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大当り百発百中

阿川弘之さんの原作を、後の渥美さん主演の喜劇列車シリーズやフランキー堺主演の喜劇旅行シリーズなどでお馴染みの瀬川昌治監督が東映時代に撮った軽いタッチのラブコメ。

江原真二郎さん主演では「カレーライス」(1962)も面白かったが、この作品も面白いので驚いた。

この時代の東映青春ものはかなり面白いものがある事に気付いた。

若々しい佐久間良子さんが怖いもの知らずの現代っ子女子大生役で元気一杯活躍なさっているのが楽しい。

江原真二郎さんの方も、少しとろい所があるが、関西弁の純朴そうな青年を好演しており、そのキャラが好ましい。

「お笑い三人組」の一竜斎貞鳳さんがゲスト的に登場していたりするのもうれしいが、山茶花究、上田吉二郎、東野英治郎、柳沢真一、十朱久雄、小沢栄太郎、花澤徳衛、沢村貞子と云ったそうそうたる脇役陣がそろってるのも何気に凄い。

山東昭子さんや曽根晴美さんまでもが学生役である。

地獄大使こと潮健児さんもちらり登場している。

若者が主演で監督も若いので、後年の喜劇シリーズのような泥臭さはなく、明るく爽やかな青春ものにもなっている。
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
1960年、東映、阿川弘之原作 、舟橋和郎脚色、瀬川昌治監督作品。

銀座の交差点で交通整理をする巡査

交通事故、それは現代文明が生んだ最悪の悲劇の1つです。

そんな中、繁盛している仕事もあります。(走る霊柩車が写る)

誤解しないで下さい、葬儀屋でも医者や僧侶でもありません。 (霊柩車が事故を起こす)

ぽんこつ屋の事です。(その壊れた霊柩車をレッカーして解体屋に運び込む)

本所竪川町の一軒を覗いてみましょう(とナレーション) ぽんこつ屋とは一種の古物商でもあります。

良く聞いてみて下さい、車を壊す音がポ~ンコツ、ポ〜ンコツ♩と聞こえる所からこの名が生まれたんです。

タイトル(何台もの玩具の自動車が走る様を背景に)

犬塚解体自動車工場 守屋浩の歌う「僕は泣いちっち」が工場内に流れる中、車の解体をしていた熊田勝利(江原真二郎)は、近づいて来た先輩工員亀吉(清村耕次)に、このギアは素晴らしい、普通この種の車に付いているのはスパイラルギアなんですけど、これはハイポイント…などと講釈を始めたので、代わってるのはお前のここの方や!と亀吉は熊田の頭を指してからかう。

モールバスの解体を始めた熊田は、その中から包みを拾い上げ中を確認すると、大変やど!旦那〜!大変でっせ!と言いながら、事務所にいた犬塚君二郎(上田吉二郎)に包みを持って行く。

中味は5000円札6枚、計3万円だった。 覗きに来た犬塚の一人娘花江(山東昭子)も、本当だ、本物だわ…と驚き、ついてるじゃない!と熊田をからかう。

たかが3万円と犬塚は馬鹿にするが、旦那だってこの間、競馬で3万当てたら大喜びだったでしょうと熊田は言い返す。

そして犬塚が金庫にその鐘をしまおうとしたので、父さん、とっぽいな、ねこばばするなんて…と花江が文句を言うので、鐘の始末に困った犬塚は、一応これ渡しとくから、適当に処分しろと言いながら熊田に戻す。

熊田はその3万を警察の遺失物係(大東良)に届けに行くが、この場合、準遺失物扱いになるので、6ヶ月で落とし主が出て来ても、全額もらえないなどと警官が言うので、何で6ヶ月と言う数字が決まったんです?と頭の弱い熊田は問いかけ、そう決まってるんだと言う警官に、お互い薄給の身同士じゃないですかなどと説得する。

扶桑女子大学 宮坂先生(柳沢真一)は、経済学の授業でマックス・ヴェーバーの名を出して講義していたが、女生徒の1人から、先生、お時間ですと教えられ終了する。

グラウンドでは、自動車部の三津田和子(佐久間良子)が級友水野美沙子(小林裕子)同乗で運転の練習の練習中だったが、そのたどたどしいハンドルさばきに美沙子が叱咤激励していた。

その時、グラウンドに宮坂先生が現れたので、噂をすれば影!チャックよ!私たちを捜しているのよ!と美沙子が言いながら身体を伏せたので、どうにかして!と言いながら、和子も身体をハンドルの下に伏せたので、宮坂先生は無人の自動車がグラウンドを走っているように見え驚く。

パニクった和子は、そのままアクセルを踏み続けたので、自動車はバレーコートのネットを潜り、宮坂先生に突っ込んで行く。

驚いた宮坂先生は逃げ出すが、何故か和子の車はその後を追うように校舎の外まで出て行く。

アクセル踏んじゃダメよ!と美沙子は叱るが、踏んでないわ!などと和子は言う。

宮坂先生は大学側の空き地の端まで追い込まれるが、間一髪衝突する直前に車は停止する。

ガス欠だった。 和子、美沙子と一緒にその車を大学まで押すのを手伝った宮坂先生は、幸いガソリンが切れたから良いようなものの、後1滴でも残っていたらどうなっていたか…大体君たち、卒論のテーマを決めてないのは君ら2人だけだよ!と小言を言い始める。

すると和子が、自動車問題、現代の交通問題に決めたんですと言い出し、それを聞いた美沙子も、三津田と共同研究にしましたと答える。

宮坂先生と別れた後、苦し紛れに言っちゃったけど巧く行ったわねと和子は首をすくめ、私、ちょっと考えがあるのと言い出す。

電気屋(潮健児)からテープレコーダーを買った和子と美沙子は、続いてカメラ屋(岩城力)で8mmフィルム撮影機の値段を調べる。

店を出た所で美沙子の友達の山根耕平(曽根晴美)に会ったので、一緒に中華料理屋に入り、3人は餃子を注文する。

卒論を8mm映画とテープ録音で済ますアイデアを聞いた耕平は驚くが、原稿用紙5枚程度に書くのと美沙子は教え、思想伝達を文字に頼るなんて古いのよと和子も横から口を出す。

これで、耕平君にアルバイトしてもらう必要なくなったのと美沙子が言うので、箱根へのドライブもパーか…と耕平はがっかりする。

でもテープや8mm買えば4万5000円はするぜと耕平が指摘すると、なんかお金の当てある?と美沙子が困ったので、1個5円の餃子を食べるようにはいきませんと耕平は答える。

その時、和子が何かを思いついたようだった。(和子の顔だけ丸くワイプ)

犬塚解体自動車工場では、休憩時間中、叔母から来た手紙に見合いの事が書いてあったので、悩む熊田を取り囲み、仲間の工員たちが、嫁さんは外国の方が良いってことだ、もらっときななどとからかっていた。

旦那のなくなった奥さんも手綱捌きは一流だったぜなど亀吉や定吉(岡部正純)は言う。

解体作業を始めた熊田は、目の前に立っている和子に気付く。

ねえ、この車いくらするの?とポンコツ車の値段を利くので、まんのじ、3万と言う事ですと熊田は教える。

きみ、4万5000円やと熊田が符丁を教えると、安いのねと言いながらその車の運転席に座ったので、運転手が死んだ車は安うなるねん、ちょうど今あんたが座っている場所で死んだんやと熊田は事故車の事を教え、お嬢さん、一体何しに来たの?と聞く。

すると和子が、自己で壊れた車を買って欲しいのと言うので、うちはいきなりの客からは買わんのです、盗品買うたら事やもんと熊田は言う。

仏壇の前で拍子木を叩きながらお経を唱えていた犬塚は、その傍ら、競馬新聞に印も書き込んでいた。

そこに熊田が和子を連れて来たので、売る車の種類を聞くと、56型ルノーで、父が酔っぱらってぶつけちゃったの、死んじゃいないわよと和子は答える。

それを聞いた犬塚は、まんのじくらいじゃないか?と熊田に話しかけると、3万じゃ嫌よと和子が答えたので、良くご存知でと犬塚は驚く。

きのじ以下では嫌よ、4万5000ポンと出して!と和子は申し出る。

その後、車の状態を見に熊田は一緒に和子が運転する車で自宅へ向かうが、そこは「三津田眼科医院」と書いてあったので、お嬢さん、泥棒にでも入るんじゃありませんか?と熊田がビビると、私の家よと和子は平然と答える。

家の横に停めてあったルノーを見た熊田は、あまりの状態の悪さに驚き、話と随分違うじゃないですか、どおりで早う話し付けたがる思ったわと呆れ、1本と値段を提示すると、後一声!と和子は言って来る。

その時、そこで何してる?と声をかけて来たのは、トイレの窓から顔を覗かせた和子の父三津田(山茶花究)だった。

熊田は、犬塚解体自動車会社の熊田勝利ですと挨拶をする。

その車、売るつもりかい?と三津田が聞くので、卒論の資金にお金がいるの、助けてお願い!と和子が泣き落としに来たので、そやかて…と熊田も困惑する。

外に出て来た三津田は、けしからんぞ和子、いくらで決めた?と聞いた来たので、1万円なのと和子が教えると、こう云う状態やとスクラップの値段にしかならんのですと申し訳なさそうに熊田が詫びる。

お父さんにいくら出す?などと三津田が言うので、へそくりするつもり?と和子が聞き返すと、お母さんには内緒だよと三津田は言う。

そこに、その母親邦子(沢村貞子)が顔を出し、何してるんです?と聞いて来たので、物置を直そうと思ったんだが、又にしたよと三津田がごまかす。

三津田が邦子と家の中に戻ると、巧く行ったわ、メルシー!ありがとう!と和子は熊田に礼を言い握手をする。

買い取ったルノーを解体していた熊田は、バックミラーを外すと、アオコに自分の顔を映してみる。

すると、そこには和子の顔が浮かんで来たので喜ぶが、その時背後から、何おしゃれしてるの?と隣の古物商中野哲子(若水ヤエ子)が話しかけて来たので、哲っちゃんの所かて今忙しいんやろ?と熊田が迷惑そうに答えると、若いのと一緒に江ノ島行って来たのよと言いながら、哲子は土産のサザエを熊田に差し出す。

哲っちゃん、泳げるの?と熊田が聞くと、私、抜き手の名人よ!と言いながら哲子はその場でジェスチャーを披露する。

その頃、和子と美沙子は、美沙子の伯父で宮坂先生の先輩に当たる警視庁の井沢第一課長(十朱久雄)に会いに来ていた。

宮坂君元気ですか?と聞かれた美沙子は、先生も大先輩に宜しくと言っておられましたと答えると、資料ならいくらでも出しますよと伊沢が快く協力を申し出、最近の交通事故に付いて話し始めようとするが、とっと待って!とそれを遮った美沙子は、テープレコーダーを取り出したので、録音採るの?と伊沢が驚くと、部外秘にしますと美沙子はちゃっかり答える。

和子がこっちの方が良いんじゃないの?と課長の机にマイクをセッティングして、8mmカメラも中央に据えたので、こんな顔撮っても仕方ないでしょうと伊沢は迷惑がるが、繋ぎになりますなどと和子は言う。

窓際だったので、伊沢が自分の禿頭を触りながらハレーションを起こしますかな?などと冗談を言うと、ハゲの事を随分気になさているようですけど、私たちへっちゃらよなどと和子は慰める。

伊沢は気を取り直し、車の数は50万5000台、戦後の10倍に増えましたが…と話し始めると、伊沢警視正、カット!そのまま動かないで!と和子が声をかけ、カメラを移動させ続きを促す。

伊沢は緊張しながら、世界の大都市の中で日本ほど道が狭い国はありません…などと続ける。

その夜、自分の部屋に飾ったバックミラーを熊田は覗き込んで喜んでいた。 そこに、電話よ!三津田さんって言う人から!と花江が声をかけて来る。

勝利君!こんばんわ、この間のルノー、もう壊しちゃったかしら?だったら何かないかしら?事故でぐしゃぐしゃになった車…と和子が電話で聞いて来たので、事故車買うてどうするんですか?と熊田が戸惑うと、私はそれを8mmで撮らしてもらうのよ!毎日電話なんかしてくれなくても良いのよ、車なら何でも良いのよ…などと和子は言う。

電話口のメモ帳に熊田の顔の似顔絵を描きながら長電話をしている和子に気付いた三津田は、誰にかけてるんだろう?和子…と不思議がる。

三津田と邦子は、遊びに来ていた医者仲間の斎藤(小沢栄太郎)と池野(花澤徳衛)と麻雀をしている最中だったが、斎藤先生、どなたか良い人いないかしら?と邦子が聞くと、子持ちじゃまずいよな…と斎藤が答えたので、先生、和子さんのお婿さんの話です、看護婦じゃありませんと池野が口を差し挟む。

それを聞いた斎藤は、そりゃダメだ、家内が3つも写真を持って来たじゃないですかと呆れたように答える。

自分の部屋に戻って来た和子は遊びに来ていた美沙子と菓子を食べながら、何かマネービルの良い考えないかしら?と悩んでいたが、突然、和子、凄いアルバイトよ!と言いながら美沙子が和子の見合い相手の写真を持ち出したので、そんな正装する相手なんかミリキないよと和子は馬鹿にするが、動く見合い写真!と美沙子が言い出すと、イカす!と和子も乗り気になる。

そして和子は、愉快な実況放送聞かせようか?と言いながら、テープレコーダーを回す。

すると、麻雀をやっている両親たちの会話が、秘密に仕掛けていたマイク越しに聞こえて来る。

4人は、南京お豆の綱渡り…などと下品な事を平気で口走るので、50歳の医学博士が3人も集まってこれよ…と和子は馬鹿にする。

その時、電話がかかって来たので邦子が座を外したので、和子の部屋のテープを再生した自分たちの今の会話が聞こえて来る。

しかし、それが自分たちの声と気づかない池野は、近所でもにぎやかにやってますなと笑う。

部品交換市が行なわれ、哲子が1500円で競り落とす。

手に入れた部品を乗せた軽トラで店に戻って来た哲子は、自分の地所内に置いてあった壊れた車の側で、熊田と見知らぬ娘2人が何語とかやっているのに気付き、物陰からそっと覗いてみる。

それは、8mmを持ち込んだ和子と美沙子が、熊田を運転席に乗せ、交通事故の瞬間を再現ドキュメンタリー風に撮ろうとしている所だった。

勝利君の印象はどう?と和子が聞くと、アラン・ドロンをちょっと汚くした感じだわねと美沙子は答え、いちころでお陀仏になったようになどと、カメラを構えた和子は運転席の熊田に演技指導した上で、テストをやってみる。

熊田は運転席から外に転がり落ちる演技をすると、すぐにOKが出るが、そこに、いつから喜劇役者になったの?と言いながら哲子が近づいて来る。

和子は用意しておいた煙幕を焚いて、臨場感を出すと言うので、本番では運転席の中に煙が入り込み、元気良くよ!と和子から指示された熊田は咳き込んで苦しがる。

結局ハンドルもドアも外れ、熊田は外に倒れ込む。

しかしカメラを回していた和子が動かなくなったわなどと言い出したので、機会の事なら任しといて下さいと熊田が8mmを受け取る。

熊田の部屋でカメラを直して和子に返却するが、美沙子と和子は、熊田の部屋に飾られたいくつもの自動車部品を見て驚く。

外国のナンバープレートも何枚も貼ってあり、これは幸運のナンバープレートで、持ち主のフランスでは代々ええことあったそうですと熊田は教える。 勝利君、全然不釣り合いだわと美沙子は部屋の様子に感激する。

全部ポンコツお廃材利用だすと熊田は言い、TVのブラウン管まで押し入れの中から飛び出す仕掛けを見せる。

キャデラックのラジオ、ハレーのバックミラーと熊田は紹介するが、そのバックミラーコレクションの中には和子のルノーから取ったものも並んでいた。

勝利君、こんな事も勉強してるの?と部屋にあった本に気付いた和子が聞くと、将来は車の燃料も太陽電池か太陽光発電になり、ロボットが操縦するようになりますやろ、TVかて手帳みたいになり、ラジオかて腕時計と同じくらいになるやろ?その頃、ぽんこつ屋はどうなっているかも分からんなどと熊田が言うので、意外と地道な考えね、勝利君ってと和子は関心する。

出身は大阪なの?と和子が聞くと、土佐です、空襲で両親が死んで今叔母が1人いるだけなんです。

頭の回転が遅い事もあって、毎日虐められましたと熊田が答えると、じゃあ機械だけね?信用できるの…と和子は言う。

でも僕は人間も信用してます。機械を作ったのは人間ですからと熊田は答え、和子と一緒に水を飲む。

和子と美沙子が帰った後、熊田は壁に飾っていた幸運のプレートがなくなっている事に気付く。

車で帰る途中、美沙子は、あのボーイ、良い事言うじゃない、耕平君よりしっかりしてるわと熊田の事を褒めると、運転していた和子は急に車を停め、美沙子、気があるんじゃないの?と因縁をつけて来る。

和子だってぐっと来てるんじゃないの?色々聞いたりして!と美沙子も言い返すと、現代から外れたポンコツ!と和子も言い返す。

その後、茶店にやって来た2人だったが、先にトイレに向かった和子は、服の中に隠し持って来たナンバープレートをそっと取り出す。

その後2人は、動く見合い写真を依頼して来た女性のマンションにやって来る。

応対した川原しず代(清川虹子)が、見合い映画と言うのは良いアイデアねと褒めるので、礼を言いながらも、ではお嬢様は?と聞くと、私の見合い写真ですなどとしず代は言い出す。

それを聞いた美沙子が何か言い返そうとしたので、この子は台湾生まれので、日本語が苦手なんですと和子は言い繕う。

ぐっとイカすボーイいないかしら?などとしず代が言うので、あいにく結婚斡旋はやってませんの美沙子が言うので、台湾生まれは黙って!としず代は叱る。

ではまずお料理をなさっている所から…と和子が勧めると、おさんどん姿はダメよと拒否したしず代は、自分が習っていると言う踊りを披露し出す。

瀕死の白鳥とかカンカン踊り!などとしず代は、あっけにとられる和子と美沙子の前で勝手に踊り出す。

その後、美沙子と和子は車でドライブに出かけ、わざとスピードを上げ、追跡して来た白バイの様子を8mmに収めたりする。

また、バス事故の現場に新聞記者に混じって勝手に入り込み取材をしたりする。

8mmフィルムを現像して干していた和子の所にやって来た邦子は、あなたの縁談よ、斎藤先生よなどと言って無理矢理見合い写真を見せ、お相手は時計会社の技師さんよなどと一方的に話しかけるので、お母さんって蛍光灯ねと和子はからかう。

「僕は泣いちっち」が流れるビアホールで、犬塚は誘って一緒に飲んでいた熊田がちっとも酔わない事に気付く。

女の事だろう?どんな女が好みなんだ?と犬塚が聞くと、身体は小型車だけど…などと色々熊田が条件を増やしていたので、それじゃ高級車じゃないか!と犬塚は呆れる。

その時、大きな虫眼鏡を差し出しながら、艶福の相をしとるなといきなり熊田に話しかけて来たのは、九官亭(東野英治郎)と名乗る老人で、見料はこのビール1杯で結構などと図々しく言うので、見てもらえと犬塚は勧める。

あんた良縁を獲得するが、その前にいくつもの生涯が待っている、家柄が釣り合わんとか…、ばってん、手がない事はないと九州弁で九官亭は言う。

まず相手の心をぐっとつかむ事、デートに誘うんじゃ。

そして自分に編んだんがあるなどと言うて相手の気を惹く事じゃと言うので、それを聞いた熊田は、願ったりですわ、おばさんからの縁談で困ってますからと答える。

すると九官亭は、さらに相手をロマンチックにする事です。

月を愛し、花を愛し、川のせせらぎを愛する…、相手をロマンチックにさせる事じゃ、場所は公園のベンチとか…とアドバイスする。

和子と美沙子は、共同研究の卒論発表として8mm映写を宮坂先生に見てもらう事になる。

熊田が演じた事故のシーンなどを見た宮坂は、これは本物ですか!と仰天するので、みんなドキュメンタリーですと美沙子は嘘を言う。

現在の交通事故は年鑑15万3500軒…と伊沢警視正の声が流れて来るが、映像の方では川原しず代がダンスを踊っているシーンが写ってしまったので、間違えちゃったんです、フィルムを!と慌てて和子が弁解するが、音声の方では、南京お豆の…などと聞こえて来る。

公園で和子と美沙子を待っていた熊田は、卒論パスおめでとうございます!とお祝いのメッセージを送り、易者の言う通りですわと呟く。

お祝いに遊園地って変ね?トミ迫が不思議がるので、ムードですわ、訳あってロマンチックが必要やさかい…と熊田は笑顔で応える。

しかし、その後、熊田が8mmで園内の2人の姿を撮ったりするが、あかんな、2人きりのチャンスないな…と熊田は気付き出す。

和子と美沙子がゆがみ鏡に自分たちを映し楽しんでいると、数人のチンピラが近づいて来て因縁を付けて来る。 3人はチンピラたちから逃げ出すが、チンピラたちは園内をしつこく追って来る。

美沙子は園内から救援の電話をかける。

美沙子と別れた熊田と和子は、園内のドリンク売り場の店員のコスチュームを借り、変装してチンピラたちをやり過ごすが、すぐに気付かれ、戻って来たので、熊田と和子は子供列車に乗り込む。

するとチンピラたちも乗り込んで来たので、途中で2人は飛び降りる。

しかし、又チンピラは追って来て、コースの抜け穴の中に逃げ込もうとした熊田と和子はあっけなく捕まってしまう。

その時、サイレンが近づいて来たのに気付いたチンピラたちは慌てて逃げ出してしまう。

美沙子はサイレンに気付き、警察が駆けつけたと喜んで、入り口の係員が制止するのも振り切って外へ飛び出し待つが、やって来たのは消防車だった。 美沙子は110番と119番を間違えて連絡したのだった。

園内では、熊田が、美沙子はん、どないしたんやろな?と消防車の方を見ていたが、当の美沙子はがっかりした顔でその消防車に同乗して帰って行く所だった。

照明が暗いおとぎの国の部屋にやって来た熊田は、2人きりになったの初めてじゃない?何でもない事だけど大変な事だと思うの…と和子から言われドキドキしながらも、九官亭が言っていた、第2の手は縁談話じゃ、相手の反応を見ろと言う言葉を思い出していた。

熊田がその事を切り出そうとすると、和子の方から、私、縁談を進められているの、弱っちゃった、どうしたら良いかしら?などと話しかけられたので、こりゃ逆やな…、こっちの言う事あらへん…と熊田は困惑する。

その時熊田は、ムードありましたわ!と言い、和子もゴンドラじゃない!と喜ぶ。

座って話ししない?と和子に誘われた熊田はゴンドラの前に座る。

撮ってもロマンチックだわ」と和子は喜び、持っていたガムを熊田に渡すが、心の中では、どうだろう、この人…、痛い何を考えているのかしら?ぽんこつのことかしら?と黙ったままの熊田の事を怪しんでいた。

熊田の方は、どこで間違えたんだろう? 月を愛し、花を愛し、川の流れもあるのに…と悩んでいたが、その時突然、ゴンドラが分割し、熊田が乗っていた先端部分だけ川に流されてしまう。

白けた和子は怒って立ち上がると、私、帰る!と言って去って行ったので、和子さっb、ちょっと待って下さい!と熊田は呼びかけるが、川の上なので追うに追えなかった。

その後、熊田は、遺失物係から3万円の落とし主が現れなかったので、そっくり3万円を貰い受ける。

そして美沙子を誘ってレストランにやって来た熊田だったが、同じ店内の中2階部分で見合いをしていたのが和子だった。

お相手の時計会社の技師沢崎(一竜斎貞鳳)は、スキーを愛好しており、スイスに行った時の話を自慢していた。

あちらでは、イスタンブール辺りでもアジアの匂いがすると言って毛嫌いしますからなどと言うので、私は本所に興味がありますなどと和子はひねくれた返事をする。

食べ物の好みの話を同伴した邦子から聞かれた沢崎が、スイスでウジ虫が付いたチーズが出た時には参りましたなどと又自慢話をするので、車の輪郭線を象った切り紙を床に落とした和子が拾い上げようとテーブルの下から1階部分に目をやると、そこのテーブルで向かい合っているのが美沙子と熊田だと気づく。

美沙子を前にした熊田は、仮に僕のようなぽんこつ屋があなたのような女子大生に求婚したら失礼じゃないでしょうか?ともじもじしながら聞く。 僕の気持を聞いて下さい、僕は…と続けようとした時、熊田は中2階に和子が来ている事に気付く。

和子は親指をモールス信号のように動かしたので、それを読んだ美沙子は、すぐ来い?と解読し、熊田と一緒にコーヒーカップとケーキをそれぞれ持って和子のテーブルに近づいて行く。

水野美沙子ですと挨拶すると、今日はお見合いなんですと迷惑そうに邦子が教える。

しかし和子は、もう良いのよ、大体終わったから…と言うので、熊田もテーブルに近づこうとして、思わず沢崎の足を踏んづけてしまい、バランスを崩して、持っていたケーキを沢崎の顔にぶつけてしまう。 その夜、和子は美沙子と電話をしていた。

母さん、すっかりお冠!あの時計技師気障で嫌らしいのと和子が報告すると、美沙子の方は、ショッキングな事件が起きたのよ、勝利君から結婚を申し込まれたの、でも生理的事故起こしそうなのなどと言い、電話を切るとすぐに熊田に電話し、今度の日曜、箱根にドライブしよう?でも自重しましょうね、結婚するまで…、私ぽんこつになりたくないのなどと申し出る。

それを聞いた熊田は、あなた、何か勘違いしてるんでは?僕が好きなのは和子さんですよ!と言うので、美沙子は驚いて電話を切ると、又和子に電話する。 しかし怒っていた和子は、あなたとは口も聞きたくない!と言って電話を切ってしまう。

そして、和子と美沙子は同時に熊田に電話をかけたので、受話器を取った犬塚は、えらく混線しとるぞと戸惑う。

電話が通じなかった和子は癇癪を起こし、盗んで来た幸運のナンバープレートを投げ捨てる。 翌日、和子の家を訪問した熊田だったが、応対に出て来た邦子からどうしても会わないと言っていると聞かされ、これを渡してくれってと言われ、リボンの付いた箱を受け取って帰る。

外で箱を開けて見ると、中に入っていたのは盗まれたナンバープレートだった。 あかんな、どうも…、何で急に冷たくなったんやろう?今更プロポーズしてもどうにもならへんやろな…と熊田は考える。 工場に戻った熊田は犬塚から、場外で馬券買って来てくれ、8レース4-3だと頼まれる。

10月の中央競馬の場外馬券売り場にやって来た熊田は、8レース4-3やったな…、この鐘は和子さんにプレゼントするつもりやったけど、もう止めた!一丁買うたろう!と決心し、人ごみにもみくちゃにされながらも4-3に、自分の持っていた3万分も全部買ってしまう。

ラジオで実況を聞いていた犬塚は、11レースの結果が4-3と聞き、1万5000の丸損か…とがっかりしていた。

そこに戻って来た熊田が、旦那、11レースの実況4-3当たりまへんだしたか?ほなら間違えてたかな?おかしいな…と言うので、ラジオで11レースの配当金の発表を聞くと3830円だと言う。

100円についてだから19万!と犬塚は大喜びする。

すると熊田は、僕3万全部買うたんや、11万4900円の儲けやな…と言うので、算盤を取り出して計算し直した犬塚は、114万や!と叫びその場に気絶してしまう。

工員たち総出で犬塚の身体を奥へ運んでいるのを見た花江は、人が儲けて目を回す事ないじゃないと呆れ、全然ついてるわね、つきの上にバカがつくわねと熊田に微笑みかける。

バカつきですね…と笑った熊田だったが、バカつきか…と呟き、壁に貼ったバックミラーの中に和子の顔を見る。 よっしゃ!バカつきの所でもう一押しやってみるか!と熊田は決意する。

その直後、隣の哲子の工場から車体のないぽんこつ車に乗り込んだ熊田が走り出したので、まさ公!と哲子が怒鳴りつける。

そのぽんこつ車で扶桑女子大の構内に侵入した熊田は、講堂にいた体育部のコーチに、三津田和子さんおられますか?と聞くが、何科ですか?と聞かれたので、さあ、交通科やないやろうか?などと戸惑う。

大学の外を帰っていた和子は、耕平と一緒の美沙子に呼び止められる。

ちょうど良かったわ、箱根から帰って来たばかりの所なの、夕べ泊まっちゃったの…、生理的事故を起こしちゃったのよと言うので、私、あなたを見損なったわ!あなたにプロポーズしたの勝利君なんでしょう?と和子が軽蔑すると、勝利君が好きなのはあなたなのよ!一昨日電話したんだけどあなた切っちゃったじゃないの!私、腹が立って耕平とドライブに出かけたのよと美沙子は言う。

話しながら校門の所へやって来た3人は、グラウンドの中でぽんこつ車を取り囲み人だかりが出来ている事に気付く。

和子に気付いた熊田は、和子さん!今どうしても話を聞いてもらいたいんです。お見合い8mm撮って欲しいんです!あなたのです! お父さんとお母さんにも話しに行きます!と熊田はプロポーズしたので、回りにいた女子大生たちは一斉に、和子!しっかり!と呼びかけて来る。

どうなんです?OKしてくれはりまへんか?と熊田が呼びかけると、恥ずかしくなった和子は坂道を降りて逃げ出す。

和子さん!待って下さい!返事聞かせて下さい!と呼びかけながら熊田は後を追うが、なかなか和子には近づけない。

途中熊田は、こらあかんな…、なんぼ押したかて、こない逃げられたらどないにもならんわ… 和子さん嫌いなんやんな…、待てよ?どうせここまで来たんだ、押して押して押しまくれや!と心を決め、さらに和子を追いかける。

追いかけられる和子の表情はうれしそうだった。

その夜、その結婚の申し込み承知したの?と邦子が家で和子に確認する。

ぽんこつ屋ってバタ屋の親戚くらい考えているでしょう? でも堅実な中小企業なのよ、最近の自動車ブームはぽんこつ屋があるからなのよ。

あの人には途方もないおかしな夢があるのよ、大学出の養子をもらうより頼もしいわ。

その内、大変な産業革命を起こすかもしれないわ!などと和子が1人力説するのを聞いていた三津田は、お前、すっかりその男に詣っとるだろうと笑いかけると、分かってるわ、父さん、サンキュー!と言って握手を求める和子。

外で待っていた熊田は、家から出て来た和子に、どうでした?と聞くと、OKよ、任しといて!と和子が言うので、おおきに!「おおきに!和子さん!と感激した熊田はその場で踊り出す。

今僕、どないしたらええのか分かりまへん、1つキスでもしましょうか?と熊田が恥ずかしそうに聞くと、嫌よ!と和子が言うので熊田はしょげるが、バカね、本気だと思う?でも良いなんて言えないでしょう?などと言いながら、和子は車の運転席に乗り込む。

熊田も助手席に乗り込み、運転席の中で2人はキスをする。

晴れて熊田と和子の結婚式が行われ、親戚一同との記念写真を撮る事になる。

変わった車だね?と三津田から聞かれた熊田は、ぽんこつ部品で僕が作った車なんですと、側に置いてあったハンドルが2つある特性の車を見ながら答える。

その時、耕平と一緒に出席していた美沙子が抱いた赤ん坊が泣き出す。

その赤ん坊を受け取った宮沢先生があやして見るが巧く行かないので、同じく後方に並んでいた哲子と花江があやし始める。

その時、医者の池野が、側に置いてあった奇妙なものを押して見ると牛の鳴き声のようなクラクションが鳴る。

その特性クラクションとラッキーなナンバープレートを付けた特製の車に乗り、和子と熊田はそのまま新婚旅行へ出かける。

この辺から私に運転させて!と「和子が頼むと、まだお前には運転はさせられへんと熊田が言うので、お前ですって!最初が肝心!私は封建的なやり方は嫌いなの!と和子が怒ったので、車を停めた熊田は困り、じゃあ、君ではどう?と譲歩するが、でも私、運転するわよと言い、和子は勝手にハンドルを持ってアクセルを踏む。

ヨロヨロ蛇行運転を始めた車は、対向車や自転車のグループを戸惑わせながら進んで行くのだった。
 


 

 

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