白夜館

 

 

 

幻想館

 

警視庁物語 血液型の秘密

1960年6月7日に公開された「警視庁物語 血液型の秘密」に続き6月21日に公開された52分の中編作品で、前作と繋がる続編設定になっている。

こまどり姉妹が歌っている民謡酒場や、そこの店員をやっている山東昭子さんなどは前作と同じである。

とは言え、前作を見ていないと付いて行けないと言うような内容でもなく、これはこれで完結している。

前作のラストでもやもやしていた部分が今作で溜飲が下がる仕掛けになっていると言うくらい。

本作冒頭に桜田門の警視庁が出て来ることから、前作での「警視庁 野方警察署」と言うのは、あくまでも捜査本部を立てた地元署と言うことだったことが分かる。

今回も前回と同じような地域での展開なのだが、特別に捜査本部を作らず極秘捜査と言う設定なので、桜田門がメインになっていると言うことらしい。 本作で注目すべきは、山村聡さんがちらっと出て来ること。

菅井きんさんもちらっと出て来るが、もともと菅井さんは脇役なので不思議ではないが、山村聡さんクラスの人がこの手の中編にゲスト的に登場していると言うのが興味深い。

その山村聡の使用人として若い頃の梅津栄さんが出ており、「黄色いサクランボ」の一節を披露する所も時代を感じさせる。

スリーキャツと言う女性トリオが歌ってヒットしていた頃らしい。

同じく、劇中で渡辺刑事が「パーカーじゃなかろか」と言って他の刑事を笑わせるのは、トニー谷の「バッカじゃなかろか」の洒落ではないかと思う。

冒頭に登場する老婆を演じている五月藤江さんは、新東宝で「女吸血鬼」とか「花嫁吸血魔」「海女の化物屋敷」「九十九本目の生娘」など怪奇ものでも有名で、高倉健さんバン「悪魔の手毬唄」にも登場している。 東映版「月光仮面」の大村文武も出ている。

この当時の刑事物を見ていて感じるのは、当時は携帯やスマホがなかったので、絶えず現場に出た刑事が公衆電話で本部とやり取りしているシーンが多いこと。

また、本作に登場する「酔っぱらいセンター」なる留置場に水洗トイレがあると聞いた若手刑事が、家のアパートより豪華と言っている所から見ると、まだ民間の安アパートなどは水洗トイレではなかったと言うことだろう。

劇中の被害者が数えで56歳、満年齢では55歳のはずなのに、やたらと爺さん呼ばわりしていること。

風呂に入る回想シーンがあるが、別にまだ禿げている訳でもなければ髪も張りはなくなっているが黒々、身体もやせ形の中年体型で、今で言うと完全におじさんなのだが、当時はこの年でもう世間的には爺さん呼ばわりされていたと言うことだろう。

中編なので、映画としてもの凄く見応えがあると言う訳でもなく、昔のTVの1時間ドラマを見ているような感覚だが、お馴染みの刑事の活躍や、当時の時代背景を見ているだけでも楽しい。
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
1960年、東映、長谷川公之脚本、飯塚増一監督作品。

桜田門 警視庁 1人の老婆松木うめ(五月藤江)が立ち番の警官に何事かを尋ね中に入る。

うめは建物中で周囲を見回し、戸惑ったように、捜査一課8号室から出て来た捜査主任(神田隆)を呼び止めると、どこへ行けば良いんでしょう?弟がいなくなっちまったんですと訴えたので、それじゃこちらへ…と主任は刑事部屋に案内すると、高津君お茶!と声をかける。

そこには、長田部長刑事(堀雄二)、山形刑事(中山昭二)、林刑事(花澤徳衛)、金子刑事(山本麟一)、渡辺刑事(須藤健)、高津刑事(佐原広二)の面々が揃っており、主任と一緒にうめの話を聞くことにする。

弟の名前と年を聞くと、石川平作、数えで56歳、先月の今頃まではいたが、今日行ってみるといなかったのだと言う。

平作は沼袋で靴屋をやっていて、家族はおらずずっと1人暮らしだとうめは言う。

ところが、平作の息子なる人物が隣のクリーニング屋に店を売ってしまっただけではなく、通りに面した向いの土地にも誰かが店を建てていると言うので、その向いの土地も平作のかと聞くと、かねてより平作は現金を持つより土地を持っている方が儲かると言っており、5年前にその土地を買ったのだと言う。

弟さんが自分で売ったって事は?と聞くと、先月会った時にも、あの土地はまだまだ上がるので売らないと言っていたとうめは答える。

身体に特長は?と主任が聞くと、生まれた時から右足がびっ○だったと言うので、主任は渡辺に変死体が出ていないか調べて来てくれと頼む。

うめは、弟から小遣いもらわないと孫に雨も買ってやれないし、自分も行く所がないので困っちゃうんですよと嘆く。

数えで56と言う年齢と右足が不自由だったと言う話を渡辺刑事から聞いた身元調査係官は、これかな?と一枚の書類を取り出して来る。

多摩川で見つかった溺死体で、死体からはアルコールが検出された。

右足は小児まひ、胃の中には寿司が入っていたと言う。

刑事部屋に戻って来た渡辺から、その写真付きの書類を受け取った主任がうめに、この方じゃないですか?と見せると、写真を見たうめは、平作!と叫ぶ。

溺死体の写真をバックにタイトル 石川靴店に車でうめを連れて来た長田部長刑事は車を降り、ここに間違いないですね?と車に乗っていたうめに確認すると、高津君とこの近所の聞き込みをしてくれと林刑事に頼む。

金子刑事と長田部長刑事が隣のクルーニング屋を訪ねると女房(菅井きん)がおり、あんた、警察の方だよと主人(藤山竜一)を呼ぶ。

一方、林刑事は、向いの土地にうめを連れて来るが、休憩していた鳶(青山定司)が、うめが勝手に敷地内に入って来たので、婆さんここに入って来ちゃいけないよと文句を言うので、林刑事がここの施工主は?と割って入ると、この先の丸山不動産から依頼されたと言うので、そちらに向かうことにする。

クリーニング屋の主人は、平作の息子だと言う一郎って言う人から35万で買い取ったんですがねと言い、独身の平作さんの息子って変だとは思わなかったんですか?と聞くと、変だとは思ったんですが、若い頃、結婚して別れたとその息子が言ってたと言う。

息子と言うのは?と聞くと、まだ30に行ってませんかね?背が高くて丸顔の良い男でしたと言うので、メガネは?と金子刑事が聞くと、かけてなかったと言う。

隣とは付き合いなかったんですね?と聞くと、爺さん、変わってたから…、家財道具も少なくて、古道具屋が取りに来たと言う。

あの人なら知ってるんじゃない?と女房が口を出し、靴の主膳頼んだのに売られたって文句を言い、平作が戻って来たら連絡してくれと言っていた娘がいたと言う。

丸山商事にやって来た林と山形両刑事は少し待たされるが、やがて社長の丸山(山村聡)が帰ってきて、あの土地はどなたからお譲りになったんですか?と林が聞くと、泉住宅社から頼まれたものでその店は駅の脇にあると言う。

クリーニング屋から聞いて来た本田幸子(奈良あけみ)の安アパートに来てノックするが出かけているらしく返事がない。

すると、そのアパートの住民と思しき大学生(岡本四郎)が帰って来て、出かけましたよ、今が稼ぎ時ですからと言うので、その意味を尋ねると、フロアの踊子で、堪んない女のだなのだとにやつきながら言う。

泉住宅社の泉(柳谷寛)は丸山のことをあの人に睨まれるとこの辺にいられない等と気にし、前科があるらしいなどとも言い、あの土地は小野さんって言う仲間から教えてもらったと言いながら、チラシを見せる。

「伏見台の建売見学会」のチラシで、坪3000円、駅から3分などと書いてあるので安いねと山形刑事が感心すると、それはあくまでも宣伝文句で、3分と言うのも自転車すっ飛ばしての3分ですなどと泉は笑う。

林らがその足で小野に会いに行こうとすると、もう夜ですからいないと思いますよと泉は言う。

本部では、ガイシャ石川平作(沖野一夫)の4~5年前の写真を手に入れた長田部長刑事が主任に見せていた。

戻って来ていた林刑事から小野のことを聞いた主任は、臭いな?小野の線を追ってもらおうかと指示する。

長田部長刑事はクリーニング屋の証言から、石川一郎と名乗った男は背が高くて丸顔の良い男らしいですと言い添える。

そこに渡辺刑事も戻って来て、周辺の聞き込みから、平作さんは7日夕方までいたらしいですと報告する。

監察医務院に聞いて来た所では、平作さんの死因はショック死らしい。 多摩川署でも川を流れて来たものだし、家出人などの捜索願が出ていた訳でもないので身元不明にしていたとか…と言う刑事たちの報告を聞いた主任は、課長とも話し合ったんだが、今回は本部などを作らずに極秘に捜査しようと言うことになったんだと言うと、じゃあ、記者たちにも気付かれないようにパーカーフェイスで行くってことですねと林刑事が言うので、パーカーフェイスって何だい?と聞くと、君知らないのか?表情に出さないことを言うんだよなどと林が言うので、君、それ、ポーカーフェイスだよと主任が苦笑すると、あ、パーカーは万年筆でしたねと気づき、一覧の会話を聞いていた渡辺刑事が、パーカーじゃなかろかと茶茶をいれたので、みんな一斉に大笑いする。

翌日、林刑事と山形刑事は伏見台の駅前にやっていた「現地案内所」に小野を訪ねるが、2人を客と思った女性事務員(醍醐都子)は小野は今現地案内していると言い、パンフレットなどを見せて来る。

再び本田幸子の部屋にやって来た長田部長刑事がノックしていると、隣の部屋から昨日の学生が顔を覗かせたので、もう出かけたのかね?と聞くと、寝ているはずですよと言い、自分でノックして幸子を起こす。

出て来た幸子(奈良あけみ)は大学生を睨んで追い払うと、おいつ嫌らしいんですよ、壁に穴開けて覗いたりして…などと長田に言い、警察だと知ると、金の靴のことが分かったの?と喜び、衣装に合わせてあつらえたから…、石川さんに頼まなければ良かったわ…、帰りの電車で一緒になったのでつい頼んだのよと言うので、それは何時のことですか?と長田は聞く。

ちょっと待って…と言いながら部屋に入り込んだ幸子は、遠慮する長田部長刑事に中に入るよう勧める。

メモを取り出した幸子は6日の夜だわ、石川さん、終電に乗って来たのと言うので、で、8日の日に取りに行ったんですね?と長田が確認すると、昼過ぎにね、「リオ」で踊ることになっていたから…と幸子は言う。

それっきりあの店閉まっているのよと幸子が言うので、石川さんが殺されたのは7日の夜から8日の朝にかけてって事でしょうねと金子刑事が長田に囁きかける。

石川さん、良いご機嫌だったわ、良く手前の駅から乗り込んで来るのを見かけたものと幸子が言うので、手前と言うと新井薬師?と金子刑事が聞く。

その靴を古道具屋で見つけたんですね?と長田が聞くと、かかとの傷も一緒だったの、取り戻して来てよ、刑事さん!と幸子は訴える。

現地案内所に車に客の婦人を乗せた小野昭(大村文武)が戻って来て、迷っている客に、迷う事ないじゃないですかと迫っていた。

婦人客が駅からあの道ではとても通えませんと不満を言うと、自転車を買えば良いじゃないですか、あんなに他のお客さんも待ってるんですからなどと林たちを客と思い込んで説得し、ちらしには下水道完備と書いてあったじゃないですかとクレームを言う客に、井戸を掘れば良いだけじゃないですかなどと言い、挙げ句の果てに坪4〜5000円ってそのまま書いてたはずですよなどと小野が言うので、婦人客は坪3000円って書いてたんで!と反論する。

林刑事は小野に、石川一郎さんご存知だそうですね?住所ご存知ですか?と聞くと、千葉県南町15と小野画答えたので、石川さんとはどう言うお付き合いで?と聞くと、あちらから飛び込んで来たんですと言う。

人相覚えていませんか?と聞くと、細面でしてね、メガネかけてましたよと小野は答える。

林刑事とアイスクリームを食べていた山形刑事は、古道具屋のた主人の証言では石川一郎と言う男は背が高くて丸顔だったと言うので、小野が臭いと思うと話していた。

林刑事が本部に電話をしに行った間、残っていた山形は、小野が車でどこかに出かけるのを見かけ、そのバックナンバー「0533」を手帳に書いておく。

林から電話を受けた主任は、今千葉に手配したと答えて、小野って奴を当たってくれと指示する。

そこに渡辺刑事に小野の前科関連を洗ってくれと命じるが、今、電話で問い合わせた所、千葉に南町なんてないそうですと高津刑事が知らせに来る。

長田部長刑事と金子刑事は小料理屋「小春」と言う店に来て、女将(不忍郷子)に、こう言う客は来ませんか?と石川平作の写真を見せるが、うちには来てないと言う。

泉の会社に戻るが、小野の住所は分からないと泉は言うが、前の車は小野さんのですか?窓から見える車のことと聞くとそうだと言う。

その時、たまたま店に来ていた同業者(小金井秀春)が、小野さんのことですか?と言葉をかけて来て、あの人に聞いたら分かるんでは?小野さんがたまり場にしている山の手不動産と言う新宿にある店のことを教える。

テアトル新宿などがある新宿にやって来た林刑事と山形刑事は、山の手不動産を訪ねる。

小野君の住所ね〜?あれでなかなかやり手でね、一月前もこの先のにスーパーマーケットが出来ると言う話を持って来て、30坪買えって言うんですよ、後で買いに行ったらもう売れたって言うんです、どうやら小野君が買ったらしいんですよと寺本一平(成瀬昌彦)は言う。

奴は金を持っているんですか?と聞くと、一月で倍になるんだったら、どうにかして工面するでしょうと寺本は当然のように答える。

報告を受けた主任は、石川さんの土地2つ売れば100万にはなるだろうと推測するが、小野には前科はなかったんでしょうか?と山形刑事から聞かれると、それがないんだよと主任は悔しそう言う。

そこに長田部長刑事から電話が入り、小野昭は偽名で、本名は秋田清?と驚く。

それを側で聞いていた林刑事が、早速連行してみては?と提案すると、任意同行で行くか?と主任も賛成する。

こまどり姉妹が歌っている民謡酒場に来た長田部長刑事は女店員はる江(光岡早苗)に石川平作の写真を見せていた。

はる江は、ああこの人!とすぐに思い出したようで、同じ女店員の光子(山東昭子)を呼ぶと、この人、道子さんのお客さんだったわよね、あの日から来ないよね?と話しかけ、その日を思い出そうとする。

丸山さんが駅で会ったって言ってた…、今月7日だわ!その日、休みだったのとはる江が思い出すと、ああ、はる江さん、前の晩レコとなどと光子は親指を立てて笑う。

丸山さんって?と長田が聞くと、光子さんの彼氏なの、一つ先の駅前にある丸山商事の社長さんよとはる江は教える。

丸山に会いに行くと、地所を売らないかって粘ってたんですと平作と会っていたことをあっさり認めた丸山は、三郎!と若い従業員(梅津栄)を呼ぶと、こいつに送らせたんですと言う。

三郎は家まで送るって言ったんですが、踏切を越えて帰りましたよ、踏切の向こうに、お色気ありそでウッフン!なさそでウッフン!黄色いサクランボ〜♩じゃないですか?と嫌らしい笑いを浮かべたので、丸山も釣られて笑い出す。

石川は寿司を食っていたそうだから、線路の向こうで寿司屋を探して見るか?と長田部長刑事は金子刑事に言う。

本部では、小野こと秋田清は、地面師のマエがあることが判明する。

東郊不動産を辞めてずっとやっていたらしいと林刑事が報告する。

そこに長田部長刑事からの電話があったので、秋谷地面師のマエがあったことを伝え、まさかずらかったんでは?と主任は案ずる。

長田と金子両刑事は、「梅寿司」と言う店に入り石川平作の写真を見せ、今月7日に来なかったですか?と聞き、金子刑事が右足がびっ○なんですと言うと主人(杉義一)はすぐに思い出したようで、初めてだったんですけど、トロ2人前届けてくれないかって、地図を描きましたよと言うが、家を知っているのはうちの小僧だが、今出前に出ていると言う。

渡辺刑事が小野こと秋田清のアパートに訪ねて来ると、そこに地元署の警官がやって来たので、秋田清の張り込み中ですと渡辺が明かすと、今へべれけらしいですよと警官が言うので、酔っぱらいセンターに保護されているんですね?と渡辺は察する。

一方、「梅寿司」の小僧(植松鉄男)に石川平作に寿司を届けた家を案内させてやって来た長田部長刑事だったが、同行していた金子刑事が、ここ、前の事件の吉本と言う参考人のヤサなんですよと教える。

長田は、この近所を当たってみるよと言う。 鳥居坂留置所にやって来た渡辺刑事は、酔っぱらいが喚いた声を録音しているオープンリールのテープを再生して聞かせられる。

酔いが冷めた連中にこれ聞かせると一発でおとなしくなるんですよと白衣の担当者は苦笑する。

留置場を見て回ると、壁はゴム張りになっていて、身体をぶつけても怪我をしないようになっているし、水洗便所まで完備していると言うので、同行していた高津刑事は、僕のアパートより豪華ですねと感心する。

秋田は留置所内で熟睡していたので、秋田さん!と呼びかける。

本部では、戻っていた林刑事と山形刑事が将棋を指していた。

そこに長田部長刑事から電話が入り、電話を受けた主任が、トロを届けた先は吉本の家で、7日の夜に小型自動車が置いてあったんだなと確認している声を聞いた林刑事は、背が高い丸顔ってのは吉本のことでは?面通ししましょうと提案する。

主任は、この時間、迷惑をかけないようにねと注意する。

そこに渡辺刑事が帰ってきて、秋田は特別取調室1号に入れてありますと主任に報告する。 秋田はまだ寝ており、付いていた高津刑事が何度も名前を呼びかけ起こそうとしていた。

吉本の家の前で張っていた長田部長刑事は、タクシーが近くに止まり、道子!彼氏紹介しなさいよなどと同情のホステスから声をかけられながら降りて来た道子(八代万智子)に気付く。

タクシーが走り去り、近づいて来た道子に長田部長刑事は、警察手帳を見せながら、道子さん!ちょっとお聞きしたいことがありますと呼び止める。

長田部長刑事と山形刑事に本部に連れて来られた道子に会った主任は、石川平作さん、来たんだろう?と平作の写真を見せながら、平作さん、トロ2人前取ったと言っていると聞くが、道子は黙秘する。

一方、1人、吉本の家の前に残って張っていた金子刑事に懐中電灯を照らしながら、あんた、何なさってるんです?と警官が近づいて来たので、警察手帳を見せると、110番で怪しい男が忍んでいると言う連絡があったもので…と警官は説明するが、金子刑事は苦々しい顔になる。

本部では、目覚めて水を飲んだ秋田を前にした主任が、さあ、酔いが冷めた所ですっかり吐いてもらおうか…、石川さんが痩せて細面だってのは本当かね?と迫る。

そこに林刑事が吉本の写真を持って来て見せると、吉本信彦29歳、東郊不動産にいた頃知り合ったんだろう?2人であの爺さんをやったんだろう?と主任は追求する。

あの土地、どうやって手に入れたんだ?と聞くと、吉本が売って来たんです、儲けたら2割もらうって言う条件で…、夕べも催促されましたと秋田は答える。

それを聞いた林刑事は、奴は感づいたな?と緊張する。

吉本がどこに行ったか分からないと言うので、連絡はどうするんだ?と聞くと、スケの所…と秋田が言うので、道子か?と聞くと、邦子って喫茶店の子がいて、吉本はあの会社を辞めたんで、邦子の出てる喫茶店に電話してましたと言う。

その店は朝10時からと秋田が答えている時、別の取調室の山形刑事から電話が入り、そうか…、道子が自供を始めたか…と主任は答える。

その別室では、丸山さんが連れて来た石川さんをおびき寄せたって訳か?と長田部長刑事が道子に聞いていた。

石川さんをどうやって殺したんだ?と聞くと、始めは2人で飲んでたの…、そしてお風呂を勧めたんですと道子は答える。

(回想)浴室の湯船の前で湯をかぶっていた平作の背後に忍び寄った吉本(今井俊二)は、いきなり平作の首を絞め、湯船の中に頭を沈める。

その話を聞いた主任は、そのショックで死んじまった訳か…と合点し、吉本の車で多摩川まで運んだらしいです。

吉本は建売の頭金を2つばかり使い込んでいたらしいであうと言う話を聞いた主任は、それにしても哀れなのは道子だな、吉本の為に尽くしたのに、もう吉本には邦子と言う新しい女が出来ていると同情する。

実は秋田に吉本にあの土地が売れたと連絡させたんだ、そこで君に一役買ってもらいたいんだと主任は長田部長刑事を見る。

前の事件で顔が割れてるんでは?と長田部長刑事は躊躇すれば、変装すれば分からんだろう、さしずめ桜だ商事の社長と言うことでどうだ?と主任は愉快そうに言う。

会う約束の時刻は明日の11時、奴の助が働いている銀座並木通りの「スワン」と言う喫茶店だと主任は明かす。

翌日、メガネをかけた長田部長刑事と秋田が車で銀座の「純喫茶 スワン」前に到着する。

2人が店に入ると、店の前で靴磨きをしていた渡辺刑事が立ち上がる。 近くには林刑事と高津刑事、山形刑事も待機していた。

店に入った秋田はウエイトレスの邦子(並木和子)に、吉さん来るんだろう?と念を押し、長田がグレープジュース2つ注文する。

本部にやって来た金子刑事が、みんな出かけたんですか?と聞くので、主任は、君には貧乏くじを引かせたなと詫びる。

銀座では、渡辺刑事が車の中に入り時間を気にしていた。

すでに11時を7分過ぎていた。

その時、店の前にタクシーが停まり、中から降りて来た吉本が店に入って来る。

秋田の横に座った吉本は、キャッシュだろうな?と小声で聞く。 長田部長刑事は、こんな所では何ですから、私どもの会社へ来てもらいましょうか?車待たせてますからと言い、ビルを持ってレジに行くと、ここは私が…と吉本が言い、160円の代金を払う。

車に秋田と吉本を乗せた長田部長刑事は自分も乗り込むと車を走らせる。

それを確認した林刑事が綿ねベケ維持に目で合図をすると、渡辺刑事が運転する車を林刑事と高津刑事らの側に横付けし、2人は乗り込む。

1人残っていた山形刑事が本部に電話を入れ、主任さんですか?今出ましたと報告する。

秋田と長田に挟まれる形で後部座席に座っていた吉本は、どっかでお目にかかったような…、どちらの会社ですか?と長田の顔を横目で見る。

桜田商事ですよ、桜田門にあると長田が笑うと、えっ!と驚いた吉本は秋田の方を見るが、秋田は目をそらせる。

吉本を乗せた車が銀座の大通りを進んで行く。


 


 

 

inserted by FC2 system