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この子の七つのお祝いに

第1回横溝正史賞受賞の斉藤澪原作の映画化だが、謎解き趣味やラストにひねりはあるものの、いわゆる伏線をきっちり敷いてそれを論理的に解き明かすと言った本格ミステリと言うよりサイコものに近く、日本版「サイコ」と言って良いかもしれない。

異常な母親の教育により子供がおかしく育ってしまうという発想なども「サイコ」そっくりである。

増村監督には、過去「盲獣」(1969)と言う江戸川乱歩原作の似たようなサイコものがあることからの起用かもしれない。

この原作は、何故か本格派ではなかった江戸川乱歩の名を冠した賞は本格派ミステリが良く受賞し、本格派だった横溝正史の名を冠した賞は本格派が受賞しないと言う不思議なねじれ現象を起こしたきっかけになった作品なのかも知れない。

映画では、キャスティングから考えて最初から犯人は見る前からほぼ特定でき、実際その俳優の大芝居が後半の見せ場になっている。

そう云う意味では映画ではミステリとしての意外性はあまりない。

話の展開もあり得ないほどの偶然性に頼っている部分もあり、不自然さが気にならないではないが、発想としてはまずまずと言った所か。

歌手だった畑中葉子さんが死体役でヌードを披露したり、同じく歌手の辺見マリが出ており、陰惨なスプラッター要素が強調されたりと云った部分に時代性は感じるものの、全体的に暗く地味な印象があるのは否めない。

女性作家特有の感性だと思うが、 小説としては面白いのだろうが、映像として面白いかと言えばそうでもないような気がする。

小説のPR目的と言う角川映画の特長が裏目に出ているような気もする。

小林稔侍さんと室田日出男さんが検事コンビとして登場しているのだが、堂々たる室田さんの演技に対し、稔侍さんの方は室田さんの後輩のような設定に見えるとは言え、こんなに下手だったっけ?と首を傾げるような演技に見えるのが不思議。

劇中、セーラー服姿の岩下志麻さんの写真が登場するが、どう見てもヤンキーみたいにしか見えず、ギャグなのか、何か意図があるのかちょっと戸惑ってしまった。
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
1982年、角川、斉藤澪原作、松木ひろし脚本、増村保造監督作品。

古い二階建てアパートの角部屋は雨戸が固く閉じられていたが、ほんの少し開いた隙間から外の様子を見ていたおかっぱ頭の少女がいた。

家具らしい家具もない貧しい部屋には棚があり、その上に5つの日本人形が並んでいた。 女の子は何かに気づき、うれしそうにドアを開ける。

廊下の奥から帰って来たのは真弓(岸田今日子)で、お腹空いたでしょう?夕べから何も食べてないんだものね、自分の着物を売って来たんだよ、だって家のお金全部お父さんが持って行ったんですもの…、悪いお父さん、いけないお父さんねとマユミは言いながら、買って来たバナナなどの食料を少女に見せる。

いつも少女に見せる古いアルバムを取り出した真弓は、寝床の中で、お父さんとお母さんは北京と言う所にいたの、この頃のお父さんはとても優しかった…と昔語りを始める。

父親の顔の部分には×が付けられ、どのような顔だったのか分からない。

戦争が終わり、マヤが生まれたの、その頃は、このお父さんもマヤの頭を可愛い、可愛いってなでてくれたの。

ところがお父さんは他の女の人が好きになり、私たちを捨てて行ったの、お金も家もみんな取り上げたの、病気の私何か死んでしまえって言うんでしょうね、こんなに私たちが貧しく震えているのも、みんなお父さんのせいなのよ… 売らんで憎みなさい、きっとお父さんを探し出して仕返ししなさい、マヤとお母さんとのお約束よ…と言いながら、真弓はマヤと布団の中で指切りをする。

そして真弓は、通りゃんせを歌い出す。 棚の上の人形のアップ タイトル マンションの部屋で客の土産のケーキを前にした池畑良子(畑中葉子)は、まあわざわざこんなもの持って来てもらって…、おいしそうなケーキ!私はこれをいただくわ、あなたコーヒー濃い方が好きだったわよね?と言いながらお湯を沸かしに行こうとした良子だったが、突然客が鋭い刃物で襲いかかって来たので、あなた、何を!と驚くが、次の瞬間、良子の首筋から血潮が吹き出す。

身体を切り刻まれた良子が倒れ込んだ部屋の柱や壁には、血染めの手形がいくつも付いていた。 駆けつけた警察は早速被害現場の検証を始めるが、阿久津刑事(小林稔侍)が渋沢刑事(室田日出男)に、被害者は池畑良子、28歳、隣の主婦が悲鳴を聞いています、左頸動脈を切ってありますと報告する。

凶器は見つかったか?何だろう?総統鋭い刃物だな?こりゃ強盗じゃないだろう、怨恨だよと渋沢刑事が言うと、色恋のもつれでは?被害者は土地成金のオヤジ達と付き合っていたらしく、5〜6人とっかえひっかえ部屋に出入りしていたようですと阿久津刑事が伝える。

刑期の箱はありませんと聞いた渋沢刑事は、煙草は吸わん…か…と言いながら、灰皿に残っていた吸い殻を見ながら、ホシのものかも…と見つめ、外国煙草か…と呟く。

物色の跡はないのに洋服ダンスだけ荒らされているのを渋沢刑事が怪しむと、手に付いた血を拭いただけかも…と阿久津が言うので、わざわざ洋服でか?と澁澤は聞く。

血の手形か、嫌な殺しだな…と渋沢刑事は部屋に残っていた血染めの手形を見ながらぼやく。 城西警察署にやって来たのは東洋新報の記者須藤洋史(根津甚八)だった。

廊下で須藤と会った阿久津が、母田って知ってるか?と聞いて来たので、自分が入社した時デスクやっていた人で、4年前からジャーナリストとして「月刊公論」の専属ルポライターをやっていると須藤は明かす。

その母田耕一(杉浦直樹)を参考人として呼び出し話を聞いていた渋沢刑事は、母田さん、あなた今夜池畑良子と会う約束してますね、彼女の部屋にあったカレンダーに書いてありましたよと聞くと、3日前に1度会っただけだと母田は答え、会う目的はルポライターですから話せんと拒否する。

母田がタバコを吸うと、ショートピースですか?と外国煙草は?と渋沢は聞くが、吸わないと言う。

夕べは?と聞かれた母田は「月刊公論」で打ち合わせをしていたとアリバイを実証する。

池畑良子は、磯蔵次期総裁候補の第一秘書官秦一毅の屋敷のお手伝いだったので、秦一毅の日常生活を詳しく聞くつもりだったんですと明かした母田は、僕の血液型はO型です、この吸い殻からよく調べて下さいと、吸い終えた煙草を差し出し、嫌みを言って変えて行く。

部屋を出た母田は廊下にいた須藤に声をかける。 須藤は、最近の母田さん、政界財界のことズバズバ書いて凄いじゃないですか、俺にそれだけの才能があれば…と須藤が言うと、ルポライターに才能なんかいらんよ、狙った獲物をとことん追う根性だよ、どうだ?俺と働いてみるか?と母田は誘う。

どうして参考人として呼ばれたんです?と須藤が聞くと、ずっと追って来たものだから…と言葉を濁した母田は、これで取材もぱったり行き止まりだ!と悔しがるので、今度は何を探っているんですか?と須藤が迫ると、今夜飲むか?六本木か赤坂で安い店知らんか?と母田は言う。

「往来 ゆき」と言う店に先に着いた母田は、ママの倉田ゆき子(岩下志麻)がやけに愛想悪いので白けかけていたが、そこに遅れて須藤がやって来る。

するとゆき子が、須藤さんのお知り合いだったの?と聞いて来たので、こちら、ゆき子ママと須藤が紹介すると、バカに愛想悪いんで帰ろうと思ってたよと母田は苦笑する。

須藤はゆき子に、今夜はちょっと込み入った話があるんで奥の部屋を使って良い?と頼む。

殺された池畑良子は何を話そうとしていたのか?保守党の磯蔵大蔵大臣を次期総裁候補に推したのは、第一秘書官秦一毅の内縁の女房で青蛾(辺見マリ)とか言う謎の女占い師なんだと母田は話し出す。

青蛾は夫の秦一毅と高輪のどでかい屋敷に大勢の使用人や犬数匹と暮らしている。

人の掌紋を見て占うそうだが、これが意外なほど当たるそうで、石崎を首相候補に押したのも青蛾だそうだ、お陰で占いの依頼はひっきりなしで、青蛾に占ってもらうことを高輪詣でと言うんだそうだ。

1回300〜500万取るらしい…と母田が教えると、馬鹿らしい、政治家が占いで決めるなんて!と須藤が呆れたので、日本の政治家なんてそんなもんさと母田も冷静に答える。

その青蛾ってどんな女なんだ?と須藤が聞くと、さっぱり分からないんだ、顔も過去も知られていない上に、マスコミ関係者には全く会わない、何度も高輪に行ったがその度に門前払いだ、途方に暮れていたら池畑良子が首になったんだ、それで3日前に会ったんだ…と母田は言う。

(回想)母田に会った良子は、青蛾の占いには変なからくりがあってね…、500万出してくれない?生活困ってるのよと言い、疑うなら証拠を見せるわと言うと、この手形の男を調べているのよ…と言うと、一枚の色紙に押された掌紋を見せる。

どうやって手に入れた?と母田が聞くと、盗み出したのよ、いきなり私をぽいと捨てたから、あんたに話して復讐してやりたいんだと良子が言うので、金は何とかする、3日後あんたのマンションで会おうと母田は答える。

(回想明け)今夜会うはずだったんだが夕べ殺されちまった…と母田が打ち明けたので、青蛾は自分の身を守る為に良子を殺した?と須藤が推測すると、警察では男手入りの線だと思い込んでいるらしいが、巫女だか何か知らんが許せんねと母田は憤慨する。

すぐに手伝ってくれるか?と母田から聞かれた須藤は、面白そうですね、やりましょう!と乗り気になる。

警察の動きを教えてもらいたいと母田は頼むが、大丈夫か?こんなこと話してとゆき子達の耳を気にするが、大丈夫ですよ、彼女は口が堅いからと須藤が保証すると、女の固いのは膝頭だけだって西洋のことわざにありますよとからかうようにゆき子が寄って来る。

店を出た須藤が、ここのママ良い女でしょう?と言うので、惚れてるのか?と母田が聞くと、惚れてます!でも、まま目当てにやって来る客達はみんな振られたらしいと須藤が言うので、他に決まった奴がいるのか?と言いながらタクシーを停め、もう一軒行きましょうと絡む須藤をその車に押し込んで、自分は別の車を探そうとしていた母田だったが、雨が降り出して来たことに気付く。

すると、背後の店からすっと笠を差し出して来たのがゆき子で、車なら向こうの通りの方が拾えるわと教え、大変ね、ルポライターって…、青蛾って何なんでしょうね?などと言うので、聞いていたのか?と警戒した母田だったが、聞こえたのよとゆき子は笑う。

その時突然、母田は苦しみ出したのでゆき子が驚くと、体中の間接が痛むんだ、息が出来ない!と言う母田の家が近くだと聞くと、タクシーを停め自分も一緒に乗り込む。

代々木村田マンション 自室のベッドで気がついた母田は、横の机にもたれかかって寝ているゆき子に気付く。

起き上がって、そっと幸子の首筋をなでた母田は、ああ、驚いた!と言って目覚めたゆき子に、ずっと側についていてくれたのか?と聞くと、母田さん、ベッドに倒れ込んで意識を失ってしまったんですもの…と言う。

7、8年前から、雨の日や寒い日には2〜3時間死んだようにぶっ倒れるんですよと母田が明かすと、驚きましたわ、奥様は?とゆき子が聞くので、とっくに離婚したよ、正確の不一致と言う奴で… 毎晩寝るのは2〜3時、起きるのは10時と言うのが僕の日課さ、煙草も日に80本は吸うし、肺がんじゃないかと思ってる、一杯どう?と角瓶を勧めると、今頃飲んだら寝られないわとゆき子は断り、私も死にたいわ、心の病…、もう1人で死ぬなんて言わないで…、可哀想にと母田に抱きついて来たので、母田は自然にキスをする。

捜査本部で、池畑良子の殺害現場の凄惨な写真を見ていた渋沢刑事は、自分に合う服を探してたんじゃないか?返り血を浴びたから…と呟くと、それを聞いた阿久津は、女ですか?かーっとなって殺したって言うんですか?と驚く。

そこに、ケーキを売った店が割れ、買ったのはサングラスをかけた女だったそうですとの報告を他の刑事が報告して来る。

須藤からの電話で捜査本部ではホシを女と断定したようです、ケーキを買ったのも女と分かったんですと知らされた母田は、いよいよ青蛾が怪しいな、ありがとう!と礼を言う。

高輪の秦一毅の屋敷前にやって来た母田は、ちょうど自宅の門から出て来た乗用車の中を覗き込み、秦と一緒に乗っていた青蛾もサングラスをかけていることを確認する。

「月刊公論」編集部にやって来た母田から話を聞いた編集長の柏原(神山繁)は、青蛾が池畑良子を殺した?いくら取材費がかかっても構わんが、証拠はあるのか?と聞くと、勘だよと母田は言う。

秘密を守る為に殺したのなら、これから探るのは遅いと思うと柏原が指摘すると、手はある、秦一毅がいつ青蛾に出会ったかだ…と言い、母田はその場で秦一毅の経歴を調べる。

大蔵省には昭和34年に入省、主税局で早い出世だ、2年後辞職したのは、大物政治家の娘と結婚するつもりだったようだが九州に左遷されたからのようだ。

その後、赤木フーズと言う会社に潜り込んだ…、これから赤木フーズに行ってみると母田が立ち上がったので、今度はお前が殺されるんでは?と柏原が案ずると、俺はそんな間抜けじゃないよと母田は苦笑する。

「赤木フーズ」 社長の飯島(戸浦六宏)に会って秦のことを聞くと、いきなり重役にしろってやってきましてね、色々世話になっていたこともあり専務にしたんですが、1年経ったら、こんな会社でぐずぐずしてられない、政治家になりたいって言い出して…、何でも占師に勧められたらしい、女ですよと聞いた母田がバーのママか?と驚くと、良く当たるらしいですよと言うので、店の名前を聞くと、麻布の一橋の麗子って言うんです、当時は良く行ってたんですが、店の場所は良く覚えてないな…、確か店の名はカタカナで「ヌーヴォ」だ!と飯島は思い出す。

「往来 ゆき」で再び須藤と落ち合った母田が、麻布市橋の「ヌーヴォ」と言う店はもう潰れていたと教えると、その麗子って女が青蛾になったって訳ですね、だんだんあの女の正体が明らかになってきましたねと須藤も興味を持つ。

するとゆき子が、いつも青蛾の話ばかりね、気違い染みているわなどと言いながら須藤達のテーブルに同席して来る。

何故、この掌紋の男を捜しているんでしょう?と手形を押した色紙を前にした須藤は考え込み、母田が、色々聞きかじった手相の蘊蓄を語る。

私にはないわ、隠徳紋…などと話に加わっていたゆき子が、薬指の付け根のほくろは?私にもあるわと聞いて来たので、そこまで調べてなかったと母田は打ち明ける。

手形の男って何者なんでしょうね?と須藤が聞くと、手がかりは会津にあるらしい、俺の明日行って来るつもりだと母田は言うので、気を付けて下さいよ、今度は母田さんが殺されるかもしれませんよと須藤は案じ、ゆき子までもが、私も不安だわてんと言うので、俺がいなくなったら須藤と言う跡継ぎがいる、殺されたら仇を取ってくれと母田は言う。

店を出た須藤は、ママとどうなってるんです?掌紋まで見せたりしてと須藤がゆき子に手の内を明かしていることに驚くと、心配ない、とにかく福島会津だよと母田は答える。

大宮駅で取材を終えた母田はタクシーに乗り込み東京まで戻って来るが、自宅マンションに到着した時には又持病に苦しんでいた。

痛みに耐え、必死に部屋に戻って来た母田はベッドに倒れ込む。

(回想)晴れ着を着て真弓と添い寝していた少女は、朝起きると真弓が動かないので、母さん!お母さん!と揺り起こそうとするが、自分の手が血で真っ赤に染まっていることに気付く。

真弓はカミソリで自分の頸動脈を切り自殺していたのだった。 お母さん!

(回想明け)ベッドで目覚めた母田は、部屋にゆき子がいることに気付く。

母田さん?とゆき子は話しかけて来たので、君…、いつから来たんだ?と母田が驚くと、夕方から…、又、持病の発作で気絶してたでしょう?旅行なんてするから疲れて発作を起こすのよとゆき子は心配そうに話しかけて来る。

すると母田は、もう行くことはない、みんな調べて来た…、やっと青蛾のことが分かった、何故青蛾が男の行方を探すのか…と言うので、書くの?「月刊公論」に?刑務所に入れられるんでうれしい?とゆき子は聞いて来る。

ああ、うれしいね…、ウィスキーで水割り付くってよと母田が頼むと、良いの?発作の後で飲んだりして…とゆき子は案ずるが、仕事の後だ、君と一緒に飲みたいんだよ、今夜泊まって行けよ、良いだろう?と母田は言う。

するとゆき子は、母田さん、雑誌が発売されたら温泉へでも行かない?と誘って来たので、須藤に悪いな、あいつあんたに惚れてるんだとはは母田が照れると、あの人はまだ若いは、私より良い人見つけるわよ…とゆき子は言う。 母田さん、もう止めたら?と水割りを飲む母田を止めようとしたゆき子に、よわなきゃ言えない事もあるんだと言い出した母田は、ゆき子、俺は君が好きだ、今まで会ったどの女よりも…、君に会えて良かったと思っている…と言う。

それを聞いたゆき子は、本当?本当ならうれしいわと喜び、愛してるよゆき子!と言うと、母田はゆき子にベッドでキスする。

あなたって、温かいミルクのような匂いがするわてん、とっても良い匂い…と、母田に抱きついたゆき子は言う。

その後、母田のマンションを訪ねた須藤は、ノックをしても返事がないので怪しんでドアノブをひねると鍵がかかってない。 もう昼過ぎですよ!と呼びかけながら、恐る恐る部屋の中に入ってみると、母田はベッドで寝ているように見えた。 しかし返事がないので、かけてあった毛布を剥がしてみると、ベッドは真っ赤に染まっていた。 母田は手首を切っていたのだった。

驚愕した須藤はすぐに警察へ電話をかけようとするが、思いとどまり、母田のバッグの中から取材ノートを取り出し中を確認する。

母田の葬儀が行なわれ、葬儀委員長を務める柏原の横で焼香をすませた須藤は、葬儀の後、寺の外廊下で柏原と2人きりになる。

結局、警察では大量の睡眠薬を飲んで手首を切った…、そんな結論だと柏原が言うと、母田さんは途中で仕事を投げ出すような人じゃない、池畑良子と同じで殺されたんですよ!と須藤は答える。

会津に行って秘密を知ったから殺されたんですと言う須藤に対し、池畑良子殺しは随分残酷だったのに、母田殺しはバカにおとなしいじゃないかと柏原は事件の性格の違いを指摘する。

母田さんのノートなんですが、会津で調べた件が全くありません、おそらく犯人が持ち去ったんです、このルポ、僕が引き継ぎます!と須藤が言うので、東洋新報の方はどうするんだ?と柏原が聞くと、辞めます、柏原さん、ルポライターとして雇ってくれませんか?と須藤は訴える。

今度、殺されるのは君かもしれんぞと注意しながらも須藤を雇うことにした柏原は、麻布市橋の「ヌーヴォ」の持ち主がやっと分かった、古屋源七と言う男だと教えると、早速当たってみますと須藤は答える。

古屋源七(名古屋章)は昼間から酒を飲みながら庭いじりをすると言う悠々自適の暮らしをしていたが、あの店は娘の麗子にやらせていたんだ、当時5〜6人いた妾の1人生ませた子でな、店は繁盛していたが、何年か前に結婚すると言うので止めてしまった。

ホステスだった母親と同じで尻の軽い女だったと言うので、手相占いが巧かったとか?と須藤が聞くと、それは麗子じゃないよ、ホステスのマヤって娘、可愛い子で手相も良く当たったと古屋は言う。

それを聞いた須藤は、マヤと言う女が青蛾か?と呟き「ヌーヴォ」が潰れた後は?と聞くと、会津の結城って言う漆塗りの店に戻り、結婚するって言ってた…と古屋は言う。

その後、母田の墓参りにやって来た須藤は、先に来ていたゆき子が、母田の墓の前で母田さん!母田さん!と名を呼びかけながら泣き崩れるのを少し離れた所から目撃する。

須藤はそのまま会津若松へ向かい、駅前のタクシーの運転手に結城と言う漆塗りの家に乗せて行ってもらう。

出迎えた結城昌代(中原ひとみ)は、マヤちゃんがどうかしたんですか?ついこの前にも東京から聞きに来られましたけど?と怪訝そうに聞く。

この人ですか?と母田の写真を見せた須藤は、事故で亡くなりました、ですからもう一度マヤって方の話を聞かせて下さいと頼む。

私は昭和30年頃上京し、大森のアパートから洋裁学校に通っていました。

そのアパートの隣の部屋にマヤちゃんとそのお母さんが住んでいたんです。

お母さんはいつも寝たきりだったので、私が時々、マヤちゃんの面倒を見ていましたが、お母さんの病気はドンドン悪くなる一方でした。

(回想)来年マヤ7つでしょう?小学校に行くでしょう?それまで生きていられるかしら?お父さん、探し出して仕返ししてね、分かった?マヤ…と真弓は床の中からマヤに言い聞かせる。 朝起きたマヤは、隣で寝ていた真弓が、お母さん!と呼びかけても起きないことを知る。

そして、マヤが7つになった正月の朝、あの子に晴れ着を着せて自殺してしまったんです… 洗面所に起きて来た昌代は、隣の部屋からマヤがお母さん!と呼びかける声に気付き部屋を覗いて真弓の死を知る。

お母さんは、手首と頸動脈をカミソリで切って惨い死に方でした… マヤはそれから約1年くらい口がきけないくらいでした。

マヤを頼むと言う手紙と20万円、今なら200万円もの大金を残していました。

(回想明け)私は洋裁学校を卒業すると、海津に戻って来て婿を取り、マヤを育てました。

マヤは、高校を卒業すると、父親を探しに行くと言い、東京に行きました。

あの子は、父親に会ったらきっと仕返しをするよう母親が毎晩教えていましたから、あの子は仕返しを終えたらきっと会津に戻って来ると言ってましたから、まだ探しているんでしょうと昌代は言う。

警察に捜索願はされなかったんですか?と須藤が聞くと、普通の家出人と思われてちゃんと探してもらえないんですと昌代は言う。

出生証明書には高橋道夫と言うのが父親で真弓と言う母の名が書いてあります、父親の手がかりは、持っていたアルバムに貼ってある写真と親子で押した3つの手形がありました。 あの子は中学生の頃から手相を勉強するようになり、父親の手形を研究していました。

その高橋道夫に手形と言うのがこれですか?と須藤が持って来た手形を見せると、良く似ていますと昌代は言うので、アルバムは?と聞くと、マヤちゃんが東京へ持って行きましたと言う。

マヤさんの写真はありませんか?と聞くと、ちょっとお待ちをと言い昌代は家の中に入って行く。

待っている間、須藤は側で大量の白菜の芯を抜いている女性が持っている奇妙な刃物に目を留める。

写真を持って昌代が戻って来たので、あの刃物は?と聞くと、カンナ棒と言うもので、木のお椀を削る時に使うんですが…と教えた昌代は、白菜を切っていたカナと言う女性を呼び、その刃物を近くで見せる。

研いで行くうちに刃先が小さくなるので、女子供が使う包丁にしたらとても便利なんですよと昌代は言う。

池畑良子はこれで殺されたのか?とそのカンナ棒を見ながら須藤は考え、マヤさんも持っていましたか?と聞くと、私の父からもらっていましたと昌代は言い、これがマヤちゃんです、高校を出るちょっと前の…と1枚の記念写真を見せる。

そこにはセーラー服姿の倉田ゆき子が写っていたので、マヤはゆき子!ゆき子さんが?そんなバカな!と須藤は愕然とする。

何かが間違ったんだ、きっと…、その後、近くの川縁でノートをまとめていた須藤は苦悩する。

東京 ホテル・パシフィック 「磯崎先生還暦祝い」のパーティが行なわれており、第一秘書の秦一毅(村井国夫)が来客達1人1人に挨拶して出迎えていた。

そこにやって来たのが、ホテル王として知られる高橋佳哉(芦田伸介)で、磯崎君が次期総裁の最有力候補だなどと話しかけて来たので、政治嫌いの高橋さんがこんな所へ来られるとは!と秦が驚くと、君に会いに来たんだ、今度、カナダのケベックにホテルを建てることにしてね、成功するかどうか占って欲しいんだと言う。

それを聞いた秦は、高橋さんの依頼なら断れませんね、手形を送って下さい、すぐに青蛾に占わせますからと応じる。

その後、自宅に戻って来た秦は、1人の客の占いを終えたばかりの青蛾に、ご苦労さん、お前にすぐに占って欲しいのがあるんだと手形を出したので、どなたなの?と青蛾が聞くと、ホテル王高橋佳哉、恩を売っておけば今後の資金作りなどの役に立つと秦は言う。

受け取ったし岸の浦に書かれた「高橋佳哉」の名を確認した青蛾は、すぐに車で外出し、青山4丁目のとある家にやって来る。

どなたですか?と家の中から声がしたので、私よ、麗子と答えると、戸を開けたのはゆき子だった。 とうとう巡り会えたわ、お父さんの手形!と言いながら家の中に入った青蛾こと麗子は、これがあなたのお父さんの手形、これがコピーと言って持って来たものをゆき子に渡す。

名前は違うけど、全く同じでしょう?と麗子が言うと、手形をじっくり確認したゆき子は、そっくり…同じ人間と納得する。

お父さんは政治家か実業家で成功しているはずと言う読みは当たったわね、待っていた甲斐があったわね?何でも有名なホテル王らしく、今度新しく建てるホテルを占いたいんだって…、占ってあげる?と麗子が聞くと、1日だけ…、1日だけ考えるわと答えたゆき子は、アルバムに貼ってあった真弓と顔が消された父親の記念写真をそっと触る。

その夜、ゆき子は1人で高橋佳哉の屋敷を訪れると、その名が書かれた表札を愛おしそうになでる。

書斎ではまだ高橋が仕事をしていたので、妻がまだお仕事ですか?と声を掛けると、お前、先に寝なさいと高橋は言う。

無理なさらないで、来年初孫が生まれるんですから…と妻は案ずるが、高橋は、40年仕事に打ち込んで来たから今日の私がある、死ぬまで働くよと答える。

屋敷の門前では、持って来たカンナ棒を取り出したゆき子だったが、近くから人声が聞こえて来たので、慌てて隠して立ち去る。

翌日、台東区役所にやって来た須藤は、当時の戸籍を探そうとするが、空襲で全部焼け、戸籍は昭和23年に作り直したもので、真弓やマヤの名はないと担当者は言う。

この住所は今は遊園地になっているんですと担当者が言うので、その公園に行き、年配者に当時のことを聞くと、バラックが建っていて、中国や南方からの引揚者が住んでいたと言うので、当時住んでいた方ご存じないですかと須藤が聞くと、ラブホテルの経営者になっているのがいると教えてくれる。

「ホテル オズ」の経営者生松(坂上二郎)を訪ね、誰か当時住んでいた人で覚えてないかと聞くと、いるよ一組だけ、高橋って家族だと生松はあっさり答える。 高橋道夫ですか?と聞くと、道夫は本当の名前じゃない、本当の名は佳哉だ、今では有名なホテル王だと言うので、何故偽名なんか使ったんでしょう?と須藤が不思議がると、戦争中、中国人をドレイのように使って金儲けしてたらしいよと生松は言う。

真弓とマヤを捨てたと聞いてますが?と須藤が聞くと、マヤは生後3月くらいで死んだよ、それから夫婦仲が悪くなってね、高橋は家を出たと生松が言うので、マヤは生きてますよと須藤が教えると、まだもうろくしてないよ、マヤは死んだ、死にました!と生松は断言する。

その頃、再びゆき子の言えを訪ねていた麗子は、マヤ、高橋佳哉似合ったらどうするつもり?どんないきさつが歩かしらないけど父親でしょう? しかしゆき子が親は自殺した母親だけよ!と言うので、でももう2人も殺してるじゃない!と麗子が訴えると、こんなことしたくない…でも、母の血が!母の血が!とゆき子は言い返す。

(回想)未まみれで死んでいる真弓を、お母さん!と揺り起こそうとするマヤ

(回想明け)私が7つになった正月に、母は自分の手首と首を切ったの!あの時から聞こえるの…、お父さんは私たちを捨てた悪い人…、大きくなったら仕返ししてね…、6つまで毎晩囁きかけられた言葉… 13の時、私は女になったわ、毎日、私の身体から血が流れる… 血の色が囁きかけるの、マヤ、お父さんを探して私の仇を取ってくれないの…って… そうしたゆき子の言葉を聞いていた麗子は、狂ってるわ…、このカンナ棒で、マヤ、あなた何人殺すつもり?私、もうついていけない!と怯え、警察に訴えるわ!と言うと部屋を出ようとする。

するとゆき子は、麗子!私の邪魔はしないで!邪魔すると、私、何をするか…と言いながらカンナ棒を振りかざしたので、止して!マヤ!と麗子は絶叫する。

(回想)カンナ棒を火鉢で熱していた真弓は、マヤ、やけどの痛さ分かるわね?私の苦しさを分かって欲しいの…、やけどの痕を見るたびに思い出してね、やけどの苦しみよりずっとずっとつらいのよ、恨んで恨んで、お父さんに仕返ししてね?分かった?…と言いながら、マヤの右頬に焼けたカンナ棒を押し付ける。

お母さん…と痛がるマヤ

(回想明け)ゆき子はカンナ棒で麗子を斬り割いていた。

血まみれで倒れた麗子に、麗子!ごめんなさい!「ヌーヴォ」と言う店を開いたときからずっと仲良かったあなたを殺すなんて… どうしようもないの、お母さんの声が聞こえると何でもやってしまうの、高橋を殺したら、私もすぐに死ぬから…、堪忍してね、麗子…とゆき子は詫びるように死体に話しかける。

高橋の家を訪れた須藤は、佳哉に会うことが出来る。

出生届を見た高橋は、確かにこの道夫は私の偽名だと打ち明けるので、マヤと言う子は生まれてすぐに死んだんですか?と聞くと、ほんの少し舞え電話がかかって来た、私に会いたいと言うんだ…と高橋が言うので、会うつもりですか?と須藤が聞くと、マヤは私の子供なんだ、会わん訳にはいかんと高橋は言う。

あなたを殺すかもしれないのに?と須藤が聞くと、マヤが?と須藤は戸惑う。

彼女はもう2人殺しています、あなたに会えばカンナ棒を振りかざすでしょうと須藤が警告すると、どうしても会わねばならん…、あのアパートは空き家になって、それをマヤが買ったらしい…と高橋は言う。

古い木造二階建てアパート「松葉荘」の角部屋は雨戸が閉ざされていたが、少しだけ隙間が空いており、そこからゆき子が外を覗いていた。

そこにタクシーで高橋と須藤がやって来る。

マヤは、この突き当たりの部屋にいると言っていた、私が先に入る、君はついて来いと須藤に良い高橋がアパートに入って行く。

角部屋には昔のまま、棚の上に日本人形が5体並んでいた。

カンナ棒を持ったゆき子が部屋の戸を開け、廊下の奥から近づいて来た高橋と須藤を迎える。 マヤ!私がお前の父親高橋佳哉だ!これから本当のことを話す、真実を知ってもらいたいだけだ、分かるね?と高橋が呼びかける。

私は、日本が戦争に負けた時、上海の軍需工場で働いていた事もあり、私は中国のブラックリストに載っていたので、同じ日本人の高橋道夫の名を借り、北京に迷い込んだ。

収容所に入れられると労働をやらされるので、そこで出会った真弓と見せかけの夫婦と名乗り、引き揚げ船で九州の佐世保に着いたと高橋は言う。

日本を発つ4ヶ月前に結婚した本当の妻がいたが会うことが出来ず、高橋道夫として台東区で真弓と住み始めた。

その内マヤと言う子供が生まれ、生涯でその時が一番幸せな毎日だった…と高橋が言うと、何故私を捨てたの?とゆき子は責める。

私の一生で一番幸せな時だったんだ…と繰り返す高橋に、お母さんは赤ん坊の私を育てたのよ、恨みなさい、憎みなさいと言いながら…、その私が7つになった朝、頸動脈と手首を切って死んだの…、そのとき着ていた私の晴れ着もぐっしょり血で濡れていたわ!とうとうその時が来たようね…とゆき子が言うので、そんなにお父さんを殺したいのか!お父さんの話を聞けよ!と須藤が高橋の背後から呼びかける。

この手形の子は2月で死んだんだ…、そう死んだ…、顔をネズミにかじられ、首も噛まれて死んだんだと高橋は言い出す。

(回想)どうして死んだの?私のマヤ!生き返ってよと死んだ赤ん坊にすがりつく真弓。

(回想明け)嘘よ、そんなこと!ネズミにかじられたなんて下手な作り話!とゆき子は言い返す。

本当だ、本当だ…、そのくらい当時の環境は戦争で酷かったんだ…と高橋が答える。

私は一体誰なの?何者なの?とゆき子が聞くと、キエだ、本当の名は…と高橋が明かす。

アヤが死んでから私は酒に溺れ、真弓はないてばかりいた…、そんなある日、私は元の妻美也子に巡り会ったんだ!と高橋は言う。

あなた!と洗濯物を干していた美也子も高橋に気付く。

その後、真弓は戻って来た高橋に、知ってるわよ…、前の奥さんに会ったんでしょう?陰気な私より、明るい美也子さんの方が良いんでしょう?とねちねち文句を言い出し、真弓は狂い始めた。

殺してやる!と狂気に憑かれ脅し始めた真弓を恐ろしくなった高橋は、美也子の家に転がり込んだ。

2人の間にキエが生まれたので、考えた末、50万真弓に渡し、別れてくれと頼んだと高橋は続ける。

(回想)すると真弓は、良いわよ、私、喜んで身を引くわ、美也子さんとあかんちゃんのキエちゃんを幸せにしてねとあっさり承知する。

ところがその後、美也子がキエを自宅に残し、ちょっと買い物に出ている間に忍び込んだ真弓がキエに、アヤ!お母さん、迎えに来たわ、一緒に行きましょうと呼びかけ、そのままさらって行ってしまう。

その直後、帰宅した美也子はキエがいなくなっていることに気づき半狂乱になる。

東京中探しまわったがキエは見つからなかった。 美也子は悲しみのあまり、1年後に死んだ…と高橋は言う。

(回想明け)私は全て忘れるため仕事に打ち込んだ、そして今の女房と結婚したんだ。

これで分かっただろう?お前はアヤではない、キエだ!母親は美也子なんだ!と高橋は教える。 嘘よ!嘘よ!みんな大嘘よ!と興奮するゆき子。

真弓は、本当はさらって行ったキエである君をアヤと呼んで育てた、もちろん、自分を捨てた男に復讐するためだと高橋が言うと、どこにその証拠が?とゆき子が迫る。

その時、前に出た須藤が、これは池畑良子のマンションに残されていた手形だ、つまりこれは君の手形だ!と現場写真を突き出して指摘する。 君の手形は父の手形には似ているが、母、真弓とは全く違う!何故だ?と須藤は迫る。

アルバムに親子の掌紋は3つあるが、本当の親のなら80%は同じ指紋を持っているはずだ、君とこの手形は全く別のだ!何故だ?真弓の子じゃないからだ!君はキエなんだ!と須藤は指摘する。

キエなら右手の薬指の根元にほくろがあるはずだ、お前はどうなんだ?と高橋が聞くと、あるわ、この通り、ほくろが!とゆき子は答える。 それを聞いた高橋は、やっぱりキエだ、間違いないと確信する。

雪男子は錯乱し、私はマヤじゃないなかったら、私は今まで何をしていたのかしら?と呟く。 何故、池畑良子を殺したんだ?と須藤が聞くと、青蛾なんて飾りでしかなく、本当は私だってバラすって言ったの…、バレたら父を殺せなくなる…とゆき子が答えると、母田さん殺したのも同じか?と須藤が問いかける。

愛してたわ…、あの人は初めて人を愛することを教えてくれたわ…とゆき子が言うので、君の為に統べてくぉ投げ捨てたんだろうと須藤は教える。

そうよ、私の正体を知りながら警察に訴えようとしなかった…とゆき子は言う。

(回想)自首して出ないか?と母田はゆき子に勧める。

できない、そんなこと…とゆき子が言うので、そうしても父親を殺したいのか?止せよ、そんなバカなこと…、どうだ、俺は肺がんだ、この睡眠薬を飲んで一緒に死のうじゃないかと言いながら、ベッドで母田は睡眠薬を大量に飲んでみせる。

でも私は死ねなかった… あの人が眠るのを見て、大好き!母田さん!と言いながら抱きついた後、その手首を剃刀で切るゆき子。

(回想明け)母田さんは何もかも知っていた…、母田さんだけじゃない、麗子まで殺した…とゆき子は打ち明ける。

私は何の為に生まれて来たの?と問いかけると、真弓と言う女の操り人形だ…と須藤が言うので、私はただの人形だったの?とゆき子は呆然とする。

真弓を恨むな、彼女も中国で両親を亡くし、私に捨てられたらどうしようもなかった…、私を恨んでくれ…と高橋は言う。

お母さん…そうなの?本当の事言って…と呟きながら、ゆき子は部屋に持って来たアルバムの写真を見る。

お母さん、寒いよ…、寒くて暗いよ…、お母ちゃん、助けて!まるで目が見えなくなったかのように、部屋のガラス窓を触りながら彷徨うゆき子は、何時しか、通りゃんせ〜♩と歌い始める。

(回想)真弓が通りゃんせを歌って聞かせる。

そんな真弓にしがみつくキエ。

(回想明け)部屋の棚の上に置かれた日本人形のアップ

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