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幻想館

 

曇天に笑う

松竹の内部作品でマンガの実写化らしいが、原作を知らない立場で言うと普通に良くまとまった娯楽アクション映画に思える。

ジャンル的には伝奇アクションとでも言うべきで、ターゲットは小学校上級以上の伝奇好きな人と言った所か?

非常にシンプルな構成になっているので、おそらく原作を大きくアレンジしているんだろうなと言う印象があるが、その分理解しやすい。

アクションはスタントマンなどを巧く使い、日本映画としてはそれなりに頑張っている方だと思う。

ただマンガ原作と言うこともあり、忍者、陰陽道、囚人島など、比較的見慣れた素材や馴染みのロケ地が多いこと、琵琶湖沿岸の一集落だけの話のように見えることなどもあり、意外性やスケール感などはやや欠けるような気がする。

さらに予告編から抱いていたイメージとは全く違った内容だったので、あのおちゃらけたような宣伝の仕方は失敗だったような気がする。

伝奇素材自体がマニア限定のような気がするのに加え、キャスティング面でもあまり知名度のありそうな大物が少ないことなどもあり、動員は難しそうな気がする。

CG処理なども必要最低限と言う感じで、松竹作品にしては大作の部類なのだろうが、ワーナーの「るろうに剣心」シリーズほど予算を投じているとは思えず、ややこじんまりした印象があり、作品インパクトは薄い気がする。
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
2018年、「曇天に笑う」製作委員会、唐々煙原作、髙橋悠也脚本、本広克行監督作品。

松竹の冨士山の会社ロゴに汽笛とドラの音が重なる。

明治以降の急激な欧米化に不満分子が溢れた。

大津の町ではその日祭りで、太鼓の音に合わせ町中が賑わっていた。

そんな中、待て~!逃がすな~!と叫び声が聞こえ、1人の男を追っていたのは曇空丸(中山優馬)と警官隊だった。

そこに近づいて来る下駄の男。

空丸を振り払った男はさらに逃げようとして、退け退け!と呼びかけるが、そこに立ちふさがったのが空丸の兄曇天火(福士蒼汰)で、俺に指図するんじゃねえ!ここでは俺が掟だ!とその逃げていた男を取り押さえる。

そこに駆けつけたのが警官隊で、男を渡すと、祭りなんだからもっとしっかりしろ!と天火は注意する。

そこに空丸の三男坊の曇宙太郎(若山耀人)が合流する。

橋を渡った天火に町の子供たちと親たちが近づきトラブルを防いだ礼を言い、立ち去って行く3兄弟に、よ!曇天三兄弟!と呼びかける。

その地方では、300年に1度曇り空が続く日にオロチ(大蛇)が蘇るオロチの器の伝説があった。

三兄弟は、捕まえた先ほどの男を連行し渡し船で琵琶湖に浮かぶ「獄門處」と呼ばれる島に来る。

ここは新政府が罪人を一生閉じ込める為の場所で、容赦なく送り込んでいた。

三兄弟に連れて来られた男は、ここでは辰28265と呼ばれるようになり、待ち受けていた役人から、氏族崩れか?ここにおるのは重犯罪専用だ、二度と出られると思うな!お前らに人権はない!一生かかって罪を償うのだ!と言い渡たされる。

この島の独居房には、新政府に潰された忍び集団の長、風魔小太郎が入れられていた。

一方、琵琶湖の湖畔には、3兄弟の住まいである「曇神社」があり、2本の守り刀が御神体として祀られていた。

天火は、ここの曇家第14代当主であった。

階段を登り帰って来た天火が白子(しゅらす)!と声を掛けると、庭掃除をしていた金城白子(桐山漣)が、お帰り!空丸、ご苦労様!と3人を出迎える。

腹減った!と宙太郎がぼやき、天火は白子、掃除なんか良いから飯だぜ飯!と急かす。

3兄弟が白子が用意した飯を食い始めると、天火は宙太郎に、飯食う時くらい帽子を取れ!と注意する。

さらに、宙太郎が自分が苦手なオクラを隣の空丸の器にこっそり入れようとすると、宙太郎、そんなにネバネバが嫌いか?曇家(くもうけ)三ヶ条を言ってみろ!と天火が言い出す。

飯は残さず食べること、嘘をつかないこと、屁は外ですること、俺が決めたことだが、破ったときは穴埋めだ!外に穴を掘るぞ!白子に感謝して食え!と脅し、無理矢理オクラを食わせる。 宙太郎が無理矢理オクラを食べると、うめえときは笑え!と天火は釘を刺す。

白子はみんなが寝静まった後も、アイロンがけなどをしていた。

陸軍第九連隊本部 いよいよ「犲(やまいぬ)」が動き出したようですね?と岩倉具視(東山紀之)は、部屋に集まった右大臣直属舞台の5人の兵隊たちを前に言う。

妖か物怪か、300年に1度、出現すると言うオロチを封印出来るのは、安倍家を代々受け継ぐ5つの家系と曇家の末裔のみ!そして2本の守り刀…と岩倉が言うと、岩倉様、我々5人のみで成功させます、オロチの器を見つけ出し、殺す!と犲(やまいぬ)の隊長安倍蒼世(古川雄輝)が言う。

その頃、天火は滝行をしていたが、側で待っていた白子は、空が曇り、大地が闇に包まれる時、オロチが災いをもたらすと言う伝説があるが、オロチの復活近いかも知らんな…と着物を着ながら天火は言うが、白子は天火の背中に大きな傷があるのを見るながら、器…、オロチに魂を奪われた人間を早く捜さないと…、他の2人に言わなくて良いのか?と白子も案じる。

天火は、あいつらにはいつも笑っていて欲しいから曇家の運命を背負うのは俺1人で十分だと答える。

すると白子は側に跪き、俺に出来ることがあればいつでも命じてくれと申し出たので、止せ!あんたは俺の手下じゃないと天火が答えると、政府の弾劾から逃れた風魔一族の俺を助けてくれたのはお前だと白子は言う。

(回想)血まみれで倒れていた忍者姿の白子を発見する天火。

(回想明け)天火は俺の家族だと天火は言う。

その頃、曇神社では、宙太郎が的代わりの案山子に向けてパチンコの礫を当てる練習をしていたが、そこに、大変です!と警官2人が神社の階段を上がって来たので、どうしたんですか?と側にいた空丸が聞くと、町で変な連中が暴れているんです!と言う。

どうする?空兄いと宙太郎が聞くと、空丸は無言で町へ向かい出したのでやむなく自分も付いていく。

町では、黒装束の一団が町民に襲いかかり、着物の左腕をまくって腕を調べていた。

空丸は単身賊に立ち向かおうとするが、多勢に無勢、歯が立たなかった。

空兄い、無理だって!天兄いを呼ばないと!と止めながらパチンコを打っていたが、そんな空丸に賊の1人がくないを投げようとしたとき、そのくないを撃ち落としたのは、駆けつけた鵜大直属の「犲」たちだった。

滅びかけの風魔!オロチの器を探しているのか?と蒼世が賊たちに問いただすと、そこに天火と白子が駆けつけて来る。

天火は、弟たちを守るように、俺たちは曇家の男だ!と前に出て来て、何故勝手に出て来た?と叱ったので、役に立ちたいんだ!と空丸は天火に訴える。

天火は風魔一族に、お前ら何勝手に俺の町で暴れているんだよ!と睨むと、オロチが復活し、滅びの日は近い!と風魔の迅影(池田純矢)が叫んだので、それを聞いた町民たちは、オロチって?伝説だったんじゃないの?と騒ぎ出す。

そんな騒ぎを鎮めようと、天火は、お前らの想い通りにはさせん!器は我らが探して殺す!それが「犲」の狙い!と蒼世が言うので、誰1人犠牲にさせない!俺はオロチも守るし、町もみんなも天火様が守ってやるよ!と天火は見栄を張るが、誰も止められない!と言った風魔たちは煙玉を投げ姿を消す。

オロチを守るだと?偉そうなこと言いやがって、全く反吐が出るぜ!と蒼世は天火に悪態をつくが、蒼世!と気安く天火が呼びかけると、その名を呼ぶな!二度と面を見せるな!と蒼世は怒鳴りつけて来る。

すると「犲」の1人、犬飼善蔵(加治将樹)が、お前が曇天火なのか?と天火に問いかけたので、こいつに用はない、行こう!と蒼世は犬飼に声をかけ帰って行く。

兄貴、オロチって何だい?と空丸が聞いて来たので、お前らはもう大丈夫だ、安心しろと天火は言うだけなので、何故教えてくれない?と空丸は食い下がって来るが、半人前にはまだ早い、腰抜かしてたじゃないかと天火は今の空丸の戦いっぷりをからかう。

空丸が悔し涙を浮かべると、泣いてんの?と天火が聞くので、放っとけよ、くそ兄貴!と空丸が言い返すと、一杯泣いて、一杯笑って大きくなれ、いつか、この大津を守る強い男になるんだと天火は言い聞かす。

大津の町を襲った風魔一族は、新政府を転覆させる計画を進めていた。

獄門處に流れ着いた無人の小舟を番人が見に来ると、次の瞬間、突然出現した風魔たちに番人は殺されてしまう。

風魔たちは、牢を開け、囚人たちを全員解き放ったので、囚人達は役人たちを襲撃し始める。

そして、風魔小太郎を助け出した迅影は、風魔に従ったお前たちは自由だ!と囚人たちに呼びかける。

空丸は扇子一本の天火相手に二本の棒で立ち向かっていたが、まだ対等な勝負にはならなかった。

そこに町の子供と娘が差し入れを持ってやって来る。

空丸は、俺はただ兄貴の力になって…と強くなりたい胸の内をさらすが、お兄様に加藤なんて百兆年早いんだよ!と天火は嘲笑する。

そして、娘たちが持って来た草団子を食べ休息することにする。

娘や子供を途中まで送ってやっていた空丸と宙太郎は、田んぼから近づいて来た近隣の農民たちが、教えてくれよ、このまま曇りが続くなら、稲腐ってしまうよ…と状況の説明を求めて来る。

すると宙太郎が、兄貴言ってたもん、きっと晴れるって、この町もオロチも天火様が守ってやるって…、今までも、どんな罪人に襲われても、みんな天兄いに助けてもらったじゃない、天兄い信じろ、絶対晴れるって!と断言する。

その後、洋館で行なわれた琵琶湖周辺の者を対象にした慈善演奏会に招かれた3兄弟だったが、天火とはぐれて室内で迷っていた宙太郎は階段で会った蒼世から、でかくなったなと頭をなでられきょとんとなる。

そこに、空丸が、宙太郎、はぐれるなって言ったろと声をかける。

「犲」のメンバーが集まっていた場所に岩倉具視が来ると、タキシード姿の天火も姿を見せたので、二度と面を見せるなって言ったろう!と蒼世が罵倒する。

しかし天火は、一応、曇家として呼ばれたんだと冷静に教える。

久しぶりだね、曇家の跡取りと声をかけた岩倉は、最後にあったのは君が隊を抜けた時以来か…、君の力が必要なんだ…、隊を辞めたのは本意ではなかったはずだ…、風魔に親を殺されたんだからな、君が親代わりになって弟たちを育てるしかなかった…と天火に話しかける。

(回想)家を襲った風魔小太郎を前に、赤ん坊だった宙太郎と空丸に覆い被さり必死に守る天火…

(回想明け)親は結核で死んだって言ってたじゃない!風魔に殺されたって本当なの?とその時、天火の背後から声が聞こえる。

空丸と宙太郎が今の話を聞いてしまったのだった。

その時、君は背中に大きな傷を負ったと岩倉は続けるので、止してくれよ、岩倉のおっさんと天火は制止する。

空丸は天火に近づき、どう言うことか説明しろよ!何でも話してくれるんじゃないのか?俺たち家族だろう?1人で背負ってるんじゃねえよ!と迫るが、住まなかったね、これで君も肩の荷が下りただろう…と岩倉は確信犯的に詫び、戻ってくれないか?この国の為です、もう一度考えて下さい天火に頼む。

すると蒼世が、愚かだとは思っていたが、何故国を守る役目を棄てた?と問うと、この国の未来より兄であることを選んだんだ…と天火が答えると、身勝手過ぎて吐き気がすると蒼世はバカにする。

曇神社に帰って来た天火は、疲れて寝ていた宙太郎の目から流れていた涙を拭ってやる。 白子の前で着替えながら、参ったな…、あいつらだけには知られたくなかった…と天火がぼやくと、いつかは知ることだ、心配するな、いつか分かってくれるさ…と白子は慰める。

天火は、お前がいてくれて本当に助かると白子に礼を言う。 憎くないのか?俺はお前たちの良心を殺した風魔一族だと白子が聞くと、命を奪ったのはお前じゃない、さてと、兄ちゃんの役目を果たすときか…と天火はとぼけ、そこに寝ぼけ眼の宙太郎が起きて来る。

その頃、空丸は琵琶湖湖畔で黙々と剣の稽古に励んでいた。

そこに近づいて来た天火が、層怖い顔するな、オロチのこともオヤジたちのことも隠すつもりはなかった、お前たちが一人前になったら話そうと思ったんだと話しかけると、兄貴、言ったよな、オロチ守るって…、俺たちって何なんだ?曇家って何なんだ?と空丸は聞いて来る。

1200年前、オロチはこの地に生まれ…に昇って天を守り、雨を降らせたり恵みを与え人々の生きる礎になった。

でもオロチはその不気味な姿で人間たちから嫌われ、追いやられるようになった。

オロチは感謝を忘れた人間を怒るようになった。 憎みあっている限り災いは繰り返される。

みんなが笑って住んでいけるようにしたいんだ、だから空丸、今出来ることを精一杯やれ、どんな辛い時にも笑っていられる強い男になれと天火は言い聞かせる。

そこに宙太郎が、白子は飯が出来たって…と呼びに来る。

しかし空丸は、分からない…、兄貴には力があるからどんな時にも笑っていられるかもしれない、でも今の俺には…と言い残しどこかへ向かったので、空兄い、どこ行くの?と宙太郎が聞く。

空丸が向かったのは「犲」の部隊だった。

来客と言われ玄関に出た安倍蒼世は、お願いします!剣の稽古させてください!と仲間に、帰れ!と制せられながらも必死に訴えている空丸を見る。 蒼世は良いだろうと許可し、道場に招き入れる。

恨みっこなしの1本勝負だとの条件付きで武田楽鳥(市川知宏)が相手をするが、空丸の力不足は明らかで、さっきの威勢はどうした?弱すぎる、天火と同じ兄弟とは思えないな…と仲間たちは嘲笑する。

すると倒れていた空丸の目が赤く光り、突然強くなったので、回りで見ていた「犲」の隊員たちは、これはたまげた!彼が毎日付き合ってもらっていたのはあの曇天火だぞと見直す。

蒼世は、明日又来いと声をかけたので、空丸は、ありがとうございます!と礼を言って帰って行く。

その直後、蒼世に近づいた顔に傷がある副隊長鷹峯誠一郎(大東駿介)は、まさか奴が?と囁きかけると、その可能性はあると蒼世も気付いたようなので、俺が試すと言うと鷹峯は道場を出て行く。

森を抜けて神社に帰っていた空丸は、巨大な「斬馬刀」を手にした鷹峯が後を付いて来たことに気付き振り返る。

俺は武田のようにはいかねえぜ!と言いながら、鷹峯が「斬馬刀」で斬りかかってきたので、空丸は驚いて腰を抜かすが、次の瞬間、又空丸の様子が一変し、相手の「斬馬刀」を奪い取ると斬り掛かる。

その後、少し我を失っていた空丸が正気付くと、自分の両手が血にまみれていたので、恐怖に駆られ悲鳴をあげる。

その頃、鷹峯が戻って来ないことに気付いた犬飼は、隊長!どうして鷹峯を1人で行かしたんです?俺たち1人でも欠けたら封印できなかったことを知ってるでしょう!と問いつめると、隊長は最初から封印するつもりはない…と他の隊員が言う。

蒼世は、器を殺せば全てが終わる…とうそぶく。 その夜、獄門處では、この獄門處こそオロチが封印された場所なのだ!恵みを与えた恩を忘れた人間に天罰を与える!今こそ器を探し、オロチ様を復活させる!と迅影が囚人たちに呼びかけ、囚人たちはそれに応ずるように雄叫びを挙げる。

狐面をかぶった風魔小太郎は、天上の三日月を仰ぎ見る。

一方、神社にいた天火は背後の障子の外に異様な妖気を感じ、開けて見ると、そこにいたのは両手を朱に染めた空丸で、兄貴!俺…と怯えていたので、抱きしめ、何を言うな!と制する。

岩倉は安倍蒼世から報告を受け、皮肉だな、天火君の弟がオロチの器とは…、覚悟できてるか?と 「犲」の仲間たちに問いかける。

強制はしない、迷いがある奴は今すぐ去れ!と蒼世は言う。

そこに現れたのは鷹峯誠一郎で、大丈夫なのか?と聞かれると、国の一大事に寝ていられるか!と強がる。

良いか?諸君らがオロチを討伐しても歴史に名が刻まれることはない、だが、この岩倉具視は良き国造りに尽力することを誓う。

我ら犲、国を護りし番犬!死ぬ時は大蛇が消える時!と蒼世たちは声を挙げる。

神社では日本の守り刀を前に天火が手を打っていた。

オヤジ、おふくろ!俺は目一杯愛された、だがあいつらはオヤジたちの愛を知らない、だからその分も俺が愛してやらないと…、だのに空丸が…、言ってたよな?うちが風魔に狙われるのはこの守り刀にオロチを封じる力があるからって…、な?オヤジ、信じて良いのか?と問いかけると守り刀を取る。

その背後では、宙太郎と一緒にいた空丸が、兄貴、俺を斬ってくれ!と身体の自由が利かない様子で訴えて来る。

みんなが笑って過ごせるように…、それが曇家の掟なんだろう?俺だって曇家の男だ!と続ける空丸は苦しそうだった。

天火は数珠で封印されていた守り刀を二本とも抜き、封印を解く。

苦しむ空丸を見ていた天火は、大丈夫だ、兄ちゃんを信じろと言いながら守り刀を持って空丸に近づこうとする。

その時、灯りが消え、天火の背後に現れたのは白子だった。 白子兄い!何やってるの?と宙太郎が驚くと、この時を待っていたよ、お前たちに近づいていたのはこの時の為だ…と言う白子は天火の背中に短刀を突き立てていた。

倒れた天火に、風魔には一族の掟がある!お前たちがお人好しで良かったよ、家族ごっこはお終いだと白子は言い、背後に現れた風魔一族の迅影 、霧生(若葉竜也)、雷牙(奥野瑛太)とともに、お迎えに上がりました、オロチ様…と空丸の回りを囲む。

お連れしろ!と白子が命じる。

空兄い、白子兄い、待ってくれよ!と宙太郎は追いすがろうとするが、白子にひねり飛ばされる。

空兄い!と呼びかけるちゅうたろう。 空!と天火も声を掛けるが気絶したので、天兄い!と近づいた宙太郎が腹にさらしを巻いて血止めをしてやる。

天火は扇子を取ると、三日月型のイヤリングを外し、家紋の上に置く。

羽織を着ると神社の外に出て、留守を頼んだぞと宙太郎に言う。

僕も行く!と宙太郎は追いすがろうとするが、空丸は必ず連れ戻ると天火は約束して出掛けて行く。

その頃、空丸は、獄門處の中央部の石の台に手足を大の字に縛られていた。

何でだよ、白子さん?と空丸が聞くと、悪いが俺にも兄弟がいる…と側に立っていた白子は答え、その横に立ったのは狐面をかぶった風魔小太郎だった。

お前は変った…、笑うようになった…、曇家に情が涌いたか?と小太郎がからかいながら狐の面を取ってみせる。

包帯を巻いたその素顔は白子と瓜二つだった。 くだらないことを言うな、1人は獄門處に、1人は曇家に忍び込んだのも全てはこの日の為だ…と白子は言う。 風魔小太郎と白子は双子だったのだ。

岩倉は執務室で文章を書いていたペンを止め、窓の外に目をやる。

大津の町の上空は巨大な雲に覆われ始める。

その曇は、獄門處の真上で渦巻き始める。 空丸の身体は黄金の鱗に被われていた。

空が曇り大地が闇に支配された時、オロチ様は復活する!と迅影が囚人たちに伝えていた。

そこにやって来たのが天火が、うるせえな、静かにしろ!と叫んだので、囚人たちは一斉に振り向く。

兄貴〜!と縛られた空丸が呼びかける。

ここじゃ俺が掟だ、弟を返してもらうぜと言うと天火は囚人たちの中に飛び込み戦い始める。

兄貴〜!空丸〜!互いに呼び合う兄弟だったが、多勢に無勢、天火は袋だたきに遭う。

空では日食が始まっていた。

空丸〜! 辞めてくれ〜!と叫ぶ空丸の顔も金の鱗に覆い尽くされる。

その時、獄門處の外壁の一部が爆破され、入って来たのは「犲」と宙太郎だった。

天兄い!と宙太郎が呼びかける。

無様だな?たった1人で弟を守りきれると思ってたのかよ?と蒼世は傷だらけになった天火を嘲ると、当たり前だと天火は答える。

だったら、絵空事じゃないことを証明してみろ!でないと弟を斬る!と蒼世は煽る。

言ってくれるじゃないかと天火が苦笑すると、殺して良い、私が許可すると蒼世は「犲」の仲間たちに命じ、おお!と応えた4人は囚人と風魔一族に立ち向かって行く。

その間に天火は風魔小太郎と白子に近づいて戦う。

日食が完成する。

お前がオヤジを!と小太郎に詰め寄る天火と、俺たちだ!と白子が言う。

(回想)弟2人に覆い被さった天火が後ろを振り向いた時、そこには小太郎が立っていたかに見えたが、その背後に隠れるようにもう1人立っていたのが白子だった。

(回想明け)言い訳しろ!白子さん!本当のお前はどこにいる!と天火は呼びかける。

完全に体中金色の鱗に被われた空丸の身体が宙に浮く。

我々「犲」は日本帝国に逆らう貴様らとは覚悟が違う!と言いながら蒼世は風魔一族に迫る。

その間に天火は宙に浮かんだ空丸に駆け寄る。

それに向かって手裏剣を投げて来る小太郎。

蒼世は迅影を斬る。

天火は、空丸!帰るぞ!と呼びかける。

白子が持っていた守り刀に宙太郎がパチンコの礫を当て落すと、その刀を拾った天火は、兄貴!と呼びかける空丸に二本突き刺す。

すると、見る見る金の鱗は消え去っていく。 器からオロチが!と蒼世は驚く。

呪縛から逃れた空丸は、遅いよ、くそ兄貴!と悪態をつく。

そんな空丸を抱きしめた天火は、ごめんな!と応える。

白子兄い!と宙太郎が呼びかけると、白子は石台の上で蠢く金色の光に近づきながら、俺がいる限り風魔は死なない…、永遠にだ…と言い、光の中に溶け込んで消え去る。 白子さん、ダメだ…と空丸は呼びかけるが、これが定めだよと天火は言う。

獄門處の上空では暑い雲が渦巻く。

古代よりこの地に生まれしオロチは、見つけ出して必ず封じるのだと言う岩倉の声。

倒れるのはまだ早いと思うが?とうずくまった天火に蒼世が嫌みを言って来る。

もうかなり限界なんだけど…と天火が愚痴ると、お前の言う理想の続きを見せてみろと蒼世は煽ると、総員、作戦にかかれ!と「犲」のメンバー達に声をかける。

天火も立ち上がると、宙太郎、空丸、もう一仕事だ、曇家のお役目を果たすぞ!と言い、石の台に近づく。

石の台を囲んだ5人の「犲」たちは、オン キリキリバサラ…!と呪文を始める。

臨(りん)!と蒼世が叫ぶと、空丸、宙太郎!と呼びかけた天火が二本の守り刀を石の台に向かって抜き、鎮まってくれ、オロチ!もし願いが叶うなら、曇天を払い、人間の心にもう一度笑顔を育めるようお守りください!と呼びかける。 そして、抜いた二本の守り刀を石の台に突き刺す。

そると、宙を漂っていたオロチの気がその突き刺した部分に吸い込まれ始める。

必死に守り刀を押さえる、天火、空丸、宙太郎たち。

やがて、島の中央に太陽光が差し込む。

晴れた!晴れたぞ!と町民たちは空から消えた曇を見て喜ぶ。

14代曇三兄弟が大津の町を守ってくれた。

その地には曇天の空とオロチの器の伝説があった…300年目に復活したオロチは6つに家系の若者によって昇天した…と岩倉は考えていた。

そこに、失礼します!大臣、馬車が到着しました、どちらに行かれますか?と伝令が来たので、急ぎ東京へ戻ると岩倉具視は応える。

オロチがいたなんて嘘みたいな空だな…と、抜けるように晴れ渡った空を見て天火は呟く。

白子兄い…と、宙太郎は白子が最後に髪から外した紫の紐を握りしめ泣く。

家に帰るぞ!と天火が呼びかけると、なんか腹減ったなと宙太郎も笑い出す。

兄貴、ありがとう!と空丸が改めて感謝し、天兄い…と宙太郎も声をかけると、こう云うときはどうするんだ?笑え!と天火は命じ、自らも大笑いをしてみせる。
 


 

 

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