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続・キューポラのある街 未成年

有名な作品の続編であり、しかも監督は別人と言うことで、あまり期待しないで見始めたのだが、前作の繰り返し風な雰囲気はもあるものの、これはこれで興味深い作品になっている。

前作は、貧しい中にも希望に満ちたエンディングだったのに対し、続編である本作は何とも救いのないバッドエンディングになっているのだが、ヒロインジュンの姿に何か燃えたぎる若さが残っており、そこに一抹の光明を感じるので、特に後味が悪いと言う訳ではない。

昔気質で時代に取り残されつつある職工の貧しい家庭に生まれたヒロインが、夢も希望もない中で、何とか自分なりに目標を探し、必死にあがいて生き抜こうとするまじめな物語である点は前作と同じである。

前作では東野英治郎が演じていたジュンの父親辰五郎を、この作品では宮口精二が演じているが、時代に取り残され、長年培って来た技術すら役に立たなくなって来たことへの焦燥感から、若い者たちに謂れのない怒りの感情をぶつけるようになるみじめさをわびしく、時に滑稽に演じている。

そんな父親を嫌いながらも、肉親への情として、心底突き放せないジュンのもどかしさも分かる。

ジュンのやんちゃな弟タカユキも、前作の市川好朗から松原マモルにバトンタッチしているが、最初の内こそやや違和感を感じるものの、他の中学との喧嘩などのわんぱく振りを観ているうちに、いつしかこのタカユキも馴染んで来る。

前作では、労働組合礼賛のような雰囲気だったが、この作品では、労働組合は巧く行かなかった代わりに、「会友?」と言う新しい考え方が登場する。

仲間とか、平等と言う言葉がやたらに出て来ることから、組合同様、当時の若者に人気があったらしい左翼的な考え方、理想論がベースにあるような気がする。

ただ、今作では、あっさりその幻想も潰れてしまう様が描かれており、その手の幻想がやや覚め始めていた時代だったのかもしれない。

あるいは、映画会社側の意向で、そう言う無難な展開になったと言う可能性も考えられる。

正直、この時代のある種の若者たちの共同幻想のようなものは、違う世代の目から観ると、若干鬱陶しく感じないでもない。

例えば、この時代に青春期を迎えていたらしき宮崎駿さんのアニメなどファンタジーに昇華されているのならまだ観られるが、実写作品だと、どうしても重く感じてしまうのだ。

この重さ、暗さは、後の「若者たち」などに継承されているようにも思える。

別に仲間なんていなくても良いのじゃないか?

人と群れず、1人で生きて行けるのではないか?と言う気持ちがあるだけに、むしろ、この作品から登場しているユリ子なんかの考え方の方に共感を覚えたりもする。

おそらく当時は、劇中に登場しているような貧しい家庭、地方からの集団就職の人たちなどが、大勢映画に夢を求めていた、あるいは現実逃避していた時代だったのだろう。

ネットなどがまだない時代だけに、気の会う仲間や趣味の集いなどになかなか巡り会う機会もなく、馴染めない地域や大人の世界の中で孤立していた若者は多かったはずである。

そうした貧しさや孤独感と日々戦っていた当時の一部の若者たちにとって、劇中のジュンは、苦しい現実に1人立ち向かっていく、目標とすべきヒロイン像だったのだろう。

このジュンのキャラクターも、やはり、後の世代の目から観ると、かなりまじめ過ぎて近づきがたいものを感じる。

もちろん、そうした重さ、まじめさ、暗さなどが悪いと言うのではない。

それはそれで、今でも興味深く観ることは出来るのだが、やはり、時代を感じるものがあると言うだけ。

キャスティング的に意外だったのは、ちらり松岡きっこが出ていること。

お色気ものとかゲテモノ映画のイメージが強いだけに、こうした文芸調の作品で観るのは珍しい気もするが、デビュー当時は「眠れる美女」(1968)など文芸作にも出ている。

ひょっとすると、この作品辺りがデビュー作だったりするのではないか?と言う気もしないでもない。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1965年、日活、早船ちよ原作、田村孟脚色、野村孝監督作品。

機関車の音に日活会社ロゴ

走る機関車の姿

(朝鮮への帰国船、朝鮮の学生の写真などを背景に)

ジュン、お別れしてから3年経ちますが、私は朝鮮で働いています。

ジュンも働いていると思いますが、私はもう18…

同じ18才として、ジュンの心の中を知りたいわ…(と言う、ジュンのかつての友人らしき声)

カメラの組立て工場で働く石黒ジュン(吉永小百合)は、前の機械に座っていたユリ子(野川由美子)が、急に具合が悪そうに身をかがめたのに気づき、大丈夫?と声をかける。

廊下に連れ出すと、保健婦さんを呼ぶわとジュンは気を使うが、保健婦?笑わせないでよ。自分で分かっているわ。妊娠よ。決まってんじゃん!とユリ子はさらっと言い放つ。

驚いたジュンはあなたいくつ?と聞くと、あんたと同じ18よ!とユリ子は答える。

タイトル

川口駅構内で、新聞の仕分けをする少年たちの姿

鋳物工場「松金鉄工所」で働くジュンの父石黒辰五郎(宮口精二)の姿などを背景にキャスト、スタッフロール

カメラ工場の更衣室

着替えていたジュンに、同僚のサヨ(笹森みち子)が、ユリ子はいつも、駅前の「プリンス」と言う店でうろうろしてるんだって。柄の悪い男たちとチョメチョメしているそうよと耳打ちしたので、汚いものを聞いたかのように顔をしかめたジュンは、よしなさいよ!チョメチョメなんて!とサヨを叱る。

すると同じく着替えていたタケ子(松岡きっこ)が、田舎から出て来て女子寮なんかにいるから遊んじゃうのよねと、秋田出身のユリ子と定時制に通っているジュンのことをバカにしたように嘲る。

ジュンは、私の名は石黒ジュンよ。定時制なんて言わないで名前を呼んで頂戴!と言い返したので、200人もいる女子工員の名前を一々覚えられないわよとタケ子は吐き捨て、そのまま帰ってしまう。

ユリ子と帰るジュンが、相手の人には話したの?と聞くと、してないわ。相手は単なる遊び人よとユリ子が笑うので、あんまりでたらめじゃない!とジュンは叱る。

すると、ユリ子は、でたらめよ!自分で自分が分からない。今回は私がちょっと失敗しちゃっただけよと自嘲するので、相手の人にちゃんと話さなければダメよと言い聞かすと、ユリ子はちょうどバス停に着いたバスに飛び乗って帰ってしまう。

定時制の高校にやって来たジュンは、食堂で夕食を取ることにする。

遅刻の届け出しといたわと声をかけて来た友達の隣に座って食べ始めたジュンだったが、吉川さんのこと聞いてる?試験落ちたそうよと後ろのテーブルから声が聞こえたので、振り向いて、友人と一緒にそちらのテーブルに移る。

話しかけて来たのは、担任の池貝先生(南風洋子)だったからだ。

吉川さん、薬剤師になろうと毎晩2時間しか寝ないで頑張っていたのにね…とジュンも気の毒がる。

でも彼女は、女子、志し立てれば揺るがなしって言ってたわと打ち明けた池貝先生は、私たちも定時制ってことで色々言われるんですとジュンが言うと、居づらかったら他の会社探してあげましょうか?と言ってくれる。

石黒家では、辰五郎が福島から出て来たと言う新人たち3人を相手に、この世界は学問なんていらない、福島でビリだって構わないなどと言いながら、酒を振る舞っていた。

新人たちは恐縮し、辰五郎のことを先生などと呼ぶが、それを辰五郎は照れたように嫌がるが、若者からおだてられるのに悪い気はしないようで、俺が30年かかった技を全部教えてやる!などと言い、上機嫌でもっと酒を持って来いなどと長男のタカユキ(松原マモル)に声をかけるが、そのタカユキは、何やら縫い物をしていたので、男が針なんか持ちやがって何やってんだ?と眉をひそめる。

陸上部のユニフォーム縫ってるんだよ。家じゃ買えねえだろ?とタカユキは答える。

新人から給金のことを聞かれた辰五郎は、4〜5年みっちりやりゃ、5万どころか6〜7万にはなり、その辺の勤め人の2倍くらいは稼げらあと自慢げに答え、このタカユキは後1年で中学を卒業し、ジュンも孝行を卒業する。

そうすりゃ、こいつも職工になるし、ジュンも鋳物職人と結婚するんだなどと辰五郎は勝手な夢を語る。

タカユキは台所に籠っていた女房のトミ(北林谷栄)に酒ないんだろう?と言いに行き、俺が買って来るよと言うと、弟と一緒に外に出る。

タカユキはうさぎ跳びをしながら酒屋に向かうが、金あるのかい?と案ずる弟に、どうせこの時間に言っても店閉まっているから大丈夫だ。父ちゃんには閉まっていたと言えば良いんだなどと言いながら酒屋に来るが、まだ開いていたので、弟はどうするのさ?と心配するが、タカユキは平然と、閉まるまで待つんだよなどと言い、ちょうど店じまいを始めた酒屋の前で弟と時間を潰し始める。

泥酔した辰五郎と新人3人は、家を出て外に飲みに出かけるが、ちょうどそこに定時制高校から帰って来たジュンは、1人の新人が悪酔いして吐いているのを見つけ、背中を擦って、側の蛇口から水を出し頭を冷やしてやる。

酔った新人は帰って行くが、家に入ったジュンに、自分で作ったユニフォームを着たタカユキは、鋳物職人と結婚するって本当?と聞く。

噓よ、私、職人なんて嫌い!とジュンは怒る。

タカユキはトミに、俺の貯金どのくらい貯まってる?と聞くが、弟たち寝かしつけていたトミが返事をしないので、貯金通帳出してよ!とせがみ始める。

トミは面倒くさそうに、何もお前に高校に行くななど言ってないだろと言い返すが、ジュンが突然、私、大学行くよ!と言い出したので、トミは驚く。

まさか使っちゃったんじゃないだろうな?となおもしつこくタカユキが責めるので、5000円だけ残ってるよ。必要なものに使っただけで、母ちゃん自分の為に10円だって使ってないよ。この5000円取っとくのにどれだけ苦労したかなどとトミは言い訳しながら通帳を出してみせる。

こんなの嫌だ!と通帳の金額を確かめたタカユキが怒っていると、塚本克巳(浜田光夫)が訪ねて来る。

今日はびっくりするような話を持って来たんだと笑顔で話し始めた克巳は、新しい仕事を考えたんだ。4〜5人の仲まで工場借りて、儲けは全員平等に分けるんだと言う。

それを聞いたタカユキは、それって会友って言うんだろ?と言うと、克巳は、みんな平等なんだ。働けば働くほど儲かるし、首になることもない。工場の支度金を出して明日から始めるんだ!と嬉しそうに語る。

さらに、禁酒もしたと言うので、ジュンは、見直したわ、カッチャンのことと褒めると、克巳はトミに、雑益の手伝いをしてくれないか?日給700円くらい出せるんだけどと頼む。

そこに酔った辰五郎が帰って来て、親方になるんだって?といきなり絡みだす。

克巳、おめえ、半年前まで組合、組合って騒いでいたくせに!今いくつだ?と辰五郎が聞くので、24だよと克巳が答えると、その計画、10年伸ばせ。人の評判があるなどと言うので、呆れた克巳は、じゅん、俺は成功させるぜ!仲間がいるからと言い残し帰って行く。

その夜、ジュンは1人起きて、定時制に入った理由:経済的、両親ともいる。職業:工員、収入15000円…などと学校でもらったアンケート用紙に答えを描いていたが、「将来の希望」と言う問いに対しては何も書けなくなってしまう。

その時、先に休んでいたと思っていたトミが起きて来て、流しの下にヨーグルト1本あるから、食べなよ。お前の為に買っておいたんだよ。カッチャンの話だけど、明日からでも行こうかと思う。父ちゃん怒るだろうけど…、大学の試験、本当に受けるの?母ちゃん、大学なんて考えたこともなかった。行きなよ。受けてみるさ。母ちゃんも賛成だよ。張り合いが出来たよなどと励まし、隣の部屋に戻る。

ジュンは嬉しくなり、「将来の希望」大学進学と書き込む。

川縁にある中学校の校庭では、夕べ、自分で作ったユニフォームを着たタカユキが、3年生が抜けて、自分が陸上部のキャプテンになった挨拶を部員たちを前に始めていた。

しかし、巧く話せなかったので、勢いで、駅前までぶっ飛ばすぞ!と言うことになる。

全員で川口駅前まで走って来た時、道を塞ぐ学生たちがいた。

鍋中の連中だった。

頭に来たタカユキは、相手の1人の学生帽を奪い取ると、欲しかったら取ってみろ!と笑いながら、部員たち全員で走って逃げ出す。

追って来る相手を振り切ったと気づいたタカユキは、部員たちを先に返し、自分は寄る所があるからと別れる。

その後、タカユキがやって来たのは、「五同鉄工」と書かれた克巳の始めた工場だった。

母親のトミも奥で働いていたので、側に近寄ると、メシ俺が作って弟たちに食べさせとくよ。コロッケで良いだろう?と声をかける。

トミは、キャベツなんか付けなくて良いよ、高いんだからなどと答える。

カメラ工場では、5時半の終業時間になり、婦人会の睦美会に入って下さいと言うアナウンスが流れていた。

サヨはジュンに、みんな入ったらしいよと話して来るが、そこに顔を出した竹下(糸賀靖雄)も、事務の方に移動する時有利らしいよなどと教える。

その後、更衣室で着替えをしていたジュンは、2000円貸して、この間の遊びの始末を付けるのと頼んで来る。

ジュンは訳を知っているだけに、黙って金を渡すが、同じように1000円貸してと頼まれたサヨは、嫌よ、始末なんて…と言って断る。

ジュンはユリ子に、病院行ったらまじめにしなきゃダメよと諭すが、ユリ子は、照れ隠しのつもりか、ジュンのおっぱい大きいねなどとからかって去って行く。

その後、ジュンは、中学時代の級友で、今は普通科の高校に行っているノン子(西尾三枝子)とばったり出会う。

ノン子は国立大を落ちたと言い、かつての同級生仲間のリスの事が心配なので、9時半に駅前で待ってると言う。

その夜、待ち合わせて、ジュークボックスから音楽が流れ、若者たちが踊っている店にやって来たジュンとノン子は、明らかに睡眠薬を飲んでいるらしく様子がおかしいリス(浜川智子)と再会する。

ジュンは、ボックス席に座って来て、自分のことも忘れていたリスに、今どんな風に生活しているのか朝から教えてと頼む。

すると、昼近くに起きると、親たちはもう出かけていて誰もいないので、そのまま池袋のボーリング場に行く。

お金を持っていそうな男の子とつるんで、お金ないときは、茶店で時間を過ごす…、次の日も同じなどと答えたので、テーブルの上のコップを払ったジュンは、最低じゃない!こんな生活と叱りつける。

すると、近くにいたチンピラ風の梅郎(根岸一正)がジュンのことを面白がりテーブルに近寄ると、学校どこだい?この店じゃあんまり騒がない方が良い。みんな身内なんだから…と、からかうように脅して来る。

その時、店の中で男といたユリ子がジュンに気づき、止しなよ、梅ちゃん!と梅郎に注意しながら近づいて来る。

ジュンは、その男から借りたからと言い2000円をジュンに返すが、梅郎はユリ子のヤクザ風の彼氏には頭が当たらないようでぺこぺこする。

ユリ子はジュンに、貯金して大学行くような子が来るような所じゃないよと注意すると、脇で聞いていたリスが、バカバカしいよ、高校が面白って言うんだったら教えて欲しい。ちゃんと答えてくれたら行っても良い。ノン子!あんたなんかお嬢さんじゃない!ジュン、あんたは貧乏だから頑張って大学行くんだろうけど、何が面白くってやってるの?そんなことやったって巧く行きっこないのよ!などとかつての級友たちをバカにして来る。

それを聞いていたユリ子は、じゃあ、私のことも説明してくれない?と絡むと、あんたなんか秋田から出て来たんじゃ…と悪口を言い始めたので、ユリ子はビンタする。

店を出たノン子は、ユリ子とジュンに私の所に来ない?と誘うが、ユリ子はこれから堕しに行くのと言い出したので、事情を知らないノン子は驚き、一緒に付いて行こうとするが、ユリ子は1人で去って行く。

ジュンも帰ると言いだしたので、高校生の集いに出てみない?色々な高校生が集まって悩み事などを話し合うの…とノン子は誘うが、急がしいいから無理ねとジュンは断る。

その夜、トミが、克巳が運転するオート三輪に乗って帰って来たので、ジュンやタカユキたちはびっくりする。

克巳は、月賦で買ったんだと嬉しそうに教える。

トミは、先に帰っていた辰五郎に買って来た酒を差し出すと、今日は給料日だったからと良い、子供たちには団子を渡す。

そして、かっちゃんはみんなに平等に分けるんだから偉いよねと感心してみせると、黙って聞いていた辰五郎は急に不機嫌になり、あいつに色気出しているのか!などと嫌味を言って来る。

翌日、辰五郎は工場主の松金(殿山泰司)から、あんたが作った品物、4つに1つがオシャカだったぜと文句を言って来たので、むしゃくしゃした辰五郎は、新人の1人を突き飛ばし火傷を負わせる。

しかも、新人の仲間が唖然とする中、辰五郎は、鋳物師にやけどなんて当たり前だ!と怒鳴りまくる荒れようだった。

中学で授業を受けていたタカユキは、窓から外を観ると、校庭のジャングルジムに登っている鍋中の学生の姿を見つける。

下校時、土手で待ち伏せしていた鍋中の3人組は、アイ子(岡田可愛)らと帰っていたタカユキにこの前の帽子を返せよと立ちふさがる。

アイ子が、みんな来てよ!と声を上げ、金中の仲間が集まって来ると、慌てて鍋中の三人は逃げて行く。

雨の中、サヨの傘に入れてもらって帰っていたジュンは、竹下が傘に入って来て、人事課に友達がいるけど、睦美会に入っていないような子は事務への試験を受けさせないそうで、感じの良い子は事務に回すって言うんだよと教えられたので考え込む。

サヨは、やっぱり睦美会に入っておいた方が有利かしら?と迷うが、睦美会に入ると男女交際とか色々うるさいことを言われると言うを聞いていたジュンは、考えるわと答える。

これから一緒に遊びに行かないか?今日は土曜日なのに学校に行くのか?と竹下が聞くので、じゃあ、学校休む!と答えたジュンだったが、そこへ声をかけて来たのはオート三輪に乗った克巳だった。

これ幸いと、傘を持ってなかったジュンは助手席に乗せてもらい学校へ向かうことにする。

仕事中でしょう?と気遣うと、たまには息抜きもしないと克巳は笑い、髪が匂ってる。濡れた髪の匂いがする髪を拭いていたジュンに言い、5分くらい寄り道しても良いだろう?と言うと、とある店に寄り、戻って来ると、今買って来たらしい小さな包みをジュンにプレゼントと言いながら渡す。

戸惑いながら受け取ったジュンに、俺の考え方、間違っていなかった。俺の仲間たちも鋳物工場で組合作ろうとしてダメだった連中ばかりなんだ。と、仕事が順調に行っていることを打ち明ける。

でも、仕事が増えたら、平等って訳にはいかなくなるんでしょう?かっちゃん、社長みたいな人になるの?とジュンは心配する。

ジュンは昔から、鋳物職人嫌いだって言ってたな?と克巳が聞いて来たので、平等なのなら、一緒に働きたいな…とジュンは答える。

俺、段々経営の方に興味出て来たから、給料の良い会社を作っても良いかなと思ってるんだ。そう言う経営者になったらどうする?と克巳が聞くと、ジュンは、分からないわ…と考え込む。

学校に着いたのでオート三輪を止めた克巳は、そのプレゼント開けてみろよと勧め、中に入っていたネックレスをジュンの首に付けてやる。

ジュンは気まずそうに、5分おくれちゃったと言い、車を降りると、既に授業が始まっていた教室の前まで来るが、慌ててネックレスを外して中へと入る。

「松金鉄工所」では、松金が辰五郎に、新人たちがこの前のことで辞めると言っている。

この子たちは俺は福島の職安から探して来た子なんだ。詫びてくれよと迫る。

火傷をさせられた新人たちは、さすがに辰五郎の理不尽さに付いて行けなくなっており、心を閉ざしてしまったようだった。

雨の夜、ジュンに牛乳の空き瓶ない?と聞いて来るタカユキ。

辰五郎は、部屋の真ん中でふてくされたように大の字に寝そべっていた。

ジュンは弟たちを寝かす準備をしようと、父親をどかそうとするが、辰五郎は、触るな!暴れるぞ!と怒鳴りつける。

そこに務めを負えたトミが帰って来て、残業の夜食用にかっちゃんが用意してくれたんだよと言いながら、折り詰めの寿司を2つ子供たちに食べさせようとする。

タカユキは、手に火薬が着いてるから食わせてくれと弟にねだり、寿司をを口に入れさせる。

辰五郎にも寿司を手渡そうとしたトミだったが、辰五郎が手で払いのけたので、にぎり寿司が畳の落ちてしまう。

トミがそれを拾い上げようとすると、トミ!おめえ、克巳のもんなら、地べた落ちたものでも食えるのか!若いもんに好き放題させる為に、色目使いやがって!などと辰五郎が根が柄罵倒したので、堪忍袋の緒が切れたジュンは、父親に馬乗りになって顔を殴り、不潔だよ!父ちゃん!母ちゃんに謝りなよ!と叫ぶ。

辰五郎も起き上がり、良くも親をぶちやがったな!と言いながら、ジュンともみ合いの喧嘩になる。

その時、台所から爆発音が聞こえ、一発損しちゃったよと煙の中からタカユキが顔をのぞかせる。

ジュンは泣き出し、ふてくされた辰五郎は家を飛び出して行く。

傘をさして出かけて行く辰五郎の後を追って外に出たジュンは、雨に濡れるのも構わず、父ちゃん、どこへ行くの?かっちゃんのとこへ行くの?と呼びかける。

酒飲みに行くんだ!と辰五郎が立ち止まって答え、そんな所に突っ立てると濡れるぞ!と叱る。

そんな辰五郎に近寄ったジュンは、これで飲んで来てと言いながら金を手渡し、私もお酒飲みたい!と呟く。

一緒に行くか?と誘った辰五郎だったが、ジュンが黙っているので、俺は行くぜ!と言うと、あらよっと!と戯け、傘を人力車の車輪のように横に回しながら出かけて行く。

それを見送っていたジュンの背後から近づいて来たのがノン子で、明日、高校生の集いに行かない?と又誘うので、うん、私行く!とジュンは答える。

翌日、まずは集まった高校生男女全員で手を取り合って、「走れトロイカ」を歌って親睦を深めた後、教室内で、「第8回県南高校生の集い」のミーティングが、テーマごとに分けた「分科会」と称するグループごとに始まる。

全日制の高校に通う女学生は、小学校時代の友達が、定時制の高校に入った途端、口も聞いてくれなくなったとか、どうして学校に行くのか?とか、日々悩んでいる素朴な悩みをめいめいが発言して行く。

その間、ジュンは何も発言出来ないままだった。

どんな風に話せば良いのか分からないのよとノン子に打ち明けたジュンは、みんながフォークダンスを始めた時間には、椅子に座って観ているだけとなる。

何となく場に馴染めないまま水飲み場に向かったジュンだったが、その時、集いの会場はどこですか?と聞いて来たものがいた。

観ると、朝鮮高校の男女たちだった。

ジュンは、少し安堵したような表情になり道順を教える。

まず、朝鮮学校の女子、私の父は中島飛行場建設のため徴用で連れて来られたそうですが、30年間働かされているうちに母とは生き別れになったそうですと他の高校生の前で堂々と発言する。

続いて、朝鮮学校男子学生が、自分は母親が日本人です!母は仏教の信者です。朝鮮に帰った父の事を思い出すと、生きているうちに一度くらい顔を見せて欲しいと言いますと発言する。

そんな朝鮮高校の発言を、帰りの電車に乗っていたジュンは思い出していた。

川口駅に降りたジュンに、先ほどの朝鮮高校の男子崔一郎(麦人)が声をかけて来る。

金山ヨシエの従兄弟なのだと自己紹介した崔は、ヨシエのお母さんのいる所を知りませんか?と聞いて来る。

ジュンは首を傾げるが、タカユキが三吉の友達だったから知っているかも知れませんと答えると、父が倒れたんです。癌かも知れません。お母さんに朝鮮に行くように勧めたいのですと崔は言う。

ジュンは、まじめそうな崔に好感を持ち、私、さっきまで頭痛かったんだけど、今直りましたと微笑む。

それは、僕たちの悩みの方が苦しみが大きいからでしょうと笑って別れる。

タカユキは、仲間たちと共に、草むらに隠れ、今から対決する鍋中との戦い方について検討していた。

すると、そこにカオリたち女子が3人近づいて来たので、タカユキは女が来る所じゃないと追い返そうとするが、カオリたちも、観ているだけなら言いでしょう?と言い返し、頑固にその場を立ち去ろうとはしなかった。

タカユキは、指定された廃屋の前に姿を現すと、中に潜んでいた鍋中の奴に出て来い!と声をかける。

すると、中から出て来た相手があざ笑い、気がつくと、タカユキは鍋中の連中に囲まれていることに気づく。

それに気づいた香が、みんな出て来てよ!と声を挙げると、草原に身を潜めていた金中の仲間が一斉にタカユキを助けに駆けつける。

両校の喧嘩が始まるが、タカユキが用意していた爆弾が爆発すると、鍋中の連中は全員逃げ出してしまう。

タカユキは、ざまあみろ!と勝利宣言する。

辰五郎は、新人の肩を持った松金に、雑益の半端職人の肩を持つのか?俺とお前は18の時から一緒だったじゃないか!俺の顔を潰しといて!義理人情が分からないのなら辞めさせてもらうよと文句を言っていた。

すると松金は止めようともせず、おめえもガタが来てるからな…、来月から、俺の所も機械を入れて、機械込めにするんだと明かす。

それを聞いた辰五郎は唖然とし、もう川口には職人はいらなくなったと言うんだな!と逆上し、自分が使って来た砂型をその場でたたき壊し始める。

その後、辰五郎はいつものようにやけ酒を飲みふらつきながら商店街を歩いて帰る。

その途中、「五同鉄工」の前に来ると、じっと中で働いている克巳の仲間やトミの姿を見つめる。

その時、克巳の乗ったオート三輪が帰って来たので、辰五郎は思わず物陰に身を隠す。

克巳は仲間たちに、松山機械の小切手を銀行が割ってくれなかったと暗い顔で報告する。

その頃、ジュンが帰っていた自宅では、家庭訪問して来た中学の野田先生(新田昌玄)が、金町中の教育が間違っていると言われても良いのかと説得し、左足を負傷していたタカユキから鍋中との喧嘩の参加者のことについて聞いていた。

だが、タカユキは、仲間の名前を絶対口に出そうとしなかったので、後で私から聞いておきますとジュンが詫び、野田先生は、タカユキ!お前、ビッ○引いても学校へは来いよなと言い残して帰って行く。

それでもタカユキは、例え姉ちゃんから聞かれたって口を割らないぜと抵抗すると、ジュンは首を振り、姉ちゃん、隠す仲間がいるあんたに感心しているのと笑顔を見せる。

姉ちゃんには仲間がいないのかい?とタカユキが不思議そうに聞くと、慌てたように、ジュンは、いるわ!いるわよ!と答える。

翌日、工場内でジュンは、手を振って近づいて来たユリ子と再会する。

さっぱりしちゃったと明るく微笑むユリ子は、本当は田舎に帰っていたと言うことになっているからと口裏を合わせるようにジュンに頼む。

同じくジュンに近づいて来たサヨは、睦美会に入ったわ。すーっとしたわと言う。睦会の方では、あんたがたのこと随分マークされてるわと言う。

その夜、定時制の池貝先生もジュンに会うと、昨日、朝鮮高校の男の子と話をしてたでしょう?気をつけた方が良いわよと忠告して来る。

高校生の集いに行ったんですとジュンが正直に答えると、大学を出るまでの後4年間、みっちり勉強するのよと池貝先生が言うので、その間も、私、生きているんです!と思わずジュンは言い返してしまう。

自宅では、新人たちが辰五郎に工場に戻るように説得に来ていた。

しかし、へそを曲げてしまった辰五郎は、どうせお前たち、松金から頼まれて来たんだろう?金をもらったのか?などと抵抗する。

それに対し、いけないんですか?と反論した新人たちは、松金の親方も、先生の身体も身体だからと心配してるんですと説明するが、その言葉が返って辰五郎を頑にし、松金に、俺がこう言ってたって言っとけ!と言いながら新人たちを殴り始める。

さすがに、新人たちも怒りだし、キ○ガイ!と辰五郎を罵るが、それをジュンが止めに来る。

新人たちが逃げ帰ると、辰五郎はまたジュンに、金くれよ、この間はくれたじゃないかと言って来たので、甘ったれるな!とジュンは叱りつける。

その時、ヨシエのお母さんの居所が分かった!とやって来たのは崔だった。

すると、辰五郎が、何で朝鮮がジュンの所に来るんだ?と因縁をつけ始める。

この人は優秀な人よ!とジュンが弁護すると、ジュン!お前、いつから朝鮮におべっか使うようになったんだ!と辰五郎は怒りだす。

それでもジュンは、私、ヨシエのお母さんの所へ行ってくるわと崔と共に出かけようとしたので、逆上した辰五郎は、もう帰って来るな!帰って来ても家に入れないぞ!と怒鳴って来る。

朝鮮に行ったヨシエの母、金山美代(菅井きん)は、旅館で働いていた。

久々に再会したジュンは、ヨシエからは手紙が来るわと教える。

崔も、帰国の船に乗って朝鮮に行って下さいと頼む。

すると、美代は、私も疲れたし…と今の生活に満足してない様子だったが、その時、旅館の中から美代を呼ぶ声がしたので戻って行ってしまう。

ジュンは、今年から自由往来が出来るようになったって言ったらどうかしら?と提案するが、嘘は言えない。僕も本当はすぐに帰りたいけれど、正しい民族教育を受けていない同胞が10万人もいる。その人たちの為に初級教育車になろうと思っているんだと崔は打ち明ける。

それを聞いたジュンは、私も養護施設で働こうと思っているんだけど、もっと他に私のすることがあるんじゃないかって…、私にしか出来ないことがあるんじゃないかと思って…と迷っていることを打ち明ける。

すると、又、美代が旅館から出て来たので、おばさん、今、幸せ?とジュンは聞いてみる。

すると美代は、ジュンちゃん、あんたなら帰るかい?あんた、日本人なのよ!と聞いて来る。

その時、又、旅館の中から美代を呼ぶ声が聞こえて来たので、ジュンは持って来たヨシエからの手紙を渡して帰ることにする。

崔と一緒に商店街を帰っていると、梅郎たちチンピラが目ざとくジュンを見つけ、今日は男と一緒か?と絡んで来る。

そして、崔が朝鮮高校だと気づくと、3000円で、ボタンとバッジを譲らないか?それを持ってると、人が頭を下げて来るんだなどと言って来る。

崔が断ると、梅郎たちはいきなり崔を殴って来る。

無抵抗の崔は鼻血を出し、それに気づいたジュンは、梅郎たちを突き飛ばして崔を連れ、懸命に逃げる。

何とか巻いたので、途中で崔は別れて帰る。

自宅に帰って来たジュンは、戸に鍵がかかっており入れないことに気づく。

中に呼びかけると、辰五郎の、ふしだらの子は、朝鮮○落へでも行ってしまえ!などと罵倒が聞こえて来る。

トミも、母ちゃんだって、夜遅く男と出かけるようなことは嫌いだよ。父ちゃんに謝りな!と言うではないか。

しかし、タカユキだけは、父ちゃんが会社辞めた今、この家で働いているの、姉ちゃんだけなんだぜ!かっちゃんの会社も、不渡り出して会社パーになったんだ。俺は家の為なんかに絶対働かないからな!と言うではないか。

玄関先で愕然とするジュンは、家の中から聞こえて来た親子喧嘩の声を黙って聞くしかなかった。

ようやく、トミが戸の鍵を外し、ジュンは中に入れるが、待ち構えていた辰五郎がいきなりビンタして来る。

それを観たタカユキは、姉ちゃん、黙ってることないぜ!と応援して来るが、ジュンはその日、何も抵抗もしないままだった。

翌日、運動場にいたタカユキは、鍋中の学生が一人近づいて来たことに気づき、自分も近寄って行く。

相手が、先公にしゃべったかよ?と聞いて来たので、しゃべってねえよとタカユキが答えると、相手も、俺もちくってねえぜと笑い、互いに握手し合う。

カメラ工場では、ジュンとユリ子が人事課長から呼ばれ、工場に不満はないかと聞かれていた。

色々噂が聞こえて来てね…、政治団体と関係があるんじゃないかとか、異性関係に問題があるんじゃいかなんてねと課長が弁解がましく言うので、ジュンは、根も葉もないことです!ときっぱり否定する。

ユリ子の方は、私、面倒くさくなって来ちゃったな…と呟く。

その時、部屋の電話がかかり、課長が出ると、ジュンへの電話だと言う。

ジュンがその場で受話器を受け取ると、電話の相手は崔で、電話の内容を聞いたジュンは良かったわね!行くわ!行きます!と崔に伝える。

美代が朝鮮に渡る決心をしたと言うのだった。

川口駅前では、以前のように、朝鮮人たちが集まり、帰国する人たちへ祖国の歌を歌い見送りをしていた。

美代に会いに来たジュンは、おばさん、良く決心したわね!と褒め、ヨシエも三吉も喜ぶと思うわと言うと、ジュンちゃんに会って決めたんだよと答えた美代に、偉いわ、二度と帰って来れないかもしれないのに…と感心する。

しかし、美代は、今だってこのまま逃げてしまいたい気持ちなんだ。色々嫌な目に遭ったって、やっぱり日本で住んでいたいしねと美代は弱音を見せる。

ジュンちゃんだけは覚えていてね!私は日本に住みたかったって!私が日本人だってことを!と訴え、感極まった美代は泣き出すが、駅の中から崔が呼びに来たので、後ろ髪を引かれるような顔つきで駅に入って行く。

ジュンも改札口の所まで行って、おばさん、又会えるわよ、きっと!と声をかけ、去って行く美代を見送る。

しかし、1人駅から帰るジュンの表情は暗かった。

外套の明かりの下で何事かを考え込むジュン。

「五同鉄工」の工場の前にやって来たジュンは、工場内で、克巳が仲間たちに殴られているのを見つける。

仲間たちは、会社がダメになった途端、責任を全部克巳1人に押し付けたいらしく、借金はてめえ1人で背負うんだぞ!人を騙しやがって!と罵って痛めつけていた。

ジュンが止めて!と止めに入ると、仲間たちは、こんなイカサマ野郎に惚れてる女もいるのかね〜と嘲って来る。

克巳は、みんなの為だと思って…と言い訳しようとするが、ふざけやがって!と足蹴にした仲間たちはさっさと帰ってしまう。

信じてくれよ!と絶叫する克巳だったが、工場に残っているのはジュンだけだった。

ジュンは、もう何の役にも立たなくなった製品が積んである中に倒れている克巳と、その横に捨てられていた「五同鉄工」の看板をただ黙って見つけるしかなかった。

かっちゃん、しっかりして!とようやく声をかけたジュンだったが、放っといてくれよ!何だか自分の身体じゃねえような気がする…。金と仲間をなくしたからじゃねえ…、もっと大切なものを…、放っといてくれよ!と克巳は言いながら立ち上がった克巳は、俺は女を買いに行くよなどと言い出す。

そんなこと言うもんじゃないわ!とジュンが叱ると、正直に言ったんだぞと克巳が答えるので、私だって女だからよ…とジュンは呟く。

そうか…、ジュンも女だったのか…、髪の毛が女の匂いしてた時あったな…などと言いながら、克巳がジュンに近づいて来たので、ジュンが、バカ!と言って、突き飛ばすと、分かったよ…、出て行ってやるよ、こんな川口なんて…と克巳は捨て鉢になって出て行こうとする。

行かないで!この川口から。どうして出て行っちゃいけないかと言うと、私がいるからよ!ここで生きようとしているからよ!ただかっちゃんのことが好きだからじゃない。かっちゃんにいて欲しいのよ。自分が住んでいる所から逃げることが間違っているって分かって来たの!と切々とジュンは訴える。

そして、ここに貯金があるわ。3年かかって毎月4000円ずつ歯を食いしばって貯めて来たの。私、大学に行くつもりだったの…。違う仕事に就いて、父ちゃんと母ちゃんと離れて暮らすつもりだったの…とジュンは言い、通帳を取り出す。

使えねえよと克巳は拒否するが、かっちゃんに使って欲しいの!とジュンが迫ると、その額を確認した克巳は、14万4000円!と驚き、ジュン、大学行けなくなっても良いのかよ?と確認し、ありがとう、もらっとくよ!と礼を言う。

1人で考えて、1人で残るって決めてくれれば…とジュンは言い残し帰ることにする。

翌日、工場の芝生に寝そべっていたジュンの元に、私服を来たユリ子と、事務服を来たサヨが近づいて来る。

ユリ子は、私、こんな服着れたのよ。色々悪口言われたから…とサヨの方を観る。

結局、私1人が残ったのね…と、立ち上がって2人の間に入ったジュンは呟く。

大学行くんでしょう?とサヨが聞くと、止めた!ずっとここにいることに決めたのとジュンは答える。

喧嘩したり、腹を立てることになるわよとユリ子が忠告すると、その時は、ちゃんと喧嘩したり、腹を立てるようにするわと答えたジュンだったが、仕事が始まると、何か考え事に耽ってしまい、ベルトコンベア上のカメラが貯まって来たので、他の女子工員から声をかけられる。

その後、定時制高校の池貝先生に、川口に残ってここで働くことにしたので、学校も辞めるし、大学進学を諦めたと伝えに行ったジュンに、先生は惜しいわ。夜の仕事を探すのねと聞いて来る。

私、機械に使われるようなことにはなりませんとジュンは答える。

その時、音楽室から、コーラス部の女子たちが外国語で歌う「仰げば尊し」が聞こえて来る。

私も卒業したような気持ちがします。資格は取れないけど、勉強したいことは全部したような気がします。生成、さようなら!とジュンは告げて学校を去って行く。

登校する女学生の群れに1人逆らうように校門を出たジュン

ヨシエ、私18よ!

18って、もう荷物を背負って生きていける年だと思う。

働いている仕事の中でも勉強はできると思うわ!さようなら!

画面に向かって近づいて来るジュンの顔のアップ


 

 

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