白夜館

CG17
CG18
CG19
CG20
CG21
花のヒロイン 

 

 

 

幻想館

 

戦国野郎

岡本喜八監督の痛快娯楽時代劇で、加山雄三、星由利子の名コンビがメインを演じている。

オリジナル作品ながら、佐野健 、 岡本喜八 、 関沢新一と3人で脚本を書いている事もあってか、部分的に黒澤の「隠し砦の三悪人」を連想したりもする、なかなか面白い展開になっている。

加山さん演じる忍者と言うのも珍しいが、「若大将シリーズ」のヒロイン澄ちゃんと違い、星さんは小太刀が得意な男勝りのじゃじゃ馬娘を演じている。

星さんは現代劇では明るく清楚なお嬢さんのイメージが強いが、時代劇では一途で活発な娘役が多いような気がする。

どちらもステレオタイプなヒロイン像なのだが、時代劇での星さんの方が生き生きと描かれているような気もする。

銅子播役の中谷一郎さん、木下藤吉郎役の佐藤允さん、雀の三郎左役の中丸忠雄さん、村上水軍の滝姫役の水野久美さんなど、当時の東宝の常連が全員魅力的に描かれている中、「若大将シリーズ」でもお馴染みの江原達怡さんが憎まれ役を演じているのが興味深い。

他にも、星由里子さんと水野久美さんの対峙シーンや、天本英世さんが「じごく」と呼ばれていたり、特撮ファンが喜ぶような設定もある。 加山さんは主役ながら、面白みに欠ける生真面目キャラに描かれているため、やや印象に残りにくいような印象の反面、いい加減そうなキャラに見える中谷一郎さんや佐藤允さんの方が魅力的に見えたりもする。

特に佐藤さん演じる口達者な木下藤吉郎は秀逸。

砂塚秀夫さん演じるとぼけた松役もコメディリリーフとして重要な役柄になっている。

水野久美さんや天本英世さんの見せ場がもう少し欲しかったような気もするが、それは個人的なわがままだろう。

東宝時代劇の秀作の1本だと思う。
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
1963年、東宝、佐野健+岡本喜八+関沢新一脚本、岡本喜八監督作品。

永禄4年、戦国時代のまっただ中 山の岩場に来た越智吉丹(加山雄三)は、追って来た武田随一と言われる忍者雀の三郎左(中丸忠雄)と対峙する。

越智吉丹!忍者らしく最後は潔く死ね!と迫る三郎佐に、武田に背いて逃げた威勢を見せてみろ!その考えの甘さを雀の三郎佐が教えてやる!と声を掛けると、人間計算ばかりでは動かん、心だろう!信玄の心は冷たい奴だった、腐った魚のような奴だったと吉丹は答える。

そんな吉丹に刃を浴びせようと迫った三郎佐だったが、逆に吉丹の小刀で顔を斬られてしまう。

しかし三郎佐は吉丹に再度飛びかかり共に崖から落下したかに見えたが、吉丹だけが岩場に踏みとどまる。

岩の上に這い上がった吉丹は、新たな資格が近づいて来たことに気付くが、止めた!銅子播磨(中谷一郎)と言う、この仕事俺には役不足だ、男子の本懐とは思わん、それにお前は斬るのは惜しい、俺より強そうだし…、お前は忍者らしからに奴だ、どうだ?飯あるぞ!と言いながら握り飯を差し出し近づいて来る。

木曽谷からここまで17人も斬るとは…と播磨が感心すると、それが本当なら雀で18人目だと吉丹が言うので、良く斬ったな…と播磨は感心する。

握り飯を受け取ろうとした吉丹は、次は19!と言うと、背後の岩場から登って来て斬り掛かって来た新たな刺客(岩本弘司)を斬り捨てる。

刺客が斬ったのは握り飯だけだった。

タイトル

吉丹は後ろから付いて来る播磨に、どうしてそう付いて来る?と聞くと、どうしてそう前を歩く?と播磨は言い返し、その傷が気になってな?と言うので、俺は怪我なんかしてないと吉丹が答えると、先ほどの雀の柄柱であばらの1本も折れているはずだ、ここらでゆっくり休んでほとぼりの冷めるのを待ったらどうだ?と播磨は忠告する。

すると吉丹は、武田がそんな悠長に待っているはずがない、追っ手を差し向けて草の根分けても探しに来ると答える。

その時、追われる身は辛かろうなどと言いながら柿を投げて来て、もしもわしがその追手やったとしたらどすうる?と聞きながら落ちた柿を拾って食い始めた怪しげな男がいた。

俺を斬るか?だが俺が斬られたら歴史が変る…、逃げおおせたらどうする?と瓢箪をぶら下げたわら包みを肩に担いだ怪しげな男が聞くので、一国一城の主になる!と吉丹が答えると、ことあらば親兄弟でも斬れるか?そのくらいの神経がないと出来ぬぞと男は言う。

頼りになるのはヒモを見つけることだ…、例えば木下藤吉郎辺りだったらどうする?と言うので、知らんなと吉丹が答えると、本人が聞いたらさぞがっかりするだろうな…と男は情けなさそうに言う。

その時、3人は、何かを運んでいる馬の一群を見かける。

何だ、あれは?と吉丹が聞くと、馬借だ、米や塩、魚を運んでいると謎の男が言うので、何故武装している?と聞くと、武装していないと山賊や野臥せりを防げんと言う。

隠れるには穴がいる、あれに紛れ込まんか?格好の穴だと思うが…、俺は出世の糸口を掴もうと思うと男が言うので、どうやったら巧く行く?と播磨が聞くと、何やら男が耳打ちする。

馬借隊の先頭で馬に乗っていたさぎり(星由里子)は、火炎太鼓の旗を持って先導していた松(砂塚秀夫)が停まったので、どうしたの?と馬を停め声をかけると、前方から走って来る2人の人影を見つける。

誰かが追っ手から必死に逃げて来ているようで、逃げて来たのは吉丹、刀を振りかざして追って来たのは播磨だった。

助けてくれ!と叫びながら巧みに早切りの馬に飛び乗って背後に座った吉丹に、何で追われているの?と早切りが聞くと、そのお侍の砌飯を盗んだと言われて…と吉丹は答える。

私はさぎり!本当に盗ったの?と確認すると、本当、腹が減っていたので…と吉丹はあっさり白状する。

握り飯1つくらいで斬るなんて…、どう?2人とも馬借の仲間にならない?私たちは坂本の馬借有吉党よとさぎりは誘う。

しかし播磨は乗り気ではなさそうで、かかって来い!などと息巻くので、馬借たちが取り囲むと、止めた!腹へって動けん…とあっさり降参し、播磨、銅子播磨!世話になると答えたので、ハリね、あんたは…、いつまで掴まってるのよ!と馬から吉丹を振り落としたさぎりに、吉丹は照れくさそうに、キチってんで…と答える。

2人を連れ出発した馬借隊の一番後ろの荷車には、ちゃっかり謎の男が乗り込んでにやついていた。

有吉党の住処の前では、馬借の竹(二瓶正典)と梅(小川安三)が、新入りの六(長谷川弘)に件の勝負を挑んでいたが、あっさりやられてしまう。

それを見た馬借の夏(江原達怡)は、次!じごく(天本英世)!と呼びかけたので、座っていた地獄が立ち上がると、六が貴様の弓だ!と投げて渡し、的はあの柱のヤモリ!と言うと自ら射掛けてみせる。

じごくも射かけるが良い勝負だった。

そこにやって来た頭の有吉宗介(田崎潤)が、新入りの六はどうだ?と夏に聞くと、武士でもなく百姓でもなく得体が知れませんと夏が答えたので、得体が知れないと言えばじごくもお前もそうだ、馬借の役に立てば良いんだと宗介は言う。

そこに松やさぎりたちの隊が戻って来たので、お嬢!さぎり殿!と夏が駆け寄ると、夏之助、殿呼ばわりはお止し!とさぎりは叱る。

宗介が松に、変ったことはなかったか?山賊の影は?と聞くと、山賊はちらほら…と答えた松だったが、おれは?と吉丹たちに気付いた宗介が聞くと、お嬢が拾った新入りで…と教える。

どん百姓で…と挨拶した吉丹と播磨に、有吉党の党首宗介は私だと宗介は教え、どうだ、馬は持てるか?と聞くと、ちょっと重過ぎて…と吉丹がぼけると、馬を扱えるかと言うことだよと松が教える。

きちきちバッタ!ハリネズミ!とさぎりは呼びかけながら、2人に着替えを投げ与えると、湖で身体洗っておいで!と命じる。

湖に身体を沈めた播磨は、あの女、なかなか使えるな…、小太刀かな?と呟くと、一緒に浸かっていた吉丹は、女だと答える。

奴らは何だ?と播磨は岸に見える2人の山伏の姿に気付く。

武田の追っ手と見ると吉丹が答えると、やるか?と播磨は聞き、2人同時に湖面に沈む。

次に2人が顔を出したのは近くの温泉だった。

危ない、危ない…と吉丹は言うが、あの猿な、奴が木下藤吉郎だ、頼りになりそうなヒモだぞと播磨は先ほどの謎の男の正体を明かす。

しかし吉丹は汚いヒモだとバカにする。

その木下藤吉郎(佐藤允)は宗介と2人きりで会っていた。 乱世は近く鎮まる気配がありますぞ、その音頭取りをするのが織田信長様だと藤吉郎は話していた。

あの山猿が藤吉郎とは…と吉丹は呆れていたが、どうだ?ぶら下がってみるか?と播磨が勧める。

そこに人影が近づき、着物を脱ぎ出すが、それはさぎりだったので、2人は又湯の中に沈む。

しかしそれに気付いたさぎりは、柄杓で2人の頭を叩く。

塒では藤吉郎が庭先に向かって自賛した種子島を撃ってみせ、これより勝る武器はない、これを300丁、泉州境港から尾張まで運んで下さらぬか?と宗介に持ちかける。

庭先には今の銃声に驚いた馬借たちが集まるが、宗介が今の音はこれを撃った音だと種子島を指して教え追い払う。

武田が買おうとしていた300丁そくり買い取り申した、引き受けていただければ諸費用の他に黄金100枚差し上げましょうと条件を言う藤吉郎だったが、我らは米や塩、魚しか運ばぬもの故点と宗介は乗り気ではなかった。

武田の連中も、まさかその馬借が種子島を運ぶとは思うまいと藤吉郎は自ら考えた計略の巧妙さを自慢するが、あの荒くれどもも我が子も同じ、それが武器を運ぶとなれば覚悟せねばならぬ…と宗介は答える。

風呂で頭を殴られた吉丹と播磨が頭を押さえながら塒に戻って来るが、逆に風呂場の方へ向かう人影に気づき、身を潜める。

差し上げた文、お読みくださったか?お嬢!返事を頂きたい!と風呂の外から呼びかけたのは夏だった。

しかし、風呂から返されたのはお湯だった。

夏は濡れたまま風呂場の中に押し入るが、湯の中に恥じらいながら立っていたのは松だった。

武士もああなったらお終いだな…と播磨は夏の無様さに同情するが、吉丹は拾った小石を近くで身を潜めていた山伏たちに投げる。

山伏が逃げ去ると、気をつけようと播磨は言うが、その内向こうからやって来ると吉丹は答える。

塒の中では、六が松と竹相手に博打をして、他の者達同様身ぐるみ剥いでいた。

翌朝、お早うございますと、泊まった木下藤吉郎に挨拶しに行ったさぎりに、藤吉郎、ほとほと困りもうした、お父上は何を言っても話して下さらぬ、もう他を頼るしかない、帰りに馬借を1人貸してくれぬかと申し出る。

さぎりは、松!と呼ぶが、松は昨夜の博打で裸だったので、恥ずかしそうに身を隠しながら近づいて来る。

さぎりはそんな松に、1人寄越してもらいたい、誰にしよう?と考え出す。

塒では、六が、金さえ出せば返してやるぞ!と馬借全員の着物を預かっていたが、そこに、バッタいないのかい!と呼びかけながらさぎりがやって来たので、全員褌姿だった馬借達は慌てて着物を六から奪って着出す。

急いでバッタを探しなと命じたさぎりだったが、くしゃみが上から聞こえて来たので、松は塒の屋根の上に寝そべっていた吉丹と播磨を見つける。

客人について行きな!とさぎりが命じたので、吉丹は客人と言うのは木下藤吉郎!ぶら下がる前にぎゅーっとやりたいと播磨に伝える。

藤吉郎に付いて行くことになった吉丹は、足が早く藤吉郎より先を進むので、主人より前を歩くな!と藤吉郎は注意するが、まだ主人と決めた訳ではないと吉丹は言い返す。

追われているせいと見えるが、追っ手の方はどうかな?わしを追っているのかもしれないぞと藤吉郎は苦笑する。

そんな2人の後を山伏2人(鈴木治夫、堤康久)が馬で追っていた。

足の速い吉丹の後を必死に追っていた藤吉郎が、少し休んだらどうかな?と声を掛けると、そうしようと答えた吉丹は、いきなり藤吉郎を殴って崖下に突き落とす。 そして自分は大きくジャンプして草むらに身を隠す。

そこに追っ手の山伏2人が馬でやって来たので、上から飛びかかり、あっという間に2人を始末すると馬を確保する。

崖を這い上って来た藤吉郎は、主人をいきなり殴ると言う奴は知らないなどとぼやくが、ぼちぼち出掛けようかと吉丹が馬から声をかけたので、御主、先へ先へと行くが、俺の行き先を知っているのか?と藤吉郎が聞くと、泉州境港の村上水軍!違ったかな?と吉丹は答える。

村上水軍の本船「竜神丸」に到着した藤吉郎は、そこにいた百蔵(滝恵一)らに、頼もしそうな方々だ!そこを見込んでそこもと1人に頼みに来た次第!とお世辞を言うと、心情をお汲み取り願って聞いていただきたい、これこの通りでござる!種子島300丁お引き受けくだされ!と低姿勢で頼むが、わしの一存では決められないと言うので、村上水軍も元を辿れば同じ織田の末裔ではござらんか!水軍は鬼に金棒!などと藤吉郎は調子の良い事を言う。

百蔵は船室内にいた滝姫(水野久美)に相談しに行く、滝姫は、金子よりも種子島が手に入れば鬼に金棒!と指摘する。

百蔵が滝姫を藤吉郎の前に連れて来て紹介すると、これはお美しい!乙姫様の再来だ!などと藤吉郎は褒めそやす。

滝姫は、確かにお運びしましょうと答え、それを聞いた藤吉郎は、承知したと申されるか?藤吉郎、生涯この御恩は忘却致しません!と感激してみせる。

南蛮渡来の旨酒でも差し上げいと滝姫が命じたとき、百蔵がお供の方がお見えにならぬが?と藤吉郎に聞く。

境港の浜辺にやって来た山伏2人は、そこで焚き火をしていた頬かぶりの男に、おい、船を出せ!と命じる。

頬かぶりの男が手ぬぐいを取ると、そこには醜い刀傷がある男の顔があった。

それを見た山伏たちは、雀の三郎左殿!と驚愕する。

あいつを地獄に追いやらぬと地獄へは行けぬ…、網に魚がかかるにを待っていたら大きなのが掛かりおった…、しかも2つ! 1つは種子島300丁を押し切った木下藤吉郎!と三郎佐が言うと、ではあの供の者が!と山伏たちは吉丹のことに気付く。

その時、暗闇の中、馬に乗って駆け去る男の姿に3人は気づき、三郎佐はしまった!と悔しがる。

有吉党の塒では、バッタの帰りはまだかしら?とさぎりが見張り台の上で案じていた。

そこにやって来た夏は、お嬢、手紙の返事が聞きたい!と迫る。

すると下から棒が投げられたので夏が掴むと、それで聞いたらどうだ?と下から播磨が呼びかけたので、さぎりは面白がり、良いよ、聞かしてやると言いながら下に降りると、自分も木刀を掴み降りて来た夏に勝負を挑む。

今日は手加減しませんよと夏も棒を構えると、今まで手加減していたと言うの?付け文した勇気を見せたらどう?とさぎりは夏をからかうので、馬借たちが面白がり周囲を囲む。

その時、木の棒が飛んで来たので、2人の勝負は中断する。

近づいて来たのは吉丹で、止めなければお嬢の木刀が夏の方を砕き、夏の棒がお嬢の膝頭を砕いていたと分析する。

それを聞いた播磨は、お嬢の方が一太刀早かったと思ったが…とニヤニヤ笑う。 帰ったら報告するのが勤めでしょう?来なさい!とさぎりは吉丹を呼び連れて行く。

吉丹は播磨に、境港で雀の三郎佐を見たことを明かし、藤吉郎が口先三寸で村上水軍を引き込んだと告げる。

その時、藤吉郎、ただいま参上!と言いながら、当の藤吉郎も有吉党のねぐらに帰って来たので、播磨は、魅力のあるヒモだと感心する。

藤吉郎は六と何やら話合う。 その後、宗介に再び会った藤吉郎は、有吉家も元を辿れば我らと同族…などとどこかで聞いたようなセリフを言い、藤吉郎の願い、お聞き受け下され!と最後懇願する。

人気のない所に吉丹を連れて来たさぎりは、バッタ、お前は百姓の出じゃないね?と詰問する。

吉丹がどん百姓ですよとごまかそうとすると、何でさっきの試合で互いに方輪になると分かった?とさぎりが迫るので、あんなのデタラメですよと吉丹は笑う。

屋敷の中では藤吉郎が、聞き入れてもらえなければこの場で腹を斬ります、ダメでござるか?と迫り腹を出したので、宗介はそれを止めようと困り抜く。

さぎりは剣を抜き、どん百姓かどうか調べてみようか?と迫るので、女は女らしくしないと婿の来てがないと吉丹はからかうので、さぎりは怒ってその場を立ち去ってしまう。

1人になった吉丹だったが、そこにいきなり山伏が2人襲撃して来たので、1人斬り、もう1人とから逃れる振りをして塀を飛び越すと、山伏が同じように塀をジャンプして乗り越えて来る。

塀の向こうには播磨が刀で斬っておいた竹槍が並んでいたので、賊はそれに串刺しになってしまう。

吉丹は塀の裏側に貼り付いていた。

それを見た播磨が、同じ忍びでも上手と下手とでは違うと褒めると、俺は信玄の冷たい血を見た、かつて塀を飛び越えたときそこには槍が待ち構えていた。

俺は小指一本で松の木にぶら下がったが…と吉丹は昔を思い出す。

信玄ほどの大物の心が読めたら越智吉丹も一人前だと播磨は皮肉る。

その語、宗介が馬借立ちみんなを集め、藤吉郎の話を聞き、腹の内を決めるよう命じる。

藤吉郎は馬借たちの前で、1日それぞれ黄金1枚になる仕事があったらどうする? 泉州境港から清洲まで無事に荷物を運んだら、織田領内の通行手形が出る上に、黄金7枚出す!と好条件を提示する。

しかし、話が巧すぎると異議を申し出たのは夏だった。 その時、乗ったぜ!と声を上げたのは六だった。

ことが成就したら特別恩賞として黄金200!と藤吉郎は気前の良いことを追加する。

種子島の箱を運ぶことになった馬借隊だったが、藤吉郎に近づいた吉丹が村上水軍が受けたのは?と聞くと、本物か偽物か?武田はどちらの種子島を狙うかな?と藤吉郎は笑うので、ますます吉丹は人間不信になってしまう。

その悩みを聞いた播磨は、山を登るのだってまっすぐな道はない、時によっては親兄弟まで斬るか?と答える。

そんな2人に気付いたさぎりは、油売るんじゃないよ!お父、出発しても良いと伝える。

そんな中、松が、六の野郎、昨夜からいないんだと周囲を探していたので、欲のない奴だ、では拙者は清洲でお待ち致すぞ!頼むぞご両人!と馬に乗って、出発する宗介やさぎりたち馬借隊を見送る。

馬借隊が遠のくと、六!もう良いぞ!と馬上の藤吉郎が呼びかけ、近くの草むらから六が姿を現す。

殿、巧く行ったなと六が話しかけると、これからだ、六、頼むぞ!と藤吉郎は呼びかける。

さぎりは先導する松に今日の泊まりの場所を教え、暗峠には山賊がいるんだと伝える。

その後、六こと蜂須賀小六は村上水軍の竜神丸に種子島の積み荷を渡していた。

百蔵がその場で中を改めようとすると、夜になってからだと滝姫が制する。

馬借隊に随行していた吉丹は、臭いな…、静かすぎる…と警戒する。

すると前方に怪しげな2人組が出現し、ここは関所だ、通行料を出せと要求して来たので、さぎりが判断を聞くと、宗介は払おうと良い、銭袋を投げて渡す。

すると受け取った2人は、こんなはした金で通すと思うか!通さん!と言って来たので、宗介は通行料は気持のはずだが…と話しかけている間に草の中に身を隠し2人に近づいていたさぎりと吉蔵が斬り捨てる。

暗くなった竜神丸の甲板上の積み荷に、突然、刀が飛んで来て刺さる。

種子島300丁、雀の三郎左が頂く!と出現したのは武田の忍者たちだった。

しかし百蔵が積み荷の蓋をこじ開けて中を確認すると、そこに詰まっていたのは石ころだった。

それを知った三郎佐は、計ったな!と藤吉郎に裏を書かれたことに気付き姿を消す。

残った百蔵が、姫!と問いかけると、藤吉郎め…、このままではすまさぬぞ!と滝姫は復讐を誓う。

翌日、山を進んでいたさぎりは、お父!狼煙だ!と前方の尾根から立ち上る煙に気付き伝える。

我々と同族かな?と播磨が呟くと、武田勢かもしれんな…と吉丹も答える。

そこにひょっこり藤吉郎が姿を見せたので、ヒモの大将だ!と播磨は驚く。

道中目立たぬように付いて来たが、狼煙が上がったので夜も日も明けずに走って来た甲斐があった…と藤吉郎は愉快そうに言う。

狼煙の様子を見に行くと列を離れようとした夏だったが、そんなにお嬢に良い所を見せたいのか!と仲間たちから止められる。

ここで合流しかからにはもう鬼に金棒、織田の精鋭300騎だと藤吉郎が見せたのは、どう見ても精鋭には見えない落ちこぼれのような連中だった。

その連中とともに歩き始めた馬借隊だったが、又狼煙を夏が発見する。 お父!くせ者!とさぎりが新たな敵を発見する。

何と見る?伊賀の透波(すっぱ)と播磨が指摘すると、厄介な奴だと藤吉郎も考え込む。 その時、夏の姿が見えないことに気付く。

列から離れて無断で敵の様子を探りに来た夏に小柄を投げて来たのは三郎佐で、背にしていた木の幹の顔の両側を小柄で固定された夏は恐怖で身動きできなくなる。

そこに三郎佐が、御主、命惜しいだろうな?大事に使えばまだ30年は生きられる、俺の言う事を聞け!と迫る。

馬借隊は、伊賀と鈴鹿の分れ道に到着する。 忍者と山賊どっちが楽かな?と山賊は無頼のやから…と播磨が告げると、鈴鹿に行こうと言う事になる。

そこに夏が戻って来たので、あれ?旦那帰ったぜと播磨が苦笑する。

やがて、さぎりが、お父!又狼煙だ!と発見し、しつこい奴だと宗介も緊張するが、構うな!と藤吉郎が命じたので、みんな、急げ!と宗介は馬借たちを急かす。

やがて人気のない村に到着したので、その晩はそこで泊まる事にする。

酷いあれ様だな…と吉丹が村の山上を見渡すと、山賊に襲われたんだろうと播磨が推測する。

あの女、馬借にしておくのは惜しいと播磨がさぎりのことを口にすると、さぎりはこのままの方が幸せなんだと吉丹が言うので、今、さぎりと言ったな?惚れたな?俺は勘は働く方だ、賭けても良い…とにやつきながら播磨が手を差し出したので吉丹はその手を叩く。

夜、仲間たちと一緒にいた吉丹は馬子歌を歌い出したので、そんな特技があったのかと播磨は驚く。

そこにさぎりがやって来て、バッタ、ハリネズミ、東と西の見張りの交代よ!と命じる。

居眠りをしていた見張りの男は暗闇から何者かに首を締められかけていたが、そこに吉丹が交代に来たので難を免れる。

一方、あばら屋の中にいた織田の雑兵(沢村いき雄)は、もし、お侍様!と外から声をかけられ、女でねえか!と目を丸くしていた。

旅の地酒売りですが道に迷うて…と哀しげに訴えかけて来たのは村上水軍の滝姫が村娘に化けた姿だった。

酒を聞いた雑兵たちは喜び、女が持っていた酒を全員が回し飲みし始める。 その様子を見た滝姫は舌を出す。

その頃、吉丹は、逃げる百蔵を追っていた。

そんな吉丹を、バッタ!どこにいる?とさぎりが探していたが、百蔵に会いに戻って来た滝姫と出くわしたので、何者!と小太刀を抜いて身構える。

そこに百像もやって来たので、お前たちは?とさぎりが聞くと、村上水軍!と答える。

それに夜も更けて来た…、眠れ…と言いながら百蔵はさぎりに催眠術をかけて来る。

必死に耐えようとしたさぎりだったが、やがて術にかかってしまい、さぎりを背負った百蔵が、姫、どうする?と判断を聞くと、人質じゃ、みんなを呼んでおいでと滝姫は答える。

その後、滝姫は藤吉郎に会い、牝狐でございます、まずは一献差し上げましょうなどと言いながら持っていた眠り薬入りの酒を勧める。

さてさてわしも果報者じゃの…と鼻の下を延ばしながら藤吉郎が酒を受け取ろうとした時、どこからともなく礫が飛んで来て滝姫の酒瓶を割ってしまう。

それで藤吉郎は、酒ならここにあるぞと自らの瓢箪を差し出し、今宵はここに泊まらぬか?と誘うが、その前に種子島300丁頂きたい、御家来衆は酔って泥のように眠っておりますと滝姫が迫るので、礫を投げた播磨が、毒の酒を飲んだな?と指摘する。

夜はまだ早い、ひとまず楽しくやろうなどと藤吉郎はごまかす。

その頃、百蔵からさぎりを奪い返した吉丹は、お嬢、帰れ!さぎり!と命じるが、さぎりは、吉のバカ!と怒って立ち去る。

播磨が帰る滝姫の後を付いて行って行くと、それを嫌った滝姫は、痛い!足が…、もう歩けそうにない、背中を貸しておくれと播磨に甘えて来る。

しかし播磨はあいにく背中にはできものが出来ているので抱いてやろうと答え、滝姫をお姫様だっこすると、久しぶりに嗅いだ女に匂いだなどと言いながら滝姫の身体に顔を近づける。

そして、馬借の言う事を聞いて竜神丸に帰りなさいと言い聞かすと、滝姫は播磨の胸に顔を埋め泣くようなそぶりを始めたので、偉いことになりそうだ…と播磨は緊張する。

翌朝 宗介は、髪を梳いているさぎりを見ながら、何かあったのか?と聞くが返事はない。

そこに松が来て、織田の30人が腰が抜けてみんな使えない、ありゃ精鋭どころか、寄せ集めの百姓ですぜと報告に来る。

出発した宗介が分からん?と藤吉郎の意図を掴みかねていると、一緒に歩いていた吉丹は、だんだん分かって来たぞ…と呟くので、何かあったのか?とそう助は聞くが、何も…と吉丹はごまかす。

そんな吉丹に、キチ、ハリネズミどこに行ったかしら?とさぎりが聞いて来たので、あいつは大人だ、どこへ行っても間に合う奴さと吉丹は答える。

そんな仲睦まじい2人の様子を夏が嫉妬深い眼差しで睨んでいた。

休憩中、列の背後に付いていた竹が梅に、これがすんだら黄金7枚もらえるななどとうれしそうに話しかけると、馬が黙って倒れて来てその背中に小柄が刺さっていたので竹は悲鳴をあげるが、その竹の喉にも小柄が刺さる。

それに気付いた夏は怯える。

襲撃されたことに気付いた宗介が、鈴鹿の太郎とは約定を結んでいるのだが…と不思議がると、甲州武田!この手裏剣には見覚えがあると吉丹が指摘する。

とりあえず難を逃れるため、馬借隊は先を急ぐことにする。

しかし崖の所に差し掛かった時、又小柄が飛んで来て、陸(中山豊)が崖から墜落する。

吉蔵は、近くの気に綱を縛ると、それを崖から降ろして、虫の息があるかもしれないのに放っとく訳にはいかんと言いながら降りて行く。

すると夏も、良し俺も行こうと言い出し、別の綱を伝って後を追うので、何もそう張り合わなくて良いと思うがなと松は呆れ、いたか〜!としたに呼びかける。 ま〜だまだ!と下から吉丹が答える。

夏は崖の途中で刀を抜き、吉丹の綱を切断すると、吉が落ちたぞ〜!と上に呼びかける。

それを聞いたさぎりは、吉〜!と崖下に呼びかける。

やがて登って来た夏はこすれたように切れた綱を見せながら、鋭い岩角だった、おそらく身体はバラバラだろう…、良い奴だったがね…と報告する。

その後、霧の崖に1人来たさぎりは諦めきれないように崖の下を覗き込み、吉…と涙ぐんでいた。

そこに近づいて来たのが夏で、お嬢、明日も苦しいぞ、バッタのことを考えていたのか、バッタのことなど諦めろと言うのでさぎりは斬りつけようとするが、そこに現れたのが雀の三郎佐だった。

怖がるな…とさぎりに話しかけた三郎佐はさぎりに当て身を食わせ気絶させると、褒めてやろうと言うのだ、4人もやるとは…と背後にいた夏に言う。 すると夏は、5人だと訂正する。

しかし、それを聞いた三郎佐は、5人目は気に食わん!越智吉丹は俺に手で仕留めたかった…、正々堂々とな…、それをこんなろくでもない女の腐ったような奴に…と夏を睨みつけると、今後は荷を運ぶに必要な者以外の馬借は消せと命じる。

だが、鈴鹿太郎とは盟約があるはず…と夏が聞くと、金を使えばそんなものは反故同然…と三郎佐は言う。

まずはその女の始末だ…と言うので、さぎり?どうするのだ?と夏が聞くと、惚れているな?と三郎佐は指摘し、山賊とやらにそのさぎりとやらを連れて行く、そう宗介に伝え、馬借の半分連れて山賊を斬れ、どうだ?良い役回りだろう?と言うと、木曽川で会おう!と言い残し、さぎりを担いで立ち去る。

宗介の元に戻って来た夏は、お嬢が山賊にさらわれた、助けを借りるぞと馬借たちを連れて行こうとすると、行くことはあるまいと言いながら姿を現したのは死んだはずの吉丹だった。

幽霊じゃない、足もあるぞと言いながら吉丹が馬借隊と合流すると、キチ、良かった!どうして助かった?と宗介が聞くと、天が我を見捨てなかった、これが縄だ!と言い、明らかに刀で切断された縄を夏に放り投げる。

そして、お嬢は俺1人で助けると言った吉丹が、山賊は何人いる?と聞くと、5〜60人と宗介は教える。

すると吉丹は、腹が減ったな、何か食うもんないかな?などと松に問いかける。

その頃、さぎりは、鳥を焼いた者にかぶりついていた山賊の鈴鹿の太郎(田島義文)と鈴鹿の次郎(大木正司)兄弟の洞窟に囚われていた。

馬借なんぞおらが出ることもあんめえと太郎は嘲っていたが、次郎の方はさぎりが気に入ったようで、あの子が欲しい!おら、馬借と遊ぶよりおめえと遊びたいなどと言いながらさぎりに抱きつこうとしていた。

馬借はどこだ?と洞窟の外に出た太郎に、馬借はこっちだ!との声がどこからともなく聞こえて来たのでそちらへ向かった太郎だったが、馬借の姿などない。

不思議に思い洞窟へ戻って来てみると、そこには次郎が縛られており、さぎりの姿はなかったので太郎は計られたと覚り、しまった!と叫ぶ。

吉丹は木の上で様子を伺っており、槍を投げつけると山賊の塒は爆発炎上する。

翌朝、吉丹とさぎりは馬に乗って馬借隊に合流しようと急いでいたが、途中で馬借隊の死体を発見する。

待ってろよ!後で埋めてやるからな!と死体に声をかけ2人は先を急ぐ。

その直後、さぎりが又狼煙を発見する。

狼煙を上げていた蜂須賀小六は、ぼちぼち行くべと木こり姿の仲間たちに話していたが、そこにやって来たのが雀の三郎佐ら武田の忍者たちで、今の狼煙は何だ?と聞くと、こいつはただの焚き火で…と言うので、背負っていた荷物を調べるとただの農機具だったので、旦那、酷えよと小六はこぼす。

その時、忍者仲間が来ましたぞ!と三郎佐を呼んだので一行は馬借隊の方へと向かうが、それを見送った小六は、背後に合図を送り、草むらに身を隠していた大勢の仲間たちが姿を現す。

宗介は馬借たちに、あれを越えれば木曽川だ!と励ます。

そんな馬借隊の目の前に丘にずらりと並んだのは馬に乗った武田忍者隊だった。

雀の三郎佐たちが近づいて来るのに気付いたじこくは草の中に身を隠す。

遠路はるばるご苦労!種子島は武田が頂く!と三郎佐が呼びかけて来る。

すると宗介は、火炎太鼓の旗印にかけても渡せん!と答える。

その直後、草むらに隠れて忍者たちに近づいていたじごくが矢を射かけるが、自らも敵の矢を受けてしまう。

傷ついて荷物の影に隠れ矢を放ち続けていたじどくの背後から、夏が小柄を投げ、それがじごくの背中に刺さる。

振り向いて、裏切ったのが夏を気付いたじごくは、お嬢!と呼びかけようとするが、そこで息絶えてしまう。

形勢不利と見た宗介は、さぎり、荷を焼こう!奴らに奪われる前に焼け!と命じる。

その時夏が、滝姫を連れひょっこり戻って来た播磨を見つける。

播磨は、祝言でも挙げようと思ったが、1人では放っておけんと応戦していた吉丹に話しかけて来る。

忍者隊の総攻撃が迫って来たことに気付いた播磨は、どれだけ持つかな?と案ずる。

その時、鉄砲隊が背後に出現し、馬に乗って迫っていた雀の三郎佐が落馬する。

背後の草むらの中から現れたのは木下藤吉郎率いる鉄砲隊だったので、播磨は、あれ?ヒモの旦那?どうも良い所に現れおった…と驚く。

どうじゃ?この鉄砲隊は…などと藤吉郎は自慢げに言って来る。

本物の種子島は小六の奴が尾根筋を運んでいたのだ、道々狼煙を上げながら…、武田勢は一枚も二枚も食ったのだと藤吉郎が笑うので、では馬借が運ぶ300丁も石ころだったのか!見ろあれを!と吉丹は、殺された仲間を埋葬するため、木の格子の上に運んでいる馬借隊の様子を指差す。

しかし藤吉郎は、ことわざにもある、賞の虫を殺し代の虫を生かすと平然と言うので、お前らも武田と同じだ、信玄は力、お前は頭!と吉丹が呆れると、騙される方が悪いんじゃ、どうだ?わしの所で働かんか?どうする?と藤吉郎は誘う。

すると吉丹は、馬借になる!賞の虫かもしれないが雑草のようにたくましく生きてやる!と答える。

それを聞いた播磨は、おい吉丹!もう一人前だ!青臭さがないなと声を賭け、滝姫行こう!と言う。

吉丹は怪我した頭と松も連れて行ってくれと頼むので、オランダの医師に見せてやろうと承知するが、それを聞いた松は、俺は大丈夫だぞ?と解せぬ顔で答える。

しかし、松の背中には大きな×印の傷があり、それを触った手に付いた大量の血を見た松は、初めて自分が重症だと気づき悲鳴をあげ倒れる。

そして播磨は藤吉郎に、実は俺もあんたにぶら下がろうかと思っていたが、海へ出ようと思う、ルソン、スマトラ、ジャガタラ…、あんたが天下を取っている頃には俺は他の国で羽を伸ばしているよと言う。

もう一度考えぬか?俺も元雑草だ、踏まれているうちにこう云うことになったと藤吉郎は勧めるが、吉丹はただ睨むだけ。

組んだ木組みの上で仲間の死体を焼き始める馬借隊。

そんな中、まだ息のあった三郎佐が這って吉丹に近づく。

そして、越智吉丹!と叫びながら持っていた刀を吉丹に向かって投げつけるが、身をかわした吉丹の前方から密かに迫っていた夏に突き刺さる。

それに気付いたさぎりが吉丹の所に悲鳴を上げながら駆け寄ると、負けた…と呟いた三郎佐は最後の力を振り絞り立ち上がると、燃え盛る火の中に自ら飛び込んで行く。 吉丹に抱きつくさぎり。

馬借を立て直そうと言い出した吉丹は、火炎太鼓の紋が入った馬借の旗を手に、前に行くぞ!と呼びかけ馬を走らせる。

その後を馬で追うさぎり 2人の馬は並んで遠ざかって行く。


 


 

 

inserted by FC2 system