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獄門島('49)

「本陣殺人事件」の映画化「三本指の男」が好評だったのか、片岡千恵蔵演ずる金田一もの第二弾で、横溝原作の中でも名作の誉れ高い「獄門島」の映画化である。

本来の二部作よりはかなりはしょってある総集編なので、これだけで感想を言うのも気が引けるが、話のベースは「獄門島」なのだが、「三本指の男」同様、話はかなりアレンジされており、結末も犯人も違っている。

何より違うのは「見立て」が全く登場しないことで、当然、有名な「季違いじゃが仕方がない」と言うセリフも出て来ない。

3姉妹は全員殺害されるのだが、普通の首つり状態が2人で祈祷所の中での絞殺が1人と言う展開なので、釣り鐘も逆さ吊りも登場しない。

その代わり別の殺人事件が加えられていると言う念の入りようで、好意的に解釈すれば、原作を読んでいる人も意外な結末が楽しめる趣向になっていると言うことである。

犬神のお祓いとか、妖気と言った禍々しい言葉が出て来て、怪奇趣味をあおり立てているし、金田一が島の巡査に犯人と疑われ牢に入れられると言うような所はちゃんと再現してあるが、海上ギャングとの銃撃戦などの描写を見ると、活劇趣味も盛り込んでいるのが分かる。

それでも、白木静子を島に呼んだ電報の送り主の富山の薬売りは、何故金田一の住所を知っていたのか?とか、本作だけを見ると訳が分からないままの伏線もあるのだが、総集編と言うことなので、きちんとした二部作では何か説明があるのかもしれない。

あくまでも原作をベースにした通俗活劇と割り切れば、これはこれで良く出来ていると思う。

金田一を演じている片岡千恵蔵さんが鬼頭嘉右衛門も演じていると言うのも意味不明だが、後半、嘉右衛門に変装するシーンがある為だろうか?

このシリーズでの金田一は、何故か堅苦しい用語をわざと使い、拳銃の名手で変装の名人でもあると言う多羅尾伴内の前身みたいなキャラクターである。

前作「三本指の男」では原節子さんが演じていた白木静子の役を本作では喜多川千鶴さんがおやりになっており、金田一の単なる助手と言うより頭の切れるパートナーと言った感じの役目を担っている。

了然和尚を演じているのは、戦前のコメディなどでも良く知られる斎藤達雄さんで、本作では一環してシリアスな演技である。

殺される三人姉妹の長女を演じているのは千石規子さん、磯川警部を演じているのは大友柳太朗さん、早苗役は三宅邦子さん、鬼頭儀兵衛役はまだ痩せている進藤英太郎さんである。

大友柳太朗さんはソフト帽に黒っぽいコート姿でやけに格好良いし、市川崑版の磯川警部と違い、かなり頭は切れる人物のように描かれているが、何故かもの凄い早口である。

頭はそれなりに切れるのに、何故か事件の解明は金田一任せと言う割り切り方をしている所が憎めない感じもする。
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
1946年、東横映画、 横溝正史原作、比佐芳武脚色、松田定次監督作品。

画面下の山を象ったシルエットから朝日が上空に広がっているイラストに東京映画配給マーク

花に埋もれた背景に東横映画クレジット

水面の揺らめきを背景にタイトル、キャスト、スタッフロール

海を進む輸送船

その中で苦しんでいた鬼頭千万太(沼田曜一)に寄り添って、もうすぐ夢にまで見た故国日本が近づいているんだ、頑張ってくれ!と励ましていたのは戦友の金田一耕助(片岡千恵蔵)だった。

しかし、既に衰弱しきっていた鬼頭千万太は、ダメです…、金田一さん、お願いがあります…、私の変わりに獄門島に言って下さい、でないと、3人の妹が殺される…とか弱い声で頼む。

後日、無事帰還し、スーツ姿になった金田一は千万太との約束を果たす為に、獄門島に向っていたが、乗り合わせた行商人に、あれが獄門島ですかと聞くと、ええと答えた行商人が、何しに行かれるんですか?と聞くので、保養に行こうと思ってるんですと金田一が答えると、物好きな方だ、あんな嫌な島に…と行商人は吐き捨てるように言う。

その時、たかが行商人が余計なことを言う出ない、島に住んでいる者には、よそ者には分からん良い所もたくさんあるんじゃ!と叱って来たのは了然和尚(斎藤達雄)だった。

行商人はこれはどうも…と言葉を濁し、バツが悪くなったのかその場から立ち去る。

島のどこをお訪ねなさる?と了然が聞くので、千万太君の所ですがと金田一が答えると、それは本鬼頭じゃ、何か千万太君のことで知らせでも?と了然がさらに聞くので、知らせの中でも最悪な物だと思いますが、私は千万太君の戦友で、千万太君は復員船の中で戦死されましたと金田一が明かすと、本鬼頭も終わりだな…と了然は嘆息する。

本鬼頭には嘉右衛門と、その息子、与左松、そして3人の姉妹がいるだけじゃ…と了然が放していると、和尚様!と声をかけて来たのは祈祷師のおかね(原泉子)で、3人のお嬢さんに近く大きな災難がありますぞ、これから犬神様の祈祷に行きます、論より証拠に妖気があんなに島一杯に立ちこめていますなどと島を指差しながら話しかけて来たので、黙らっしゃい!と了然が叱りつけるが、あの妖魔の手が見えませんかなどとおかねは言う。

島に到着すると、わしも本鬼頭に寄って行くので一緒に参られるか?と了然は金田一を誘う。

金田一は突堤にいた左目がつぶれ、右手がない不気味な男竹蔵(上代勇吉)に注目する。

何事じゃ?と了然が竹蔵に聞くと、今朝方、又、分鬼頭ともめ事があり、こちらの漁師達があちらの地引き網を切ってしまったのだと言う。

本鬼頭への道すがら、本鬼頭と分鬼頭は同じ家柄なのではありませんか?と金田一が聞くと、元を辿れば同じですが、最近では仲違いばかりするようになった、特に最近、嘉右衛門が病気になってからはわしらにも手を付けられんようになったと了然は諦めたように教える。

そして途中で出会った清水巡査(小杉勇)は、了然さん、お戻りか?と話しかけて来たので、今朝の話は聞いたか?と了然が尋ねると、その内血を見る所まで行きかねんぞと清水も呆れたように答えるが、今日はもっと重大なことがあり、海上ギャングの騒動があり、壬生島を襲った5人のうち、3人が海に飛び込んだそうで、そいつらがこの獄門島にたどり着かないかと…と案ずる。

この人は?と清水から聞かれた了然は、千万太君の戦友だよと連れていた金田一のことを教えると、とにかく戸締まりだけは厳重になと念を押し、清水巡査は去って行く。 その後、わしはちょっと分家に寄るが、ここで待っていてくれるか?と金田一に聞いた了然は1人分鬼頭を訪ねると、昼間からお志保(月宮乙女)相手に酒を飲んでいた鬼頭儀兵衛(進藤英太郎)から、何しに来た!と言われたので、今朝のことでお詫びに来たと言うと、その話は避けられん、仏の顔も三度までだ!と儀兵衛は明らかに激怒していたので、儀兵衛どん、人は落ち目になると色々焦って酷いこともしてしまう物だと了然は言い訳をするが、腹に据えかねた様子の儀兵衛は、止めてくれ!俺はとことんやりますよ!と睨んで来る。

諦めて帰りかけた了然に、追って来たお志保が、すみませんね、失礼なことを申しまして…と主人のことを詫びるが、宜しく儀兵衛さんの舵を取ってくれと頼み、了然は分鬼頭を後にし、外で待っていた金田一と合流するが、それを見ていたお志保は、良い男っぷりだこと…と金田一を一目見て微笑む。

家に戻ったお志保は、そっと鵜飼章三の部屋を覗き、いきなり障子を開けて中に入ると、章三さん、今、何考えてたの?月代さん?雪枝さん?花ちゃんのこと?それとも私のこと?ねえ、何を考えていたのよ!などと気安げに身体を寄せて聞く。

しかし、章三が黙ったまま何も答えようとしないので、分かった!私との約束嫌になったのね!とお志保は睨みつける。

本鬼頭の屋敷に到着した了然は、早苗さんはおらんか?千万太の戦友の金田一さんだと声をかける。

応対に出て来た鬼頭早苗(三宅邦子)は、嘉右衛門どんは?と了然から聞かれ、休んでおりますと言うので、暫時待ってくれるかの?と金田一に頼むと一緒に座敷に上がり込む。

荒木様も幸庵さんも見えておりますと早苗は言うと、それはちょうど良いと了然は言い、座敷にいた村長の荒木真喜太(高松錦之助)と漢方医の村瀬幸庵(村国太郎)に金田一を紹介すると、千万太君は残念ながら船中で息を引き取られたのですと金田一は2人にも説明する。

部屋には2人の青年の写真がかけてあったので、もう1人は?と聞くと、鬼頭一(ひとし)と言う早苗の兄で、昨年帰って来たが、この家の空気を嫌うて出て行ったきりで、今もって行方不明なのだと了然が教える。 その説明の最中ずっとどこかからか聞こえて来る祈祷の正体を金田一が聞くと、あの船の婆だよ、3人娘の身体に漂う妖気を払っておるのだと了然派言う。

祈祷所内では、祈祷を終えたおかねが、気が触れた三姉妹鬼頭月代(千石規子)、鬼頭雪枝(朝雲照代)、鬼頭花子(谷間小百合)に振り向くと、嬢様方、婆は妖気を払いましたぞ、心の眼を開けて上をご覧なさい、青い空が見えましょうと語りかけると、見えるわ、青い空!絵の具のお空!などと三姉妹は口々に言い出す。

そして、祈祷所の外へ出てみると雨が降っていたので、あら?雨!雨だわ!青いお空から雨が降るのね?絵の具のお空からなどと言いながら、突如笑い出す。

そして笑いながら金田一達のいる座敷の廊下へやって来たので、早苗が止めに入り三姉妹奥へと追いやる。

その時、誰かおらんか!と叫ぶような声が聞こえて来るが、それが座敷牢に入れられた三姉妹の父親で嘉右衛門の息子与三松(島田照夫)だった。

あれは早苗のこと箸か耳に入らんのだと痛ましそうに了然が金第一に教える。

座敷牢にやって来た早苗は、ご隠居様がお起きになるといけませんからとなだめ、与三松!と与三松がねだると、あいにく1本しかありませんが…と言い、自分で加えて火を点けてからその煙草を与三松に与えると、吸い終わったら、おとなしくお休みになるんですよと言い聞かせる。

どうやらその与三松の叫びで目覚めたらしい鬼頭嘉右衛門(片岡千恵蔵-二役)は、枕元にやって来た了然たちが、気分はどうじゃと尋ねると、あんな声で目覚めたのでは良かろうはずがない、今朝の騒ぎはこのわしが寝ていると思わせて、竹蔵らに采配を振るうたんじゃと打ち明ける。

千万太とひとしが帰って来たら…と嘉右衛門が言うので、千万太君は未来永劫、この家の門は潜らん…、息を引き取ったのは船中であったそうだぞと了然は教える。

役目を終えた金田一に、しばらく御滞在でしょう?うちの寺の主院をお貸ししましょうと了然は申し出る。

その後、滞在先になった寺で手紙を書いていた金田一の所へやって来た了然は、中央区室町3番地 白木静子さんですか?と宛名を無断で読み、どなたですか?と聞くので、仕事の同僚です、私は小さな商事会社をやっているんですが、近々辞めようと思いましてねと金田一が答えると、それは良くないと了然は止めようとする。 そこに、竹蔵さんがお見えになりました、本鬼頭の容体が悪いそうですと了沢(大西三郎)が知らせに来る。

驚いて本家に向かう途中、了然は駐在所を訪ね、嘉右衛門の容体が急に悪くなったそうだと知らせるが、折悪しく、清水巡査は海上ギャングの件で出掛ける所だった。

本鬼頭の屋敷に着いた了然は、嘉右衛門の枕元で、若い頃の御主のようにしっかりするんだ!と励ますが、もういかん…、遺言をしたいので、後見の3人以外は座を外してくれと嘉右衛門は言い出す。 早苗はやむなく台所へ引き下がるが、そこに落ちていた煙草の吸い殻に目を留める。

気がつくと、見知らぬ男が入り込んでいて、二部島を襲った片割だと名乗ると、3人分の食料と煙草を算段してくれと言って来たので、私にはそんなこと無理ですと早苗が拒否すると、無理は承知だろう、本鬼頭の1人なら…と言うので、何故それを?と早苗が不思議がると、俺たちの1人に鬼頭ひとしってのがいて、すり鉢山の所で煙草と食料を待っていると言いかけ、その時、人の気配を感じ逃げ去る。

台所に来たのは荒木村長で、酒を冷やで一杯くれと言うので早苗がコップに注いでやると、それをその場で一気に飲み干し、嘉右衛門どんは死んだよ、本鬼頭の大黒柱が…と言う。 御遺言は?と早苗が聞くと、ひとしを連れ戻せとだけ…と荒木が言うので、早苗は思わず泣き出す。

その後、寺で留守番をしていた金田一の元へやって来たお志保は、和尚さんは御本家の壮士気に入ってます、悪質なギャンググとかで和尚さんから留守番を頼まれたんですと金田一が言うので、今までのいきさつから、今更お悔やみに行く訳にもいかないじゃないかと答え、来た来た…と、嘉右衛門の野辺の送りが近づいて来たことを寺から見ながら、お気の毒ね…と同情する。

しかし金田一は、嘘だ!あなたはもっと事件が起きれば良いと思っている、冷酷な情念で…と指摘したので、良くお見通しね!あなた、何のご商売?とお志保は金田一の慧眼に驚く。

その後、分家に帰って来たお志保は、その日も酒浸りの儀兵衛に、あなた、酒ばかり飲んで…、本家の隠居の執念に取り憑かれているんですよ、この機会に仲直りしなさいよと言い聞かすが、酔った儀兵衛は、うるさい!と怒鳴りつけ家を出て行く。

その時、お志保は、章三さん、あなた、お出掛けになるの?と声をかけ、外にいた章三に近づくと、良くって?失敗しちゃダメよ、早く行くのよと言い聞かす。

その後、黒シャツに白ネクタイといたシャレた服で本家に悔やみに金田一が来ると、和尚は?一緒じゃなかったのか?と先に来ていた荒木と幸庵が聞くので、とっくに出掛けられましたが?と金田一は不思議がる。

そこへ、ここだよと遅れて顔を出した了然は、今までどこにいたんだ?と荒木らに聞かれ、人間1人っきりで物を考える時もあるだろうと答える。 そこに月代がやって来て笑いながら、さっきから花ちゃんの姿が見えないの、消えちゃった…、花ちゃん、きっと煙なんですなどと言うので、それを聞いた金田一は、早苗さん、すぐ屋敷を上げて探して下さい!と厳しい表情で頼む。 その頃、お志保は章三に、しっかりしなさい!と焚き付けていた。、本鬼頭が暗闇の中からじっと見てたんだ…と儀兵衛は怯えたような顔で言う。

本鬼頭の屋敷内では、一向に花子が見つからないので、手遅れかもしれませんな…と金田一の表情が厳しさを増す。

翌朝、早苗は、あの朝、花さんは章三さんに会いに行くと言ってたんで止めませんでしたと言う。

それを聞いた金田一は、清水さん、行きましょう!と駐在を誘い分鬼頭へと向かう。

ちと面倒なことが起きましてな…と清水巡査が章三と会いたい旨切り出すと、章三さんは昨日から大熱を出しましてねとお志保は言うが、奥の部屋に立っていた章三の姿を見られてしまい、あれは誰ですか?と清水巡査から嫌みを言われてしまう。

仮病があっさり化けて姿を現した章三に、花子さんとの逢い引きの場所へ連れて行って下さいと金田一は頼み、清水巡査とともに、裏鬼頭の漁師小屋にやって来る。

清水巡査がとを破って中を覗き込むと、花子の首つり死体を発見する。

付いて来た早苗も驚いて中に入ろうとするが、金田一が現場保存されなければいけませんと言って、入り口の所で留める。

金田一とともに遺体を降ろした清水巡査は、綱を外した首筋に明らかに手で締めた跡が残っているのを見た金田一が絞殺ですよと断定したのを怪しみ、局外者が断定してはいかんと注意するが、絞殺を自殺と見せかけたのを見抜いた金田一は、どうしてこんなムダなことをしてるんだろう?と考え込む。

その時、清水巡査は小屋の中に複数の足跡を見つけ、その中に靴の跡を見つけると金田一の靴を見る。

足跡に中にはハダシの跡も混じっていた。

金田一も足跡に気付き、無論これは被害者のではないと考えていた。 そして小屋の外に出た金田一は、足跡が続いている跡を探し、落ちていた煙草の吸い殻を見つける。

そして、早苗さん、夕べ、与三松さんにおかしなことはありませんでしたか?この事件にはどうも狂気じみた所があるので…と聞き、早苗が特に気付いたことは…と言うので、家に帰ったら調べておいて下さいと金田一は念を押す。

駐在所に戻って来た清水は、分鬼頭の漁民小屋で花子が殺されたと妻お種(松浦築枝)に伝えると、本土の警察署へ電話をかけようとするが、何故か通じないので、故障だと焦る。 犯人は?とお種が聞くので、分かっていればこんなに慌てはせんと清水は不機嫌そうに答える。

そこに金田一がやって来て、お手伝いさせてもらいます、このような惨劇を防ぎたいのですと申し出るので、君は誰だ?と清水が怪しむと、ある時期までそれは御勘弁願いますと断った金田一は、鵜飼章三は真犯人ではないといきなり言い出す。

咽頭部残された痕を見ると相当強い力の持ち主であると思われますが、章三にそんな力はないと推理していると、入り口付近に村瀬幸庵がいて立ち聞きしていたのに気付き、幸庵さん、何か御用ですか?と金田一が声を掛けると、帰る途中だとぶっきらぼうに答えた幸庵はさっさと帰って行く。

さらに金田一が、小屋の死体の側に落ちていましたと、分鬼頭の紋章が染め抜かれた手ぬぐいを差し出すと、清水巡査は、それは村中に配られた物なので誰でも持っているし、第一、分鬼頭さんはそう云うことをする人じゃない!と真っ向から否定するので、でも家紋の横に「儀兵衛用」と書いてありますよ、それに落ちていたのは死体のすぐ側の漁具の影に…と金田一は指摘する。

さらに金田一は、4つの足跡は夕べ、4つ同時に来たと思うと推理する。

その時、清水巡査は、留置場の点検の必要があると言い出し、億の留置場の方へ向かうと、こりゃいかん!金田一さん、ちょっと来て下され!ずっと点検をしておらなかったので…、あれを見い!と億の天井の方を指差すので、金田一が不審気に中を覗き込むと、いきなり清水巡査に背を押され、金田一が中に転がり込むと同時に戸を閉められてしまう。

清水さん、冗談はやめて下さいと金田一は講義するが、わしは冗談は嫌いなたちでな…と言って鍵をかけた清水巡査は、本土の方が車で待ってもらおう、この島で靴を常用しているのはわしと君だけだ…と金田一を怪しんだ理由を言い残し去って行くので、待って下さい!身分について…と金田一は呼び止めようとするが、すでに清水巡査は電話機を又かけようとしていた。

しかし、やはり電話は通じないままだった。

するとお種が走行船の無線が使えるのでは?と言い出したので、急いで連絡船の着く港へ向かおうとした清水巡査だが、途中で、本鬼頭の家を聞いて来た見慣れぬメガネの女性とすれ違う。

港に近づいた清水巡査は、既に出港していた連絡船の姿を見る。 本鬼頭の屋敷に来て早苗と会い、千光寺へ向かえば宜しいんですね?と金田一の居所を聞いてたメガネの女性は白木静子(喜多川千鶴)だった。

その夜は島に颱風が接近しており、海は大荒れだったが、そんな中、了沢が駐在所へやって来て、金田一さんが戻られませんがご存じないですか?と聞いて来たので、あの人は殺人の用事で牢屋に入れてあると伝える。

そして了沢が変えると、又電話をかけて見るがまだ繋がらないので、お種、わしはとんでもない間違いをしているかもしれないと言うと、ひょっとするとこれは電話機の故障ではなく、誰かが電話線を切っていたらどうなる?ないとは保証できんと言い、強風の中出掛けようとするので、あなた、どこへ行くんですか?とお種は案じる。

その頃、分鬼頭の儀兵衛は、もう一度やってみると言って出掛けたので、あなた!とお志保は呼び止めようとする。

寺では、戻って来た了沢から金田一が牢屋に入れられていると聞いた静子は急いで交番へ向かう。

そこにいたお種に、東京から参りました白木静子と申しますと自己紹介をした静子は、是非耕助さんに会わせて下さい、あの方は有名な私立探偵で、磯川警部が証明して下さいま。、「三本指」の事件以来親友なんですと言うので、お種は驚いて、留置場の金田一の所へ連れて行く。

おお、白木君!と喜ぶ金田一に、電報が参りましたのと言い見せると、「金田一耕助に生命の危険あり 急用と偽り来られたし」と書かれていたので、誰かが僕の自由を奪っておいて、今夜事件が起きる!開けて下さいと金田一は懇願するが、お種は、出来ません、私は鍵を持っておりません、鍵を持っている主人は電話線を直すため出掛けていますと答える。

岬の電柱に昇っていた海上ギャングの1人は、電線に昇って電話線の様子を見て、まだ直っていない、大丈夫だ!と、下で見張っていた仲間に教える。

そこに懐中電灯片手に近づいて来たのが清水巡査で、それに気付いた海上ギャング2人はいきなり発砲して、清水の懐中電灯を壊す。 清水巡査も慌てて身を伏せ、拳銃で応戦し始める。

本鬼頭の座敷牢では与三松が喚いていた。

海は大荒れの状況だったが、そんな中、早苗は唐草模様の風呂敷包みを持って出掛けて行く。 その様子を婆やがこっそり覗いていた。

早苗は暗がりの中で、マフラーで顔の大半を隠した男に会い、お兄様?お兄様ですか?と呼びかける。 留置場の中では金田一は苛立って歩き回っていた。

頼む!お願いだ!今夜が無事に明けてくれ!と金田一は願っていた。 翌朝、ようやく駐在所に清水が帰って来るが、今まで何してらっしゃったんですか!と出迎えたお種に、ギャングだ、わしはそれを追っていたのだと清水は答えるが、あなた、とんでもない間違いを犯しましたよとお種は伝える。

本部の磯川さんの親友だそうで…と留置場の前で待っていた白木静子に会いに言った清水は、金田一さんの助手をやっていますと静子が答え、牢の中の金田一は、跡1時間で来る磯川さんが証明しますよ、雨が止んだのは2時ですからそろそろ近づいている頃ですと金田一は言う。

すると清水巡査は、この事態は半分あなたのせいだ!あんたが身分を明かさんから…と恨み言を言う。 そこに、早苗が竹蔵と一緒に駐在所にやって来て、清水さんいませんか?と声をかけて来る。

港に向かった清水巡査と金田一は、船でやって来た磯川警部(大友柳太郎)と再会する。

電話が通じなくなったので来てみたんだと清水に説明した磯川警部は、金田一さんじゃないか?いつこの島に聞いて来る。

昨夜と一昨夜に殺人事件が続いているのですと金田一が説明し、彼らは早苗が探していた雪枝が見つかった場所へ向かう。 雪枝は襦袢姿のまま崖の上の木で首をつっていた。

崖の所で下駄を見つけた金田一は、早苗に、これは雪枝君のものですか?と聞くと、はい、笠岡から私が買って来た物ですと早苗は認める。

自殺でしょうか?と磯川が聞くと、彼女はそんなことが出来るような人間じゃありません、白痴なんですよと教えると、あの長襦袢もお気に入りでしたと早苗が教える。

ではあの表情も当てになりませんね、親しい相手に会ったかのように穏やかですが…と磯川は推測するので、ええ、特に男に関しては無警戒でしたからと金田一は指摘する。 そこにやって来た静子が、あの松の根元にこれが…と煙草の吸い殻を持って来る。

続いて磯川は、金田一と清水に連れられ、花子が見つかった漁師小屋にやって来る。

何故、扼殺しておいて縊死に見せかけたのか?と磯川が考えると、2つの犯罪の合成ですと金田一が言い出す。

別人なんですよ…と金田一が言うと、ここは殺人の現場じゃないと言うんですね?と磯川は察する。 それは発見した足跡が立証しています、男物の草履、女物の利休下駄、靴の跡、男の裸足の跡…、花子は利休下駄を履きましたか?と金田一は早苗に確認すると履かないと言う。

利休下駄の主は既に分かっていますと金田一が指摘すると、この島では女が男物の草履を履いたりすることは良くあることですと清水巡査が反論するが、背負われてここに来た?と磯川は察すると、我々は何をすべきことですか?と聞くので、金田一は、では指名する人を参考人として召還していただきたいと頼む。

最初に駐在所に呼ばれたのは鵜飼章三だった。 花子とは一昨日会ってないと言う。

草履履きですね?と金田一は指摘する。 あなたは一昨夜、あの小屋に入り、月光に照らされた中で死体が横たわっているのを発見したはずです。

外には立っていた、女の暴君がね、そして君は倉庫の中で花子の死体を他殺と思わせるように小細工し、ロープで死体の吊り下げた…と金田一が推理を聞かせると、嘘です!と章三は否定する。

続いて呼ばれたのはお志保で、今日も利休下駄ですね?どう言う理由であなたは章三君に三姉妹をそそのかせたのです?と金田一は聞く。

憎しみ以上の物がある…、あなたは人殺しですか?と責める金田一。

その後呼ばれた分鬼頭の鬼頭儀兵衛は、君は何の恨みがあってうちのお志保に!と最初から興奮気味だったが、儀兵衛さん、嘉右衛門さんが亡くなった今でも、本鬼頭を恨んでいますか?この手ぬぐいはあなたのですね!と小屋の中で拾った手ぬぐいを出すと、あの小屋の中には埃が堪っていましたが、これは埃をかぶっていませんでした、一昨晩落された証拠ですと金田一が聞くと、わしはこれを浜で落したんだ!と儀兵衛は言う。

いつ?と聞くと、分からん!と答えた儀兵衛は、清水さん、わしは二度とこんな呼び出しには応じん!と激怒する。

その証人尋問の様子を見ていた磯川警部は、鵜飼は娘と肉体関係がありますな…と指摘したので、鋭いですなと金田一は褒める。

すると清水巡査が、ギャングが関係しているのでは?と口を出したので、この事件にはそう云う関係性はありませんよと金田一が否定する。

その後、本鬼頭の屋敷にやって来た磯川は部屋に掲げられていた写真を見て、あの方は?と聞くと、この家の主だった鬼頭嘉右衛門で、今日でもう二七日になります、右はひとしで、早苗の兄です、昨年戻って来たがすぐに家を出もうした…と了然が説明する。

その時、同席していた金田一は、早苗の表情が変わったのに気付き、外へ早苗を呼び出すと、以前あなたは、時々三人の娘を殺したくなることがあると言ってましたね?と確認する。 千万太さんの母親が亡くなられた後、後妻になった人には恐ろしい病毒に犯されていました。

そのため、おじさんは一緒に病魔に犯され、三姉妹にも病魔の影響が残りました。

兄と一緒にここに連れて来られた私は本日まで地獄でした。

あの方々に罪はない、愛おしんであげなければと自分に言い聞かせて来たんですけど、そこは女の弱さ、いっそのこと一思いに…とお恥ずかしいことを考えたこともありましたと早苗は打ち明ける。

兄も言えに戻って来て以来あれこれ責められ、神経を損ないました。

そしてとうとうある晩家を出ました…と早苗が放している最中にも、庭にある祈禱所では、月代が狂ったように祈祷を行なっている声が響き渡っていた。

話を聞き終えた金田一は、ありがとうございましたと早苗に感謝すると、実は隠し事をしておりました、おじさまに御夕飯を持って来たとき、鍵を落しましたと早苗は言い出す。

気がついたのは明くる朝ですと言うので、昨日の朝ですね?と金田一が念を押す。

鍵はおじさんにお手に握られていましたと言う。 本鬼頭の屋敷から駐在所に帰る途中、金田一は早苗が与三松に罪を着せようとしていますと磯川に教える。

与三松のアリバイは不完全だし、花子さんを殺したのも、あんな人間が鍵を使って牢から抜け出して…と言うのですと教えると、早苗は煙草を気にしていましたねと磯川も指摘する。

早苗は、精神異常者は罪を問われないと言うことに持って行きたがっているようですと金田一は推測する。

白木君、君は岬の木の根で煙草の吸い殻を拾ったんだね?物証を追って正解にたどり着いたんだ、私は推論で同じようにたどり着いた…、おそらくギャングの中にひとしがいるのです、妹はそれを助けようとしている…と金田一は指摘する。

この島には隠れ家になりそうな廃坑がいくともある…と静子も指摘する。

千光寺に戻り、夜探索に出ることにした金田一だったが、静子が呼びに来ると、8時か…、妖怪退治にはまだ早いかな…と冗談を言うと、君はどうして岬を探そうと思ったの?と静子に聞く。 靴ですわと静子は答える。

私は今日の捜査会議に参加できないんですね?と静子が嫌みを言うと、今夜は女の出る幕はなさそうだよと金田一は苦笑するが、その直後、静子が悲鳴を上げたので廊下を見ると、蛇がとぐろを巻いていた。

その直後、銃声がしたので、何事じゃ!と了然が飛んで来たので、金田一は廊下の蛇を撃ったことを示すと、白木君に偽電報を打ったのはあなたですか?「金田一耕助に生命の危険あり…」と聞くと、了然は知らんねと即答する。

夜中の9時20分、唐草模様の風呂敷を手にした早苗が屋敷を出て行く。

待機していた磯川や金田一はその後を尾行する。

山の麓で待っていたギャングの1人に会った早苗は、笠岡から警察が来ました、兄になんとか処置してくれと言って下さいと頼む。

鬼頭与三松は今晩一晩持たないかもてん、夏頃から咳き込み始め、今朝方吐いてしまって…、兄はどこにおりますの?と早苗が聞くと、来な!とギャングが言うのでその後を付いて行くが、その早苗を追って来た警察隊も暗闇の中続く。

廃坑の前で待っていた他のギャング2人は、いよいよ大詰めと来たか…、しばし別れを惜しむかなどと話していたが、そこに早苗を連れた仲間が戻って来る。

兄は?と聞かれたギャングは、すぐに会わせてやりたいがね、血と俺たちにその身体を自由にしてくれって、シャバの土産にしろって兄さんが言うんだなどと言いながら、ギャングは早苗に襲いかかろうとする。

その時、金田一や磯川ら警官隊がやって来て銃撃戦が始まる。

金田一は清水巡査に、逃げ道と出口があるはずですと聞く。

ギャング3人は洞窟の中に入り込み反対側から抜け出すが、そこにあらかじめ先回りしていた金田一が銃を構えて待っており、観念したギャング達は銃を捨て降参する。

そこに駆けつけた早苗に、兄さんは?と金田一が聞くと、3人の顔を見た早苗は、兄じゃございませんわ!と驚く。 するとギャングの1人が、ひとしは昔の戦友なんだ、この島のことは聞いていて一芝居打ったんだよなどと言うので、金田一は、月代さんが危ない!と緊張する。

磯川達も急いで本鬼頭の屋敷に駈け戻る。

月代さんは?と屋敷中を探しまわっていた早苗は、庭の祈祷所の前に来ると、月代さん、いらっしゃる?と声をかける。

返事がないので、戸を開けようとした金田一だったが開かないので身体をぶつけ戸を外す。

すると、その中で祈祷の衣装を着た月代が横たわっていた。

又しても首に絞殺の痕が残っていたので、同じ手口ですと金田一は磯川警部に知らせる。

磯川は地面に残っていた裸足の足跡と窓が開いていることを見つける。

祈祷所の裏を調べていた清水巡査は、塀に立てかけてあった梯子を発見する。

その梯子を上ってみると、塀の上が一部踏み荒らされており、塀の向こう側を見下ろすと、下の地面に竹蔵が倒れているのを発見する。

駐在所の留置場にやって来た磯川は、捕まえたギャング3人に、一昨晩忍び込んだのは誰だ?2本タバコを吸ったのは?などと問いただすと、3人とも正直に自分だと打ち明け、今さらじたばたするような奴はここにはいませんぜなどと開き直る。

千光寺の墓の所で金田一に会った静子は、竹蔵はマムシ採りです。

今朝郵便局で聞いたら、電報を打ったのは富山の薬売りだったそうですと報告し、「妖奇」と言う雑誌を見せると、この中に本鬼頭のことが書いてありますわと言うと、祖先は密貿易をしていたと言う噂があると読んで聞かす。

そこに了沢が、今、磯川さんが来ますと知らせに来る。

金田一は了然に、富山の薬売りは毎年来るのか?と聞く。

そこに磯川警部が島のことを知る木村(前田静男)と言う警官を連れて来て、竹蔵と言うのはマムシを操る名人なのだと話させる。

あの右手もマムシに噛まれて失ったようですと木村巡査は言う。

屋敷内を探しに行った金田一は、竹竿で作られたマムシ採りの道具を縁の下から発見すると、竹蔵に会いましょうと磯川警部に言う。

寝込んでいた竹蔵を起こし、気配に気付いたんですよね?それは足音だよね?と磯川が聞き、相手の姿を見たんですよね、そしてガンとやられたんですね?それは誰でした?と金田一も聞く。

一瞬しか見てないんで…と竹蔵は言葉を濁すが、後で考えてピンと来た人はありませんか?と金田一が畳み掛けたとき、竹蔵の横にいた村瀬幸庵がわざとらしく咳き込んで邪魔をする。

竹蔵は、幸庵の態度で察したのか、間違っていたら相手の方に迷惑がかかりますから…と口を閉ざすので、分鬼頭の儀兵衛!違いますか?と金田一は名指しして確認すると、そうです…と竹蔵は渋々認める。

そこに清水巡査は下駄も持って来て、花子君の下駄です、分鬼頭の裏手のどぶ川で見つけましたと報告に来る。

それを見た金田一は、下駄の発見は逆に分鬼頭がシロである立証です、私は事件の明くる朝ドブ川を探し、その時にはなかったからです、つまりこの下駄のことを静子君が言った後に捨てられたのですと金田一は言う。

では、わしがこれを見つけたのもムダではなかったんですね?それなら良いが…と清水巡査が聞くと、ある意味では大金星ですと金田一は褒める。 この事件は、5年前に出征した千万太君が知っていたと言う特殊性を考えると、今の段階で儀兵衛を黒とは言えないと金田一が指摘すると、確かにあなたは何かを掴んでいると磯川警部は金田一を見る。

儀兵衛はいつか、呪いをかける執念だと放言していましたねと金田一が思い出すと、確かに不自然な言い方ですねと静子も同意するので、何故だろう?と金田一は考える。

その夜の11時5分前、分鬼頭の家では、鵜飼章三が何かに怯え、儀兵衛は相変わらず酒浸りだった。

おや?又お飲みになってるのかい、後でお身体に触っても知りませんよとお志保は呆れるが、執念!と呟いた儀兵衛はふらつきながら障子を開け縁側に立つが、その時、暗闇の中に立っている嘉右衛門の姿を見る。

幽霊だ!誰かいないか!と儀兵衛が部屋の中に逃げ込んで来たので、またお始めになのね、そんな茶番にごまかされるとお思いなの?などとお志保は相手にしないので、本鬼頭を裏門で見た!わしを捉えに来た!などと儀兵衛が喚くので、縁側から外を見回し、どこの何を見ろと言うの?何もいないじゃないか、お酒の正でおかしくなっているのよ、早く休みましょうよとお志保は言い聞かす。

その頃、駐在所に戻って来たのは嘉右衛門に変装した金田一だったが、その変装を解きながら、想像を絶している!あり得ないことだ!などと独り言を言うと、清水巡査に竹蔵が倒れていた時の草履の位置や傷の様子を再確認する。

手当をしたのは幸庵さんだ、偽装できると金田一は指摘する。 しかし、彼は片手ですわと静子が口を挟むが、犯人を儀兵衛に押し付けたんだと金田一は推理する。

そこに鵜飼章三が駆け込んで来て、殺されたんです!と訴えたので、それを聞いた金田一は、しまった!と叫ぶ。 分鬼頭に駆けつけた金田一は、そこで死んでいたお志保と、奥の間で瀕死の状況だった儀兵衛を見つけ、儀兵衛さん!犯人は?と呼びかけるが、一言、幽霊…と答えたきり儀兵衛は息絶えてしまう。

金田一は、3人の後継人を至急本鬼頭に集めて下さいと磯川に頼むと、またも常識の敗北だ…、人の執念がかくも残酷とは思いませんでしたよと悔やむ。

本鬼頭にやって来た静子は、早苗がまだ起きていたので、お休みじゃなかったんですか?と驚くが、婆やもまだ寝ていなかった。 金田一は寝込んでいた竹蔵に、見え透いた芝居は止めたまえ!マムシ採りの名人にこんなことを頼むのは気が引けるが、この家野商事を全部開いてくれと命じる。

この深夜に何事だと了然和尚、村瀬幸庵、荒木真喜太村長らもやって来たので、動く目玉になって欲しいんです。

道具立ては揃ったんですが、それを見る目がない、これでは画竜点睛を欠くと言う物ですと金田一は言う。

そして金田一は、早苗君、おじいさんの死に目に会えましたか?と聞くと、お台所におりましたと早苗が言うので、毒殺されたとしても見る機会はなかったんですね?と念を押した金田一は、お葬式は土葬でしたね?棺を開けば毒殺のことは分かりますと金田一は指摘する。

さらに、納棺には立ち会いましたか?と金田一が早苗に聞いていた時、金田一さん、あんたには負けました…、自白します、私は後見人としてこの家名を建てたのです、ひとしを呼ぶ為に3人をこの手にかけましたと了然が言い出す。

それを聞いていた金田一は、それだけですか、和尚?他に自白することはないですか?あなたは僧侶でありながら悟りは開けないのですか?と金田一は迫る。

第一の殺人は了然!第二の殺人は荒木村長!第三の殺人は村瀬幸庵!ではないですか?何かおっしゃることはありませんか?さすが、海賊と密貿易で財を成した本鬼頭の家系だ!と言うと、いきなり金田一は高笑いを始め、開け放った障子を抜け、とある部屋に来ると、笑いながら天井を見上げる。

そこには小さな穴が空いており、天井裏から下を見る目が覗いていた。 本鬼頭嘉右衛門!降りろ!何故女々しく逃げるんだ!降りろ!と金田一が天井裏に呼びかけると、やがて廊下の上から隠し階段が降りて来る。

そこから降りて来たのは死んだはずの鬼頭嘉右衛門だったので、早苗は、お爺様!と驚き、清水巡査もあっけにとられて見守る。 鬼頭嘉右衛門は右手に短刀を持っていた。

あなた方が人の気持を汲んでいたら、穏やかにすんでいたのですが… 偽の葬式を出し、死んだ振りをして、後見人と竹蔵を協力させ、分鬼頭に罪を着せようとして失敗したのです!と金田一が責めると、短刀を落した嘉右衛門は、ひとしにな…、3人のバカ娘を始末したので、帰って来たらこの名跡を継いで…と言いながら息絶える。

それを聞いた金田一は、封建的な…、あまりに封建的な…と顔をしかめる。 事件が解決し、島を離れるため港へやって来た金田一に、一つだけ分からない事があるんです、嘉右衛門は天井裏で食料もなく行きていたのですか?と静子が聞くと、じゃあ言おう、島の謎は島を出る前に全部解いておきたいから、老婆の一乃さんが運んでくれてたのさと金田一は教える。

そこに賭けて来た早苗が電報が来ました、兄さんが事件を新聞で知ってすぐ帰るって!とうれしそうに言うので、これからは兄妹手を取り合って生きるんだよ、出来るね?と金田一が聞くと、出来ますわ!と早苗は微笑む。

静子さん、きっとお便り書くんですよと見送りに来た老婆の一乃が声を掛けると、金田一さん、あんたも書くんですよ、良いか?と清水巡査も船に乗り込む金田一に言う。

金田一と白木静子を乗せた連絡船は獄門島を離れて行く。
 


 

 

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