1974年にも映画化されたお馴染みのアガサ・クリスティ原作ミステリの映画化。 多少、装飾的なエピソードが冒頭に加わっていたりするが基本的には同じ展開で、特に結末が大きく違っているようなことはない。 ラストにはクリスティファンがにやりとするようなセリフが待っているのもうれしい。 列車が走る途中の風景等はほとんどVFXでの合成だと思うが、雪山シーン等以外はまず気付かないと思う。 雪山は若干絵のように見えなくもないが、気になるほどではない。 1974年版に比べると個人的に知っている役者が少ないかなと感じるくらいで、特に出来は悪くないと思う。 古典ミステリの強みなのだろうが、話の展開や結末は知っていても面白いものは何度見ても面白い事が分かる。 安心して楽しめるミステリ映画の秀作である。 |
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼ |
2017年、アメリカ、アガサ・クリスティー原作、マイケル・グリーン脚本 、ケネス・ブラナー監督作品。 エルサレム 1934年 嘆きの壁に手を触れる人々 広場を少年が駆けて来る。 その少年から卵を受け取った料理人が4分茹でて、そのゆで卵を2個テーブルに運んで行くが客はノーノーノー!と拒否する。 すると又さっきの子供が走って外へ飛び出し、しばらくして後同じように卵を運んで来る。 テーブルに運ばれて来た2個の卵の大きさを測ったエルキュール・ポワロ(ケネス・ブラナー)に、卵を盛って来た少年は、多分…と答える。 ポワロは、雌鳥のせいか?何故同じ大きさの卵が生まれん?と文句を言う。 その時、食堂に現れた現地警官が、3つの宗教の危機ですとポアロを呼びに来る。 卵を食べ損ね、警官について現場に向かったポワロは、途中で右足でクソを踏んでしまい、これだとバランスが悪いなと呟き、左足も同じようにクソを踏んづける。 被疑者を前に! 群衆が見守る聖墳墓教会で、3つの宗派のラビ、神父、イマームが被疑者として整列させられる。 英国警察立ち会いの元、私が説明する。 彼ら3人が言い争いしていた目撃情報のあったフレスコ画の上にあった遺物がなくなっている…とポアロは群衆の前で演説する。 遺物がある場所のフレスコ画にわずかな傷が残っている。 誰かがよじ上った靴の痕だ。 固い靴底のブーツだと思われる。 ポワロは石壁の隙間に自分のステッキを突き刺す。 この事件によって誰がそれによって利益を得るだろうか? 3人の容疑者の靴底は薄い…と指摘したポワロは、南門に警官を立たせろ!と指示する。 エルサレムの警護は今後自治がやることになり、利益を失うのは英国の警部だ!とポワロが指摘すると、当の警部は、わたし?と驚く。 巡査部長がポワロの依頼で持って来た警部の大きなバッグの中から出て来たのは盗まれた遺物だった。 言い逃れようがないと知った警部はその場から南門の方へ逃げようとするが、警備の警官が銃を向けて来たので、逆方向へ逃げようとした所で、何かに首を挟まれ自らひっくり返る。 それは、先ほどポワロが壁に突き刺しておいた杖だった。 お世話になりました、船まで案内します、イスタンブールからロンドンへ直行ですか?と現地の警官が聞くと、ポワロはゆっくり休みたいと言う。 何故、あんな見事な推理がお出来になるんです?と警官が聞くと、壁の小さな傷が気になってね、私はそうした小さなことが気になって仕方ない。 生きづらいが捜査の役には立つ…、この世には善と悪があり、中間はない。 ネクタイが曲がっとるよと警官の服装を指摘しポワロは船に向かう。 船上ではエンジントラブルで船員がまごついていたので、黒人医者のドクター・アーバスノット(レスリー・オドム・Jr)が、イスタンブールの列車に間に合うのか?ロンドンで患者が待っているんだ、僕は医者なんだと文句を言うが、その内、僕も手伝おうと言い出す。 甲板のベンチに座ったポワロに隣に座っていたメアリ・デブナム(デイジー・リドリー)が、ヘラクレス・ポワロさんでは?と気付いて声をかけて来たので、エルキュールですとポワロは訂正する。 メアリも自己紹介すると、バグダッドからですか?と指摘し、メアリが驚いたので、チケットが…とポワロは、彼女の横に置いてあったバッグから覗いていたチケットを見て知ったことを明かし、彼女が家庭教師であることも袖口についていたチョークの痕から当ててみせる。 地理を教えていますとメアリは答える。 そこに、直りました!とうれしそうにドクター・アーバスノットがやって来る。 その後、メアリはドクター・アーバスノットと2人で仲良さげに話し合うが、誰も私たちの邪魔は出来ない…とメアリが言うのを、側にいたポワロは耳にする。 イスタンブール ポワロは馴染みのパン職人モハメドの仕事場に邪魔し、旧交を温めていたが、そこで待たせておいた女と落ち合い、彼女との時間が欲しいのでちょっとこの場を開けてくれと無茶を言っていたブーク(トム・ベイトマン)に気付くと声をかける。 ブークの方も旧知のポワロがいるのを知ると驚き、ポワロと抱き合うと、自分は7時のオリエント急行に責任者として乗るのだと言う。 ブークから世界一の名探偵だとポワロを紹介された女は、有名人に会えたことを知り興奮気味だった。 その時、電報を持ったイギリス領事館員スピックがポワロを探しに来る。 ポワロが、カスナーの事件?と勘を働かせ、電報は読まんよと面倒くさがると、正しく!とスピック言うので、休暇の邪魔が入った!君とオリエント急行だとポワロはブークにこぼす。 ブークはうれしそうに、この3日間を楽しんでくれ!と歓迎する。 スピックはポワロとブークと共にビクトリア駅に案内するが、あれこれしゃべりかけて来るので、ポワロは黙っていてくれと注意する。 駅には、陽気な自動車販売員マルケス(マヌエル・ガルシア=ルルフォ)が駅員にチップを渡していた。 暗い表情の宣教師ピラール・エストラバドス(ペネロペ・クルス)は、人ごみの中でバッグを掏られそうになり、怒ってバッグで相手を叩き付ける。 ラチェットの秘書ヘクター・マックィーン(ジョシュ・ギャッド)と執事エドワード・マスターマン(デレク・ジャコビ)も一緒にチケットを購入していた。 ハンガリーの貴族で有名なダンサーであるルドルフ・アンドレニ伯爵(セルゲイ・ポルーニン)は、写真を撮ろうとつきまとう新聞記者やカメラマンにいら立ち、華麗なフォームで暴れ出すが、カメラマンは顔は殴らないで!と詫びる。 そこにエレナ・アンドレニ伯爵夫人(ルーシー・ボイントン)がやって来たので、喧嘩を止める。 その時、2人の写真にフラッシュを焚いた記者は、睨んで来たアンドレに伯爵に気付くと、すみませんと詫び自らカメラを投げ捨ててしまう。 ホームでは、車掌のピエール・ミッシェル(マーワン・ケンザリ)が、シンプロン・オリエント急行の停車駅を大声で披露していた。 そこにポワロを連れて来たブークが、あいにく列車は満室なので11号室に乗って下さいと説明していた。 2等しかないのかね?1等は空いてないのかね?とポワロが嘆くと、では、マックィーン様と同じ3号室へと言う事になる。 それを聞いたポワロは、3は不吉な数字だ…と呟く。 列車に乗り込もうとしたポワロはキャロライン・ハバード(ミッシェル・ファイファー)とぶつかりそうになったので詫びるが、ハバードは快く許し、自分は世界中で夫を捜している等と陰口を叩かれていますのよなどとポワロと会話しながら部屋に向かう。 エドワード・ラチェット(ジョニー・デップ)などの前を挨拶しながら通り過ぎ3号室に来ると、先に入っていたマックィーンがお間違いでは?と怪訝そうな顔で聞いて来るが、相部屋ですとポワロは説明する。 準備中の食堂車にドラゴミロフ公爵夫人(ジュディ・デンチ)と犬を連れた専属メイドのヒルデガルデ・シュミット(オリヴィア・コールマン)が入って来る。 さらに列車には、ゲルハード・ハードマン(ウィレム・デフォー)が乗り込んで来る。 シュミットを連れ通路にやって来たドラゴミロフ公爵夫人はミッシェル車掌が案内する部屋を2つ拒否すると、3つ目の部屋でようやく満足するが、ベッドの準備が遅い!と苛立っていた。 バーで1杯引っ掛けたラチェットは、食堂車に座っていた執事のマスターマンと共に部屋に戻るが、ドラゴミロフ公爵夫人が食堂車のテーブルの上に犬を乗せているのに気付くと、通り過ぎた所で嫌みを言う。 マスターマンと分かれたラチェットはコートの下の銃を確認し、洗面所に入ると鏡を前に薬を飲む。 やがてオリエント急行は出発する。 マスターマンがコーヒーを持ってラチェットの部屋に来ると、「気をつけるが良い」と文字を切り貼りして作った脅迫状を見せる。 誰の仕業だ?とラチェットは聞くが、マスターマンは分かりませんと答え、そのまま部屋を出て行く。 ラチェットが部屋の外に出て酒を飲んでいると、マスターマンとすれ違ったハバード夫人が近づいて来る。 そんなハバード夫人をラチェットがじっと見つめたので、見てると金を取るわよ、美しい殿方なのに残念だわ…、何でも手に入るのね…とハバード夫人が嫌みを言うので、キスするかのように顔を近づけたラチェットだったが、何もせずに自分の部屋に入る。 その時、奥の部屋からポワロが顔を出し、大丈夫ですか?ハバード夫人!と声をかけて来る。 ハバード夫人は、ラチェットに聞こえよがしに嫌みを言うので、ポワロはお休み!と言って部屋に戻る。 やがて車掌のミッシェルがゆで卵をベッドで寝ていたポワロの部屋に持って来て、マックィーン様はブーク様の部屋に移られましたと教えて立ち去る。 ポワロは2個の卵の大きさを測り同じだったので満足する。 食堂車ではブークが客たちにシャンパンを勧めていたが、エストラバドスだけは酒は飲まないと固く拒否する。 そこにポワロがやって来たので、ラチェットがご一緒に?こいつは離れさせるが?と一緒に座っていたマックィーンのことを立たせて誘うが、ポワロは連れがいるので…と断り、ブークと同じテーブルに座る。 そんなポワロに、ハバード夫人がグラスを上げて挨拶して来たのでポワロも返す。 メアリは、隣のテーブルに座っていたドクター・アーバスノットとさりげなく視線を合わす。 ポワロは、隣のテーブルに座っていたシュミットがウェイターに注文した料理を聞くと、同じ物をと注文する。 その直後、ドラゴミロフ公爵夫人はシュミットに、あれはブラッシングじゃないわ!と先ほどの犬のブラッシングに付いて叱りつける。 その直後、ハードマンが立ち上がり、黒人と同じ席は嫌だ!と人種差別発言し、赤ワインと白ワインは一緒にしたら風味が落ちると屁理屈を言うので、メアリが自分のテーブルの赤と城のワインを混ぜて飲んでみせ、私はロゼが好きと口を出す。 食後、テーブルに残っていたポワロが1人ディケンズの本を読んでいると、菓子皿を持ったラチェットが近づいて来て同席しても良いですか?と言うので、そのケーキを一口もらえるなら…とポワロは答える。 ラチェットはポワロの前に座り、フォークをもう1つ持って来させる。 ポワロはそのフォークでケーキの上だけすくって食べたので、あんたは変わった人だとラチェットは呆れながらも、有名人にあったのは始めてだ…、いや前にバスでタイ・カッブに会ったことがある等と言い出す。 そして真顔になると、ラチェットは仕事を頼みたい、あんたは無実の者の守護者だろう?私は美術商だ、ビギナーズラックで儲けたが、新参者なので目利きではない。 そしてトラブルも多い。 今日は脅迫状を送って来た、多分イタリア人だ。 ミラノで東洋風の絨毯を何枚も買ったんだ。 利子を付けて返金しろと言って来たんだ、ヘラクレス・ポワロとラチェットが言うので、エルキュール…とポワロは訂正する。 俺の警護をして欲しい、安全な場所までだ…とラチェットは言うが、ポワロがお断りしますと即答したので、説明がまずかったかな?まともな行き方をして来なかったが、俺はまだ死ぬ気はない…と、ラチェットはテーブルの上に置いたナプキンの下に隠した拳銃をポワロに向けて来ると、1万5000!とギャラを提示するが、ポワロは断る!と言う。 あんたに取っては地味過ぎる仕事だからか?とラチェットが聞くと、あんたは偽者だ、あんたの顔を嫌だ!とポワロは不快感を示し立ち上がったので、ケーキの味は?とラチェットが聞くと、旨かったと答え、ポワロは部屋に戻って行く。 オリエント急行はヴィンコヴチ駅に停車する。 そこで一旦降りていたドクター・アーバスノットとマックィーンが乗り込んで来る。 ポワロは個室の中で、写真立てに入った若い女性の写真を見ながら、愛しのカトリーヌと呟いていた。 夜中、又ポワロがディケンズの本を読んで笑っているとき、車掌のミッシェルがラチェットさん!とノックする音が聞こえたので、ドアを開けて様子を見たポワロだったが、車掌は軽く微笑んで大したことじゃないようなジェスチャーだったし、もう一度ミッシェルがノックして呼びかけると、中から何でもないと答える声がしたので、ポワロへ部屋のベッドに戻り横になる。 時計を見ると、深夜の0時37分だった。 電気を消して寝ようとしたポワロだったが、又廊下で呼び出しベルの音が聞こえたので、又か!と苛立ちながら室内灯をつける。 外に出ると呼んだのはハバード夫人だと言う。 部屋に戻って横になったポワロだったが、又足跡が聞こえたので通路を覗くと、赤いガウンを来た人物が走り去る後ろ姿が見え、その直後、ミッシェル車掌がハバード夫人の部屋から出て来る。 その後、トンネルを抜けた所で付近の山で雪崩が発生、列車は脱線してしまう。 車掌のミッシェルが、脱線事故です、説明しますから、皆さん、食堂車へ!と各部屋に呼びかける。 ベッドから転がり落ちたポワロは、死んだか?などと呟くが、床に投げ出されていた写真立てを拾い上げると、我がカトリーヌ…と語りかける。 翌朝、列車は橋の上で停まっていることが分かる。 食堂車に集まった乗客たちに、ブークが、列車が全く動きません。しかし定刻通りに次のブロド駅に着かないので、既に事態に気づいた救援部隊がこちらに向かっているはずです。こちらに留まっていれば何のご心配もいりませんと説明するが、客たちはあれこれ不安を口にし、ドラゴミロフ公爵夫人は、こうなったのはあなたのせいよ、責任者なんでしょう?とブークを責める。 そんな中、マスターソンが食堂車からラチェットの部屋の前に食事を運んで来て、朝食です、ラチェットさん!と呼びかけるが返事がない。 どうかしたのか?とポアロが部屋から出て来て、ラチェットの部屋のドアを開けようとするが鍵がかかっている。 床に這いつくばり、ドアの隙間から中を覗いたポワロは、冷気が中から出ていると気づき、医者を呼んで来るようにマスター万に頼むと、自分はステッキでドアをこじ開ける。 すぐにブーク、車掌とともにドクター・アーバスノットが駆けつけ、ポワロが開けたばかりのドアから中に入る。 ポワロはドクター・アーバスノットに、遺体以外は触るなと注意する。 ブークはショックを受けたようで、人が死んだ、警察に知らせないと…と動揺する。 ドクター・アーバスノットによると、死因は刺し傷で窓が開いている、死亡推定時刻は深夜0時から2時の間…と推測するが、それを聞いたミッシェル車掌は、誰も部屋に入ってませんと自分が一晩中廊下を見ていたことを明かす。 とりあえずミッシェルに全員食堂車に集めさせ、ブークはポアロに事件の解決を依頼するが、ポワロは、神よ力を貸してくれ!と祈る。 ポアロは今は休暇中だと言って拒否するが、休暇で楽しむとしても刺激を与えないと小さな灰色の脳細胞が死ぬでしょうなどとブークはポアロを説得する。 ポアロは人を殺すのは悪だ、人は獣ではない…、犯人を見つけようと決意する。 食堂車に集まった乗客たちを前にブークがラチェット氏が亡くなりましたと報告すると、敵がいたんだ…とパターソンが打ち明ける。 ハバード夫人は、誰も信じないでしょうけど、夜中に私の部屋を荒らした人がいるのよなどと客は動揺するが、そんな中、ハードマンが何故あんたが捜査を?と聞いて来たので、エルキュール・ポワロ、世界一の探偵だと答える。 人殺しがいるのです、今もこの列車の中にいます!とポワロは全員に告げる。 その後、列車の屋根の上に上ったポワロは、カレー以外のものだと指摘する。 ブロド駅からの救援トロッコが脱線現場に近づいていた。 ポアロとともに捜査に立ち会うことにしたブークは、まずラチェットの身近にいつもいたマックィーンに質問をすることにする。 ただの秘書で、旅の予約やステーキの焼き方まで…、彼は知識も商売の知識も何もなかったので全て私がやっていました。 禁酒法のアメリカでは暮らしにくいので…とバーボン好きらしいマックィーンは答える。 さらに、弁護士の資格はあったが無理だった…、私には向いてないと答えたマックィーンに、ラチェットを最後に見た時間を尋ねると、夕べの10時頃だろうと言う。 自分はその時間、前の停車駅でドクター・アーバスノットとスターリンに関する噂話等聞いていた。 ラチェットに敵はいたのかと聞くと、脅迫状は何度か来ていたと言い、部屋の中から何通過の切り貼り文字の脅迫状を取り出してみせる。 そこには「気をつけるが良い」とか「我々に勝てるものか」と言った文言が書かれていた。 マックィーンはマルケスが怪しいと言い出し、ラテン系の奴らは本気で殺すからなどと人種差別的発言をして去って行く。 ポワロは、本音が出たな…と呟くと、被害者に聞いてみようと言い出し、ラチェットの死体を調べてみることにする。 ベッドの上で死んでいたラチェットの身体は12ヶ所刺されていた。 側に落ちていた時計は1時15分で止まっていた。 傷口は深い傷もあれば2ヶ所は浅い。 ベッドの下には護身用の銃も持っていたのに抵抗した痕がない。 バルビトールを飲まされたんだ。 「H」の隠喩シャルつきハンカチとパイプのハンドクリーナーが残っている。 役に立つのはこれだ!と言い、ポワロは灰皿の上に残っていた紙の燃えカスをそっと持ち上げ、列車を降り、側にあったトンネルの下に臨時に置かれたテーブルのランプの上にその灰を乗せてみる。 下から熱せられた灰の文字の部分が透けて見えた。 「強い血で染められたお前は死ね」と読めた。 彼の本名は違った、カセッティだ、アームストロング事件を覚えてるか?とポワロはブークに聞く。 2年前、ソニア・アームストロングの娘が消えた。 犯人からの要求通り身代金は払ったが、娘は死体で発見された、ソニアは妊娠中だったがショックから赤ん坊も母親も死んでしまった。 私はアームストロングから手紙をもらった。だが駆けつけた時は手遅れだった。 彼は拳銃自殺していた。 そこにミッシェル車掌が、ハバード夫人が話したいと…と伝えに来る。 ラチェットの隣の部屋だったハバード夫人は、夕べ、深夜私の部屋に誰かいたの、気配に気付き目が覚めたら男がいた。 ドアの鍵が外れていた…と言うので、アームストロング事件を知ってますか?とポワロが聞くと、もちろん…と言う。 ラチェットの本名はカセッティ、アームストロング事件の犯人ですとポワロが明かすと、悪党ね!とハバード夫人は吐き捨てるように言う。 そしてベッドカバーの下にあったの…とハバード夫人が見せたのは車掌の服のボタンだった。 しかし、ミッシェルの制服のボタンは取れてなかった。 次いで、ラチェットの執事のマスターソンに事情を聞くことにする。 夕べ、最後のラチェットの姿を見たのは9時だと言う。 口を押さえているので、歯が痛いんですね?とポワロが聞くと、ロンドンで抜くつもりですと言う。 (回想)脅迫状のことをお前の仕業か?とラチェットから責められたマスターソンは、嫌がらせならもっと酷いことをしますと答える。 (回想明け)歯痛だけではないようだね?肺がん?とポワロが指摘すると、と甲状腺がんで胃に移転しました。 持って数ヶ月なんですとマスターソンは打ち明ける。 コーヒーにバルビゾールを入れたのはまさかあなたが?と聞くと、違います、9時に用意するよう頼みましたから、入れようと思えば誰でも入れられますとマスターソンは答える。 歯痛は気の毒だ…と立ち去るマスターソンにポワロは同情する。 ポワロは次ぎにピラール・エストラバドスから話を聞くことにする。 かつては自分に甘えがあった…と言うエストラバドス。 ハードマンやバスケスへの尋問も別個に行なわれた。 夜、部屋を出たかとの問いに、エストラバドスは1度出ましたと答える。 ハードマンとバスケスも質問に答える。 エストラバドスは、ある出来事がきっかけで、それに懲りて紙に仕えることにした…と言う。 バスケスは、誰の運転手だったとの問いに、運転手をしたことはないと否定する。 その後ポワロはメアリ・デブナムを列車の外に置かれたテーブルに、ピクニックしましょうと誘い、フルネームを書かせる。 メアリの本名めあり・イーマイオニー・デベナムは左利きだった。 被害者に会った印象は?と聞くと、特にないですとメアリは言う。 以前からドクター・アーバスノットとお知り合いですか?と聞くと、個々はアメリカではない、沈黙を禁止する法律はないわとメアリが言うので、アメリカへは?と聞くと、1度も行ったことないわと言う。 以前船の上であなた方の会話を聞いてしまいました、全てが終わったら誰も邪魔させない…と、犯人のことだと?と聞き返して来たメアリは、言ったはずよ、沈黙を禁じる法律はないって…と答えを拒否するので、もう良いですとポワロは彼女を解放する。 続いてポワロはドラゴミロフ公爵夫人に話を聞く。 夕べは腰痛のためシュミットさんにマッサージしてもらっていたと言う。 アームストロング一家をご存知ですか?と聞くと、言いようのない哀しい事件でした。 ソニアの母親リンダ・アーデンは100人に1人の逸材で、ブロードウェイ一流の女優になるはずでした…。そしてデイジーの名付け親は私ですとドラゴミロフ公爵夫人は打ち明ける。 ポワロが、ラチェットの本名はカセッティですと知らせると、私は一家と知り合いで、犯人が死んだと言うのは神の思し召しですと言う。 次いでポワロは、側にいたシュミットに、ドイツ語で答えて下さいと頼む。 公爵夫人はドイツ語は理解できませんとシュミットが戸惑うと、だからですとポワロは頼む。 ラチェットの部屋にあったハンカチを見せると、私には高級過ぎますとシュミットは言う。 夕べ誰か見ませんでしたか?と聞くと、車掌を見たと言うので、シュミットを廊下に連れ出し、そこにいたミッシェル?と聞くと、もっと小柄でひげを生やしていたと言う。 制服と赤いが運を見つけるんだ!と指示し、ブークとともに乗客の荷物を集めた車両にやって来たポワロは、アンドレニ伯爵夫妻のバッグは外交特権で調べられません!と言うミッシェルの声を聞きながら、調べるのは私自身のバッグだ!と叫ぶ。 ブークがポワロのバッグを開けると、はたして金の龍の刺繍が入った赤いガウンが入っていた。 さらに、シュミットの部屋の荷物置きに隠してあった車掌の衣装も発見する。 私のじゃありません!自分が着たのならあんな話をするはずがありませんとシュミットは驚く。 一番発見されにくい場所に隠したんですと言いながら、ポワロはちぎれたボタンがその制服のものだと気付き、服の中に入っていたキーで、犯人はどの部屋のドアも自在に開けられたのだと推測する。 制服の袖口の匂いをブークに嗅がせるとバーボンだと言うので、マックィーンだ!マックィーンはどこだ?帳簿を探すんだ!とポワロは指示する。 マックィーンは列車の下の木の橋の隙間で帳簿を燃やそうとしていた。 それに気付いたポワロが、それを阻止しようと近づくと、マックィーンともみ合いになり、マックィーンは足を滑らせ凍った川の上に落下してしまう。 幸い怪我はなかったマックィーンを連れ、ポワロとブークは列車に戻って来る。 帳簿を何故燃やした!とブークが責めると、私じゃない!とマックィーンは否定するが、ポワロは横領だろう?と指摘する。 マックィーンは横領を認め、彼は俺にとって金のなる木だった、大事な哉づるを俺が殺すと思うか?と反論して来る。 そこにドクター・アーバスノットがやって来て、彼じゃない、夕べは駅で、スターリンの話をしていたとマックィーンのアリバイを証言する。 アーバスノットを廊下に誘ったポワロは、客の中でパイプを吸うのはあなただけだが、このパイプクリーナーはあなたの?とラチェットの部屋で見つけた証拠品と照合してみる。 アーバスノットが使っているパイプクリーナーと同じだった。 黒人で医者になるというのは色々障害があったのでは?とポ割が聞くと、ミドルセックス校を1924年に卒業した、私は腕が良かったとアーバスノットが言うので、ジョン・アームストロングを知ってるか?と聞くと面識はないとアーバスノットは答える。 デブナムさんとは?と聞くと、列車で会った、メアリは立派な人だと言う。 マックィーンの部屋に戻って来たポワロに、医者ならバルビトールを飲ませられるのでは?とマックィーンが言うので、可能だとポワロは言う。 あなたはさっき、弁護士の資格を持っていたが向いてないと言ったがどう言うことなのか?と聞くと、厳しい父を納得させる為だ、父は偉大な人物だったとマックィーンは答える。 失脚したニュージャージー州の検事だったんでしょう? アームストロング事件で、アリバイが弱かったフランス人のメイドを追求し、結果、彼女は自殺してしまった。 あなたは、ラチェットが真犯人と知っていたのか?と聞くと、知らないと言うので、だが見つけた、そして父親の借金を彼の金を横領することで補い復讐していたのだ!とポワロは指摘する。 その時、女性の悲鳴が聞こえる。 慌てて声のした部屋に駆けつけると、ハバード夫人が背中をナイフで刺されていた。 いきなりドアを開けて誰かが入って来たとハバード夫人は言う。 すぐにドクター・アーバスノットがやって来て身長にナイフを抜くが、そのナイフが、らちぇっとを殺した凶器だとブークは指摘する。 ドクター・アーバスノットは、肺も動脈も傷つけてないので大丈夫だと言う。 ハバード夫人はマックィーンじゃない、犯人は他にいると言いながら食堂にやって来る。 ブークは乗客たちに、線路は朝には直りますから、皆さん部屋にお戻りくださいと声をかける。 ポワロは最後にルドルフ・アンドレニ伯爵に会いに行き、パスポートを見せてもらうが、妻のエレナの名前の最初の部分が不鮮明になっているのに気付く。 妻は体調が悪くて…とアンドレニ伯爵は尋問に怒っているように癇癪を起こすが、そこに、いつも夜起きて、昼寝をすると言うエレナが奥の部屋から出て来てアンドレニ伯爵を押さえる。 いつも薬を?とポワロが部屋にたくさん置いてあるバルビタールの瓶を見つけて聞くと、バルビタールを飲まないと外出できないし眠れないとエレナは訴える。 ミドルネームはゴールデンバーグでは?とポワロが聞くと、ミドルはマリアよ、ユダヤ系なのとエレナは答え、もう一度寝るわと言いながら奥の寝室に夫を向かう。 ガウンはそれだけですか?とポワルが聞くと、もう1着あるわ、黄色いのが…とエレナは答える。 地理は好きよ、家庭教師のお陰で…とエレナが言うので、あなたの本名はエレナではなくヘレナだ! スペルでは最初にHが付く!とポワロが指摘すると、Hで疑われる言われはないんだ!とアンドレニ伯爵は怒る。 ソニア・アームストロングには妹がいてユダヤ系だった。 彼女の本名はゴールデンバーグだった、あなたはソニアの妹ですね?とポワロは指摘するが、怒ったアンドレニ伯爵から部屋を追出されてしまう。 廊下には銃を持ったハードマンがおり、食堂にポワロと来ると、あなたはオーストリア人でもなければ教授でもない、ドイツ人か?ドイツなまりがあると指摘する。 私も探偵だとハードマンが言いながら身分証明書を差し出したので、ピンカートン探偵社か?とポワロは聞く。 黒人を嫌ったように見せかけたのも芝居だ、私もユダヤ系だとハードマンは明かすが、その銃はブルーフィッシュ、警官用の銃で1927年製だ、まだ嘘をつくのか?と見抜く。 見抜かれたと悟り力なく帰ろうとするハードマンに、拳銃は置いていけとポワロは命じる。 ハードマンが去ると、彼の部屋の位置からして、犯人を見逃すはずがないとブークに告げる。 部屋に戻ったポワロは、ガラスが割れた写真立ての中の女性に向い、カトリーヌ、これは忌まわしい世界…、まだ真実が見えて来ない…、私は自信がない…、今は無力な子供のようだ…、分からない…、怖いんだ、カトリーヌ…と話しかける。 翌朝、列車を線路に戻す為、乗客たちは全員外に降ろされ、近くのトンネル内に一旦避難する。 そんな中、ブークに連れて来られたメアリが、お呼びだとか?と言いながら、まだ荷物室に乗っていたポワロの元にやって来る。 解けない謎が10個ある…と、箇条書きにしたメモをメアリに見せながらポワロは弱音を吐く。 それを見せられたメアリは、ハンカチのイニシャルの謎、赤いガウン、車掌のユニフォーム、時計の時間…などと呼び上げ、もしかしたら11番めの謎があるのでは?と指摘する。 あなたはアメリカで家庭教師をしていた事を隠していた! デイジー殺人の!とポワロが迫ると、カセッティはクズよ!とメアリが叫び、その時、銃声が響き、ポワロは右腕を撃たれる。 銃を持って近づいて来たのはドクター・アーバスノットだった。 俺がやった!メアリ、行ってくれと呼びかける。 アームストロング大佐は私の上官で親友だった。 カセッティが彼を破滅させた… 俺は奴を見つけ出し、警察に突き出そうとも思ったが、裁判はムダだと悟った。 メアリやマックィーンに罪を着せないように時計を操作した?とポワロが指摘する。 あなたから身を守らなければ…と銃を突きつけて来たとき、ちょうど列車が線路に戻る振動が起きたので、アーバスノットはよろけ、ポワロは手にしたステッキで殴り掛かる。 そしてアーバスノットが落した銃を拾い上げようとするが、アーバスノットがつかみ掛かって来て、倒れたポワロを列車から突き落とそうとする。 そこに駆けつけて来たブークが、背後からアーバスノットの頭を殴りつける。 銃とコートを手に列車を降りたポワロは、客を戻さないと…とトンネルに駆けて行く作業員たちを止める。 嘘を重ねれば騙せると思ったか!神とエルキュール・ポワロをだ?解き明かす時が来た!と呟きながらポワロはコートを羽織る。 ポワロは、トンネルの下に置かれた長いテーブルに横に並んで座っていた乗客たちの側に近づく。 ドクター・アーバスノットはわざと外した…と乗客たちに話しかけたポワロは、答えは2つあると言う。 第一の推理はマフィアが列車に忍び込んだ…、そして遺留品を残し逃げ去ったと言うと、それを銃を突きつけ背後で聞いていたブークはそれでは穴だらけだと推理の弱さを指摘する。 通常事件の犯人は最大の利益を得る者。今回は人殺しを殺す事件だ、この場合、利益は精神的なもの…、この中に犯人がいる!とポワロは言う アームストロング大佐の友人、アームストロング家の家庭教師、ソニア・アームストロングの妹ヘレナ・ゴールデンバーグ、夫は激高しやすい…と言いながら、ポワロはドクター・アーバスノット、メアリ・デブナム、ドラゴミロフ公爵夫人とその夫を見て行く。 デイジーの名付け親、Hと言う文字はロシアでは読ないので、ナタリア・ドラゴミロフ公爵夫人! アームストロング家の料理人だった女もいるとポワロはヒルデガルデ・シュミットを見る。 デイジーの乳母はその後責任を感じ宗教の道へ…、事件当夜夕食のワインを飲み過ぎて抱いていたデイジーが連れ出される時、それを守れなかった! それを聞いていたは、あの時、もし私が…と言うと泣き出す。 大佐の当番兵でしたが戦後は執事としてかれに仕えましたとエドワード・ヘンリー・マスターマンが告白する。 アームストロング家の運転手も同じだ!とポワロはマルケスを見る。 さらに、1人の名もない犠牲者の恋人がいる。 マックィーンの父が疑ったばかりに自殺したメイドだとポワロが言うと、スザンヌは優しい女だった…、良い相手はいくらでもいたのに、私のような年寄りを選んでくれた…とゲルハード・ハードマンが告白する。 車掌のピエール・ミッシェルには妹がいた、スザンヌ・ミッシェルだ!とポアロが自殺したメイドの名を明かす。 そして、誰よりも娘思いだったソニアの母親で女優のリンダ・アーデン!とポワロが最後の1人を見ると、帽子を取ったハバード夫人は、驚くほど頭が切れるのねと感心する。 1人の犯罪で10人以上の人生が壊され、歪められた…、一体誰が犯人か?誰がナイフを刺したのか? 答えは1つ…、誰も1人では出来なかった…、全員だ!みんなで一緒に刺したんだ!とポワロは指摘する。 みんなを誘い、ハードマンにカセッティを探させ、マスターマンとマックィーンを送り込んだ…とハバード夫人は告白する。 (回想)アームストロングの家で、アームストロング夫妻と愛娘デイジーの幸せそうなファミリームービーを映写し、それを懐かしそうに眺める12人。 事件当夜、髪カバーと赤い着物を羽織ったメアリが通路を走り去る。 車掌の制服をシュミットの部屋に隠そうとしていたマックィーンはバーボンを飲んだため袖口に液体が付着する。 事件後のハバード夫人を刺したのはドクター・アーバスノットで、医学の知識を元に命に別状がないように刺したのだった。 事件当夜、ミッシェルが各部屋を軽くノックして行き、全員が通路に出て来る。 バルビタールで眠らせたラチェットの部屋に全員入ると、目覚めたラチェットの口を抑えたマックィーンとバスケスがラチェットの空だを押さえつける中、ハードマンとがまず刺し、そのナイフで1人一突きずつラチェットを突き刺し、最後にハバード夫人が止めの一刺しを突く。 その後、全員が部屋から出た後、1人残ったハバード夫人は懐中時計を壊し、部屋の窓を開け放つと、脅迫文を灰皿で燃やす。 そして、ミッシェルが外からノックして来てラチェット様?と呼びかけると、男の声色を使い、何でもないとハバード夫人は答える。 (回想明け)無垢な子を殺した報い…とハバード夫人は叫ぶ。 この計画を立てたのは私1人、私にはもう生きる理由はない!他のみんなにはまだ未来がある!喜びを見つけて!幕は私が引く!彼らは犯人じゃない!と訴える。 世の中には善と悪がある。 私には分からない…、自由を得る為にもう一つ罪を犯すのだ!私は夜明けに湖で死体となって発見されるだろう。 私をやれ!殺せ!と言いながらポワロは銃をハバード夫人に渡す。 ハバード夫人は受け取った拳銃を自分の喉に押しつけ引き金を引くが、弾は入ってなかった。 正義を見つけるのが仕事だと思っていたが、時として推理は不十分だ…とポワロは嘆き、悩む。 やがて、列車が再び動き出す。 食堂車に集まった乗客たちは、互いに事件の結末に喜びあう。 次ぎのブロド駅に列車は到着し、ラチェットの死体が啖呵で運び出される。 それを見守るブーク。 駆けつけた警官たちに事情を説明しているポワロ。 列車に戻って来たポワロは荷物をまとめ食堂車へ向かう。 アームストロング大佐、やっと返事を書くことが出来ます。 全てあなたはご存知でしょうが、心苦しい結末でした…とポワロは考える。 くだらない人生…、浅い悲しみの中から1つの罪が多くの罪を生み出した… 私のよりどころは人間の希望… 今の私に出来ることは耳を傾けること… 私の心の中の声を… てんびんは釣り合わない、私も今回だけはアンバランスを受け入れます。 食堂車の乗客たちの前に来たポワロは、犯人はいません、警察は私の第一の推理を受け入れました。 私はここで降ります、皆さんは自由の身だ!と言い残し、ポワロは列車を降りる。 駅舎に向かっていたポワロに近づいて来た警官が、次ぎの仕事の依頼が来ていますと告げる。 私は休暇中だ、カスナー事件か?とポワロが聞くと、エジプトのナイル川の事件ですと警官は言う。 ネクタイが曲がっているぞと指摘したポワロは、車で待てと警官を追い払う。 オリエント急行が走り始めた中、ポワロは警察の車に乗り込みながら、行こう!と言う。 |