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親不孝通り

川口松太郎原作映画でその息子さんの川口浩さん主演、恋人役はこの作品の2年後に奥さんになる野添ひとみさんと云う作品。

一種の復讐ものなのだが、若者が主人公と言うことでドロドロしたものにはならず、ラストには救いが用意されており、後味は悪くない作品になっている。

川崎敬三さんと並んで、大映の気の弱そうな二枚目イメージがある船越英二さん(船越英一郎さんのお父様)が、珍しく冷酷な色悪を演じている。

川口浩さんのお姉さん役を演じているのは桂木洋子さんで愛らしい方だが、こちらも普段余り見かけない珍しいキャラクターではないかと言う気がする。

お姉さんがちょっと古い女のパターンで、男に棄てられたら悲劇のヒロインのように身を引くのに対し、女子大生役の野添ひとみさんの方は、もっとドライに自分の運命を自分で切り開こうとする対象が面白い。

結局、この女性の強さに最初は立場が上だったつもりの男が跪かざるを得なくなると言う展開が面白い。

冒頭から、不景気の中での就職難で苦しむ学生達の姿と、毎日遊んで暮らす与太学生達の対比も面白い。 ある種の社会風刺映画のようなものだと思う。

太った中年女性がダイエットのためフラフープを使用しているらしきセリフなどに時代を感じさせる。

この時代の作品にしてはエンドロールが付いているのがちょっと珍しく、今ほど長々しいものではないが、冒頭のタイトルの後のキャストロールの他のスタッフロールが続いている。
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
1958年、大映、川口松太郎原作、須崎勝弥脚色、増村保造監督作品。

森永チョコレートの球体広告塔が回る銀座の朝。

ビールを自転車の荷台に入れてご機嫌で店に戻る途中だった寿司屋「銀六」の主人仙蔵(潮万太郎)は、路地に入り、顔なじみ連中に笑顔で挨拶しながら走っていたとき、突然前から来た車と衝突しそうになり転んでビール瓶を全部割ってしまう。

車から降りて来たのはアメリカ人青年で英語でまくしたてて来たので、てやんでぇ、日本で英語なんか言うなよと文句を言っていたが、その背後にやって来た大学生の外崎勝也(川口浩)が、オヤジ、せっかくのカモなんだから任せておけよと声をかけ、何やら英語で外国人に話しかけると、その車に乗り込み、オヤジ!自転車退けてくれよ!と仙蔵に頼むと、そのまま車で去ってしまう。

勝也がアメリカ人青年とやって来たのはボウリング場で、マネージャー役の友人山口(小林勝彦)と貴島(三角八郎)から5万を借りると、金を賭けての勝負を始める。

タイトル

こいつは行かれそうだぞ、5万円!ラスト、頼むぜ!勝也!などとハラハラ貴島と山口、そして女子大生の桑原奈美(市川和子)の3人が応援する中、1回戦はあっさり勝也が負けてしまう。

ちっ、やられやがった、バカヤロー!と金を貸した山口達が怒ると、ちぇっ、ついてねえ!とぼやいた勝也だったが、私だって損しちゃったわ、1000円!と文句を言って来た桑原奈美をアメリカ人の青年に差し出し何事かを頼み、もう1回戦始めることにする。

奈美を賭けての勝負だった。 今度は頂き!と上機嫌の勝也はあっさり勝利したので、奈美は喜んで勝也に抱きついて来る。(ここまでキャストロール)

その後、奈美と一緒に「銀六」にやって来た勝也は、さっきの割れたビール代!と言って金を仙蔵に渡すと、多すぎるよと仙蔵が1枚戻そうとしたので、私、もらっとく!と言い、ちゃかり奈美がそれを貰い受ける。

女将が仙蔵に税務署から電話だよと教える。

寿司屋の座敷で学生服からスーツ姿に着替えた勝也は、今手にした大金を手に、奈美と一緒にナイトクラブへと繰り出す。

同行した奈美は、相当飲んで酔っているくせに、お飲物100円均一なんて!少し酔ったかななどとぼやき。

ね、あの時負けたら、アメリカ人に渡すつもりだったの?と絡んで来る。

負けるつもりはなかったさ、嫌だったら、俺のような与太学生と付き合うなよと勝也はうそぶく。

嫌い!と言い残し、奈美は帰って行く。

あんなに飲まれたんじゃ敵わねえやとぼやき、勝也はハイボールのお代わりをする。

自宅に帰り着いた勝也を待っていたのは、姉の外崎あき江(桂木洋子)だった。

ご飯は?とあき江から聞かれた勝也は、すんだと答えたので、おいしいケーキあるのよ、食べない?と聞かれ、好きな男が出来たんだろうとからかう。

博打やってみろよ、人の心が分かるよと悪ぶる勝也に、母さんからて玩味よとあき江が言うと、読まなくても何が書いてか分かるよ、お父さんは県知事までなった方です、あなたも頑張って下さいだろう?大体政治家なんて3流の人間がやることだよと言うので、じゃああなたは何流なの?とあき江が聞くと、俺は4流さ、どうせなるのはサラリーマンくらいと勝也は自嘲する。

明日就職試験なんでしょう?とあき江が案ずると、これも彼のプレゼントだろう?どうせイミテーションだろうなどとアクセサリーを見つけた勝也は言い、僕は変な奴には渡さないからね…などと姉想いの一面を見せるが、姉が見ていた雑誌のウェディングドレスの写真を見て考え込む。

翌日、学校では、警職法に反対しよう!などとシュプレヒコールを上げている学生を見ながら、ラグビー部の学生(藤巻潤)などノンポリ組がすぐ闘争か…などと白けていた。

勝、今日の就職試験何度目だ?と聞かれた勝也が6回目と答えると、12回って言うレコードの奴もいるから気にするなと仲間たちから慰められる。

洋裁店に勤めているあき江は、これじゃゴルフもフラフープも効かないわなどとぼやいているウエスト96と言う夫人の相手をしていたが、その後、電話をかけ、今夜お会いしたいのと頼む。

一方、就職試験に出向いた勝也は、会社の担当者から、不景気の折、昨日の重役会で今年の一般募集は中止することになりましたとの説明を受けていた。

試験中止を言い渡された参加学生達は、これじゃあアメリカで就職した方がマシか?とか、畜生、革命起きないかな!などと口々に文句を言いながら帰って行く。

あき江が店を出ると、車でやって来た江馬修一(船越英二)が乗り込んで来たあき江に、君、困るよ、僕だって仕事の都合があるんだよと電話で急に呼ばれた文句を言って来たので、今日だけよ、無理はもう言わないわとあき江は答える。

車が出発するのを、ちょうどやって来た勝也が目撃する。

あき江が見たがったのはボクシングだったので、君は拳闘が好きなのか?と修一が聞くと、隣に座ったあき江は別に…と応え、今の私は何かしら刺激が欲しいのよ、赤ちゃんが出来たらしいのと打ち明ける。

これから診察に行くけど一緒に行ってくれるわね?とあき江が頼むと、ちょうど良いね、始末するんだ、堕ろろすのさ、なるべく早く…と修一は無表情に答え、車で病院へ向かう。

人気のない暗がりで修一が車を停めると、何だか怖いわとあき江が怯えるので、大丈夫だよと修一は慰めるが、手術終わるまで待っててね、私たち、結婚してたら産めたのね?とあき江は哀しげに言う。 堕ろすの嫌なのかい?と修一が聞くと、そうじゃないわ、結婚したいの、早く…とあき江は言う。

すると修一は、君、僕は確かに君を愛しているが、結婚する気はないぜと言うので、何故?とあき江が聞くと、別に理由はない、仕事が忙しいって言ってるじゃないないか、僕たちは愛情を楽しんでいるんじゃないかと言うので、私、これっきりあなたにお目にかからないわと言い、あき江は車から降りる。

飲み屋の中では与太学生達が、どうして世の中試験ばかりなんだ?と愚痴をこぼしあっていた。

俺のオヤジなんか、小学校から大学までの俺の教育費に300万もかけたって言ってるけど、それで月給1万3000円なんだぜ、俺に今300万ポンとくれたら大儲けしてやるのに!などと与太話に花を咲かせていた。 そんな中、無言で酒を飲んでいた勝也は店を出る。

あき江は1人で新橋ビル内の産婦人科に来ると、術後、すぐに金を払って帰ろうとするので、大丈夫ですか?後1時間くらいはお休みになっていた方が…と忠告する看護婦(松村若代)の言葉を無視して、タクシーを呼び帰宅する。

先に来たくしていた勝也が、帰って来たあき江を見て、どうしたんだ?顔色悪いぜと言うと、ちょっと風邪を引いたのよ、今日の試験は?とあき江が言うので、中止さ、でも俺タフなんで、通るまで何度でもやるよと勝也は答える。

隣室に入ったあき江は、布団を出そうとして倒れたので、どうしたんだ、姉さん!と物音で気付いた勝也が駆けつけると、お医者さんを呼んで来て、産婦人科の…とあき江は苦しそうに頼む。

往診を終えた女医(竹里光子)にどうなんでしょう?と勝也が聞くと、少し動き過ぎたんですね、明日又治療に来て下さいと女医は言い残し帰って行く。

布団に寝かされたあき江が、部屋の外の柱にもたれかかりしゃがみ込んだ勝也が黙っているので、かっちゃん、怒ってるの?と声を掛けると、相手は誰なんだい!と聞かれたので、あなたには関係ないことよ、私はもう気にしてないのよと答える。

しかし怒った勝也が、姉さん、捨てられたんだな?と言うので、私が捨てたのよ、何もかも忘れてさばさばしたわとかつ枝が強がり、ココア作って頂戴とあき江は頼む。

0531のナンバーの車の持ち主、大東商事の次長!そうだろう!とココアを作りながら勝也は、自分が目撃した修一の車の記憶から探り出した情報を明かす。

翌日、仕事をしていた修一は、次長、この方が…と部下から名刺を渡され応接室へ向かう。

そこにいた勝也を見た修一は、君か、外崎勝也君と言うのは、何?あき江さんのことなら、君と話しても仕方ないね…と言うと、ふざけんな!あんた、妊娠させて棄てて、それで平気か!と激高した勝也は食って掛かって来る。

結婚しないと言っただけだ、そしたら君の姉さんが…と修一が言うと、男らしく責任取ったらどうだい!と勝也が言うので、恋愛に法律上の責任はないんだ、失敬するよと部屋を出ようとするので、勝也がつかみ掛かると、僕も喧嘩は自信あるんだ、いつでも来たまえ!と言い残し修一は仕事に戻る。

昼休み、外出した修一を尾行した勝也は、駐車場で食料を大量に買い込んで兄の修一を待っていた妹の加根子(野添ひとみ)を目撃する。

随分買ったんだなと食料の袋を見て驚く修一に、山ではとてもおなかが空くんだってと明るく答えた加根子は、兄さん、どっか良い山知らない?学生時代登山マニアだったんでしょう?仕事ばかりしているとパパみたいになっちゃうわよとからかう。

仕事の鬼になって、パパはママが死んでからはお妾さんの家に泊まってばかり…、兄さんまでそうなったら、私、本当に不良になっちゃうわよ、じゃあ、荷物届けといてね、6時には帰りますと修一に頼んで加根子は去って行く。

勝也は加根子を尾行する。 加根子はバーで桑原奈美らと同じ女子大のグループと合流すると、山登りの計画を話合うが、勝也はさりげなく客を装いその会話をカウンターから聞く。

奈美が勝也に気付き、車運転してくれない?と声をかけて来たので、用心棒かい?と聞くと、2日5000円でどう?などと奈美が言うので安すぎるよなどとバカにしながらもその話に乗ることにする。

何は他の女子大生たちに勝也を、六大学のボウリングチャンピオンで278点と言う記録の持ち主よと教える。

山の別荘に向かう途中、女子大生達は、何故流行ってクルクル変るのかしら?デザイナーが食べる為でしょう?世の中変なのよなどとおしゃべりに熱中し、「フニクリフニクラ」を歌ったりご機嫌だった。

別荘に着き、女子大生達が車から降りる中、最後に降りて来たんで加根子を勝也はじっと見つめたので、加根子の方も勝也の視線に気付く。

別荘の中では、来年卒業ね、今年の女子学生の求職はゼロ!結婚するしかないってこと?大学で学んだことは全部ムダだったのね、ハント万歳!歌いましょう!などと酒の勢いもあり愚痴の連続だった。

小屋の外に立っていた勝也は、加根子が1人で出て来たので、後を追い、どうしたんだい?と声を掛けると、飲み過ぎたのよ、苦しくて…と加根子は答える。

すすき野の前に来た勝也は、きれいだな、すすきは…、まるで湖みたいだと言うと、そうね、泳ぎましょうか?と加根子も同意したので、手を取って一緒にすすきの中を走り始める。

やがて加根子をすすきの中に押し倒した勝也は、覆い被さって強引にキスをする。 夜空を飛行機が通過して行く。

山から帰って来た勝也はまだ部屋でふさぎ込んでいるので、洗濯物を干していたあき江は、何考えてるの?約束じゃなかった?山に行ってすっきりしてくるんじゃなかったの?と聞く。

姉さん、腹の中じゃ、あいつと会いたいんだろう?と勝也が言うと、私1人で生きていくことに決めたの、口外に洋装店を出すの、マスターがお金出してくれるのよ、私、シックな服を作るわなどとあき江が言うので、変なおとぎ話止めてくれ!会いに言ったらどうだ!と勝也は怒り出す。

出来ないわ!とあき江が答えると、俺はやるぜ!あいつは法律上の責任はないって言いやがった、俺はやるぜ!あいつの泣きっ面を見てやるさ!と言い捨て、ボウリングしに出掛ける。

そのボウリング場に加根子がやって来て、貴島が、話あるんだってさと勝也に知らせる。

話ってなんだい?とボウリング場の隅で聞くと、どうしてあんなことなさったの?私をもてあそんだのね?と加根子が言うので、違う!責任負えって言うのか?と勝也がふて腐れると、そんなことじゃない!と加根子は言う。

愛しているって言えば良いのか?と勝也が聞くと、ふざけないで、そんなことじゃないわ、私、あなたを殺して自分も死のうと思ったと真顔で加根子が責めるので、僕が悪かった、謝ると勝也は素直に言う。

すると加根子は、悪いのはあなただけじゃない、責任は私の方にもあると思ったの、私、あなたを好きになる、愛して生きていくわ、明日の日曜日会って下さらなくて?と言って来る。

良いよ、君には頭上がらないからねと勝也が答えると、じゃあキスして!と加根子は要求するが、さすがに勝也は無視してボウリングしに戻って行く。

その夜、自宅でピアノを弾いていた加根子は、酔って帰って来た修一に、毎晩、飲んで来るわね?と嫌みを言うと、仕事に飲み会は必要だからね、遠からず胃潰瘍だ!などと修一は答える。

兄さん、奥さんもらわない?その方が健康に気づかってくれて良いわ、兄さん、恋愛したことある?などと加根子が言うので、ないとは言わんがね、今は忙しいからなと修一は答える。

兄さんが結婚するのが見たいわなどと加根子がしつこいので、お前恋愛してるのか?バカにはしゃいでいるからさと修一は気付く。

翌日、加根子は勝也を「カルメン」の演劇に誘うが、勝也は退屈そうにあくびをする。

上演後、廊下に出た勝也が背伸びをするので、どう?面白かった?と加根子が聞くと、僕はスポーツとかダンスとか身体を使うものしか興味がないなと勝也が言うので、本とか読まないの?と加根子が聞くと、週刊誌とかスポーツ新聞は読むけど、すぐ捨てちゃうねと勝也は言う。

でもあなた経済学部よね?と加根子が不思議がるので、大学で教えていることなんか社会に出たら何の役にも立たないんだ、これでも毎日せっせと勉強してるんだぜと勝也が言うので、どこで?と聞くと、親不孝通りさと勝也は言う。

その後、勝也が自分のいつも遊んでいる場所へ加根子を連れて行くと、何故ここが親不気宇通りなの?と加根子が聞くので、バー、キャバレー、ナイトクラブ、俺みたいな学生が親を泣かしているからさと教える。

馴染みの店に入ると、待ち受けていた山口と貴島が、良いカモを見つけたぜ、パンナムの奴でさと話しかけて来たので、ダメだね、今日は先約があるんだから5万貸せと勝也は言う。

外で待っていた加根子は、見知らぬ学生から、お宅、目白?俺立正とか、上野だろう?絵描いてるんだろう?などと話しかけられていたが、店から出て来た勝也がキャバレーに連れて行く。

勝也が色んな男女に挨拶されるので、大変な顔ねと加根子はからかう。

奴らはみんなクズだけど、体裁がないんだと勝也は言う。

店のあちこちで、学生達がこのままじゃ日本はアメリカの女中じゃないか!いやソ連の奴隷になるしかないさ、世の中殴り合いばかりだ、政府から夫婦まで、朝から晩まで闘争さ!などと議論しあっていたが、奴らもどうせ2〜3年すればサラリーマン、その頃にはバー遊びなんて飽きてるさと勝也は冷めたように加根子に教える。

そんな勝也に近づいて来た奈美は、加根子、用心しなと勝也のことを忠告する。

続いてやって来たナイトクラブでは、外国人バイヤーと同席したどこかの会社の会長が、ビフテキなんて外国のは旨くない、何たって日本が一番さ!などと1人はしゃいでいた。 TVやラジオ、映画の売れっ子らしい役者も来ていた。

こう云うのを楽しめないとサラリーマンじゃないんだと勝也が教えると、面白い所ね、ナイトクラブってと加根子は珍しがる。

こう云う所に来るのは芸能人か社用族か、さもしい所さ…と勝也は白けたように言い、踊ろうと誘う。

巧いね?と勝也が加根子の踊りを褒めると、へたよ、時々兄や兄のお友達と踊るくらいだから…、ねえ、あなたって思ったよりずっと面白い人ねと加根子は勝也を見直したように言う。

私、決心したわ、あなたをずっと愛して行くことをと加根子が言い出したので、後悔するぜと勝也は言い聞かせるが、大丈夫!と加根子は言う。

アパートでアイロンがけをしていたあき江は、表に車が停まった音に気付き、窓から下を覗くと、タクシーから降りて来た勝也が加根子からが、今度何時会える?明日?と効かれ、明日はカモの相手しなきゃいけないんだと勝也が答えるので、じゃあ明後日!待って!と言い、加根子はキスをねだる。

そんな2人の様子を、窓からあき江は微笑ましく見つめる。

加根子が待たせていたタクシーで帰り、勝也が帰って来ると、かっちゃん、水臭いわね、可愛らしい人ね、今度紹介してねと今見た加根子のことを聞く。

彼女、江馬加根子って言うんだ、江馬修一の妹さと勝也が教えると、驚いたあき江は、それ、偶然なの?と聞き、俺の方から近づいたのさと勝也が言うと、どう言うつもりなの!と気色ばむ。

江馬修一が姉さんにしたことをそっくり仕返ししてやるんだ!と勝也が言うと、そんな事したら姉さん怒るから!とあき江は叱るが、俺は姉さんを幸せにしたかった!それを不幸にしやがって!聞かないよ!と勝也の怒りは収まらなかった。

後日、バレーボールの試合の審判役をしていた加根子にあき江は会いに来る。

勝也さんの?と驚く加根子に、姉なの、初めまして!夕べ、弟からあなたのこと聞きましてね…とあき江が挨拶すると、一目でお姉さんと分かりましたわと加根子は応える。

弟は大変乱暴者なんで…とあき江が言うと、私も意地っ張りなんです、一生後悔させてやりますわ、出来たら結婚するつもりですのと加根子は言う。

うらやましいわ、あなたたちが、若くてたくましくて、怖いものなんかないみたいねとあき江はまぶしそうな顔で言う。

ボウリング場から、パンナムの奴ら3時間も払いやがらなくて…などと文句を言いながら「銀六」に帰って来た勝也、山口、貴島、奈美らは、おやじさん、弁当出来てる?と聞き、加根子遅いわね、ずっとおめかししてるのよなどと言い合っていた。 外に出てみた勝也は、そこに加根子が来ており、いきなり抱きついて来てキスして来たので驚く。

良かった!夕べ怖い夢を見たの、あなたが私を殺すの、夢で良かった…などと言う加根子に、乗れよと車に誘った勝也は、皆さんは?と加根子が案じるので、まだ「銀六」でオダ上げているよ、どこ行こう?どこへでも行くぜと聞く。

すると加根子が山行って!と言い出したので、どの山?と聞くと、私たちの山の方へ、まっすぐ!と加根子は応える。

例の別荘にやって来ると、すすき野の前に立った加根子は、自ら勝也の手を引いてすすきの中を笑いながら走り出すと、いきなり勝也の身体を押し倒し、自分も仰向けに寝っ転がると、両手を差し出して求める。

勝也が上に覆い被さると、もっと強く抱いて!このまま眠りたいなどと言うので、凍っちゃうよと勝也が言うと、私と死ぬの嫌?と加根子は聞いて来る。

長生きしたいんだよと勝也が応えると、私と一緒に?と加根子が聞くので、出来たらねと勝也は言う。

私、きっと良い奥さんになるわ、抱いて!と加根子は言う。

雨のある日、掃除機をかけていた女中(須藤恒子)は、奇妙な声が聞こえたので洗面所の方に目をやると、加根子が吐きそうにしていたので、どこか具合が悪いんですか?と聞くが、何でもないのと加根子は言う。

その後、加根子は1人で産婦人科を訪れる。 医者(春本富士夫)から名前を聞かれた加根子は、石川良子と偽名を名乗り、年齢は19、結婚してますね?と聞かれるとはいと嘘を言う。

大学では学生課の掲示板に書かれた就職先の募集も狭まり、残っているのは初任給8000円くらいの会社しか残っていなかった。

ホームランポカスカ打って、2000万も頂いた奴もいるって言うのに…と掲示板を見に来た学生達はぼやく。

クロスワードパズルをやっていた学生課の職員に、イースター商事は?と聞きに来た勝也だったが、良く読んでね、昨日もう決まりました、後はタクシー会社の事務員ならありますなどと職員は答える。

そんな大学の校庭にやって来た加根子は、ビッグニュースがあるの、私ね、赤ちゃんが出来たらしいの、もう2ヶ月よと勝也に言うので、へえ…と勝也は気のない返事をする。

でも、妊娠してますって言われたときうれしかったと言うので、お家の人は知ってるのかい?と勝也が聞くと、知る訳ないじゃない、あなたと付き合っていることも知らないと加根子は言う。

それを聞いた勝也は、チャンスだね、兄さんに紹介してくれ、認めてもらおうや、全てはそれからさ…と言う。

その後、加根子は商事会社で働いていた修一の所へ行き、兄さん、重大な話があるの、私の一生を左右するような…、私、結婚するの、会ってくれる?まだ学生よ、だから結婚は2〜3年後、ハンサムだったりブルジョアって訳じゃないけど、たくましい方なのとうれしそうに報告する。

どこで会おうか?と修一も喜ぶと、自宅が良いわ、私ごちそう作るわ!などと加根子は張り切る。 勝也は小松タクシーと言う会社に来ていた。

ちょうど社長が、電話の応対が悪い、もっとお辞儀しながら言うんだ!最近の若いのは少しも商売を大切にしない!と新人を叱りつけていた所で、君、1万2000円じゃ不満かね?と聞くので、結構ですと答えると、じゃあ来年から努めてもらいましょうと社長は言う。 そこに、事故を起こしましたと社員が来たので、君は今年で3度目だよ、今度やったら首だよと叱りながら奥へ向かう。

すると、近くにいた事務員が、学生さん、あんた入ったら組合の委員長になってあんなの伸しちゃって下さいと社長の方を見ながら話しかけて来る。

洋装店で働いていたあき江は、いつもの太った夫人の愚痴を聞かされていたが、そこに勝也がやってきて、就職したよと言うので、お祝いしましょうと喜ぶが、今晩、もっとおめでたいことがあるんだと勝也は言う。

その日、加根子は、やって来た勝也をステレオを聴かせながら待たせ料理をしていた。

随分立派な家だなと勝也が感心すると、ままが設計したのよ、でも出来てすぐ亡くなったの、3年前よと加根子は教える。

そこに修一が帰って来るが勝也を見て愕然とする。 君は加根子と結婚するつもりかね?と聞くと、事情を知らない加根子は、私の目は確かだと思うわと自慢し、僕たちは実際結婚しているのと同じで、子供も出来ているんです、結婚しなけりゃどうしようもないでしょうとうそぶく。

しかし修一は黙ったままなので、もう兄さん口説くの止めた方が良くないか?僕は気に入られていないようだ、お婿さんになる人は別に探すんだな、君も子供堕ろしちゃえよ、僕の方は別に良いよと言い出すと、殴れよ!俺があんたをどんなに殴りたかったか!と修一に勝也は迫る。

そして、訳が分からず唖然としている加根子には、文句があるならこいつに言ってくれ、こいつは姉さんを孕ませて棄てたんだ、俺はその真似をしただけさ、あばよ!と言って勝也はさっさと帰って行く。

驚いて固まった状態の加根子は、勝也さんの話、本当なの?と聞くと、ああ…と修一が認めたので、情けない人ね!触らないで!と言い捨て自分の部屋に逃げ去る。

加根子!と呼びかけた修一だったが、ムダだと分かると酒を煽る。

後日、キャバレーにいた山口と貴島は、いよいよ12月22日か…、年越しには最低10万いるな…、プロデューサーとしては苦労するななどとぼやいていたが、そこに酔った勝也が姿を現す。

荒れてるのね?加根子は?と奈美が聞くと、とっくにお手切れさと勝也は言うが、そこに加根子がやって来たので、来たわよと奈美が教える。

ふん!と鼻で笑った勝也は、何だよ?さっきさよならしたぜ、もう用ないはずだぜと悪ぶってみせるが、私、大阪のおばさんの所へ行くわ、学校辞めて働くの、あなたの子供産むつもりよ!と加根子が言うので、産みたきゃ産めば良いさと勝也が言うと、好きにするわ、最終決心もしたわ、どこまでもあなたを愛して行くわ、子供のか拝みたけりゃいらっしゃい!と言うと去って行く。

後に残された勝也は、馬鹿な女だ!子供を産むなんて30過ぎのオールドミスの言う事だ!と笑い出すと奈美と踊る。

酔って帰って来た勝也は、寝ていたあき江に、起きろ!と呼びかけたので、ご機嫌ねとあき江が呆れると、やったぜ!修一の奴にべそかかせたぜ!と伝える。

何したの!とあき江が驚くと、何もしてないさ、加根子にバイバイしただけさ、だけどあいつガキ産みたいなんて言ってると勝也が言うと、かっちゃん、それ本当なの?とあき江は問いつめる。

もうあんたのようなキ○ガイとは一緒に暮らさない!ここから出て行ってよ!とあき江は怒る。

ああ、銀座は俺の家みたいなものだ、願ったり叶ったりだ、後悔なんかするもんか!と勝也も開き直ったので、佐々と出て行きなさい!とあき江は勝也を追出す。

江馬家では、荷造りをしている加根子に、どうしても大阪に行くのか?子供を産むつもりなのか?母一人でどうして行くんだ?世間知らずも大概にしろ!産まれて来る子だって私生児じゃないか!お前の気持ちが分からないね…と修一は嘆いていた。

すると加根子は、兄さん、自分の心配したらどうなの?くだらない人間にならないで頂戴!と言い返す。

そこに電話があり、あき江からの呼び出しだった。

師弟の喫茶店にやって来た修一は、今さら何の話だって言うんだ?と面倒臭そうに待っていたあき江に聞く。

君の弟にも呆れたぜ、キ○ガイだよ、狂犬だねと言うので、私のせいよ、加根子さんを見ていたら私も見習うことにしたの、あなたを諦めないの、それ以外には幸せにならないって。

勝也は立派な弟よ、あなたもそうよ、私を棄てたら幸せになれないわよとあき江は言う。

冗談止めてくれと修一は戸惑うが、冗談かしら?とあき江は言い返す。

「銀六」の2階で寝ていた勝也は、4時だよ、さっさと顔を洗ってくれ、さきからお客様がお待ちですよと仙蔵が起こしに来る。

そこへ女将が、お前さん、税務署からだよと下から声を駆けて来たので、又税金か!と仙蔵は不機嫌になる。

客とは修一だった、客の手前だから、今日は殴られりゃしねえよ!と勝也が身構えると、負けたよ、姉さんと結婚することに下、俺の真似をして結婚してくれないかと修一は頼んで来る。

あいつは9時の「月光」で発つ、見送ってくれないか?と修一は言うが、うるせえ、帰れ!と勝也は追い返す。

その後、店にやって来た山口と貴島は、いくら読んでも来てくれないと二階の勝也のことを言い、おやじさん読んで来てくれないか?と頼む。

二階へ上がって来た仙蔵は、勝也さん、あんたとも長い付き合いだが、大概のことは許して来たつもりだ、でもね、意地の張りっぱなしは野暮だよ、若いうちは勝手気侭なもの、それも結構と話かける。

すると勝也は、恩に着せようって言うのか?と言い返して来たので、あんたはもう大学卒業なんだ、これを機にきっちりしたらどうかね?良くねえな、勝也さん点と仙蔵が言うと、行きゃ良いんだろう?と勝也が起き上がったので、どこへ?と仙蔵が驚くと、知るもんか!と言い、下に降りると、山口と貴島に5000円貸せ!大阪に行くんだと言って金を受け取ると出て行ったので、おい、いつ帰ってくるんだよ?と貴島らが呼びかけると、もう帰って来ないよ、遠からず子持ちのサラリーマンになるんだから、加根子だね…奈美が教える。

東京駅の「月光」に乗り込んでいた加根子は、隣の席に急に勝也が座って来たので、どこ行くの?と聞くと、君の行く所さと勝也は答える。

どこ行っても?と加根子が聞くと、そうさと応え、いつまでも?と聞くと、そうさと勝也は答える。

あいつがいなくなると懐寂しくなるな…、そろそろ年だからな…と山口と貴島はぼやき合うと、来年私20よ!サラリーマンになれれば恩の字よ、明日はクリスマスイブよ!と奈美が慰める。

そこに、ラグビー部の学生達が、じゃんじゃん飲もう!おやじさん!と部員達を引き連れてやって来る。

山口と貴島と奈美の3人は「銀六」を後にすると、人通りも多い親不孝通りを歩いて行くのだった。

クリスマスの飾りにカメラが寄り、



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