白夜館

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花のヒロイン 

 

 

 

幻想館

 

忍術真田城

「忍術大阪城」が完結篇となる二部作の前編で白黒作品。

第二東映作品なので、時代劇最盛期の東映が「新諸国物語 笛吹童子」の頃から二本立て前提で作っていた「東映娯楽版」と呼ばれる、どちらかと言えば低予算の子供向け中編映画ブームの末期頃の作品だと思う。

戦後、新興の映画会社だった東映は、映画の需要が増え始め、二本立て興行が始まった昭和26年頃、他社がまだあまり開拓していなかった子供層に目を向け、子供向けの中編映画を量産し始め、これが当たって行く。

東映はテレビにも早くから可能性を見出しており、テレビ映画として作ったものを編集し直し映画上映すると言う二次使用まで行なっており、その後の東映全盛期への礎となって行くのだが、末期の昭和36年頃に作られた本作なども上映時間は前後編とも75分程度の中編になっている。

さらに当時の東映は「クリフハンガー(連続活劇)」を復活させており、本作も主役が最大のピンチの所で終わっている。

言わばこれが今の東映戦隊物や変身魔法少女ものの原点だと思うのだが、低予算とは言え、セットや衣装などは他の時代劇と同じ物を流用していたはずなので、役者に大スター級の人がいないと言う以外、メチャメチャちゃちと言う印象でもない。

敵の忍者たちと忍術合戦を繰り広げる展開は後の「伊賀の影丸」「仮面の忍者赤影」に明らかに継承されている。

テレビの「ウルトラQ」や「ウルトラマン」と言った番組が、それ以前の東宝特撮映画から派生したものと言うのは比較的良く知られていると思うが、「仮面の忍者赤影」など子供向けの時代劇がそれ以前の「東映娯楽版」から派生していると言う事は、「東映娯楽版」自体を見る機会がほとんどない事から案外知られていないのではないだろうか。

本作では当時新人だった里見浩太朗さんが猿飛佐助、山城新伍さんが霧隠才蔵を演じた真田十勇士の話になっている。

1961年と言えば、既にテレビ時代劇「風小僧」(1958)「白馬童子」(1960)で主役を演じていた山城さんの方が人気が出ていたせいか、本作でも里見浩太朗さん演じる猿飛佐助よりも山城さん演じる霧隠才蔵の方が出番が多い。

ここに描かれている忍術は、戦前から連綿と続いている魔法のような術であり、忍び装束や忍び道具を用いるいわゆる忍者ではない。

役者のキャラクターや演技もかなりマンガ的と言うか歌舞伎調と言うか誇張されている。

衣装も「自来也」などに出て来るような歌舞伎調の物であり、リアルな話と言うよりファンタジーのイメージで、玄魔斎の頭にはまっている緊箍児(きんこじ)のような金冠は「孫悟空」のイメージから来ているのかもしれない。

赤垣赤雲斎の悪役振りや怪しげな幻術を使う忍者が次々に登場する所などは、後のテレビシリーズ「仮面の忍者赤影」を彷彿とさせるような世界観に近く、実際「赤影」にも出ていた汐路章さんが本作にも登場している(ただし、どこに出ているのか確認できない)

おそらくこの作品辺りの手法が後の松方弘樹主演の「伊賀の影丸」(1963)に繋がっており、それが「仮面の忍者赤影」に継承されているのだと感じる。

「伊賀の影丸」には本作で霧隠才蔵を演じている山城新伍さんが阿魔野邪鬼役で出演しているし、里見浩太朗さんも「仮面の忍者赤影」に出ていたことからもその関連性が分かる。

主役の里見浩太朗さんと山城新伍さんのイケメン振りは見物で、特に山城新伍さんの美貌振りを映画で見られるのは貴重。

と言うのも、山城さんがほっそりしていたのはテレビ「風小僧」の時くらいで、その後、急激に肥満が始まり、その美貌が徐々に損なわれて行くからである。

本作の頃は肥満が始まり出した初期の頃で顎の辺りのシャープさが消えているが、まだかろうじて美貌は健在である。

今、大人の目で見ると、何故佐助と才蔵が真田幸村の許しもなく勝手に家康に会いに行ったり、単独行動をとっているかのように見えるとか、屋根の上にいる彼らの気配すら気付く程勘の鋭い天海僧正が、寝所に出現した2人には気付かなかった所など首を傾げたくなる描写がないではないのだが、あくまでも子供向けだから…と言う事だろう。

真田大助役を演じている花房錦一と言うのは後の香山武彦さんで、美空ひばりさんの実弟なので顔も似ている。

ちなみに、キネ旬データのキャスト表で「鬼垣赤雲斎」と表記されている役名は、本編では「赤垣赤雲斎」と言っている。
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
1961年、第二東映、結束信二脚本、小野登監督作品。

乱れに乱れた戦国の世を統一し、その名を海外にまで広めた希代の名将豊臣秀吉は、一子秀頼を遺し、62歳を持ってこの世を去った…

後事を託された徳川家康はかねてより天下を握ろうとその野望に燃えていた…(と、戦のシーンや千成瓢箪の馬印を背景にナレーション)

やがて関ヶ原の決戦を始め、次第にその勢力を広げ、豊臣配下の大名を次々にその手中に引き寄せ、自らは大御所と称し、日本全土を我がものにせんと企んでいた…(大広間で頭を下げる大勢の配下の前に得意げに立ち上がる徳川家康の姿)

その頃、千成瓢箪の馬印が飾ってあった大阪城の大広間では、豊臣秀頼(中村竜三郎)と共に家臣たちと対面していた淀君(八汐路佳子)が、もはや妾は上様の母として覚悟は付けておりまする、戦おうと戦うまいと、それは皆の者の決めることです、ただ淀は最後までこの城は離れません、それが亡き太閤殿下への勤めであり、せめてもの手向けと思うからですと話していた。

女の妾に戦の相談は分かりません…、去る者は去るが良し、残る者は残るが良い! 皆の者、良く考えて決めて下さいと淀君は家臣たちに申し出る。

それを横で聞いていた秀頼も憂い顔だったが、その時、恐れながら上様に申し上げますと手を付いて声をかけた家臣は、既に我らの議論はしつくしてござりまする、淀君様のお言葉なれども、去る者は去りました…、ここに降ります者は豊臣の家臣として全てを尽くす者ばかりにござりますると告げる。

そしてさらに、今はただ上様のお覚悟を承りとうござりますると迫る。

その時、天上から糸を伝って降りて来た胴体が光る蜘蛛がいた。

それを操っていたのは天井裏に潜んだ忍者赤垣赤雲斎(市川百々之助)だった。

その頃、高野山の麓・九度山の村、白馬に乗って庄助の屋敷にやって来た真田大助(花房錦一)に、若様!とうれしそうに出迎えに出て来たのは明美(三原有美子)だった。

ついそこまで遠乗りに来たので…と、馬を降り恥ずかしそうに答えた大助は、さあお入りくださいまし、父も喜びますと明美から誘われると、じゃあ、すぐに失礼しますと答える。

その直後、屋敷の前にやって来た代官岩堂伊賀亮(青柳竜太郎)の一団は、門前に繋がれていた白馬の腰布に六文銭の紋が入っていたので、近くを探し、明美と草原を散歩をしていた大助を見つけると、真田大助殿だな?と声をかける。

いかにもと大助が答えると、代官所までご同行願おうと岩堂が言うので、お話ならここでうかがいましょうと答える。

しかし岩堂は、いや、ならん!と睨みつけて来たので、何故です?と大助が聞くと、代官所領内でそのような勝手な言い分は許さん!と岩堂は怒鳴りつける。

大助様!と明美が怖がってすがりついて来たので、心配しなくても良いのです、さ、早く帰って!と大助は優しく言い聞かせると、さ、参りましょうと自ら岩堂の前に進み出て同行する。

屋敷に舞い戻った明美は、お父様!若様が代官所に連れて行かれました!と門前で待っていた両親と家人たちに伝える。

その頃、猿飛佐助(里見浩太朗)、三好清海入道(里井茂)、三好伊三入道(香住佐久良夫)、海野六郎(嵐歌之介)、根津甚八(大里健太郎)、由利鎌之助(波多野博)、筧十蔵(唐沢民賢)、穴山小助(富久井一朗)、望月六郎(光美智子)ら真田の勇士たちがいた砦に姿を現したのは、長らく旅に出ていた10番目の勇士霧隠才蔵(山城新伍)だった。

いつ帰ったんだ?と佐助が聞くと、今だ、それより若が代官所に連れて行かれたぞと才蔵は教える。

驚く佐助たちを前に、俺は途中で土地の者から聞いたんだが、ともかく殿にご報告と思って駈け戻って来たのだと才蔵は言う。

部屋で読書をしていた真田幸村(坂東好太郎)は庭先の気配に気付き立ち上がると、殿!霧隠才蔵、ただ今立ち帰りましてございますると跪いた才蔵を見て、ご苦労、調べて来た諸国の情勢を聞こう、奥へ通れと命じる。

はい…と答えた才蔵だったが、しかしその前に、今、本荘の村にて、今、若様が代官所に…と伝えると、何!大助が?と幸村は驚く。

才蔵と一緒にまかり出ていた六郎は、申し訳ありません、望月六郎、ただいまより代官所に赴き…と言いながら、他の勇士たちと一緒に立ち上がると、待て!これが戦じゃ、良く心得ておくが良い、戦場で武器を取るばかりが戦ではないと言い聞かせる。

それを聞いた勇士たちが又しゃがみ込むと、大助には良い試練となろう…、大助は人質になっているのじゃ、掛け合いに行けばそのものも囚われよう…と幸村は勇士たちに教え、よってわしに無断で大助を助けに行ってはならん、良いな?と命じる。

そんな十勇士の様子を庭の隅の草の中から笑って見ていたのは赤垣赤雲斎で、そのまま音もなく姿を消す。

一方、代官所では、真田館は大助を引き取りに来んようですなと女たち相手に酒を飲みながら岩堂たちがぼやいていた。

さすが幸村、野暮なことで出向いてくればこちらの思うつぼになることを察していようと岩堂が答える。

あるいは強硬手段に訴えても大助を奪い取るつもりですかな?と部下の男が想像する。

すると岩堂は、そうかもしれん、既に代官所内外十重二十重に人手は置いてあると自慢する。

しかし向こうには猿飛佐助、霧隠才蔵なる忍術の名人もおりますと部下が言うので、問題はその2人じゃ、一門のどこから現れるのか分からんのだと岩堂は困った風に答えながらも酒でごまかそうとする。

その時、岩堂の隣で酌をしていた女が急に背後の床の間の方を見てて悲鳴をあげたので、何事だ?!と岩堂たちも床の間の花瓶を見やると、花瓶の表面が光り、桔梗の花が浮き出し、女の笑い声が聞こえて来る。

そして床の間の花瓶の前に鎖帷子を着込んだ怪しげな女が出現したので、何者だ!と岩堂は怯えて立ち上がって聞く。

すると女は、お代官様、驚かして申し訳ありませんと詫び、私は桔梗の精(霧島八千代)と名乗る。

さらに前に進み出た桔梗の精は、大御所様の命により参上つかまつりましたと言うので、そなたが有名な女忍者桔梗の精か…と安堵したように言う。

脅かしやがって…、わしは又、真田屋敷の忍者が忍び込んだと思ったぞ…と岩堂は呆れたように答える。

すると桔梗の精はほほほ…と笑い、ここへ来る前に、赤垣赤雲斎が偵察しておるはず、間もなくこちらへ姿を現しましょうと言う。

それを聞いたは、何?赤雲斎が来るのか?と喜ぶ。

その頃、牢に入れられていた大助は、格子の外、かがり火が焚かれている無人の暗い中庭から、ふふふ…、館の者は誰もお前を助けに来ない…と言う不気味な男の声が聞こえて来たのに気付く。

次の瞬間、庭の地面に刀が突き刺さり、煙とともに赤垣赤雲斎が出現する。

何奴だ?名乗れ!と大助が格子から呼びかけると、赤垣赤雲斎は哄笑し、そこにやって来た見張りの者達の背後に目をやり、おお、桔梗殿!出迎えご苦労でござると礼を言う。

見回り役たちは誰もいないので不思議そうに振り返るが、赤垣赤雲斎の目の前に跪いた桔梗の精が出現する。

その頃、夜のすすき野の中の道を歩いていた修行僧姿の男は何か怪異を感じ足を止める。

すすきが風に怪しく揺れるが、一旦停まったので、そのまま通り過ぎようとした修行僧だったが、いきなり草むらの中から火炎が噴射して来たので後ずさる。

すると背後にも炎が立ち上がったので、修行僧は逃げ場を失う。

火炎は彼の周囲全てに壁のように吹き出す。

進退窮まった修行僧の前に姿を現したのは長いもみあげの男で、次の瞬間、炎が一瞬に消え去ったので、何奴?と修行僧が問いかけると、急に笑い出したもみあげの男は、木村重成!その方の命、この玄魔斎(鈴木金哉)が飲み込んでくれるわ!と脅して来る。

さては徳川の忍者か?と修行僧に身をやつした木村重成(林彰太郎)が聞くと、白骨となれ!と言いながら玄魔斎が刀を抜いて来たので、重成も杖に仕込んだ刀を抜く。

玄魔斎はトンボを切りながら重成の剣を買わすと、ジャンプして白煙とともに姿を消す。

すると重成の背後に2人の全身黒尽くめで二刀流の分身(世羅豊、智村清)が出現する。

分身たちも玄魔斎同様トンボを切ったりして身が軽く、重成の剣をかわして行く。

そして2人の分身は、二刀流の剣の切っ先から炎を噴出しながら重成に迫って来る。

その炎攻撃から後ずさっているうちに、重成は足を滑らせ崖下に落下してしまう。

2人の分身は玄魔斎の姿に戻ると、崖下を覗き込みながら哄笑する。

次の瞬間、突然玄魔斎は苦しみ出す。

その背後に出現したのは猿飛佐助だった。

佐助がえい!と気合を入れると、突然、玄魔斎の周囲に豪雨が降り注ぎ出す。

代官所でその様子を岩堂らと鏡に映し出して見ていた赤雲斎は突然鏡が割れたので驚く。

玄魔斎は雨の中姿を消す。

一方、大助の牢の格子の前には怪しげな霧が吹き込んで来て、格子を破壊してしまう。

霧の中から出現したのは笑顔の霧隠才蔵だった。

おお、才蔵!とうれしそうに牢から出て来た大助に、若、今のうちだ!と言いながら才蔵は持って来た刀を手渡しながら近づく。

そこに、代官所の手下連中がなだれ込んで来る。

屋敷の中からも、岩堂に命じられ配下の者達が庭先に降りて来る。

大助と才蔵は中庭で斬り合いを始める。

大助が座敷内に敵を切り倒すと、そこに桔梗の精が出現する。

大助が驚くと、桔梗の精は、左手に持っていた桔梗の花を5本の手裏剣に変える。

渡り廊下に移動した桔梗の精が、その手裏剣を廊下に投げて刺して行くと、刺さった手裏剣は5人の黒ずくめの忍者の姿に変身する。

庭で戦っていた才蔵も、突然辺りが暗くなったので緊張すると、そこに赤垣赤雲斎が出現する。

赤雲斎が印を結ぶと身体が炎に変化したので、にやりと笑った才蔵は自らも印を結び、えい!と気合を入れると身体が霧になって消える。

炎と霧の上に上半身を現出させた2人は斬り合いを始める。

才蔵は赤雲斎の顔を斬り、術が消えた赤雲斎は庭先に全身を現して倒れる。

刀を杖代わりにして何とか立ち上がり、果敢にも再び挑みかかって行った赤雲斎だったが、才蔵にあっけなく斬られ息絶える。

それを見た代官岩堂は驚き、斬れ!斬れ!と配下の者をけしかける。

大助の方も庭に降り立ち、黒ずくめの忍者たちを斬り合っていたので、若!斬ってもムダだ、それは幻術の化身だ!と忠告する。

え!と驚きながらも大助が黒ずくめの忍者を斬ると、倒れた忍者はすぐに鶏に変身してしまう。

他の4人も斬ると鳩や鶏に化身してしまう。

屋根の上に乗っていた桔梗の精が気合を入れると取りたちは全て消え去る。

才蔵から掴まれた侍が、わしを斬るのか?と怯えると、いや斬りはせんと言った才蔵だったが、侍を庭先に押し出し印を切ると侍の姿は白馬に変身する。

若、早くお屋敷の戻りなさいと指示した才蔵に、そちは?と大助が聞くと、桔梗を追って和歌山城へ参りますと答える。

うんと承知した大助は白馬に股がり屋敷へ戻る。

それを見送った才蔵は姿を消す。

屋根の上でその様子を見ていた桔梗の精は何事かを決めたようだった。

和歌山城 戻って来た玄魔斎が、崖に追いつめ今一息の所で急に術が効かなくなり…と報告すると、聞いた徳川家康(北龍二)は、ほほお~…、そちほどの名人でも取り逃がす事があるのか?と意外そうに聞く。

惜しい事を致したの~、大御所様がせっかくこの和歌山にお越しの折、木村重成の遺骨などご覧に興じるのも一興であったのに…、のお、天海殿…と脇で聞いていた浅野但馬守 (浪花五郎)も声をかける。

それにしても玄魔斎程の者の術を封ずる者がおるのか?と家康が聞くと、脇に控えていた天海僧正(瀬川路三郎)は、おそらく日本にただ2人…、猿飛佐助と霧隠才蔵…と答えると苦虫をかみつぶしたような顔になる。

そんな和歌山城の前にやって来たのは猿飛佐助だったが、すぐに霧隠才蔵もやって来た事に気付き、おお才蔵、御主も来ていたのか?と側の木の方向に声をかけると、木の前に姿を現した才蔵は、昨夜大和路に行ったのだが、御主が和歌山に上った気がしたのですぐやって来たのだと答える。

とにかく生まれて初めて見る相手だ、凄い術を使うぞ、身をかわすのが精一杯だったと佐助は玄魔斎のことを才蔵に教える。

重成殿は?と才蔵が聞くと、うん、谷川に転落したが命には別状ないと佐助は言う。

重成殿のお迎えとなると殿もいよいよ大阪入りだなと才蔵はうれしそうに言うと、そうだ、だがその前にあの妖術使いを片付けねばならんぞと佐助は忠告する。

城内では腰元たちが踊りを家康に披露していた。

その場にいた天海僧正は何かの気配を感じて上を見上げる。

屋根の上にいた才蔵は佐助に、なるほど凄い物だ、ここにいても天海僧正の術の力びんびん飛んで来ると言うと、敵の力は二分以上、二手に別れるか?味方同士力を合わせて敵の術を破るんだと佐助は提案する。

心得たと答えた才蔵は先に進む。

余興の座では、いかがなさいました?と隣に座っていた玄魔斎から聞かれた天海僧正が、先ほどから奇妙な気配がしたが…、消えたようじゃな…と天上の方を見上げながら答える。

舞が終わると家康が立ち上がり奥へと向かう。

部屋を出掛けた家康は、但馬、ここな小姓は女じゃな?と横にいた小姓の事を問いかける。

はっ、お気に召しましたか?と但馬守が聞き返すと、良し、共を致させいと家康は命じる。

女の小姓を連れ寝所に戻って来た家康は御簾の中に控えている人影に気付き、誰だ?そこにいるのは…と問いかける。

すると小姓が、何と仰せられました?と聞いて来たので、たわけ!そこにいる侍の事じゃと家康は叱る。

そして、無礼者め!余の寝所に待ち受けるなど!と家康が御簾の中の人影に言うと、小姓もその人影に気付き、ここは大御所様の御寝所なるぞ!お下がりなされい!と叱りつける。

しかし顔を伏せた人影は全く反応しないので、焦れた家康は、ええい、何者じゃ!と語気を荒げる。

巣辛ようやく人影は、太閤秀吉公の使者でござると返事をする。 それを聞いた家康は狼狽し、な、何!秀吉の?と問いかけると、いかにも…と人影は答える。

あなたに秀頼と豊臣の家を預け、そして裏切られた太閤秀吉公の使者でござる…と人影は言う。

黙れ!左様な戯れ申すとただではすまんぞ!と家康は気色ばみ、それに直れ!手打ちに致す!と言うと、御簾の中で控えていた人影は急に笑い出す。

その証拠に御使者の下向が待ちどうしいぞとお道の方は答える。

すると御簾の中にいた人影は顔を上げながら笑い出したので、何がおかしい?と家康は戸惑う。

次の瞬間、御簾を外して姿を現したのは猿飛佐助、同時に襖を開けて中に入って来たのは霧隠才蔵だった。

驚いた家康は、くせ者じゃ!出あえ!と声をあげたので、それに気付いた天海僧正が立ち上がる。

寝所へ駆けつけた天海僧正が、廊下に出て来た2人のくせ者と対峙し、何者じゃ!と呼びかけると、佐助と才蔵は名乗りを上げる。

すると天海僧正は笑い出し、両名揃って飛んで火に入る夏の虫じゃ!と嘲り、斬れ!と付いて来た家来達に命じる。

その頃、桔梗の精と共に馬に乗って代官所をに兵を連れて出立しようとしていた代官岩堂伊賀亮は、九度谷、まだ猿飛も霧隠もまだ戻っておらぬのだな?と桔梗に確認する。 桔梗の精は、おりません、今のうちですと答える。

恐ろしい忍者の代わりに大阪の大事な若武者でも来る事でしょうと桔梗の精は愉快そうに微笑む。

その桔梗の精と岩堂は兵を引き連れ、真田館が見下ろせる場所に到着する。

一方、和歌山城では、天海僧正が玄魔斎出よ!と命じ、玄魔斎が姿を現す。

佐助と才蔵は城の外に出て家臣たちと斬り合っていた。 そこに玄魔斎と天海僧正がやって来る。

天海に促され玄魔斎が首から下げた数珠を両手に握りしめ、佐助と才蔵ににじり寄る。

佐助と才蔵が同時にジャンプをして姿を消すと、玄魔斎も気合いを入れ煙玉が爆発する。

佐助、才蔵、玄魔斎の3人は屋根の上で対峙していた。 天海僧正の横には家康も駆けつけて屋根の上の戦いを見上げる。

その時、佐助と才蔵は星空を斬り割くように走る流れ星を見て、吉兆の星!と呼ぶ。

すると玄魔斎が急に苦しみ出す。

それに気付いた家康は、天海!何事じゃ、どうした?と問う。

吉兆の星でござる、千年に一度現れると言う吉兆の星が現れたのでございます、おそらくその星を呼んだ者は…と天海が言うので、誰だ?と家康が聞くと、千年に一度と言われた太閤秀吉の御霊!と天海は答える。

それに応えて西へ飛んだのは千年に一度の武将真田幸村!と天海は言い切る。

それを聞いた家康は不快な顔になり、黙れ!わしは関東の大御所だ!西を消す日輪じゃ!東から昇る太陽じゃ、者どもあの2人を撃ち殺せ!と命じる。

明察でござると天海が答えると、いや、天上で会おうぞ、天海!首の筋でも洗っておけ!と佐助と才蔵の声だけが響いて来る。

その年慶長19年10月 関東関西の風雲は益々急を告げ 家康大阪侵攻の例を全国に下し…

大阪城もまた在野の浪士を集め警備を固め…

今やただ真田幸村とその一党の入場を待つばかりとなった…(とテロップとナレーション)

紀州 九度山 真田館では勇士たちが互いの技を磨いていた。

そこに佐助と才蔵が帰って来たので、館にいた勇士たちはめいめいに話しかけて来る。

まあまあ鎮まれと佐助が制し、要するにだ…、戦いに挑むには敵を知りおのれを知らねばならぬと才蔵が偉そうに言い出す。

家康ほどの者が諸大名の兵だけを頼りにしているはずがないと才蔵が続けると、よって我々両名はこれから駿府に赴くと佐助が言う。

駿府と言うのは大阪のどの辺にあるんだ?などと勇士が聞いて来たので、笑った佐助は、御主たちはどうにかしておるぞ、駿府と言えばただ一つ、東海道は冨士の見えるあの駿府だと佐助は説明する。

それを聞いた勇士たちは、冨士?駿府?と戸惑うが、みんな騒がないで待ってろよと言い残し、すぐに佐助は恋人忠乃(円山栄子)も伴い才蔵と3人で出掛けて行く。

やがて佐助と才蔵は駿府城に到着する。

城内では本多忠勝(浅野光男)が、大御所様は既に京都に養生に入られ、西国諸藩もまた大阪に向かって行動を起こしている…と家臣たちに話をしている所だった。

よって来たる10日、未明を期して進撃!直ちに大阪に向かう!各隊はいずれも戦備を整え、出撃に万感なきを期せられたいと本多忠勝が告げ、上座の将軍秀忠(若井緑郎)に会釈をする。

秀忠が、忠勝、かつて製造しておった甲一号、既に到着しておるのか?と聞くと、さればにございます、甲一号の件は大阪方に対し秘中の秘、伊豆の某山中において製造し、このほど見事に完成、両3日のうちには上様のごらんにいれる手はずにございますと本多忠勝は答える。

おお、待ち遠しいな、甲一号さえあれば大阪城など鎧袖一触じゃと城主は喜び、忠勝も御意にございますと答えるが、そうした会話を天井裏に潜んでいた佐助は、おい、聞いたか?と一緒に聞いていた才蔵に問いかける。

何だ、その甲一号と言うのは?と才蔵も不思議がる。

分からんと佐助が言うので、要するに新兵器らしいなと才蔵は察する。

さすがだ、敵にこんなものがあるのも知らず大事な情状を配してもしもの事が起こったら取り返しがつかなかったぞと佐助は言うが、その時、うん、おい、甲一号の説明をしてるぞと才蔵が教える。

下の大広間では本多忠勝が家臣に向かい、各々方には改めて甲一号の実物をお目にかけるが、そもそもこの甲一号なるものは、かねて関ヶ原の合戦以来、大御所様既に今日あるを慮られ全国の鍛冶職人を集め、オランダよりその専門家を招き…と説明を始めるが、その時、待たれい!と廊下から声がかかる。

障子を開けた向こう側に立っていたのは、桔梗の精と玄魔斎を従えた天海僧正だった。

天海か!と城主は喜ぶが、忠勝殿、お気を付けめされい、城内、特にこの広間に異様な忍者の息吹が致すと天海は忠告する。

忠勝は上様!と呼びかけ、天海は、玄魔斎、改めよ!と命じる。

玄魔斎は首から下げた数珠を掴み気合を入れると、天上に向かって炎が吹き上がる。 しかし、その時にはもう、天井裏には誰もいなかった。

佐助と才蔵は山中を歩いていた。

惜しい所だった…と佐助が駿府城を振り返って言うと、もう少しであの甲一号とやらを詳しく聞けたんだが…と才蔵も悔しがる。

天海とあの妖術師が現れたのも、甲一号とやらの秘密を守る為だろうと佐助は指摘する。

うん、開戦間際の今、本当ならばあの狸親父が自分の側から放しはしないあの天海僧正だ…、とするとますます甲一号はただものではないぞと才蔵は推測する。

良し、才蔵、御主この城下にいて城を探れと佐助が指示する。

御主は?と才蔵から聞かれた佐助は、俺はその甲一号とやらを調べてみると答える。

あいつらの話では伊豆山中で製造し、2〜3日の内には城内に入ると言う、とすればいずれここに運ばれてくるであろうと佐助は言う。

しかし気を付けろ、甲一号が駿府に運ばれて来る途中ならば、あの妖術師も護衛として出掛けるに違いない、何しろ天海僧正は我々が天井裏に潜んでいたのを気付いていたほどの奴だと才蔵が忠告する。

心得た、では行って来るぞ!と応え、佐助は歩き出すと自然に姿が消える。

夜 とある屋敷の庭先

我ら、甲一号護衛の者は夜明けをきって出発すると右目の周囲に痣がある木代将監(木島修次郎)が家来たちに告げていた。

道中は城内よりの迎えの者も多く出向き、万一のことも起こらんと思うが、問題は今夜だ、邸内に蟻一匹入れてはならんぞ!と檄を飛ばす。 そこに姿を現したのは桔梗の精だった。

将監殿、豊臣の忍者猿飛、霧隠、いずれの者か、甲一号を狙って必ず現れるでしょうと桔梗は言う。

うん、してその方に何か企ては?と将監が聞く。

そんな屋敷の屋根の上に猿飛佐助は姿を現し、庭先に並んだ荷車を観察する。

そしてジャンプして庭先に降り立った佐助は、荷車に立てられた「徳川家御用」と書かれた札に近づく。

その時、笑い声と共に姿を現した将監が、待っていたぞ、猿飛と呼びかける。

そして隠れていた鉄砲隊が出て来て、あっという間に佐助の周囲を取り囲む。

撃て!と命じる将監の号令と同時に鉄砲隊は一斉に佐助に向かって発泡するが、佐助の姿は消えたので、しまった!と言いながら将監は荷車に近寄る。

笑い声とともに佐助は屋敷の廊下に出現したので、おのれ!と怒った将監は、撃て!撃てい!と命ずる。

再び鉄砲隊が佐助に向かって発砲するが、又しても佐助の姿が消えると、いつの間にか背後に出現した佐助が鉄砲隊を蹴散らし始める。

おのれ!と将監が剣を抜くと佐助も剣を抜き一騎打ちになる。

将監が剣で佐助に押されがちになっていた時、姿を現したのが桔梗の精で、桔梗の花を持った右手で気合いを入れると、背後に黒ずくめの忍者軍団が出現する。

忍者軍団に迫られる猿飛佐助。

その頃、駿府城にいた天海僧正は部屋の中に人の気配を感じ、側に置いてあった払子(ほっす)を手に取ると、念仏を唱え出す。

すると術で姿を消していた霧隠才蔵の姿が見えるようになり、才蔵は苦しみ出す。

天海僧正は、出あえ!出あえ!と声をあげる。

術が破られたと覚った才蔵は部屋から廊下に逃げ出すが、駆けつけた家臣たちに気付かれてしまう。

やむなく才蔵も戦い始める。

騒ぎを聞きつけた他の見張りたちも駆けつけて来る。

佐助も忍者軍団と戦い、才蔵も駿府城の家来たちと斬り合う内に敵の剣も奪って二刀流になる。

佐助に迫る桔梗の精、才蔵に迫る天海僧正。

桔梗と木代将監に立ち向かって行きかけた佐助だったが、どこからともなく短剣が何本も飛んで来て、佐助は右手の袖を串刺しにされ身動きが取れなくなる。

そこに笑いながら出現したのは玄魔斎だった。

若僧!今宵こそ貴様の息をこの玄魔斎が吸い取ってくれるわ!と宣言する玄魔斎。

袖を射抜いた短剣を引き抜いた佐助は、妖術使いめ!と睨み返し、貴様がここにいる間、誰が秀忠を守るのだ?と佐助は問いかける。

玄魔斎が答えないので、天海か?なるほど天海僧正は術を見破る力はあっても術は使えん!貴様と俺がここで戦っている間に才蔵は天海僧正と将軍秀忠を斬るのだ!と佐助は言いながら後ずさるとジャンプして姿を消す。

右手を怪我した佐助は屋根の上に姿を現すが、数珠を握った玄魔斎もすぐ横に出現する。

玄魔斎が刀を抜いて向かって来たので、佐助も左手一本で刀を掴み応戦する。

しかし玄魔斎の方が強く、佐助は屋根の端に追いつめられる。

一方、霧隠才蔵の方も天海和尚の払子で術を封じられ、多数の敵に取り囲まれ城壁に追いつめられていた。

屋根の上で煙とともに玄魔斎が姿を消すと、以前と同じように背後に黒ずくめの化身2人が出現し、両手に持った短剣の先から火炎を噴射して来る。

見ると屋根の頂上にも火が走って来て炎の壁になる。

退路を断たれた佐助に2人の影分身の炎が迫り、玄魔斎の哄笑が響いて来る。


 


 

 

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