白夜館

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花のヒロイン 

 

 

 

幻想館

 

黒の爆走

大映「黒シリーズ」の1本だが、原作ものが多いシリーズの中では珍しいオリジナル脚本である。

白黒と言うことに加えどう見ても低予算なのでTVドラマでも見ているような地味な印象。

二本立てのメインと言う感覚ではなく添え物感覚なので併映を調べてみたら、大映京都作品で本郷功次郎主演の「日本名勝負物語 講道館の鷲」と言うカラー作品らしく、おそらくこちらがメイン扱いだったのだろうが、どちらもタイトルに記憶がない所から推測すると興行的には目立たなかったのではないか?

内容は、白バイ警官が轢き逃げ犯を独力で見つけ出そうとすると言うちょっと風変わりな趣向になっており、管轄が違うので、警察捜査ものと言うより素人探偵もののような雰囲気になっている。

田宮二郎演じる白バイ警官は結婚間近の恋人がいる明るい青年キャラクターで「犬シリーズ」や「悪名」のキャラに近く、社会派推理と言うよりはやや軽めな通俗ミステリと言った感じ。

思いつきで知り合いの名を使い偽名を使ったり警察手帳や手錠を捜査中も携帯したりと、サスペンスを生む為だろうが、潜入捜査をやるにしては主人公がうかつ過ぎるのが気にならなくもない。

結局、それがあっさりバレ、事件は急転直下のアクションで解決と言う流れになるのだが、通俗映画としてはともかく、ミステリとしては安直すぎるような気がする。

偽名を使ったのがバレそうになるシーンなども曖昧な描写になっており、その後の展開で、バレていなかったのかと推測するくらい。

こちらが車に興味がないせいか、「オトキチ」などと言う言葉も聞き慣れなかった。

その後の展開から「オートバイキ○ガイ」  のことだろうと推測できるが、当時は「マニア」や「オタク」の意味で「キ○ガイ」と言っていたことが分かる。

ラーメン1杯50円の時代である。

主人公の恋人を演じている藤由紀子と言う女優さんは「黒のシリーズ」他、60年代前半の大映作品に何本か出演なさった方のようだが、あまり馴染みがない気がするがきれいな方だ。

藤巻潤さんが田宮さんの先輩風に描かれているのも興味深い。

バイクなどに興味がある人には楽しめる部分も多いだろうし、走行シーンが多いので、気軽に見る添え物としてはまずまずの出来だとは思う。
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
1964年、大映、舟橋和郎+小滝光郎脚本、富本壮吉監督作品。

走るバイクにタイトルが重なる。

それを追う白バイ警官津田拓也(田宮二郎) 津田が追っている暴走バイクは3人組だった。

津田は、前を走るオートバイ!左に寄って停止しなさい!とマイクで呼びかけるが、3人はそれに従うどころか、2人が左右の脇道へ逃げてしまったので、津田は真ん中の白いジャンパーの男を追跡することにする。

白いジャンパーの男は団地内へ逃げ込むが、そこに通行禁止の立て看板が立っていたので公園内に侵入する。 その時、遊んでいた1人の少年を撥ねてしまう。

それに気付いて停まった津田は、子供を抱き上げ、どなたのお子さんですか?と周囲にいた主婦たちに声をかけると、34号の山崎さんのお子さんでは?と言う声があがる。

近くに交番はありませんか!と津田が聞いていたとき、バイクでやって来た警官がバイクは第二景品の方へ逃走したと津田に知らせに来たので、追跡しますんで後のことはお願いしますと警官に頼み、津田は再び白バイで後を追う。

しかし、白いジャンパーの男のバイクは見つけたものの、交通量の多い国道を横切って逃げてしまったので、追跡を諦めた津田は先ほどの団地へ戻り見失いましたと警官に伝えるが、警官は子供は救急車で運んだがダメかもしれん、意識がなかったので…と言うので津田はショックを受ける。

そして子供が運ばれた中央厚生病院に向かった津田は、これから手術をすると言う看護婦から大腿部複雑骨折だと教えられる。

母親は先に手術室に入っていたが、そこに山崎の父親も駆けつけて来て手術室に入って行く。

分駐所に戻った津田は写真係に白バイで撮った写真の現像を急かす。

その頃、3人組のバイクの内、先に戻っていた加島(大川修)と平井(工藤堅太郎)は、なかなか戻って来ない矢沢章夫(千波丈太郎)を、パクられたんじゃないだろうな?と案じていたが、そこに白いジャンパーの矢沢が戻って来る。

まいたか?と平井に聞かれた矢沢がああ…、オヤジは?と聞くと、お待ちかねだよと言われたので事務所内に入って行き、待ち構えていたオヤジ(中条静夫)に、社長が宜しく言ってましたと金を渡しながら伝えると、白バイに追われたそうだな?仕事が終わるまで気を緩めるなとオヤジは矢沢を叱る。

現像が上がった写真を本庁の轢き逃げ捜査班に持ち込んだ津田だったが、写真はぶれていて、しかもナンバープレートには泥が付着していたためナンバーを確認できなかったと報告する。

もう1人の目撃警官とスカイライナーズ63年型だと思うと津田は確認しあうが、富久警部(早川雄三)は、君たちがもっと頑張ってくれんと俺たちが追い込まれるんだと嫌みを言って来る。

津田は刑事部屋の電話を借り、中央更生病院に轢き逃げされた山崎民夫の容体を聞くと命だけは取り留めたと聞き安堵する。

夜、恋人の伊藤麻子(藤由紀子)が働いている「ひまわりレコード」にやって来た津田は、事故があったんだと約束の6時に間に合わなかったことを詫びるが、今日一緒に部屋を見に行く予定がダメになったので、部屋が見つからないと私たち結婚できないのよなどと麻子はむくれる。

それでも6時からは抜けられると麻子が言うので津田が映画に誘うと、本当は今日の部屋見に行かなくて良かったかも、別の安い空き部屋が見つかったのよなどと麻子は笑顔になる。

翌朝、目覚ましが6時45分で鳴り出したので、それを止めて布団に潜り込んだ津田だったが、津田さん!昨日のこと新聞に出てますよ!と隣の町田(大辻伺郎)がドアをノックして呼びかけたので、慌てて外に飛び出す。

すると廊下にしゃがんでいた町田が朝刊を差し出したので読んでみると、執拗な白バイの追跡が事故を招いたとも言え、白バイ警官側にも責任があるのではないかと書かれてあったので、津田は憤慨する。

それを聞いた町田は、やっぱり津田さんだったのか、名前が載ってれば良かったな、そうすれば有名になれたのになどと無責任なことを言う。

その日、津田は中隊長の和泉警部(夏木章)に、自分は執拗な追跡をした覚えはないと新聞の論調を批判するが、中原街道での轢き逃げ事件ではお前もミスを犯している、子供をほっぽり出して追跡を続行したじゃないか!犯人逮捕より人命救助を優先するのが白バイの服務規定だと厳しくお目玉を食らう。

その日、任務に就いた津田は白いジャンパーのライダーを止め免許証を確認するが、見に覚えのないライダーはどうかしましたか?と不思議がる。

その日、病院に見舞に出掛けた津田は、付き添いの母親から、経過は良いですが、もう一度レントゲンを撮らないと何とも言えないそうですと聞かされるが、買って来た戦闘機の玩具をベッドの民夫に見せ必死に喜ばそうとする。

その時、医者の回診があったので、民夫君、早く良くなるんだよ!と津田は声をかける。

その夜、麻子のアパートに来た津田は、麻子の兄が書いた論文が掲載された雑誌を見て感心する。

兄貴のお嫁さんの方はどうなの?と聞くと、二課の班長さんの妹さんだと麻子が言うので、写真を見せてよとねだり、良い人そうじゃないかと褒めると、兄貴乗り気ないのか?と津田が聞いている所にその義兄になる予定の刑事である麻子の兄伊藤宏一(藤巻潤)が帰って来る。

麻子、ビールくらい出したらどうだ?派手に新聞に書かれてたな?どうだ事件の経過は?と宏一は麻子と津田に話しかけて来る。

すると津田は、5日経つのに何の手がかりもない、捜査がスローモーすぎるんだよ、どう思う?と轢き逃げ捜査班を批判するような言い方をしたので、捜査班に任せたらどうだ、俺は殺人だ、お前、自分でパクるつもりじゃないだろうな?と宏一は津田の気持を言い当てる。

伊藤、俺はやりたいんだ!3人組だったんだからオトキチの仲間じゃないかと思うんだと津田が推理を披露すると、そう云うのを神風捜査って言うんだと宏一は注意する。

そうした会話を横で聞いていた麻子が、兄さんが協力しないなら、私、やっても良いわと言い出したので、それを聞いた津田は、頼りないけどいないよりはマシか…と苦笑する。

かくして、次の日曜から、津田は麻子と一緒に各地のオートバイマニアが集まりそうなレースに参加してみて、それとなく白いジャンパーの男を捜し始める。

12月6日、12月13日、12月27日、それぞれ参加者の中から白いジャンパーを来た人物に目星をつける津田だったが、これと言った決め手がなかった。

年が明けた1月12日、1月26日も犯人探しを続けていた津田だったが、さすがに同行していた麻子の方が飽き始める。

何だかムダみたいね、私、飽きちゃった…、車の借り賃だってバカにならないし…、今日例の部屋が開くのよ、今度の日曜までにその部屋見ないと…と世話女房のようなことを麻子が言い出した時、今度遠乗りしない?浜松まで、開催するのはつばめオートバイって言って会費は3000円よと津田に話しかけて来たのはレースで知り合った広子(滝瑛子)と言うバイクマニアの女性だった。

津田は藁をもつかむ気持で、その話に乗ってみることにする。

広子はその場でつばめオートバイのリーダー矢沢章夫の所に連れて行き、矢沢は平井と加島を紹介して来たので、津田は町田ですと偽名を名乗る。

その後、矢沢の馴染みのバーで一緒に飲むことになり、腕は大丈夫かい?と矢沢が聞くので、広子は私がスカウトしたんだから!と太鼓判を押すと、落後されると困るんでねと矢沢は弁解する。

仕事を聞かれた津田は、印刷工やってますとごまかす。

津田が広子に誘われ踊り出すと、矢沢が麻子を誘って来たので、それを見た津田は焦る。 店から出る時、麻子は、どうしてあんな人と付き合うの?私、嫌いだわ、あの人…と矢沢のことを警戒する。

兄貴、何か言ってた?と津田が聞くと、怒ってた、私が拓也さんの助手をやっているの…と麻子は答え、プロじゃないかなって…と宏一の意見を聞くと、プロ?プロライダーか…、そう言えばあいつ凄く巧かったな…と、逃げられた白いジャンパーの男のことを津田は思い出す。

次の予定日、津田は和泉中隊長から休日出勤の依頼を受けるが、親戚が田舎から出て来るので迎えに行かなくちゃいけなくてと嘘を言い、矢沢たち、つばめオートバイの遠乗りかいに参加する。

ところがその日、集合場所にいた矢沢たちは、今日は中止だ、浜松がヤバくなったんだよと平井や加島とひそひそ話し、代表して矢沢が、菓子オートバイがトラブって、今日の遠乗りは延期させていただきます…と集まったライダーたちに告げる。

それを麻子と聞いていた津田は、インチキ臭いと思わないか?と囁きかけるが、でもホシってことはないでしょう、ホシは3人組だったんでしょう?ここは女の人いるでしょう?と麻子は津田の疑惑自体をあまり信じていないようだった。

しかし、その広子を見た津田は、彼女が見覚えのある白いジャンパーを着ているのを見て何かを感じる。

津田は矢沢たちに笑顔で近づき、どっか遊びに行きませんか?と誘うと今日は太井でレースがあると平井が言い出す。

結局、麻子も連れ矢沢らのグループとオートレースに繰り出す。

そのレース場で、津田は矢沢に顔見知りらしき男が近づき、あんたが出ないとダメだなどと言っている声を聞く。

その後、いつものバー「リド」で飲み始めた矢沢は麻子に近づき、いつも一緒にいる人恋人?などと津田のことを聞いて来る。

津田は、矢沢さん、レーサーだったの?と加島に聞くと、本命の加島って言って有名だったんだと言う。

矢沢は麻子がレコード屋に勤めていることを知ると、モダンジャズが好きなんですよ、今度行きますよ、君グラマーだね?僕とも付き合ってくれないか?と執拗に迫って来る。

津田がカウンターに戻って来ると、どこ行ってたのよ?私もう帰るわよと麻子は言って1人先に帰る。

カウンターに戻って来た津田は、太井ですってからぱっとしないんだなどと矢沢の隣に座り、しかしオートバイ乗りって下手ですね、俺の方が巧いですよ、こっちは少しは自信があるんでね、あれじゃあ信用できないですねなどとわざとプロを屈辱するようなセリフを吐く。

すると矢沢はかちんと来たのか、俺の前でプロの悪口は止めてくれ、プロがどう言うものか教えてやろうか?来いよ、嘗められっぱなしって訳にも行かないからなと凄んで来る。

近くの港に係留中の貨物船の側に連れて来られた津田は、矢沢から、ここから先へ行けば船にぶつかる、100kmでぶっ飛ばして来てこのとっ先でスピンターンして停まる、どっちが前に出れるかで決めるんだ、どうだ?とチキンレースを勧められ、加島は、無理するなよ町田さんとからかって来る。

その勝負に挑んだ津田だったが、わずかに矢沢より手前で停まってしまったので、恐れ入りました、兜を脱ぎましたよと津田が矢沢に詫びると、矢沢の方も、あんたも良い度胸だ、見直したよと感心したように言って来る。

その後、ハッスルボーイですねと加島が矢島に声をかけると、役に立つ、仲間に入れようと矢沢は津田を気に入るが、ただもんじゃねえ、馴れ馴れし過ぎるのも怪しいと平井が忠告すると、まさかサツだと言うのか?と矢沢は睨み返す。

兄貴は人が良すぎるんじゃないか?と平井から言われた矢沢は、加島に、やろうと一緒に帰って調べろと命じる。

バー「リド」に戻って来た津田は、広子に白いジャンパーのことをそれとなく聞くと借りものだと言う。

そして「リド」を出て帰ろうとする津田に、加島が送って行くよと強引に誘い、バイクの後ろに乗せて出発する。

家はどこだったですかね?と操縦する田島が聞いて来たので、目黒だと後部座席で答えた津田だったが、もうこの辺で良いですよと焦り始めるが、鹿島は遠慮しなくって良いですよと言って降ろそうとしない。

悩んだ津田は、ここで止めて下さい、蕎麦食って行かないですか?と話しかけ、一緒にラーメンを食べることにする。

そこでラーメンを啜りながら、あんた印刷工って言ったけど…と加島が聞いて来たので、品川の曙印刷って言う所で今年で5年になりますと津田は答えるが、何刷ってるの?などと加島がしつこいのでパンフレットですよなどと津田は答え、ここは俺が払いますと言うが、加島がそれを断って、自分で2人分100円を払う。

津田は、今度は俺が運転しますよと言い、強引にバイクに乗ると、猛スピードで走り出す。

それに気付いた鹿島が、ヤバいんじゃないかと後ろから話しかけて来るが、津田は構わず、停まっているパトカーを見つけると、わざとその横を猛スピードで駆け抜けてみせる。

案の定、パトカーが追跡して来て停められたので、鹿島はだから言ったじゃないかと焦り出す。

すみませんと降りて来た警官2人に謝った津田だったが、免許証と言われると、家に帰るとあるんですが…などと言い返した為、ちょっと来たまえと手錠をかけられ連行されてしまう。

それを見た鹿島は免許証を持っていたため、無事1人でバイクに乗り帰って行く。

加島が去ったことを確認した津田は、パトカーの中で身分を明かす。

しかし、この津田の行為は課長の大石警視(花布辰男)の知る所になり、和泉警部共々呼び出され、君のやったことは行き過ぎだ!君の監督も問題がある!ことが公になれば君1人の問題ではすまなくなるんだ、今度のことは俺の所で止めておくが、今後こう云うことは止めてくれ!ときつくお灸を据えられる。

分駐所に戻って来た和泉中隊長は津田に目の前で「今後私は中隊長の指示を守り、職務を逸脱するようなことは致しません」と誓約書を書かせた上に、君がこの分駐所で何かやらかして課長にあれこれ言われたら家のメンツは丸つぶれだ!この誓約書はお前の為にも必要なんだと和泉中隊長は言い聞かせる。

さらにいつものように相棒と任務に就こうとした津田に、当分俺と一緒に出動だと和泉中隊長は命じる。

その夜「ひまわりレコード」にやって来た津田の様子を見た麻子は、ご機嫌悪いのね、疲れているんじゃないの?と慰められ、中隊長に絞られたことを明かすと、君に頼みがある、それとなく矢沢に電話してくれとバーの電話番号を教えると、僕の名は町田と言う事になっているからと念を押す。

ある日、オヤジに仕事で呼び出された矢沢は、今度は大阪の西成区のぽんこつ屋が相手で170万だと言う。 15台ですかとバイクの代数を矢沢が確認すると、人集めは十分気をつけろよとオヤジは釘を刺す。

しかし思ったように人が集まらないのでバー「リド」では、野郎の工場に電話してみるんだなと平井が言い出す。

加島が曙印刷に電話して町田さんはいらっしゃいますでしょうか?と聞くと、いるがもう帰ったと言うので、住所を教えてもらえないかと聞く。

その頃、津田は宏一と寿司屋で会っていた。

宏一は津田が単独捜査しているのを嫌がっており、捜査班に任せておけ、管轄は管轄だからななどと注意するので、もう二度と相談しないよと津田は膨れる。

そこに麻子が、宏一の恋人のけい子を連れてやって来て気を利かせるのよと囁きかけて来たので、津田は麻子と席を移り、その日は宏一のおごりにさせてしまう。

その頃、加島は津田のアパートを訪ね、町田さんに会いたいんですが?と聞いていた。

呼びに来られた町田は、鹿島?知らないな…、津田さんの所では…と不思議がりながらも加島に会う。

その時、帰宅したのが津田で、加島がアパートに着ていることに気づくと身を隠しやり過ごす。

町田に俺のこと喋ちゃったのか?と聞くと、俺の名前使うんなら教えといて欲しいよと町田はぼやく。

矢沢は、次の仕事は大阪に行くことを知り、名古屋が地元なので迂回路を検討していた。

麻子は勝手に津田のアパートに来て、軒下に干してあった靴下を取り込んでいた。

隣でインスタントラーメンを作りかけていた町田は、津田の部屋から聞こえて来る物音を気にする。

そこに津田が帰って来たので、明日行くの?大阪…と麻子は案じて聞き、私も連れてってとせがむので、休暇をもらったんだと津田は言う。

すると麻子は、兄と喧嘩したわ、大阪行きには反対なの、連れてってよ!とねだるので、ダメなんだ、今度こそホシが割れそうなんだと津田は言い聞かせると、今夜は帰らないつもりよと麻子が言うので、どこに泊まるのさ?と聞くと、ここに泊まるわ!と麻子は言い出す。

そうした会話を、隣でラーメンを啜っていた町田は聞き耳を立てる。

そして借りた雑誌を返しに来た振りをして津田の部屋に勝手に入り込むと、麻子を指差して、これ?と小指を立てたりして聞くので、津田は慌てて追い返す。 君も強情だな〜、兄貴の妹だけはあるよと津田は呆れるが、そんなに迷惑?と聞いて来た麻子は、大丈夫、帰るわと答える。

しかし、駅まで津田に送ってもらいながら、何だか気になるわ、本当の犯人が現れたら大変な事になるわ、危ない事しちゃダメよと麻子は言う。

さらに、あの坊や、手術の経過はどうなのかしら?びっこにでもなったら可愛そうねと民夫のことを言うので、あのとき、深追いし過ぎたんじゃないか?と考えるようになったんだと津田が言うので、あのとき、あなたは新聞の論調に反対してたじゃないと麻子が指摘すると、他人が言うことが正い事もあるからね、僕はあの子に責任を感じるんだ、気の毒なことをさせたと…、だからどうしてもやり遂げるつもりなんだと津田は言う。

がむしゃらばかりだと思ってたけど…、気を付けてねと言い残し、麻子は駅の階段を下って行く。

翌朝、ジャンパーの内ポケットに警察手帳と手錠を入れていた津田の部屋に突然宏一がやって来る。

本当に行くのか?轢き逃げ捜査班に知らせるべきだ、人間として信用がなくなるぞ、手柄を立てたいだけじゃないのか?一緒に本署に行こうと宏一は説得しようとするが、津田が、行くから心配するなと言いながら宏一を先に行かせようとするので、お前、やる気だな?と宏一は見透かす。

俺を行かせてくれ!力以上のことをしようとしているのかもしれん…、首になっても構わない!と津田が言うのを聞いた宏一は、負けたよ、お前には…、ただし、犯人と思ってもその場で逮捕するな、仲間がいるかもしれん、相手は追いつめられた獣のようなものだ、手錠や警察手帳などは持って行くなと忠告する。

矢沢たちつばめオートバイの集合場所にやって来た津田は、用意されていたオートバイが外車ばかりで、こんな新車が貸しオートバイ屋にあるはずがないと気付く。

集まったライダーたちを前に、矢沢は、交通違反をしないように!自分たちが先導します、山あり谷ありの難コースですが頑張って下さいと呼びかける。

出発後、高速に入る前に警官から呼び止められ、全員免許証の確認が行なわれるが、津田は何とか身分がバレずにすむ。

途中、マシントラブルで停まっていた参加者の側に近づいた津田は、キャブレターの調子が悪いと言うのでメカを観察してみると、気付かれないように部品を入れ替えていることに気付く。

さらに、この遠乗り会に過去何度か参加したことがあると言う人物を見つけ、その時の様子をさりげなく聞くと、宿泊場所などは3000円の会費にしては悪くなかったが、帰りの車がオンボロで、名古屋の貸し車を使ったけど整備が大変だったと言うので、行きと帰りの車が違うなんて変だぞと津田は怪しみ出す。

山道に差し掛かったとき、一台の参加者がハンドルを切り損ね、岩に衝突してしまう。

車は借り物だからな!これじゃあ使い物にならないじゃないか!と加島は語気を荒げるが、矢沢はそのバイクとその場に残り、他の参加者たちは先に行かせる。

津田は、矢沢に見つからぬように物陰に身を潜め様子を伺っていると、矢沢はバイクのナンバーを外し、そのまま谷底にバイクを落してしまう。

そして矢沢は自分のバイクで先行するグループを追おうとするが、そこに津田がいたので、どうした?と怪しむ。

津田は、ちょっとプラグの調子が…、でも直りましたと言い、出発してごまかす。

やがて昼になったので、矢沢はここらで食事にします、1時まで自由行動ですと全員に告げ、小休止に入る。

支給された折り詰め弁当を食べ始めた参加者の間を回り、過去の参加者から全開の遠乗り会のことを聞くと、この前は名古屋だった、11月26日で、翌日7時に名古屋を出発し、東京には3時頃戻って来たと言うので、それはあの轢き逃げがあった11月27日3時半頃と合致すると津田は気付く。

しかし決め手がなかった。

谷川に降りて来た津田は、ジャンパーを脱いで川に近づこうとするが、そこに近づいて来た加島が、ライター借りるぜと言いながら老いていた津田のジャンパーの内ポケットを探り出したので津田は慌てて戻るが、加島は手錠を見つけ、貴様、やっぱりデカだったのか!と加島は気付く。 津田はそんな加島に飛びかかり、俺は見たんだ!何故車を捨てなきゃならないんだ?盗んだ車なんだろう?と責めると、頼まれただけだと加島が言うので、盗品なんだな?と念を押す。

11月27日山下町でスピード違反しただろう?東亜団地で子供を轢いたのは矢沢だろう!と締め上げると、苦しがった加島は兄貴だ…と白状する。

腹を蹴って加島を気絶させた津田は、1時になり出発しようとしていた矢沢たちの所に戻る。

田島はどうした?と聞かれたので、今来ますよ、すぐ追いかけて来るって言ってましたと津田は答えながら、それとなく加島のバイクのプラグを抜いておく。

その後、他のメンバーとともに出発した津田は、と通で出会った気起こりの男に、おじさん、この辺に電話ありませんか?と聞くが、村まで降りないとないと言う。

その頃、谷川で気がついた鹿島はバイクの所まで戻って来るが、エンジンがかからないことに気付き、プラグの細工に気付いて修理する。

田島は、後方から追い上げて来た加島のバイクに気付き焦る。

鹿島は最後尾を走っていた津田を追い抜くと、矢沢に津田のことを告げる。

それに気付いた津田はバイクを止め逆方向へ逃亡する。

それに気付いた矢沢は、崖から突き落とせ!と平井と加島に命じ、3人で追いかけて来る。

加島が接近して来るが、体当たりしようとしてハンドルを切り損ね崖から墜落する。 さらに迫って来た平井は山側の劇に激突する。

津田は矢沢に飛びかかり、取っ組み合った末、手錠をかける。

翌朝、中央更生病院に麻子とともにやって来た津田を待っていた新聞記者たちが、安城警察署の方ですよね?あなた1人で轢き逃げ犯を捕まえたんですって?ご感想は?などと聞いて来る。

津田は、怪我をした子供のことを考えただけで、別にうれしくないですと素っ気なく答えるだけだった。

病院内の廊下では母親と看護婦が見守る中、民夫が歩く練習をしていた。

良かったね、民夫君、歩けるようになってと津田が声を掛けると、新聞で見ました、ありがとうございましたと母親が礼を言い、まだ怖がって1人で歩こうとしないんですよと民夫のことを言うので、ここまで歩いてごらんと津田は声をかけしゃがみ込む。

民夫は1人で津田の所まで歩くと抱きついて来る。

偉いぞ、民夫君!良かったな!と津田は喜ぶ。

麻子と病院を出掛けたとき、スピード違反のバイクが坂道を通り抜けて行ったので、ああいうのが一番危険なんだ!と言いながらバイクで後を追おうとした津田だったが、今日中にアパート見に行かないと私たち結婚できないのよ!と麻子が停めるので、だってさ…と反論しかけた津田だったが、すぐに、負けたよ…、乗れよと笑顔で応える。

麻子を後ろに乗せ、津田はバイクを走らせて去って行く。
 


 

 

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