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早射ち犬

「犬」シリーズ8作目らしいが、田宮二郎主演の通俗ガンアクションものである。

ガンさばきがめっぽう巧い主人公鴨井大介のキャラは、「悪名」のモートルの貞に近く口が達者で軽薄な男だが、人情味は厚い好男子である。

それに対し、大阪県警の「しょぼくれ」こと木村刑事は、いつも無精髭でうどんばかりを食べているぶっきらぼうな男と言う対照的なキャラクターになっており、鴨井の銃器不法所持を知っていながら、鴨井が根っからの悪人ではないことも知っており、時折見逃してやる寛容さも持ち合わせている。

今回は、鴨井が流しをやっていると言う設定になっており、藤岡琢也さん演じる常やんと言う相棒が加わっている。

さらに、エミと言う娘も絡んで来るが、このエミを演じている嘉手納清美さんと云う女優さんは、なかなか可愛らしい顔をしている方で、60年代の半ば頃、何本か映画に出たり歌を歌ったりされており、TVの「ウルトラセブン」のサロメ星人他、ドラマ出演の方が多かった方らしい。

玉子役の坂本スミ子さん、敵役に成田三樹夫さん、謎めいた美女に江波杏子さん、刑事役に橋本力さんと言った常連みたいな人達に加え、他にも伊達三郎さん、夏木章さん、早川雄三さんと言った大映お馴染み陣も登場する中、財津一郎さんが意外な形で登場しているのもうれしい。

話は怪しげな新興宗教団体がらみで、オチも含めいかにも通俗アクションっぽいが、気軽な添え物映画として楽しむ分には十分な出来で、田宮二郎さんの軽快なガンアクションが楽しい。
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
1967年、大映、藤本義一脚本、村野鐵太郎監督作品。

銃を構え撃つ鴨井大介(田宮二郎)をバックにタイトル

人気のない瓦礫のような場所で銃の練習をする鴨井を背景にキャスト、スタッフロール。

東京湾のはるか向こうに霞んだ東京タワーが見える。

ギターを持って盛り場を流す鴨井に、鴨さん、一度マネージャーに会ってくれ!と後から声をかけてしつこく付いて来るのは常さん(藤岡琢也)だったが、鴨井は全く相手にしなかった。

それでも常さんは、この子はうちの所属女性タレントや、この子には聞くも涙の事情があるんや!と宮本エミ(嘉手納清美)を連れて紹介しながら追いすがって来る。

鴨井がギターで伴奏し始めると、常さんが浪花節のように調子を付けて、姉上が行方不明とうなり出すので、俺、辛気くさいの嫌いやと鴨井は拒否する。

それでも常さんは、鴨さん、エミちゃん世話してやってくれ、わいマネージャーやと言うので、鴨井はわいは社長やとついノリで答えてしまう。

カウンターに美女が1人座っていた一軒のバーに入って鴨井が軍歌を歌い始めると、そこに九十九会の地回りがやって来て、誰に断って俺らのシマで歌ってるんだ!と因縁をつけて来る。

日本は確かに島やな、島の始末は表で付けますか?と笑顔で答えた鴨井は、常やん、商売道具頼むでとギターを預け店の外に出ると派手に喧嘩を始める。

ボコボコにされた九十九会の連中がこそこそ逃げて行くと、まだファイティングポーズの格好をしていた鴨井に近づいて来た常やんが、そのポーズ!と気付いたので、鴨井は、カシアス・クレイや!と気取る。

かし常やんは、鴨さんよ、この辺で商売するには九十九会に一度挨拶せんと…とビビるので、俺も一緒に行ってやる!と鴨井も承知する。

九十九会では会長の白井金造(伊達三郎)が、棚から銃を取り出している横で、支配人の原(成田三樹夫)が、鴨井って奴は大阪で天地会や蒲生一家を潰した奴らしいですぜと報告していた。

そこに、ギターを抱えたその鴨井と常やんが乗り込んで来て、常やんは最初からぺこぺこ謝ろうとするが、白井は鴨井に、うちの店の専属してくれませんか?1日2ステージで3万出しましょうと慇懃に挨拶して来る。

実は以前ちょっと問題を起こしまして近々裁判があるんですよ、その間にあんたの腕を見込んで…と白井が銃を差し出して来て、護身用にどうぞ…と言うので、サイレンサー付きでっか?と感心しながら手に取ってみた鴨井は、その銃を白井の方へ向けたので白井は固まるが、鴨井が撃ったのはその顔の背後に並んでいた九十九会と書かれた提灯で、上部の留め金を外して提灯を降ろすと、中の蝋燭2本に火を灯してみせる。

そして銃を机の上に置くとさいならと言い残し事務所を後にするが、廊下で先ほどバーで出会った美女宮本文子(江波杏子)とすれ違う。

どこへ行っても女には苦労せんわと自惚れる鴨井に、常やんは、これですむやろか?と九十九会の今後の行動を案ずる。

鴨井が住む安アパートの「白鳥荘」に帰って来ると、出産間近の山本玉子(坂本スミ子)が近づいて来て、うちの五郎ちゃん知らん?まだ帰って来んねん、何かあったんやないかと思うと心配で…と言うので、なだめて鴨井と常やんは部屋の前に来るが、ドアを開けようとした常やんは、鍵が開いているので、泥棒や!と警戒する。

何も盗まれるもんあるか!と鴨井は叱り、中に入ると、ベッドで高いびきで寝ていたのは隣の山本五郎(小沢昭一)だった。

こりゃ!嫁はんパンクしたで!と脅すと、慌てて起きた五郎は、男か女か!と聞くが、まだ生まれてへんと知ると、最近はマイカーばかりだし、白タクの取り調べは厳しいし、こんな稼ぎでは帰れない、鴨井さん、貸して!と手を差し出して来たので、鴨井は常やんに、今日の稼ぎを渡してやるよう指示する。

常やんが金勘定しているので、鴨井はその札束全部を取って五郎に渡してやる。

いつもどうも…と礼を言いながら五郎が出て行くと、さっきの九十九会との契約条件は悪くなく、1日3万なら月90万、1年に1080万、10年で…などと取らぬ狸の皮算用を始めたので、暴力団が集めた金なんかいるかい!と鴨井は断る。

すると今度は同じアパートに住む怪しげなオカマ咲田勇作(財津一郎)が勝手に入って来て、鴨さん、1曲歌ってよ、非常に寂しい~!などと奇声を発するので、咲田はん、出て行ってチョウダイ!と鴨井と常やんが同時に言うと、取ったわね、サビシイ~!と言いながら咲田は出て行く。

その後、九十九会の事務所に呼ばれた五郎は、文子から前金だよと言われ札束を受け取り、白井から1週間行ってくれるな?と頼まれる。

アパートに戻った五郎からその金を見せられた鴨井は、五郎やん、運向いて来たなと一緒に喜ぶ。

関西までの運転手代で10万もらえるので、玉子の出産費用もこれで大丈夫と五郎は安堵するが、まだ玉子には内緒で、後で教えて脅かそうと思うと言うので、そらあかん、びっくりして逆子になるかもしれん、俺は逆子で、生まれたんも1ヶ月も遅れておふくろに苦労かけたんやと鴨井は忠告する。

結局、鴨井も一緒に玉子に金を渡しに行き、胎教の為にわいの顔思い出して良いでと鴨井が言うと、お断りやわ、うちの人もうちの人なりに良いとこあるんやと玉子はのろける。

留守のことは俺に任しといてと鴨井が言うと、鴨井さんがそう言ってくれるんで、ロールスロイスに乗っている気分だと五郎は安堵する。

その後、白井と原は、赤い頭巾をかぶった神谷天心(北城寿太郎)がいる天心精霊会の赤いビルにやって来る。

会員たちへのメッセージを終えた神谷が白井たちに会い、大阪行きだそうですなと聞くと、後10日で裁判で、3年くらいは食らいそうだ、ついては今後は精霊会の経営を原に任せるんだと白井に言われたので動揺する。

2人の弟子と同時に、本の中に隠した銃を取り出そうとすると、先に原が銃を出したので、天心会は俺が作ったんだ!と神谷は抵抗するが、儲けさせたのは俺たちだろう?と白井は睨みつけ、お前は関西に来るんだと命じる。

その頃、鴨井と常やんは、ゴーゴークラブで流しの仕事をしていたが、1曲10円は時代遅れやと嘆くが、鴨井が聞こうとしないので、又ジャリ相手や…とぼやき、次の店に向かう。

エミとゴーゴーを踊って楽しんでいた鴨井は、エミが落したペンダントをしろってやるが、開いたペンダントには写真が入っており、そこに写っていたのはエミと先日九十九組の廊下で会った文子だったので驚く。

これがいなくなった姉さんか?と聞くと、頷いたエミは、ある日家出したのと言うので、あれが姉さんか…と気付いた鴨井はちょっと来いとエミを外へ連れ出す。

九十九組の事務所では、文子がお願い!と苦しそうに頼むので、じゃあさっきの条件飲むか?と原が迫っていた。

そこに子分が、鴨井が宮本エミと言う女を連れて来てますと告げに来る。

それを聞いた原は、どや?その姿妹の前にさらけ出せるか?と言いながら赤い液体の入った小瓶を渡す。

文子はその液体を持って洗面所で注射器を取り出す。 その直後、エミを連れ部屋にやって来た鴨井が、この子のお姉さんは宮本文子や、この前この廊下で会うたぜと迫るが、勘違いしてるぜと原は受け流す。

鴨井が帰った後、洗面所に身を隠していた文子の元へやって来た原は、妹に見せられる身体じゃないからな… その後、部屋でミシンを踏んでいた玉子の部屋にやって来た鴨井は、五郎やんから知らせ来るか?と聞き、毎日送って来ると言うはがきを見せられると、赤ん坊のことばかりやないかと呆れ、TVのニュースで強盗犯の田辺安広と小松邦彦のことが報じられていたので勝手にスイッチを切り、こう云うのはおなかの子供に悪いと注意する。

そして、何かあったらここ叩き、すぐ起きよるからと自分の部屋の戸の堺の壁を指す。

カシアス・クレイの顔が乗った「ライフ」の表紙を壁に飾った自分の部屋に戻った鴨井は床の一部を開け、中に隠していたアタッシュケースを取り出すと、その中の拳銃を確認する。

玩具のように小さな身に拳銃も入っていた。

その時、突然天井からものが落ちて来たので、どないしたんや!と呼びかけると、いっぺん試しにやってみましたんやと言う玉子の声が隣から聞こえたので呆れる。

その頃大阪の警察署では、刑事の木村準太(天知茂)が強盗殺人容疑の田辺と小松を尋問していた。

盗んだ3200万はどこに隠した?何時どこで分けるんだ?主犯は保釈中の白井金造と言うことも分かってるのや、今奴は大阪に来とる!と責めると、東京で分けることになっていますと自供を始めたので、東京のどこや?と問いつめるが、それは分からんと言うので、バカもん!と増田刑(橋本力)が怒鳴りつける。

天王寺旅館にお前らがいると密告して来た奴の心当たりはあるか?と木村が聞くと、女中ですか?と言うので、男の声やと木村は教える。

使った車のナンバーは?と聞くと、神奈川5-みー4565と田辺は正直に教える。

そのバックナンバーの車は、トンネルを通り抜けた瞬間爆発する。

それを知った木村は田辺を同行し、パトカーで事故現場に駆けつける。

出迎えた長崎刑事(夏木章)は、エンジンに時限爆弾を仕掛けてあったと報告する。

運転手は黒こげの状態だったが、嫌がる田辺に無理に検分させると、田辺は白井さんのものですと落ちていた腕時計を見て答える。 東京へやって来た木村は原に会い、白井が関西旅行した目的を聞くと観光旅行ですと言う。

保釈中の身で裁判前でしたよね?白井は大阪で強盗のヤマを踏んでいると木村は指摘する。

その頃、「白鳥荘」の前でエミは鴨井に、私のフィーリング知らないでしょう?私、姉さん帰るまで流しやりたいと歌のアピールをするし、常さんも、この子から前借りしてますのやと聞かされたので、それは汚職や!黒い霧や!と鴨井は常さんを責める。

そんな鴨井の前に現れたのは木村刑事だったので、しょぼくれ刑事が何の用だ?と鴨井が驚くと、鴨井、この「白鳥荘」に住んでいるのか!と木村の方も驚いたようで、用があるのは山本五郎の部屋や、強盗殺人の罪や、白井金造を殺した…と明かし、爆発した車の写真を見せる。

そのバックナンバーを見た鴨井は、五郎やんの車や!と驚き、今嫁はんこれや!と妊娠中であることを木村に教え、ギターを恒やんに托し、エミと二人で流して来いと指示する。

自分の部屋に木村を連れて来た鴨井は、信じられん…と呟くが、指名手配になってみい?TVやラジオ、新聞に出るでと木村は忠告する。

こりゃ困ったと鴨井も頭を抱え、待てしょぼくれ!臨月の奥さん、ショック受けたらどないするねん?と聞くと、じゃあお前が責任持って山本五郎を張るんやと木村が条件を出して来る。

その代わり、しょぼくれ、俺の頼みも聞いてくれるか?と鴨井も交換条件を出す。

その後、何気に玉子の部屋に鴨井が遊びに行くと、山本五郎さんのお宅はこちらでしょうか?と尋ねて来た木村は、五郎さん、車が名古屋で故障しまして、修理してから来ると言うことです、渡し、申し遅れましたが、丸鶴運送の木村と言うものですと挨拶し、入り口付近に置いてあった夕刊をそっと後ろ手でつまみ上げ持って出る。

五郎やん、張り切り過ぎてエンジン焼いたんやろうなどと慰める鴨井だったが、その時、部屋の壁にたくさん「天心精霊会」のお札が何枚も貼られていたので、何やこれ?と聞くと、このアパートには信者がたくさんおるよと玉子は言う。

そこに、ボコボコにやられた常やんが戻って来て、九十九会にやられた…、エミは2丁目の親不孝通りやと知らせる。

鴨井はすぐに助けに飛び出して行き、エミを取り囲んでいた九十九会の連中の前に立つが、大阪の流れコ○キには用はない、これで何か歌ってみろとあざけり、五円玉をお恵みのように渡して来たので、こない頂きましたが、銭はただでやりますよって、これはお返ししましょう、出血大サービスや!などと言った鴨井は、五円玉を弾き飛ばし、相手の目を塞いだりして追い払う。

「白鳥荘」に帰って来た鴨井は、新聞に載った五郎の記事を呼んでいた常やんが、鴨やん、信用しますか?車の中で焼け死んだ五郎ちゃんやなんて…、羽田の便所の爆発と同じや…とぼやく。

そこにオカマの咲田が階段を降りて来て、私やってるのよと天心精霊会のお札を見せ、玉子の部屋のお札も私が上げたのよ、長生きしたくないのね?等と言いながら去って行く。

咲田がいなくなると、常やんは、わいの推理では殺されたんは五郎やんで、殺したんは白井と違うか?と言い出す。

その後、鴨井は警察にいた木村刑事を訪ね、黒こげの焼死体の写真を見せてもらうが、原と宮本文子も取調中やと聞くと、その文子ちゅうのは宮本エミが探しとる姉さんやと教える。

それを聞いた木村は、文子は白井の愛人やと言う。

その時、取り調べを終えた原と文子が出て来たので、妹はんに会うてやって!と鴨井が近づいて頼むが、やたら大きな声を出すな!と木村が注意する。

そこに鑑識の美濃部(早川雄三)がやって来て、焼死体の死因は絞殺後、火を点けてますねと木村に教え、死体の身長は171~2cm、体重は65kgくらい、死人は生前麻薬を使用していたと言うので、一緒に聞いていた鴨井は、五郎はもっと小型でっせと体型が違うことを教える。

その時、木村に電話が入り、五郎が静岡の検問を突破したとの知らせが届いたので、やはり死んだのは白井だと木村は断定する。

「白鳥荘」では、玉子の部屋に取る前夜って来た新聞記者たちが、玉子の写真をフラッシュを焚いて撮り出す。

何が起こったのか分からず驚く玉子を庇うように、鴨井が木村と共にやって来る。

木村は自分は刑事だと言うことを明かし、ご主人山本五郎さんは、殺人で指名手配されていますと話したので、混乱した玉子は、鴨はん、あんた嘘付いてたやろう?と鴨井に詰め寄る。

そんな玉子に木村刑事は、私もご主人の無実を信じていますなどと言い訳して来たので、じゃあ、お前、自分で張り込め!もう協力は止めじゃ!と鴨井は切れる。

怒って自室に戻った鴨井の所にやって来た木村は、宮本文子に用ないのか?11時に喫茶「ジョッキー」で待つと言っとったと伝える。

鴨井は、エミ探して来んと…と呟くと、ゴーゴークラブに行ってエミを探すがその日に限ってエミはいなかった。 鴨井は踊り狂う若者を見て、親の顔が見たいと呆れる。

やむなく「ジョッキー」に1人向かった鴨井は文子と会うが、妹には私をこれ以上探さないでと言って下さい、流しなんか止めて、家に…、父の所に帰るように言ってくれと文子が頼むので、あんたは事件の真相を知っているのか?今日はひも付きか?3本も引き連れとるな…と側で監視している九十九会の子分たち(三角八郎ら)を見ながら鴨井は皮肉る。

「白鳥荘」の自室に帰って来た鴨井は、エミ、おらんのやとそこで待っていた木村に教えると、宮本文子は麻薬中毒者やと木村は教える。

そこに木村さん!とやって来た太田刑事(仲村隆)が、五郎が神奈川に入りましたと伝える。

鴨井は、まるで警察の出張所やなと呆れるが、木村は鴨井に、エミに深入りさせるなと忠告する。

とうとう都内に入ったんか…、五郎の奴…と鴨井は案ずる。 その後、公園のブランコでエミと会った鴨井だったが、やっぱりお姉さんだったのね?どうしてあってくれなかったのかしら?理由知ってるんでしょう?お姉さんにあうまで流しは止めないわ、何か悪いことしているような気がするの、鴨井さん、教えて!渡し、心配なの!お姉さんを連れて帰るまで、渡し、鴨井さんを離れないわ。

父は姉のことで病気なんですとエミは言う。

夜、同じ公園で文子と会った鴨井は、エミちゃん、あんたが家に帰るまで流し止めんそうです、お父さん、病気になったそうやと教えると、父が!と驚いた文子だったが、帰れませんと言うので、あんたの気持分からんでもないけど…と鴨井が言うと、何が分かるんです!と文子は怒り出す。

姉さん、あんた自分の身体がどうなっても良いのか?今夜、会うだけ会って欲しい!と鴨井はエミのことを頼むが、喉が渇いたと訴えた文子は、離れた所でハンドバッグの中の瓶の液体を飲む。

鴨井はそんな文子に近づき、会うて欲しい!とエミとのことを訴えるが、次の瞬間、側でずっと狙っていた狙撃者によって文子は撃たれて倒れる。

驚いた鴨井は文子を抱き上げ、しっかりするんや!と声をかける。

「白鳥荘」の自室に戻った鴨井は、ベッドの下に隠していた銃を取り出そうとするが、そこに木村がやって来て、鴨井何したんや?お前がうが狙っているのかも…、姉さんは俺の身代わりになったんや…、もうお前らには任しとけん!と苛立つ。

一旦木村が帰って行ったかと思われたので、また鴨井はベッドの下の銃を取り出そうとするが、そこに又戻って来た木村が、宮本文子の胃からヘロインが発見された。

それにハンドバッグの中から八家ネタと呼ばれる未生成の麻薬が出たと良い、銀紙に乗せた薬を見せると、マッチの火で燃やしてみる。

すると、大きな炎があがり、銀紙に穴が空く。

どうや、その薬は人間の骨もぼろぼろにする…と教えた木村は、この天心精霊会知っとるか?と液体の入った小瓶を見せて聞いて来たので、それくらい調べるのはそっちや!こっちは姉さんの敵討ちで忙しいんや!と鴨井は苛立つ。

天心精霊会にやって来た木村と大田刑事は、同情から胴着姿の会員たちから放り投げ出された咲田の姿を見る。

ここはトレーニングをやる所だと言う会員に、道場の裏をちょっと見たくらいで…と咲田は憤慨する。

その時、警察手帳を出した木村は中に入れてもらう。 木村が、赤い液体が入った瓶の中味を尋ねると、「ロウドウ」と言い、黄金の水で、ヌムと数々の奇跡が起こると会員は説明する。

文子はどう言う悩みを持っていたんでしょうと聞くと、一切申し上げられません、会員の悩みを聞くのは会長だけですと言う。

会長が赤い頭巾をかぶっている訳を聞くと、紙の声を聞くため、改めて人間の顔を見せる必要がないからですと会員は言う。

帰って来た木村に、五郎やんのこと、俺に任せたらどうや?天心どうやった?と鴨井が聞くと、宗教団体やなと木村が言うので、この税金泥棒!と悪態をつくと、お前からもろうとらんわ!と木村も言い返す。

クラブ「ワールドチェーン」の社長は白井や、全ての鍵は五郎やんや、どこ行きよったんやろな?と案じる鴨井だったが、カーテン越しの窓からしたをのぞくと、路地に五郎の姿が見えたので、ちょっと煙草買って来るわ…と鴨井は行って外出しようとする。

煙草ならあるでと木村が差し出して来るので、そんな安いもん吸えるか!と罵倒して出かける。

しかし、アパートの前を探しまわった鴨井だったが、五郎の姿は見つからなかった。

1人近くの屋台で上機嫌で飲んでいた常やんは、暖簾の外から手が伸びて来て、自分の料理を手づかみで盗もうとする奴がいるのに気付き捕まえてみると五郎だったので驚く。

五郎が子供は?と聞くので、まだやと答えた常やんは、玉子は?と聞かれ、元気やと教える。

大阪で首締められ、名古屋でも殺されかけたんやと五郎が言うので、白井殺したんは誰や?と常やんが聞くと、そのことで鴨井さんに是非聞いてもらいたいことがあるんやと五郎は言うが、気がつくと、近くに九十九会の姿が迫っていたので、二人して逃げ出す。

その後、「白鳥荘」の鴨井の部屋に駆け込んで来た常やんは、鴨やん、偉いこっちゃ!と言いかけるが、部屋に木村刑事がいることに気付くと、お客さんやから改めて出直して来るわと一旦外に出て、外の公衆電話から電話して来る。

呼び出しで電話を知らされた鴨井が、大家の部屋の前の電話に出ると、ワールドのバーテンがすぐ行くかなと常やんが言うので、後でアパートへ来てくれと鴨井は伝える。

ところが部屋に戻った鴨井は、銃を隠したベッドに木村が腰掛けているのに気付き焦る。

鴨井の様子に気付いた木村は、何か落したんか?このベッドか?一緒に探したろか?とからかって来たので、まあ、ゆっくりしてんか、何の愛想もないけどな…と鴨井は強がり部屋を後にするが、しょぼくれの奴…、肝心の時に銃を取れないやないか、まあええわとぼやき、「ワールド」に来るが、あっさり子分たちに捕まってしまう。

大層なお出迎えやな?と鴨井が粋がるので、今夜は思い切りごちそうさせてもらうさと原は睨みつけてくる。

五郎やんはどこや?お客さんは歓迎せんとなと鴨井が聞くと、ハジキを取り上げろと原は命じる。

しかし身体検査した子分が持ってませんやと言うので、良い度胸やな…と感心した原だったが、五郎のことを聞かれると、知らんわいととぼける。

そんな原に詰め寄った鴨井は、子分たちに引きはがされる前に、原の上着のポケットに手を突っ込む。

原は、地下室へ連れて行けと命じる。 鴨井は、原のポケットから弾丸を1発盗み取っていたので苦笑する。

その後原は、赤い頭巾をかぶった天心を別の牢の前に連れて来て、そこに入れられていた五郎を見せ、会長、速く片をつけた方が良いですぜと提案する。

その頃、鴨井は、弾丸を分解し、中の火薬を導火線代わりに使ってドアの鍵を破壊し脱出していた。

鴨井が逃げたとの電話を受けた原は、こいつはもうちょっと利用して片をつけた方が…と会長に進言する。

「白鳥荘」に帰って来た鴨井は、産気づいた!と常やんから教えられる。 玉子は苦しんでいたが、介抱していたエミやアパートの女住人たちの中には出産に詳しいものがいないと言うので、オカマなら詳しいかもしれんと咲田を呼んで来ることにする。

しかし咲田は、住人が天心精霊会からもらった赤い水を玉子に飲まそうとしていたので、これは危険や!といきなり取り上げる。

麻薬入りや!と鴨井が指摘すると、知ってるのか?鴨井!と真顔で聞いて来た咲田は、失礼する!と言うと、その赤い水の瓶を持って自分お部屋に戻って行く。

唖然とそれを見送った常やんは、いつもの様子違うとったな?嫉妬したんやないか、自分は子供生めんと気づいたんで…などと、咲田の態度の豹変振りを分析する。 玉子は陣痛に苦しみながらも、うちの人…、五郎ちゃん!と呻いていた。

そのこと、鴨井に電話がかかって来たと管理人が知らせに来る。 電話に出て見ると相手は五郎だったので驚くが、その五郎は、原達に無理矢理電話をさせられていた。

鴨井さん…、会いたいな…、場所は剣崎店、以前釣りに行った…と五郎が言うので、お前本当にやったんか?と鴨井は聞くが、その時、木村刑事が背後から近づいて来て誰からや?と聞くので、あの世から矢、死んだこの子の姉さんと側に一緒にいたエミのことを指しながら鴨井はとぼける。

すると木村の方も、そうや、お前の方も冥土が近づいとるどとからかう。 部屋に戻った鴨井は、隠していた銃を取り出すと、それを釣り道具の箱に隠す。

靴底には弾丸を詰め、小さなミニチュア中にも1発弾を込めると、釣り道具を持って出かけようとしたので、どこ行くんや?と木村が聞くが、磯釣りやとごまかす。

お前の飛び道具持っとるのか?と木村が怪しんで身体検査しようと近づいたので、鴨井は相手の手錠を奪い取ると、木村の左手と左足にかけて、しょぼくれ!後のことは頼むぞ!と言い残しアパートを出て行く。

木村はすぐに鍵で手錠を外しながら、命知らずめ、墓穴掘る気か!とぼやき、側に来た常やんとエミに、鴨井がどこ行ったか知っとるのか?と詰め寄る。

しかし、恒やんもエミも知らん振りをする。

剣崎で釣り竿を構え釣りの格好をしていた鴨井だったが、まだ暗い中、周囲に九十九会の連中が近づいて来たことを察する。

黒服面をした原達が嘲りながら銃を持って迫ると、こんな仕掛け分からんと来る俺やと思うたんか?と鴨井は言い返す。

そのセリフ、あの世で聞かせてもらうぜと原が銃の引き金に手をかけた時、鴨井は釣り竿のリールのスイッチを押し、釣り竿に仕込んだ銃で周囲の子分たちを撃って行く。

子分たちと鴨井の銃撃戦が始まる中、岩場では二匹の蟹がゆっくり戯れていた。 白いハンチング姿の鴨井は、岩場の陰に隠れて様子を見ていたが、次ぎの瞬間立ち上がると、いきなり3人を撃つ。

弾切れになったので、靴を脱いで新しい弾を取り出そうとしていたとき、背後に迫っていた原が待て!立て!ハジキを捨てろ!と銃を突きつけ命じて来る。

お前の為に九十九会は俺1人になってしまった…と原が恨んで来たので、俺は殺すようなことはせん、みんなかすり傷やと言い、手を上げていた鴨井だったが、右手でハンチングの側面に隠していたミニチュア銃を発砲する。

銃を落した原に詰め寄った鴨井は、山本五郎の居場所を言わんかい!と迫るが、原が知らんわい!ととぼけるので、命と代えてもか?と銃を突きつける。 第三灯台と原が教えたので、殴って気絶させた鴨井は急いで第三埋立地へ向かう。

灯台の側のバラックの前に子分が2人見張っていたので、背後から忍び寄った鴨井はあっさり見張りを殴り倒し、小屋の中に入ると、猿ぐつわを噛まされ縛られた五郎がいたので、顔を隠していた布を剥がし救出する。

間に合うて良かったと鴨井が安堵すると、玉子は?と五郎が聞くので病院やと教える。

何時生まれる?と言うので、庄屋、大丈夫や!と安心させた鴨井は、子供の顔を見たら自首したらどうや?と言い聞かすが、白井金造は生きている!奴の鼻を明かしてやる!俺を犯人にしやがって!と五郎は言い出す。

そんな五郎を連れ、鴨井は一緒にバラックを出るが、九十九組の連中が撃って来る。

岩場を必死で逃げる五郎だったが、途中で転び、もうダメだと弱音を吐くので、子供に会うまで頑張るんや!と鴨井が叱ると、そうやな…と納得した五郎は又立ち上がる。

岩場に身を伏せて敵が近づくのを待ち受けていた鴨井はいきなり立ち上がって4人を撃つ。

追っ手を全員始末した鴨井は、行こうかと五郎に声をかける。

朝日が昇って来た中、海岸を歩く2人のシルエット。

天心精霊会にやって来た五郎は、この男は天心じゃない!白井だ!と赤い頭巾の教主を指差す。

会員たちが動揺する中、鴨井も入って来て、拳銃を出そうとした頭巾の男と幹部会員たちを制する。

そしてその場で赤い頭巾を剥がした鴨井だったが、中から出て来たのは、部屋の中央に大きな顔写真が貼ってある天心だった。

一瞬驚いた鴨井だったが、良く天心の顔を見つめ、次の瞬間、その顔を剥がす。

顔はマスクで、その下から現れたのは予想通り白井金造だった。

そうか、やっぱり…と鴨井は納得し、白井が天心の身代わりをしたんだ!と五郎が訴える。

そこに木村刑事と大田刑事がやって来て、白井に強盗殺人で逮捕する!と逮捕状を突きつける。

鴨井は五郎やん、お前は病院へ行け!と声をかけ、部屋を出て行こうとする五郎を大田刑事が止めようとするが木村が制して出て行かせる。

鴨井、お前も出せ!と木村は手を差し出すが、鴨井が渡したのは天心のマスクだった。

呆れた木村が何か言いかけたとき、スーツ姿で現れたのが咲田で、厚生省麻薬取締官です、その男こちらに頂きましょうと言うので、木村は驚き、銃器不法所持の方が先です、後でお渡ししますと憮然とする。

君は厚生省だったのかと驚いた鴨井は、頑張ってチョウダイ!と声をかける。

この「ロウドール」と言う液体の麻薬の含有量を調べましたと咲田が言うと、捕まった白井は、強奪した金は神戸で麻薬に代えたと打ち明ける。

鴨井が病院に駆けつけると、病室の前で常やんがおなかを抱えて苦しんでおり、それをエミが介抱していたので、常やん、お前が生むんやあらへんでと呆れる。

陣痛は4時間も続いていると恒やんは教えるが、その時、赤ん坊の泣き声が聞こえて来たので、生まれた!と鴨井は喜ぶ。

病室に入ると、生まれたばかりの赤ん坊の顔を見ていた五郎が、これ、俺の子だよな?バカに男前やからと早くも親ばか振りを見せていた。

本当に鴨井さんのお陰やなと恒やんも感謝し、エミも可愛いわねと声を掛けると、五郎は自分のことを言われたのかと勘違いして照れたので、ベッドの上野玉子が、あんたのことじゃないわよ!と叱りつける。

その後、鴨井は遠くに東京タワーが見える港に来ていたが、木村が背後に近づいたのに気付き、大阪に帰るんと違うんかい?と振り向かず声をかける。

山本五郎がな、お前に赤ん坊の名前をつけて欲しいってさと木村が言うので、そうやな…、大介の大と五郎を組み合わせて大五郎ちゅうのはどうや?と鴨井が答えると、大五郎か…、あの赤ん坊、女と違うか?と木村は教え、鴨井、達者でな…と別れを告げる。

お前もいつまでも貧乏刑事しとらんと、少しは出世したらどうや?などと答えながら、日本の煙草に同時に火を点け、その1本を差し出して、しょぼくれ!と振り返った鴨井だったが、もう木村刑事は草むらを遠ざかっていた。


 


 

 

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