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事件記者 真昼の恐怖

NHK人気ドラマの映画化第二弾。

新人記者の菅が江ノ島の風俗記事の取材に行き、他社の記者に騙されて特ダネを抜かれる失敗談から話が始まる。

違法輸血業者に血を売り小遣い銭を稼ぐ無軌道な娘の生態などに時代を感じさせる。

上映時間52分の中編なので、快テンポで話は進み、お馴染みのメンバーを中心に安心感のある娯楽映画になっている。

この後、シリーズにちょくちょく出演することになる山田禅二さんが初登場している。

まだ携帯やスマホがない時代なので、記者クラブにはいつもキャップが電話番として詰めているし、記者たちは取材先から絶えず公衆電話で報告を入れるのが、今となっては珍しいかもしれない。

ざるそば2つ!などと間違い電話がかかって来るなどと言う描写も、今では懐かしい。  
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
1959年、日活、島田一男原作、西島大+山口純一郎+若林一郎脚色、山崎徳次郎監督。

江ノ島海岸の海水浴場の情景を背景にタイトル

そんな海岸で、キスしあっているカップルなどの写真を盗撮している2人組がいた。

そんな2人に気付いた若い女性と若者グループが、おじさん、キスしちゃいけないの?と2人組に絡んで来るが、お止しよ!と止めに入ったのは、新橋の元パンパン、通称スイバレのお時(小園蓉子)だった。

彼女の素性を知る若者たちはこそこそとその場を去って行く。

夜が思いやられるとカメラマンの方がぼやくと、同行していたサングラスの男がメガネを取り、東京の桜田記者クラブへ電話を入れる。 サングラスの男は東京日報の菅記者(沢本忠雄)だった。

桜田記者クラブ内の寒暖計を見ていたガンさんこと中央日々の岩見(山田吾一)が、36.1度!今年最高だ!と驚くと、一昨日も36.4度ってビックリしてたじゃないかと、東京日報のキャップ相沢(永井智雄)がからかうと、今日一番ですと岩見は訂正する。

それを聞いていた中央日々のキャップ浦瀬は、これが家の新人か…と呆れる。

東京日報の仕切り部屋に戻った相沢は、江ノ島に取材に出かけた菅から電話を受けたので、江ノ島の夜の生態、しっかり掴んで頂戴と発破をかける。

側で聞いていたベテラン記者八田(大森義夫)は、ああいうネタは若いのにやらすが一番と太鼓判を押す。

先ほど引き下がった若者グループは、お時姉さんってたって、新橋のパンパンじぇねえかとバカにしていたが、そんなグループの娘が、金を作る当てがあると言い出す。

その女がやって来たのは、海辺側のバンガローの1つで極秘の献血をするバイトで、大田吉郎(山田禅二)と片桐春子(南風夕子)が2人でやっていた。

注射針を抜かれた女は、この後遊ぶのに2000円いるんだもっと取ってくれと頼むので、500cc行くよと春子は念を押すが、あんたたちモグリの商売何だろう?多い方が儲かるんだろう?と女に言われ、大田は言われた通り500cc春子に抜かせる。

その後、お時は、側を通りかかった車から降りて来た女が、車が走り去った途端、その場に倒れたので驚いて近づく。

倒れた女は2000円を握りしめていた。

食事中だった菅とカメラマンは、海岸に近づいて来たパトカーと救急車のサイレンで異変を察し、現場に駆けつけて見るが、野次馬の中に混じっていた中央日々の多賀記者(宮崎準)と出会う。

たまたま家族と海水浴に来ていたと言う多賀は、日射病だよと言うので、菅はカメラマンとその場を離れるが、残っていた多賀は、妻と子供にお前たちは先に帰ってなさいと命じる。

桜田記者クラブの共用スペースでは、相変わらず中央日々のキャップ浦瀬(高城淳一)が将棋を指していたが、 そこに東京日報の長谷部記者(原保美)がやって来る。

江ノ島ではいよいよ暗くなり、若者の生態の取材の本番になる。

カメラマンは、トライXですよとカメラの性能を自慢するが、その直後、ドライブクラブの車の側に立っていたお時に気付いた菅は、ちょっとイカすぜと気に入り、それをカメラマンに撮ってもらうことにする。

飲み屋「ひさご」では、各社の記者が集まり、雨乞いならぬ、事件乞いのため飲むのだと八田が女将のお近(相馬千恵子)に説明する。 ビールはお祓いみたいなものだと言う。

そんな中、1人記者クラブに残っていた浦瀬は、多賀からの電話を受け、さっきの女は病院に運ばれたが、貧血で心臓麻痺を起こし死んだらしいと教える。 多賀は、彼女の腕には血を採った痕がありましたと言うので、これは頂きだと喜ぶ。

側で聞いていたガンさんが、ただの日射病って騙されるとは…と菅の失態を嘲ると、お前も騙されないよう気をつけてくれよと浦瀬は注意する。 江ノ島のバンガローに大田と春子が戻って来る。

部屋に入り照明用のカンテラに火を灯した大田は、人に気配に気付き誰だ!と誰何すると、そこにいたのはお時だった。

商売の仲間に入れてくれ、こう見えてもスイバレのお時って言うんだ、昼間倒れた女が誰の車から降りたか知られたくないだろう?と言うので、そいつは待ってくれ!と大田は慌てる。

翌朝、自宅でゆっくり寝ていた相沢は、新聞を持って来た小学生の息子から、お父さん、抜かれた!と言われ、起きて中味を読む。

「無軌道なハイティーン娘死亡」「血を抜くハイティーン娘」と書かれた記事を読んだ相沢は、畜生、抜かれた!とぼやきながら起きると、たか子、飯にしてくれと妻に呼びかけたので、あなた、お出かけですか?今日はお休みでしょう?とたか子(須田喜久子)聞かれる。

気になるんでクラブに出ようと思うと相沢は答える。 江ノ島でカメラマンと朝食を取っていた菅も朝刊を読み、自分が多賀からまんまと騙されていたことを知る。

記者クラブの中央日々の仕切り部屋では、多賀が「ワカ末」の入った引き出しを開けていたが、そこに夕べはご苦労さん!と浦瀬キャップが上機嫌でやって来たので、多賀は二日酔いの特効薬と言いながら「ワカ末」を手渡す。

それを受け取った浦瀬は、みっちゃん、お水一杯頂戴!と頼む。 そこにやって来た相沢が、浦さん、通信員ダネかい?と聞くと、多賀ちゃんが海水浴に行って掴んだんだよと浦瀬が言うので、みっちゃん、冷たいの1杯!と相沢は焼け気味に頼む。

桜田記者クラブに戻って来た菅は、多賀さん、貧血って言ったんですよ!ちょっと文句言ってきます!と憤慨して中央日々の部屋へ向かおうとしたので、バカ!向こうは記者として当たり前のことをしただけだ、怒鳴り込んで恥の上乗りをするのは止めましょうと相沢は言い聞かす。

お時は再びバンガローにやって来るが、中には春子しかおらず、要求した金も要求してないと言うので、2時までに金を作れないならバラすよ、後でもう一度出直して来ると言って出ようとするが、入り口には大田が立ちふさがっており、それまで命があったらな、血を抜いてやるのさ、少し余計にな…と言うと、いきなりお時をベッドに押し倒して身体を押さえつける。

春子が太い注射針を取り出し、お時の腕に突き刺す。

そのバンガローの外を、無邪気な水着姿の子供たちが通り過ぎて行く。

記者クラブでは、菅の江ノ島取材の記事に目を通した相沢が、いや~結構です、初めてでこれだけ書ければねと褒めるので、菅は多賀から出し抜かれたことを悔しがるが、八田も授業料だよ、良い勉強させてもらったからね…と慰める。

夜の江ノ島、六郷の土手の下の暗がりでキスをしようとしたアベックがいたが、近づいて来た車のライトが見えたので、女の方が嫌だわ、ここ…と言い、場所を移動と立ち上がる。

その時、斜面の上の道路にその車が停まり、ドアが開くと中から女の身体が転がり落ちて来て車が立ち去ったので、アベックの女が悲鳴をあげる。

落ちて来たのはお時の死体だった。 記者クラブにいた菅は、今度、僕、多賀さん抜きますよとまだ言っていたので、八田は「ひさごや」へ連れて行くことにする。 相沢も、今日の飲み代は新人育成料として社で出しても良いですよなどと勧める。

その直後、東京日報の浅野(綾川香)がやって来て、今、110番が入りましたと六郷のお時の事件を相沢に伝える。

相沢は、六郷へ飛びましょうと即答する。

その後、伊那が、女が車から投げ出されたのを見たアベックがいると電話で伝えて来たので、旦那、現場当たってもらえるね?べいさんに言ってもらうと相沢は指示を出したので、すぐさま長谷部(原保美) が出かけて行く。

お時の死体が運ばれた「三輪外科」には、既に新日本タイムズの荒木(内田良平)も来ていた。

死因は貧血による心臓マヒで、死亡推定時刻は2時~4時頃と村田部長刑事(宮阪将嘉)が発表したので、病死の可能性は?と記者が聞くと、ないとは言えんね…と村長は答える。

その間、死体を検死していた医者たちは、お時の左腕に注射針の後を発見する。

村田部長刑事は、あの女は昔からの顔なじみで、新橋のスイバレのお時だと言うと、記者の中にも知っているものがおり、驚きの声があがる。

そんな中、東京日報が動いたので、日報さん、写真撮りに行きますよと荒木が他の記者に教える。

医者たちは、被害者は血を抜かれて殺されたのでは?と推測していた。

記者クラブの日報の部屋に顔を出した岩見が、お時の写真撮れました?と聞くので、競争相手に直に聞きに来るとは…と八田が呆れる。

そこに長谷部が戻って来る。

同じく警視庁に戻って来た村田部長刑事は、捜査一課長(二本柳寛)と捜査会議の席に着く。

村田部長刑事は、モグリの血液業者がおり1人400cc採る。

儲けは100ccにつき100円なので大したことなさそうだが、10人で4000円、月12万…と報告し、最近、巣鴨の病院で梅毒の血が使われた事があったことも指摘する。

それを聞いた捜査一課長は、都内の全病院に手配だ!殺しと言う見込みで!と命じる。

村田部長刑事は、不良血液を売買する一味がいるらしいと推測する。

記者クラブでは、浦瀬が水を飲みに来るついでにちらっと東京日報の仕切り部屋の様子を伺う。

中央日々の部屋に戻りかけた浦瀬は、ガンさんこと岩見が出かけようとするので、どこへ行く?と聞くと、夜鳴きそばを食いに…と言うので、食うことばかり!とどやしつけるが、ついでに俺の分も買って来いと命じる。

岩見が手を差し出すと頭を叩く。 新情報が何も入って来ないので、八田は朝刊の山じゃねとぼやくと、以前と違って写真を手に入らないと浅野も言う。

その直後、弘報係(古田祥)がお時の顔写真いりませんか?と記者クラブに来る。

写真が余ったと言うので、それ下さいとガンさんがうれしそうに頼むと、死人の写真もらってどうするんだ!と浦瀬が雷を落す。

翌朝、どの記者たちも、仕切り部屋のソファで寝入っていた。

その時、東京日報の電話が鳴り、伊奈からの連絡で、夕べ1時頃、病院に緊急手配が敷かれた。

輸血中の血液に不良血液が混じっている恐れがあるらしいと言うことで、深川の販売店が知らせてくれたのだと言う。

その電話を受けた相沢は、捜査会議が12時からで、手配が1時、これは関連性が高いと読む。

伊奈は、村長の所に早駆けしますと言う。

村田部長刑事の家の前で張っていた伊奈は、家から村田と溝口刑事(木島一郎)が2人出て来たので、その後を尾行し始める。

村田部長刑事らは、不良血液の売人を捜しているようで、前がある者を訪ねるが、血液が腐りやすいし今はやってない、6時から8時の間は床屋にいたのでアリバイがあるなどと聞かれた男は答える。

記者クラブに、昨日徹夜続きで熟睡していた菅がすっきりした様子で出社して来るが、仕切り部屋内では相沢と八田が出前の朝飯を食っていた。

そこに伊奈から電話が入り、村田部長刑事はモグリの血液業者を捜しており、もう6人当たっていますと言う。

その頃、新日本の荒木はお時のアパートを訪ねていたが、一足早く取材したらしい多賀と出くわす。

多賀は何も聞けなかったよと言い帰ろうとするので、一緒に帰りかけた荒木だったが、すぐに立ち止まると、多賀ちゃんの言う事を聞くと菅ちゃんみたいになる、自分の目で確かめると言ってアパートへ向かう。

やがて記者クラブに伊奈が戻って来て、お時の写真を見るので、朝食を食べていた菅はその写真に気付き、お時だと聞くと、この服、どっかで見た気が…と考え出す。

今流行の服だからじゃないか?と相沢は怪しむが、江ノ島だ!一昨日!と思い出した菅は、引き出しに入れていた当日の写真を取り出す。

そこには、車の横に立っているお時がはっきり写っていた。 この車は?と相沢が聞くと、ドライブクラブの車ですと菅が教えると、お時を運んだ車の線はまだ出てなかったな?こいつはすっぱ抜くぞ!と相沢は喜ぶ。

山崎と菅に、バンガローをもう一度当たってくれと指示した相沢は、菅ちゃん、名誉挽回だよと励ます。

夕べ8時頃帰って来た車を調べると、大田吉郎と片岡春子の名前が名簿に残っていた。

手分けして調べていた菅は、高橋一郎と言う名前が残っていたことを知る。

記者クラブで山崎からの電話を受けた長谷部は該当する車を15台まで絞り込む。

そこに菅から電話が入り、高橋一郎の名を聞いた相沢は偽名だろうねと察し、山崎が調べた15台のドライブクラブ名を伝える。

それをメモした菅はすぐさま付近のガソリンスタンド巡りを始める。

相沢は〆切間近なので、本社デスクのサブちゃんに電話を入れると、夕刊は殺しの線で派手に書いてくれ、握っているのはうちだけらしいと伝える。

輪転機がフル稼働する。

記者クラブで刷り上がったばかりの日報の記事を読んだ岩見は「吸血鬼は東京にいた」と扇情的に書かれた記事に目を留める。

浦瀬も、まんまとしてやられたな!と悔しがる。

大田が住まいを出た直後、村田部長刑事が訪ねて来る。

部屋の中を調べた溝口刑事は、捨てられていた東京日報の夕刊を発見する。

それを見た村田部長刑事は、ブンヤさんも油断ならないな、一体どこで嗅ぎ付けたんだろう?と日報の記事に驚く。

その後、ゴミ箱の中に入っていた注射器を発見する。

春子の家に来た大田は、あの女が病気持ちだったとは知らなかった、新聞にまだ車のことは出てないから当分ここは大丈夫だろう。

早いとこ金を作ってずらかろうと春子に言い聞かす。

伊奈が記者クラブに戻って来る。

相沢は、銀座のオリオン劇場に拳銃強盗が会ったとの電話を受けていた。

警視庁に戻って来た村田部長刑事も、大田吉郎が一番怪しいと捜査一課長に報告し、アパートには張り込ませてありますと言う。

記者クラブの相沢は、まだ電話を受けており、オリオン座の被害金額は3740円?たったそれだけでピストル強盗とは間が抜けてるねと苦笑する。

その後も、なかなか入って来ない菅の連絡を待ち受けていた相沢だったが、電話が鳴ったので、そら来た!と受話器を取るが、ざるそば2つ?と間違い電話だと気づいたので、こちら刑務所ですと怒って電話を切る。

春子は逃げる支度をしていたが、そこに突然やって来たのが菅で、片桐春子さんですね?ちょっとうかがいたい事があるんですが?ご旅行ですか?とバッグなどを見ながら怪しんだ菅は、この人知ってるでしょう?車に乗せた人ですよと言いながら、お時の写真を突き出す。

動揺する春子を見て、警察を呼んで調べてもらって良いですか?と菅が近づこうとすると、背後から、呼べるもんなら呼んでみろ!と言いながら大田が現れ菅を捕まえる。

大田のアパートで張っていた溝口刑事は、いきなり見知らぬ男が現れて、大田さんは?と聞くので、今はいないよと答えると、女の所にいるんでしょうと言い出て行こうとしたので、それは何ですか?と溝口刑事が、男が持っていた新聞包みを取ろうとすると、男は抵抗して床に落とす。 すると、ガラス瓶が割れ、血液がこぼれる。

村田部長刑事に溝口刑事から電話が入り、大田の情婦のアパートが分かったと知らせて来る。

菅は大田に捕まり、椅子に縛り付けられていた。

殺しのことを洗いざらい知った男を生かしておく訳にはいかないと大田は睨み、春子が注射器を取り出し、大田が押さえつけた菅の腕に注射針を刺す。

その時、大田、片倉、手を上げるんだ!と声がして、村田部長刑事らが記者たちと一緒に踏み込んで来る。

伊奈が菅を救い出す。

記者クラブに戻って来た菅に相澤は、菅ちゃん、記者はヤマを負うのが仕事で、ヤマを作るのが目的じゃないんだと叱り、八田も、いささか軽率だったねと苦笑する。

討ち死にする侍みたいな真似は止めて欲しいと相沢は釘を刺すと、べえさんに連れて行ってもらって、迷惑をかけた他社さんに詫びに行ってお出でと言い聞かす。

菅が仕切り部屋を出て行くと、でも一番迫力があるね、うちの記事、菅ちゃんが命がけで取材したお陰だと八田が笑うと、奴は良いブンヤになりますよと相沢も太鼓判を押す。

桜田門から走り出す車。


 


 

 

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