白夜館

CG17
CG18
CG19
CG20
CG21
花のヒロイン 

 

 

 

幻想館

 

忍術大阪城

「忍術真田城」に続く二部作の後編で、子供向けに作られていた「東映娯楽版」と呼ばれた中編時代劇ファンタジーである。

冒頭に前作のあらすじがナレーションで紹介されるが、佐助が恋人の忠乃と一緒にいるシーンなどに見覚えがないので、前に見た「忍術真田城」は猿飛佐助に関するシーンを中心にかなりカットされていた事が分かる。

基本的に猿飛佐助と霧隠才蔵と言う人気キャラが徳川方の妖術師たちと戦うと言う忍術合戦の話で、真田幸村や真田十勇士の活躍は少なめ。

低予算と言う事もあり動員力がある一流スターのような俳優は出演していない(里見浩太朗さんや山城新伍さんは当時はまだ人気が出始めたばかりの新人時代)が、二部作なので2本まとめて見れば長編分のボリュームはあるし、「東映娯楽版」としては一般映画へと移行する末期の作品なので、初期の頃のように安っぽさが目立つと言うほどでもない。

通常真田十勇士映画の常として予算のかかる大阪の陣の描写は避ける傾向があるが、本作では一応、冬の陣は最後に大量のエキストラも動員して描かれており、子供映画にしては予算を使っているように見える。

スターがいない代わりに新人と個性豊かな脇役陣が話を支えており、特に天海和尚役の瀬川路三郎さんの顔の迫力は凄い。

前作に赤垣赤雲斎役で出ていた市川百々之助さんの顔の迫力も凄かったが、瀬川さんの目力がある老僧は悪役としてぴったり。

佐助と才蔵や敵の妖術師たちも揃いも揃って派手な衣装を来ており、とても今言う忍者と言ったイメージではない。

また白黒作品では時々ある手法なのだが、夜景を昼に撮っているシーンがあり、見ていると状況が昼なのか夜なのかにわかに判別しにくい部分もある。

又、子供向きにしては珍しい「色仕掛け」のシーンが出て来る事。

前作でも、家康が女の小姓を寝室へ連れ込むなどと言う描写があったが、今回も桔梗の精や玄魔斎が若い娘に化けて大阪方の武将の元へ色仕掛けで近づくシーンがある。

彼ら妖術師は妖術で直接人は殺せないのだろうか? 見所はやはり、主役を演じている里見浩太朗さんと山城新伍さんの美貌振り。

両人とも中村錦之助、東千代之介から始まる子供向け東映イケメンヒーローの元祖的存在で、主役2人の笑顔をスクリーンに見せるラストなどアイドル映画そのまま。 そして、ヒーローものでは定番の「偽者騒動」が描かれている所。

しかし「偽者騒動」と言い新兵器顛「甲一号」と言い、顛末はあっさりし過ぎておりちょっと物足りない気もするし、前後編二部作にしては敵が少なすぎるような気もする。

敵の妖術使いが玄魔斎と桔梗の精だけでは、繰り出す技のバリエーションも少なく、何度も同じような術を見せられるばかり。

まだ「怪竜大決戦」や「仮面の忍者赤影」の頃のように、怪獣が出て来たりと言った派手な見世物要素はない。 当時の東映のトリックと言えば煙と光りと合成くらいしかなかったので、術のバリエーションが少ないのはやむを得ないとは言え、もうちょっとアイデアが欲しかったような気はする。

とは言え、当時の子供向け作品としてはかなり出来は悪くない方だと思うし、子供向け時代劇や忍者もの映画の歴史を知る上でも貴重な作品だと思う。
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
1961年、第二東映、結束信二脚本、小野登監督作品。

慶長5年9月

天下分け目の関ヶ原の合戦に敗れた豊臣秀頼は、1人大阪城にあって悲運を託っていた。

豊臣恩顧の大名も力と権力を前に脆くも徳川方に付いた今、秀頼にとってただ1つ希望の星は、関ヶ原の合戦以後秘境九度山に籠って世の動静を眺めている一台の知将真田幸村その人である…(読書をする真田幸村の姿)

幸村の元に集まる一騎当千の兵たち(六文銭の旗印) すなわち、猿飛佐助(里見浩太朗)、霧隠才蔵(山城新伍)をはじめとする真田十勇士の面々である(とナレーション)

策謀と関知に長けた徳川家康(北龍二)は、あるいは大阪城内に、あるいは真田館にその腹心である妖術師、女忍者を送り秀頼、幸村の暗殺を謀ったが、いずれも佐助、才蔵の正義の忍術の前に失敗に終わった…

慶長19年10月

遂に家康は大阪侵攻の命を全国に発し、関東関西の風雲は益々急を告げるに至った。 ちょうどその頃、家康が密かに伊豆山中にて苦心の末完成した新兵器甲一号が駿府城に向かって出発しつつあった…

それさえあれば徳川の勝利は間違いない…とまで家康に豪語させた謎の新兵器甲一号とは一体何であろうか?

その正体を探るべく重大な使命を帯びた猿飛佐助は恋人である忠乃(円山栄子)と共にその途中を狙ったが、甲一号を守る妖術師玄魔斎に発見する所となり…(とナレーション)

一方、家康の情報を探らんと駿府城深く忍び入った霧隠才蔵も妖術師天海僧正の持つ払子(ほっす)にその忍術を封じられ危機が迫っていた。

屋根の上で炎に逃げ道を封じられ、玄魔斎の化身2人が両手に持つ短剣の切っ先から吹き出る炎に苦しむ猿飛佐助。

一方、天海僧正の払子(ほっす)を突きつけられ、術を封じられたまま城壁に退路を断たれる霧隠才蔵。 佐助が巻物を取り出し気合を入れると、玄魔斎は苦しみ出し地上へと降りる。

そこに本多忠勝(浅野光男)と共に駆け寄った桔梗の精(霧島八千代)に、駿府の師匠が気にかかる、行け!と玄魔斎は命じる。

頷いた桔梗は後ずさり持っていた桔梗の花を胸にかざし、術で出した黒ずくめの忍者たちとともに姿を消す。

その頃、才蔵は刀を投げつけ天海僧正の払子(ほっす)を叩き落とすと、ジャンプして姿を消す。

鉄砲隊が屋根に向かって発砲するが、屋根瓦の上に姿を現した才蔵は、天海!貴様と秀忠の命、大坂の陣まで預けるぞ!と下に向かって呼びかけると高笑いをする。

それを下で聞いた天海は、屋根だ!追え!と見張りたちに命じる。

見張りが才蔵を追って行った後、天海は桔梗の精が姿を現したのに気付く。

おお桔梗を迎えた天海僧正は、その後帰って来た玄魔斎と桔梗を前に、猿飛が甲一号を狙いおったかと報告を聞く。

ウ〜ン…、討ち漏らしたのは、要するにその方たちの未熟の故じゃ!左様心得い!と天海は2人の妖術師を叱りつける。

桔梗と共に、恐れ入ります!とひれ伏した玄魔斎は、かくなる上は再び甲一号を狙って猿飛佐助城内に現れると思われる故、必ず討ち遂げます!と約束する。

幸い一夜の内に術も使えるようになりました故!と言いながら玄魔斎が首から下げた数珠を掴んだので、待て!と制した天海僧正は、昨夜城内に霧隠が現れた、その方ら2人が不在なるを見越して将軍家の命を狙いに来たのであろう、さればこそ玄魔斎、桔梗!その方共々直ちに大阪へ飛び秀頼を狙え!ここはわしがおる限り、霧隠、猿飛共々城内においてその術は使えん、恐れるには当たらん…、玄魔斎!桔梗!行け!と命じる。

駿府城の外にいた才蔵は、忍術が使えんとは不便だなとぼやくが、一緒にいた佐助は仕方がないと答える。

そして、こっちは明るいぞと言いながら人気のない入り口付近に向かった2人は、そこに見た事もない巨大な大砲を準備している家来たちの姿を発見する。

これは凄いぞと佐助が驚くと、あれを撃ち込まれたら大阪城も何もあったものじゃないと才蔵も呆れ、術さえ疲れればあの大砲に近づけるんだが…と無念がる。

良し、とにかく御主九度山に飛んで殿に知らせろと佐助が指示するので、うん、御主は?と才蔵が聞くと、俺は駿府に残ってあの大砲に近づくと佐助が言うので、術は効かぬぞと才蔵が忠告すると、承知の上だ、虎穴に入らずんば虎児を得ずだ!と佐助は覚悟を決める。

じゃあ、俺もすぐ戻って来る、気を付けろと言い残し、才蔵は去って行く。

その夜、城内の中庭では、将軍秀忠(若井緑郎)の見守る中、女たちによる舞が披露される。

秀忠はうれしそうだったが同席した天海僧正は無関心そうだった。 その中庭に近づこうとする佐助。

踊りを踊っている女の中に忠乃が混じっており、天海とその手にある払子(ほっす)を観察しながら徐々に接近して行く。

そこに才蔵も戻って来て、大丈夫かな?と案じていた。

天海僧正は忠乃を気に入ったのか、見事な舞いじゃの〜、盃を受けろと相好を崩していた。 盃を受けた忠乃は酒を飲んだ後、ご返杯と言いながら盃を返す。

忠乃がその盃を受け取るため目の前に置いた払子(ほっす)に目を留め奪おうとした時、それに気付いた天海僧正は、くせ者!払子(ほっす)を奪おうとしてわしに近づきよったな!と言いながらその盃ごと忠乃の身体を引き寄せる。

その様子を横で見ていた秀忠も、斬れ!その女を即刻斬れ!と逃げ出すとした雪江を指差して命じる。

忠乃はあっさり家臣たちに捕まるが、それを見ていた佐助は、待てい!と呼びかけ、刀を抜いてなだれ込んで行く。

それに気付いた忠乃は、あ!いけない、佐助さん!と止めようとする。

それでも1人で戦う佐助に焦れた秀忠は斬れ!斬れ!と叫ぶが、お待ちくださいとそれを横で制した天海は、案がございますと告げる。

そして、待て、待てい!佐助、どうじゃ?大事な女の死出の旅を祝って得意の術を使ってみるか?と天海は挑発し、大笑いし出す。 捕まった忠乃は、佐助さん!と呼びかける。

やがて天海は、殺されろ!と怒鳴りつける。

その時、佐助に銃を向ける鉄砲隊が駆けつける。

佐助さん!と呼ぶ志乃に、忠乃さん!と佐助は応える。

ピンチの佐助を目撃した才蔵は驚く。 この女と甲一号の的としてあの世に送り込んでやる!発射の用意を致せ!と天海は命じる。

家臣たちが大砲の覆いを取り外すのを見た才蔵は刀を抜いて佐助の元へ駆け込む。

それに驚いた天海が思わず後ずさってバランスを崩したのを見た忠乃は素早く払子(ほっす)を奪い取り、才蔵に向けて投げる。

それを受け取った才蔵は、天海!見ろ!と叫ぶと、忠乃は才蔵に近づいた佐助に駆け寄り、佐助は才蔵!と呼びかける。

天海!祝宴の払子(ほっす)の行方を見よ!と言うなり払子(ほっす)を空高く投げ上げる。

払子(ほっす)は空中で発火し、燃えながら地上に落下する。 怯えた天海と将軍秀忠は家臣らとともにその場から逃げ出す。 才蔵が甲一号を刺しながら、大砲を始末するんだと言うと、心得たと応えた佐助は扇子を取り出し大砲に向けながらえい!と気合いを入れる。

すると大砲「甲一号」は大爆発を起こして砕け散る。 それを見た天海は苦しみながら倒れる。

佐助、才蔵、忠乃の3人は屋根の上に飛び上がり、愉快そうに下の様子を見下ろす。 さらに佐助が扇子を片手に、えい!と気合を入れると、突然雷とともに大雨が降り出す。

下にいた家臣たちは狼狽する。

その頃、徳川家康は庭先に人の気配を感じ、姿を現せ!と命じると、桔梗の花と共に桔梗の精が出現する。

それを見た家康は、うん、そちは確か、玄魔斎と共に大阪城に潜入していたと聞いておるがと問いかける。

はい、お聞きくださいませと放し出した桔梗は、後藤又兵衛、塙団右衛門以下世に聞こえた大阪入城の浪人の命、今日明日限り消え失せますと報告したので、何!大阪入城の豪傑どもの命が?と家康は驚く。

はい、猿飛、霧隠がお味方の大砲と天海様を倒せば、私と玄魔斎が大阪入城の合流の日を次々と倒して参ります。

大御所様、お気を強うなされませと桔梗が言うので、家康は、うん、頼むぞ!天下を取るも取らぬもその方と玄魔斎の力にかかっておると喜ぶ。

して、今日姿を消すは何と言う武将じゃ?と絵安から聞かれたい桔梗は、はい、関ヶ原の残党として1万5000を率いて入城した浪士の中の大立て者、伊吹山城守!と応える。

その伊吹山城守(那須伸太朗)の陣にやって来た女は、私は楓と申しますと頭を下げる。

淀君様のお言いつけにより御陣中の徒然をお慰みの為上がりましたと言うので、おお、淀君様のお言いつけで、陣中の慰問に?うん!さすがは淀君様じゃ!良く気がつく、香でなくてはならん!…と伊吹は警戒を解いて喜ぶ。

良し!みんな下がれ!と伊吹が言うので、側に控えていた配下の者は驚いて下がってしまう。

すると伊吹は、さ、楓とやら、近う寄れと誘う。

楓が側に近づくと、戦の事なら心配せんでも良いぞ、わしらが必ず徳川を破って、又昔のように豊臣の天下にするのじゃと伊吹が言い聞かせるので、楓はうれしそうに、はい、城の者は皆貴方様におすがりしておりますと応える。

任せておけ、任せておけと安請け合いした伊吹は、酌をしてくれるか?と頼む。

承知して注いだ楓は、あの…、私にも盃を頂かせて下さいませと願い出るので、酒の相手もしてくれるのかと喜んだ伊吹は盃を楓に差し出す。

そして盃を口にした楓を見ながら、そなたは美しいの〜と抱き寄せようとした伊吹だったが、その脇腹を楓に短刀で疲れ絶命する。

楓は次の瞬間、桔梗の精に変身し、そのまま歩いて姿を消して行く。

大野治長様も待っておられますと言う女の小姓に城内に案内されて来た侍も、大事な話だな?と疑わず同行していたが、突然その小姓が怪しい影が!と言いながら後ずさったので、何?怪しい影?どこに?と聞く。

はい、あの方向にございますと小姓が指差す方向を凝視した侍は、急に笑い出し、城方の者は実践の経験がないので弱虫でいかん、どれ、どこじゃ?と嘲りながら前方へ進んだ所、隙を突かれて背中を小姓に刺されてしまう。

侍が倒れると、女小姓は玄魔斎に変身する。 こうした事態を知った真田幸村(坂東好太郎)は、徳川に与する裏切り者をまず洗い出せ、その後で必要な手はわしが打って遣わすと佐助と才蔵に指示する。

その後、真田幸村が大阪に向かって出陣したと!と家康は報告を聞いて驚いていた。

代官所の急使によれば、明日出発する由にございます家臣が応える。

家康は、いや、大阪に入れてはならん!と考え込み、良し、桔梗!現れよ!と部屋の外に呼びかける。

すると障子がひとりでに開いて廊下で控えていた桔梗の精が出現し、お呼びにございますかと言う。

おお、その方直ちに玄魔斎を呼び、共に九度山へ迎え!幸村親子を狙え!と家康は命じる。

はいと応えた桔梗だったが、なれども大御所様、今宵は有川正治と2人にて木村重成を襲う手はずでござりますと言うと、ええい、幸村が先じゃ!今夜のうちにやれ!明日になれば幸村は出発すると家康は苛立つ。

日中においてはその方たちの術は力を失うだろう、今夜のうちにやれ!急げ!と家康は急かす。

その夜、玄魔斎と桔梗の精は、黒ずくめの忍者軍団を引き連れ、九度山の真田屋敷に忍び込む。 しかし寝所はもぬけの殻であった。

狼狽する玄魔斎に、突然、龕灯(がんどう)の灯りが照らされ、愚か者!その方のごとき魔性の妖術が父親に通ると思うか!と大助が叱りつけて来る。

龕灯(がんどう)を手にしていたのは望月六郎こと雪江(光美智子)で、大助と雪江の間に立っていたのは真田幸村だった。

この明るさ、この光りの中でその方の妖術が効くと思うか?と大助が言う。

障子が開き、短刀を構えた女性たちも出て来たので、おのれ、計ったな!と玄魔斎は悔しがる。

土間に忍び込んでいた桔梗の精の方も隠れていた三好清海入道(里井茂)、三好伊三入道(香住佐久良夫)、海野六郎(嵐歌之介)、根津甚八(大里健太郎)、由利鎌之助(波多野博)、筧十蔵(唐沢民賢)、穴山小助(富久井一朗)ら勇士たちが出て来て取り囲まれてしまう。

勇士たちは忍者軍団を次々に倒して行く。

大助も果敢に忍者たちと戦い出す。

雪江の龕灯(がんどう)の灯りに術を封じられた玄魔斎は、覚えておけ、この恨み、必ず返すぞ!と幸村に言うと、桔梗!引き上げじゃ!と叫ぶ。

それを聞いた桔梗の精は持っていた桔梗の花を口にくわえ、連れて来た忍者軍団とともに姿を消す。

その頃、大阪城の豊臣秀頼(中村竜三郎)の前に姿を現した佐助と才蔵は、名乗りをあげる。

何用じゃ?と秀頼が聞くと、他だ今城の中には妖術使いはおりません、従って手前どもの術によってこれを作成しましたと言いながら才蔵が書面を差し出す。

ご覧下さい、お城の中に紛れ込んだ浪士の中の裏切り者の人別帳ですと佐助が説明する。

この人別帳により、浪士の中の裏切り者は次々と捕まって行く。

捕縛され、城内の中庭に集められた裏切り者たちの前に、佐助と才蔵を引き連れ近づいて来た木村重成(林彰太郎)は、鎮まれ!豊臣の家を乱し、徳川に与する不届きもの目が!一同の者を牢にひったてい!と家来たちに命じる。

重成は、佐助、才蔵、これにて城内の裏切り者は一掃、幸村殿をいよいよお招きして良いのだな?と笑顔で聞く。

すると佐助は、重成殿、今しばらくお待ちくださいと応えるので、何?まだか…と重成が戸惑うので、今宵、真田館におびき寄せられたる桔梗と玄魔斎の2人を事のついでに討ち取ってごらんに見せますと才蔵は笑顔で言う。

翌日、家康の元に戻って来た玄魔斎と桔梗は、かく申す玄魔斎、最後の力を振り絞り、必ずそのように打ち破ってご覧にいれますと頭を下げていた。

家康は、しかとか?と念を押すと、既に余の全軍は大阪を包囲致しておる、いたずらに開戦の日を延ばしていれば家康怖じ気づいたりと諸大名への詮議にも関わるぞと言う。

心得てござりまする、さればこの明日二日のうちに必ず両名の素っ首、御前に!と玄魔斎は約束する。

それを聞いた家康は、おお、良し!行け!と命じる。

城の外の山中に来た玄魔斎は、首から下げた数珠を握りしめ呪文を唱えると、彼と桔梗の精は、猿飛佐助と霧隠才蔵に変身する。

この影の中に姿を現せば、何人たりとも分からん、俺は玄魔斎ではない、ただ1人呪われた妖術の化身だ、猿飛、霧隠両名がその前に立とうと2人には気付かれん、これは玄魔斎、必死が作り出した術だ、桔梗、行くぞと偽佐助は言い、桔梗が変身した偽才蔵とともに姿を消す。

大阪城内で偵察をしていた佐助と才蔵は、他の侍たちからすっかり信任を得ていた。

廊下で2人と出会った家臣たちは、猿飛佐助、霧隠才蔵の2人が城の中を見回ってくれているのだ、大安心だ、全くだ、これでいつかのように妖術使いが豪傑を騙し打ちにする事もあるまいなどと話合う。

そんな家臣たちはその直後にまた、反対側を歩いて来た佐助と才蔵から、ご従察ご苦労様でございますと挨拶され面食らう。

そんな佐助と才蔵が家臣たちが集まった部屋に来て、重成殿のご命令だ、各々方、鷺の間にお集まりくださいと伝令する。 何?鷺の間に?何事でござろう?と戸惑いながらも、畏まりました!と家臣たちは礼を言う。

家臣たちが出払った控え室に居残った佐助と才蔵は、元の玄魔斎と桔梗の姿に戻ってほくそ笑む。

玄魔斎は吹く所から小袋を取り出すと、火鉢の中に小袋の中味の粉を振りかける。

天海様苦心のこの薬、何千何万の町民がもだえ苦しむ… その時、こら!そこにいるのは誰じゃ!何をしている!と障子を開けて声をかけて来たヒゲの侍がいた。 すると屏風の背後で立ち上がって顔を見せたのは佐助と才蔵だったので、いや失礼、失礼、一度拙者の陣屋にもお遊びにお出で召されい、ではご免!とヒゲの侍は笑顔で謝罪し去って行く。

その頃、鷺の間に集まった家臣たちに気付いた大野治長(高松錦之助)が何事じゃ?その方ら宿直(とのい)の者であろう?こんな所で何を致しておる?と聞くと、木村重成様が御用との由、猿飛殿が申されました、よって我々最前よりお待ち申しておりましたと1人が応えると、何?重成殿が?と治長は戸惑う。

するとさらに障子が開いて新たな侍たちがやって来たので、その方たちは上様お側の警護の者ではないか?と問うと、ただいま、猿飛佐助、霧隠才蔵の御両者が参られ、至急ここへ集まれとの事、我ら遅れました!などと言うので、ますます治長は、猿飛と霧隠が?何事だろう?怪しむ。

その頃、豊臣秀頼は大阪城の絵図面を前に、良し、ただちにその計画を進めてみようと木村重成に指示を出している所だった。

畏まりましたと平伏した木村重成は、誰か!宿直の者参れ!と声をかけるが誰も応えないので、怪しみ、隣の部屋の様子を見に行くと誰もいないので、何だこれは?上様の側に誰一人おらんとは…と憮然とする。

その時、重成殿、そのご心配は無用の事でござる…、我ら両名ここに控えておりますと障子の奥から佐助の声が聞こえて、障子が開くと、佐助、才蔵両名が跪いていた。

一方、考え込みながら廊下を歩いていた大野治長に、治長殿、ご苦労ですと声をかけて来たのは佐助と才蔵だった。

おお御両者、奥の部屋に宿直の者を全てお集めになったのは木村殿のお指図とか?一体何事でござる?と治長が聞くと、佐助は、いや、存じませんと即答し、才蔵も何かあったんですか?と不思議そうに聞くので、何!存ぜぬ?それはおかしい…と治長は当惑する。

侍どもはお手前たち御両所より聞いたと申しておりましたぞと治長が教えると、私どもに?と佐助も驚く。

殿のお側を守る警護を始め侍どもをかき集めるとはよほどの事だ、治長とりあえず木村殿に確かめる事に…と言うので、何!上様お側の者まで?と才蔵は怪しみ、佐助!と呼びかける。

その佐助も敵の策略に気付き、しまった!と叫ぶ。

豊臣秀頼は目の前にまかり出た佐助と才蔵に日本刀を差し出し、当座の引き出物じゃ、これを与えると言っていた。

ありがたき幸せ…と礼を言いながら、佐助と才蔵はそれぞれ報賞として差し出された刀を受け取ると、後々までも末永く、城内において尽くしてくれよと秀頼は言葉をかける。

ははあ!と平伏したかに見えた佐助と才蔵だったが、次の瞬間いきなり刀を抜き秀頼に斬り掛かってたので、無礼者!と叱りつけた秀頼だったが、佐助と才蔵が玄魔斎と桔梗の精の姿に戻ると、その方は!と驚き、桔梗に襲われた木村重成は、殿!と呼びかける。

秀頼は手元にあった短刀で玄魔斎の剣に立ち向かうしかなかった。 転んだ秀頼が燭台を掴んで差し出すと、玄魔斎は一刀の元に斬り捨てる。

そこに重成が秀頼を庇いに来る。

その時部屋の障子が開いて、本物の佐助と才蔵が現れ、玄魔斎!と呼びかける。

そして佐助は玄魔斎と、才蔵は桔梗と戦い始める。

しかし桔梗はすぐに姿を消し、玄魔斎はトンボをきって廊下に逃れると、首から下げた数珠を握りしめる。

そこに桔梗の精も姿を現したので、その横に並んだ玄魔斎は、玄魔斎の身体は不死身じゃ!何十人もの命を飲み込んで世にある玄魔斎だ!又会おうぞ!と叫ぶと桔梗共々白骨の姿に化身する。

その後、木村重成からの申し出を聞いた秀頼が余に城内巡視?と驚くと、なりません!これには玄魔斎とかの妖術使いが現れるとか、左様な時に、上様ご巡視など危険この上ない!…と横に控えていた淀君(八汐路佳子)も反対する。

しかし木村重成は、上様!恐れながら申し上げます、将たる者常に一軍の先頭に立って進むべしと申します、たって御巡視のこと願い奉る!と頭を下げると、良し、行こう!共はいらん、茂成1人で良いと言い、秀頼は立ち上がる。

部屋を後にする秀頼を見送る淀君は、秀頼…と呟く。

天守閣を上っていた秀頼は、窓から差し込む明かりが陰ったと思ったその時、どこからともなく笑い声が聞こえて来た事に気付く。

秀頼!茂成!待っていたぞ!玄魔斎だ!と天上の横柱に乗った玄魔斎が姿を現す。

その時、秀頼と重也の姿は佐助と才蔵の姿に変身する。

あっ!と驚く玄魔斎を尻目に佐助と才蔵は笑い出し、玄魔斎!とうとう我々の計略にかかりよったなと嘲る。 我ら両名、木村重成の座に計って汝らの来るのを待っていたのだと才蔵が教える。

すると高笑いを始めた玄魔斎は小賢しいのう、かくなる上は玄魔斎の法力見せてくれるわ!と開き直る。

玄魔斎が首から下げた数珠を引っ張ると、煙と共に姿が消え、佐助らの横に、以前と同じように煙とともに玄魔斎の化身2人が黒ずくめの格好で出現する。

さらに短剣が飛んで来て桔梗の精も現れたので、佐助と才蔵はけんを抜いて身構える。

斬り合いが始まると、黒ずくめの化身はすぐに元の玄魔斎に戻り、気合いもろとも雷鳴が轟き出す。

そして玄魔斎の身体から毒霧が噴出し出したので、堪り兼ねた佐助と才蔵はさらに上階へと逃れる。

下から玄魔斎が上って来ると警戒していた2人だったが、その階の天井裏にも化身が隠れており、両手の短剣を繰り出しながら上から襲いかかって来る。

佐助と才蔵は外の通路に出て化身たちと向き合うと姿を消す。

続いて化身たちも姿を消す。 その直後、4人は屋根の上に出現する。

2人の黒ずくめの化身は両手に持った短剣の切っ先から火炎を放射して来るが、佐助と才蔵が印を結ぶと炎は消え、化身たちは苦しそうに逃げ去る。

術が破れたと知った玄魔斎は最後の力を振り絞って数珠を握りしめ、化身たちと合体する。

そして刀を抜いて佐助に挑みかかって来る。

桔梗も屋根の上に出現し才蔵と戦う。

佐助は玄魔斎の首の数珠を切り落とす。

佐助と才蔵が屋根の頂上付近に玄魔斎と桔梗を追い込んだとき、天上から光が2人に差し込む。

見ろ!この光の中でその方らの妖術が効くと思うか!と佐助が叫ぶと、才蔵も、妖魔!覚悟!と言いながら刀を上段に構える。

そして苦しむ2人の妖術使いが近づいて来たとき、佐助と才蔵の剣が2人を斬り割く。

玄魔斎と桔梗の精は屋根から落下して地面に叩き付けられ絶命する。

そこに家臣たちが集まって来るが、鎮まれ!鎮まれ!と叫びながら2人の遺体の元へ駆けつけたのは豊臣秀頼だった。

2人の死を確認した秀頼は近づいて来た佐助と才蔵に、佐助、才蔵!見事!その方たちの働き、秀頼、生涯忘れはせぬぞと礼を言う。

佐助は、恐れ入りましてございますと頭を下げる。

しかしお大尽様、戦いはこれからでございます、九度山には主君幸村公の元、真田の郎党8人手ぐすね引いて上様に駆け参じる日を待っておりますと伝えると、うん、余も一日千秋の思いで待っておったぞ、幸村出陣、早う取りはからうようと秀頼も応える。

それを聞いた佐助の顔は晴れやかになり、畏まりましたと応え、才蔵も、幸村公、出陣の準備万端整っております、されば大手の御門大きく開いてお迎えくださいませと伝える。

佐助、殿のお迎えだと才蔵は語りかけ、佐助も承知と応え両者立ち上がると、ご免!と秀頼に会釈して立ち去って行く。

慶長19年11月 遂に大坂冬の陣起こる。

真田大助や十勇士たちも戦場で活躍する。

佐助が背後の敵から斬られそうになっておる事に気付いた忠乃は鉄砲で敵を仕留めて佐助に合流する。

才蔵と望月六郎こと雪江も戦場で戦っていた。

六郎!死ぬまいぞ!と才蔵が呼びかける。

大阪方の勢いに押され、戦場に出ていた家康と秀忠は敗走する。

かくして真田十勇士の働きは関東30万の大軍を縦横無尽に撃ち破り 家康講話の使者を送り、大坂冬の陣終わる(と戦闘シーンを背景にナレーションとテロップ)

大阪方は、えいえいお〜!と鬨の声をあげる。

大阪城の天守閣から外を見た秀頼は、幸村、そちの働きうれしく思うぞと脇に控えていた真田幸村に感謝する。

幸村は、上様、戦いはまだまだこれからでございますと忠告すると、おお、心得ておると秀頼も応える。

相手は古狸家康、幸村!頼むぞと秀頼は呼びかける。

真の平和が訪れるまで真田の一党は戦います!と応えた幸村は立ち上がり、ご覧下さい、あの凱旋を!と下界を指差す。

それをうれしそうに見下ろす秀頼と淀君。

城門に近づいて来たのは六文銭の旗印を掲げた大助、佐助、才蔵ら勇士たちの馬上の姿だった。(十勇士の歌が重なる)

真田の一党全員が門に入った後、馬を下りた佐助と才蔵は外のスクリーンの方に笑顔を見せながら内側から大門を閉じる。


 


 

 

inserted by FC2 system