三波春夫さんの「東京五輪音頭」をテーマにした歌謡映画で、三波春夫さん御自身も二役で出演なさっているが、ドラマ上の主役は十朱幸代さんである。 近づいた東京オリンピックの水泳選手として出場したいヒロインが頑固な祖父の反対のため夢を断念するべきかどうか悩む話と、ブラジルへ渡る若者を連れに東京にやって来た日系人の目から見たオリンピック直前の日本の様子が描かれている。 原作ものであることに加え、日活の脚本家だった高橋二三さんの脚本だけに、若者たちの夢と恋の悩みなどをそつなく盛り込んでいるが、ドラマとしては特に新味はなく凡庸な印象。 むしろ、まだ高層マンションなどがない佃島辺りの風景など、古い町並みと新しいビルなどが混在した高度成長期まっただ中の当時の東京の姿が貴重に感じる。 十朱さんは19歳の女子大生の役で、水泳選手なので水着シーンが当然ある。 泳いでいるシーンは吹替だと思う。 さらに驚くべきは(新人)として山本陽子さんも出ていて、芸者姿や水着姿などを惜しげもなく披露している。 山本陽子さんは十朱さんと同じ女子大生役なのだが、この当時のキュートさは絶品。 確かデパートガールだったのをスカウトされたと聞くが、この美貌だったらそれも当然だろうと納得する。 十朱さんもまだ初々しいのだが、個人的には十朱さんを見るとお父さんの十朱久雄さんの方をいつも連想してしてしまい、女優として十朱さんを客観的に見られない部分がある。 一方「東京五輪音頭」を歌う三波春夫さんは劇中で本人役と寿司屋の主人の2役を演じており出番も少なくない。 クライマックスはその三波春夫さんが本人役で歌う「俵星玄蕃」を三波さんが演じるもう1人のキャラが脇で花束を持って見守っていると言うシーンで、その歌唱力は圧巻。(二役設定だが合成シーンはない) 極端に言えば、この歌唱シーンを見るだけでもこの映画は価値があり、他のドラマ部分は当時の日活新人たちによる付け足しのような印象さえある。 低予算のためか、カラーでないのが惜しい。 この当時の三波さんは顔も端整な美形で、今の動画サイトなどにアップされている後年の姿よりまだ痩せておられて、シャープなお顔をしておられる。 映画に何本かお出になっているのも、「東京オリンピック」と「大阪万博」の二大戦後イベントの歌を歌っておられるのも頷ける驚異の歌唱力である。 子供の頃は古くさいタイプの歌手くらいにしか認識していなかったが、今見るとその底力におののく。 やはり当時のマスコミに出ていた芸能人の実力は桁違いだったと言う事だろう。 画面を見る限りかなり小柄な方だったようで、もっと身長があったら映画出演も多かったのではないかと思う。 最後は古賀政男さん御本人指揮の元、三波さんが大きなイベント会場で歌う「東京五輪音頭」と浴衣を着て踊るご婦人方の踊りだが、そのイベントの柱には「フジテレビジョン」の名が書かれている。 この当時からフジテレビはこの手の大きなイベントを協賛していたことが分かる。 日活作品にタイアップ商品が出るのは珍しくないが、当時、流行っていたバヤリースオレンジとか、「OZワカ末」、世界各国のナッツをミックスして詰め込んだ「オリンピック・ナッツ」と言う商品、「いすゞ・ベレル」に「タクトステレオ」と言うポータブル蓄音機、小さな瓶ビール「アサヒスタイニー」など、本作もタイアップだらけである。 |
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼ |
1964年、日活、石森史郎原作、高橋二三+国分治脚本、小杉勇監督作品。 中央卸市場、通称ヤッチャバで競りに参加していた青木正光(和田浩治)と栗田勇(山内賢)、そして紅一点「藤源」の一人娘、藤崎ミツ子(十朱幸代)らの噂を、場内にいたミツ子の祖父藤崎源造(上田吉二郎)と政光の店の主人が愉快そうに話していた。 蛙の子は蛙、お前さん所は孫蛙だからな…「藤源」の暖簾も安泰だと正光の店の主人はうらやましそうに言う。 そんな中、競っていたミツ子に勇が、お嬢さん時間ですよと声をかけ、ミツ子は出掛けて行く。 源造は、仲買人の子が大学行って良い事あるのかな?とミツ子のことを話していた。 一方、競りを終え一緒に帰る勇は正光に、話ってブラジルに行くことだろう?と聞くと、一緒に行くだろう?1人じゃ心細いんだよと正光が言うので、遠いな…ブラジル…と勇は考え込む。 松寿司の前に近づいた時、三波春夫の歌が聞こえて来たので、松っつぁんだよと勇が言うと、あれは本物だよ、巧すぎるよと正光が言う。 でも最近松っつぁんもポータブルレコーダー買ったそうだから…と勇が譲らないので、じゃあ賭けようか?勝ったらここの寿司食い放題だと言いながら正光は松寿司の店の中に入ると、店の中のTVで三波春夫が「風の信州路」を歌っていた。 賭けに負けたと覚った勇は、カウンターに座った正光がエビなどを注文したので、トロで良いよ…と遠慮がちに頼む。 注文を受け握り出した寿司屋の主人松吉(三波春夫)に、松っつぁんと三波春夫似てるねと正光が言うと、うれしいねと松っつぁんは笑い、松吉の横で働いていた女将の日出代(福田トヨ)は、三波春夫より良い男よとのろける。 松っつぁんが三波春夫を真似て歌い出すとそっくりだねと正光は感心する。 一方、大学のプールでは水泳部のミツ子が泳いでおり、タイムを計っていた河野コーチ(上野山功一)は4分58秒3!藤崎今一つだな〜…と声をかけていた。 そこに、ミツ子!私たちも泳いで良いでしょう!と言いながら3人の水着の女子大生がやって来る。 プールサイドに持ち込んだポータブルプレイヤーでレコードをかけると、私のクロール見ててねと言いながら泳ぎ始めた松宮れい子(山本陽子)は溺れているように見えたので、れい子、どうしたの?無茶ね、金槌のくせに…とミツ子は近づいて来て心配するが、れい子は泳げているつもりだったらしく、そりゃミツ子は高校選手権権で一番だったから…、オリンピックには出るんでしょう?と聞いて来る。 オリンピックに出るには強化合宿に参加しないといけないのよとミツ子が教えると、おじいちゃんに言ってみたら?とれい子は簡単に言うが、大学行ったのは水泳やらないって約束なのよ…と祖父の許しが出そうにない悩みを打ち明ける。 その後、自宅で源造と帳簿の計算をしていた勇の所に、ブラジル語しゃべれるんだろう?と松寿司の佐助が呼びに来る。 何事かと松寿司に行ってみると、客として来店したブラジル人夫婦が寿司は飯なのかデザート何かと聞かれたので通訳をして欲しいと言うことだった。 勇が通訳してやると、外国人夫婦は日本人はいつもこんなに美味しいものを食えて幸せ者ですよと褒め、いきなりその場で歌を歌い始める。 どうしてブラジル語しゃべるの?と外国人から聞かれた勇は、ブラジルにおばさんがいる友達がいるのだと答え、その会話の内容を日出代に教えるが、それを聞いた日出代は本当に正光さんと行くのかい?と聞いて来る。 上機嫌で松っつぁんの握った寿司を口に入れた外国人夫婦だったが、ワサビの辛さに飛び上がりそのまま店を出て行ってしまったので、やっぱり江戸前の寿司は分かんないだろうなと松っつぁんは苦笑する。 そこにミツ子とれい子が連れ立ってやって来るが、その直後、分厚いメガネをかけた学生(沢本忠雄)も1人でカウンターに座り、場慣れしていないのか、しばしおどおどしていたあげく、バヤリースと安いのありますか?と妙な注文の仕方をするので、のり巻き!と松っつぁんは佐助に指示する。 踊りってないのかね?と客が呟くのを聞いていたれい子は、急に用事を思い出したらしく立ち上がると、ミツ子、私も踊りよ!と言うと寿司も頼まず帰ってしまう。 ちょうど和代、百合子と言う女の子が踊りの稽古をやっていた自宅にへ帰って来たれい子は、稽古をつけていた母親の房代(堺美紀子)にただいま!ちょっと着替えてきますから…、暑かったから一汗流してたのよと遅れた言い訳をする。 昼間っから銭湯かい?と房代が聞くとプールよと答える。 ミツ子かられい子の話を聞いていた松寿司の日出代は、感心ね、アルバイトしながら学校行ってるなんて…と話していた。 その時、メガネの学生が、おじさん、僕財布を忘れて来たようで…と立ち上がって申告したので、ついでのときで良いですよ、お宅遠いんですか?と松っつぁんは言うが、気がすまないのか、自ら店の奥へ入って行った学生は、学生証とズボンを置いて行きますからなどと言い出す。 ズボンがなかったら外歩けないでしょう?と松っつぁんが言うと、ズボンの下には陸上用の短パンをはいており、トレーニングしていますからと言うと、そのままパンツとシャツ姿になり、競歩をしながら帰って行く。 途中、芸者姿になり人力車でアルバイトに出掛ける途中だったれい子は、競歩をして帰る学生とすれ違い、驚いて振り返る。 翌日、大学に行ったれい子は、校庭にある蛇口で水を飲もうと近づくと、3つある蛇口の2つは故障しており、1つだけ使える蛇口には男子学生が口を近づけ飲んでいたので後ろに立って明くのを待つことにする。 なかなか男子学生が退かないので、ねえまだなの?東京に水がなくなる訳よと嫌みを言うと、振り返った学生は昨日松寿司であったメガネの男だったので、あら?あなた昨日の!と驚く。 お寿司屋さんでと言うと男の方も気付いたようなので、君もここの学生だったのかと言うので、私英文科3年の松宮れい子と名乗ると、僕は農学部の阿部弘と相手も名乗る。 陸上の選手なの?と聞くと、勝手にやってます、自主トレーニングなので今度のオリンピックは無理だろうから4年後のメキシコ大会目指してやっているんですと答えた安倍はまた水を飲み始めたので、いつになったら飲めるの!とれい子は膨れる。 その頃、上野駅からバスの車掌に教えられて来たと言うメガネの娘が中央卸市場に降り立ち、「藤源」と言う八百屋はないかと探していた。 そう聞かれた正光の店の主人はたまたま通りかかったミツ子を呼び止める。 ミツ子が「藤源」の娘だと知ったメガネっ子は谷雅江(森みどり)と名乗り、同郷の勇に会いに来たのだと言う。 勇は驚きな松っつぁんに、雅江が住み込みで働ける所がないだろうかと相談する。 そこにれい子と安倍が一緒にやって来て、昨日の寿司の代金750円を払うと、安倍は隣でコーヒーを飲んで来ると言う。 勇の話を来たれい子は、今の安倍君の家、佃島で働き手探しているんだってと教える。 松っつぁんは雅江に、れい子さんは踊りに名取りであるバイトで芸者さんやってるんだと教える。 安倍と勇はその後、雅江を連れて佃島の安倍の実家に向かうことにする。 一方、ミツ子に会った正光は、勇ちゃん家にいるのかな?ブラジル行きのことなんだ…、おばさんがオリンピック見物かたがら日本に来ると言って来たんだ、勇向こうには来れないのかな?と聞いて来る。 佃島の「天安」と言う店に帰って来た安倍が中に声をかけると、早苗とけい子と言う小さな妹2人が出て来て人懐っこく雅江にだっこされる。 勇ちゃん、ブラジルに行くの?いつ?と安倍が聞くと、まだいくかどうか分からないと勇が言うので、何か気にかかることがあるんだな?美人だもんな、あのお嬢さん…とミツ子のことを言う。 連絡船の船着き場に戻って来た勇を待っていたミツ子は、ねえ勇ちゃん、正光さんとブラジル行くんでしょう?2人とも行っちゃうとおじいちゃん寂しがるだろうな天、他に寂しがる人がいるかもしれないし…などと思わせぶりな話しをする。 どうせ行っちゃうわ、どうせ東京なんか未練ないんでしょう?何もあなたまで行かなくても…とミツ子がすねるので、正光のおばさんがサンパウロの近くに大きな農園持っていてたくさん人を雇っているんだって…と勇が言うと、だったら仲買人なんてやってられないわねとミツ子が言うので、まだ約束した訳じゃないんだと勇は言う。 それを聞いたミツ子は、おじいちゃんが喜ぶわ!と言うので、おじいちゃんだけ?と勇が聞くと、そりゃ私だって…と付け加えたので、良し!今夜きっぱり断ってやると勇は答える。 その夜、正光にそのことを勇が伝えると、絶対行かないのか?と言うので、みっちゃんが悲しむからな…と勇は言う。 みっちゃん何か言ったのか?君が一緒だと心強いと思ったんだけどな…と正光は残念がる。 翌朝、自宅の植木に源造が水をやっていると、雅江がふらりとやって来て、勇ちゃんいないのねと話して来る。 ミツ子は学校だよと源造が教えると、お嬢さん新聞に載っていたけど、オリンピックの水泳選手なんですってね?と事情を知らない雅江は言ってしまう。 それを聞いた源造は怒り出し、畜生!バカにしやがって!バカ!ふざけやがって、良くも良くもわしを騙しやがって!俺をペテンにかけやがって…と家に入っても文句の言い続けるので、雅江は困惑しながらも、おじいちゃん、どうしてやっちゃいけないの?と聞く。 それでも、スポーツとか嫌いなんだ!と言い張る源造は大学にタクシーで乗り付けるとプールにいたミツ子を叱りつけ家に連れて帰る。 家に戻って来ていた勇は、おやじさん、さっきからむちゃくちゃだ!今日本中がオリンピックに沸き立っているんだ、みっちゃんは日本人全部のホープなんだ…と説得するが、源造の怒りは収まらなかった。 ミツ子は、私も泳ぎたいわ、でもおじいちゃんに反対されたらどうしようもできない、オリンピックも大事だけど、私に取ってはたった1人のおじいちゃんですもの…と勇に言う。 そんなミツ子に、源造は薬飲む水持って来いと命じる。 松寿司に来た勇から話を聞いた松っつぁんは、世間がみっちゃん放っとかないよとビールを飲みながらぼやく。 付いて来た雅江には佐助がバヤリースオレンジを注いでやる。 おら、死にてえ気分だよ…とすっかり落ち込んでいた雅江だったが、佐助さん、寿司握って、とろっとろの…と頼むと、そうこなくちゃ!と佐助も笑顔になる。 やがて、正光の伯母青木キヨ(岡村文子)が来日する。 昔を知っている源造と正光と店の主人が出迎えに来ていた。 タクシーで家に向かう途中、おばさん、あれが東京タワーですと正光が教えると、パリのエッフェル塔の真似をして…とキヨは皮肉を言う。 その後、親戚が集まっての歓迎会では、松っつぁんが料理だけではなく得意の大漁節まで披露する。 親戚のおたまは、明日は東京の隅から隅まで見て行って下さい、東京見物して行って下さいとキヨに勧める。 翌日、キヨは正光らと共にセスナを借り、空から二重橋や選手村などを見物する。 キヨはさらに「東京いすゞ」で6人乗りで85馬力のエンジン搭載の「いすゞ・ベレル」と言う車を74万5000円で買い、正光に運転させ東京見物に使った後、ブラジルに持って帰ると言う。 早速購入したベレルに乗り出発したキヨは、後ろに乗っていた勇から世界中の豆が入っている「オリンピックナッツ」と言う缶詰をおやつとして渡される。 明治神宮を参拝した後、道路工事をしている横を通りかかったキヨは、そこで働いていた人夫たちに、みなさん!オリンピックまでに間に合わせて下さいと声をかける。 キヨがブラジルから来たと知った現場監督は、任せて下さいと笑顔で応える。 駒沢競技場の第二競技場や当曜一の規模を誇る国立競技場などを見学するキヨは、金メダルを取ってくれないと…と言うので、金メダルか…とミツ子は呟く。 夜は芸者を招いて踊りを見ていたキヨはボニータ!と喜ぶが、同席していたミツ子は、踊っている芸者がれい子であることに気付く。 踊り終えたれい子に、今の踊り心にしみましたと褒めるキヨ。 続いて、二トン的なの頼んだよと言うリクエストに応え、松っつぁんが浪花節を披露する。 そんな席でも何か落ち込んでいる様子のミツ子を見かねた正光が、どうしたんだ、みっちゃんと声を掛けると、とうとうブラジルに行くのねと言うので、勇は連れて行かないよと正光が答えると、そんなことじゃないわ!と言ったミツ子は席を立って外へ出る。 それに気付いた勇も後を追う。 夜、ミツ子は大学のプールで1人泳いでいた。 タイムを計っていた河野コーチが藤崎君!と声をかけ、凄いぞ!今までの最高だ!明日から強化合宿に参加するんだ、おじいさんは僕が口説くと言ってくれる。 自宅にいた源造は何かの写真をちらりと見ると胸ポケットに仕舞う。 その自宅を訪問した河野コーチは、藤崎君は磨けば光るダイヤモンドです、これからは強化合宿に入って寝食を共にしないとダメなんですと説得する。 ミツ子も、おじいちゃん、一生のお願い!と頼み、勇もおやじさん!と迫る。 市場の名誉のためになるぜ、我々の気持も汲んでくれよ!と松っつぁんも説得に加わる。 日本のため、日本のためと言うけど、こっちは日本人として税金払っているんだ!オリンピックは町内の運動会とは訳が違うんだ!と源造は頑固に言い返す。 松っつぁんはオリンピックのガイド本を広げ、「より早くより高くより強く」と言う言葉を引用するが誰が言ったのか覚えてないようだったので、クーベルタンと河野コーチが助け舟を出す。 戦争に負けた日本が息子や娘たちをそのオリンピックに送り出そうとしているんだ、それをおやじさんは分からないのか?と松っつぁんは苛立つ。 すると源造は、その仏壇にはミツ子の両親が祀ってある…と言い出す。 父親はマラソン選手だったが、身体を壊して死んでしまった…と言うので、お父さんが為し遂げられなかったことをみっちゃんに為し遂げさせるんだよと松っつぁんは言う。 それでも、ミツ子に間違いが起きたらどうする?と源造が抵抗するので、縁起でもないこと言うない!と叱った松っつぁんは、みっちゃんがいない間、うちのかみさん来させて、おやじさんの面倒見させようじゃないか、あのミツ子ちゃんが日本を背負ってやろうって言うんだ…と迫るが、源造が黙って立ち上がってトイレに行ったので、説得できなかったかと落ち込む。 台所に引きこもっていたミツ子だったが、トイレから出て来て手を拭いていた源造は、ミツ子!お茶!と声をかけた直後、ミツ子!ビールにしよう!と言い出したので、みっちゃん、オヤジようやく分かったな!大瓶の方が良いよと冷蔵庫を開けたミツ子に笑顔で語りかける。 しかし強化合宿にミツ子が参加すると、食事の世話をしに来た日出代は、源造が全く箸をつけないと案じ、ビールの摘み用に「オリンピックナッツ」の缶を出すとようやく食べてくれる。 キヨは京都に行っておりしばらく東京にはいなくなる。 翌日、みっちゃん、勝てるかな?賭けるか?出れるよなどと雑談しながら中央卸市場にやって来た阿部と雅江、れい子らが勇の仕事を手伝うと申し出る。 ある夜、合宿先から一時帰宅したミツ子が、自立失調には良いのよと言いながら「OZワカ末」と言う薬を買って来る。 すると源造は、既に同じものの大瓶を持っていると言うではないか。 でも会って困るものじゃないから置いときなと言う源造だったが、予選見に来てくれるんでしょう?とミツ子が聞くと、気が向いたら行くさ…、負けるの見たくないよ…と寂しげに言う。 飯を食って行けと源造が誘うと、カロリー計算している合宿のご飯を食べないといけないのよとミツ子は言うので、こっちは食い扶持が減って助かるな…などと負け惜しみを言う源造。 勇ちゃんは?とミツ子が聞くと、手伝いに来ていた日出代が正光さんと銀座へ行ったよと教え、正光はブラジルに行く準備でも始めたんだろうと源造は言う。 その後、合宿に戻ったミツ子の練習が続くが、河野コーチはミツ子が何か悩んでおり成績が伸びていないことを心配する。 しかし本人に聞くと違うと言うんですと河野コーチは、練習を見に来た勇に打ち明ける。 勇は練習後のミツ子と2人きりになると、河野さんも予算までに調子を取り戻させたいそうだよと伝え、悩みを聞き出そうとする。 オリンピックが迫ると正光がブラジルに行ってしまうことでは?正光さん、好きなんじゃないの?と聞く。 後日、京都から帰って来たキヨは、松寿司で定価62円の「アサヒスタイニー」と言うビールの小瓶を見て気に入り、京都も奈良もすっかり変わって…とキヨは松っつぁんに土産話を聞かせていた。 今度会えるのはいつになるかね…などとキヨが言うので、その頃オリンピック又来るかね〜…と日出代は言う。 その時、阿部が女性を連れてやって来て、京は寿司を食いに来たんじゃないんですと断り、似てるでしょう?と同行の女性に話しかけると、おじさん、三波春夫の従兄弟なんでしょう?と聞く。 そうだと松っつぁんが答えると、同行の女性が名刺を差し出す。 「東京芸能社」と書かれたその女性は、三波春夫さんに出ていただきたいのですと切り出す。 松っつぁんに三波春夫を説得してもらいたいと言うことらしかった。 その時、表でサイレン音が近づき、正光の店の主人が駆け込み、藤源が車に撥ねられやがったと知らせる。 病院に行きましょう、ミツ子さんに知らせないと…と阿部が店を出て行こうとするが、待ってくれと松っつぁんが止める。 私が正光さんと!そんなこと突然聞かれても…と勇と会っていたミツ子は困惑していた。 はっきり聞きたいんだよ、みっちゃんの口から…と勇は迫る。 どうして今頃そんなこと…とミツ子は口ごもるが、どうしても聞きたいんだと勇が真顔で言うので、子供の頃からあんたは好きだった…、でもそれは兄弟みたいな感じよと言う。 それを聞いた勇は、正光はそうじゃないんだな?と念を押す。 でもブラジルに行くのよね…と寂しげに美津子が言うので、行かないかも…、俺は行きたくなったんだ、農園は5000ヘクタールもあるんだってさ、今みっちゃんに頼みたいのはオリンピックで勝つことだけだと勇は励ます。 右足を骨折して入院していた源造は、死んだ息子の名前をうわごとで言ってた。 見舞に来ていた松っつぁんは、良いか?みっちゃんには予選前には知らせるなよと一緒に見舞っていた阿部たちに言い聞かせていた。 勇は悩んでいたが正光に会うことにする。 勇に呼び出された正光は、どうしてブラジルに行きたくなったんだ?と聞くので、正直に言ってくれよ、みっちゃんのことどう思う?と勇は切り出す。 そして、彼女はお前のことを好きなんだ!と打ち明けた勇はいきなり正光に殴り掛かり、お前をブラジルなんかに行かせないからな!と言う。 いよいよ「第18回オリンピック代表選考水泳大会自由形決勝」が始まる。 源造は病室のTVで見ていた。 試合前客席を探していたミツ子は、やっぱりおじいちゃんいなかったと落ち込む。 れい子は自宅でテレビ観戦していた。 勇やキヨは客席から見守っていた。 第5コース!城南大藤崎!19歳と場内に選手紹介がある。 第4コースのベテラン宮本と言う選手も紹介される。 松っつぁん夫婦も松寿司のTVで見ていた。 れい子が、ミツ子〜!とTV画面に声援を送る。 阿部と雅江も客席で応援していた。 試合が始まり、ミツ子は他の選手を寄せ付けずトップでゴールインする。 シャワーを浴びた後、更衣室からメダルを持って通路に出て来たミツ子は、松葉杖をつき、右足に包帯を巻いた源造が立っていることに気づく。 おじいちゃん!どうしたの?見ててくれたの?と駆け寄ると、見たともと源造が言うので、メダルを手渡すと、おめでとう!この次は金メダルだ!世界記録だ!と源造は祝福する。 松寿司で祝勝会が行われ、その席でキヨは皆さんに発表したい事があると言い出す。 オリンピックが終わった後、正光をブラジルに連れて帰るつもりだったけど、勇さんを養子にして連れて行くことにしたと言う。 がんばってねとミツ子が勇に言うと、君たちも幸せになと勇はミツ子と正光に言い返す。 するとれい子が、私もブラジル行こうかな?迷惑?と安倍に言い出す。 雅江には佐助が寄り添っていた。 その後、松っつぁんは花束持参でスタジオで歌っていた三波春夫に会いに来ていた。 三波春夫は「俵星玄蕃」を熱唱していた。 それをスタジオの入り口の所でうれしそうに見守る松っつぁん。 歌い終わった三波春夫は、俵星玄蕃に気付かず入り口から楽屋へ帰って行ったので、慌てて追いかけた松っつぁんは、楽屋の前で春さんよ!と呼びかける。 すると、振り返った三波春夫が松っつぁんに気付き、お〜!と破顔する。 いよいよ東京オリンピックが始まり、バトントワラーと軍楽隊のパレードが始まる。 そのパレードが到着した先は「東京五輪音頭」の発表会会場だった。 古賀政男先生が自ら指揮をする中、ステージ中央に出て来た三波春夫は曲を披露し出す。 ステージ上と客席の通路では、浴衣姿の大量のご婦人たちが扇子片手に踊っていた。 上空にはブルーインパルスが煙幕で五輪マークを描く。 ミツ子やれい子、阿部、勇、雅江たちは町に繰り出していた。 聖火台の映像とオーバーラップするようにが、仲間たちの先頭を歩くミツ子の表情は真剣そのものだった。 終 |