「シン・ゴジラ」と「アニメゴジラ3部作」は、(株)東宝映画主体だった「VSシリーズ」から「ミレニアムシリーズ」へと徐々にじり貧状態になり終了した後、10年と言う空白期間の中で企画部門が東宝本社一括に体制変化した後の作品である。 「シン・ゴジラ」は本社東宝が企画し(株)東宝映画に制作させた作品で、「アニメゴジラ」は本社東宝が東宝映像と組んだ作品。 東宝映像は元々ビデオなど二次商品を企画開発している会社だけに、「アニメゴジラ」は最初から「Netflix」による世界展開やパッケージ販売をメインに企画されたものではないかと推察する。 映画館興行は「シン・ゴジラ」で再燃したゴジラ人気に便乗できたら儲け物…くらいの発想だったのではないだろうか? 昭和から平成にかけてのゴジラシリーズの興行的盛衰の影には、良くも悪くもマニア層の存在があり、そのマニア層全体の高齢化、若い世代の伸び悩みの解消が今後の「ゴジラ」シリーズ継続の最重要課題だったと思うし、「シン・ゴジラ」は庵野監督の起用により、従来の特撮オタクとは違ったアニメオタクや一般層まで巻き込んで、それなりの成功を収めた作品だったと思う。 一方「アニメゴジラ」もリアルタッチの3DCG技術を用い、新たなファン層の開拓を目論んだ意欲作だったと思うが、既存の怪獣キャラをもう一度活性化して売りたいと言うリサイクル発想を求められたからか、新しさと古さのせめぎ合いとなり、メカゴジラやギドラ、モスラと言った従来の人気キャラを連想させるものを宣伝に用いながら、そうした旧作ファンが望んだものを意図的にひねる設定にせざるを得ず、結果、懐かしの「怪獣映画」を求めて見に行った人は期待を大きく裏切られたような印象を受けたのではないか? オーバーに言えば「大いたち!」との呼び込みで入った見世物小屋の中にあったのは「血の付いた大きな板(大板血)」だった…と言うくらいのインチキ商法なのだが、これを3部作でやってしまったと言うマニアを嘗め切った戦略とも言えなくもない。 客層を見る限り、昭和ゴジラ末期〜VSシリーズ頃子供だった世代が目についたような気がするので、そうした世代がイメージするファミリー映画としての怪獣映画とのギャップは大き過ぎたように思えるし、特に女性層など新たな客層が増えたと言う印象もなかったので、結局「ゴジラ」の名前を使って変わったことをすれば、付いて来るのは「コアなマニア層だけ」だったと言うことが分かっただけのような気もする。 TVとの連動もないのに、声優人気で客が呼べるとでも思っていたのだろうか? 初代ゴジラをリブートしたかのような「シン・ゴジラ」が「怪獣映画」と言う骨格があるだけで肉付けはかなり自由なイメージで作られていたのに対し、「アニメゴジラ」は新しい客層を開拓しようとするには過去のキャラを引きずり過ぎていて肝心の骨格が不明確になったような感があり、「アニメゴジラ三部作」の動員低迷を見る限り、そこに何か新たな魅力を感じた人は少なかったと言うことだろう。 そもそも一般客で「ゴジラ」に「本格的なSF」を求めている人がどれだけいるのか? SFにすることでこれまで見たこともないようなもの凄い世界観が生み出せれば良かったのかもしれないが、三部作を見る限り、特に技術面でも発想面でも観客に衝撃を与えるほどの世界観は提示できなかったような気がする。 リアルタッチの3DCG作品特有のキャラクターの没個性と言うか魅力の薄さ、感情移入のしにくさも解消されていないし、怪獣側の魅力も乏しかったと思う。 そもそも実写よりは表現の幅が広いはずのアニメなのに、舞台が三部作とも富士山麓のジャングルの中と宇宙船の中だけと言う、予算が乏しかった「チャンピオン祭り」の頃のような限定された設定ではスケールの大きな話になるはずもなく、さらに「文明対自然」と言う怪獣映画のベースに忠実だった「シン・ゴジラ」に対し、その文明が消え去った後を舞台にした「アニメゴジラ」に根本的な対立要素がないのは当然なことで、どう言う結末になるにせよ、そこに「怪獣映画的カタルシス」は望むべくもなかったと思う。 特に「怪獣対人間、怪獣対メカ」を表現しようとしていた1部と2部の物足りなさ感は、設定のみならず技術面での限界もあったように思える。 話の面白さだけで言えば、過去のゴジラシリーズだって決して毎回褒められるようなものばかりだったとは言えまい。 それでも過去のゴジラシリーズが一定のマニアや子供を呼べたと言うのは、キャラクターや特撮シーンにある種の子供やマニアを惹き付ける他では得難い魅力があったからだろう。 「アニメゴジラ」にはそうした「他では得難い魅力」があったか? この作品に限らず「日本のリアル3D(2Dレンダリング)系CGアニメ」って相対的に魅力不足なような気がする。 実写ほど情報量が多い訳ではないので何となく描写として物足りなさ感がある上に、2Dアニメほど動きやキャラクターの個性のディフォルメがない事もあり、今ひとつのめり込めない部分があるのだ。 全体的に何となくリアル風なんだけど、圧倒的に魅力&情報力不足…と言うか…、従来の実写特撮と手描き2Dアニメの中間みたいなのに、まだ両者の良い所取りと言うより悪い所取りみたいになっているケースが目立つような気がする。 その技術的弱点を補うのが脚本のはずなんだけど、スクリーンに対応するくらい高画質な画像をレンダリングするには相当時間がかかる上にマシンパワーも必要になり、そうサクサクと動かせる訳ではないので、低予算の実写作品みたいにセリフで説明…みたいな処理にせざるを得ないのではないか? 結果、何故かこの手の作品の脚本は全体的に萎縮気味と言うか、アニメなのに低予算ドラマみたいな雰囲気になりがちで、同じ低予算の実写や2Dアニメよりも魅力がなかったりしがち。 では3作目はどうだったかと言うと、一見「怪獣対怪獣」いわゆる「怪獣バトル」を期待させながら、今回も対戦怪獣がいわゆる怪獣ではないと言う裏をかいた設定になっているためそう言うものを期待していた人にとっては、又しても裏切りに見えたはず。 確か第1部で地球の生態系全てがゴジラ化していると言うような説明があったはずで、これが最終章の「星を喰う者」のギドラを倒す伏線になっているのではないか?「妖星ゴラス」のように地球そのものが怪獣化、つまり文字通り「ゴジラアース」としてギドラに襲いかかるのでは?と言うような壮大な妄想も抱いていたが、驚いたことに最終章ではもうそんな生態系のことなど微塵も触れられていなかった。 ただ個人的には「アニメゴジラ」は従来の怪獣映画とは全く違ったものになるだろうと言う読みがあったので、1部と2部は予想通りと言うか、むしろ良くあるメカアニメに寄せているように感じ、特段新しさも感じなかったが、後半でもっと凄い展開になるのではないかと言う期待感もあったので、それはそれとして受け止められたような気がする。 そしてこの3作目では「バトル性」をほとんど捨て去っているため、むしろ「怪獣映画」からの乖離感が三部作中一番明確になっており、期待していたほどトンデモ展開ではなかったものの、何か一味違ったSFアニメとして、これもそう拒否感はなかったように思う。 ギドラも来年5月にハリウッド版で華々しく登場することが分かっているだけに、この段階でまともな形で出すとも思っていなかったので、想像通りであり失望感はなかった。 ただエンディングはありがちな展開だけに俗っぽさを感じなかったと言えば嘘になるし、「ゴジラの逆襲」以降、ゴジラは決して倒せない、根絶できない…と言う厄介な約束事が出来てしまった以上、その「倒せないものを倒そうとすることだけを目的化した人物」がああなるのは理解出来なくもないのだが、三部作のラストとしてはすかっとしないものであるのは確か。 太平洋戦争のように負け戦が最初から分かっている映画の結末は、負けを受け入れて新たな希望に夢を託すか、負けを受け入れられず自滅するかのどちらかを主人公が選ぶと言う形になりがちだが、「憎しみ、憎悪が怪獣を生んだのかもしれない」と言う暗示があった以上、「自分の内なる憎悪を完全に消滅させるため」「自分のために戦死して行った仲間たちへの償い、自分自身へのけじめ」などがあるようにも思えるが、単純に「現実からの逃避、敗北」のようにも見えなくもない所がすっきりしない要因だろう。 1、2部が力で相手を屈服させようとする単細胞、3部が敗北主義と言うか現実逃避からのカルト依存…では、いかにも一部オタクや思春期辺りの子供への媚が感じられなくもなく、一般の大人の共感は得られにくいのではないか?と言う危惧がないでもない。 ただし、元々ゴジラは子供向けであると言われてしまうと、この三部作も少し背伸びをしたがる10代くらいを対象にしている「子供向け」の範疇なのかもしれない。 とは言え、三部作を通じ、従来の「ゴジラ映画」「怪獣映画」とは全くの別物と言う認識で見れば、それなりに楽しめなくもない作品だったと思うが、「シン・ゴジラ」にしろ、この「アニメゴジラ」にせよ、この手のマニア型?アニメ作家がやたらに饒舌なのは閉口。 言葉で説明しようとしているために何となく底の浅さも露呈しているような気がするし、屁理屈で感動はしないと思うからだ。 |
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼ |
2018年、東宝映像、 虚淵玄ストーリー原案+脚本、静野孔文+瀬下寛之監督作品。 我々は遠い昔から、君たち地球人を監視して来た… ゴジラが現れるより以前、その文明の曙までさかのぼり、我らは連綿と地球人に介入して来た… それほど君たちは興味深い観察対象だったのだ… 故に我らは人類について、君たち自身が知るより多くを知っている… 君たちが本質に置いて群体である事も… 自由意志と呼びうる自立性が実際には希有である事も… 神の言葉は決して人には届かない… 人には人の言葉のみしか通じない… ならば人の身にありながらその口を介して神の導を語る者が必要だ… 故に君たちは英雄を求める… 地位でもなく理性でもなく信念と行動によって次代の精神を担うもの… 人はその統率に心酔し、その言葉の中に真理を探し、その眼差しの先に神を見出す… 全ての人を神の門へ至らしめる必要はない… ただ1人の英雄が道の在処を示すなら、君たちの行列はその後に続くだろう… 私は探していた、待っていた… 人の歴史を総括し、最後の導きを示すもの… そんな英雄が現れるのを… そう…、君を待ちわびていたんだよ… ハルオ… タイトル(黄金色の蠢くパターンを背景に) 生体反応は確認できません…、死んだんでしょうか?とゴジラのデータを調べていた隊員が聞くので、いいや…、体内の電磁波は健在、緩慢にはなったがむしろ大きな波形で安定している…、眠っているだけだ、次の目覚めに備え力を蓄えるためにね…とアダム・ビンデバルト博士(声-梶裕貴)が答える。 結局何だったんでしょうか、ゴジラの存在とは…と隊員が聞くと、思い出してみたまえ、20世紀、どうして怪獣が生まれたか…と博士が問いかけたので、人類の原水爆実験…と隊員が答えると、人間の愚かな行為が怪獣と言う魔物を生んだ…、僕らはそう教わって来た…、でも逆かもしれない…と博士は言う。 逆って?生態系の大きなシステムで考えれば、これまで人類が発明して来た様々なテクノロジーが、自分たちのためではなく、この世に怪獣と言う生命体を生み出すためのものだった…、そう捉える事も出来る…と博士は言う。 人間はゴジラと言う究極の生命を生むための前座に過ぎなかったのではないか?…と博士が指摘するので、ええ!それは…と隊員は絶句する。 我々は遠い昔から、君たち地球人を監視して来た… ゴジラが現れるより以前、その文明の曙までさかのぼり、我らは連綿と地球人に介入して来た… それほど君たちは興味深い観察対象だったのだ… 故に我らは人類について、君たち自身が知るより多くを知っている… 君たちが本質に置いて群体である事も… 自由意志と呼びうる自立性が実際には希有である事も… 神の言葉は決して人には届かない… 人には人の言葉のみしか通じない… ならば人の身にありながらその口を介して神の導を語る者が必要だ… 故に君たちは英雄を求める… 地位でもなく理性でもなく信念と行動によって次代の精神を担うもの… 人はその統率に心酔し、その言葉の中に真理を探し、その眼差しの先に神を見出す… 全ての人を神の門へ至らしめる必要はない… ただ1人の英雄が道の在処を示すなら、君たちの行列はその後に続くだろう… 私は探していた、待っていた… 人の歴史を総括し、最後の導きを示すもの… そんな英雄が現れるのを… そう…、君を待ちわびていたんだよ… ハルオ… タイトル(黄金色の蠢くパターンを背景に) 生体反応は確認できません…、死んだんでしょうか?とゴジラのデータを調べていた隊員が聞くので、いいや…、体内の電磁波を検査に緩慢にはなったがむしろ大きな波形で安定している…、眠っているだけだ、次の目覚めに備え力を蓄えるためにね…とアダム・ビンデバルト博士(声-梶裕貴)が答える。 結局何だったんでしょうか、ゴジラの存在とは…と隊員が聞くと、思い出してみたまえ、20世紀、どうして怪獣が生まれたか…と博士が問いかけたので、人類の原水爆実験…と隊員が答えると、人間の愚かな行為が怪獣と言う魔物を生んだ…、僕らはそう教わって来た…、でも逆かもしれない…と博士は言う。 逆って?生態系の大きなシステムで考えれば、これまで人類が発明して来た様々なテクノロジーが、自分たちのためではなく、この世に怪獣と言う生命体を生み出すためのものだった…、そう捉える事も出来る…と博士は言う。 人間はゴジラと言う究極の生命を生むための前座に過ぎなかったのではないか?…と博士が指摘するので、ええ!それは…と隊員は絶句する。 間違ってもサカキ大尉の前ではそんな事は!と隊員は立ち去りかけた博士に注意すると、僕だって人間の端くれとして認めたくはないけどね…マーティン博士は振り向いて答える。 地球の大圏街に大気圏外に留まっていた“アラトラム号”の中では、メカゴジラシティでの会話記録を乗組員たちが聞いていた。 そも怪獣とは、ゴジラとは…、人の手で決して倒せないから怪獣なのだ… 人智を超えた者に近づく事は既に人の行いの範疇にはない! ああ故に、ゴジラを倒すと決めたその時から君は人ならざる者を志していたのだ! ハルオ! (ガルグの声) くそっ!俺は! (サカキ大尉の声) 勝利するなら覚悟しろ!人を超え、ゴジラを超えたその果てに至るぞ! (ガルグの声) うおおお! (サカキ大尉の叫び声) この通話を最後にメカゴジラシティは沈黙、ゴジラは再び休眠状態に入りました…と女性通信員が告げる。 その通話記録を聞いていたビルサルドのハルエル・ドルド(声-中井和哉)は、何と言う裏切りだ!後一歩の所で!サカキ大尉は極刑に処すべきだ!とテーブルに拳を打ち付け激高する。 奴が錯乱したばかりに我々はゴジラを倒す唯一無二のチャンスを失った! ゴジラが倒れた後はどうだった?あの都市規模のナノマシンは一体地球環境に何をしでかす事になったと?とタケシ・J・ハマモト(声-山本兼平)が聞くと、無論、新たな繁栄の時代が待っていた…ビルサルドの究極の英知に導かれた未来が…、それをあの男はただ1個人の心情で…とドルドが答えたので、その言葉そっくりそのままお返ししようとハマモトは不愉快そうに言う。 機械と融合した化物に成り果てて繁栄だと!それこそがあなた1個人の心情でなくて何なのだ!とハマモトが反論したので、何だと!貴様まで榊と同じ妄言を!とドルドも興奮する。 船長!メカゴジラシティの統括者、ムルエル・ガルグの行動は明確な叛乱行為です!サカキ大尉はこれを未然の防いだ者としてと評価されるべきだ!とハマモトはウンベルト・モーリ船長(声-堀内賢雄)に訴える。 しかしは、戯れ言を抜かすな、地球人!とドルドはテーブルに両手を叩き付けて立ち上がる。 一体貴様らは誰の助けを借りて今日まで生きながらえて来たつもりだ!とドルドが迫ると、援助を与えたからと言って生殺与奪権まで握っているつもりか!志願していない者までナノメタルに取り込むなどどんな弁解も通用せんぞ!とハマモトは言い返す。 ゴジラを倒す上で必然の対処だった…、その程度の状況判断が何故出来ん!とドルドが言い訳する、メカゴジラの状況が露見しただけの事だ!ビルサルドの地球征服兵器だと!とハマモトも譲らない。 我々は共通の敵と戦っていたのではないのか?とドルドは問いかける。 一方フツアの洞窟の中では、ナノメタルに身体を浸食され仮死状態になっていたユウコ・タニを前に、ダメだ、もう手の施しようがない…とマーティン博士が診断していた。 でも心臓が動いている…、生きているんだろう?と付き添っていたハルオ・サカキ(声-宮野真守)が聞くと、ナノメタルの力でな…、恐ろしい技術だ、彼女の身体を浸食した金属は生命維持装置の機能を果たしている…、彼女は生き続けるだろう…、だがそれだけだ…、もう2度と目を覚ます事はない…とマーティン博士は答える。 “アラトラム号”に戻ってもっと整った設備で治療すれば!とハルオは食い下がるが、脳が機能を停止してるんだ…、大尉、もう彼女は…とマーティン博士は言い聞かせる。 そこへやって来たメトフィエス(声-櫻井孝宏)が、ここにいたのかと声をかけて来たので、船の連中は何と?とマーティン博士が聞くと、もめているな、これはしばらく撤収どころではない、サカキ大尉、君の処遇について意見がまっ二つに割れている…とメトフィエスは教える。 ドルドを筆頭にビルサルドの派閥は徹底糾弾をする構えのようだとメトフィエスが言うので、後一歩でゴジラに勝てた…と…とサカキ大尉が呟く、そうだ、君がガルグらビルサルドに協力していればゴジラは倒せたかもしれない…、だがそのためにはタニ曹長を見捨てると言う判断が必要だった、それこそ君も又怪獣に成り果てていただろう…、肉体ではなく心の在り方として…とメトフィエスは指摘する。 サカキ大尉は持ち前の人間性故にゴジラに勝てなかった…と言う訳か…とマーティン博士が言う。 人である事を捨てなければ怪獣は倒せないと言うガルグの主張は結果として逆説的論証となった訳だな…とマーティン博士は続ける。 するとメトフィエスは私はそうは思わない、ハルオが人間としての在り方に拘ったが故に、ビルサルドによる新たなゴジラの誕生が阻まれたのだと反論する。 そんな中、ハルオが、何故俺だけが助かって…ユウコが…!と嘆くので、それはだな…とマーティン博士が声をかけようとしたとき、捨て石だよ!大尉、そこに意味があるとは思わないか?とアダム・ビンデバルト少尉(声-梶裕貴)が話しかけて来たので、何だって?とハルオは戸惑う。 ビルサルドは神の背を向けて拷問の道を歩んだ…、奴らにそそのかされたユウコも死んだ…、罰が下されたんだ!とアダムが言うのでハルオは驚き、怒りの表情でアダムにつかみ掛かるが、アダムはあなただけが何かによって守られ生き延びた!そして俺たちを救ってくれた!これはきっと恩寵だ!あなたの選択こそが正しいと言う啓示なんだ!と言い張る。 お前らは…と呆れたようにハルオが呟くと、みんな今回の事で覚ったのだ、大いなる神の意思を…とメトフィエスは言う。 今までずっと真剣に考えて来なかった…、だがもう俺は疑ったりしない!神は俺たちを見守っているんだ、大尉!ゴジラに抗う俺たちの祈りを!とアダムとその仲間たちは言う。 あっけにとられたハルオだったが、みんな部屋を出て行った後も、1人ユウコが寝ているベッドの横に跪き、ユウコ…と呟いていた。 (回想)ガルグが、勝利するなら覚悟しろ!人を超え、ゴジラを超えたその果てに至ると!と言っていた事を思い出す。 (回想明け)俺には…、無理だ!とハルオは吐き捨てる。 その頃、洞窟のある部屋に近づいたメトフィエスに、部屋にいたマイナ(声-上田麗奈)が、ここフツアの神いる所、入る事許しがいる…と声をかけて来たので、ああそうだったね、すまない、道に迷ったようだ…とメトフィエスは詫び、戻って行く。 一方外に横たわったバルチャーを前に、結局無事に回収できたのはこのバルチャーだけですね…と隊員が言うと、だがコントロールユニットがやられた時の緊急停止信号を受けたのはコマンドがロックされてる、再起動しようにも電力すら受けつけんとマーティン博士は言う。 ナノメタル自体が機能を凍結されているんですか?と隊員が聞くと、ベルベたちがどうやってナノメタルをリブートしたのか最後まで共有してくれなかったからな…、解析しようにもメカゴジラシティの残骸は極度の高熱で組成が崩壊してしまっている…、もうお手上げだよ…とマーティン博士は無念がる。 洞窟の広場では、メトフィエスと集まった上陸隊の隊員たちが、1人ずつメカゴジラシティでの戦いでの不思議な体験談を仲間たちに披露していた。 俺とソホロフはほとんど同時にナノメタルに捕まった…、あいつが飲み込まれるのは本当に一瞬だった…、でも俺は腕のこの部分に浴びたんだ…、でも何でもない、ソホロフはダメだったのに…俺はあっさり振り払う事が出来た!説明つかないよな?と問いかけると、聞いていた仲間たちがざわめきだす。 するとメトフィエスが、ええ、紛れもない奇跡の証しですとその話し手に同意する。 君もサカキ大尉と同様に祝福があったと言う事です…とメトフィエスが話している様子を、ハルオは崖の上から遠目に見ていた。 その時、サカキ大尉、ちょっと良いかね?とマーティン博士が声をかけて来る。 確かに逃げ後れてナノメタルに接触したのに、浸食されなかった連中はいるがね…とマーティン博士は言うので、そうなんですか?とハルオが歩きながら聞くと、彼らには明確な共通点がある…、奇跡が聞いて呆れるよ…と博士は歩きながらメトフィエスの説明を否定する。 全員が全員メカゴジラシティでは体調不良を訴えて私の診察を受けていた面々だ…、大尉、君もそうだったね?とマーティン博士はハルオに聞く。 じゃあ共通点と言うのは…とハルオが聞くと、皆フツアの村で治療を受けていた事だ…と博士は言う。 おそらくフツアの治療手段にナノメタルの浸食を阻む抗体のような成分が含まれているんだろう…と言うので、そこまで原因が確かなら何でみんなに教えてやらない?とハルオが立ち止まって問いかけると、言える空気だと思うかね?と博士は振り返って聞き返す。 冗談じゃない、不信心だと吊るされるのがオチだ、今や生き残りの大半がエフシフのカルトに宗旨替えしている…、こんな逃げ場のない環境でマイノリティになりたくはないよと博士は打ち明ける。 けっ…とハルオが唇を噛み締めた時、したの広場から坂道を上がって来た隊員たちと出くわす。 振り返れば日常のそこかしこに奇跡はあったんです…、今となっては何も見えていなかったんだ…などと彼らは話していた。 では医薬品に関しては配給を制限するが良いかね、サカキ大尉?とマーティン博士は近づいて来た仲間たちをごまかすために話題を変えて来る。 ハルオも、ああ、それで良い…と横を通り過ぎるメトフィエスの耳を気にして博士の会話に調子を合わせるが、通り過ぎかけたメトフィエスに、メトフィエス、ちょっと良いか?と呼び止める。 歩きながらで構わないかね?と聞いて来たメトフィエスに、個人的な話なんだとハルオは答える。 するとメトフィエスは、先に行っていてくれたまえと信者化した隊員たちに言い聞かせ自分だけ逆方向へ歩いて来る。 ハルオも後を追い、人気のない通路部分に来た時、それで話と言うのは?とメトフィエスが聞いて来たので、俺たちがナノメタルから守られたのは奇跡なんかじゃない、フツアの治療で抗体が出来ていたからだとハルオは明かす。 するとメトフィエスは、ああ、そうだろうとも…とあっさり認めたので、知っていたのか…と立ち止まったハルオは絶句する。 知っていて、その上でみんなを騙してるのか!とハルオが怒って詰め寄ると、地球人の価値観では不誠実な態度と思うかもしれないが何分状況が状況だ、手段を選んではいられない…と立ち止まったメトフィエスは答える。 メトフィエス…、お前…とハルオが又立ち止まると、何故と問うならば答えよう…、ゴジラと再び戦うためだ、次なる戦いに備えて皆の心を1つにしなくては…とメトフィエスはまた立ち止まって答える。 だがゴジラにはもう…勝てない…とハルオが吐露すると、それは君の本心かね?より正確な言葉で聞かせて欲しい…、君はゴジラを倒す手段がないのか、それともゴジラを倒す覚悟を見失ったのか?前者であるならさっきの言葉を撤回して良い、手段は私が用意する…とメトフィエスが言うので、あんたの崇める神様がゴジラを倒してくれるとでも?とハルオは聞き返す。 その通りだとメトフィエスが答えたのでハルオは驚く。 極度に進化した科学は魔法と区別がつかない…と言うのは地球の科学者の言葉だったね?ならばこう考えた事はないか?神についてオカルトや迷信の類いと同列に語るのはそもそも君たちの科学が神を理解できるほど成熟していないからだと…とメトフィエスは言うので、ハルオは言葉を失う。 我々にとって神の存在とは数学的帰結だ…、君たちが今だに至らないゲマトリア演算と言うテクノロジーが我々に高次元存在との接触に成功させたのだ…とメトフィエスは続けるので、本気で言ってるのか?とハルオが問いかけると、そうとも…とメトフィエスは答える。 地球人が勇気と戦略を、そしてビルサルドが工学技術に頼ったように、我々エフシフは神に頼ってゴジラを打倒できる!と言うメトフィエスに、バカにするな!とハルオは言い返す。 何故今になって?そんなにご大層な神様が全部解決してくれるなら、今までの犠牲は何だった?みんな無駄死にだったとでも?!とハルオは責める。 するとメトフィエスは、待つしかなかったのだ…、時が満ちるのを…と答える。 今君の胸を焦がすその怒り…、ゴジラへ向けて募らせた憎しみはいつしか祈りとなって神に届くだろう…、だから私は待っている…、君の中で神を疑う心よりもゴジラを憎む思いが勝るその時を… 俺が宗旨替えすればゴジラを倒して差し上げますってか?笑わせるな!そうやってアダムたちも言いくるめたのかよ!とハルオが怒って問いかけると、君だけだよハルオ、この星に神を招くなら君こそが祭壇に立つに相応しい…とメトフィエスが言うので、何故俺が?とハルオが戸惑うと、誰よりも気高く、誇り高く、人の在り方を信じて疑わなかったのは君だ!だから私は君を見出した!真にゴジラを憎む者として神の前に立つべき英雄…、以前にもそう言ったな?ハルオ!とメトフィエスは答える。 耐えきれなくなったハルオはその場から去って行く。 アラトラム、地球の対軌道を維持、勇退路次官のボイコットにより重力コイルの稼働効率が落ちていますとの報告を聞いた、再度の地球圏離脱も検討せねばならんと言う矢先に…とモーリ船長が嘆くと、船長、もう猶予はありません、サカキ大尉の一件について対処の方針を固めませんと…とハマモトが急かす。 う〜ん…とモーリ船長が考え込んだ時、船内照明がおかしくなったので、どうした?と聞いたその時、モーリ船長!及び中央委員会のメンバーに告ぐ!とモニターから呼び出したのはベルベだった。 諸君らの侮辱的態度に対し、我々ビルサルドはこれより実力行使を持って断固たる異議を唱える物である、メカゴジラシティにおいて殉職した同胞への弔意とともに、サカキ大尉への責任追及を確約せよ!この要求が遂げられるまで我々はアラトラム号の全電力を遮断する!とベルベは宣言し、ビルサルド軍は宇宙船内の人類に銃を向けクーデターを開始する。 ドルドめ…ここまでやるか!とモーリ船長は頭を抱える。 元より少数派のビルサルドにとってメカゴジラの一件を正当化できるかどうかは死活問題ですからな…とハマモトが指摘し、予備バッテリーは?と操縦室に聞く。 健在です、しかし居住区の循環システムを維持できるのは48時間が限度ですと女性パイロットが回答する。 直ちに保安部隊を召集!動力室奪還のための作戦立案に入る!とハマモトが命じると、待て!更に事を荒立てる気か?とモーリ船長が制しようとすると、これはれっきとした叛乱です!もはやサカキ大尉1人の問題ではない!このような恫喝に屈したら我々は今後ビルサルドに一切の主導権を譲り渡す事になる!とハマモトは言い返してきたので、しかし…と言うだけで絶句する。 ハルオを探していたマーティン博士が、やっぱりここだったかと言いながら近づいて来たので、メトフィエスはおかしくなった、まるで話が通じない…とハルオは答える。 まあ宗教家としては新しい在り方に立ち戻ったとも言えるんだろうがね、何せ布教には絶好のチャンスだ、みんなメカゴジラでさえ勝てないと分かって心まで折れた…、その絶望から逃れるにはもう神にすがるくらいしかない…とマーティン博士は解説する。 放っておいて良いんだろうか?とハルオが聞くと、良いか悪いかはどうあれ、君にだってもう発言権はないだろう?と博士は言う。 どう言う意味です?とハルオが問いかけると、巧みなもんだ、メトフィエスはメカゴジラシティの一件を君の責任問題ではなく宗教的な奇跡にすり替えた…、結果、サカキ大尉は信頼すべきリーダーから祭壇の飾り物に立場を変えた訳だ…とマーティン博士は言う。 皆君の事はありがたく拝むだけで意見など求めてはいない…、耳を傾けるのはメトフィエスの言葉だけさ、主導権は完全に彼の物だとマーティン博士は指摘する それはそうと、俺に何か?とハルオが聞くと、ああそうだった、ちょっと来てくれと博士は頼む。 今ここに新たななる祈りの祭壇が設けられた、さあ神を讃えよう!ただ祈りを捧げ、奇跡を信じよう!献身の先に我らの神は救済と祝福を与えて下さる…、ガルビトリウムの導きが我らと共にあらん事を…とメトフィエスは集まったアダムら信徒化した隊員たちを前に説教する。 その後、外で1人佇むメトフィエスは、謎のメダルのような物を掌に乗せて見つめていた。 外にハルオを連れ出したマーティン博士は、実はさっき母船から最新の連絡があってね…、ビルサルドがアムトラム号の動力室を乗っ取ったそうだと話す。 何だと!とハルオが驚くと、君の処刑が決まるまで船内の電力を遮断するとさ…と博士は教える。 それでだが、状況を沈静化させる一番の早道は君にいなくなってもらう事だと思うのさ…、体裁としては脱走…と言う事になるかな?大変に不本意だとは思うがね、君の安全と事態の沈静化を両立させるにはこれしかない、いっそ君がモーリ船長たちに擁護しきれないほど軍規を逸脱すれば、ドルドたちの交渉も何とか妥協点を見つけられるかもしれないなどと博士が言うので、だがそんな事じゃ…とハルオが反論しかけると、分かってるよ、根本的な解決にはほど遠い、だが、みんなが頭を冷やすまでの時間稼ぎは出来ると博士は言う。 ミアナ(声-小澤亜李)!何故?とハルオが物陰から現れた少女に気付いて驚くと、この子が協力してくれる、私の説明をどれだけ理解してくれているのかは分からんが、とマーティン博士は言う。 ハルオ…、隠す、安全…とミアナは言うので、あ、うん…、ま、十分じゃないかなと博士は答える。 大尉、ここに留まってもメトフィエスに良いように利用されるだけだ、時には何にもしないと言う選択が最善の場合もある、ここは辛抱のしどころだ…と博士はハルオに言い聞かせる。 ハルオは驚きながらも、分かったと答えるしかなかった。 ミアナの部屋に隠れる事になったハルオに、ハルオ?苦しい、哀しい、何故?とミアナが聞いて来たので、俺はゴジラを倒したかった…、倒す手段も目の前にあった…、だがそれを選べなかった…、かつて人類はゴジラに負けた…、生き延びた君たちは文明を失い、逃げ出した俺たちはもっと大切なものを見失った…とハルオは明かす。 だからもう一度ゴジラに立ち向かう勇気さえ持てばきっと何かを取り戻せると思ってたんだ…、なのに結局人間は…、お互いに争い、現実から目を背け、俺にはもう身の置き場すらない…、何のためにここまで…とハルオが嘆くと、あなたも私も負けてない…、勝ってここにいる…とハルオの頭に手を添えたミアナが言うので、ハルオは慰めてくれているのか?と苦笑する。 しかしミアナが首を横に振り、あなた負けたがっていた、ずっと…と言い出す。 じゃあ君にとっての勝ち負けって何だ?とハルオが聞くと、勝つ事…生き残る、命繋ぐ、負けは死ぬ事、消え去る事、ゴジラ挑む事…、ハルオ、あなたは勝つべき!と言いながらミアナは立ち上がる。 これからもずっと…、私たちと一緒に…と言いながら、ミアナが着ていた服を脱ぎだしたので、何を!とハルオが戸惑うと、私出来る、命繋ぐ…と言いながらミアナは座っているハルオに近づいて来る。 何故君がそんな事を?とハルオが聞くと、客人を受け止め知り尽くす…私たちの役目…と言いながらミアナはハルオの機密服を脱がそうとするので、その手を掴み、良いんだ、そこまでしなくても…とハルオは止める。 休ませてくれないか?ここなら安心して眠れそうなんだ…とハルオは言う。 その頃、メトフィエスは祭壇に謎のメダルのような物を置き、何事かを念じ始める。 部屋を出たミアナは洞窟内に何かを感じて驚く。 “アラトラム号”では、現在の予備電力残43%、一部の船内循環システムの稼働不良により予測計算よりエネルギー消費が拡大、船内にも動揺が広がっていますと女性オペレーターが報告する。 事態がなかなか収拾されない中、ビルサルドの奴ら!上層部の奴ら何やってるんだ!と乗員たちは不満を募らせていた。 そんな中宗教種族エクシフの大司教エンダルフ(声-山路和弘)が一部信徒と化した船員たちに、闇など恐れるには及びません、心の灯火を持って照らすのです!信仰が示す道は目を閉じたままでも進めます、迷わず恐れず、ただ祈るのです!安らぎはそこにある…と呼びかけていた。 仕儀は一通り整いましてございます、我らが巫女よ…とエンダルフがテレパシーで送って来ると、宜しい、こちらの儀式も後は仕上げを残すのみだ…とメトフィエスはフツアの洞窟内の祭壇の前で答える。 辰星の並びは啓示の通り、だが予定外の企ても多うございました、僭越ながら余計な回り道もあったのでは…とエンダルフが聞いて来ると、AIクオーツを完璧な形に仕上げるには、さらにもう一手を詰める必要があるとメトフィエスがテレパシーで送る。 たかが1人の地球人を追い込むために何故そこまで固執なさいますか?とエンダルフが聞いてきたので、彼にはその価値があるのだ、真の栄光へと導かれるべき資格がな…とメトフィエスはねテレパシーを送り返す。 そのために神秘の名をお告げになったのですか?エフシフあらざる異性の民に?とエンダルフは問うて来る。 そのテレパシー通信の間にハルオは眠りについていたし、ミアナは怪しいテレパシーを感じ、祭壇の部屋に近づいていた。 時がくれば彼も又魂を捧げてその名を讃える事だろう…とメトフィエスがテレパシーで伝えると、では御心のままに…、ガルビトリウムの導きは御身と共にありますが故に…とエンダルフは答える。 神を讃えよ、全ては献身の道へと続く…とメトフィエスが祭壇の前で祈っていた時、ミアナは入り口付近でその様子を観察する。 そんな所に隠れていないで、そろそろ出て来たらどうかね?とテレパシー通信と祈りを終えたメトフィエスは振り返って入り口付近に隠れていたミアナに呼びかける。 その頃、部屋で寝ていたハルオはふと目覚め、あの時、俺は治療のために服を脱がされていた…と過去の事を思い返していた。 ミアナは既に一度機密服の解除方法を見つけていたはずなのに…、君は…、マイナ!とハルオは双子を取り違えていた事に気付く。 そうか…、君だったのか…と起き上がったハルオは目の前にいたマイナを見つめる。 マイナは又服を脱ぎ、ハルオにしなだれかかって来たので、何故君が…とハルオは戸惑う。 怖いから…、あなた負けそう…とマイナは言う。 怖いから…、あなた負けそう…、消え去りそう…怖い…、だから勝たせる…、命を繋ぐ…とマイナは言いながらハルオに抱きついて来る。 そうか…、俺も怖いよ…と言いながらハルオはマイナを抱きしめる。 さあ出て来たまえとメトフィエスに呼ばれ姿を現した本当のミアナは、あなた、最初から私たちの会話が聞こえていたんでしょう?声に頼らない、思念の言葉を…とテレパシーで問いかける。 いつから気付いていたのかね?とメトフィエスがテレパシーで聞くと、あなただけがずっと静かだったから…、私たちの前ではいつも呟きさえ漏らさず黙っていた…とミアナもテレパシーで答える。 心だけで話合うのに慣れていないと出来る事じゃない…とミアナは指摘する。 それを聞いたメトフィエスは、ふん、退行種族と侮り過ぎたか…と反省し、思いのほか精密な思念を使いこなしていると感心すると、何故その力を秘密にしているの?とミアナが問いかけると、もちろん信頼関係のためさ、他の種族にとってテレパス能力は脅威だ、警戒されては敵わない…とメトフィエスは答える。 油断させてただ一方的に心を覗き見して来たのね?とミアナは責める。 地球人やビルサルドについてはわざわざ思念を読むまでもない、テレパスを知らない種族は心の秘匿に無頓着だからね…と語りかけながらメトフィエスはミアナに近づいて来る。 声や表情、立ち居振る舞い、全てに思考と感情がむき出しだ、ただ眺めているだけで何もかも見通せる…とメトフィエスは言う。 あなたは一体何を望むの?とミアナが問うと、迷える者たちに導きを…、救済と祝福を…とメトフィエスが答えるので、では何を祝うの?何をもって福音とするの?とミアナが問いかけると、メトフィエスは答えず近づく。 それを秘密にしたままで皆をどこに導くつもり?とミアナは近づいて来たメトフィエスに動じず聞く。 それを告げる以上は君も又捧げ者の一員になってもらうしかない!とメトフィエスが迫ったので、さすがにミアナは身の危険を感じ、逃げ出そうとするが、その両手を掴んだメトフィエスは、さあ伏して拝むが良い、黄金の終焉を…と耳元で囁く。 ミアナの目には黄金の光の中から浮き上がる三つ首の謎のシルエットが浮かんだので怯えて悲鳴をあげる。 眠っていたゴジラの目がかすかに動き始める。 祭壇の部屋にやって来たハルオが何をしている?と聞くと、君をもてなす支度をしていた、もうすぐ宴が始まる…とメトフィエスは言う。 宴?とハルオが聞くと、そう、この惑星の全ての命を招いて催す祝福の祭典だ、君は主賓の1人だよと言いながらメトフィエスは振り返る。 俺が?とハルオが呟くと、さあ飲みたまえ、もし仮にこの地球から全ての人類が消え失せたとして後に残されたゴジラははたしてゴジラたりえるのだろうか?とメトフィエスは火の上にかけられた瓶から椀に注がれた飲み物を差し出し問いかける。 椀の飲み物を飲み干したハルオは、何だこれ…と戸惑う。 否、それはもはや巨大なだけの生物でしかない…、その力を恐れられ、その命を憎まれ呪われてこそ怪獣なのだ…、だからこそ、君と言う存在が要になるのさてンとメトフィエスが話している間、飲み物が入っている瓶に近づいたハルオは、その中にミアナの頭部が覗いていることに気づく。 ゴジラをゴジラ足らしめるもの…、それは君の憎しみなんだ…とメトフィエスは言う。 瓶の中に沈められたミアナは眼を見開き、口を開いて何かを告げようとしたので、ハルオは悲鳴をあげる。 次の瞬間、ハルオは悪夢から目覚める。 横で寝ていたマイナも、ミアナ!と呼びかけて目覚めたので、マイナ…と言いながら手を添えてやる。 今、妹、声がした…、ギドラが…とマイナが言うのでハルオは驚き、メトフィエス!と呟く。 祭壇の部屋では、瓶の中の液体を注いだ椀を、メトフィエスが集まった信徒たちにふるまっていた。 集まった信徒の隊員たちが一斉に椀の中の液体を飲み干す。 ご覧の通り、鍋は空になりました…とメトフィエスが瓶の前で言い出す。 だが中にあったスープはただ消え去った訳ではない…、皆さんの血肉となり一体となった…、滅びでも死でもなく、ただ鍋の中のスープと言う在り方を捨てただけの事です、より偉大なる者と合一し、新たな存在へと転化する、これこそがすなわち献身です点とメトフィエスは説く。 ただし我々はスープと違い、何者に対して身を捧げるのかを自ら選ぶ事が出来る…、後は思索あるのみです…とメトフィエスは言う。 同じ頃“アラトラム号”の中では、より望ましき献身とは何か?例えばリーランド大佐やサカキ大尉は人類の勝利と言う大義に身を捧げた、これは尊い決断であったかに思えるが、結果が伴わなかった…人の定める大義だけではついにゴジラは倒しえなかったのですから…とエンダルフが信徒化した隊員たちを前に話しかけていた。 では勝利に至る正しき道は…と祭壇の前にいたメトフィエスが問いかけると、神だ!神ならゴジラを倒せる!とアダムが発言する。 その通り、ゴジラをも凌駕して強大なる者、至高の存在たる神!これに献身し、一体となるより他に勝利の道筋はあり得ません…とメトフィエスは説く。 神との合一、それは個としての人の命の棄却…、それでもなお皆さんは神を呼びますか?とエンダルフも“アラトラム号”の中で説いていた。 自らを供物に差し出しますか? 祈ろう!神の名を呼ぼう!そしてゴジラに死を!我らに勝利を!とアダムが隊員たちに呼びかけ、集まった全員がおお!と応じる。 宜しい…、ならば今ここに秘めたる名前を告げましょう…とメトフィエスは祭壇に向き直り、メダルのような物を緑色に発光するAIクオーツの上に乗せる。 そのAIクオーツを両手にもって捧げたメトフィエスは、来れ金色の王、その名はギドラ!と呼びかける。 “アラトラム号”の中でもエンダルフがAIクオーツを捧げ、終焉の翼!と呼びかけると、集まった隊員たちが一斉に、来れギドラ!終焉の翼!と声を上げる。 大いなるギドラ!来れ、終焉の翼!とフツアの洞窟内でも、隊員たちが連呼していた。 来れ、ギドラよ!我らに栄えある終焉を!血肉を糧に!究極の勝利を!とメトフィエスが呼びかける。 ギドラよ、我らに勝利を!とフツアの洞窟内と“アラトラム号”の信徒たちは呼びかける。 来れギドラよ、血肉を糧に究極の勝利を!とメトフィエスとエンダルフの呼びかけも呼応する。 するとメトフィエスが持っていたAIクオーツが緑色から金色に輝きを変え、隊員たちが目を閉じて祈りだすと、光の中から三つ首流のようなシルエットが出て来る。 そのシルエットが次々に祈る隊員たちの頭や腕を噛みちぎって行くのを、途中で目を開けたアダムは目撃し驚く。 周囲の隊員たちが次々と倒れて行き、最後には金色の光の中から三つ首流のシルエットが自分の方にも迫って来たのでアダムは恐怖の悲鳴をあげる。 “アラトラム号”でも、来れギドラよ、我らに栄光ある終焉を!とエンダルフが呼びかけ、大いなるギドラ、終焉の翼!と隊員たちが呼応していたが、そんな中、宇宙の彼方で何かが輝く。 その空間は円形に開きその奥から何かが近づいて来る。 “アラトラム号”では、本船直近にて歪曲重力波を検知!とのオペレーターからの報告を受けたモーリ船長とハマモトが、何!ゴジラとは別の物か?と聞き返すと、時空間隔率の破綻を確認、これは!得意点です!と言うので、バカな!自然発生の特異点だと!あり得んだろうが!モニターからは何の変化もないぞ!と驚いていた。 外部モニターから信号が120秒前からループしています!こんな!説明がつきません!とオペレーターたちも動揺する。 さっきまで何の異常もなかったのに!外部モニターのゲマトリア演算が見た事もない光度を出力していています、制御できません! 誰かハッキングでも仕掛けているのか?とハマモトが狼狽する中、来れ!ギドラよ!我らに栄えある終焉を!時は来れり!とエンダルフは窓から宇宙に向かって呼びかける。 黄金のリングの中央の暗闇の中に光が発生する。 その光の中から何か黄金色の物が出現する。 特異点の重力波が拡大!何なのこれ!重力波の輪郭そのものが変わってる!とオペレーターが狼狽するので、バカ者!もっと明確な報告をしろ!とハマモトが叱ると、訳が分からないんです、こちらに接近しています!とオペレーターは混乱するばかり。 もっとまともな解析は出来んのか!とハマモトが怒鳴る中、特異点の中から金色の龍の首のような者が伸びて来る。 解析プログラムが応答を拒否! お前ら一体何をした?と電力室を占拠していたベルベが通信して来たので、貴様の仕業ではないのか?とハマモトが反論すると、違う!一体何が起きている!とベルベたちも異常な現象におののく。 金色の龍の首が“アラトラム号”に巻き付いて来る。 これはハッキングではありません!とオペレーターが叫ぶ。 一体どこに連れて行かれるの?“アラトラム号”周囲にあり得ない重力波です! 急速回避!とハマモトが命じるが、やってます!やってますが通じません!とオペレーター。 ギドラに囲まれた“アラトラム号”は崩壊して行く。 そんな中、エンダルフは狂ったように笑っていた。 私たち、もう死んでるって言うの? ギドラの頭がモーリ船長に突っ込んで来る。 何故?と呟くモーリ船長。 “アラトラム号”が大爆発を起こす。 アラトラム!アラトラム応答せよ!何があった!地球上で計器異常を見ていたマーティン博士が呼びかけるが応答はない。 博士、あらゆる“アラトラム号”の信号がキャッチできません!と一緒に計器を見ていた隊員が報告する。 まさかゴジラの攻撃を受けて!と隊員がおののくと、いや、地上からの攻撃は検知していないとマーティン博士は冷静に分析する。 大気から黄金の光が地上に降り注ぎ始めた中、ゴジラの目がゆっくり開いて行く。 ハルオも、フツアの住人たちが右往左往する様子を見て、何だ?何が起こっているんだ?と狼狽する。 みんなあそこ行くと、一緒にいたマイナが見上げたのは崖の上の見張り台だった。 ハルオは、行こう!と呼びかけ、マイナの手を引いてそこに向かう。 通してくれ!と先にいたフツアの住人たちを押し分けながら見張り台にやって来たマーティン博士は、天空の雲が3ヶ所渦を巻いている様を見て、これは!一体何が起ころうとしているんだ?と驚く。 そんな中、メトフィエスはとある場所で1人祈りを続けていた。 凄い重力場だ!と計器の表示を読んでいたマーティン博士の所に駆けつけたハルオは、何が起こっているんだ?と聞くが、その背後にいたマイナが、ハルオ!あそこから聞こえる!ギドラと…と外の一画を指差して教える。 そこには灯火のような物が見えたので、あそこに何が?とハルオは考える。 計器でその場所を調べた隊員は、あの高台の付近にかすかに生体反応がありますと言う。 それを聞いたハルオは、俺が行って来る、君はここにいるんだとマイナに命じたので、でも…とマイナは言い返し、何の話だ?説明しろ!とマーティン博士も聞いて来る。 メトフィエスが何か企んでいるとハルオが教えると、企む?この状況の中で何を?と博士は戸惑うが、まさかこれ自体が!と気付く。 それを確かめる!とハルオは言う。 三つの渦巻き状の雲の1つから雷光が地上に降り注ぎ、ゴジラがゆっくり動き出す。 ハルオが高台に向かって走り出した中、博士、ゴジラの心音をキャッチ!富士山麓を出てこちらへ向かっています!と隊員が報告する。 こんな時にゴジラまで…と博士はうろたえる。 異常重力場にも上昇気流が!積乱雲を発生させています!こんな現象を地球上で観測するなんて!と隊員がおののく中、原因は一体何なんだ?アラトラムとの通信途絶と何か関係が?と博士も考え込む。 強力なダウンバースト、こんな所にいたのでは危険なのでは?と隊員は警告するが、ゴジラも近づいているんだぞ、放っておけるか!は博士は叱る。 その時隊員が、見て下さい!雲の中に何かが!と指摘する。 雲の渦巻きの中から巨大な黒い球体のような物がせり出していた。 ガスフロント?いや違うな…、あ、もう1つ出たぞ!とマーティン博士は言う。 もう1つの渦巻き状の雲の中から同じような巨大な黒い球体が降りて来たのだ。 あっちにも!一体何だ?結局、3つの渦巻き状の雲の中から3つの巨大な黒い球体が姿を見せる。 ハルオは祭壇がある高台の場所に駆けつけるが、そこにあった瓶の中は何か液体が入っていたらしいが既に空の状態だった。 マーティン博士は、黒い球体の底の部分から金色の龍の首が伸びて来るのを目撃する。 今度は何なんだ…? 怪獣!と隊員が指摘すると、バカな、あれほどの大きさなら何故センサーが反応しないと博士は反論する。 赤外線、電磁波、全て無反応です!増加する重力波以外は何の数値も拾えません!あそこにはゴジラしかいないんです!と計器を見ながら隊員が教える。 そんなバカな!現にあそこに見えているじゃないか!と博士も自分のハンドセンサーを見ながら言い返す。 こっちもダメです、検査の可能領域を拡大しても何にも反応が出ません!と隊員は言うので、ああ…、どうなってるんだ?と博士は狼狽する。 外にいたハルオも、何だ、あれは?ゴジラまで!とゴジラに近づく黄金の蛇のような光を見て立ち止まる。 ゴジラに向かって来た黄金色のギドラも口を開ける。 何を企んでいるメトフィエス!と叫び更に走り始めるハルオ。 ゴジラの体内電磁波急上昇! まさかあいつとやり合うつもりなのか!とマーティン博士は呟く。 ゴジラは白熱光を吐くが、空中で曲がる。 曲がった?と博士が驚く中、再びゴジラの体内電磁波上昇!と隊員が叫ぶ。 ジラの体表から発生した青い光が口の前に集まり、それを貫いて青い光線が吐かれるが、ギドラはその光線を屈折させたように、光線は地上に激突する。 見張り台も振動で揺れる。 重力波で熱線をねじ曲げたのか!と博士は推測するが、いや、そんな無茶な!と自ら自説を否定する。 ああ、空間そのものが湾曲している! 今の熱線、こちらの記録だと直進した事になっています、何かに干渉された形跡がまるでない…、機械にはあの怪獣が全く見えてない、我々の目と耳だけがあいつを認識してるんです!と隊員は指摘する。 幻だとでも言うのか!と博士が言い返すが、その時、ギドラがゴジラの右肩に噛み付き、ゴジラが吼える。 ゴジラはギドラの首を掴もうとするが、左手は宙を切る。 それを目撃した隊員は、素通りしている、やっぱり実体がない!と驚く。 ゴジラは噛まれているだろう?と博士は言うが、おかしいです、一方的にしか触れないなんて矛盾じゃないですか!と隊員は混乱する。 そもそも非対称シールドはどうなった?ゴジラには核弾頭も通用しなかったのに…と博士も考え込む。 ゴジラの体内電磁波が急激に低下!と隊員が報告したので、ただ噛み付かれたくらいで何故?と博士は困惑する。 ゴジラの体表には間違いなくシールドが発生しています、でも波形に全く変動がない!攻撃を受けている形跡すらありません!と隊員は言う。 じゃあ何だ?私たちだけが悪い夢でも見ていると言うのか!と博士は苛立つ。 重力場の乱れが拡大しています! その時、残りの2つの黒い球体の下部から新たな2匹のギドラの首が伸びて来る。 な!3体に増えたぞ!と博士が上空を見上げながら言う。 どう言う事だ、やはりセンサーには何も反応がないのか? ゴジラの亜種翼竜セルヴァムが舞う中、下界へ下りて来た細長い3本の金色の蛇のようなギドラがゴジラに迫り、左肩、左足に食らいついて来る。 相変わらずダメです!異常重力場の領域が拡大し続けているだけで、他には何にも反応がありません!と隊員は計器を見ながら答える。 じゃああれは一体何なんだ!と眼前に繰り広げられている戦いを前に博士は叫ぶ。 その時、側にいたマイナが、ギドラ!と言ったので、ギドラ?と博士と隊員は振り返る。 そう…、全てを食らい尽くす…この世ならざるもの…虚空の王…とマイナは言う。 高台に駆けつけたハルオは、メトフィエス!ここで何をしている?と問いかける。 側には、磔にされたミアナが気を失っていた。 生きている…、一体何が起こっているんだ?全てお前の仕業なのか?とハルオが迫ると、悠久の時を超えて受け継ぐ我が使命が今正に果たされんとしている……とメトフィエスは答える。 使命?とハルオが驚くと、この時を待っていた…、君たちとの邂逅も永きに渡る虚空の旅も全てはこの収穫の日のために…、星と言う種から命が芽吹き、人と言う花が文明を咲き誇らせる、その果てに実る果実がゴジラだ…とメトフィエスは言う。 我々エクシフは幾多の星でそのサイクルを見届けて来た…、そして最後に果実を摘み取り食らうもの…、それこそが我らが神!王たるギドラ!黄金の終焉…と言いながら、血で汚れた手で遠くに蠢くギドラを飾りでも掴むように握りしめてみせるメトフィエス。 この宇宙の森羅万象がかのお方への捧げ物として存在する価値を持つ! ギドラはあんたの星を滅ぼした怪獣なのでは?と背後からハルオが問いかけると、かつて我らアフシフの文明は究極の真理の探究の末に自らを供物となし神との合一を遂げて完結した…とメトフィエスは振り返りもせず答える。 供物?とハルオが呟くと、そしてこの祝福をあまねく宇宙へ広げるために我ら一握りの神格が残された…とメトフィエスが言うので、滅ぼされたのか?祝福だと!とハルオは指摘する。 然り!とメトフィエスが答えたので、ゴジラだけでなく俺たちも、この星もろとも全てを滅ぼそうと言うのか!ギドラの力で?とハルオは責める。 終焉を讃えよ、これに勝る祝福はない…とメトフィエスが答えたので、ふざけるな!とハルオは激高する。 その言葉に振り向いたメトフィエスの顔を見たハルオは、メトフィエスの右目がえぐり出され、その下から義眼が覗いているのに気付き驚く。 迷うべからず…ただ運命に身を委ねよ…、ハルオ、君も又心の奥底でそれを望んでいたはず!と呼びかけるメトフィエスに、ふらつきながら手を延ばして近づいたハルオは、ふざけるな…と言いかけるがそのまま気を失ってしまう。 ギドラに絡まれたゴジラは必死に手で追い払おうともがいていたが、その手は虚空を泳ぐだけで、相手を捕まえる事は出来なかった。 体内電磁波が更に低下!ゴジラは間違いなくダメージを受けています!と隊員が報告する。 ゴジラの非対称シールドは間違いなく発動しているのに…、全く攻撃を防げていない?ただ噛み付かれているだけなのに?我々があんなに手こずった三点防御をあっさりと…とマーティン博士は困惑する。 ハルオは不思議な空間の中で横たわっていた。 そこは、AIクオーツの中のようだった。 何故滅亡が祝福だなんて…、隆盛を極め未来も見通せる科学を手に入れた我々の先祖は時を超えて永遠不滅の真理を探し求めた… エクシフの歴史の最も傲慢たる時期だ… そして時の果ての未来を計算し、結論に至ってしまったのだ… 永遠など存在しないと… 宇宙は有限であり、全ては滅びて消えて行く… ならば我らは滅びの先のその果てに安息と栄光を見出すしかない…(とメトフィエスの声が聞こえる) みどりの空間の中を落下していたハルオは、俺はそんな戯れ言を…認めない…と反論しようとする。 それは欺瞞だ、ハルオ!(とメトフィエスの声が聞こえる) 命とは恐怖の連続!そこからの解放と永久の安息は、あらゆる理性にとっての祝福なんだ! 違う…とハルオは抗おうとする。 心の声に耳を傾けろ!向き合うんだ、自らの偽らざる願望と…(とメトフィエスの声が聞こえる) ゴジラの目が見開かれる。 ゴジラの体表温度が急上昇!と見張り台で計器を見ていた隊員が叫ぶ。 メカゴジラシティを焼き払ったあれをやる気か!とマーティン博士はおののく。 渦巻く雲の中の3つの渦巻きの中に浮かんでいた3つの黒い球体から伸びる3匹のギドラの首が金色のコードのように地上のゴジラに絡み付いていたが、そのゴジラは赤く発熱していた。 ゴジラ体表温度更に上昇! この攻撃は相手を捉えられなくても攻撃する事が出来る!と隊員は言う。 最も古い記憶でさえも君は恐怖と絶望の虜だった…と、AIクオーツの中で漂うハルオにメトフィエスが語りかける。 (回想)宇宙港で逃げる最中、地球脱出船“アラトラム号”に乗り込もうと親から手を引かれていた幼いハルオは迫り来るゴジラに怯えていた。 あの時、君も祈ったはずだ、もう嫌だ、何もかも終わった欲しいと… (回想)ハルオの手を引いていたのはメトフィエスだった。 俺は…、でも… 君の人生を培って来たもの…、それも怒りと屈辱… “アラトラム号”の中で、わずかな配給食料をもらうために後ろの大人に小突かれ長い列を並ぶハルオ… そして逃げ場のない閉塞感… だからこそ待ち望んで来たはずだ… いつか全てから解放されるのを… (回想明け)気絶したハルオを抱くメトフィエス ギドラに噛まれたままで咆哮するゴジラ そんな!ゴジラの周辺温度が下がっている!熱を吸い取られている!と計器を見守っていた隊員が叫ぶ。 いや、それどころじゃないぞ!発熱しているのに陽炎も見えない!冷却されているんだ水蒸気は!とマーティン博士も興奮状態だった。 何もないって言うのはどう言う事だ! でもゴジラは間違いなく発熱を続けてます! なら熱は?ただ奪われて消えて行く…、一体どこへ?博士は悩み抜く。 ゴジラ周辺温度も更に低下しています、体表温度も急激に低下しています!ゴジラ体表温度一度はもう華氏32度を割りました!尚も冷却が止まりません!と隊員が報告し続ける。 その時、悩んでいたマーティン博士が何かを思いつき、まさか、別の宇宙から?と言い出す。 この世界の法則が一切通用しない物理の系自体が違う宇宙からの攻撃だと言うのか?と博士が言うので、なら奴はゴジラを倒せるんですか?と隊員が聞くと、冗談じゃないぞ、あれはゴジラどころの脅威じゃない、地球そのものが食い尽くされる!とマーティン博士は明かす。 ハルオ、君は覚えているはずだ… 勇猛果敢に使命を全うした彼らの事を…とメトフィエスは語りかける。 ふとハルオが気付くと、目の前を歩いて行くかつての仲間たちの姿があった。 ああリーランド!とハルオが気付くと、俺は命を捨ててまで戦った…、何故仇を討ってくれない?何故お前はその命を捧げない?と立ち止まった血だらけのエリオット・リーランド(声-小野大輔)が呟く。 止めろ!とハルオは拒否するが、ギドラなら奴を倒せる…とリーランドが言うと、ユウコ!とハルオはもう一人横に立っていたユウコ・タニ(声-花澤香菜)にも気付く。 そうまでして先輩は生き残りたいんですか?あの女たちと一緒に?私をこんな姿にしておきながら…とユウコは責めるように問いかけて来る。 止めてくれ!とハルオがひるみかけていると、多くの人間がゴジラとの戦いで命を散らした…と背後から近づいて来たメトフィエスがハルオに語りかける。 その系譜の最後にいるのが君だ!ハルオ!彼らの声に応え決着をつけるべき時だった…とメトフィエスは迫る。 みんな人類の存続のためにゴジラに立ち向かったんだ…、奴を倒すために…、この星を道連れにしようとした訳じゃない!とハルオは抗う。 現実でのハルオはまだ気を失って入り、メトフィエスの膝の上に抱えられていた。 マーティン博士は、3匹のギドラの首に噛まれていたゴジラが浮いた事に気付く。 そんな!あれだけの大質量が宙に浮くなんて!と隊員も驚く。 確かにゴジラは奴に一切干渉できてない、なら奴は?向こう側はどうやってこちら側に干渉してるんだ?その条件は?と博士は考え込む。 そもそも奴の実在を証明できる観測手段がない、幻と言われればそれまでだ、なのにギドラの牙はゴジラに届く、ギドラから見たゴジラは幻ではない!奴はゴジラの実在を確かめている!敵はギドラじゃない、我々側の宇宙にあいつの手引きをしている奴がいる!とマーティン博士は隊員の肩をつかんで言う。 そうか!メトフィエス!サカキ大尉に伝えなければ…と博士は気付く。 その時、博士の手を引いたマイナが、一緒に来て!ハルオを助けないと!彼はまだ今ギドラと戦っている!と呼びかける。 ゴジラは3匹のギドラの首にくわえられたまま空中に浮かんでいた。 あまたの世界で栄華を極めた文明が、いずれはたどり着く禁断の領域… その扉を押し開いた時、怪獣は産声を上げる…(ハルオの意識はまだAIクオーツの中に漂い、メトフィエスの言葉に支配されていた) またハルオが意識を取り戻すと、そこはどこかの研究室で黒板には「E=MC2」の文字が書かれていた。 ゴジラを生み出すに至った文明は、その尋を踏み越えた時点で破滅を運命付けられているのだ… ハルオは肩に手を於かれたので振り向くと、そこに立っていたのはメトフィエスだった。 後はその滅びをどのように感受するか… 最後まで毅然と…、誇りあるべきだとは思わないか? 原爆投下のイメージ 俺たちはただ破滅するだけに文明を築いて来たと?と原爆を投下した爆撃機の中にいたハルオが自問すると、だがそれは悲観する事ではない、有限の宇宙においてそれは当然の帰結なのだ…と一緒に搭乗していたメトフィエスが言い聞かせる。 だからこそ霊長の精神は死を超えた更に果て…、滅びの向こう側を探求せねばならぬのだよ…とメトフィエスは言う。 空中で咆哮するゴジラ。 そんな!ギドラだけじゃなく、ゴジラまで実体が収縮されてるって言うのか? マイナがマーティン博士を連れて来た部屋には、巨大な壁画が描かれていた。 それを見た博士は、これは!フツアの神なのか!と目を見張る。 君たちの長い旅路は、自らの滅びと向き合う為の巡礼だった… ゴジラとは飽くなき繁栄を求めた傲慢への罰! これを乗り越えるにはより大いなる物への献身を持って人と言う種の魂の浄化するしかない…と爆撃機から立ち上る原爆雲を窓から見つめるハルオにメトフィエスが説く。 マイナがマーティン博士とともに壁画に手を触れ、卵よ、忌まわしき夢に救いの標を!渡り烏にこの歌を届けて!と念ずる。 すると黄金色に輝いた壁の奥から何かの鳴き声が応じる。 巨大な我のシルエットが爆撃機と原爆雲の間に出現したので、冒涜者め…とメトフィエスが睨みつける。 モスラの影とニアミスした爆撃機が空中で分解し、乗っていたハルオは落下し始める。 あれは…蝶?と落下するハルオが飛び去って行くモスラのシルエットを見ていると、ハルオ!と呼びかけ空中に出現し、ハルオの手を掴んだのはマイナだった。 マイナは、ハルオ、忘れないで!耳を澄まして!と空中で語りかけると抱きついて来る。 ハルオさん!今マイナの力を借りて君に呼びかけている!とマーティン博士の声も聞こえて来る。 ギドラがこの世界に干渉できるのは干渉する手段があるからだ!ギドラに成り代わってゴジラを見ている!おそらく奴…と呼びかける博士の言葉が突然聞こえなくなり、大きなメトフィエスの義眼模様がハルオに見える。 気がつくとギドラのシルエットが落下するハルオに迫っていた。 さらに巨大な爆発を起こしたゴジラに向かって行く映像が見えて来た。 怯えたハルオは、何故こんなものを俺に見せる?と目を伏せようとする。 俺に何をさせたい? 怪獣を怪獣たらしめるのは恐怖… 人を英雄たらしめるのは憎悪… そして神を神たらしめるのは英雄による祈りだ…とメトフィエスが語りかけて来る。 気がつくとハルオの両手は血に汚れていた。 新たなゴジラに成り代わるのではなく、あくまでも人としてゴジラに抗い、ゴジラを呪い続けた君にこそ、我らが神を讃えて欲しいとメトフィエスは言う。 その声で神を呼び招いて欲しいのだ… 君と言う英雄が魂を捧げる事でついにギドラの神性はこの世界に於いても確固たる物になる… (回想)爆発する老人たちが乗った上陸艇 メトフィエスが“アラトラム号”から上陸艇に乗り込む老人の1人に爆弾が仕込まれたベルトを渡す。 お前だったのか…とハルオは気付く。 苦痛のための命など我々は認めぬ…、滅びに至る道は安らかであるべきだ…とメトフィエスは言う。 爺さん!とハルオはそこに並んでいた老人たちの姿を見る。 我々はあれで救われたんじゃ、誰もが十分過ぎるほど長く戦った…、罰を受けるためだけの命なら終わらせる以外に救いはないよ、な、そう思うだろう?ハルオ…と祖父はハルオの肩を持って聞いて来る。 でも…、でも俺は…とハルオは受け入れがたかった。 ハルオ!と宇宙港でハルオの手を引いていたのは祖父アキラのはずだったが、いつの間にかメトフィエスの姿に変わっていた。 讃えよ、終焉の翼を…、唱えよ、金色の御名を… メトフィエスが指し示す宇宙港の外は、空中に3つの雲の渦巻きが出来ており、そこから巨大な黒い球体が覗いていた。 そして求めよ、勝利と祝福を… 地上を煙の塊が近づいて来て、その中からギドラのシルエットが迫るイメージ 幼いハルオはメトフィエスの手を振り払って、落したペンダントを拾いに行く。 落ちていたペンダントを拾い上げたのは大人のハルオだったが、そのペンダントを見たハルオには、これは花?…と赤ん坊次代教えてくれた母ハルカ・サカキ(声-早見沙織)の声が蘇る。 ああこの子のお守りに作った春の花だ…、今がこんな時代でもいつか冬を越えて春が巡り来る…、命の蘇る季節だ…とベビーベッドの前でペンダントを差し出していた父アキラ・サカキ(声-鈴村健一)が答える。 そうね、そう祈って、この子に名前を…とはるかが言うと、そうだな…、ハルオ…、お前はハルオだよ…坊や…と父アキラは手を差し出している赤ん坊に呼びかける。 そうだ、そうだった…と春の花が樹脂に埋め込まれたペンダントを見ていたハルオは思い出す。 そして上陸艇の横にいた祖父の顔を両手で掴む。 その祖父の顔は今のメトフィエスの顔に変わる。 現実の高台で意識を取り戻したハルオは、俺たちの過ちに慰めなんかない!そんな物全て良い訳だ!諦めれば全てが嘘になる!救いなどなくて良い!とメトフィエスの顔を掴みながら迫る。 ハルオ…、君は…とおののくメトフィエス この命がどんなに惨めでちっぽけでも、死んで行った者が信じていた物を裏切るくらいなら、俺は!と言いながらハルオはメトフィエスの義眼を押しつぶす。 その時、視界を失ったギドラが咆哮し、劣勢だったゴジラが目を見開く。 ゴジラは咆哮し、口を放したギドラの身体に触れると火花が散る。 な、何だ!どうなってるんだ、熱電波全てのセンサーがギドラを補足!異常重力場結成!凄い、データの正誤が補正されて行く!と見張り台で計器を見ていた隊員が驚く。 ゴジラはギドラの首と接触する部分が火花を上げながら地上に降りて来る。 降り立った地点から噴煙が周囲に広がる。 見張り台に戻って来たマーティン博士は、ハルオ!やったのか!と呟く。 抵抗領域が急速に閉じて行きます!と隊員。 ゴジラの右肩を噛んでいたギドラは口を放してく宇宙で分解、左足に食らいついていたギドラの口をゴジラが引き裂く。 最後の1匹が首を空中へ戻して行く。 ギドラもこちらの物理法則に捕まった!今なら倒せるぞ、ゴジラ!とマーティン博士が呼びかける。 ゴジラの背びれが青く発光し、口から発射した青い熱線が最後のギドラとその根本にあった黒い球体に命中する。 ミュージック 集められた武器はやがて土に埋もれ花が咲く。(イメージ画) 隊員たちはフツアの住民と一緒に暮らすようになる。 マイナは司祭から祝福され髪型を妻の形に替え妊り、それを妹のミアナらも祝福する。 春になり白い花が咲く。 ミアナと一緒にその花畑の場所にやって来たハルオが、これは!と驚くと、雨期の前の花の季節…、ハルオに見せたかった…とミアナが教える。 その花の一輪を詰んだハルオは、そうか…、これが…春…と気付く。 初めて見たよ、俺の名前だって言うのに…とハルオは立ち上がって感激する。 その後、すっかりフツアの住民になり切ったマーティン博士から呼び出されたハルオは、待ってたよハルオ!と博士から声をかけられ、急用って何です?と聞く。 うん、真っ先に君に見てもらいたいと思ったんでね…と唯一残されたバルチャーの修理をしていた博士が言うので、何をしてるんです、これはもう動かないんですよね?と言いながらハルオは博士の元へ登ってみる。 するとマーティン博士は、まあ見てくれ、動力炉の再起動に成功した…と言いながらスイッチを入れると、メカの一部の赤いランプが点灯する。 これで自己修復システムを復活する、おそらく朝までには動けるようになるぞ、こいつ!と博士が嬉しそうに言うので、どうやって?とハルオが聞くと、ユウコ君の身体から活動状態を維持しているナノメタルのサンプルを回収できたからね!と博士は自慢げに言う。 ろくな機械は残ってないしね、解析できるかどうかは賭けだったんだが、今朝ようやく制御システムのコントロールに成功した、分かるか!自己増殖し記憶済みのテクノロジーを無限に再現できるナノマシンだぞ、こいつをビルサルドのように制御できれば我々は過去の文明を再現できる!今みたいな原始生活とはおさらばだ!とマーティン博士は興奮気味に説明する。 しかし聞いていたハルオは右目を押さえて苦しみだす。 どうしたハルオ?と博士は驚くが、ハルオにはギドラの声が聞こえていた。 右目から手を外したハルオは、またあの緑色のAIクオーツの中の世界におり、メトフィエスの声が聞こえて来る。 そうとも、繁栄を求める飽くなき向上は人の性!そして又収穫の季節は巡り来る…、時は我らの味方…と言う。 我々は焦らず待つだけで良い… どうしたんだ、ハルオ!ハルオ!と博士は呼びかける。 その後、マイナとミアナ姉妹と洞窟の中にいたハルオの様子がおかしいので、ミアナが、ハルオ、大丈夫?と声をかけて来たので、ああ元気だよ…とハルオは答え、立ち上がる。 そして眠っているかのように横たわっているユウコの所にやって来たハルオは、ユウコの身体を抱き上げると、さあ行こうか…と語りかける。 何をするつもり?と付いて来たミアナが聞くと、ミアナ、ゴジラは怖いか?とハルオは聞く。 唐突な質問に戸惑いながらもミアナは、うん…、怖いと答える。 じゃあ憎いか?ゴジラの事が…とハルオが重ねて聞くと、憎い?ゴジラは怖い、竜巻も稲妻も怖い…、でも憎い…は分からない…、それフツアにはない言葉…とミアナは答える。 するとハルオはそのままユウコを抱いてどこかへ向かいだしたので、ハルオ!行ってはダメ!それは負け!とミアナが呼び止める。 そうだな…、だが勝ち続けるだけの命なら獣と一緒だ…と立ち止まったハルオは答える。 でも俺たちはいざとなれば負け戦をやる事も出来る…とハルオが言うので、ミアナは黙り込み、私には分からない…と言うしかなかった。 分からなくて良いんだ、永遠に…とハルオは言う。 むしろ俺がいたら、いつか君たちが理解してしまうかもしれない…、だからもう行かないと…とハルオは振り返って別れを告げる。 ユウコとともにバルチャーに乗り込んだハルオは発進させる。 眠っていたかの良うなゴジラの目が見開かれる。 そのゴジラに急接近するバルチャー 分かるかゴジラ!貴様を憎み、貴様に挑む最後の1人がこの俺だ! 貴様が奪った全ての命、貴様が壊した全ての夢を背負って今俺はここにいる! ゴジラの身体が青く発光し始める。 もし貴様が本当に破壊の化身だと言うのなら、今度こそ残さず焼き尽くしてみせろ!過去の全ての呪いを!と言いながらハルオはゴジラに特攻して行く。 ゴジラは青い熱線を吐き、破壊されたバルチャーはゴジラに体当たりする。 ゴジラの熱線が薙ぎ払った周辺の空気は動き、窪地に咲いていた白い花の花弁も上昇気流に乗って舞い上がる。 揺らめく白い花 エンドロール フツアの大きな壁画が描かれた洞窟の中では、バルチャーを模した木組みの人形を前に、住人たちが祭礼を行っていた。 松明の火の前に座った4人の子供たちが、病気になりませんように、怖い夢を見ませんように、虫に刺されませんように、木登りで怪我をしませんように…と各自願い事を組紐を手に持って言うと、さあみんな、怖い者を封じ込めたかな?と仮面をかぶったミアナが声をかける。 はい!と答えた4人の子供たちは、お怒り様、お怒り様、どうか今年もお清めください、炎で怒りをお忘れくださいと言う。 木組みの人形の下に火が投じられ、木組みは燃えて行く。 それを側に座って穏やかな眼差しで見ているマイナ。 フツアの舞と音曲はその後も続いていた。 |