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忍術戸隠八剣士

戦前、数多くのB級時代劇を作っていたらしい極東キネマの忍術映画。

今残っているこの時代の映画のスチールには、侍とロボットが一緒に写っていたり、「怪傑ライオン丸」に登場するタイガージョーに瓜二つのキャラが写っていたりと、好奇心をかき立てて止まない奇想天外な作品がたくさんあったようなのだが、何せ現存しているフィルム自体が少なく、ほとんど観る機会がなかったのだが、今回、その一部らしき作品を目に出来ただけでも嬉しかった。

内容はと言えば、初歩的なキャメラトリックを使ったたあい無い忍術ヒーローファンタジーなのだが、どことなく懐かしさを感じたりする。

その理由は、そこで描かれている世界観が、TV初期の頃の子供向け時代劇そっくりであること。

又、その後の、東映変身ヒーローもの、特に、戦隊ものの原点のように見えるためだと思う。

TV初期の頃の子供番組「怪傑鷹の羽」(1960)とか「変幻三日月丸」(1959)「竜巻小天狗」(1960)に登場する忍術と言うのは、ここで描かれているのとほとんど同じ、印を結ぶと、侍たちが逆回転で動いたり、姿が消えたり、突如炎がオーバーラップされたり…と言った、初歩的なキャメラトリックを使ったものだった。

又、忍術使いが印を結ぶと、煙玉が爆発し姿が消えるなどと言う手法は、後の変身ヒーローもので、ヒーローにやられた怪人が爆発して消滅したりするシーンの元ネタだろう。

複数ヒーローの中に、ちょっととぼけたキャラが混じっているお約束もこの当時からあるのに驚かされる。

今観ると、完全に子供向けのように見えるのだが、登場人物の中には実在した人物名なども混ざっており、当時はこの手の映画を無邪気に楽しむ大人もいたのかも知れない。

この手の忍術映画は、あんまりヒーローが何でも出来る魔法使いであり過ぎるため、ヒーローがピンチに陥ると言ったサスペンスが生まれ難いのが難と言えば難だろう。

ヒーローが無敵過ぎるため、剣劇の迫力も生まれない。

何しろ、敵の大軍を一瞬にして消してしまえるのだから、最初から勝負にならないのだ。

それでも、当時は、人間が消えたりするだけで楽しかったんだろうと想像する。

今のVFXで描く「剣と魔法」映画の走りのようなものだからだ。

ちなみに、主役、大島新六郎の最後の忍び装束姿は、全身鎖帷子風でやけにかっこいい。

顔も目張りを入れた目元涼しく、きりっとしたイケメンで、当時人気が出たのも分かる気がする。

サウンド版なので一応音は入っているのだが、役者がセリフを言っているのではなく、字幕の説明文が出た上に、語り(ナレーション)が声で弁士風に説明し、チャンバラシーンなどになると、三味線などの鳴りものが入ってにぎやかに演奏すると言う形になっている。

娯楽が少なく、動く映像自体が物珍しかった時代だけに、当時としては、これはこれでさぞかし楽しかったに違いない。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1937年、極東キネマ、板間清彦原作、板間清彦脚本、山口哲平監督作品。

日の丸の旗がひらめき、極東キネマの会社ロゴ

スタッフロール

「劇を織る人」の文字の後キャストロール

信州の山奥

その頂に立つ1人の白髪白ヒゲの仙人風の男、戸隠老人

その戸隠老人、山道を登って来る1人の旅人を発見、江戸からの使者と見抜く。

旅人が川で水を飲んでいると、その背後に突如出現した戸隠老人は、ご苦労とねぎらいの言葉をかける。

しかし旅人は、自分はそのようなものでは…と否定するが、隠さずとも良い。彦左老よりの手紙を持って来ておるであろうと戸隠老人が指摘すると納得し、もって来た書状を手渡す。

その中味をその場で確認した戸隠老人は、大体察していた通りの内容なので、既に大久保邸にわしの使者が着いておる頃じゃわいと使者に伝える。

左頬に刀傷が残る大久保彦左衛門は、戸隠老人が送った使者大島新六郎(雲井竜之介)と座敷内で対面していた。

しかし、突然立上がった大久保彦左衛門、突然、鴨居の槍掛けの槍を取ると、この偽り者め!わしが騙されると思っているか!と言うなり、槍を新六郎目がけ突き出して来る。

すると、新六郎の姿が突如消えてしまったので、彦左衛門がきょろきょろしていると槍が動かなくなる。

背後に出現した新六郎が彦左衛門の槍の後ろを握って笑っていた。

そこへ下男が来て座敷内を見ながらげらげら笑い出す。

何事かと彦左衛門が振り向くと、今まで自分が座っていた上座に新六郎が座って笑っているではないか。

その新六郎を槍で突こうとすると、突如、新六郎の姿は下男とすり替わってしまう。

すっかり新六郎の好き勝手に遊ばれてしまった彦左衛門は、御主の腕試しをやったのだと負け惜しみを言いながら、へとへとになっていた。

その彦左衛門の様子を廊下から覗いた本物の下男は、また笑い出す。

額に何か付いていますと言う。

彦左衛門が額に手を当てると、小さな三角巾のようなものが貼り付いていたので忌々しそうにむしり取り、何とか場を繕って、肝心の用件を新六郎に話し始める。

豊臣再興を願う山形の最上出羽守に仕えし福島正則が、江戸屋敷にいる出羽守と通じ幕府転覆を画策しているので、そちらの力で出羽守を懲らしめてやれよと言うのだ。

粉骨砕身、ご奉公申し上げますと大島新六郎は答える。

江戸城に大島新六郎を呼んだ将軍徳川吉宗は、仔細は大久保彦左衛門から聞いた。今後、柳生七剣士を加え、戸隠八剣士と呼べば良かろうと声をかける。

その後、最上出羽守は幕府方の目をくらますため、日夜遊興に耽り始める。

遊郭に出かけた最上出羽守は、お気に入りの花魁、浦里はまだか?と女将に催促する。

女将から、言うことを聞けば栄耀栄華思いのままじゃないかと説得された浦里(五十鈴桂子)だったが、いくら大名からの誘いとは言え、自分には夫がおりますので嫌ですと頑に座敷に出るのを拒む。

この事を知った八剣士の1人春日時次郎は大島新六郎に、実はこの浦里は自分が以前知っている女だと打ち明ける。

(回想)町娘だった浦里は、ある日、外で悪侍3人に襲われ、悪戯されようとしていた。

それを観たのが時次郎で、逃げて来る浦里を追って来る暴漢たちに礫を投げつけ、この恥知らずめ!とつかみ掛かると、乱闘の末、2人を川に放り込み、1人は逃げて行く。

浦里は助けてもらった礼を言うが、これが縁になり、時次郎の家の使い女になる。

しかし、その後、日光廟建立の資金200金のため、身を苦界に沈めたのだと言う。

(回想明け)その話を聞いた新六郎は、出羽守に近づく絶好の機会、その女に隠密役を買ってもらえまいか?と時次郎に相談する。

時次郎は、一刀、本人の以降を聞いてみましょうと返事をし、その後、浦里に会って事情を打ち明ける。

何ごともご奉公と思って承知してくれまいか?と時次郎から言われた浦里は、分かりました、あなた様のためなら、例え地獄へでも参りますと答える。

それを聞いた時次郎は、では出羽守と一緒に山形に行ってくれるか!戸隠流の名にかけて礼を言うと、二人して互いの心情を察し合い、涙するのだった。

山形へ!

最上出羽守の大名行列が向かう。

それを追って山形に向かう八剣士たち。

その時、彼らの行く道の前方に、突如一通の書状が出現する。

それを拾って拡げた新六郎は、先生からだ。何か異変があるらしいと仲間たちに伝え、春日時次郎と共に江戸へ飛ぶことにする。

2人は身体を組み、道ばたでジャンプすると姿を消してしまう。

それを観ていた八剣士の中の老人忠助が、忍術にまだ不慣れなため、同じように消えようとジャンプしてみるが、一向に姿は消えなかった。

福島正則の秘命により、明日午の下刻隅田川に将軍家光一行が通過するとの情報が入り、江戸の一味は街道上に爆薬をしかけ、暗殺を企てていた。

翌日、情報通り、行列が近づいて来たので、紐を引いて爆薬を爆破。

行列は大混乱となるが、上様は無事だ!駕篭の中は身替わりじゃ!とのお供のものたちの声を聞いたくせ者は、計画失敗を悟り、川に飛び込んで逃走する。

下流で、小舟に乗って待っていた覆面姿の仲間たちと合流したくせ者だったが、首尾は?と聞かれ、失敗だ。又の日まで姿を消そうと伝える。

その時、近くに出現したのが、大鳥新六郎と春日時次郎で、天誅だ!と言いながら、賊たちの一味に近づく。

時次郎が雑魚たちは引き受けた!大物逃がすな!と叫び、覆面の相手をし始めると、1人小船に乗って逃げようとしたくせ者は、新六郎が座って出現したのに驚く。

新六郎は印を結び、紐を発射すると、街道へ逃げようとしたくせ者の手に絡め引き寄せる。

くせ者はまた川に飛び込んで逃げ出したので、覆面たちを倒して駆けつけた時次郎が逃がして良いのか?と聞くと、夏向けだ、少し冷やしておけと言いと新六郎は余裕を見せ、くせ者がかなり下流に泳いだ時、再び印を結ぶ。

すると、くせ者の身体は川の中を戻って来て、元の川岸に上がると、落ちていた紐が勝手に絡まり、その場に縛り付けられる。

この事件によって、幕府への謀反が発覚した最上出羽守に対し、討伐の命が下された。

討伐隊が山形へと向かう。

これを知った福島正明は、内通する織田家と協力し、迎え撃つ準備を始め、街道各所の警備を徹底させる。

玉井和泉の名で、高札があちこちに立つ。

そんな中、役人が厳戒態勢を敷いていた関所にやって来た八剣士は、役人が制止するのも無視し、平然と通りすぎようとする。

何奴だ!と役人が聞くと、こちらは九郎判官で、これから奥州平泉へ参る。拙者は武蔵坊弁慶也!などと時次郎が笑いながら答える。

驚き呆れた役人どもは、それ、捕まえろ!と叫び、さっさと通過して行った八剣士の後から追って来る。

役人たちに取り囲まれて捕まったと思った八剣士だったが、いつの間にかそこには鶏が一羽走り廻っているだけで、他の7剣士は別の場所に姿を現す。

それに気づいた役人たちが後を追って来ると、新六郎が印を結び、役人たちは川の中を進んでいるような幻覚に襲われ、袴をたくし上げる。

又、その後も追って来ようとすると、目の前の道を炎が塞ぐ。

その役人の慌てぶりを笑いながら先を急ごうとした八剣士だったが、その時、忠太郎が、父上の姿が見えぬと言い出す。

それを聞いた新六郎は、しまった!術を解くのを忘れた!と言い、印を結ぶと、残された役人の1人が追い回していた鶏が、いつの間にか、鶏の格好をして動き回る老人忠助の姿に戻る。

曲者潜入!

藩内に早馬が走る。

新六郎が印を結ぶと渦巻き状の模様が現れ、玉井和泉からのお達しが書かれた高札に矢文が刺さっているのが発見される。

文には、三角の中に卍の印が書かれてあった。

気がつくと、屋根の上で高笑いをしている2人の剣士がいるので、役人たちが梯子をかけ捕まえようと屋根に上ると、いつの間にか2人の姿は消えており、地上に姿を現した2人は、梯子を下から揺すって、上っていた役人を落とし高笑い。

役人たちが集まって来ると、2人は印を結び、出現した長い紐で、役人たちは全員ぐるぐる巻きになってしまう。

再び屋根の上に出現した2人は、捕手の棒を全部集めており、笑いながらそれを屋根の上から捨てて消えてしまう。

家老松崎某が供を連れ、馬で移動していると、突然姿が消えてしまう。

お供の者たちが慌てて周囲を探すと、松崎は木の上に引っかかって助けを求めている。

次の瞬間、誰も乗ってなかったはずの家老の馬に見知らぬ男が乗っており、何を騒いでおる。鎮まれ!などと偉そうに言うので、怒ったお供のものが殴りつけると、いつの間にか、その男は家老の松崎になっていた。

殴られた松崎は激怒し、馬鹿者!一同首だ!とお供の者たちに怒鳴りつけるが、先ほどの男が出現すると、賊だ!首は取り消しだ!捕まえろ!とあっさり前言を取り消す。

お供の者たちが、逃げる賊を追うと、賊は木の後ろに消えてしまう。

一方、お供のものを連れていた別の家老玉井の前に、2人のきれいな娘が身をかがめて待っており、お願いがあります。他言を憚りますので、どうかお供の方を…と人払いを頼んで来る。

鼻の下を伸ばした玉井はお供の者たちに先に帰らせ、神社の階段に座り、じっくり両脇に身を寄せて来た2人の娘の話を聞くことにする。

すると、1人の娘が玉井のターさん!お願いと言うのはね、将軍に弓引くこと考えても叶わないわよ…と甘えた口調で迫って来る。

すると玉井は、そこもあるな〜…と言いながら鼻の下を伸ばすが、お止めになるなら、う〜んとサービスするわよなどと言い娘は顔を近づけて来るが、いつの間にかその娘は老人忠助に戻っていた。

すると、もう1人の娘も息子の忠太郎の姿に戻り、お父上!と老人に注意する。

玉井は驚き、曲者じゃ!と助けを呼ぶが、2人が印を結ぶと、縄が出て玉井を近くの木に縛り上げてしまう。

木の幹には、三角マークの中に卍のあの印が書かれていた。

山形城内に出現したのは、新六郎と時次郎だった。

2人は別々に姿を消し、別行動をする。

深夜、居眠りをしている腰元たちたちと一緒にいた浦里の部屋に現れた春日時次郎は、驚く浦里の前で、居眠りをしていた腰元たちを全員消してしまう。

その頃、他の六剣士たちは、とある庵の中で2人の帰りを待っていたが、そんな中、まだ旨く忍術を使いこなせない老人の忠助は、息子の忠太郎に忍術の使い方を教わっていた。

息子は見事に消えてみせるが、真似て消えようとした忠助の方は一向に消えない。

その様子を観ていた他の剣士たちは、忠助老は、まだ1年生にもならぬよと笑う。

ところで、城に向かったご両人は大丈夫だろうか?と忠助が心配していると、心配ご無用と言いながら、水で手を洗っている新六郎が出現する。

明日はもっと驚かせてやろうと新六郎が計画を打ち明けると、忠助も、わしも早く忍術を会得するよと張り切る。

ときに春日殿は?と聞かれた新六郎は、気を効かせて浦里の部屋に置いて来たと笑う。

その頃、時次郎と二人きりになった浦里は、明日、大評定があります。出羽守の息子源五郎が天童に向かいますと知りえた情報を教えていたが、その部屋の様子を廊下から聞き耳を立てていた家臣が、曲者!と大声を上げる。

その時、春日の帰りを待ち受けていた新六郎は、庵の囲炉裏にかけた鍋が突然落ちたので、見破られたか!と叫び、仲間たちと共に助けに行く為一斉に消える。

忠助だけが又しても取り残されるが、少し高い所にあった庵から下に飛び降りると、ようやく煙と共に消える。

時次郎が孤軍奮闘している中、案じて部屋を飛び出して来た浦里が捕まってしまう。

敵の間者と通じるとは!成敗致すぞ!叩いて白状させろ!と最上出羽守は家臣に命じる。

それに気づいた時次郎は姿を消す。

出羽守の眼前、庭先の階段下で縛られ鞭打たれていた浦里は、突如、等身大の巨大な猫に変身する。

縛られていた紐を引きちぎって立上がった巨大猫は、家来相手に暴れだす。

妖怪め!と出羽守は叫び、家来たちが立ち向かうが、化け猫は空から降りていた綱にぶら下がると、ターザン宜しく空中を飛び回り始める。

そんな化け猫に、鉄砲隊が発砲する。

化け猫が消えた地面には、「出羽殿 首危ない 危ない 三角マークと卍」と書かれた紙が落ちていた。

翌日 山で待機していた新六郎は、下の道を通過して行く駕篭の一行を発見する。

新六郎が印を結ぶと、駕篭に随行していたお供の者たちが一斉に姿を消し、道には駕篭だけが残される。

その駕篭に近づいた新六郎は、扉を開き、中に乗っていた、出羽守の息子源五郎に、しばらくご辛抱をと優しく声をかけ外に連れ出すと、一緒に消える。

その直後、姿を消していた駕篭の護衛役たちと八剣士が戦いながら道に姿を現す。

忠助は、何とか姿を消して相手の目をごまかそうとするが、やっぱり姿を巧く消せないので、相手から頭を殴られたりする。

その頃新六郎は、源五郎を共に馬に乗せ走り去っていた。

八剣士と戦っていた護衛役たちの姿はまた消え、上の方の道に、八剣士が出現し、消えた連中の方を見て高笑いする。

その頃、山形城では、源五郎が江戸の隠密に誘拐されたのとの知らせが出羽守の元へ届いていた。

出羽守の前に知らせに来た兵庫は、幕府転覆の野望などお捨て下さい。陰謀が成就した例はございませぬと進言する。

しかし、出羽守と共にその話を聞いていた福島正則は、怖じ気をふるうな!目先の見えぬ猪侍め!と罵る。

出羽守も、兵庫、福島殿に無礼だぞ!引き下がれ!と叱りつける。

すると、突如、兵庫の姿が忍び装束姿の大島新六郎の姿に変身し、戸隠八剣士がご城下を騒がしたのも、殿に反省して頂く為!今回の企みは、出羽殿ご自身の墓穴を掘る愚行!今思いとどまれば、出羽家の安泰を約束するとの家光の言葉を伝える。

しかし、下衆め!と怒鳴りつけた出羽守は刀を抜いて立上がると、何かに取り憑かれたように刀を振り回し暴れ始める。

新六郎が術で操っていたのだった。

徳川の大軍が何だ!出羽守は狂ったように叫ぶ。

その時、室内に、他の七剣士が出現し、家来たちと戦い始める。

忠助老も、何とか戦いに参加する。

突如、人間大の巨大蝦蟇が出現、さらに妖怪のような化物も3体出現する。

出羽守はまだ暴れ回っていたが、その頭上から紙片が舞い降りて来る。

いつの間にか、出羽守の家来たちの姿は消えていた。

暴れ回る出羽守を前に、新六郎が印を結ぶと、突如、出羽守は福島正則に刃を向ける。

福島は驚き、自分も刀を抜くと、出羽守と斬り合いを始める。

福島がそんな狂った出羽守を斬り捨てると、出羽守は笑いながら後ろに倒れる。

福島の方も、出羽守の剣で斬られており、一瞬遅れて倒れる。

そこに、大島新六郎が出現し、相打ちして共に果てた2人に合掌する。

かくして、最上出羽守と福島正則の2人は自滅して事件は一件落着。

八剣士たちも笑いながら姿を消して行く。

こうして、徳川の礎は築かれたのである。

出羽守の家臣や役人たちは、全員紐で縛られて、一カ所に集められると、たき火の火になって消え去る。

斯くして八剣士は江戸に帰って行った。

戸隠の山の頂きに立っていた戸隠老人は、これでわしの出番はすんだ…と呟き、再び、隠棲の人となっただった。


 

 

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