白夜館

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花のヒロイン 

 

 

 

幻想館

 

イチかバチか

城山三郎原作に加え、菊島隆三脚色、川島雄三監督作品と言うこともあり、話がしっかりしており、映画全盛期ならではの面白さが詰まった作品。

伴淳(キャストロールでは「松竹」と出る)主演と言うよりも、ハナ肇さんと高島忠夫さんも加えたトリプル主演のような印象になっている。

ハナさんがお馴染みの強引なうさん臭いキャラで登場するので、詐欺ものか?と思い込んでしまうのだが、実はこれがおとし穴で、ミステリ仕立てと言う訳ではないが後半意外な…と言うか、ツイスト(ひねり)のある展開になって行く。

伴淳、ハナ、高島の3人がそれぞれバイタリティ溢れる個性(くせ)の強いキャラで登場しており、個性のぶつかり合いの面白さがテンポ良く描かれているのだ。

白黒作品で一見地味な内容に思えるのだが、劇中に登場しているセットは信じられないほど大きいし、クライマックスの群衆シーンは大規模のエキストラを動員しており、話の意外性もあり見応えがある秀作に仕上がっている。

また地方博のパビリオンを壊すシーンではミニチュア特撮が使用されているのだが、白黒と言うこともあり意外と気付かないかもしれない。 地方博で地方自治体が国から国有地を安く手に入れるなどと言う発想が既にこの頃から映画に使われているのが驚き。

撮影所システム全盛期の作品らしく、お馴染みの脇役陣が随所に登場しているのを見つける楽しみもある。

また、ソニーのマイクロTVなどタイアップ商品のようなものがさりげなく出ているのも興味深い。

ハナさんが出ているせいか、谷啓さんが後半ゲスト的に登場しているのも見所。

水野久美さんの結婚相手と言うのも凄い役!
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
1963年、東宝、城山三郎原作、菊島隆三脚色、川島雄三監督作品。

電話をした男は、大東銀行が出ると、支店長を呼んでくれと依頼する。

支店長が出ると、島や…と名乗った島千蔵(伴淳三郎)は、社長直々にお電話とは!と驚く支店長に来週満期になる30億現金にして家に届けてくれといきなり依頼したので、ぜひともうちで御継続を!と支店長は焦って頼む。

その後、白バイの警護付きで大東銀行の現金輸送車が島の屋敷に向い、警官立ち会いのもと屋敷の中に30億の現金が積まれる。

やはり金は書類だけでは実感が涌かん、こうして実物を見んと…、慎重に使わんとな…と島が言うので、今後とも是非当行にお預けを!と随行して来た銀行の支店長(石田茂樹)が頭を下げると、良し決めた!ただし期間は半年や!と島は答えるが、心の中では本当は1年と言いたいところやが、半年先に入り用がある、これだけやない、わしの全財産200億注ぎ込むんや、島千蔵一世一代の大勝負や!と呟いていた。

タイトル

西銀座7丁目と言えばこの辺なんですけどね~?と名古屋から出て来たと言う客の北野真一(高島忠夫)にぼやくタクシーの運転手柳田(沢村いき雄)は、目指す「南海製鋼」と言う会社のビルが見当たらず3回も周辺を回っていた。

資本金は1千万やけど、年間の売上は100億と言う大会社だよ、10年前までは大阪に会社があり、50円の株が3500円にまで上がったんだけど上場を止めて大阪の会社を畳んでから東京に移転したんだと説明すると、ああ南海製鋼ですか!と思い出した柳田は、社長は島千蔵でしょう!と妙に詳しかった。

100億も売り上げているんだからそれなりのビルのはずなんですがね?と柳田は周囲を見回し、もう1階回りましょうか?と提案するが、その時、渋滞に引っかかり、バックしかけた時に、「南海製鋼」の名を書いた車が目の前をすり抜けて行ったので、来たのはその車が停まった目の前の小さくて汚いビルが目的の会社だと気づき、あったよ、あそこ!と言いながら雨が降る中降りる。

そんな北野が釣りはいらんよと言いながら札を出すと、そんなの良いですから、今度この会社が株を公開するときは教えて下さい、私は板橋2丁目に住んでいますから…などと柳田は言い、北野に札を返す。

その直後、北野さんですか?社長がお待ちかねですと傘を差し出して来たのは、社長秘書の星崎由美子(団令子)だった。 ゆみ子に案内され会社の中に入ると、洗面所でうがいをしながら島が、遅いやんけと言うので、なかなか車が拾えなくて…と島は言い訳をして詫びる。

すると島は、タクシーを使ったのか?東京駅なら歩いた方がマシや、それに君はネクタイをきつく締め過ぎとる、絞めすぎるとネクタイが傷むのが早いから緩く結ぶのがコツだなどと島は注意する。

そこにやって来た総務部長の西野(村上冬樹)を島派北野に紹介すると、今給料いくらもらっとる?といきなり聞いて来たので、手取り5万5千円ですと北野が答えると、6万5千円出すからうちに来てくれと島は切り出す。

君のことは赤ん坊の頃から知っている、ニューヨークで失敗したそうだな?わしも昔会社勤めしとった頃に数百万会社に儲けさせたのにあんまり有能なので先が怖いと言う理由で首になったが、退職金は10万もらった…、それがその後の元手になっとるんや、わしの仕事を手伝ってくれ、大きな仕事なので君が必要なんだ、今やらんと負けても良い、今夜は家に泊まれ、宿代が浮くぞと島は話す。

そこに由美子がやって来て、運輸省の方がお見えになりましたと島に伝えたので、今度入社する北野君やとまだ返事も聞いてないのに島は由美子に紹介し社長室を出て行く。

社長室で2人きりになった北野が、まだ決めた訳では…と戸惑っているので、あなたのこと社長は熱心でしたわ、手紙もいつもは私が書くのに自分で書いたくらいですから…と由美子は教える。

その時、北野が出されたお茶を飲んだので、ぬるいでしょう?社長の考えでは、熱いお茶は燃料を使うだけで何の役にも立たん、舌を焼いたり身体にも悪いんですって…と笑いながら由美子が話していると、戻って来た島が、帰るから車の用意してくれと由美子に頼む。

きれいな方ですねと北野が言うと、星崎か?と島が聞くので、他の女性もと北野が補足すると、目の保養や、だが工場は違うぞ、見とれて怪我でもされたら大変や島は真顔で答える。

外に出るとやけにクラッシックな車が待っていたので、唖然としながら乗り込むと、島の帽子と杖、そして北野がうっかり会社に置き忘れていたトランクも由美子が持って来てくれる。

走り出すと、車も骨董的ですねと北野がからかうと、フォードの1927年型だ、古い機械の方が良いわなどと島が自慢するので、古い車はガソリンこぼしているようなものですよと北野は教えてやる。

それを初めて知って驚いたような島だったが、どや、今夜すき焼きで良いか?と聞くので、結構ですねと北野が答えると、運転手(坂本晴哉)に、そこの店で牛肉100g買うて来いと命じたので、運転手は量の少なさに驚いて戸惑うので、島自ら肉屋の前で車を降り、牛肉100g、気張って並肉にするかと注文する。

大きな島の屋敷に着いた北野は、武彦がラバウルで死んでから10年振りに北野君が来たよ、武彦と良う遊んだ男やと誰かに呼びかけながら座敷に入って行く島の後に付いて座敷に入るが、そこにあったのは亡き島の妻の仏壇だけだったので、驚いて、いつ亡くなったんですか!と聞く。

先週の火曜日の夜やったと島が言うので、どうして知らせてくれなかったんですか!と北野が聞くと、葬儀はわし1人ですました、誰にも知らさなんだ…、志津子との別れを他人に邪魔されとうなかったんや…、本人は早う武彦の元に行きたがっているんやろうけど、まだ遺体のままや…と言う。

志津子が死んだ当座は何をする気もなかったが、息をしている間に何とかせないかんと思うてな…と島は打ち明けるが、旦那はんは毎晩ぶつぶつ言ってるので気味が悪かったですよと急に口を挟んで来たのは手伝いの横山(千石規子)だった。

風呂は?と島が聞くと、沸きましたよと横山が言うので、一緒に入ろうか?と島は北野を誘う。

しかしその風呂と言うのは、湯船に入れられたぬるい湯に蓋を全面にかぶせ、首だけが出るようにしてあると言うスチーム風呂方式のような変わったもので、島はこれだとわずかな焚き火で良いなどと自慢するが、北野はぬるいですね…とくしゃみをしながらも、大仕事ってなんですか?株ですか?と聞く。

わしは金偏に生涯を賭けた男やと島が言い出したので、鉄鋼界は今整理している所ですよね?と北野は不景気な現状を説明するが、一か八かやと島が言うので、資金は?と聞くと50万坪、資金は?と聞くと200億入れろと言う。

そんな金、銀行が貸す訳がないですよと北野が呆れると、全財産を注ぎ込むんや、君みたいなサラリーマンが金の心配する事ない、必要なのはその調査やと島は言いながら先に流し場に上がり身体を洗い始めると、勝手口から横山が覗き込み、こんなものが…、花屋がお供え物にしてくれと頼まれたんですって…と葬儀用の花と「東三市長 大田原泰平」と書かれた大きな名札を見せて来る。

それを見た島は、花より大きな名札を持って来る奴にろくな奴などいない、その名札は大きな焚き木になるから燃やせと横山に命じる。

そして島は、わしが高等学校の頃、第一次世界大戦直後で、その頃の花形は鉄やった…と昔話を北野にし始める。

わしは母に死なれたん落ちの夏休み、近くの鉄鋼に働きに行った…、そこで炎と轟音に魅せられてしまい、その後50年間鉄と一緒に暮らして来た… 翌日、島は工場に来る。 戦争が終わって鉄は国内産業に伸し上がった。

一昨年辺りから不景気と言われるようになって他所の企業では別な業種に転換したりしているが、このまま行ったらじり貧や、わしは鉄と心中する気や! 昼休み、労働組合のメンバー安川(田武謙三)田代(二瓶正典)後藤(小川安三)と共に飯を喰いながら、南海製鋼は3000人で作っているんや、これが巧く行かなかったら破産や、人間細々と生きていとうない、200億と一緒に進むんや!と島は熱弁を振るう。

企画室長として本社で働き始めた北野の元へ、2年定期を半年にしたと聞きまして、これは何か始める気だと気づきまして、これは出身地に誘致しないといかんと思ってうかがいましたと政治家風の男(若宮忠三郎)が訪ねて来たので、社長は今あいにく留守でして…と北野は断るが、一度築地でスッポン料理でも…と誘うので、うちの社長は奢るのも奢られるのもは嫌いです、先ほども東北の肩が来られたのでご辞退申し上げた所なんですと丁重に追い返す。

その最中、島が帰って来るが由美子が今来客中と目で合図をして来たので、あいつは仕事はできるが一ヶ所に落ち着かん…と来たののことを教え身を隠す。

政治家らしき男たちが帰ると部屋から来たのが出て来て、姿を現した島に、既に6県誘致に名乗りを上げて来ていますと報告したので、その中から本物を選ぶのが君の仕事だと指示を出した島だったが、わしかてスッポンくらい食うたことはあるよ、京都から取り寄せてな…と苦笑する。

島が出掛けると、僕のアパートを探してもらった?と北野が聞くので、社長の屋敷じゃダメなの?と由美子が問うと、社長は僕のオヤジを間接的に殺したようなものだと北野は言い出す。

オヤジは昔時事業に失敗し、島に金を借りに行ったんだ、その時島は、金に困るようなら事業など止めてしまえと言ったそうだと北野が言うので、じゃあどうしてここに入ったの?と由美子が不思議がると、一か八かだから…、この事業を成功させて、島が僕を欲しがった所で辞めてやるんだと北野は復讐計画を打ち明ける。

とにかくアパートを早く見つけてくれよ、ひょっとしたら君と一緒に住むかもしれないからねなどと北野は付け加えたので由美子は呆れる。

島が帰宅すると妻の仏壇の間から読経の声が聞こえて来たので、また寺の僧侶が金目当てに来ているのかと顔をしかめるか、横山が言うには坊さんではなく市長さんですよと言う。

そう言えば宗旨も違うなと気付いた島が部屋に入ると、そこにいたのは東三市長大田原泰平だった。

横山に手伝わせて着替え始めた島を前に挨拶をして来たので、仕事の話は会社の方へ行ってくれと生返事をしていると、帰宅途中の島を大田原はいきなり隣の部屋に引っ張って行く。

そこには東三市の説明書が所狭しと並べられており、東三市はその名の通り三河の東にあり人口5万、土地の広さはどのくらいですか?と聞いて来たので50万坪と島は答えると、さらに大田原は横山に手伝わせて部屋一杯の大きさの東三市の地図を広げる。

それを一目見た島は、土地はあっとしても道路も港湾施設もないじゃないかと指摘する。

すると大田原は工場が来るから道路は作られるのです、例えば天皇陛下が来るのに道が悪いから来ないなどと言うことがありますか?と言い返して来るので、下り坂の鉄鋼を引っ張って東三市は儲かりますか?と聞くと、採算度外視ですなどと虫の良い事を言うので、経験から言うと算盤度外視などと言うのは一番高くつくものだよと島はからかう。

それでも大田原が、東三市と大田原泰平を宜しくお願い致します!と大声で言うので、選挙と間違えんといてやと島は顔をしかめるが、大田原は、ちょうど帰って来た北野とすれ違うように帰って行く。

帰りの車を見送った横山は、チップを大田原から渡されたので、困ります!次からこんなことなさらないで下さいね!と笑顔で抗議しながらも、金はしっかり懐にしまう。

島から大田原の売り込みのことを聞いた北野は、50万坪の土地を見てきたいと言い出す。 翌日、急行列車で東三市へ向かっていた北野は食堂車に行きステーキやサンドウィッチなど注文していたが、そこに北野君!景気が良いなと声をかけて来たのは、北野が前に勤めていた会社の専務だったので、互いに挨拶しながら名刺交換をする。

専務は大工場用地の視察か?と聞いて来たので、ご存知で?と北野が驚くと、友人が市会議員をやっているので耳に入って来たんだよ、あそこは市長1人でがんばっているだけで議員たちが同調している訳じゃないからと言いその場を去って行く。

するとそこへ、早速のご出張ありがとうございますと大田原が近づいて来たので北野は驚くが、あちらのカウンターの方が見晴らしが良いですよと言うと、勝手に北野が注文した料理の皿を持って移動し始めたので、北野も慌てて後を付いて行く他なかった。

さらに東三市の駅に到着すると、大田原は車を用意してありますからと言い、知らずに乗り込んで来た夫人を先約がありますからと追出したハイヤーの運転手が外で最敬礼をして待ち受けていた車の所へ連れて行かれる。

さすがにそこまでされると、一点貸しができたようですねと北野は苦笑するしかなかった。

峠にやって来た大田原は、双眼鏡で北野に東三市の全景を見せる。

しかし双眼鏡を覗いた北野は、空いている用地はどう見ても20万坪がやっとでしょうと指摘する。

すると大田原は、あの海を埋め立てれば30坪できますなどと言う。

あの空き地は宇宙利用博覧会の時に国有地を払い下げてもらったものですと言うので、ただ同然で借り受けたんですねと北野は気付く。

あそこにあるネイビーブルーの建物はアメリカ館だったんですが見せかけだけなんで潰すのに手はかかりませんなどと言う。

その後も大田原は、別れたがる北野を無理矢理市庁舎の中にまで連れ込み、色々な有名な建物を模したと言う豪華な部屋の数々を見せて回る。

そこへ、いらっしゃいませと挨拶に来てお茶を差し出したのは、大田原の秘書の田沢トミエ(水野久美)だった。

大田原はおたくの会社の社長秘書もきれいだがうちの秘書もなかなかでしょうなどと自慢し、北野が茶を口にすると、ぬるい茶の味はいかがかな?と抜かりのないことを言って来る。

さらにそこに県の経済部長が待っとるぞと大田原に言いながらやって来たのは市会議員の松永(山茶花究)で、大田原が部屋を出た後北野と名刺交換をしながら、市長の石は空ら寿司も市議会の意思ではないと言って立ち去る。

するとその場に残っていたトミエが本当にしないで下さいと忠告して来たので、どちらのことです?と北野は戸惑う。

その後、現地の旅館に落ち着いた北野に、女中は、今の市長は戦時中落下傘部隊だったと言って遺家族を捕まえたんですと打ち明け話をする。

戦死者たちの家を回って丸め込んだので、遺家族たちはみんなあいつに投票したんです、でも落下傘部隊だったなんて言うのは真っ赤な嘘で、実は落下傘に使う部品屋だっただけなんですってなどと言う。

そんな話を聞いていた北野は、なんか寒くなって来たな…、核実験の所為かな?などとぼやいて窓を閉めさせようとするが、その時、窓から見える港の小舟から上がって来た女が見えたので、あれは市長の何かかい?とかまをかけると、市長が回った遺家族の1人の戦争未亡人で東京でアパートをやっているらしく、市長にはあんな女が5~6人もいるらしいんですよと女中は大田原に対する悪い噂を教える。

北野は早速うどんを食べている途中だった島に電話をし、この大田原の評判と土地の印象を報告する。

予定地の5分の3は海です、市長の一人芝居かも知れませんが、どこか魅力があり捨てがたい、安く叩く手はあるかも知れませんと報告後、今夜市長に呼ばれていると北野が伝えると、結構なことだと島は喜ぶ。

その夜、温泉宿に招かれた北野の前で大田原は芸者と一緒に上機嫌で歌い踊っていた。

ひとしきり踊った大田原は冷や汗を流してきますと頭を下げ、芸者衆(清水由記、村松恵子、芝木優子)に北野を任せ退室するとお気に入りの芸者と別室でつかの間の情事にふける。

座敷に残された北野は、残った芸者たちから大田原の評判を聞き出そうとするが、芸者たちは、敵が多くてリコールされるんやないか言われていると言うので、君らは市長と松永さんのどっち派や?と聞くと、市長さんに聞いておくれやすとはぐらかして来る。

そこに大田原が戻って来て飲み直しましょうと誘い、北野はん、今夜湯たんぽいりませんか?よりどりみどりですよと嫌らしい顔で聞いて来る。

北野は最初何のことか分からなかったが、芸者を1人夜の相手にさせると言うことと気づき辞退するが、大田原がしつこく勧めるので、その場をごまかすため、横に座っていた〆子(横山道代)にすると答える。

夜中、布団に入っても仕事を続けていた北野の部屋に〆子がやって来たので、湯たんぽはたくさんだ、帰ってくれと邪険に扱うと、市長さんに怒られるの…と〆子は困惑する。

君、市長の妾の1人やろ?良いから出て行ってくれと北野が叱ると、じゃあ隣の部屋に泊めてもらいますから…と〆子は言い出す。

一旦布団に入った〆子は、本当に湯たんぽいらんのか?と又北野の部屋に来て聞くので、いらんよと言うと、北野の布団に入っていた本当の湯たんぽを引き抜いて、わしゃ寒うて寝られんかった、お休み!と言い、隣の布団にそれを持って行く。

東京本社に戻って来た北野は、引っ越しのようなことをやっているので訳を聞くと、社長が月曜から宿直室に来るんだよと総務部長は困った顔で教える。

それを聞いた北野は、それじゃあ労働基準法違反じゃないですかと指摘する。

総務部長は、君は企画室長なんだから社長に何とか行ってくれよと北野に泣きついて来る。

その後、由美子と会った北野が一緒に君のアパートへ行こうと誘うと、ダメよと言うので、君は僕が嫌いなの?と聞くと、今日は予定が会って姉さんが来るるのよと説明した由美子は、北野さんのアパート見つけたわと行っている所に、北野を部長が呼んでいるとの知らせが来る。

総務部長が言うには今電話があって屋敷の方に報告に来てくれとのことだと言うので帰宅しようとすると、アパートを見つけたからって結婚する訳じゃないわよと由美子が釘を刺して来たので、そんなことを言うと言うことは意識しているってことなんだよと来たのは言い返す。

翌朝、屋敷の一室で起きた北野は、庭先でトレーニングマシンを使って足を屈伸させている島の姿を見かけたのでパジャマ姿のまま出てみる。

それ、武彦君のでしたねと話しかけると、買うてやった玩具はこうして残ったが、持ち主の方はワヤになった…と島は寂しげに答える。

そんな島に、どうして会社に引っ越しなさるんですかと聞くと、新工場のために屋敷も売らんといけんのだ、わしの好きなようにさせてくれんかと島は言うので、本当は1人でいるのが寂しいのでは?と北野は指摘する。 しかし島は東三の話やとごまかす。

朝食を一緒にとりながら北野は、自分の宿にやって来た松永の話をし出す。

市長は工場を誘致することによる固定資産税徴収で市民税の引き下げを狙っているようだが、あの海は遠浅で、とても大きな船を接岸させる港など造れないし、今の鉄鋼不況では工場誘致が市に有利になる訳ではないと、その場で録音した小型テープレコーダーをかけながら北野は説明する。

話を聞き終えた島は、面白過ぎてもあかんな…と呟く。

ところが翌朝、「新工場誘致成功!」と書かれた地元新聞を持って松永が会社にいた北野に見せに来る。

それを見た北野がデタラメにも程がある!と憤慨すると、既成事実を作るのが奴の常套手段です、こちらに被害がなくて良かった…と松永は言う。

北野は上京しているらしい市長と会いますと言い会社を飛び出して行く。

その頃、大田原は妾と一緒に車に乗り込んでいた。

その後、北野は由美子がやって来たので、すれ違いだったらしいと大田原に会えなかったことを打ち明けるが、あなたを追って来たと思わないでねなどと由美子が言うので、誰も乗ってないエレベーターの中に連れ込み、その中で由美子に強烈なキスをする。

ね?結婚しよう?と打ち明ける北野に、もっと付き合った方が良くない?私のこと知らないでしょうと由美子が言うので、そんなこと一生分からないかも…と北野はとぼけ、エレベーターが泊まって人が乗り込んで来たので2人はさりげなく降りる。

その頃会社では労組の安川らが総務部長に、社長が常時会社内にいるのは労働基準法に抵触しているし、強引な新工場建設計画も無謀すぎると抗議をしていた。

宿直室に寝泊まりするようになった島は、出前のうどんがなかなか来ないので身の回りの世話をしていた横山に言うと、その場から電話をかけようとするので、そんなことで電話代を使わず、帰りがけに店に寄ってくれれば良いのだと注意する。

旦さん、2〜3日田舎へ帰らせていただきますと横山が申し出ると、用がすんだら帰って来てくれと島は答える。

そこへ又大田原が乗り込んで来て、この度は御引っ越しおめでとうございます、手みやげ代わりのこのマイクロTVは交際費から出てますので…などと言って勝手に置こうとするので、そんな物いらないから持って帰ってくれと島が断ると、今日はぜひともお見せしたい物がありますと言いながら、太田原は勝手に島の帽子と外套を取って外に連れ出そうとする。

あの新聞はなんだね?と島は抗議し、わしは行かないからそれを持って帰ってくれと言うが、大田原は強引に島を連れ出し用意していた車に乗せると、持ち帰って来たソニー製のマイクロTVを前の座席に取り付けスイッチを入れ、ここまで来たらお分かりでしょうが目的地は東三市ですと打ち明け、用意していた弁当とぬるい茶をを差し出す。

島が無視していると、大田原は自分の分の弁当をさっさと平らげ寝た振りを始めたので、仕方なく島も夕食代わりに弁当を食べるしかなかった。

狸寝入りをしていた大田原は途中で薄目を開け、そんな島の様子をそっと確認する。

翌朝、到着した峠から、北野に見せたときと同じように東三市の全景を見せる大田原は、宇宙利用大博覧会の残骸で海を埋め立てるのですと計画を明かすので、島はアホなと呆れる。

しかし大田原は、この峠を切り開いてバイパスを作ればその土も埋め立てに利用できるしバイパスからの使用料が日銭で入りますと言う。

島が近くの草むらに立ち小便をしに行ったので、連れションに付いて来た大田原は、土地の買収は入り口出口を先にすれば中袋になるなどと説明していたが、その時突然島が倒れてしまう。

驚いた大田原は倒れた島を背負い、運転手(中山豊)も手伝って車で病院に向かう。

電話で島が東三市で倒れたことを聞いた北野は、すぐに身の回りの世話をする人を連れて行くと答える。

島を診断した東三市立病院の医者(宇野晃司)は、ただの披露だ、一晩で退院できると大田原に教えるが、大事な人物だからできるだけゆっくり静養させてくれと大田原は頼み、看護婦たちと一緒に飯を喰い始める。

そこにやって来た田沢トミエが、間もなく議会が始まります、市長の不信任案が討議されるんですと急かすので、東京から人が来るまで島さんの世話をしてくれと大田原は頼む。

由美子のアパートへやって来た北野は、廊下にいた見覚えのある女性に由美子さんはこちらですか?と聞くと、由美子!とその女性が部屋の中に呼びかけたので、分かったぞ!君たちは大田原とグルだったんだな!と北野は気付く。

見覚えがある女性は東三市で見かけた大田原の妾で、それが由美子の姉和子(福田公子)だったのだ。

君だね、昨夜社長を連れ出す指図をしたのは?社長は倒れたよ、女秘書、実は産業スパイか!と北野から指摘された由美子は、姉が世話になっているんですもの、知ってることくらい話すわとふて腐れたように答える。

北野が怒って帰ると、あの人が北野さんね?と和子が気付くと、由美子はだから最初から嫌だと言ったのよと答える。

東三市では、市議会が開かれ、議長(松本染升)が市長への不信任案の投票結果を発表していた。

総員31名、白票2、有効票29の討ち、不信任案に可13、不可が16で否決されましたと発表した議長はすぐさま閉会する。

すると出席していた大田原が立ち上がり、今後とも宜しく!と議員たちに挨拶し出て行く。

しかし、市長のリコールに失敗した松永は、明日見てろてんとうそぶく。

島が入院している病院に駆けつけた北野は、世話をしていたトミエから、島が倒れた原因は極度の偏食による栄養失調だと聞かされただけではなく、市長が使っている金は、携帯TVも前に送った花も全部自分の金なのにそれを誰も知らないのだと言うので驚く。

時々私が伝票を回しているんですけど、市長は悪党ぶっているだけで、何でも公用で使っている人達のことをからかっているんですとトミエは言う。

そこに、京都から取り寄せたスッポン鍋が届くが、それも市長が自腹で注文したのだと言う。

その頃、東京本社では安川ら労組トリオが、我々も東三に乗り込んで社長に直談判しようと相談し合っていた。 社長は絶対安静なんだと総務部長が止めようとするが、こっちだって生きるか死ぬかの瀬戸際なんだ!と言い残し、労組トリオは出掛けて行く。

そこに由美子がやって来て総務部長に退職届を渡す。

由美子がアパートに戻って来ると、和子が東三市立病院へ電話をかけ、北野さんを呼んでと頼んでいたので、もうたくさんよ、もう元へは戻れないわと由美子が止めさせようとする。

電話口に出たのはトミエで、北野さんはまだお見えになっておられません、あなたどなたですかと聞いて来たので、和子は何も答えず電話を切ってしまう。

誰が出たの?秘書が出たから切ったのねと由美子は姉の行動を推測し、どうするの?と聞くと、和子は東三市に行くのよと言い出す。

私決心したわ、ほんのちょっとした行き違いで大きな怪我になるのよ、怪我は直っても傷は一生残るの…と和子は言う。

その頃、北野はようやく島の病室に到着し、持って来たメガネと煙草を渡すと、大田原は印象とだいぶ違う、インチキ臭いのは他の連中です、大田原は秘書の星崎から情報を取ってたんですよ、社長の奥さんの葬儀のことも僕が急行に乗り込んだのも、社長が会社に引っ越したのも彼女から聞いたのです、星崎は大田原の二号の妹ですと教える。

今の秘書だって3号か4号かも…と北野はトミエのことを当てこすると、そんな男とてを組んでも日本鉄鋼かいのトップになるチャンスはありません、新工場をスッポン野郎の所に建てるのなら責任は持てませんと言う。

そこにスッポンスープで雑炊を作ってきましたとトミエが持って来るが、工場は千葉に決めようと言い出した島は、北野君が来たのであなたはもう結構ですとトミエに礼を言う。

トミエは憮然としながらもどうも行き届きませんで…と詫びて帰って行く。

その直後、島の顔を見ていた来たのは、付けるんですね?と今のトミエのことを聞くと、スパイだったら大田原の所へ行くやろうと島は言う。

トミエは病院の電話をかけており、どこ?そう…、草月亭ねと言っているのが聞こえたので、北野は先回りをすることにする。

草月亭と言うホテルにやって来た北野は、応対した仲居のお志保(塩沢とき)に、市長の隣の部屋を頼むと依頼するが、離れを用意しましょうと言うので、離れじゃダメなんだと断ろうとするが、お志保が案内したのは浴室で、ここなら良く聞こえるの、以前新聞記者がここから良い記事を取ったと言ってたわと言い、木桶を重ねてその上から空気穴を覗けば市長の部屋の様子が見えることを教えると巧くおやりと言って出て行く。

北野はすぐに木桶を重ねたのを踏み台にして市長の部屋を覗くと、女性との会話が聞こえて来た。

しかしそれはマッサージ嬢(村上美重)で、トミエが来るとすぐさま帰って行く。

土地収用の件、このままでは千葉に替えるようです、北野さんがそう言ってましたとトミエは大田原に報告する。

君は何か言ったのかね?と大田原から聞かれたトミエは、市長は身銭を切っていると言ったんです、市の金だから平気で使っていると思っているようだったのでとトミエは答える。

北野君のことは由美子から聞いた…、2人は熱々の仲だったから、今度の件で冷たい戦争になったらしい…、悪い事しちゃったよと大田原が反省したので、動揺した北野は木桶を踏み抜いてしまい大きな音を建ててしまう。

その音に驚いた大田原だったが、特に気にせず、あそこは工場で埋め立てなきゃいかん、松永たちの好きにさせたら大変なことになると大田原は案じる。

大田原の言葉に感激した北野は風呂場から飛び出すと、着替えて出掛けようとしていた大田原の肩を叩いて抱きつく。

その後、すっかり意気投合した北野と大田原は芸者を呼んで一緒に歌を歌い出す。

翌日、安川、田代、後藤の労組トリオはバスで東三市立病院にやって来ると、北野は来ていませんか?と聞くが、北野も島もいないと良い、医者は心配いらんぞ、ただの疲労だと説明したので、こうなったら実力行使だ!と安川はいきり立つ。

その頃、島は工場誘致の予定地を見学しに来ていたが、そこへ工場には渡すな!誘致反対!と市民グループが呼びかける船が近づいて来る。

町中にも同じように市長を大田原市町を追放しよう!市庁舎の屋上で決起大会を開くので集まって下さいとスピーカーから呼びかける宣伝カーが走っていたので、それに気付いた安川らは、どう言うことかな?我々に有利ってことかな?と首を傾げ、後藤は集会に出てみようと言い出す。

旅館で北野と同じ部屋で寝ていた大田原は騒ぎに気付き先に起きるとさっさと出掛けるが、北野の方はそのまま眠り続ける。

宣伝カーがしない中を走り、集会に出ると弁当が出るし、お土産も出るぞとあおり立てたので、続々と市民が市庁舎の屋上に集まって来る。

市庁舎の屋上に集まった大群衆を前に警官が警護する中、市庁舎の天辺の塔の上に登った松永は、昨日市議会で市長の不信任案がたった3票の差で否決されましたが、これは市長の陰謀です!本大会で市民の声を挙げましょう!と演説を始める。

市長は博覧会跡地に工場を誘致しようとし、固定資産税で市税軽減を図ろうとしているが、それが実現するのは数年先のことであります!それまで今正に景気が悪い鉄鋼業で持つでしょう? 我々が計画している競輪場なら日銭が稼げます!皆さんはどっちを取るか?この重大事に市長は何をしているのか?料亭で二日酔いで寝ているのです!と松永は続ける。

その時上空に花火が打ち上がる中、オート三輪で市庁舎に駆けつけたのは大田原だった。 三輪車を降り急いで屋上の塔の上に登った大田原は松永のマイクを奪い、ただ今参りました!と市民たちに挨拶をする。

その頃、ようやく起きた北野は洗面所でうがいをしてた。

ここの来る途中、松永さんお発言を全て聞きました…と続ける大田原は、売られた喧嘩は買わねばならんと言いながら松永がいる塔のさらに上の階まで昇る。

そこに自転車に乗って北野がやって来る。

工場などをホテルに例えれば、競輪場はフリーの客が相手の商売なのに対し、工場は馴染み客相手の商売であり安定していますと大田原は説明する。

固定資産税お入りますし、イロハ峠よりバイパスができれば交通の要所となる! 海も新設して船が着く港を作れば100万坪に余る工場になる!と大田原が夢を語ると、下で聞いていた松永が反論する。

そうした討論を、もらった弁当を食べながら〆子ら芸者連も聞いていた。

人格者が女を囲うか!妾を整理したらどうだ!と市民の間からヤジが飛び市民が騒ぎ始めたので、大田原は、否…そのことでございますが、現在妻亡き後2人おりますと正直に告白するが、50年の人生で真実愛しております、一変結んだ契りは捨てられません!人間として反省しておりますが棺桶に入るまで直りそうにない!しかし2人の女性たちを不幸にしたことはない!とユーモアまじりで訴える。

そこにトミエが駆けつけたので、市民たちの間からお前も妾だろうと野次が飛ぶ。

するとトミエは、私には婚約者がいます!と反論するが、嘘をつけ!と野次られると、屋上にいた市民たちの中から、私は戸籍係です、トミエちゃんの婚約者だがね!と青年(谷啓)が名乗りを上げる。

そこに今度は東京から、由美子と一緒に和子が駆けつけ大田原の横に並んだので、こいつが本当の妾だ!と野次が飛ぶが、私は大田原の妻です!今日婚姻届を出しましたと和子がマイクで宣言する。

すると先ほどの戸籍係が、確かに受け取ったがね!と怒鳴り返すと、それを聞いた〆子が思わず拍手する。

島も屋上にやって来る中、トミエと和子、由美子たちは揃って帰って行く。

大田原の横に並んだ島は、マイクを受け取り、わしにも一言言わせてくれ!皆さん、ちょっと話を聞いてくれ!わしは南海製鋼の社長島千蔵です!と市民たちに訴える。

私は市の内情については何も知りません、ただこの議員三たちは市の公共施設を使っております、マイクも宣伝カーもみんな公共の物です、一方市長さんは魚屋のオート三輪で来たのです、皆さんはどちらが町のためになると判断しますか? 私は200億と言う財産をこの大田原さんに任せる気になった! 皆さんの力でこの土地に工場を建てさせて下さい!と島が熱弁を振るっていると、市民の一部が島を引き摺り下ろそうと塔を登り始める。

屋上でそれを見ていた安川ら労組トリオは社長が危ない!と気づき、近くにあった梯子を持ち出し自分たちも登って行くと、社長と呼びかけながら島の元に集まる。

ほんまに銭を見せましょう!と島は約束する。

やがて大東銀行の現金輸送車が何台もの白バイに守られながら東三市へやって来たんで、道を歩いていた市民たちは足を止めて見送る。

市庁舎の中に積んだ2億の札束を前にした島は、全額東三支店に預けますと約束する。

札束の山を前にした大田原も、本物を睨むと大勝負の実感が沸きますなと喜ぶ。

北野は当初の計画通り島に辞表を渡すが、今度の工場地帯の模型を前にもう大丈夫です、僕がいなくても誰でも引き継げますと爽やかな表情で言うので、惜しいな…今辞めるのは…、これからどうするつもりだ?と島が聞くと、ノーコメントと言うことにしますかと北野がとぼけるので、元気にやってくれと島は答える。

その時、一緒に話を来ていた大田原は、私は市長を今季限りで辞め、参議院に出ようと思っています、その時はお力添えを…と言い出す。

島は、わしはこう考えている、東三市の「東」と「島」の名を組み合わせ、工業地帯一帯を「東島半島」と呼ぼうと思うとるんだと言う。

そして工場地帯の模型の前に来た島は、北野の辞表をその模型の工場の真ん中に放り投げる。 
 


 

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