白夜館

 

 

 

幻想館

 

警視庁物語 血液型の秘密

24作品あるらしい「警視庁物語」シリーズの1本で、上映時間56分と言う中編。

赤ん坊の死体の発見と言うショッキングな出だしから、その赤ん坊が皇太子殿下のお誕生日と近い設定になっていると言うのが当時の時代背景として分かる。

日本中から祝福を受ける赤ん坊がおられる一方で、誰からの祝福も受けず、生まれてすぐ闇に葬られた赤ん坊の悲劇性を描いている。

その赤ん坊の父親も母親もなかなか姿を現さないと言うのが本編の特長で、この時期としては珍しく今井俊二さんが嫌なクズキャラクターを演じている。

対する山本麟一さんはまだ若手のイケメン刑事役として出ており、まだ悪役のイメージはない。

特定の刑事に焦点が当てられている訳ではないが、あえて言えば花澤徳衛さん演じるベテラン林刑事が目立っている程度か?

この手の刑事物に良くありがちな人情派刑事として出番が多いような気がする。

犯人探しとしてはあっけない結末で、血液型も犯人特定と言うよりは、赤ん坊の薄幸さを強調する道具になっている。

ちらりと登場する東野英治郎さんや沢村貞子さんは安心感がある。

この作品で一番の見所と言えば、こまどり姉妹が登場していることだろうか? 久々にこまどり姉妹を見たが、この当時のお二人は本当に愛らしい。

本編中に登場する「警視庁 野方警察署」と言う所が舞台のようだが、他の作品でも同じ設定だったのかどうか定かではない。
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
1960年、東映、長谷川公之脚本、飯塚増一監督作品。

子犬が道で何かをついばんでいる。

そこに近づいて来る自転車の男。

子犬の側にやって来た男は、釣り竿のような物で子犬を捕獲すると、仲間が待っていた犬の収容車に今捕まえた野犬を投げ込む。

さらに、林の中にいた犬を同じように捕まえた野犬狩りの男は、その犬がいた林の中にあった嬰児の死体を見つけ仰天する。

赤ん坊の泣き声にと赤ん坊の写真をバックにタイトル

何人もの赤ん坊の写真をバックにキャスト、スタッフロール

事件を知り、現場に遅れて駆けつけた記者(南川直)が、赤ん坊なんだって?と先に到着していた仲間に聞くと、その仲間は、男の子なんだよと教えたので、来たついでに一枚撮っとくかとと遅れて来た記者はカメラを取り出す。

現場を掘り進めていた刑事たちは、おしゃぶり以外にはもう何も出て来ないことを確認していた。

鑑識医の話では、死因は青酸化合物による中毒死だと言う。

鑑識医はさらに、死後3日くらい経っており、赤ん坊の成長具合から見て、2月末くらいに生まれたのではないかと言う。

長田部長刑事(堀雄二)は、左肩に10円玉くらいの赤い痣があると赤ん坊の特徴を捜査一課長(松本克平)に伝える。

その時、林の奥の方で警察犬が見つけたと酒屋の名前入りの手ぬぐいを持って来たので、これはおむつではないか?と刑事たちは気付く。

赤ん坊の物かどうか警察犬に物品選別させてみることにするが、結果はやはり赤ん坊の匂いをシェパード警察犬は嗅ぎ分ける。

早速、林刑事(花澤徳衛)と金子刑事(山本麟一)は、手ぬぐいにかかれた伊勢浪酒店へ向かい、主人(打越正八)に手ぬぐいの事を聞く。

酒屋の主人は、その手ぬぐいは確かに自分の所で去年200本作って御得意さんに配った物だと証言したので、その御得意さんの中に、2月の末頃男の子が生まれた家はありませんか?と林刑事が聞くと、若いのに聞いてみましょうと主人は答える。

一方、長田部長刑事と山形刑事(中山昭二)は、産婆や産婦人科医を当たっていた。

酒屋の情報で、林、金子両刑事が最近赤ん坊が生まれた家の主人に赤ん坊のことを聞くと、主人はうれしそうに、保健所から来られたよなどと妻と赤ん坊を家の中から呼び出したので、金子刑事は慌てて、保健所ではないんですがね…と訂正する。

長田部長刑事と山形刑事は「相澤医院」と言う産婦人科へやって来る。

林刑事は、赤ん坊を抱いた母親に、2月29日生まれなんだけど、誕生日が4年に1度じゃ可哀想なので、届けは3月1日にしたんですよなどと聞き、可愛い坊ちゃんですね、きりっとしてて…と褒めると、この子、女の子なんですよと母親が言い返したのであっけにとられる。

「相澤医院」で待っていた長田部長刑事と山形刑事の前にやって来た医師(松村達雄)は、これじゃないかな?左肩に直径2cmほどの痣があると書いてありますからとカルテを持って来る。

妊娠3ヶ月の時に一度降ろしたいと言ってたんですが、優生保護法が適応できないと教えると、考え直したようですと医師は言う。

紙芝居に子供たちが集まって来た横を通り、林刑事と金子刑事は「ひかり荘」と言うアパートにやって来ると、林さん!と声をかけて来たのは長田部長刑事だった。

医者の証言から彼らも同じ女性に突き当たり、このアパートの8号室らしいんだと言う。

長田部長刑事が管理人に会いに行き、林刑事らが8号室で声をかけていると、向かいの部屋の主婦(沢村貞子)が顔を出し、吉本さんなら留守ですよと言うので、いつからいないんですか?と聞くと、今朝までいたと言う。

赤ん坊がいませんでしたか?と聞くと、浩ちゃんなら3日前にお父さんに預けて来たらしいと主婦は言う。

その父親は半年前に女が出来て一緒に暮らさなくなったようで、皇太子様がお生まれになったので、宮様にあやかって浩って名付けたんですよ、子供はやっぱり母親の側にいませんとねと主婦が話していると、その子供が帰ってきて、紙芝居始まるから10円くれとねだる。

主婦が10円、10円ってうるさいねと小言を言いながら5円渡すと子供が膨れたので、林刑事が持っていたキャラメルを渡してやる。

左肩に痣がありませんでしたか?と赤ん坊のことを山形刑事が聞くと、ありました、近所で火事がありましてね、二階屋が焼けちゃったんですよ、それが痣の原因じゃないかって言ってたんですよ…と主婦が言うので、刑事たちがぽかんとしていると、知りませんか?おなかの中で火事を見たら痣が出来るって…と主婦は教える。

長田と管理人(曽根秀介)が戻って来て部屋の鍵を開け、全員中に入って部屋を調べる。

今朝10時頃、吉本から呼び出し電話があったらしいと長田が管理人の証言を林刑事らに伝える。

管理人は吉本と言う男とは面識があったと林刑事は気付く。

部屋の中には、美智子妃殿下が浩宮様を抱いておられる写真と、殺された赤ん坊を抱いた母親の写真が壁に貼ってあった。

大分、生活に困っているみたいですね?と金子刑事が指摘すると、家賃を4ヶ月も溜められて、催促すると、その内旦那が払うと言うだけなので困っていると管理人はぼやく。

その時、部屋で見つけた写真に写っているのが、その旦那の吉本だと管理人は言い、安子は諦めきれずにごたごたしていましたと打ち明ける。

わざわざ呼び出し電話をかけて来てるってのも嫌ですねと林刑事は長田部長刑事に話しかけると、ひょっとしたら安子もやるのかも!と山形刑事が案ずる。

警視庁の「嬰児殺し事件捜査本部」 狙うつもりじゃないかって言うんだね?と、戻って来た長田部長刑事らの意見を聞いた捜査主任(神田隆)が考え込む。

安子の実家は練馬で籠店をやっており、夫の方は東郊+不動産と言う所に勤めているらしいんですと長田部長刑事は報告する。

そこに高津刑事(佐原広二)が戻って来たので、解剖の方は進んでいるかね?と捜査主任が聞くと、血液型がO-MN型と分かったと言う。

赤ん坊の写真を手に面通ししてくれないかと主任は頼み、渡辺刑事(須藤健)は「ひかり荘」へ向かう。

林刑事と出かけた金子刑事は、自分も尻の下に痣があるので、母親が二階じゃなく平屋の火事を見たのではないかなどと冗談を言う。

東郊不動産に来た林刑事が女子事務員(谷本小夜子)に、吉本信彦さんいませんか?と女事務員(醍醐都子)に聞くと、今日は休みです、そう電話がありましたと言う。

風呂桶などを作っている安子の父(織田政雄)を訪ねた山形刑事は、安子は、高校を出て勤めた先の野崎さんと云う旦那と1度結婚したことがあると安子の義母(利根はる恵)から聞く。

いくら大事にされたって妾じゃ…と父親が仕事をしながら嘆くと、吉本さんも籍は入れてないし、野崎さんが返してくれって頼みに行ったらしいよと義母は言う。

野崎さん、吉本を知っているんですか?と山形刑事が聞くと、元々安子の居所を安本が知ったのは野崎の旅行会社なんだから…と父親は言う。

本部にいた主任に「ひかり荘」に向かった渡辺刑事から電話が入り、死んだ赤ん坊の写真を見せたら浩に間違いないそうですと報告して来る。

吉本もまだ見つからないんですかね〜と高津刑事が主任の側で案じる。

準備中の飲み屋「浮世」にやって来た林刑事が、吉本さんに会いたいんですが?と聞くと、女将の松江(星美智子)は、3月も前に出て行ったきりですよと言うので、会社じゃここが現住所ってことになってるんですがと林刑事が困惑すると、風呂つきのアパートを見つけたって言ってましたよと松江は答える。

1人でアパートに引っ越したんですか?と聞くと、実は、家にいた親戚のみち子って子と出来ちゃって…、どうせ今頃食いもんにされてますよ、こんなこと言うのもまだ見れんがある証拠ですかねと松江は自嘲気味に言う。

前の女来なかったですか?と聞くと、安子さんですか?来ましたよ、男に逃げられて馬鹿な女と思いましたが、今じゃ私も同じですねと松江は苦笑するので、アパート知ってるんでしょう?と聞くと、電車で3つ目…と言うので、新井薬師!あの雑木林に近い駅ですよ!と金子刑事が林刑事に知らせる。

「ことぶき旅行案内所」にやって来た山形刑事は女性事務員(小林裕子)に、野崎さん戻らないね?と聞いていた。

安子を知っているかと聞くと、今でも付き合ってるし、同じ時に採用になったのと事務員が言い、赤ちゃんさえ生めば、吉本が帰って来ると思っていたと安子は、10日ほど前に吉本を苦しめてやるって言っていたことを明かすが、しゃべり過ぎたと気づいたのか、周囲を見回す。

近くの甘味処に誘った山形刑事は、みつ豆を奢ってもらって恐縮する事務員に、捜査費で請求するんですと教え安心させる。

うちの社長さんから逃げるためにアパートを紹介してもらったのが吉本さんで、結婚しようって言われたんですって、やっぱり弱いわよね、結婚するって言われたら…と事務員が言うので、確かめたら良かったと思うんですが?と山形が指摘すると、安子さん、うちの社長とああなってたでしょう?ついお妾さんになったらしいんだけどね、おじいちゃんの上にケチと来たらね…と事務員は打ち明ける。

社長、吉本さんの所へ行って、お金返せって言ったらしいのと事務員が言うので、お金って?と聞くと、サラリー、妾としての…、男ってケチねとぼやいた事務員は、山形が自分のみつ豆に手をつけていないのに気付くと、食べないの?と聞いて来たので、良かったら、これも一つ…と山形刑事は自分の分も差し出す。

雨が降り出した中、吉本の家にやって来た林刑事と金子刑事だったが、留守で相手はいつ帰って来るのか分からない中、張り込みを開始することにする。

ここから現場まで歩いて5分くらいですと林刑事に教えた金子刑事は、みち子とずらかったかな?とぼやき、林が1人で出かけようとするので、おやじさん、みち子の店ですか?と声をかける。

1人で張り込みになった金子刑事は、側にいた子犬を抱いて暗闇に戻る。

「ひかり荘」の前に出た渡辺刑事は、通りかかったアベックの女(三瀬滋子)が、だめよカメラなんか、アパート引っ越したいもの、隣の音、あんなに聞こえるでしょう?こっちの声も聞こえるわよと男(大木史朗)に文句を言いながら通り過ぎるのを見送る。

こまどり姉妹がステージで歌っている民謡酒場にやって来た林刑事は、店員の光子(山東昭子)に「浮き世」のママさんに聞いて来たんだと声を掛けるが、みち子さんのことかしら?私は光子、お宅、東北の人?「ち」と「つ」がはっきりしないんじゃない?などとからかって来たので、とんでもない、確かに「みち子」って言ったんだがな?と首を傾げた林は、今どこにいるか分かるかい?と聞く。

お休みよ、病院に入院しているの、この先よと光子はみち子の居場所を教える。

本部にいた主任は窓の外を眺め、すっかり降り出しちまったな…と雨のことを言うと、連絡ありませんね…と戻って来ていた山形刑事も言う。

一応、安子を家出人扱いにして届けを出したらどうかと長田部長刑事から言われた主任は、そうしようと答える。

そこに林刑事から電話が入り、みち子は駅前の病院で4ヶ月前に手術して入院しており、明日退院だと知らせて来たので、どちらにしてもみち子は無関係ですねと長田部長刑事は言う。

「ひかり荘」で張り込んでいた渡辺刑事に、高津刑事が交代にやって来る。

一方、雨の吉本家の前の暗がりで張り込みを続けていた金子刑事と林刑事に懐中電灯を照らし、不審尋問して来た警官(岡野耕作)がいたので、本庁の者ですと手帳を出して林が説明すると、警官は敬礼して去ろうとしたので、金子刑事は抱いていた子犬を差し出し、これ連れて行ってくれませんか、良く鳴くもんで…と事情を打ち明ける。

警官は子犬を受け取り去って行く。

警視庁野方警察署 電話を受けた渡辺刑事は、安子のことでだそうですと主任に変わる。

礫死体?安子に似ている?貨物列車に轢かれたって言うんですね?と電話を聞いた主任は他の刑事に聞こえるように復誦する。

受話器を置いた主任は、谷中墓地の近くらしいと告げ、渡辺刑事と長田部長刑事が出かけて行く。

線路脇で筵を掛けられていた礫死体の顔を写真と照合する長田部長刑事と渡辺刑事は顔を見合わせ頷く。

吉本信彦(今井俊二)が朝になってようやく自宅に戻って来たので、近づいた金子刑事が警察手帳を示す。

野方署に連れて来られた吉本は、殺す理由がないじゃないですか!と赤ん坊殺しのことを聞かされ否定する。

3日ほど前に安子が来なかったかと聞かれた吉本は、赤ん坊を連れて来たけど預かる訳ないでしょう。

あなたが赤ん坊の父親では?と聞かれると、言いがかりでしょう!さかのぼって勘定すりゃ分かるでしょう、野崎さんに囲われていたんでしょう?証拠を見せたいくらいですと吉本は自信ありげに答える。

主任には長田部長刑事から電話があり、父親に礫死体の面通ししてもらったと報告して来る。

すっかり肩を落とした安子の父親が長田の前を通り過ぎて帰って行く。

安子は轢かれる前に清算化合物で中毒死したとのことですと長田部長刑事は電話を続ける。

林刑事は吉本の側に来ると、今、証明したいと言ってましたが、証明してもらいましょう、血液型で親子かどうか法医学で分かるんですよと告げる。

安子の血液型は分かるんですか?と吉本が聞いて来たので、今朝、死体となって発見されました。

あなたは昨日の朝10時頃、呼び出しの電話をかけました…、そうじゃないかね?どこから掛けたんです?と林刑事は吉本に聞く。

上野の喫茶店で、頼まれたんですよ、野崎さんにと吉本が言うので、自分で呼び出しそうな物じゃないですか?と疑問をぶつけると、野崎さんはより戻したがっていたけど、あまり他人の詮索はしない方が良いんじゃないですか?と吉本は言う。

そこへ渡辺刑事が中年女性を連れて戻って来て、轢死現場から20分ほど先の旅館の女中(三戸部スエ)さん、安子が男と一緒だったそうなんですと渡辺刑事は説明する。

男の人像は分かっているのかね?と主任が聞くと、面長だって言ってましたよね?と渡辺刑事が女中に確認する。 すると女将は、50くらいの方なんですよと言うので、野崎じゃないかと思うんですよ、復縁を迫っていたそうですと渡辺が口を出すと、金返せ!なんて言ってましたと女中は証言する。

駅前の売店の証言によると、線路側で男女が言い合っていたと…と渡辺刑事は報告する。

そのとき電話がかかって来たので主任が出ると、野崎がね〜…と答え、山形君行って来てくれるか?と頼む。

「ことぶき旅行案内所」にやって来た山形刑事は、社長の野崎(東野英治郎)に会う。

第二取調室に連れて来られた野崎に主任が会いに来る。

お待たせしましたと挨拶した主任は、安子さんにはお会いになりましたか?と切り出す。

11時に、吉本君と3人ですと野崎が答えたので、吉本君は何故?と聞くと、安子が私に会いたがらないからです、安子には相当注ぎ込んで来たのですと野崎は訴える。

上の階で待たされていた吉本は苛立っており、まだいなくちゃいけないんですか?と聞く。

色々はっきりさせないといけないんでね、例えば、君が呼び出し役をやった理由とかねと林刑事が言うと、共犯って言うのか!と吉本は切れる。

これで厄介払いできるとは思ったがね…とうそぶく吉本に、林刑事は茶を煎れてやり、警察の茶もまんざらじゃないよと勧める。

そこに法医技師(片山滉)がやって来たので、血液調べさせてもらうよと林刑事が声をかける。

赤ん坊の血液型はO-MN、母親はO-M、父がOなら赤ん坊もOですよね?と林刑事は技師に確認する。

そうした会話を聞いていた吉本は検査するのに及び腰になるが、やむなく立ち上がり、耳たぶをメスで傷付けられ、血液採取させると、その場で技師は検査を始める。

刑事部屋の側にある道場から剣道をするかけ声が聞こえて来る。

技師は、O型ですねと答えるが、O-A、O-BでもO型の赤ん坊が生まれるので、MN方式で調べますと言い、抗M血清と抗N血清の瓶がある中、すぐに次の検査に取りかかる。

赤ん坊の血液型になるにはO-MかO-MNしかなく、NかMN型の反応があるはずで、Mだったら父親ではありません技師はと言う。

検査を終えた技師はN型ですね、O-N型ですと断定したので、動揺した吉本は、野崎だってNかも知れないじゃないか!と言うので、下なんですがね…と林刑事は、今取り調べられている野崎のことを明かす。

あやめ荘から出て別れたって言うんですね?と主任が野崎に聞いていた所にやって来た林刑事と法医技師が入って来て、林が主任に事情を囁き帰る。

その時、長田部長刑事から電話が入ったので、電話に出た山形刑事は、本部に帰ってたんですね?と喜ぶ。

主任に促された林刑事が、野崎に直接、血液型を調べさせていただきたいと申し出る。

捜査本部に上がって来た主任が長田部長刑事から受け取った封書には、中野区新町 警視庁様と書かれ、裏には何も描かれていなかった。

現場近くのポストに入れられていたそうですと長田部長刑事が報告する。

中味を読んだ主任は、遺書じゃないか!と驚くと、安子の物に間違いないと思われますと長田は答える。

吉本の所へやって来た主任は、吉本さん、ご迷惑をおかけしたが、安子さんは自殺と分かりましたと伝えると、自殺?と吉本は驚いたようだった。

遺書を読みますと告げた主任は、その場で封書の中味を取り出し読み始める。

刑事様

夕刊で捜査が始まったことを知りました。

あの人とあった帰り、浩と心中しようと思いました。

でも、赤ん坊が苦しむのを見た私は死に損なってしまいました。

もう一度あの人が会いに来てくれるのでは?と思いました。

もう野崎さんの言いなりに生きるには嫌です。

浩に会って、許してもらうつもりです。

細田安子

それを聞いた吉本は、人騒がせな女ですよね、こっちは血液型まで調べられたって言うのに!と苛立ったように言い、もう帰っても良いんですね?野崎さんの血液型は?何だったんですと戻って来た林刑事に聞く。

B-M型だったよと林が教えると、じゃあ、あの赤ん坊は僕の子だったのかな?思い当たる節がなかった訳でもないけど…、いずれにしても、あの子は生まれて来るべきじゃなかったな…と言い残し、吉本が帰って行ったので、林刑事は、何とね…と脱力したように呆れる。

不幸な坊やだ…、父親からも母親からも祝福されなかったんだから…と長田部長刑事もやり場のない怒りを込めて呟く。

主任も、野崎さんにも帰ってもらおうか…と告げる。

浩を抱いた安子のうれしそうな写真


 


 

 

inserted by FC2 system