白夜館

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花のヒロイン 

 

 

 

幻想館

 

夕陽が泣いている

一見GS(グループサウンズ)映画のようなタイトルだが、主役は山内賢、和泉雅子コンビの歌謡映画の延長だと思う

日活ヤングアンドフレッシュ(山内賢、和田浩治、杉山元、木下雅弘)と言う日活の新人を中心に集まった映画用のバンドが主演なのでGS映画と言えなくもないが、誰でも知っているヒット曲があると言うグループではないので、GSブームの便乗企画とでも言うべきで、GS映画特有の人気グループが主役の華やかさがないのが特長。

ヤングアンドフレッシュは髪型や全体の雰囲気がGSと言うには少し古く、ビジュアル的にもイケている感じではなかったことと、既に当時映画館人口が激減していた時期だっただけに、数本の映画出演だけで人気を得るまでには至らず、知る人ぞ知ると言う存在だったのではないかと思う。

一応、堺正章さんやムッシュかまたつさんが参加していたザ・スパイダースも出て来るが、「高校三年生」の舟木一夫さんのようにあくまでもゲスト出演のような扱いで、マチャアキと順がふざけ合う、いわゆる「スパイダース映画」とは全くの別物。

ギタリストらしい横内章次さん演じる伊吹と言うキャラクターが、単なるゲスト扱いではなく、最初から最後までガッツリ役者芝居で絡んでいるので、大人のムードが加わっている所が、ファンタジックだったりナンセンスと言った軽いタッチになりがちな「GS映画」とは一線を画している要因だと思う。

大人のドラマが加わることで、善くも悪くもちょっと泥臭くなっているのだ。

60年代後半の作品なのに白黒作品なので低予算の添え物映画だと思う。

前半はバンドを目指す若者の夢を描いた青春映画のような展開なのだが、途中からどことなく裕次郎の「嵐を呼ぶ男」を連想させる泥臭いドラマになっていて、後半はロードムービー調…と色んな要素を繋ぎ合わせたような印象になっている。

全体としてはアマチュアバンドの夢と挫折を描いた内容なのだが、山内賢と和泉雅子コンビの歌とかスパイダースの演奏とか要素が細切れ過ぎて焦点が定まっていないようにも見え、その「つぎはぎ感」がいかにも「B級っぽさ」を強調している。

ただ「B級」ではあっても青春映画としてはそれなりに楽しめる出来だと思う。

映像的にはカメラを固定した長回しが多く、主要な人物たちは画面の中央でセリフを言い合っているシーンやカメラが引いた客観描写が目立つ。

地味な印象ながら、スパイダースファンや和泉雅子ファンにとっては見逃がせない1本ではないだろうか。

▼▼▼▼▼ストーリーを最後まで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
1967年、日活、山崎巌脚本、森永健次郎監督作品。

海辺の太陽の情景

ザ・スパイダースが演奏する「夕陽が泣いている」をバックにタイトル、キャスト・スタッフロール

上野駅に列車が到着する。

バッグとギターケースを下げた山田健次(山内賢)が駅から外に出て来る。

山田は地図を片手に「ホリプロダクション」を訪れる。

しかし階段を登って行った山田はすぐに降りて来て、絶望だ、死にてえや!と階段の前でしゃがみ込んだので、先ほど山田とすれ違いで出て来てそのまま帰らず、ギターケースを抱え近くで考え込んでいた青年野村信一(杉山元)が山田に気付く。

そこに小型車がやって来て、中から降りて来た伊吹洋子(和泉雅子)が、どうなさったの?と山田に声をかける。

ねえ?四谷まで行くけど乗って行きません?と言うので、山田は横にいた青年と顔を合わせる。

山田と野村を乗せ車を出発させた洋子は、あそこに行くと良くあんたたちみたいな人を見かけるわと言う。

助手席に乗った山田が、俺、山田健次って言うんだと名乗り、後部席に乗った青年に君は?と聞くと野村信一だと言う。

だけどバカにしてるよな〜、俺たちの芸術ろくに聞きもしないでよ〜と山田がぼやくと、そうだよと野村も賛同するが、洋子が、あんたたち今までどこのバンドにいたの?と聞いて来ると、本日開店、国を飛び出して来たばかりだよと山田は答えたので、何だアマチュアなの…と洋子は驚き、無茶な人達ねと笑う。

何が無茶だよ?と山田が憮然とした顔で聞くと、家で心配しない?と洋子は案じる。

すると山田は、音楽に夢中になるなら二度と帰って来るなってさ…、型通りだよ…と山田が答えると、思わず苦笑した野村も、俺も似たような物だよ、こいつに取り憑かれて今年も大学に入り損なったよとギターケースに目を落し打ち明ける。

浪人?と洋子が聞くと、ああ、俺んち幼稚園やっているんだけどね、オヤジがいないもんでおふくろが教育ママでさ、期待されちゃってしんどいよ、俺…と野村は言う。

すると山田が、俺んち、福島で牧場やってるんだけど、一生馬の長い顔見て暮らすつもりはないからさ、俺にはさ、ギターが性に合ってるんだと自慢げに言うので、でもあんたたち、いきなりあんな所へ行ってもダメよ、プロになるには才能があってもそれだけじゃ無理!その証拠に芽の出ない人がうようよいるんだからと洋子は教え諭す。

へえ…、良く知ってんなと山田がからかうように言うと、本で読んだのと洋子が答えたので、本?と驚いた山田はおかしくなって笑い出し、本と現実は違うよと指摘する。

だけど現実は確かに規格品ばかりありがたがって、俺たちみたいなフレッシュな感覚全然認めねえんだ、理解ねえんだなと山田はぼやく。

すると運転をしていた洋子は、相当なうぬぼれだわ、あんたたちみたいな人をね「井の中の蛙」って言うのよと言うので、このお嬢さん説教する気だぜと山田は背後の野村に話しかけるので、威張ってないで考えたら?と洋子は言う。

俺たちはね、大きな家に住んで何不自由なくピアノを弾いたり、車運転したりしているお嬢さんとは訳が違うんだよ、何とか一人前になろうと自分だけの力でがんばっているんだぜと山田が言い返すと、じゃあ人に頼らないことねと洋子は答える。

俺がいつ頼ったんだい?と山田が聞くと、それじゃ今から降りて歩くことねと洋子は言い、それとも謝る?と問いかける。

すると山田は、誰がこんな車なんかに乗るもんか!と反発するので、そう?立派だわと答えた洋子は急ブレーキをかける。

その直後、後続車がお釜を掘って来て、急停車する奴がいるか、馬鹿野郎!と降りて来た男が文句を言って来たので、あんたの車ブレーキ付いてるの!と洋子も車を降りて負けじと言い返す。

付いてるよ!と男は反論するが、車間距離ちゃんと取ってないあなたの過失よ!と洋子も負けていない。

後続車に不注意な君の過失だよと相手も言い返すが、あんたの過失よ、こっちにはちゃんと商人だっているんだからと洋子は言い出し、ねえ?と車を降りていた山田たちに声を掛けるが、臍を曲げた山田は知らねえよ、なあ?と野村と頷き合う。

その返事を聞いた洋子は、何ですって!ちょっと!と怒るが、さあねと山田が後ろ向きでとぼけるので、いじわる!と洋子はすねる。

そんな洋子にぶつかった車の主が、ねえ、俺は悪くないからねと念を押すと、洋子はふん!とそっぽを向いてしまう。

あ〜あ、キッスしっぱなし!と野村がぶつかったままの車を指差して言うので、嫌だ!早く話してよ!豚にキスされてるみたいで気持悪いじゃない!と洋子は後続車の主に文句を言うと、豚とはなんだよ!と怒った後続車の主はサングラスを外して自分の車に乗り込むとバックさせるが、パンパーが外れて転げ落ちたので、集まっていた野次馬が笑い出す。

ああ、俺の車が!と後続車の主が降りて来たパンパーを拾い上げたので、相当のぽんこつねと洋子が嘲るので、侮辱〜!と怒る。

そこへどうした?と警官がやって来たので、あ、おまわりさん、この人が急停車を!と男が言うと、違うわ!この人が車間距離を取っていなかったのよ!と洋子も言い返し、ますますヒートアップしたので野次馬が増えて行く。

間に入った警官が、まあまあ順序を立てて話さないと分からないよと言い、君たちはどっちに乗ってたかね?ち山田たちに聞くので、こっちと洋子の車の方を指差す。

すると警官は、じゃあ君説明してくれたまえと頼んで来たので、この人がもの凄いスピードで走って急停車したんですよと山田が答えると、嘘!でたらめですと洋子は反発して来るが、あれじゃぶつかっても仕方ないでしょうねと山田は人ごとのように言う。

そうですよね?とぶつかった男も問いかけると、山田の胸を叩いた洋子が私に恨みがあるの?と言うので、別に?と山田がとぼけると、だったら私の味方してくれたって良いじゃない!と洋子は焦れる。

山田は、そんな義理もないからねと知らん振りするので、くやしい!と洋子が山田の腕を抓ると、痴話げんかは止めたまえ!と警官が注意する。

失礼ね!と洋子が怒ると、こんなきれいなお嬢さんがそんな乱暴な運転するとは思えないがな~と警官が言うので、そうです!と洋子は言う。

きれいだなんて関係ないでしょう?えこひいきするなよ!と後続車の主が文句を言うと、いやいや、ただそんな感じが…と警官がしどろもどろになったので、あんた女に弱いんじゃない?と後続車の主は指摘し、真面目にやれよな?と言うと、そうだと山田賛同する。

洋子が失礼よとなだめると、あ、ポリを味方にしてずるいぞ!と山田が言い返す。

まあまあ良いと警官側って入ろうとすると、あんたが悪いのよ、しっかりして頂戴よ!と今度は洋子は警官に食って掛かる。

ちょっと待て!と落ち着かせた警官は、今専門の係を読んで来るから…と言い残しその場を去って行ったので、なんだあの野郎?散々引っ掻き回して逃げて行っちゃったぜと山田は呆れる。

野次馬に気付いた洋子は、恥ずかしいわ、私もう知らない!と良い車に乗り込もうとするので、ねえ君!まだ話ついてないよと後続車の男が呼び止めると、荷物!と洋子は車に乗せっぱなしの山田と野村に声をかける。

後続車の主は、僕のバンパーどうしてくれるの?これ3000円だよと訴えるが、ねえ君!何とか言えよと言うが、洋子は車に乗ってとっとと走り去ってしまったので、おい!逃げるのか!と後続車の男はパンパーを持って呼びかける。

がっくりして振り返った後続車の主は、山田との野村がギターケースを持っていることに気付き、え?君たちもやるの?と笑顔になると、自分も車からギターケースを持ち出し、ねえねえ俺もと見せる。 後続車の主は吉川正夫(木下雅弘)と言った。

その後3人でやって来たのは競馬場だったので、本当に大丈夫かよ?と野村はびびるが、任しとけって、馬は見慣れてらあと山田が言う。

だけど有り金すっちまったら泣くに泣けないぜと野村は案じるので、俺たちここでがっぽり儲けて新しい楽器揃えようって言うんじゃないか、つまらないこと言って気散らすなよ、忘れたのか?俺は牧場主の倅だよ、馬のことは任せとけって言うんだと山田は自信ありげに言う。

そんな3人の会話を後ろで聞いていた赤間(榎本兵衛)が興味を持ったように山田の競馬新聞の書き込みを覗き込む。

その後、場内をうろついていた時、私服姿になった先ほどの警官新庄秀夫(和田浩治)が、ちょっと動かないでくれと言い、突然3人の背後に隠れたので、捕物ですか?と山田が聞くと、違うよ、追われているんだよと警官が言うので、3人は驚く。

前方を見た吉川が近づいて来た周囲を見ながら女に気付き、女ですね?と聞いたので、ばか!大きい声出すな!と新庄は注意する。

おまわりさんが女に追われているの?と野村が驚くと、しーっ!と新庄は野村の口を塞ぐ。 その時、新庄に気付いた女が、秀夫さん!待って〜!と呼びかけながら近づいて来たので、いけねえ!と叫んだ新庄は逃げ出す。

どうなっちゃってるの?あいつ、おまわりかよ?世も末だよ…と野村、山田、吉川はぼやきながらその場を立ち去る。

いよいよレースが始まるが、7なんてどん尻じゃないかと客席で見ていた吉川が言うと、だから俺、競馬なんて嫌いだって言ったんだよと野村も嘆く。

しかし山田は、そう焦るなって、馬の艶から見れば勝負気配、すぐ追い上げるさと平然と答える。

別の場所では、何が牧場主の倅だ、どん尻じゃねえか!畜生、ただじゃ置かねえぞ!と先ほど山田の話を後ろで盗み聞いていた赤間もぼやいていた。

だめだ、楽器どころじゃないよと野村が諦めたように言う。 しかし山田が見ろ!と言うと、7番の馬が他の馬を追い抜き先頭でゴールに入ったので、3人は大喜びする。

ラジオ関東の窪田アナウンサーが大変な大穴が出ましたね、驚きましたと放送席で言う。

この結果、山田たちは思わぬ大金を手にすることになる。

その時、警官の新庄にも出くわし、俺素人だからあんたたちが買ったのを買ったんだよ、お陰で助かったよと札束を見せて礼を言って来る。

側にはさっき追っていた女が付いていたので、借りは返すぜ、これは利息だ、もう俺の後追っかけるなよと言って新庄は金をその場で渡す。

女がふん!と言って去ると清々したなと新庄が喜んだので、とんだすけこましだなと山田は呆れる。

すけこまし?と新庄が聞くと、山田たちは行こう!と言ってその場を立ち去ったので、ちょっと待ってくれよ!と新庄は呼びかける。

「アサヒ楽器」と言う店にやって来た3人は、せっかくバンド作るんだ、一流の店で一流の品を買おうと山田が提案し、店に置いあったギターを手に取る。

だけどギターとベースだけじゃ商売にならないよと野村が言い出す。

ドラムがいないとな…と吉川も気付く。

まあ、焦らないで見つけるさと山田が言っている時、店の中からドラムを叩く音が聞こえて来たので、何事かと3人が近づくと、あ、又あの野郎だ!と野村が指差して驚く。

店内のドラムセットを叩いていたのは警官の新庄だった。よお!と新庄は3人気付き笑いかけて来たので、お前何が本職なんだ?と山田は呆れる。

ご存知の通りお巡りだよ、けどこいつは答えられないよな、それにこのパールのドラムはね、アートブレーキも使っているんだと新庄は説明し、大体さっきの女の子もこいつが原因なんだよと言い出す。

ドラムを買いたかったんでちょっと借金してさ…と言うので山田たちがこそこそ話し出すと、おい、俺はすけこましじゃないぞ!あの子は中学生のときの同級生なんだよ!ちょっとこっちは弱いけど、これ持ってるんだよと新庄は、頭を指した後親指と人差し指で金の印を作って反論する。

そのドラムどうしたんだよと山田が聞くと、さっさと自分のアパートに運んでしまってさ、昼間はここが空いてるからここでおやんなさいって言うんだ、それに終いには結婚してくれだって…と新庄は打ち明ける。

それを聞いた山田は結構な子じゃないかと言うと、冗談じゃないよ、俺は結婚するんだったらこいつとするさとドラムを指し、だから俺は一か八か競馬に言ったんじゃないかと言う。

ま、それで借金でも返せれば自由になれると思ったから…、お陰で成功したけどと新庄が笑うので、本当にやる気か?と山田はドラムに対する情熱を確認する。

これ?とスティックを差し出して聞き返した新庄は、その場でドラムを叩き始める。 それを聞いた山田は、俺たちな、仲間探してたんだよと言いながら、近くにあったアンプにギターのコードを繋ぐと、任しとけって!と新庄は答える。

山田たちも一緒にその場で演奏を始めると、驚いた店員が駆けつけて来て、困りますよ、これは売り物ですからね、止めて下さい、君も!と止めようとする。

その時、黄色い声援を挙げる女性たちと一緒に数人の若者たちが店の中になだれ込んで来たので、山田たちは演奏を止めるしかなかった。

並んで下さい!と店員たちが店になだれ込んだ女性たちに声をかけるので、すげえ人気だなと新庄は感心する。

見ると、店の奥に「スパイダースサイン会」と言う札が下がっており、そこでマチャアキや順らザ・スパイダースの面々が「太陽の翼」の録音テープが流される中サインをしていた。

あっけに取られてその様子を見ていた山田は、良し、俺たちも負けずにやろうと言い出し、その場で演奏を始めるが、それに気付いた女性ファンたちは、止めて、へたくそ!何すんのよ!と文句を言って来たので、すいませんと山田たちは謝るしかなかった。

夜スーツ姿になった山田が新庄に連れて行かれたのはクラブで、ステージ上でギターを演奏している男性を指し、あれが今売出しの伊吹毅(横内章次)って言うんだと新庄から教わる。 それを見た山田は、凄えギターだ!と驚愕する。

ギターソロの後、サックスが鳴り出し、嫌い、嫌い♩と「夜といっしょに」歌いながら女性シンガー笠原明子(志摩ちなみ)が舞台に登場する。

どうだい?と新庄に聞かれた山田が、俺とはだんちだ、今まで聞いた中では一番うめえやと感心すると、新庄は、図々しいな、日本でナンバー1のギタリストと比べる奴があるかいと注意する。

でもよ、目標がなかったら進歩はないぜと言い返すと、なるほど、お前巧いこと言うねと新庄は山田に感心する。

せっかくバンド作ったんだ、伊吹さんに演奏見てもらいたいなと山田が言うと、そう来るだろうと思ってもう手は打ってあるんだよ、伊吹さんと俺とは師弟の間柄だ、常日頃から俺のドラムの腕は買ってるんだよと新庄は自慢する。

お巡りにしておくのは惜しい、良かったらうちのバンドに入らないかってなと言うので、どうして入らないんだ?と山田が聞くと、それはまあ色々あらあな、大体人の人気で伸し上がるより実力で伸し上がりたいからねなどと新庄は言うので、へえお前案外芯があるんだね、見直したよと山田は感心する。

俺がバンドを作るって言やあ、伊吹さんどんなに忙しくても練習くらい見に来てくれるだろうと新庄は安請け合いする。 その時、ボーイが、どうぞと酒の瓶を差し出して来て、あちら様からと指差すのでそちらを見ると、そこにやって来たのは競馬場で儲けた赤間と相棒のシゲ(市村博)だった。

これは何ですか?と山田が戸惑うと、儲けさせてもらったお礼ですよ、さすが牧場主の息子さんだと吃音気味の赤間の言葉を補うようにシゲが言う。

私たちも暴利に預かりましてねとシゲが言うので、行こうと新庄が山田を誘って席を離れようとすると、まあゆっくり馬の話でも…と赤間が止めようとするので、しつこいなと迷惑がると、黙ってろい!俺たちをなんだと思ってやがるんだ!とシゲが因縁をつけて来る。

どうせ強請りたかりのチンピラだろうと新庄が言うと、野郎!出ろ!と赤間が凄んで来たので、山田もスーツの腕まくりをすると、話があるんだったらここでしてもらおうか?と言いながら新庄は内ポケットから警察手帳を取り出す。 それを見た赤間とシゲは震え上がり、失礼をば…と頭を下げ立ち去って行く。 山田は新庄に、かっこいい!と褒める。

楽屋前に来た新庄は山田に、お前はここで待っていろ、伊吹さんは人見知りをするからな…と言い、入り口の前に山田を待たせ自分だけ中に入って行く。

中に入るとバンドマンたちがいたので、伊吹さんは?と聞くと奥だと言うので、新庄は奥へと向かう。

廊下で待っていた山田は、楽器を運んで来たバンドボーイがいたので、手伝いましょうと声をかけ手伝うが、すみませんと礼を言ったバンドボーイは男ではなく洋子だったので、互いに気付いてあっ!と驚く。

楽屋にアンプを持ち込んで来た山田に気付いた新庄が、お前、何やってんだよ?と聞くと、手伝ってやってるんだよと山田は答える。

そんなことしないで廊下で待ってろよ!と新庄が迷惑がっていると、そこに矢吹が奥から出て来て、君たちは?と新顔の新庄と山田を見て聞いて来る。

あの〜…と新庄が口ごもるので、言えよ、師弟の間柄なんだろうと山田が腕を小突く。

勇を奮って伊吹に近づいた新庄は、この間先生に励まされてどんなに力になったか分かりません、あれがきっかけで何とかバンドを作ろうと努力して楽器だけは揃いましたと話しかけるが、人違いじゃないかね?僕は君を全然知らんがね?と伊吹が素っ気なく答える。

答えに窮した新庄は、それは別としてですね、先生、何とか一度、僕たちの練習を見ていただけないでしょうか?と願い出るが、そこに、お早う!と言いながら洋子がアンプを運び入れて来る。

その顔に気付いた新庄が、君!と驚くと、あら?兄さんに御用だったの?と洋子は伊吹の顔を見て言う。

それを聞いた山田と新庄は揃って、兄さん!と驚く。

何だ君たち知り合いだったのかい?と新庄が聞くと、ええ、ちょっとね…と洋子は腕組みしながら愉快そうに山田たちを見ながら答える。

新庄は笑ってごまかし、まあそう云う訳なんですよ、僕たち4人は先生に憧れてまして、どうです?一度僕たちの練習見ていただけないでしょうか?と願い出たので、へえ、図々しい!と洋子はからかうように言う。

ねえ伊吹さん!と新庄は粘るが、あいにくだが暇がなくてね…と伊吹は断る。 そんなこと言わないで、一度で良いです、御願いします!と新庄は頭を下げるが、又にしようと軽くいなした伊吹は、さあ出掛けようと伊吹毅クインテットメンバーたちに声をかけ楽屋から出て行ってしまう。

出掛けて行く伊吹に対し、伊吹さん!先輩!などと新庄が呼びかけたので、先輩?と洋子は突っ込む。

それでも、先生!などと新庄が呼びかけるので、あんたたち相当の心臓ね、でも兄を買った意欲だけは買ってやるわとバカにしたように言い残し洋子も部屋を出て行く。

そんな…と締まった扉に近づこうとした新庄だったが、お前が変な所に入って来るからだよと山田に当たり出す。

まあ、あれが伊吹毅の妹だとはな…と山田は改めて驚き、何がお巡りにしておくのは惜しい、このバンドに入らないかか…、おまえ大体調子良すぎるよと新庄の嘘をからかう。

外に出た洋子は、それがすんだら18日から一週間ハマの「ハーバーライト」2日休んで26日から月末までが「サイゼリア」、ギャラは10%のアップを認めさせたわ、同良い腕でしょう?と伊吹にマネージングの自慢をすると、おいおい、お前が言わなくてもそう云う約束だったよと伊吹は呆れる。

でもこれで私にはマネージャー的センスもあることが分かったでしょう?と洋子は言い返すと、女子大生にそんな物は必要ない!と伊吹は眉をひそめる。

だって音楽大好きだもん、やっぱり蛙の妹だわと洋子が言うと、早く帰って勉強でもしなさいと伊吹が言うので、小学生扱いね、大学は今春休み!何にも分かってないんだからな…と洋子は苦笑する。

アメリカ行きの懸賞論文どうなった?と伊吹が聞くと、うん、送っといたわ、でもそっちの方は自信ないな…と洋子は答える。

「月世界」と書かれた大きな広告塔のあるビルの屋上で山田たちは練習をしていると、そこにお早う!住み込みのボーイになったんですって?と言いながら洋子がやって来る。

ああ、練習するのに便利だし、それにここが使えるからねと屋上を指しながら山田が答える。

すると新庄が、俺は違うぞ、非番なんだと教える。

何の用だい?と山田が聞くと、ちょっと聞きに来たの、やったんさい!と洋子が偉そうに言うので、やったんさい?!と山田たちは引くが、やってみるか?と気分を変え演奏を始めようとするが、その時近くから誰かのエレキが聞こえて来る。

屋上から下を見ると、下の階の一室で「スパイダース」が演奏しているのを発見する。

地上にはバンドのワゴンも置いてあった。

部屋では、それじゃあやろうか?とリーダーのショウちゃんこと田辺昭知が声をかけ、ボーカルのマチャアキ(堺正章)が、じゃあみんなの希望に応えて「太陽の翼」やろうと言い出す。

インストール発射でね?カウントスタートねと田辺が言い、ちょっと早めにやってとマチャアキが希望した所で演奏と歌が始まる。

屋上では山田が、良し俺たちも負けずにやろう!と声をかけ、演奏を始め、山田がボーカルで「僕だけのエンジェル」を歌い出す。

休憩中その演奏に気付いたマチャアキが、あいつらこの前会った奴らじゃないか?と窓から屋上を見上げて言う。

お?やってるな〜と他のメンバー達も窓辺に寄り、俺たちもあんな時代があったな〜とムッシュかまやつが言うとあったな〜とマチャアキも応える。

結構良い線行ってるじゃない?と洋子が声を掛けると、茶化すなよ、俺たち真剣なんだぞと山田は怒ったように応える。

練習するのは良いけどコネがあるの?と洋子が聞き、あんたたちの腕なら2〜3流のジャズ喫茶でまあまあ通用するわと言うので、本当?と新庄が喜ぶと、そのくらいざらにいるってこと…と洋子は指摘する。

だからいくら巧くてもよっぽどコネがないとダメよ、留学試験だってそうなんだからと洋子が言うので、世話する代わりにリベート寄越せって言うのかい?と山田が聞く。

すると洋子は苦笑し、そんな首つりの足引っ張るようなことしないわよ、今日から私があんたたちのマネージャーになってあげようか?と言い出す。

マネージャー?どうして君が?と新庄や吉川が聞くと、だってあんなたち面白そうだもんと洋子は言う。

嫌なら良いのよ、自分でもあんたたちにはもったいいくらいだと思ってるんだから…と洋子は焦らしたままその場から離れたので、ちょっと待ってくれよ、どうする?と山田たちはその場で相談し合う。

棚ぼただぜと新庄は乗り気になるが、そう巧く行くかな〜?と吉川は慎重な意見を言う。

彼女が保証してるんだもの、3流のジャズ喫茶だって良いよ、それに伊吹毅の妹ならこの世界で一応毛並みは良いだろう?マネージャーにしても損はないと言うことだよ、お前初めて男らしい口を聞くようになったななどと新庄たちは言う。

その時、まだ?と洋子が聞いて来たので、くどいようだが責任は持つって言うんだな?ちゃんと面倒は見るってことだな?と聞くと、そのつもりよ、最もプロになれるか慣れないかはあなたたちの実力次第よと洋子は答える。

良し、パーセンテージ決めとこう!と山田が提案すると、いらないわ、そんなもの…と洋子は笑うので、いらない?妙だな、慈善事業じゃあるまいし、一文の得にもならないで俺たちのために?と山田が怪しむと、私、兄と賭けをしたの、どんなガラクタバンドでも私が一人前にしたらマネージャーとしての腕を認めるって…、こうなったら意地だもんと洋子は言う。

君が意地のために選んだのか…と山田は不満そうだったが、他にあなたたちに尽くす理由はないでしょう?と洋子が睨むと、ガラクタで悪かったねと新庄もむくれる。

とにかく喧嘩している場合じゃないわよ、お互いに利用し合わなければ損じゃない、ね?と洋子は言う。

その時、お〜い!山田〜!と呼びに来たのは店のチーフだったので、仕事ですか?と駆け寄ると、違う、ちょっと来てくれとチーフは言う。

魚沼興行の赤間さんだとチーフが山田を連れて来て紹介したのは赤間とシゲだった。

何の用ですか?と山田が聞くと、まあそう冷てえこと言わないで、あんたの知恵を貸してくれよとシゲが持ちかけて来る。

大きい声じゃ言えねえが、馬券のノミ屋をやってるんだよ、あらかじめ勝ち馬が分かりゃお互いに良い思いが出来るじゃないかとシゲは山田の肩を叩き持ちかけて来る。

すると、俺の顔を立ててくれよ、リベートは十分払うとさ…とチーフも言って来たので、いやだね、俺は汚ねえことは嫌いなんだよと山田は即答する。

汚ねえだと?とシゲが絡むと、そうさ、たった今、大きな声じゃ言えねえって言ったじゃないかと山田は言い返す。

こっこっこっこ…と何か言いかけた赤間が言葉に詰まると、鶏見てえな奴だなと山田はバカにする。

この野郎!と赤間とシゲがつかみ掛かろうとするので、俺の仲間に巡査がいることを忘れたのか?と山田が言うと、2人とも手を離したので、二度とこんなことで俺を呼ばないでくれ、分かったな!と釘を刺す。

日本橋付近を、格好いい!と自画自賛しながら帰って来ると、健次さん!と呼びかけたのは洋子で、何でもなかったのねと笑顔で話しかける。

ああと山田が答えると、良かったわ、ねえあのバーテンの言う事なんかに乗っちゃダメよ、とんでもないことになるわと洋子は忠告する。

ほお?洋子さん、君そんなの俺のこと心配してくれるのかい?と山田が喜ぶと、何か勘違いしないで、もしもの事があって1人でも欠けたら困るからよと洋子は言い返したので、ちぇっ、ちゃっかりしてやがんのと山田はがっくりしながらも洋子の後に付いて帰る。

ところでさっきのご返事は?と洋子が聞くので、あ、その前にちょっと聞きたいことがあるんだと山田は言い、俺たち2〜3流のジャズ喫茶に認められれば一流の店に出られるかな?正直に言ってくれよと確認する。

すると洋子は、今のままだったらまず無理ねと言うので、どこが?と聞くと、あんなたちの素質は認めたけど何と言ってもアマチュアだわ、プロにはプロの音があるのよと洋子は言う。

巧く言えないけど勘で分かるわと洋子が言うので、やぱりそうなんだな…と山田も考え込む。

俺…、あん時威張ってたけど、伊吹さんの演奏聞いて初めて分かったんだ、まだ足下にも及ばないって…と山田が打ち明けると、兄と比べる人がありますか?と洋子は笑う。

いや、俺、焦ってるんだよ、東京に出て来るには来たけど、誰も相手にしてくれないし…と山田が言うと、随分弱気になっちゃったのね…、しっかりしなさいと洋子は励ます。

あいつら趣味でやってるのかもしれないけど、俺はどうしてもプロになりたいんだと山田が言うと、本気なのね?と洋子も真顔で聞いて来る。

他に食う道ないんだ…、俺から音楽取ったら何にも残んないからな…と山田は言う。

するよ洋子が、今から自分の才能限定する事ないわよ、少し生意気よ、いいわ、あなたがそのつもりなら私も真面目な気持でやるわと約束する。

君…と山田が言うと、任しといて!と洋子は微笑む。

翌朝、兄の楽屋を訪ねた洋子は、アイロンをかけ始めようとしていたが、そこに伊吹がやって来たので、お早う!と声を掛けると、なんだお前?こんな所で何してるんだよ?と伊吹は怪訝そうに聞く。

見れば分かるでしょう?たまにはサービス!と洋子が言い、伊吹がバンドメンバーたちに楽譜を配布し出すと、机の上に置いていたスピーカーに電源を繋ぐ。

そのスピーカーから音楽が聞こえて来たので、うるさいな、洋子ラジオ消せよと伊吹が言いながら、演奏の打ち合わせを始める。

洋子はそんな兄に音楽を聴かそうとスピーカーを側まで持って来るが、突然音が途切れたので、配線ミスかと首をひねり、廊下に出て、肝心の時になると壊れちゃうんだから…などとぼやきながらジャックを入れ直すと、スピーカーから又音楽が鳴り始める。

伊吹はそのスピーカーを持って廊下に出て来ると、洋子、これは何だい?と聞いて来たので、洋子は上を指して、伊吹を屋上へと連れて行く。

屋上では山田たちが演奏していたが、伊吹の姿を見たメンバーたちはビビって演奏を止めようとするが、連れて来た洋子が手でもっとやれとけしかける。

山田たちが又演奏を復活させると、近づいて来た伊吹が野村のギターを借りて、その場で即興で演奏し始める。

それに山田も追いつこうと演奏を続け、2人だけのギター勝負のような雰囲気になる。

演奏を終えた伊吹は付いて来れないかい?と聞き、これに付いて来られないようじゃまだダメだなと断じる。

その時洋子が近づいて来て、お兄さん、この人達一生懸命なのよ、どんなにお家で反対されても負けないで!と伝えると、誰だって最初はそうだよと伊吹は答える。

忙しい御勤めや仕事や勉強の合間にずっと練習してるの、良い先生がいればきっと伸びると思うのよと洋子が訴えると、俺はダメだよ、忙しいとタバコを吸いながら伊吹は断る。

お兄さん、この人達ね、私が3流のジャズ喫茶紹介しようとしたら断ったのよ、そんな所に埋もれたくない、腕を磨いてお兄さんのように一流になるんだって!お願いお兄さん、もし才能があると思ったらこの人達に力を貸してあげて!と洋子は訴える。

お願い!お兄さん!と何も答えない伊吹にすがる洋子。

すると伊吹は、月水金の午前中はうちにいるよ、遊びに来たまえと山田たちに声をかける。

洋子、これで良いんだな?と言い立ち去る伊吹に、どうもありがとうございましたと頭を下げる山田たち。

洋子もありがとう!と感謝する。 伊吹がいなくなると洋子も駆け寄り、良かった!とメンバーたちは喜び合う。

それからたびたび伊吹の家を訪れた山田は伊吹から直接ギターの手ほどきを受けるようになる。

メンバーたちの屋上での練習も続いていた。 屋上で練習を終えた山田が、これでもうどこでも出られるな!と言うと、練習したもんなとメンバーたちも自信を見せる。

しかし自宅では伊吹が、まだダメだなと洋子に反対していた。

でも私が見た所、あの腕ならどの店でも通用すると思うんだけどなと洋子が言うと、お前の欲目だよと伊吹は言う。

兄さんだって巧くなったって言ってたじゃないと洋子が言い返すと、技術的にはなてんと伊吹は言う。

じゃあどっか紹介してくれても良いでしょう?と洋子が頼むと、あそこまでなら素質のある奴なら誰でも出来るんだよと伊吹は言うので、一体何が不足なの?と洋子は焦れったさそうに聞く。

すると伊吹は、全部だ、遊びでは通用しても金を取って人に聞かせるような代物じゃないと言う。

一度くらいチャンス与えてくれたって良いじゃない!実際にやってみなきゃ実力なんか分かんないわよ!と洋子は粘るが、伊吹が無視したままなので、兄さん!けち!そんならこっちだって考えがありますからねと洋子はむくれる。 しかし外で山田たちに会った洋子は、ねえ何か良い考えないかしら?と聞いていた。

すると山田が、何かの拍子に伊吹さんたちのバンドの代わりに俺たちが立っていたらな〜と言い出す。

それを聞いた新庄も、そうするためには伊吹さんをどう…と考え始める。 家にいた伊吹はブザーが鳴ったので入り口のドアを開けると制服姿の新庄が敬礼していたので、君かと言って中に入れる。

警察手帳を取り出した新庄は、品川5のその2741ってのはお宅の車ですねと聞く。

そうだがと伊吹が答えると、今事故を起こしたと熱海から連絡がありましたと新庄が言うので、熱海で?そんなバカな、あれは昨日うちの小池に貸したんだがね…熱海なんて…と伊吹は驚く。 新庄は、とにかく至急行って下さい、重傷者が出ていますと指示する。

その後、車を運転して来た伊吹毅クインテットの小池(杉江弘)を呼び止めた新庄は、なんだお前か?と気づき停めた相手に、品川5のその2471ですね?と確認し、そうだよと小池が答えると、盗難届が出ています、本署まで同行して下さいと言う。

それを聞いた小池は、冗談じゃないよ、この車は伊吹さんに借りたんだぜと文句を言って来たので、訳は本署でうかがいましょうと答える。

お前、頭に来たんじゃないのか、いい加減にしろよと小池は怒るが、どうぞ…と応じる。

…そんなことは出来ん!と新庄は自分が抱いた計画を打ち消す。 警官として人を騙す計画を妄想していたのだった。

俺は不良警官じゃないぞ!と自分で自分を叱る。 考えあぐねていた洋子が困ったわね〜と呟いていた時、近くから救急車のサイレンが聞こえて来る。

それを聞いていた洋子の口元に笑みが浮かび、洋子は指をパチンと鳴らす。

洋子も自宅にいた時電話がなり、それに出た伊吹が、ああ健坊か?と答えた後、ええ!楽器大丈夫かい?と聞く。

その様子を側で洋子はにやにやして見ていた。 うん、ああそう、大事にならなくて良かったな…と伊吹は答え、はい分かった、相違しようと言って電話を切る。

おい、月世界でボヤ出したって…と伊吹が言うので、ええ!と洋子が驚いてみせると、音出し1時間遅らせるそうだよと伊吹は洋子に伝える。

本当?と洋子が答えると、折れ寄り道するけどお前どうする?と洋服を着ながら伊吹が聞いて来たので、私、先行ってみるわと答え、にやりと笑う。

その頃「月世界」の店内では、30分も過ぎてるんだよ、どうしたショーは?君、早くしてもらわないと困るじゃないか!まだ始まらんのかね!と客たちが騒ぎ出していた。 客席で詫びて回っていた支配人(神山勝)は、お、まだ連絡がつかんのかね?とバーテンダーに文句を言っていた。

マンションにおりませんが…とバーテンダーが答えると、その横でボーイとして立っていた山田たちが含み笑いをする。

楽屋にやって来た支配人は、マネージャーすいませんと笠原明子が詫びたので、伊吹さんともあろう人が時間におくれるなんて…とがっくりソファに腰を落とし、困ったな〜とうなだれる。

心当たりはないのかね?と明子に支配人が聞いていた時、洋子が入って来たので、伊吹さんは?と女性歌手が聞くと、それがどこに行ったか分かんないのよと洋子は答える。

客をこれ以上待たすことは出来ない…、全く弱った…と支配人が頭を抱えると、マネージャー、穴埋めをすれば良いんでしょう?と切り出した洋子は、急場に間に合うバンドなんておらんよと立ち上がった支配人に、いいえいますわと答える。

え?どこに?と支配人が聞くと、いつもこの屋上で練習している人達ですと洋子は答える。

君、つまらんことを言わんでくれ、あんなアマチュアがステージにかけられるもんか!店の体面に関わると支配人は言い返すが、でも御聞きになったことがあるんですか?と洋子が追いすがると、聞かなくても分かってる、忙しいんだ、からかわんでくれ!と支配人は怒り出す。

あの人達が兄の弟子でも?と洋子が問いかけると、弟子?と支配人が足を止める。

ええ兄が腕は保証してますと洋子が教えると、フロアに出た支配人は、どうも大変御待たせ致しましたと客席に詫びる。

その間楽屋では、がんばってよ、私兄妹の縁切られるんだからと脅しながら、吉川たちに衣装を着せていた。

こっちだって破門だよと、チューニングをしながら山田は答える。

なあ!俺何だか動悸がして来ちゃったな〜などと新庄が弱音を吐き、俺、おっかなくなって来たよと野村もビビり出したので、 何言ってるのよ、もう引っ込みは付かないんだから!サイコロは投げられたのよ!いい?と洋子はメンバーたちに檄を飛ばす。

ちょっと大きいんだけど?と野村が上着のサイズのことで文句を言うと、仕方ないわ、借り物なんだからと洋子は言う。

客席のざわめきを前に山田たちはステージに立つ。

曲を弾き始めても客席の反応が今イチなので、慌ててステージに上がった洋子は、自分が歌うとジェスチャーで山田に伝えマイクの前に立つ。 そして山田と一緒に、星空に〜♩と「星空の二人」をデュエットし始める。

そこに中年男と一緒にやって来た女性が、あら?あのドラム叩いているのおまわりさんよと教える。

新庄の中学時代の同級生だった。 しかしそれを聞いた他の客も、おまわりさん!と驚く。 翌日、上司に呼ばれた新庄は、馬鹿者!どこまでわしに恥をかかせるつもりだ!消えろ!頼む、早く消えてわしを安心させてくれと怒鳴られる。

新庄が首になったことを聞いた山田たちメンバーも、ショックだな〜…、伊吹さんにはこっぴどく叱られるし…、お前まで首になりゃ世話ねえよと、高速道路の下を歩きながらしょげていた。 これで何もかもパーだな…と野村もぼやく。

その時、まだパーじゃないわ!と呼びかけて来たのは洋子だった。

成功成功!新宿の「アシベ」に出られるそうよと近づいて来た洋子が報告したので、全員本当か?と驚く。 巧く行ったら契約も取れるかもしれないわと洋子は言う。

やった〜!そいつはすげえや!と新庄は大喜びする。

やろう、やろう!と盛り上がったメンバーたちだったが、だけど伊吹さんに叱られないかな?と山田が案じると、大丈夫よ、ダメだったら黙っていれば良いんだからと洋子は言うので、新庄はそりゃそうだと納得する。

そんなある日、「月世界」の裏口に赤間とシゲがやって来て、そこにいたボーイに、ここに健次ってのがいるだろう?ちょっと出せよ!と要求していた。

そこに車でやって来た伊吹が近づき、何だい?君たちはと声をかけたので、何だって良いじゃないか、俺たちは健次って奴に用があるんだよとシゲが言い返す。

私が聞いておこうと伊吹が応じると、何?偉そうな口聞きやがって!とシゲが凄んでみせたので、帰りたまえ!と言い中に入ろうとした伊吹だったが、健次を出せって行ってるんだよと伊吹を引き止めたシゲは因縁をつける。 それでも伊吹は帰りたまえと言い、シゲを押しのける。

「アシベ」のステージでは、レッド・ソックス(ザ・トニーズ)が「夕焼の砂浜」を演奏していた。

その頃、山田たちを前にした支配人は、悪くないんだけど、契約となるとね〜と渋っていたので、御願いします、一生懸命やりますから、この人達きっと巧くなります、私が保証します!と洋子が粘っていた。 困ったな〜、今うちにも専属のバンドが入っているんでね…と支配人が困惑するので、ダメなんですか?と洋子が諦めかけた時、マネージャー、さっき伊吹毅がチンピラに刺されたそうですと知らせに来たので、何!どこで!と支配人が聞くと「月世界」の裏ですと言うではないか、それを聞いた洋子とメンバーたちは驚き、すぐさま病院へと向かう。

手術室の前で待っていた山田が、出て来た医者(長弘)を捕まえ、先生どうなんです?と聞くと、やはり左手の筋を相当切られていましたと言うので、筋が!直ったら…、直ったらギター弾けるんでしょうね?と山田が聞くと、もちろん出来る限りのことはやってみますが、難しいと思いますねと医者は首を傾げ、少なくとも当分楽器は持てませんと断定する。

先生!と追いすがろうとした山田を停めた小池は、貴様!俺たちにどれだけ迷惑をかければすむんだと睨みつけて来る。

お前さえ、あの変なチンピラと関わりがなけりゃ、こんなことにならずにすんだ!ガキのくせに好き勝手なことやりやがって!見ろ、この始末だ!と小池は責めるので、山田とメンバーたちは何も言えず肩を落とす。

その時、手術室から伊吹が運び出されて来たので、兄さん!と洋子たちが駆け寄る。

どこ行ってたんだい?今夜どこに行ったのか聞いているんだ!とストレッチャーの上に寝ていた伊吹が聞くので、「アシベ」ですとメンバーが答えると、契約はしてもらえたのか?と伊吹は尋ねる。

メンバーたちが黙っていると、当たり前だ、自惚れるのも大概にしろ!と伊吹は叱る。

この間の「月世界」でお前たちの実力は分かったはず、洋子も歌ったりして…、客はちょっとごまかされただけだ、健次!リーダーのお前がメンバーたちの実力を一番知っているはずだ、ろくに練習もしないで小細工ばかりするな!そんな調子でプロにでもなれると思ったら大間違いだぞ!と伊吹はこんこんと説教する。

その時、笠原明子が、伊吹さん、可哀想じゃないのとなだめるが、アマチュアに毛が生えたくらいで良い気になるな!頭冷やして考えてみろ!と伊吹の説教は停まらない。

勝手な真似をしてすみませんと山田が詫びると、ごめんなさい、みんな洋子が考えたことなの…、マネージャーの私の責任ですと洋子が言う。

すると山田が、いえ、洋子さんをそそのかしたのは俺なんです、俺が悪いんですと口を挟むので、洋子が!と洋子は言い返す。

それを聞いていた伊吹は、馬鹿野郎!いい加減にしろ!と叱り、そのまま眠りに落ちる。 病院の外に出た山田は、俺、福島の牧場に帰る、馬の世話でもしているのが性に合ってるんだと言い出す。

大体エレキって柄じゃないんだ…と言うので、これくらいで弱気になっちゃってどうするの?私たちが大変なのはこれからなのよと洋子は慰めるが、俺たちの実力なんてたかが知れてるよ、伊吹さんの言った通りなんだ、俺たちプロなんてなれっこないんだ!と山田は答える。

だからさ〜、だからもっと練習しなけりゃと野村が声をかけて来る。

すると山田は、お前たちだけでやってくれよとすねる。

俺がいたら又迷惑かけるだろうし…、もう嫌なんだ…と山田は落ち込む。

新庄がリーダー抜けたら俺たちどうなるんだよ?と聞いて来ると、誰か他の奴見っけてくれよと山田が投げやりに答えたので、勝手なこと言うなよ!と新庄は怒る。

俺たちを解散させようって言うのか?と野村も責めて来る。

ねえ?元気を出してやり直しましょうと洋子は慰めようとするが、放っておいてくれ!と言い残し山田は走り去って行くので、健次さん!と洋子は呼びかける。

その後、山田は競馬新聞「勝馬」の配達人になっていた。

心配知るな、すぐ慣れるよ、今日は府中だろ?行った事あるな?と先輩社員(衣笠真寿男)からその日配達する新聞を渡された山田は、刷り上がったばかりの新聞を抱えてバイクに乗せる。

走ったのかい?と先輩が聞くと、1回だけと山田が答えたので、そう言えば君は福島の牧場の息子だとか言ってたなと思い出す。

病室に見まいに来ていた洋子を前に、みんなバラバラか…と伊吹は言う。

2つとも解散してしまうなんて…と、見舞に来ていた笠原明子も残念がる。

すると洋子は、気にしない、気にしない伊吹毅クインテットは解散しても、兄さんには明子さんが残ったんだしと微笑み、健次さんたちだって一時的に解散しただけよ、健次さんを東京に引き止めておくのに成功したんですもんと嬉しそうに言う。

彼にまともなサラリーマンが続くはずないわよとベランダに出た洋子は続ける。

いくら馬が相手だって、彼はね、エレキの男なの!エレキに痺れているときが本当の山田健次なのよと言う。

タバコを吸いながら、エレキの男か…と伊吹が言うと、そう言えば、エレキを弾いているときの健次さんって生き生きしてるわと花瓶の花を持って来た明子も言う。

痺れてるって感じね?と明子が言うと、でしょう?と洋子も同意する。

痺れる?エレキは電気だもんなと伊吹が言うので、調子狂っちゃうなと洋子と明子は笑い出す。

とにかくね、洋子、あの人達を絶対生き返らせてみせるから!と決意を語ると、勝算はあるのかい?と伊吹が聞く。

もち!細工は流々仕上げを御覧じろよ、さあ忙しい、乞うご期待!これからが腕の見せ所よと言いながら洋子は病室から出て行こうとしたので、騒々しい奴だと伊吹と明子は笑い合う。

すると入り口の前で立ち止まって振り向いた洋子は、おいそこの2人、早く結婚しろ!こっちの方がイライラしちゃうぞ!どうぞごゆっくり!などと言って出て行ったので、バカな奴…と伊吹は呆れる。

毅さんがあんまりしょげてたから…と明子が気づかうと、大丈夫さ、楽器がなくても作曲は出来るよと伊吹は答えるので、そうねと明子も笑う。

中央病院を飛び出した洋子は、調子良いこと言っちゃったけど困っちゃったな…、どうしたら良いだろう?と真顔になって悩む。

野村は実家の幼稚園に戻っていたが、園児が、おじちゃん、おしっこ!と訴えて来たので、読んでいた雑誌を起きながら先生何してるんだよ?第一俺はね、まだおじちゃんじゃないの!とぼやき、バカ!と叱ったので、園児は泣き出してしまう。

すると母親の園長が近づいて来て、ダメじゃないの、泣かしたりして!と野村を注意して来たので、はいはいはい、おしっこ行きましょうと言いながら園児を抱えてトイレに向かう。

「各種自動車万金塗装 双葉自動車工業所」と看板が出た自動車修理屋に戻っていた吉川は、車のルーフの上でさぼっていたので、こら!仕事もしねえし手伝いもしねえで!とオヤジからどやされる。

電気三味線のツキが落ちたと思ったら、今度は狐でも憑いたのか!一日寝ぼけたような面してごろごろしやがって!ちいとはてつだったらどうだ!とくどくど説教された吉川は、手伝えば余韻だろう?手伝えば…と言いながら車の上から降り、息子なら給料払わなくてすむと思ってこき使う!などとぼやきまくる。

ええ?と怒ったオヤジが近づくと、何でもないよと言いながら工場の奥へ逃げる。

その工場にトランクを持ってしゃがんでいた新庄は、ガードマンにでもなるか…と焼芋を食べながら考え込んでいた。

そこに車でやって来たのは洋子で、それに気付いた吉川と新庄が、よお!と言いながら集まると、ねえ何か良いアイデアない?と洋子が言うので、吉川はいくら説得してもダメなんだよと答え、健次さん、口もろくにきいてくれないんだから…と洋子も頭を抱える。

本当は意地張ってるのよ、心臓が止まるほどエレキが好きなくせにと洋子が山田のことを嘆くと、意外に強情だよ、見直したよと新庄は褒めるので、感心してる場合じゃないでしょう?と呆れた洋子は、ああ…、でも俺は待つぜ、あいつの気の変わるまで…と新庄は言う。

しかし洋子は、私は待たないわよ、絶対私の思った通りにしてみせるから!と強情を張るので、君も相当だね?と新庄は呆れる。

腕時計を見た洋子が帰るわと言い出したので、もっとゆっくりして行けば良いじゃないと吉川が止めると、これからテレビ局行かなけりゃいけないの、兄の契約解除のことで…、書類が面倒なんだとっても…と洋子は言い、車に乗り込むので、君も忙しいんだなと吉川は同乗し、はいと新庄は自分が食いかけていた焼き主を手渡す。

「STV」テレビ局のスタジオでは「スパイダースショー」の放送が始まっており、井上順が「なんとなくなんとなく」を歌っていた。

収録を終えスタジオから帰るスパイダースの面々は廊下で洋子に会ったので声をかける。

伊吹さんがこの度はどうも…とよっちゃんが頭を下げて来たので、どうもありがとうと洋子も答える。

あの〜、先輩のお見舞いにもうかがえないでとマチャアキが詫びて来たので、良いのよと洋子は答え、でもおかしいな、真面目な堺さんって、イカさないわよと笑う。 僕だってね、たまには真面目なことくらい…とマチャアキが反論しかけると、ある訳ないよと順が横から口を出したので、あったじゃないか、今ねとムッシュが順を叱ると、ごめん、ごめんと順河原って詫びる。

遅れるぞ、行こうとショウちゃんが言いスパイダースがその後を付いて去って行くが、1人何かを思い出したように戻って来たマチャアキは、洋服を新調するの、今日…洋子に言うので、銀座?「JUN」でしょう?と洋子がかまをかけると、う~ん!とマチャアキは急におかしな顔で気勢を上げ、すぐに真顔に戻るとバイバイと言って去って行く。

その直後、洋子はひらめいたと呟き、慌ててマチャアキを追って行き、何かを耳元に囁きかける。

その後、銀座の「JUN」の前に山田を呼び出した洋子は、近くに姿を身を潜めて、店の前にやって来た順の様子を見守っていた。

そこに車で乗り付けたのがスパイダースの面々だった。

それを確認した洋子は巧くやって下さい、恩に着ますと手を会わせて祈る。 遠目で見ているとマチャアキや順が何か山田に語りかけていた。

その後、洋子と落ち合った山田は、頭に来ちゃうぜ、今夜8時から「アシベ」でショーがあるから聞きに来いだってよ、良い気になるなってんだよ!とふて腐れていた。

ちょっと刺激が強過ぎたかな?と一緒に歩いていた洋子が呟くと、えっ?と山田が振り返ったので、何でもない!と洋子はごまかし、行けば良いじゃない?と言うと、「アシベ」だぞ、行けるかよ、俺たち断られた所だぜと山田は言う。

ねえ?他にどんなこと言ってた?と洋子が聞くと、俺たちのバンド解散するには惜しい実力だってさ、当たり前じゃねえか、見損なうなってんだと山田は憮然と答える。

それでも山田はにやついている洋子の顔を振り返り、ちょっと自惚れ過ぎたかと言うような表情で頭を掻く。

その夜の「アシベ」のステージではスパイダースが演奏していた。

観客の声援に押さえて、まあまあまあ押さえて、押さえて!と制したマチャアキが、どうも!それではですね、今度は日本でも大変流行しております「イエイエ」のステップを入れました僕たちの歌を御送りしましょう、僕たちもステップを踏みますから、皆さんもムダな抵抗をやめて覚えて下さい、それでは僕たちの歌で「涙のイエイエ」を御送りしましょうとMCをし、演奏が始まる。

そんな客席に山田はやって来る。 いつの間にか最前列の席にまで前進してステージを凝視する山田はスパイダースの演奏に夢中になっていた。

夜の新宿に出てネオンを見ていた山田は身体に漲って来るエネルギーを感じ、思わず通りに走り出て車に轢かれそうになり怒鳴られるが、その顔は輝いていた。

翌日、山田は中央病院にやって来る。

自動車修理工場で電話を受けた吉川は、何!健次がやるって!う〜んそうか…、君は素晴らしいマネージャーだ、僕らのエンジェル、僕らの恋人!と電話を駆けて来た洋子を褒める。

うん、やるさ!やりましょう!と興奮した吉川は電話の受話器を引っ張り上げ過ぎて電話を壊してしまう。

工場の外でぽんこつ車の修理をしていた新庄は、畜生、動かない訳ないんだけどなとぼやいていたが、そこに事務所から吉川が走り出て来て、よお、健次が始めるぞと伝えると、本当かと聞き返し、また電気三味線か?と近づいて来たオヤジ無視して2人は飛び上がって喜ぶ。

その時、動かなかったポンコツ車が勝手に動き出したので、2人は慌てて追いかける。

幼稚園の事務室で電話を受けた野村も大喜びし、レコードをかけ始めたので、音楽に気付いた母親が信一!静かにして頂戴よと文句を言いに来るが、外を見ると園児たちが音楽に合わせて踊っていた。

吉川の修理工場の前では、ぽんこつ車の側面に「young and fresh」とバンド名をペンキで描き込み、出来た!と叫ぶと、集まったメンバーたちはそれを見て気勢を挙げ、良し、出発!と言うとポンコツ車と洋子の車に分かれて乗り込む。

明子とともにそれを見送りに来た洋子が私の車壊さないでよと声を掛けると、修理屋が付いてますよ!と吉川がおどけて答える。

その洋子の車の助手席に座った山田が、あ!伊吹さんにごめんなさいって言っといてなと頼むと、OKと洋子は承知する。

野村が運転する洋子の車と、吉川が運転する荷物を積み込んだポンコツ車の2台は修理工場から走り出し、それを洋子と明子がいってらっしゃい!旅先から毎日連絡するのよ〜、マネージャー忘れちゃダメよ!と声をかけ見送る。

吉川のオヤジは、へ、バカタレめが…とぼやくと妻がいる工場に戻って行く。

2台の車の旅は始まり、山田は望遠鏡で風景を覗きはしゃぐと、俺にも貸してくれよと後続のポンコツ車の新庄も近づいて来てその望遠鏡を借り受け、同じように覗き込むと風景が逆様に移ってたので、おい、これ天体望遠鏡じゃないのか?と山田に聞くと、それしかねえんだよ〜と山田は答える。

その天体望遠鏡で眺めた富士山も逆さ富士だったので、富士山も逆さま♩野原も逆さま♩と山田と新庄はデタラメな歌を歌い出す。

退院して自宅マンションに戻っていた伊吹は洋子から話を聞き、そうか、出掛けたか…と安堵していた。

兄さんに黙って行くこと気にしてたわ、謝っといてくれって…と洋子は言い、ご免なさい勝手なことばかりしてと謝る。

伊吹は怪我をした右手にはまだ包帯をしており、左手で楽譜を書いていた。

でもね、健次さんたち見てると、思い通りにさせたくなっちゃうのよと洋子は嬉しそうに言う。

それに今のままじゃ練習時間もろくにないし、実際にお客さんを前にしなくちゃ実力付かないものと洋子が説明すると、うん、プロになるならないは別として、その通りだがね〜と伊吹は答え、しかし無鉄砲な奴らだな〜、大丈夫かねと案じる。

心配ないわよ、ダメだと分かれば帰って来るでしょうと洋子は笑う。

若い奴は良いな〜、好きなことが出来て…と伊吹はうらやむので、爺むさいことは言わない、兄さんだって好きなことやってんじゃない?MGCのモデルガン!と壁にかけてあるモデルガンを見ながら洋子が指摘する。

英会話は上達したかい?と伊吹が聞くと、もちよ!通訳くらいは出来るわと洋子が答えたので、留学の懸賞論文どうした?と伊吹は聞く。

ダメだったんでしょう、何の連絡もないもの…、諦めてるわ…、でもねえ、大学中に一度はアメリカに行ってみるつもりよと洋子は言う。

田舎を走っていた2台の車の新庄が、あれだ!と何かを指差し、最初の宿は寺か?と山田も驚く。

すっきりしねえな~、幽霊でも出るんじゃないのか?などとふざけ合いながら2台の車は寺に向かう。

おお懐かしき我が故郷!思い出の我家よ!と車から身を乗り出した新庄が言う。 実家に到着し、僧侶の姿になり本堂でお経を読み始めた新庄とは裏腹に、外の回り廊下で待っていた山田たちはマンガを読んで笑い合ってたり、トランジスタラジオの音楽に耳を傾けていた。

その音楽に影響され、新庄の木魚を叩くリズムも早くなる。 その時、桶を抱えて来た新庄の父親が大声で呼びつける。

まさかこのまま坊主に?と他のメンバーが案じると、冗談じゃないよ、通信衛星時代の若者が木魚なんか叩いてられますかってんんだと新庄は否定する。

翌日、さらに車の旅を続ける山田たちは、「ホテル天竜荘」の前で女学生や若者が集まって騒いでいたので停まり、何だろうな?と車を降りてみる。

すると女学生たちが悲鳴を上げ始め、ホテルからスパイダースの面々が出て来たので、おい、スパイダースだと気付いた山田らは挨拶をする。

どうしたんだい?とマチャアキから聞かれた山田は、演奏旅行、あれ!と車を指差し、これからどちらへ?と聞くと、広島!じゃあな!とマチャアキは答え車に乗り込むと去って行く。

それを見送った新庄が、おい追っかけようよと提案したので、先は広島だぜと山田は戸惑い、遠いなと野村も言うが、追っかけようよと新庄が粘ると、良し行くか!と吉川も賛成する。

車に乗り込もうとした時、あの…もしもし!スパイダースさんはどこでしょう?とバイクでやって来た見知らぬおじさんが声をかけて来る。

ああ、スパイダースさんなら行っちゃったよと野村が教えると、えっ!困ったな〜とおじさんが言うので、どうしたんですか?と吉川が聞くと、いや、私はね、こう云うものなんですけど…とポケットから名刺を取り出し、向こうの町で映画館をやってるんですがね、スパイダースさんに是非お願いしようと思いましてね…とおじさんは言う。

それを聞いた4人は笑い出し、スパイダースさんは急に言ったってスケジュールってものがありますからねと山田が教えると、第一そう云う所には出ませんよと新庄が言い聞かせる。

するとおじさんはスパイダースさんと御親しいんでございますか?と聞いて来たので、ええ、まあ…、大変なもんですなと適当に答えると、この連中でも構わんか…、まあないよりましだろう…とおじさんは独り言を言い出したので、4人が何よりマシだって?と突っ込むと、いやいや!とおじさんは慌てる。

急遽「スパイダース親友バンド ヤングアンドフレッシュ スパイダースに勝るとも劣らない今東京で人気最高のバンド!!」と言う立て看板が掲げられた映画館で山田たちは演奏を始めるが、何やってるんだ!引っ込め!スパイダースの交通整理じゃないの!金返せ!と客たちが騒ぎ出す。

メンバーたちにハバナ那の川や座布団が投げつけられる。

すっかり自信をなくしたメンバーたちは、洋子さんに会いたいな〜…と夕暮れの海辺でぼやいていた。

お前だけじゃないよ、今頃どうしているかな〜、俺たちいなくて寂しがっていないかな?そんなことはねえだろうなどと雑談するが、情けねえこと言うない!大体お前がいけないんだぞ、長距離電話なんかするから…と新庄が山田に文句を言うと、しようがないだろう、俺たちのこと報告するってことになっているんだから…と山田は言い返す。

夕焼けがいけねえんだ、しかしやけにきれいだな〜、しんみりさせやがんな…などとぼやくメンバーたちの横で、ギターをかかえた山田は曲を奏で出す。

へえ、いけるねえ…と山田の回りに集まった仲間たちは感心し、おい詩を付けようと提案する。

翌日、「ジャズ喫茶ZERO」と言う店から出て来た山田たちは、ヤングアンドフレッシュ?知らねえな〜だ?何言ってるんだ!無名は辛えやとぼやいていた。

それにスパイダース旋風の過ぎた後だしな…と、表の掲示板に出ていたスパイダースのポスターを見ながら新庄が諦めたように言う。

追っかけるの止めようか…と吉川が言い出し、行こうか…と山田が肩を落として車に戻る。

その後田舎道を走っていた時、ポンコツ車の方の調子がおかしくなりストップしてしまう。

どうした?と後続車の異常に気付いた山田が声をかけバックして来ると、ポンコツ車を操縦していた吉川が、ああ、エンジン焼けちゃったよと言いながら降りて来る。

酷いね、こりゃ…とボンネットを開けて中を覗いた一行は驚く。

どうしようもなく車の近くで座り込んでいた4人だったが、そこに逃げ出した何匹もの豚を追いかけて来た農家の人が通りかかったので、おい、豚だよ、手伝おうよと野村が言い出し、面白がった吉川も手伝いに行ったので、おい行こうよと新庄まで立ち上がって向かうが、止せよ、俺、馬は好きだけど豚はダメなんだよと山田は止めようとする。

それでも自分の方まで豚が迫って来たので慌てて逃げようとした山田だったが、豚を追いかけている農家の人が伊吹毅クインテットの小池であるのに気付き、小池さん!と呼びかける。

すると小池も気付き、健次!と驚いて近づいて来る。

新庄たち3人も小池に気付き、周囲を見回した小池は、君たちもか!やあ久しぶりだな~と意外な再会を喜ぶ。

豚舎に戻って来た小池に、ずっとこっちにいらっしゃるんですか?と付いて来た山田が聞くと、ああ、オヤジの後継いでな、あちこちで豚が300頭ほどいるんだよと小池は答える。

へえ300頭もね〜…と山田が感心すると、ほらあっちでも泣いてるだろう?あれを明日東京まで運ぶんだよと小池は言う。

小池さんも変わったな〜と新庄が驚くと、変わったか?どういう風に?と小池が聞いて来たので、どう言う風にって…と新庄が言葉に詰まると、前はもっと怖かったかな?相当意地の悪いことも行ったからな〜と小池は反省しながら苦笑し、いやすまなかったと詫びる。

しかしプロの世界に生きていくってことは大変だよと小池はしみじみと言う。

相当芯の強い奴でもおかしくなってしまうものだ、まあ伊吹さんなんてのは特別なんだな…、良い人だったな〜本当に…と子豚を抱きながら小池は懐かしむように言う。

実家からサックスを持って庭に出て来た小池は、久しぶりだな~と言いながら、外で楽器を揃えて待っていた山田たちと合流し、用意してあった楽譜を見て、これは何だ?と聞くので、いたずらですよと山田は答える。

途中までだな…、しかし行けるぞ!誰かに恋をして〜♩と楽譜を読んだ小池は口ずさみ、これ誰の歌なんだい?と聞くと、洋子さんです、俺たちみんなの恋人なんですよと山田は答える。

それを聞いた小池は、洋子さんか、なるほどな…と納得する。

題名は付けたんですがね…と野村が言い、「夕陽が泣いている」って言うんですと新庄が教えると、その後がなかなか難しくて出来ないんですよと山田が打ち明ける。

そこに小池の母親が皆さん、お茶をどうぞと声をかけて来る。 じゃあ明日俺東京に行くから伊吹さんに渡しといてやるよ、久しぶりに合わせてみようか?と小池は言い、ヤングアンドフレッシュと一緒に演奏を始める。

その頃、大学の教授に呼ばれた洋子は、信じられませんわ、あの懸賞論文が入選しそうだなんて!と喜んでいた。 夢じゃありませんよ、書類もちゃんと来てるんですから…と教授(鴨田喜由)は教える。

もしアメリカ行けたらうんと勉強しますと洋子は約束する。

それにショーやミュージカルの実情も見ておこうと思うんですと言うと、あなたの本当の狙いはそっちの方じゃないのかな?と教授は皮肉り、本業の文学の方も忘れないで下さいよと釘を刺す。

一方、野村たちは地方の店で、お願いです、ギャラは安くても良いですからと頭を下げて出演させてもらいたいと頼んでいたが、うちは今間に合ってるんだとにべもなく断られていた。

聞くだけ聞いてみて下さい、それからでも…と野村は粘るが、他の店に行って頼みなよなと言われたので、そんな冷たいこと言わないで!と迫ると、うるさい!と怒鳴られてしまう。

それでも御願いします!と追おうとしたの村の腕を掴んだ山田は、もう良いよと止める。

雨の中待っていた新庄と吉川に、行こうかと山田は声をかける。

雨の中、車を停めて今後のことを考えていた山田は、運転席の野村が、結んで開いてを歌い出したのに気付く。

ポンコツ車の中では、吉川がオヤジどうしているかな…、俺がいないと怒鳴る相手がいないんで寂しがっているんだろうななどと言い出したので、情けないこと言うなよ、俺まで寺に帰りたくなるじゃないか…と新庄が注意する。

それが聞こえた山田が、みんな、里心がついたのかよ?と声をかけると、そうじゃないけどよ、俺がいないと、オヤジ困るだろうと思ってさ…と吉川が弁解する。

そう言やあ、俺のオヤジもあの年では墓堀も出来ねえだろうな…と新庄も実家のことを言う。

俺もそろそろ勉強始めないとな…と野村まで言い出したので、車を降りた山田は、みんな、帰りたければ勝手に帰りゃ良いんだよと叫び、雨の中、走り去る。

新庄たちは、その直後、福島の相馬馬節を歌い出した山田の声に気付いて振り返る。

何だこら〜よっと山田が歌うと、何が何だこらだ!自分だって国のことを思い出している癖しやがって!と新庄が車の窓から怒鳴って来る。

その後も旅を続けていた一行だったが、ガソリンスタンドに寄った時、おい、後いくら残ってる?と新庄が吉川に聞 吉川は手持ちの金を出してみせるが、その時、なあみんな、俺たちパン代とガソリン代だけ作れりゃ良いって最初から言ってたじゃないか?な?どっかやらせてくれる所探そうよと山田が励ます。

あるかよ?店は大体ダメだぜと野村が悲観的なことを言うので、探すんだ、やらせてくれりゃどこにも良いじゃないか、この際…、な?と山田は説得する。 良し!と納得した一行は又車に戻り旅を続ける。

農家を借りて演奏をしていると、おい、エレキ止めて歌謡曲やらんかい!浪曲でもやらんかい!ストリップ!などと酔った観客からのヤジが飛ぶし、理解できない老人たちはさっさと帰ろうとする。

その頃東京の伊吹がピアノの前で出来た!と言うので、まあ見せて!と明子が側に寄る。

そこに洋子が帰って来たので、どうだった?と明子が聞くと、ダメなのよ、行方不明、スパイダースの講演先に問い合わせてみたら、豊橋と名古屋で会ったけど、どこ行ったか分かんないそうよと洋子は言う。

のんきな奴らだな〜と伊吹は呆れるが、楽譜を見た洋子が出来たの?と聞き楽譜を手に取ると、お前に捧げられたような曲だな、誰かに恋をして…か?可愛いじゃないかと伊吹は言う。

歌ってみてと洋子が明子に頼むと、Fマイナー?と伊吹に確認した明子は、夕焼け〜♩と歌い始める。

伊吹は左手一本で鍵盤を叩き始める。

その曲を聴いていた洋子はその楽譜を取ると、兄さん、この楽譜借りるわと言うので、どうするんだよと伊吹が聞くと、私に任しといてと言い残し洋子は出掛けて行く。

山田たちは川縁で休んでいた。 ガソリンスタンドでタイヤの交換をしていた新庄は、側にあった横浜タイヤを見つけ、横浜タイヤか、こくらいの良いタイヤを付けとけばパンクしないですんだのにな…と宣伝のようなことを言う。

そこに立ち寄った車に乗っていたのがスパイダースで、探してたんだぞお前たちを…と言いながらショウちゃんが降りて来たので、えっ?と新庄が驚いて近寄ると、お前たちを捜していたんだよ、俺たちの気付(きつけ)でこんな手紙が来てたぞと新庄に渡す。

差出人を見て洋子さんだ!と新庄は気付く。

仲間たちに所へ戻って来た新庄は、洋子さんからの手紙だ!とみんなに知らせると、本当かよ〜!と喜びながら全員集まって来る。

4人が読み始めた手紙には「嘘つき!ずぼら!どうしたあなたたちは約束を守れないの!連絡がないのでこちらは頭に来ちゃったわ、私は急にアメリカに行くことになりました、まさかと思っていた論文が通ってしまったのです、この手紙が着くのが遅れたら、このまま会えないで行くことになるかも知れないと思うと残念でなりません、くれぐれもがんばって下さい、小さなマネージャー」と書かれてあった。

読み終えた山田は思い詰めた顔で帰ろうと言い出し、メンバーたちもうんと答える。

2台の車は田舎の泥道を走り、やがて都会に近づく。

伊吹のマンションに来ると、よお、どこうろついていたんだお前たち…と伊吹が声を駆けて来たので、どうも、すみませんでしたとメンバー全員で頭を下げる。

あの…、洋子さんは?と山田が聞くと、う~ん、お前たち待ってたんだよ、で、今どこにいるんですか?と聞くと、ホリプロからテレビ局回ってるよ、出発前にどうしてもお前たちをステージに乗せるんだって血眼になって走り回ってるんだと伊吹は言う。

洋子さんが俺たちを?と新庄が驚くと、これだよと言って伊吹が見せたのは曲を印刷したパンフレットだった。

スパイダースが発表してくれることになったと伊吹が言うので、スパイダースが!と山田たちは驚く。

その時、表からクラクションが聞こえたので全員で窓から見下ろすと、下では洋子が手を振っていたので、全員で洋子さ~ん!と呼びかける。スパイダースのショーが始まり、マチャアキが、皆さん、こんにちは~!と客席に挨拶する。

満員の観客が歓声を挙げると、どうもどうも、それではですね、演奏が始まる前に、皆さんに招待したい連中があります、良く聞いて下さいよ、僕たちの友達でもあり、又我々のために「夕陽が泣いている」を作ってくれたメンバーで、今日の発表会で我々と合同演奏してくれることになっています、それでは、「ヤングアンドフレッシュ」!とマチャアキが紹介すると、正装した山田たちが舞台に出て来る。

それでは位置に付いて!とマチャアキが呼びかけ、よーい、どーん!と叫ぶと山田がギターを鳴らし、ショウちゃんがドラムを叩き出す。

新庄も負けじとドラムを叩き返し、両グループの演奏が一緒に始める。

舞台袖では伊吹と明子も見に来ており、洋子はカメラで撮影し出す。

やがてイントロに続き、ステージにおいていたマイクを拾い上げたマチャアキが「夕焼け〜♩」と歌い出す。

その間、井上順は下を向いている。 やがて山田がマチャアキとディエットする。

2人が歌う「夕陽が泣いている」を舞台袖で聞いていた洋子は良かったわ…と笑顔で呟く。

その後も合同演奏は続いていたが、野村が舞台袖にいた洋子をステージ上に引っ張り出す。

洋子はマチャアキの横で一緒に踊り出す。 ファンにもみくちゃになりながら、山田は楽屋に戻って行くスパイダースの面々に礼を言う。

自分たちの楽屋に戻って来た山田は、スパイダースと共演できるなんてな…と感書きする。 泣いてるのか、お前?と新庄がからかう。

でも悔いねえよなと吉川が言う。

すると野村が、ああ僕は幸せだな〜…と加山雄三のように鼻をこすってみせる。

そこにやって来たい武器が良かったなと声を欠け、明子も素敵だったわと褒めるので、どうもありがとうございましたとメンバーたちは深々と頭を下げて礼を言う。 君たちのマネージャーには兜を脱いだよと伊吹は笑う。

それで思い出したように、洋子さんは?と新庄が言い出したので、まだファンが詰めかけている廊下に出たメンバーたちは洋子の姿を探し始める。

すると洋子が1人で楽器を運び出していたので、洋子さん!俺たちやるのに!と呼びかけて駆け寄る。

すると洋子は、良いのよ、だってこれが最後のサービスですものと言う。

それを聞いた4人は一瞬真顔になり、又嬉しそうに笑顔に戻って一緒に楽器を運んで行く。 羽田空港に旅立つ洋子を見送りに来た山田は、洋子さん、ありがとう、本当にありがとう!と礼を言う。

私こそ、良いお友達が出来てとっても楽しかった、御礼を言うのは私の方だわと洋子も答える。 僕たち、これを機会に一度家に帰ってみようと思うんだと新庄が言う。

そう…、私たちバラバラになっても頼りだけは出し合いましょうねと洋子が呼びかけると、4人はうんと頷く。

出発便のアナウンスが聞こえて来たので、身体には気を付けろなと伊吹が洋子に声をかける。

(「夕陽が泣いている」のメロディが流れる中)見送り台から飛び立つ洋子の飛行機を、山田たちと伊吹、明子や教授たちが見送っていた。

その後、海辺にやって来た4人。

よお、田舎帰っても手紙くれよな?と山田が頼む。

うんと新庄が答えるとお前の木魚叩くのドラムと同じくらい巧かったぞと野村も声をかける。

そんな野村に、来年は大学受かれよなと新庄が呼びかける。

健次、お前は伊吹さんの元でがんばれよなと吉川が言う。

期待してっからな、がんばれよと励まされた山田はありがとうと礼を言う。

「夕陽が泣いている」が流れる中、4人は水辺を歩き出し、でみな、俺たち楽しかったな?悔いねえよなやりたいことやったしな、又一緒にやろうや、良し!そうしようと話し合い、最後は全員肩を組んで撥ねるように歩き出す。


 


 

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