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大当り百発百中

小沢昭一さん主演の66分程度の添え物ドタバタコメディだが、その新妻役を演じているのは松原智恵子さんで、キャストロールには(新人)と書いてある。

まだぽっちゃりとした幼い顔つきが残っている松原さんがいきなり、お世辞にも上手とは言えない歌まで歌わされているも見物。

冒頭、田代みどりさんが出て来るが、ショートカットで丸顔のその風貌はまだ少女そのままと言った感じで愛らしい。

由利徹、南利明の脱線トリオも出ているし、逗子とんぼさんや野呂圭介さんと云った懐かしい顔ぶれも楽しめる。

ジョージ・ルイカーが松原智恵子さんの父親役として登場しているのも愉快。

そして何よりも、後の金田一シリーズの「良し、分かった!」の警部役としてお馴染みの加藤武さんが、コメディの中の悪役として、強面とおとぼけ演技両面を見せてくれるのが貴重。

インスピレーションで競馬の予想が百発百中と言うのだから、一種の超能力コメディと言っても良い内容だと思う。

小沢昭一さんが劇中で色々な扮装をするのが見せ場の一つだが、乳母車の中でおしゃぶりをくわえた赤ん坊に化けていると言うコントネタは既にこの時代からやっていた事が分かる。

当時の日活映画には良く登場するチキンラーメンが本作にもわざとらしく出て来るが、当時のチキンラーメンは平べったく四角い成形だった事が分かる。

他愛無い内容ながら、小沢昭一さんの芸達者振りが楽しめるナンセンス劇になっている。
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
1961年、日活、高田保原作、山内亮一+籐善平脚色、春原政久監督作品。

競馬場の情景

タイトル

京王バスに1人乗っていた作詞家の及川太郎(小沢昭一)は手帳に馬の名前を書き込んでいた。

やがて、五段坂下の停留所に着いた途端、どっと客が乗り込んで来て席を我勝ちに奪い合う中、押されて立ち上がった及川は手帳を椅子に座た客たちの尻の下に見失い慌てる。

さらにペンのキャップまで見失い狼狽する。

あっという間に満員になり、車掌まで外に押し出される始末。

何とか入り口にしがみついた車掌が、少し先で揺れますのご注意!と乗客に呼びかける中、及川は客に押されてステップの所に倒れ込み、そのまま踏みつぶされそうになるが、その時、2-4だ!とひらめくと同時に、そこに転がっていたペンのキャップを見つけて安堵する。

「イースターレコード社」の録音室では、新人歌手のみどり(田代みどり)が及川作詞の新曲を吹き込んでいた。

その最中、ブースに到着した及川は、みどりが歌っている歌詞の間違いに気付き、スタジオに入り込むと、コンダクターにストップをかける。

止めましょう!僕の書いた詩と違うよ!とコンダクター(井東柳晴)に文句を言うと、君は誰かね?と聞かれたので、この曲の作詞家だ!ハートはロマンチックじゃなくて、お尻はロマンチックなんだよ!と及川が訂正するが、こんな物書いて!こっちはもう36回も本番やらされているんだ!とコンダクターが怒り出す。

僕だって50回も書き直したんだよ!と及川も怒ると、係員(玉井謙介)が及川に駆け寄り、もう時間がないんだと言い聞かせようとするが、時間がなかったらお尻がハートになるのか!と及川は納得しない。

みどりも、印刷されている通り歌っているだけだと言うので、楽譜を見た及川は、自分の書いた詩と違っているので、これは著作権侵害だ!と憤慨する。

しかし関心なさそうなみどりは、文芸部でも聞いたら?と投げやりに言うと、TVだわ…と言い残しさっさとスタジオから出て行ってしまう。

「青いお月様」のポスターが貼ってある文芸部にやって来た及川は、川原部長(由利徹)に抗議するが、川原部長も、あなたの尻尾が…と思い込んでいたので、お尻がロマンチックなんですよ!と及川は訂正する。

しかし川原部長は、それにはもう興味がないようで、もう1つのこの間頼んでいたの出来たか?君は僕の弟子の中では1番なんだからと…と話を変えて来る。

一時期脳膜炎煩って休んだけど、もう大丈夫なんだろう?と言い、側にあったペンを持ってこれはと川原部長が聞いて来たので、ペンと及川が答えると、ではこれは?と小指を出して川原部長が聞いて来たので、こゆびと(小指と)と及川が即答すると、センスあるね、「こゆびと」なんてなかなか出て来ないよ、君のそう云うアブノーマルな所期待しているから…と褒め、〆切はけじめつかないから明後日までと言う事にしようと指示して来る。

さらに川原部長は、いくら新婚だからってロマンチックばかり入れちゃいかんよと釘を刺す。

さっそく、自分の机に座り、ペンをインクに浸し原稿用紙に向かった途端、出来たか?などと川原部長が覗き込んで来たので、今始める所ですよ!と及川は答える。

すると川原部長がカツ丼2つ!と部下に命じたので、及川は勝手に、しつこくないのね…と注文する。

百合丘にある及川の住まいの団地では、新妻の美知子が歌を歌いながら、ベランダから、下を通りかかった豆腐屋を呼び止めていた。

そして、片手で2、もう片方で○を作ってみせたので、豆腐20丁!と豆腐屋は仰天するが、そこにやって来たクリーニング屋が、がんも2つの事だよと教える。

クリーニング屋は届け物のついでに自分がそのがんもを美知子の部屋まで持って行ってやるが、ドアの前に来た時躓いてがんもを落してしまうが、慌てて拾い上げて紙に包み直し、知らぬ顔でドアを開ける。

ドアの前に洗濯物を置いておいた美知子は、ポケットの中良く見といてね、この前、ハンカチ入れてたらそのままだったわよと注意する。

クリーニング屋は、うちじゃそんな事ないんですがねと言いながら、服をチャックしていると、手帳が出て来たので、こんな物が入ってましたよと言いながら、中を広げて読んで見る。

そしてクリーニング屋は、芸者の名前が書いてありますよ、ヒメリュウ、ハルコマ…などと言うので、それを聞いた美知子は、おませね!と叱りながら手帳を取り上げる。

そして中に目を通した美知子は、不潔ね…、ハルミドリ…と不機嫌になる。 その美知子から電話を受けたのが母親の竹子(武智豊子)で、 何?芸者の太郎さんが!そりゃ大変だ!と驚き、庭いじりをしていた杉之助(ジョージ・ルイカー)に、パパ、大変よ!と呼び寄せる。 意味が分からないらしい杉之助に、太郎さんが芸者に手を付けたの!太郎さん、浮気!と竹子は教える。

アヤメノボリとかラッキーローズって書いてあった、4月1日キミタロー、大穴なんて書いてあるのと電話口の美知子は教えると、しっかりおし!ママは絶対許しません!と電話口で慰めた竹子は、すぐに杉之助と美知子の団地にやって来る。

竹子は、芸者ごときにうつつを抜かし、電話番号まで書いてある!と憤るが、奥の部屋から出て来た及川が、それは競馬ですよ、去年の競馬の勝ち馬を書いてあるだけですと説明すると、ママのお冠、おかしいと思った…と杉之助はすぐに納得する。

しつこいし、誤解だろう?僕は趣味で競馬の予想をやっているんだ、朝予想して、晩に結果を見るんです。

僕は予想屋じゃない!と怒りながら言うと、後でこの話!と杉之助は及川にこっそり話しかける。

僕、馬券は買わないんですと及川が言うと、それだけ当たるなら買ったら良いでようと竹子は勧めるが、空想を楽しむだけなんです、これも詩なんです、第3レースは3-3!と及川は言いながら面白くなさそうに出かけようとするので、美知子は、あなた、出かけるなら着替えして行って!と言い、着物を着ていた及川を無理矢理洋服とベレー帽と言う通俗な格好にさせる。

あなたも立派な流行作家なんだから…と竹子は言うが、僕はその着物が好きなんだよと及川は抵抗するが、ネクタイは?と迫る美知子に、そんなもの食わない!気に食わない!と拒否し、怒った及川は出て行ってしまう。

夫を怒らせた美知子は、ママ!と泣き出してしまう。

山中競馬場では、トミイ(青木富夫)、カンタ(神戸瓢介)、ダイスケ(近江大介)たちチンピラが青年を脅していたが、そんな金にならない事は止せ!とサングラスに黒服姿の池田(高原駿雄)が注意する。

兄貴は今日はついてない!と池田や中山(逗子とんぼ)ら子分は苛ついていた。

子分たちがスナックに戻って来ると、兄貴分の白井風太郎(加藤武)がカウンター席で待っていて、今日の馬券全部負けたと知ると、もう一度買って来いと子分たちに命じる。

今日はダメですぜと渋る子分たちに、おめえたちは言った通りに買いに行けば良いんだ!と白井は切れる。

4レースは何でしたっけ?と子分が恐る恐る聞くと、バカ!2-3!と白井は答えるが、店の奥のテーブル席でアサヒビールを1人飲んでいた及川が、3-3!と言うので、うるさい!と白井は怒鳴りつけるが、及川は気にせず4レースは3-1だ!と言う。 何だあいつは?と白川が気に悪がると、バーテンの東山(野呂圭介)が、昼前から来てずっと飲んでるんですよと教える。

2-3だ!などとまだ及川が白川に側に近づいて来て囁きかけるので、お前、勝ち馬の話をしているのか、それとも負け馬の話をしているのか?と白川が聞くと、縁起でもない勝ち馬に決まってるでしょう!と泥酔した及川が言うと、臍をかくんじゃない!と白川が叱りつける。

すると及川は、僕、物を書くとき臍をかくんですよ!と言い返して来たので、トーシロウが!競馬で臍をかくと言うのはすってんてんになる事なんだよ!と白川は馬鹿にしたように教える。

競馬場に馬券を買いに戻って来た子分たちは、どうせ負けるんだから半分はあいつが言っていた3-1にしようか?等と話し合うが、兄貴に怒られるぜと誰かが言ったので、結局みんな2-3を買う事にするが、中野1人だけがこっそり3-1を買ってみる事にする。

子分たちはもう資金がない事を案じるが、今、兄貴のレコがこれもんで金を作っていると1人が教える。

白川の情婦マユミ(千代侑子)は、その日、カメラマンの谷(南利明)のモデルをやっていたが、足を上げ、きわどいポーズをしたにも関わらず、ギャラとして3000円しかもらえなかったので、ケチ!たったこれっぽち!もっと都合つかない?と不満を口にすると、君がオーバーにべろっと出せば、こっちもべろっと出すよと谷は嫌らしい目つきで答える。

するとマユミが、カーテンの向こうのスタジオに入って行ったので、やっぱり女は金だ、片手くらい出すか?と独り言を言いながら手をカーテンの中に入れて数字を示すと、その手にマユミが着ていたセーターが乗って来る。

喜んだ谷が、さらに上乗せ金額を示す為に手をカーテンに差し込むと、今度は黒のブラジャーが乗って来た。

さらに手を差し込んで金額を示すと黒のパンティが乗って来たので、もう1本出したるわ!と谷は興奮状態になるが、カーテンが開いて出て来たマユミはすっかり着替えており、今日は止すわ、ハイチャ!と言い残しさっさと帰ってしまう。

残された谷は、見たかったよ…芸術…とぼやく。 その頃、スナックでは、寄った及川から手帳を奪い取った東山たちが、こいつ、今までのレース全部当ててますぜと白井に見せていた。

それに気付いた及川は、それ、僕のです…とテーブル席から呼びかけ、これ、芸者の名前です、失礼ですが、電話番号を持っている馬知ってますか?などと白井に問いかけごまかそうとする。

そこに子分たちが戻って来て、白井の言った2-3は全部ダメだったが、この人が言ってた3-1は5810円付いた!ドンピシャだ!と1人だけ買った子分が報告する。

それを聞いた白井は及川の胸ぐらを掴み、おめえ、どっからそのネタ仕込んで来たんだ!教えろ!と迫るが、及川が教えない!と拒否したので殴り飛ばされる。

床に倒れた及川は、思わず、美知子!と助けを求める。 そこにマユミが戻って来て、3000円白井に渡したので、良く出しやがったなと白井は喜びながらも、お前、まさか脱いだんじゃないだろうな?とマユミを疑ったので、バカ!とマユミは言い返す。

その時、倒れたショックで何かがひらめいたらしい及川は、紙と鉛筆!と言い出したので、子分たちは慌てて紙を探す。

及川は、春緑…と一見競馬の馬の名前のような事を呟くが、続いて出て来た言葉は、風踊りぬ…、君が美しく…などと詩の内容だったので、白井や子分たちはがっかりするが、マユミだけは、ステキな詩!素敵ね!と感激する。

白井が、次の第5レースの予想を4-3!と言うと、すかさず及川が2-4!と呟いたので、良し!おめえたちはあれを見張ってろ!と子分たちに及川を見張らせると、2-4全部買うんだ!と言い出す。

その後、カウンターの上でマユミが歌って踊っている間、白井は自分の名刺を及川に渡し、月給を今の3倍差し上げますから俺と組みませんか?どか〜ん!と当ててくれたら5倍出したって良いなどと酒を勧めながら誘う。

そして池田に目配せしながら、先生に一番上等な奴!と白井が声をかけたので、すぐに察した池田は、カクテルの中に眠り薬を混入したものを及川の前に持って来る。

詩を書きまくって下さいと白井がおだてると、こんなムードのない所じゃ書けない!と及川が言うので、ヌード?と白井は驚く。

雰囲気の事だよ!と及川が訂正すると、任しといて下さい、山奥深く分け入り、湯煙ゆらゆら〜って奴でしょう?と白井は、カクテルグラスを手にした及川がなかなか中味を飲まないので焦れながら答える。

きれいな川が流れているんでしょうね〜などと、カクテルグラスを手にした及川は夢見るように言うだけでなかなか飲まない。

せせらぎがちょろちょろ流れ、桜が咲いてるな〜などと酔った及川の妄想が続くので、満開の夜桜ですよ!と白井も調子を合わせる。

その時は日本酒ですね…などと言って焦らした及川だったが、とうとうカクテルを飲み干してしまう。 旅館「椿荘」 眠り込んだ及川は、旅館の風呂場の床に股引姿で寝かせられていた。

何か及川が呟いたので、お腹痛いの?お腹空いた?お食事?と勝手に見張りの子分たちが推測し、丼に四角い形状のチキンラーメンとお湯を注ぐ。

インスタントありがたや!などと言っている所に、池田と中山がやって来て、まだ目を覚まさないのか?と聞いて来る。

臍をかいてみろ!と池田が命じ、中山が及川の臍の部分をくすぐってみると、涌いて来た!紙と鉛筆!と及川が呟いたので、慌てて子分たちは紙を探し始める。

女中に紙!と呼びかけると、トイレットペーパーを持って来たので、それとペンを及川の前に差し出すと、まだ寝ぼけていた及川は、美知子!と言うだけ。 もう少しかいてみろ!と池田が命じ、また中山が臍をくすぐってみるが、やはり及川は、美知子!と呼ぶだけ。

その頃、団地で1人及川の帰りを待ちわびていた美知子は、あなた!と、牛と一緒に写った着物姿の及川の記念写真を見つめていた。

その時、靴音が近づいたので、及川が帰ってきたのかと喜び、入り口の所へ向かった美知子だったが、それを出迎える隣の奥さんの声が聞こえたのでがっかりする。

目覚めた及川は、見知らぬ旅館のベッドの上にいる事に気付き、側には子分が2人眠り込んでいた。

ここは一体どこ?着替えがない!と気付いた及川は、寝ていた子分を揺すり起こし、ここは一体どう言う所ですか?と聞くと、寝ぼけ眼の子分は、兄貴と夕べお約束になったじゃないですかと言い又寝入ってしまったので、約束ね…と呟いた及川も又ベッドに横になる。

しかし、目が覚めてしまった及川は二度寝をすることはなく部屋から逃げ出そうとするが、自分の身体にロープが巻かれており、その先端を眠っていた子分が握っている事に気付いたので、そっとそれを外し外へ出ようとする。

すると、部屋の外では中味の残ったウィスキーグラスを持った中山と黒めがねの池田が眠って座り込んでいたので、及川はその中山のウィスキーを飲み干す。

その後、子分からの電話で起きた白井は、何!逃げた!馬鹿野郎!何の為に見張らせてたんだ!レースはどうなる?草の根を分けても探し出すんだ!と怒鳴りつけると、ベッドで寝ていたマユミを起こす。

子分たちは、風呂場でロープを見つけたのでそれを引っ張るが、先には誰も付いていなかった。

子分たちが去った後、湯船の蓋の下から隠れていた及川が出て来るが、それに気付いた子分たちが追って来る。

及川は通りかかった女中にトイレの場所を聞くと、反対方向へ逃げて行く。 その後も、旅館の丹前を来て、葉を磨きながら泊まり客を装ったり、物干し台にほしてあった浴衣の裏に隠れたりして、旅館内を探しまわる子分たちから逃れる。

玄関にやって来た及川は、白井がやって来たのに気付き、そこにあった番頭が着る法被を着込むと、掃除をしている振りをして白井をやり過ごすが、後から付いて来たマユミが及川に気付いたので、慌てて外へ飛び出す。

子分たちも及川を追って町中へ出て来るが、神社の所に置いてあった乳母車の中の赤ん坊が及川の変装である事に気付く。

乳母車から逃げ出した及川は、店の前で洗濯をしているホステスに化けたりして子分たちをやり過ごすが、白井がやって来ていきなり掴まれ殴られたので、及川は、たまたま側に止まっていた人力車の中に倒れ込んでしまう。

すると車夫は客と間違え走り出したので、子分たちは慌てて後を追い始める。

座席で気付いた及川は、振り返った車夫が川原部長で、そっちの原稿どうなってる?と聞いて来たので驚く。

続いて車夫葉白井に代わり、俺たちの予想どうなってるんだ!と怒鳴って来るし、次は美知子が車夫になり、あなた、早く帰って来て!と振り向きながら頼んで来る。

あっけにとられる及川だったが、続いて振り返った車夫はどう見ても自分で、あんた誰だ?と聞くと及川太郎と言うので、じゃあ乗っている僕は誰でしょう?と聞くと、知らないよ!と言いながら、車夫の及川は人力車をひっくり返してしまう。

気がついた及川は、ホテルのベッドから転げ落ちた事に気付く。

部屋には誰もおらず、ドアも窓も施錠され、中からは開けられなかったが、カーテンを開いた窓から見えるのは中山競馬場だった。

どうやら競馬場側のホテルに軟禁されたらしかった。

部屋の外では、ここまで運び込めば大丈夫だ、今日の第10レースの予想を聞き出すんだと言った白井は、マユミ、今度はお前の出番だと声をかける。

するとマユミが張り切って及川の部屋に向かいかけたので、おめえ、やけにうれしそうじゃないかと白井は怪しみ、側にいた子分たちもミイラ取りがミイラになったりしてねとからかう。

部屋に入って来たマユミに及川は、君たちはグルになって何をしようと言うんだ!と警戒するが、ギブアンドテイクよ、風邪引いたんじゃない?熱はないようね…、二日酔いね、一杯やらない?などと言いながらマユミは及川に接近する。

美知子に電話しなきゃ…と及川が電話に近づこうとすると、大きな声を出すわよとマユミは脅し、会社の部長に電話をかけないと…と及川が言うと、うちのパパに言ってやるわなどとマユミは脅す。

そして、飲みましょうよ、私も一杯頂くわ…などと言い出したマユミは、あなったって良い人ね、それに詩人なんだし…と色っぽい目つきで迫って来たので、君、詩が好きなの?と及川が喜ぶと、詩を聞くと胸がワクワクして踊りたくなるのとマユミは言う。

通りで足がきれいだと思った…と及川がお世辞を言うと、ねえ、踊りましょうよ、良い音楽やってないかしら?と言い出したマユミはステレオのラジオをひねるとそこから聞こえて来た音楽に合わせて踊り出す。

巧いもんだな〜と及川が関心すると、こんな窮屈な服着て踊りゃしないわとマユミが言うので、上着とヒョウ柄のスカートを脱がしてやる。 すると黒いスリップ姿になったマユミは及川を手招きする。

すぐに意図を察した及川が、頭に指で角の形を作り牛になってみせると、マユミはフラメンコのような踊りを始める。

イカすわねとマユミが喜ぶと、詩人だってこのくらいできなくちゃと及川も答え、2人は一緒にタンゴ風の踊りを踊り出す。

なかなか出て来ないマユミに業を煮やした白井は、ドアの鍵穴から中を覗くと、及川がマユミを抱いてベッドに連れ込む所が見えたので、部屋の中に入り込むと、貴様!と言いながら、及川の頭に自分の帽子をかぶせ殴りつけたので、側にいたマユミは何するのよ!止めてと怒り出す。

その時、頭を殴られたショックで何かひらめいたらしき及川が、紙と鉛筆!ひらめいて来た!と言い出したので、驚いた白井はドアの所から紙と鉛筆!と外の子分に呼びかける。

あぐらをかいた及川の回りに息を詰めて白井とユカリ、子分たちが集まると、発表!第1レース6-4!第2レース2-1!第3レース5-2!第4レース4-4!第5レース1-5!第6レース2-4!と早口で発表し、もっとゆっくり!と聞き返した白井に、二度は言わないと拒否する。

8レースはどうでしょう?と聞くと、及川は首を横に振ったので、とりあえずこれだけありゃ上等だ!後は特別な部屋を用意しておもてなししろ!と子分たちに白井は命じる。

しかし及川は、ウッフンパ?これ使えるな…と、当たらし意思の一部のヒントを得たようで喜んでいた。

後でレース、みんな見せてやるよと白井が言うと、マユミも、先生大好き!と及川に抱きついて来たので、こりゃ良いやと及川も脂下がる。

その頃、団地の美知子は泣いていた。 いよいよ第10レースの話題が新聞に載る。

カメラマンの谷は、スタジオ内にモデルを数人侍らせ、彼女たちのまつわる色々な数字を参考に予想をし始め、1-3に決定だ!大穴田これは!と1人で興奮する。

池田は競馬場の払い戻しの窓口で大量の札束を受け取って、それをバッグに詰めて客席に来ていた白井の元へ戻って来る。

白井は東山に持たせていたトランシーバーを受け取ると、ホテルで及川を軟禁していた中山に、その後及川にひらめきがあったかどうか確認する。

しかし、及川は揺り椅子に座らされ、まゆみらが揺すっていたが一向にひらめきは訪れなかった。

こんなんじゃダメだ、本物のバスに乗らなきゃ気分出ないよと言うので、中山がトランシーバーでそれを白井に伝えると、バスでも何でも用意しろ!鐘は馬に食わせるほど持ってるんだ!まだ馬に食わせてないけどなと上機嫌の白井は指示する。

女性用ガウンを来た及川が、貸切りの東西バスの中で子供用の木馬の玩具に股がって乗せられる。

やがてバスが、団地がある百合丘に近づくと、百合丘だ!美知子!と叫び出す。

その頃実家に来ていた美知子は、太郎さん、誘拐されたんだわ!警察に知らせた方が!と訴えていたが、男は浮気しても絶対奥さんの所に戻って来るよ、ハワイでもそんな事あったね…と杉之助は言い、それを聞いた竹子も、ワイキキの浜辺で月がとってもきれいだったとうっとり昔を思い出す。

ママの顔もとても素敵だった!竹子!と杉之助がお世辞を言うと抱き上げられた竹子は杉之助の頬にキスをして喜ぶ。

そんな両親の仲良し振りを目の当たりにした美知子は、誰も私の事心配してくれない!しら倍!と泣き出す。

バスに乗っていた及川は、いつももっともみくちゃの中でひらめくんだと言うので、子分たち総出で及川を押し始める。

それでもひらめかない及川は、女房に会えばひらめくかも…と言い出し、ストップ!とバスを停めさせると、外に飛び出し団地へ向かうので、子分たちも慌てて後を追う。

ただいま、奴のアパートに来ました!女の顔を見たらひらめきがあるかもと言うのでと中山が白井にトランシーバーで連絡すると、バカ!逃げられたらどうする!と白井は叱りつける。

自宅の部屋の前に戻って来た及川が美知子!と呼びかけるが返事がない。

すると、隣の主婦が顔を出し、まあ、及川さん!と言うので、美知子はいないんでしょうか?と聞くと、朝方出て行きましたと言うので、帰ってきたら山中競馬場側の火照るサラブレッドにいると伝えて下さいと伝言し、又バスに戻る。

そして、これくらいの揺れ方じゃダメだ、どこへでもやってくれ!ぶっ壊れても弁償大くらい出せるだろうと及川がやけ気味に言い出したので、東西バスはわざと悪路を走り始める。

それでもひらめかないので、マユミさん、僕の頭を1つが〜んとやって下さいと及川は頼む。

しかしマユミがためらっているので、マユミさん、速く!と急かすと、マユミは決心し、及川の頭を殴って転がす。

すると及川はひらめきがあったようで、第10レースは3-3だ!と叫ぶ。

トランシーバーでその結果を聞いた白井も、3-3だ!と池田に命じ、馬券を買いに向かう池田は、これはどえらい大穴になりますぜと興奮気味になる。

有り金残らずぶち込むんだ!と白井は池田に命じる。 いよいよ第10レースが始まり、アナウンサーと解説者が実況を始める。

ホテルに戻って来た及川と子分たちは、TVでレースの中継を見始める。

とうとうひらめいたのね、私、先生の服、ちゃんとキープしていたよとマユミはうれしそうに及川に話しかける。

カロリーナってどれ?とテレビを見ながらマユミが聞くと、後ろの方!と子分が教える。

カメラマンの谷も、スタジオでモデルたちとトランジスタラジオで実況を聞いていた。

競馬場の客席で息を詰めてレースの行方を見守っていた白井たちだったが、途中でカロリーナが追い上げるが、結果はニューラッキーが一位で入ってしまう。

ラジオで聞いていた谷は、入った!と大喜びする。

一方、大量の馬券を買っていた池田は、カロリーナ、落ちちゃったね…と言いながら客席で泣き出す。

白井も、あの野郎!と言いながら悔しがる。 ホテルでも、マユミが、先生、ダメだったじゃないのと言うと、及川は、大丈夫、心配しなくて良いのと落ち着いて答える。

そこへ戻って来た白井が、貴様!良くも俺をペテンにかけやがったな!と及川に詰め寄り、子分たちから袋叩きにされた及川だったが、僕を信じて下さいよ、どうして誰も僕の事、信じてくれないんだと嘆く。

その時、TVでは、今のレースに進路妨害があったと審議が始まった様子が映し出されていた。

審議の結果、カロリーナ-シラネバダの順位だった事が発表されると、子分たちは一斉に万歳を連呼し始める。

やっぱり僕の言った通りじゃないか!と及川は逆上するが、そこへ池田がやって来て、馬券は全部破り捨ててしまったと告白したので白井は固まり、次の瞬間、池田を殴り飛ばす。

及川は、僕の言った通りだっただろう?お金欲しいんだろう!百発百中さ!エンヤコーラ!と言いながら、トンカチでその場にいた子分たちの頭を殴って回る。

僕を信じなかった奴、みんな殴ってやる!出て来い!と息巻いていた及川だったが、その時、あなた、私も殴って頂戴と言いながら部屋に入って来たのは美知子だった。

うん、君も僕を信じなかったねと及川は優しく答える。

そして白井の頭を殴ると、良い音がしたので及川は愉快がる。

こに入って来たのは川原部長で、殴りなさい、もっと!良い詩が出来ると言うので、及川は部長の頭も殴りつけるのだった。

美知子が持って来た着物に着替えた及川は、君にウッフンパ♩と歌いながら、桜並木の下を美知子と一緒に帰るのだった。
 


 

 

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