ友の進藤さんなどを紹介するが、同僚たちは、いくらなんですか、このマンション?などと下世話な事を聞いて来る。

知ってるよと言う声があがり、探すの手伝ってもらったからななどと秀樹が苦笑している時、ベランダに閉じ込められた高梨に気付いた女性社員が硝子戸を開けて中に入れてやる。

酷いよ!などとぼやきながら高梨が入っていた時、突然外から強い風が吹き込み、グラスが床に落ちて割れたので、香奈が破片を拾おうとしゃがむと、呼ばれていた津田も一緒に手伝ってやる。

その部屋には秀樹の母親から送られて来た大量のお札やお守りが飾られていた。

廊下にも4つお守りが置いてあった。

そんな中、身重の香奈が、ちょっとヤバいかも…、気持悪い…と秀樹に物陰で体調不良を訴えるが、後ちょっとだから…と秀樹は我慢させる。

客たちと記念写真を撮った秀樹は上機嫌で、最高の仲間と最高の家、愛しのベビちゃん、早く出て来ておくれとブログに書き込む。

翌日、会社で仕事をしていた秀樹に隣りの席の高梨が、お客さんですよ、知紗さんの事で話があるって…と伝えると、驚いたように秀樹は、本当に言った?知紗って?と聞き返し、階段を下りる。

途中で会った女性社員が、この間、デートしたわと津田さんと…と秀樹に教えて行く。

玄関口に降りて来た秀樹だったが、外が大雨の中、ロビーには誰も客などいなかったので戸惑っていると、後から降りて来た高梨がいません?と言いながら近づいて来る。

どんな人?と秀樹が聞くと、女の人で…と思い出そうとした高梨だったが、分かりませんと不思議そうに言うので、名前は?と聞くと、やはり思い出せない風で、分かりませんと苦笑するので、客の名前聞かないなんて事はないだろう?と秀樹は文句を言う。

すると突然、高梨のYシャツの右肩部分が赤く染まり出し、苦しそうにその場に倒れたので、どうした!と秀樹は驚き、エレベーターから下りて来た女性社員たちは血まみれの高梨を見て悲鳴をあげる。

その夜、自宅で香奈の足の爪を切ってやりながら秀樹はその不思議な出来事を、医者も別に問題ないですって…と報告する。

その後、秀樹は生まれた女の赤ん坊に、前から考えていた通り知紗と名付けブログに写真を載せて報告する。

入院していた高梨を見舞った秀樹は、生まれたんでしょう?とベッドに寝ていた高梨から聞かれたので、写メを見せてやるが、暗いな~この部屋…と言いながら窓のカーテンを開けようとする。

するとペットボトルの水をぐい飲みし始めた高梨が、喉ばかり渇いちゃって…と言い訳すると、良いっすね先輩は、奥さんと子供も出来て、車内の女ともガンガンやりまくって!と言い出したので、何言ってるんだよ?と秀樹は苦笑するが、何の呪いだよ!何だよ俺だけ!と呪詛しながら高梨が苦しみ出す。

急に何かヤバいのが俺の中に入りこんで!と高梨が呻くので、あっけにとられた秀樹は、医者の言う事を良く聞いて早く戻ってくれよ、君は会社のムードメーカーじゃないか!とお世辞を言う。

すると高梨は苛つくのはそう言うセリフなんだよ、欠片も思ってないくせに!ぺらぺら嘘ばっかり…と高梨が指摘して来たので、酷えな…と秀樹がぼやくと、酷えのはどっちがですか!と高梨は言い返して来る。

2年後 ノリノリの女子高生が歌っている隣りのカラオケにイクメン仲間と集まって楽しんでいた秀樹は、知紗ちゃん大けがしたって?と聞かれたので、すぐ病院に連れて行ったと答えると、感動しましたとブログを通じてそのイクメン振りを知っていた仲間が褒めたので、自然にやっているだけだよなどと秀樹は謙遜してみせる。

しかし秀樹は妻の香奈の様子がおかしい事に気付き出す。

帰宅すると部屋が散らかったままだったり、知紗が泣いているのに香奈が寝室に閉じこもったまま出て来ない事があったからだ。

寝室のドアをノックしてもベッドに座っていた香奈は無表情のまま押し黙っており、返事すらしなかった。

(回想)家で1人留守番をしていた秀樹は、玄関のガラス戸を叩く音に怯える。

僕、秀樹なんかじゃないよ点と嘘をつく。

ガラス戸にへばりついていた青虫が床に落ちる。

知紗!と呼びかけながら両手の影が玄関の曇りガラス戸の向うに貼り付く。

(回想明け)ある日、どうした?と秀樹が聞くと、来たよ、連れてくよ知紗を…と知紗が言い出したので、思わず抱きしめてやる。

飲み屋に呼び出した津田に相談する事にした秀樹は、「元興寺」が「がごぜ」と呼ばれたりすると話していた津田は、ぼぎわんなど聞いた事がないと言うので、お前専門だろう?どうしたら良い?対処法とか…と迫る。

鬼太郎か目玉のオヤジにでも聞け!とはぐらかせた津田だったが、疲れたのか?どうした?と秀樹の様子を案じて来る。

高梨って覚えてるか?と秀樹が聞き、死んだんだよ、1年以上入院して…、咬み傷だって言うんだ医者が…、背中に付いた変な傷だった…、乱杙歯の何かに食われたみたいだって…と説明すると、もっと明るい話しよ!明るい話!と津田は笑って話を反らそうとする。

そこに、この辺で…と店員が閉店を知らせに来るが、秀樹はうるさいな!と怒鳴りつける。

その頃、自宅にいた香奈は1人泣き続ける知紗を抱きしめていた。

妖怪っているのか?と飲み屋で秀樹が聞くと、おらんよ、民俗学者がこんな事言うたらあれやけど、昔から間引きとかあったんや、それを子供が妖怪に攫われたとか言うて、親が殺したのをごまかしているんやないか?と津田は自説を述べるので、来たんだよと秀樹は言う。

(回想)帰宅した秀樹は廊下に大量のお札やお守りが切り裂かれて落ちていたので、何事かと部屋の中に入ると、無惨に破壊された部屋の中で知紗を抱いた香奈がじっとしていたので、何があった!何か来たのか?と聞く。

その時、突然電話が鳴り出す。 受話器を取ると不気味な声が聞こえたので秀樹は思わず電話を投げ捨てる。

(回想明け)話し終えた秀樹は津田の手をぎゅっと握りしめる。

秀樹はその後、無精髭の野崎和浩(岡田准一)と言うオカルトライターが運転する車に津田と乗りどこかへ向かう事になる。

こいつの別れた女性編集者の知り合いだと津田は秀樹に説明し、屑みたいな奴だけど信用できると太鼓判を押す。

これから会いに行くのは比嘉真琴と野崎が言うので、除霊師かなんかですか?と秀樹が聞くと、ただのキャバ嬢さと言う。

アパートに着くと下着姿のまま寝穢く寝ていた真琴を、ほら起きろ!ブスが!と罵倒しながら野崎が蹴って起こす。

何故か腹に傷跡がある真琴が起きて秀樹らに自己紹介すると、化物がいるんだ、分かるか?と野崎が聞くので分かると言う。

どんな物でしょう?と秀樹が聞くと、無理無理!理屈のような物は…、私バカだし…と答えた真琴は、対処法のような事なら…、病名は分からないけど直し方は分かるみたいな…と言うと、ぐっと秀樹の左手を掴む。

それは基本遠くにいて、時々来て…と真琴は話し出すが、でもご免、この人と2人にして下さい、色々聞こえるので…と言い出したので、津田と野崎は部屋を出て行く。

アパートの前に出て来た津田は野崎に、アヤちゃんと別れたのは何が原因なんだ?と聞くが、野崎が黙っていると、突然、バカにするな!と怒鳴りながら秀樹が出て来たので、何を言われた?と聞くと、ちゃんと奥さんとお子さんを大切にしてって…、こっちは必死に2人を守ろうとしてるのに!と怒りながら秀樹はさっさと帰って行く。

アパートの部屋に戻った野崎は真琴に、本当の事言われて傷ついたのか、バカだね…と秀樹の事を嘲る。

すると真琴は、もう1人いたでしょう?と言うので、津田さんか?と野崎が聞くと、あの人、何かちょっと…と真琴は口ごもる。 アパートの外では、何か役に立つかなって思って…、ご免な…、次は何か別のを探しとくから!と津田が帰って行く秀樹に詫びていた。

2歳の君は今どんな夢を見ているのか?(秀樹の独白)

自宅マンションに帰った秀樹はさっき別れたはずの野崎と真琴が来ており、知紗と仲良く遊んでいた真琴は帰宅した秀樹に気付くと、さっきはごめんなさい!私バカだからちゃんと答えられなくて!と頭を下げて来る。

香奈は津田さんからさっき電話をもらったわと笑顔で言う。

下の公園に降り、どう言う事ですか!と秀樹が困惑すると、真琴がもっと調べたいって、言い出したら聞かないんだから…、奥さんには俺はあんたの古い友人で真琴は俺の妹って説明していると野崎もうんざりしたように教える。

真琴はちゃんと調べたいんだ、この家とあなたを…と野崎が言うと、知紗が…、香奈が笑っているのを見ると久しぶりな気がして…と打ち明ける。 野崎と真琴は、翌朝、香奈手作りの朝飯をマンションで食べていた。

その後秀樹と野崎は下の公園のベンチに座ると、公園でイクメン仲間が挨拶して来る。

しかしそのイクメンパパは野崎がタバコを吸い出したので近づいて来る事はなかった。

ここ禁煙ですよと野崎に教えた秀樹は、情けないな~、不安で…、お守り貼るくらいしか出来ないなんて…と自嘲する。

知紗と言う名は?と野崎が聞くと、ふと思いついて付けましたと秀樹は答え、あなた、子供は?と聞くと、いませんと野崎は答える。 子供なんて嫌いなんです、不気味で厄介な生き物でしょう?などと野崎は暗い目で答える。

その時、部屋から秀樹に電話が入り、スマホを聞いた秀樹が知紗が!と驚いたので急いで2人は部屋に戻る。

部屋の壁に下げてあったお守りが見ている前で引きちぎられる怪異現象が起きていた。

そんな中、香奈は知紗を抱きしめて怯え、真琴は果物ナイフを握りしめていたので、止めろよ真琴!と野崎が叱る。

真琴は、帰った…と行って脱力する。

その直後、真琴のスマホが鳴り出し、それに出た真琴はそのスマホを秀樹に差し出し、話したいって、私のお姉ちゃんが…と言う。

秀樹が真琴のスマホに出て見ると、田原秀樹さんですね、真琴の姉ですと自己紹介した相手は、今日の相手は正直真琴の手に負える相手ではありません、強い力であなたとあなたの娘さんを狙っていますと言うので、どうしてそんな!と秀樹はパニクる。

すると真琴の姉は西側に窓がありますね?その窓の外に生き物の虫がいますね、すぐに焼き殺して下さい、それが呼び込む手伝いをしていますと指示して来る。

ベランダの鉢植えを見に行くと、観葉植物にたくさんの青虫が付着していた。

残念ながら私はそちらに行くことが出来ません、大事な案件を抱えています、それで代わりの人物を紹介します、マスコミにも登場している有名な方ですとスマホで姉は秀樹に言って来る。

その人物とはTVなどにも良く出ていたが、最近はあまり見かけなくなった逢坂セツ子(柴田理恵)と言う人物だった。

秀樹は野崎の車でそのセツ子に会いに行く事になるが、ユタと言う沖縄のシャーマンで、真琴は知紗と遊んでくれているし…と野崎から説明を受けると、その手の霊能力者に懐疑心を抱いており、乗り気ではないような口ぶりで答えたので、急ブレーキをかけ車を停めた野崎が、じゃあ止めますか?と聞く。

結局「廣州亭」と言う中華料理屋で会う事になる。

左目が白濁しているセツ子は、秀樹と野崎と同じテーブルで対面し、来ますと言う。

その直後スマホが鳴り出したので、電話出て下さい、好きなだけしゃべらせれば良いわとセツ子は指示する。

パパ~と知紗の声が聞こえたかと思うと、ねえ秀樹、あなた秀樹さん?営業の田原さんですねなどと色々な声が呼びかけて来る。

それを2本のイヤホンで秀樹と一緒に聴いていた野崎が、他人の声でしゃべっていますと指摘する。

いつまで主役気取りなんだよ!…と結婚披露宴での同僚たちのヤジの後、たかが1人生んだだけで…とか、糞みたいな母に育てられたくせに!と秀樹の罵声が聞こえて来たので、俺はこんな事言ってない!と秀樹は動揺しながら返事をする。

セツ子はしゃべらないで!と注意するが、次の瞬間、セツ子の左のテーブルでラーメンを食べていた女性客が悲鳴をあげる。

血しぶきがテーブルに飛んで来たからだった。

床にはセツ子の左腕が落ちていた。

赤い靴を履いた女が店から出て行くのを秀樹は見たような気がする。 血で染まった掌が店の曇りガラスの外から押し付けられそのままぐいっと横に血糊の痕を滑らせる。

救急車を呼んだ野崎は、田原さんは帰ってくれ、ここは俺がもこるからと言うので、そのまま呆然としながら秀樹は店を後にする。

自宅に向かうタクシーの中から香奈に電話を入れた秀樹は、知紗を連れて家を出ろ!家から離れろ!と指示するが、電話の相手が真琴に代わったので、2人を連れて部屋を出るよう頼む。

その直後、自分がこのまま家に戻ってももう部屋には誰もいない事に気づき、タクシーを途中で止め、苛つく運転手を無視して善後策を考え始める。

その時、スマホが鳴り出したので出ると相手は真琴の姉で、妹から連絡をもらったと言い、強い意思があなたを狙っています、ご家族には会わないで下さい、ご家族も危ない!と警告して来る。

私が対処します、あなたはその手伝いを仕手もらいます、出来ますか?あなたとあなたのご家族のために…と姉は言って来る。

秀樹はやりますよ!パパなんだからと答えると、香奈と知紗を守らなきゃ!と自分に言い聞かせ、和光にお願いしますと運転手に頼む。

既に無人になった部屋に戻って来た秀樹は、真琴の姉の指示を電話で聞きながら、窓に鍵をかけ、カーテンを閉め、水を張った丼や茶碗を廊下に並べ、家中の全ての包丁や刃物を集め、ひとまとめにして引き出しにしまい、そして家中の鏡を割って行く。

準備終わりましたか?と念を押されたので、全部…と言いかけた秀樹だったが、急に何かを思い出し走り出そうとして廊下で滑って転ぶ。

田原秀樹さん?と姉はスマホから呼びかけて来る。

秀樹は割り忘れていた最後の手鏡を割ると、開けました、ドアを!全部あなたの言う通りに…と答える。

アレを迎え入れます、私の仕事です…と姉が言って来る。

昔、俺もきっと呼ばれるって言われました、ある女の子に…と秀樹が打ち明けると、その子の名は?と聞かれたので、赤い靴の事しか思い出せなかった。 その時突然、家の卓上電話が鳴り出す。

出ないで下さい、アレですとスマホの姉は指示して来たので、そのまま放ってておくと留守電メッセージに切り替わる。

それが終わると、真琴の姉です、今起こっている事はアレの罠です、包丁も鏡もアレが苦手な物ですと卓上電話の相手は勝手に話し続ける。

スマホの方の姉は動かないで!と命じるので、秀樹はどちらが本当の姉の言葉か分からなくなる。

田原秀樹さん?呼ばれてしもうた、もう逃げられへん、行こう?だってあんた嘘つきやから… 何者かが玄関から水の張った丼や茶碗の上を走って部屋に入って来る。

ガラス戸が割れ、血が滴り落ちる。

(回想)森の中で2人きりになった少年時代の秀樹に、怖い?と女の子が問いかける。

赤い靴の中には青虫が大量に入っている。

(回想明け)秀樹は床に倒れていた。

その腰から下はなくなっていた。

1年後

秀樹が死んで、香奈はまた元のスーパーのレジ係の仕事を始めていた。

そんな香奈に知紗を預けている保育園から電話が鳴り、知紗が熱を出したと言うので、店長(伊集院光)に詫びながら早退し保育園に行ってみると、体調が不安定で7度8分あると言う。

この程度で連絡されても…と香奈は困惑するが、何かあると、他のお子さんに迷惑がかかりますからと先生から言われると、そのまま知紗を連れてバスで帰宅するしかなかった。

こうした生活を続けるうちに、香奈は日常でのイライラを知紗にぶつけるようになって行く。

やむなくスーパーの事務所に知紗を連れて来る事もあった。

1人でお絵描きをしていた知紗に上手だね、何描いてるの?と店長が笑顔で聞くと、お山!と知紗は答える。

しかし知紗はすぐに熱を出したりして、さしもの店長もここは託児所じゃないから!と慌てて世話をしに戻って来た香奈に注意し、帰って良いよ、今日は…と苛立ったように指示する。 秀樹の家からも絶縁状態になった。

病院に知紗を連れて行った香奈はちゃんと寝てます?と聞かれたので、知紗のことかと勘違いするが、あなたに聞いてるんです、親のストレスが子供たちに影響を与えるんですと医者は指摘する。

このところ知紗がママ、パパは?と繰り返し聞いて来るので、苛立った香奈は怒鳴りつけた事があった。

秀樹の母がなじったこともあったが言い返さなかった… 秀樹はブログを更新するだけで子育てしているつもりだったようだが、実際は知紗のおむつ替え1つやった事はなかった。

私は秀樹が死んでくれて嬉しかった…(と香奈の独白) 香奈は仕事の合間にタバコを吸うようになっていた。

1年2ヶ月前

ある日、日で駅のマンションを訪ねて来た津田は、秀樹は?と香奈に聞く。

パパ友の会合、イクメンの集まりよ、日曜に家にいると子供の面倒見なきゃ行けないでしょう?と香奈は皮肉を言うので、でも知紗ちゃんが額に大けがした時は色々やったとブログに書いてたけど?…と津田が意外そうに聞くと、あの人、ぼーっと立ってただけよ、血を出して倒れている知紗に触りもしないで!と香奈は言う。

(回想)知紗を連れて行った病院に付いて来た秀樹がずっとソファでブログの更新しているのに苛立った香奈が病室から出て来て、突っ立っているだけで父親なの!と文句を言うと、偉そうに、1人生んだくらいで…と秀樹は言い返して来る。

そっちはどうなのよ、母親として完璧なの?君に子育ての何が分かるんだよ?と秀樹が言うので、あんな酷い母親に育てられたからだって言うの!と香奈は切れる。

(回想明け)そんな話をする香奈に、給付金が出るんや、仕事替えた方が…と勧める。

香奈は、やっぱ私1人じゃ無理なんかな〜…と呟く。

(回想)シングルマザーに育てられた香奈は、母親からきれいにしなきゃ…などと言われ、口紅を塗られたときの事を思い出す。 あんたなんか生んだから!と香奈に日頃の不満をぶつける母だった。

(回想明け)そんな香奈を見かねた津田は、あかんで、勝手に暗うなったら…と慰め、がんばってるやん、香奈ちゃん…と雨の日、津田は励ます。 いつしか津田と香奈はキスをしていた。

そんなある日、野崎が珍しく香奈を訪ねて来る。

真琴ちゃん元気?と香奈が聞くと、あれから引きこもっちゃって…、ご主人が死んだのは自分のせいだなんて思い込んで…と野崎が教えると、妹じゃないでしょう?と香奈は苦笑して指摘する。

野崎は、リビングにある秀樹の仏壇に、見慣れぬお札が置かれているのに気付き、これは?と聞くと、津田がくれた物だと言う。

野崎は持って来た2種類のお守りを取り出すと、これは最初にご主人が帰宅した時廊下に落ちていた奴、こちらは僕らの目の前でちぎれた奴、切り口が全然違う…おかしいでしょう?知り合いに調べてもらったんですけど…と香奈に見せる。

すると香奈は、最初のは私がハサミで切ったから…とあっさり打ち明ける。

(回想)自宅の台所で夕食の準備をしていた香奈に会社から秀樹が電話をして来て、久しぶりに外で食べない?と誘うので、もう準備してるし…と香奈が戸惑うと、電話を代わった知紗に秀樹は今晩何食べたい?などと聞くので、知紗は好物のオムライス!と答える。

じゃあ、お家でご飯食べるのと外でオムライスとどっちが良い?などと誘導尋問するので、知紗はオムライス!と答えるので、香奈は横から電話を切ってしまうが、知紗はママ、オムライス!と要求し出す。

あの人、私や知紗の気持なんかどうでも良いの、良いパパぶって!と香奈は秀樹を罵る。

(回想)知紗はオムライス!オムライス!と香奈の横で連呼し始めたので、そのあまりのしつこさに堪え兼ねた香奈は癇癪を起こしてフライパンで炒めていたスパゲティをシンクに投げ捨ててしまう。

香奈の豹変に怯えて泣き出す知紗。

興奮状態の香奈は部屋中を荒らし始め、その場にあったハサミを手に取る。

その後の事は良く思い出せなくて…(香奈の独白)

香奈は、自分がハサミで部屋の壁に飾ってあったお守りの類いを切り刻む。

その後、帰宅した秀樹は廊下に散乱しているお守りの残骸に驚き、さらに部屋の中も荒らされており、その中で泣いている知紗を抱いていた香奈を見て怪奇現象だと信じ込み、何か来たのか?と聞く。

(回想明け)話を聞き終えた野崎は、アレが来たと思ったのか…と最初の騒動の実態を知る。

ご主人は俺にはあなたと知紗ちゃんを守ろうとしていたように見えましたが…、空回りしていたけど…、ま、今さら言われてもでしょうけど…と野崎は言う。

その後も知紗のことでたびたび仕事を途中で抜け出そうとするので、さすがに柔和だった店長も香奈の度重なる早退に注意する。

しかし香奈は無言で店から飛び出して行く。

その日は保育園で自分の孫に知紗が靴を投げつけて笑っているんだから、どっかおかしいんじゃないか!…と呆れたように老人が訴える。

香奈は何も返事をせず、ブランコに乗って笑っていた知紗を連れて帰ろうとし、この子の靴は?と言うので、その知紗の片方の靴を持っていた老人は、それでも親か!と癇癪を起こし、持っていた靴を遠くへ投げ捨ててしまう。

帰ろう知紗…と言い、保育園から帰る途中、靴屋で新しい靴を選ばせると、赤い靴を指し、お姉ちゃんと一緒だからと知紗が言うので、お姉ちゃん?と香奈は不思議がる。

ふと気付くと、持っていた赤い靴の中に青虫がたくさん入っていた。

驚いてその赤い靴を投げ出すと、棚に並べられていた他の靴の中にも青虫が一杯蠢いていた。

パニック状態になった香奈は知紗を連れて靴屋を飛び出す。

それからと言うもの、香奈は仕事も生活も知紗も、自分を縛り付ける全ての物を捨てて別の生活に憧れるようになる。

香奈からマンションに呼ばれた真琴はごめんなさい、私がバカだから…と秀樹を死なせた詫びをするが、知紗が喜ぶので…と香奈は留守番と子守りをを頼み出掛けて行く。

香奈は派手な化粧をし、着飾って津田と逢瀬を重ねるようになっていた。

いつしか、自分が幼い頃憎んでいた母親と同じ事をやっていたのだ。

そんな事は知らず、マンションで知紗と隠れんぼをしていた真琴に電話がかかって来る。

電話を取ると、野崎ですが…と相手が言うので、真琴が名乗ると、真琴!お前、何で?と野崎は驚いたようだが、リビングに仏壇あるだろう?そこにお札があるだろう?と聞く。

真琴は、おかしいわ、この家、何も見えないの…と自分の方も気付いた事を教えるが、あったら、お札破って捨てろ!魔導符だ!それが呼び込んでいるんだ、津田の野郎!と野崎は言う。

その頃、津田は香奈とベッドで寝ていた。

知紗なんかいなければ良いのに!と香奈は言う。

真琴は野崎に言われた通り、魔導符を破って燃やすが、その直後地震のような振動が起き、ドアが開く。

大丈夫か真琴!と野崎は電話で呼びかけるが、周囲を見回した真琴は、知紗がいなくなっており、玄関ドアが開いている事に気付く。

香奈は香奈や、好きにしたら良いんや…でも知紗が邪魔なん?とベッドの中の津田は言っていた。

僕の知紗ちゃん!と秀樹が呼びかけると、パパがね、一緒に行こうって…と知紗はベッドの香奈に話しかける。

そんな香奈に覆い被さっていた津田の背中には、何かに噛まれたような大きな傷があった。

2時間後

その後見つけた知紗と一緒に風呂に入っていた真琴は、知紗の背中をじっと見つめる。

その直後、帰宅した香奈は、あなたと野崎さん、どう言う関係なの?結婚すれば良いじゃないと聞いて来たので、私が子供生めないんです…と言いながら、真琴は自分の腹を出して見せる。

そこには傷がたくさん入っていた。

バカばっかりやって来たから…と真琴は自嘲する。

その時、何かに気付いた真琴は、逃げて!と香奈に叫びながら、自らベランダに出てガラス窓を閉めると何かに襲われたように血まみれになる。

そこに野崎が飛び込んで来て、あなたは知紗ちゃんとどっか遠くへ!と香奈に指示すると、ベランダで血まみれで倒れていた真琴を、しっかりしろ!と言いながら部屋に運び入れる。

知紗を連れマンションを飛び出した香奈だったが、どこへ行こうにも行く先がなかった。

その内、知紗がママ、おしっこ!と言うのでトイレを探す。

ママ、どこ行くの?と知紗が聞くので、ママだって分からないよと香奈は答え、近くにあった公衆トイレに入ると、ノックが聞こえる。

知紗にどこ行きたい?と香奈が聞くと、知紗はお山!お山!と答える。

外からドアを叩くノックが激しくなる。

香奈がどっか行ってよ!と叫ぶと、ドアが外から押され、そこから顔を出したのは香奈の母親だった。

香奈がどっか行ってよ!と叫ぶと、ドアが外から押され、お前なんかどっかに行け!私がこんなになったのはあんたのせい!あんたなんか生んだから…と外から声が聞こえ、ドアの隙間から顔を出したのは香奈の母親だった。

野崎はとりあえず浴室に気を失った真琴を運び込んでいた。

最後の瞬間声が聞こえた、その子を返せ、知紗を返せ! 公衆トイレのドアが開いており、血糊の中に香奈が倒れていた。

その表情は少し微笑んでいるように見えた。

その側には子供用の赤い靴が落ちていた。

いつしか野崎は別れた女との間に出来た赤ん坊を抱いて呆然と浅い川に立っていた。

あなたその子欲しくないんでしょう?と川縁に立っていたアヤが言う。

だからあんたが返して… 子返し…、生まれた子を神に返す…、そうやって昔から大勢の子供を殺して来た… 俺は…と野崎は反論しようとするが、気がつくと両手で抱いていたはずの赤ん坊は消えていた。

入院しベッドに寝ていた真琴の病室で目覚めた野崎は、バカな子…、これがあの子の最初の傷なの…と言いながら真琴の左手の甲にある傷を指し、煙草の煙を真琴の身体に吹きかけているサングラスをかけた女性を見る。

あなたは?と聞くと、姉です、このバカの…と比嘉琴子(松たか子)は答え、この子指輪をしていませんでしたか?銀色の…と聞いて来る。

煙草の煙は傷口に付いた邪気を呼び出す好意だと言う。

野崎が指輪は気付かなかったと答えると、サングラスを外しながら、比嘉琴子と申しますと自己紹介した琴子の左目の下には傷があった。

迷惑をかけた事を詫びた琴子は、2~3お願いしたい事がありますと野崎に言う。

病室に戻ると、起き上がろうとしていた真琴が知紗ちゃんが…と言うので、後は私に任せなさいと言うと、琴子は真琴を眠らせる。

遅くとも明日中にカタをつけます、明後日から別件が入ってますから…と野崎に言い、部屋の掃除をしていただきたいのですと頼む。 その頃、森の中からしめ縄が巻かれた木が切り倒され、某神社に集まった宮司のような男たちが一斉に祈りを捧げていた。

羽田には3人のおしゃべりなおばちゃん霊能力者たちが到着し、琴子ちゃん!今着いたとスマホで連絡する。

琴子に協力する警察関係者たちは、マンションの住人たちにはガス漏れとか何とかと説明しましょうと相談し合っていた。

病院の食堂でラーメンを食べていた琴子は、真琴は面倒くさい子でしょう?と付いて来た野崎に聞く。

中途半端な霊能力者のくせに半端な事をしようとしたがるので、あの子が10歳の時、霊能力である事がいかに辛い事か知らせようと自分の身体の傷を見せた所、あの子は自分で自分の身体を傷つけるようになったんですと琴子は明かす。

これから汚れた気を正常に戻しますと言う琴子に、取り戻せますか?と野崎が聞くと、取り戻してももうあの子には父親も母親もいません点、私も子は嫌いですと琴子は言い出す。

子供は幼い一時期死に取り憑かれ、虫や蛙を殺したりするでしょう? 子供は何故か身近な死を感じ…、血の匂いが嗅ぎたくなる…と琴子は言う。

同じように使者たちも生きた命に惹かれます… 鏡のように使者たちが生きた者に憧れる。

親との縁が薄かった知紗ちゃんはいつしか異界に逃げ込み遊ぶようになっていたのでしょう。

田原さんのブログ、更新されているんです、3日前くらいから…、怖いでしょう? 真琴はあの力を独力で身に付けました、傷つく事を恐れません、だから中断させたのですと琴子は言う。

病室に戻り、寝ている真琴の左手の甲の傷を見つめていた野崎は何で傷つける?と問いかけた過去の事を思い出す。

(回想)真琴は、私の子供を産めないから!と答える。

(回想明け)すぐ戻ると言い残し、野崎は病院を後にする。

大学の研究室にいた津田を訪ねた野崎は、喉乾きよるねん!と呟いている津田の様子がおかしいことに気付く。

香奈さんの事ご存知ですか?と聞くと、あんな空っぽなアホ!などと津田が秀樹の悪口を言うので、友人でしょう?と野崎は責めるが、遊び道具やがな…、だから香奈さんも…、めっちゃおもろい!一人前の人間面しよる…、お前かてそう思うやろ?お前は俺や!誰も愛されへん、誰からも愛されへん…、これは鏡や、俺はお前なんや!と野崎に迫る。

その頃、タクシーでマンションへ向かっていたおばちゃん霊能力者たちは方言丸出しで楽しげにおしゃべりをしていたので、皆さん、観光ですか?と運転手が聞いた次の瞬間、フロントガラスに血まみれに手形のような物が付着したので、驚愕した運転手はハンドルを切り損ね転倒事故を起こす。

負傷しながらも何とか窓から脱出しようとしたおばちゃんたちだったが、そこにトラックが追突して来る。

一方、新幹線で東京へ向かっていた神主たちは、おばちゃんたちが全員死んだ事を察知し、相手が予想以上の強敵だと気づくと、全員が一緒の乗り物で移動していては危ないと考え、めいめい降りる駅をバラバラにして、1人でもマンションにたどり着けるよう計画を変更する。

病院に戻って来た野崎に待合室にいた琴子は、真琴ならいません、1時間ほど前から…、油断でした、あの子の身体もこちらの世界にはいませんと知紗の事を伝える。

さらに、真琴の事好きですか?面倒な事から逃げられる良いチャンスですよ…と琴子は野崎に、今なら真琴と別れられるとほのめかす。

今日、仲間が半分やられました、手伝っていただきたいのは田原秀樹さんの部屋の掃除を…、知紗ちゃんも真琴もいるはずです、一気にカタをつけます、アレは色々な物に化け、大きくなっている、早く始末しないと人が死にます…と琴子は言う。

何度かあなたの意識を覗かせてもらいました、野崎さん、失うのが怖いから失う物を作らない… 命が生まれても喜ばない…、命をなくしても悲しまない… と琴子は野崎に言う。

(回想)嬉しい?とアヤが野崎に聞く。

(回想明け)12月24日 津田が全身傷だらけの死体で発見されたとTVで報道される では何で部屋の掃除を?と野崎が聞くと、魔物と言っても神様です、神様を恭しく迎え入れるために…、やっていただけますか?と琴子が問いかけると、それで真琴が戻るなら…と野崎は答える。

田原夫婦の住まいのマンション前の公園では、全国から集まった霊能力者や科学者たちが「祓いの儀式」のための準備を始めていた。 消防車まで待機しており、予定通り、マンションや周辺住民にはガス漏れ事故発生と言う事で退避をさせていた。

警察の偉いさんの名刺で大川義弘と言う名前を見せてもらった野崎が、こう云う人と付き合いが?と琴子に聞くと、私の付き合いはもっと上の人ですとこともなげに琴子は答える。

秀樹と香奈が住んでいた部屋にやって来た野崎は、リビングで会話している秀樹と逢坂セツ子を見て驚愕する。

秀樹は自分が既に死んでいる事に気付いてもいないようにセツ子と談笑していたが、次の瞬間、セツ子がナイフでテーブルの上に置かれていた秀樹の右手の甲を突き刺したので驚く。

しかし、痛いですか?とセツ子から聞かれるともっと混乱したようで、意来ていると言う事は痛みを感じると言う事です、あなたはもう…、残念です、田原さん…とセツ子は言い聞かせる。

すると秀樹は自分が既に死んでいる事に気付いたようで、嫌だ!会いたい!知紗に!と床のカーペットに倒れ臥し、指の爪でカーペットを引っ掻きながら号泣し始める。

同じテーブルに座っていたセツ子が祈り出す。

申し訳ありません、拝借しました…と野崎に詫びたセツ子は、カーペットに残っていた秀樹の爪痕をなでて消しながら、これで終わりました、田原さんの弔いも…と言う。

奴は使える物は何でも使う…、当たり前のように…、何かが部屋にもうすぐ来る…とセツ子は言う。

野崎が何とか部屋の掃除をやり終えた時、部屋の電話が鳴り出す。

しかし魔界からの電話かもしれないので野崎が放っておくと、ただいま電話に出る事が出来ません、ピーッと言う発信音が鳴りましたらメッセージを…と留守電の自動音声が答える。

その直後、野崎、いるの?と呼びかけた声に聞き覚えがあった野崎は、真琴?と気づき受話器を取って、お前、生きているのか?と聞くと、津田や…、何やってるねん?と相手の声がかかる。

部屋の大型モニターに流れていた結婚式の披露宴の録画ビデオが会場内をゆっくりパンして行くと、そこのソファに座っていた津田が受話器を持っておりスクリーン越しに野崎に話しかけていた。

その会話に聞き入っていた野崎の前に、いけません!と言いながら入って来たのは琴子だった。

お前も死んで腐りかけとるわ!とビデオの中の津田は野崎を嘲って来る。

野崎さん!それ切っていただきます!アレは力を持ち過ぎました!と叱りつけた琴子が電話を壊すと、もうお帰りいただいて結構ですと言うが、野崎は一緒にいさせて下さいと頼む。

ではご自分の力でご自分を守って下さいと忠告した琴子は祭壇の前に正座し、野崎はその背後に正座して合掌する。

まず、鳥が鳴きます…と琴子が言うと、マンション下の公園に作られたいくつかの舞台の上に待機していた神主が、えと〜!と声を挙げ、鳴り物の演奏が始まる。

部屋の祭壇の前にいた琴子も祝詞のような物を読み上げ始める。

それを一緒に聞いていた野崎だったが、我慢していた尿意に堪え兼ねてトイレ!と言って部屋を飛び出す。

公園のブランコの側に置いてあった無人の三輪車が動き出す。

公園内に設置された舞台では巫女姿の娘たちが踊り始めていた。

琴子ちゃん!と公園にいたセツ子が呼びかけると、分かりました、では払いましょうと部屋で琴子が応じる。

セツ子も今や左手1本になりながらも気丈に祈り続ける。

トイレを探しに廊下に出た野崎は真琴の姿を見る。

知紗を守って!と真琴は呼びかけて来る。

あの子はずっと1人だった…、生まれる前から…! だから一緒に守って、知紗を!と真琴は野崎に訴える。

公園内の計器類で霊現象を監視していた科学者たちのテントに走り回る子供たちの影が浮かび上がる。

公園内のマンホールの蓋が吹き飛ばされる。

巫女たちが踊っていた台座が壊れ始める。

田原夫婦が仲良く笑顔で写った写真の入った写真立てのガラスが割れる。

生まれたかったのに! 公園内の台座が次々に倒壊し、多くの犠牲者が出る中、セツ子は1人頑張って祈り続けていた。

マンション中の窓ガラスが割れる。

そのガラス片を握った真琴が自ら腹を斬る。

もう良いかい?と呼びかける子供の声。

野崎は祈り続けている事この部屋に戻って来ると、俺は…と話そうとするので、殴りつける琴子。

公園では神主が大量の血反吐を吐いていた。

地面に飛散した血反吐の中には青虫が這っていた。

真琴もアレに入られたのよ!真琴を守って下さい!あなたが弱いからですよ!弱くて脆い物をアレは攻める!と琴子は床に倒れた野崎に言い放つ。

恐ろしい子です、この子が引き寄せている!と琴子は目の前に出現した知紗のことを指摘し、この子は異界へ戻しましょうと提案するが、そこに止めて!と真琴がやって来て知紗を庇う。

知紗の顔に痣のような物が広がって行く。

ちょっと!と野崎が呼びかけると、これから闇になります、自分が生きているかどうか信じられません、それが分かるのは痛みだけです…とセツ子が言う。

あなたとこちらを繋ぎ止めます、だから野崎さん!痛みを受け止めて下さい!とセツ子は呼びかける。

野崎は、止めて下さい!と琴子に呼びかける。

重荷になるんでしょう?子供が…と琴子は指摘し、飛びかかって来た野崎の腹にナイフを突き立てる。

話してくれ、子供を!と頼む野崎。 真琴は自分の指輪を知紗の指にはめてやる。

野崎さん!と呼びかける琴子の前で、野崎は鏡を割る。

何で?と問いかける琴子に、分かりません!僕は…とだけ答える野崎。

満月に照らされた公園には何人もの神主たちが倒れていた。

あなたは…と琴子が驚く中、腹に刺さったナイフを自分で抜いた野崎は、痛え!糞っ!と悪態をつく。

お願い!と姉に頼む真。

笑い出した野崎は、止めましょう、もうこれは…、たかが子供のいたずらですなどと言い出したので、たかが?と琴子は睨みつける。

部屋が倒壊し始めた中、野崎が抱いていた知紗が泣き出す。

知紗の目は白濁していた。 琴子は真琴を押さえつけていた。

大量の血が部屋に迫って来る。

知紗〜! その子を行かせなさい!と叫ぶ琴子。

知紗を抱いた野崎はベランダに出る。

返しなさいその子を! 川の中で赤ん坊を抱いた野崎が、アヤから責められている夢が重なる。

嫌だ!嫌だ!と野崎は拒否する。

だったら、しっかり抱いてなさい!と叫びながら琴子はベランダに出て知紗を抱いた野崎を突き落とす。

それを目撃した真琴が、お姉ちゃん!と叫ぶ。

無様だわ、あなたも行きなさいと言い、琴子は真琴も突き落とす。

バカな子…と呟いた琴子は、部屋に充満し始めた大量に血に向い、来なさい!と呼びかける。

マンションの田原家の部屋から大量の血が外に向かって放出する。

花壇に落下していた野崎は気を失っていた。

公園で最後まで祈っていたセツ子も既に息絶えていた。

その背中には大きな咬み傷が残されていた。

知紗が笑っている中、野崎は気がつく。

そこに、野崎!と呼びかけながら真琴が駆け寄る。

血まみれの姿のままクリスマスの飾りがある近所のコンビニでビールとケーキを買った野崎は、ベンチで待っていた知紗と真琴の元へレジ袋を下げて戻って来る。

午後11時、俺はまだ生きている…、体中に感じる痛みがそれを俺に教えてくれる(と野崎の独白)

雪が降り出した中、今更言ってもだけど、どうする?と野崎が聞くと、分かんないよ、私、バカだから…と真琴は言う。

夢でも見てるのか?と野崎が呟くと、どんな?と真琴が聞く。

オムライス!と知紗が答えたので、指輪をはめた知紗の手を触る野崎。

夢の中でオムライスに乗って「オムライスの歌」を歌う知紗のイメージシーン

何だそれ?と野崎が突っ込む。

エンドロールに女の子の笑い声が重なる。


 


 

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